説明

消臭性粘着剤組成物及び該粘着剤を用いてなる粘着加工品

【課題】 本発明の課題は、トルエンを含有しない粘着剤から形成される粘着加工品であって、従来と遜色ない粘着性能を有し、ホルムアルデヒドが発生せず、吸着したホルムアルデヒドを放出しない透明性に優れる粘着加工品を提供することである。
【解決手段】 トルエンの不存在下であって、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくも1種の有機溶剤の存在下に、αピネン、リモネン及びターピノーレンからなる群より選ばれる少なくも1種の化合物を用いて、カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーを必須とするラジカル重合性モノマーを共重合してなる共重合体、イソシアネート化合物、及び前記共重合体100重量部に対し、二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物が結合されている無機化合物粒子を1重量部〜50重量部含有することを特徴とする消臭性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤及び該粘着剤を用いてなる粘着加工品、即ち塗工物に関する。詳しくはホルムアルデヒド及びトルエンを含有しない粘着剤であって、消臭機能を有する化合物を含有する消臭性粘着剤及び該粘着剤を用いてなる粘着加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から有機溶剤型粘着剤の分野では、ラジカル重合性モノマーを重合してなる共重合体に対して、イソシアネート基を有する化合物が硬化剤として用いられてきた。この場合、主剤たる重合体は、トルエン存在下で重合されることが多い。トルエンは、モノマーや生成される重合体に対して溶剤として機能する他、重合時の連鎖移動剤としても機能する。また、重合後トルエンは、粘度調製用の希釈剤としても使用される場合が多い。
しかし、近年、環境面等からトルエンを含有しない粘着剤が求められるようになってきた。
【0003】
そこで、トルエンを用いず、酢酸エチル等、他の有機溶剤の存在下にラジカル重合性モノマーを重合してなる共重合体を用いて粘着剤を得ようとした。
しかし、トルエンを用いないで他の有機溶剤中で重合すると、トルエンを用いて重合した場合に比して得られる共重合体の重量平均分子量や数平均分子量が大きくなってしまう。その結果、トルエン以外の有機溶剤中で重合した重合体を用いた粘着剤は、トルエンを用いて重合した従来の重合体を用いる場合に比して、従来と同等の固形分では粘度が大きくなり、塗工性能が著しく劣る。
塗工性能を向上するために、重合時の固形分を下げたり、重合後に希釈したりすることはできる。しかし、そのようにして塗工性能を向上しても、粘着力やタック性能の低下した粘着加工品しか得られない。
【0004】
ところで、粘着剤を用いた粘着加工品は、従来から種々の用途に汎用されており、建材貼着用、家電製品の部材貼着用、壁紙貼着用等のように、被着体に貼着した状態で室内に置かれる用途もある。このような場合、粘着剤に含有される成分が気化して室内に漂うことがありうる。
気化し得る成分としては、ホルムアルデヒドやトルエン等がある。そしてこのような化学物質は、所謂シックハウス症候群を引き起こす原因物質として挙げられている。
そこで、そもそもこの様な室内で用いられる粘着加工品に用いられる粘着剤に、前述したようなシックハウス症候群を誘引する化学物質を含まないものを使用すれば問題はないと考えられる。
【0005】
しかし、ホルムアルデヒドの発生原因と思われるような物質を使用しなくとも、ホルムアルデヒドは大気中にも含まれ、一部粘着剤中に入り込む可能性もあり、また加熱によりホルムアルデヒドが発生する可能性もあり、コントロールが難しいという問題がある。
そこで、環境面からはホルムアルデヒドを含有しない粘着剤を用いてなる粘着加工品であって、ホルムアルデヒドの発生を抑制した粘着加工品が求められている。
【0006】
ホルムアルデヒド低減法として、尿素とアセチルアセトン、およびグリオキザールとアセチルアセトンからなる群より選択された増進剤と尿素との組み合わせからなる群より選択されたホルムアルデヒド捕集剤の使用(特開平2−232279号公報参照)、アセトアセチル基を含有する活性エネルギー線硬化樹脂からなるアルデヒド吸着剤の使用(特開平11−197501号公報参照)、および尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジシアンジアミド、グリオキザールモノウレタン、アミン類、アミド類を捕集剤として使用すること等が知られている。
しかし、尿素類は、溶剤系粘着剤では溶解性に乏しい。一方、ジシアンジアミドやアミン類は溶剤型粘着剤のいわゆる主剤と反応し易く、これらを用いた場合粘着剤の経時安定性に欠けるといった問題があった。
【0007】
また、特許文献1:特開2004−51812号公報には、粘着加工品を経由して生じ得るホルムアルデヒドを抑制することを目的に、アセチルアセトンを含有する粘着剤が提案されている。
【0008】
しかしながら、これら施策を粘着剤に施しても、建物自体を構成している木材や壁紙自体等、粘着剤層の外部からホルムアルデヒド等の物質が粘着剤層に侵入し、その後粘着剤層から外部に解放されることを完全に防御することは困難である。
