説明

消防ホース

【課題】多数本のホースを連結して使用される場合にあっても、低圧力損失、水走りの速さ、全体の軽量さ、耐摩耗性などの点がバランス良く、優れた性質を有する消防ホースを提供すること。
【解決手段】ホース長手方向に配された経糸4にホース周方向に配された緯糸5を交錯させて織成した筒状織物2を用いて構成した消防ホースにおいて、該消防ホースの内周の全面にゴムまたは樹脂Bから形成された被覆層3を有し、かつ、少なくとも該消防ホースの外周の全面にある前記経糸および緯糸の織組織に基づく凸部の表面に厚さが0mm以上0.1mm以下のゴムまたは樹脂Aの層が形成されている消防ホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防ホースに関し、さらに詳しくは、全体的に軽量である一方で耐摩耗性に優れ、また放水時における水走りが速くホースが蛇行しにくいという性質を有する消防ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防ホースは、ポリエステル繊維などからなる織糸を経糸と緯糸に用いて織成した筒状織物の少なくとも内側に(場合によっては内側および外側に)、ゴムまたは樹脂をシール層として被覆した構造のものが使用されている。そして、従来の消防ホースは、一般に1本当たりの長さは約20mに作られ、それらを複数本連結したとしても、総長さとして高々60メートルないし100メートル程度までの連結ホースとして使用するのが普通であった。
【0003】
一方で、近年の大きな地震災害などを契機に、その連結長さを数100メートルに及ぶ長さにして、しかも、大量の水を長時間にわたり送水できるようにすることなどが検討されるようになった。
【0004】
しかし、本発明者らが種々検討をした結果によると、従来の筒状織物からなる消防ホースを使用する場合、これを数100メートルもの長さに連結すると現実の使用に供するには種々改善すべき点があるとの知見を得た。
【0005】
すなわち、消防ホースを数100メートルもの長い長さに連結して送水を行うと、内圧により筒状織物の経糸と緯糸にそれぞれ発生する張力により、波形に屈曲していた経糸が直線状に変化するため消防ホースに長さ方向の伸びが発生し、その伸びが多数本に連結された消防ホースについて積算されることにより非常に長い伸びを生ずる。このような各消防ホースの伸びによって、多数本が連結された消防ホースは道路上を大きく蛇行することになり、それが車両などの通行を妨害したり、また、消防ホース自体の管路抵抗を増大し大量に送水することを困難にするという問題を招くものであった。また、そのような長い連結長さで使用されて送水をする場合、圧力損失が少ないことや水走りが速いことが要請されることはもちろん、大きな負荷荷重下で引きずられることなども格段に多くなることから、耐摩耗性、耐久性等がより高度に要求されることになった。
【0006】
そうした要求に応え、多数本のホースを連結して長い距離の送水をする場合にあっても、不都合なく送水可能な消防ホースの検討がされている。
【0007】
例えば、消防ホースの長手方向に配された経糸に、ホース周方向に配された緯糸が波形に屈曲して交錯するように製織した筒状織物の内周面と外周面をゴムまたは樹脂のシール層で被覆して目止めをし、経糸はホース長手方向に実質的に直線状に配列され、その経糸に対して緯糸は波形に屈曲させて交錯させ、かつ緯糸の外側に糸通しする経糸本数を緯糸の内側に糸通しする経糸本数よりも少なくして筒状織物を構成したという消防ホースが提案されている(特許文献1)。
【0008】
この特許文献1に記載された消防ホースは、通水開始時に、緯糸が波形屈曲を伸長させるように変化することにより、経糸を一時的に波形に屈曲させて、ホース長は収縮するが、僅かな時間後には経糸が自身の弾性力により屈曲を伸長し、ホース長を通水開始前の長さに復帰させることができる。したがって、多数本のホースを長距離に連結しても、蛇行現象を発生して交通障害や管路抵抗の増大を招くことがないという効果を奏する。しかし、特許文献1に記載されたホースでは、放水時の緯糸方向の圧力損失、水走りの速さ、全体の軽量さ、耐摩耗性などの点、それらの総合的バランスの点でいまだ改善が望まれるものであった。
【特許文献1】特開平10−137354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、多数本のホースを長距離に連結して使用される場合、具体的には、例えば10本〜15本程度(長さ200〜300m)連結されて使用される場合にあっても、低圧力損失、水走りの速さ、全体の軽量さ、耐摩耗性などの点がバランス良く優れた性質を有する消防ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成する本発明の消防ホースは、以下の(1)の構成を有する。
【0011】
(1)ホース長手方向に配された経糸にホース周方向に配された緯糸を交錯させて織成した筒状織物を用いて構成した消防ホースにおいて、該消防ホースの内周の全面にゴムまたは樹脂Bから形成された被覆層を有し、かつ、少なくとも該消防ホースの外周の全面にある前記経糸および緯糸の織組織に基づく凸部の表面に厚さが0mm以上0.1mm以下のゴムまたは樹脂Aの層が形成されていることを特徴とする消防ホース。
【0012】
また、かかる本発明の消防ホースにおいて、より好ましい具体的態様として、以下の(2)〜(6)のいずれかの構成を有するものである。
【0013】
(2)外周の層を形成する前記ゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成する前記ゴムまたは樹脂Bとが、同一組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる前記経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる前記内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であることを特徴とする上記(1)記載の消防ホース。
【0014】
(3)外周の層を形成する前記ゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成する前記ゴムまたは樹脂Bとが、相違する組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる前記経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる前記内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であることを特徴とする上記(1)記載の消防ホース。
【0015】
(4)前記消防ホースの最外周に、滑り止めのためのゴムまたは樹脂製の小突起が多数形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の消防ホース。
【0016】
(5)前記消防ホース内周の全面に形成されたゴムまたは樹脂の被覆層が、ホース長さ方向に延在する複数本の突条リブ構造を呈していることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の消防ホース。
【0017】
(6)前記緯糸を、経糸2本の外側と経糸2本の内側とに交互に交錯させて筒状織物を織成していることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の消防ホース。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかる本発明の消防ホースによれば、ホース長手方向に配された経糸にホース周方向に配された緯糸を交錯させて織成した筒状織物を用いて構成した消防ホースにおいて、該消防ホースの内周の全面にゴムまたは樹脂Bから形成された被覆層を有し、かつ、少なくとも該消防ホースの外周の全面にある経糸および緯糸の織組織に基づく凸部の表