【0009】
また、特許文献2:特開2000−281998号公報には、アルデヒドガス吸収剤を含有する粘着剤を用いて、シックハウス症候群等に対応しようとする発明が記載されている。
【特許文献1】特開2004−051812号公報
【特許文献2】特開2000−281998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、トルエンを含有しない粘着剤から形成される粘着加工品であって、従来と遜色ない粘着性能を有し、かつホルムアルデヒドが発生せず、吸着したホルムアルデヒドを分解させる消臭成分の分散性がよく透明性に優れる粘着加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、トルエンの不存在下であって、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくも1種の有機溶剤の存在下に、αピネン、リモネン及びターピノーレンからなる群より選ばれる少なくも1種の化合物を用いて、カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーを必須とするラジカル重合性モノマーを共重合してなる共重合体、イソシアネート系化合物、及び前記共重合体100重量部に対し、二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物が結合されている無機化合物粒子を1重量部〜50重量部含有することを特徴とする消臭性粘着剤組成物に関する。
【0012】
また本発明は、ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、αピネン、リモネン及びターピノーレンからなる群より選ばれる少なくも1種の化合物を0.001部〜5.0重量部用いることを特徴とする上記発明に記載の消臭性粘着剤組成物に関し、
【0013】
さらに本発明は、基材上に、上記発明のいずれか記載の粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる粘着加工品に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記粘着剤に消臭成分を含有することによって、粘着加工品からの発生及び外部からのホルムアルデヒド量も低減することが出来た。
これらはトルエンフリー、ホルムアルデヒドフリーという社会的要求に答えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の粘着剤は、主剤たる共重合体を重合する際、トルエンの代替溶剤として、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンをそれぞれ単独で、又は2種以上を併用するものであり、反応温度の点から酢酸エチル単独がやや好ましい。
背景技術の項でも述べたように、トルエンの代わりに、これらの有機溶剤の存在下にカルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーを必須とするラジカル重合性モノマーを共重合しただけは、トルエン存在下で重合する場合に比して得られる共重合体の重量平均分子量等が大きくなり、結果、粘着剤の粘度が増大してしまい、塗工性低下を引き起こすと共に、粘着性能の低下をも引き起こす。
本発明は、トルエン以外の有機溶剤を使用するだけでなく、重合の際に、連鎖移動剤として、αピネン、リモネン、ターピノーレンのうち少なくとも一種を用いることによって、従来のトルエン存在下で重合した場合と大差ない重量平均分子量等の共重合体を得ることができるようになったものである。
αピネン等は、その使用量によっても得られる共重合体の分子量を調節することができる。αピネンおよびリモネンは、ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜5.0重量部用いることが好ましく0.3〜3.0重量部用いることがより好ましく、0.5〜1.3重量部用いることがさらに好ましい。また、ターピノーレンは、ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.001〜1.0重量部用いることが好ましく、0.01〜0.05重量部用いることがより好ましい。
【0016】
ターピノーレンは、αピネン、リモネンに比して、少量で分子量を調整し得るという点で好ましい反面、その使用量によって、得られる共重合体の分子量に影響を及ぼす。従って、秤量誤差等を考慮し、一定性状の共重合体を再現性よく生産するという観点からは、αピネン、リモネンがやや好ましい。
尚、チオール基を有する化合物のような強烈かつ独特な不快臭ではないが、リモネンは、柑橘系の香りがする。従って、香性の少ない粘着剤が求められる場合には、リモネンよりもαピネンの方がやや好ましい。
【0017】
本発明の粘着剤を構成する主成分たる共重合体は、カルボキシル基を有するものであればよい。カルボキシル基を有する共重合体は、カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーを必須成分とするモノマーを共重合すればよい。
カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーと共重合し得る他のモノマーとしては、水酸基含有ラジカル重合性モノマーやカルボキシル基や水酸基を有しない他のラジカル重合性モノマーが挙げられる。水酸基含有ラジカル重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボキシル基や水酸基を有しない他のラジカル重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン等が挙げられる。
【0018】
重合に際しては、過酸化物系の重合開始剤やアゾビス系の重合開始剤等、従来公知の重合開始剤を使用することができる。
これら重合開始剤は、モノマー100重量部に対して、0.05〜1.0重量部用いることが好ましく、0.15〜0.5重量部用いることがより好ましい。
【0019】
得られる共重合体は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーのポリスチレン換算による重量平均分子量が40万〜90万であることが好ましく、50万〜75万であることがより好ましい。分子量が小さくなると、塗工物の耐熱性能や凝集力が低下する傾向にあり、分子量が大きくなると、粘着力や塗工性能が低下する傾向にある。
【0020】
また、得られる共重合体は、粘着剤の主剤であることを考慮すると、共重合に供されるモノマーから求められるガラス転移温度が、0℃〜−80℃であることが好ましく、−20℃〜−60℃であることがより好ましい。
【0021】
本発明の粘着剤を構成する硬化剤成分たるイソシアネート化合物としては、種々のポリイソシアネート化合物が挙げられる。例えば、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のジイソシアネート類が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が、
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が、
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が、それぞれ挙げられる。
これらイソシアネート化合物は、前記共重合体100重量部に対して、1.0〜5.0重量部用いることが好ましく、1.5〜3.0重量部用いることがより好ましい。
【0022】
該粘着剤の硬化剤は、限定するものではなく、イソシアネート系化合物他、例えば、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート化合物等が使用できる。
【0023】
本発明の粘着剤は、消臭機能成分として二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物が結合されている無機化合物粒子を含有するものである。前記無機化合物粒子を含有することによって、粘着加工品から発生するホルムアルデヒド量を抑制できる。また、木材等の被着体から発生するホルムアルデヒド等を抑制でき、それに加え壁紙、内装材、発泡体等の基材を通して進入してきた外部からの臭気物質を分解抑制できる。
前記無機化合物粒子は、主剤成分、即ちアクリル共重合体100重量部に対して、を1〜50重量部含有するものであり、1〜25重量部含有することが好ましく、2〜10重量部添加することがより好ましい。1重量部未満では、ホルムアルデヒド等を捕集する効果が小さく、50重量部を超えると捕集効果は高まるものの、粘着剤を後述する基材に塗布、乾燥し、粘着加工品を得た場合に粘着剤層中に多量に残留してしまい、凝集力不足となり接着力低下を招く。
【0024】
本発明において、共重合体溶液に上記消臭成分を配合分散するためには、分散機を用いるが、この分散機及び条件においても限定するものではなく、ボールミル分散、ビーズミル分散等により、消臭成分をアクリル系粘着剤に分散させることができる
【0025】
さらに、本発明の粘着剤には、ホルムアルデヒド低減の観点からアセチルアセトンを含有することができる。
【0026】
さらに、本発明の粘着剤には、必要に応じて公知の粘着剤組成物に配合されている充填剤、顔料、染料、希釈剤、老化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これら添加剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜用いてもよい。また、添加剤の添加量は、所望する物性が得られる量とすればよく、特に限定されるものではない。
【0027】
上記構成の粘着剤は、公知の粘着剤組成物を用いるあらゆる用途に適用することができる。
即ち、本発明にかかる粘着剤は、例えば、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、両面テープ等の各種粘着加工の製造に好適に用いることができる。上記粘着加工品の基材としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、セロファン等のプラスチック;上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の紙;織布、不織布等の布;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。基材の形状は、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、板状等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、基材がプラスチックである場合には、発泡体であってもよい。
【0028】
粘着剤を基材に塗布する塗布方法、即ち、粘着加工品の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法を採用することができる。該方法としては、例えば、粘着剤を基材に直接、塗布する方法;離型紙に粘着剤を塗布した後、該塗布物を基材に転写する方法;等が挙げられる。粘着剤は、基材に容易に塗布することができる。粘着剤を基材に塗布する際に用いる塗布装置は、特に限定されるものではない。そして、粘着剤を基材の片面または両面に塗布した後、乾燥させることにより、基材と粘着剤とが一体化し、基材表面に粘着剤層(以下、粘着剤面と記す)が形成される。乾燥温度は、特に限定されるものではない。尚、用途によっては、粘着剤組成物を被着体に直接、塗布してもよい。また、離型紙に粘着剤を塗布した後、該塗布物を離型紙から剥離することにより、粘着剤自体がフィルム状やシート状、テープ状、板状等に形成されてなる粘着製品を製造することもできる。
【0029】
本発明は、消臭を目的とし特に粘着剤に配合されてフィルム等塗工され、建材に貼り付けられた場合、内部と外部からのもしくは、粘着剤自身の消臭が可能である。これに使用される消臭成分として、二酸化ケイ素とアミノ化合物からなる組成物であり、また粘着剤組成として、本発明されたアクリル系モノマーを重合して得られるポリマーでより効果が発揮される。
該消臭成分を、該粘着剤成分に、分散させることにより塗加工が可能になり、建材、内装材や臭気を除去する必要がある部分(自動車内等)に貼付けることにより消臭の効果を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明を実施例に基づいて説明する。例中「部」は「重量部」、「%」は「重量%」である。
【0031】
実施例1
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた重合装置を用い、アクリル酸ブチル64.9部、アクリル酸2エチルヘキシル25部、アクリル酸エチル7部、アクリル酸3部、アクリル酸ヒドロキシエチル0.1部、酢酸エチル120部、αピネン0.85部、及び過酸化ベンゾイルパーオキサイド0.03部を還流下で2時間共重合させ、反応温度を保ったまま、1時間後、2時間後に過酸化ベンゾイルパーオキサイドを0.023部ずつ添加した。添加後、2時間反応させ、さらに、その後1時間後、2時間後、3時間後にt−ブチル−オキシ−2−エチルヘキサノエートを各0.022部ずつ添加した。最後の添加後、さらに2時間反応させ、冷却後、酢酸エチルで希釈、液温が60℃以下になったら、ハイドロキノン誘導体(精工化学社製ノンフレックスアルバー)を0.1部添加し、充分攪拌後、共重合体溶液を取り出した。ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下GPC)の分析によるポリスチレン換算の前記共重合体の重量平均分子量は、約65万であり、前記共重合体溶液の固形分は45%、粘度は25000mPa・sであった。
得られた前記共重合体溶液36部に粘着付与樹脂9部及び酢酸エチルを添加し、固形分を45%、粘度を8000mPa・Sとし、そこにアセチルアセトンを0.1部添加配合し、粘着剤の主剤を得た。
尚、不揮発分の測定は電気オーブンで150℃−20分後の乾燥前後の重量比から求めた。粘度は25℃、B型粘度計(♯3ローター.12rpm)で測定した値である。
上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物を結合してなるケスモンNS−103(東亜合成(株)製)を2.5重量部添加し、ビーズミル分散機に掛け、上記無機化合物粒子の粒径を10μm以下にした。
次いで、上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、芳香族系ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分37.5%)2.5重量部を配合し、粘着剤を得た。後述する方法に従って各種評価をした。
【0032】
[実施例2]〜[実施例5]
二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物を結合してなるケスモンNS−103の量を上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、それぞれ5重量部、10重量部、25重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着剤を得た。
【0033】
[比較例1]
二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物を結合してなるケスモンNS−103を添加しない以外は実施例1と同様にして粘着剤を得た。
【0034】
[比較例2〜5]
鉄系消臭剤成分を上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、それぞれ2.5重量部、5重量部、10重量部、25重量部とした以外は実施例1と同様にして粘着剤を得た。
【0035】
[比較例6]
ゼオライト系消臭成分を上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、5重量部添加した以外は実施例1と同様にして粘着剤を得た。
【0036】
[比較例7]
上記粘着剤の主剤固形分100重量部に対して、表面にアミノ化合物を結合していない二酸化ケイ素を2.5重量部添加した以外は実施例1と同様にして粘着剤を得た。
【0037】
[比較例8]
実施例1で、連鎖移動剤としてαピネン、リモネン及びターピノーレンのいずれをも使用しない粘着剤を作成し、該消臭成分を5%添加し、同様に該粘着剤を得た。
【0038】
《評価》
(1)分散性
分散機にて消臭成分粒子を分散した後、該粘着剤を粒ゲージで評価した。
○:10μm以上の粒子が目視でほとんどない状態。
△:10μm以上の粒子が目視で確認できる状態。
×:10μm以上の粒子が目視で確認でき、塗工不可状態。
(2)試験塗工物の作成
本発明の粘着剤及び比較用粘着剤を評価するための試験塗工物を以下の方法で作成した。
すなわち、市販剥離紙に塗工膜が20μmになるようにアプリケーターで粘着剤を塗布した。その後100℃のオーブンに入れ2分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)基材をその粘着剤面にゴムロールで圧着させ貼合わせた。作成した塗工物を40℃のオーブンに3日間入れ養生させた。
【0039】
(3)透明性及び色相を目視で確認した。
前項(2)で得られた塗工物から剥離紙を剥がし、粘着剤層の透明性及び色相を目視で確認した。
【0040】
(4)消臭効果の確認
前項(2)で得られた塗工物から剥離紙を剥がし、粘着剤層に不織布に貼り付け後、10×10cmに裁断して試験物を作成した。
次に、3Lの袋にガス濃度50ppmになるように、臭気物であるホルムアルデヒト及びアンモニアの水溶液をそれぞれマイクロシリンジで注入した。その後ホルムアルデヒト及びアンモニアを袋内に十分揮発させるために、気温23℃の一定な恒温室に60分間放置した。
10cm×10cmの上記塗工物をその袋に挿入し、検知管と採取器を用い、6時間後までは1時間毎に、その後は2時間毎に袋内の臭気を検知管の目盛りを読み評価した。結果を表1に示す。
【0041】
(5)接着力測定
前項(2)で得られた塗工物を25mm×100mmにカットし、剥離紙を剥がし被着体SUSに貼付け後、2kgのロールで圧着し、貼り付け直後(初期接着力)、貼り付け24時間後(永久接着力)とを求めた。
(6)保持力試験
前項(2)で得られた塗工物を25mm×100mmにカットし、剥離紙を剥がし被着体SUSに貼付け後、2kgのロールで圧着した後、1kgの荷重をかけて、40℃の環境下に放置した。7万秒後の貼着位置のズレ(mm)、または落下するまでの時間(秒)を求めた。
(7)ボールタック
前項(2)で得られた塗工物から剥離紙を剥がし、23℃、50%Rh環境下でボールタック試験をした。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の粘着剤は、優れた消臭機能を持ち、粘着物性を大幅に落とすことなく、また、外観が透明であるので基材を選ばず種々の用途に用いることができる。そして、本発明の粘着剤は、ホルムアルデヒトを好まない、屋内、車両内装、病院等の壁紙や発泡体シートに使用し、大いに環境向上に貢献できる価値が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエンの不存在下であって、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくも1種の有機溶剤の存在下に、αピネン、リモネン及びターピノーレンからなる群より選ばれる少なくも1種の化合物を用いて、カルボキシル基含有ラジカル重合性モノマーを必須とするラジカル重合性モノマーを共重合してなる共重合体、イソシアネート化合物、及び前記共重合体100重量部に対し、二酸化ケイ素の粒子表面にアミノ化合物が結合されている無機化合物粒子を1重量部〜50重量部含有することを特徴とする消臭性粘着剤組成物。
【請求項2】
ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、αピネン、リモネン及びターピノーレンからなる群より選ばれる少なくも1種の化合物を0.001部〜5.0重量部用いることを特徴とする請求項1記載の消臭性粘着剤組成物。
【請求項3】
基材上に、請求項1又は2記載の粘着剤から形成される粘着剤層を設けてなる粘着加工品。

【公開番号】特開2006−182934(P2006−182934A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378852(P2004−378852)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】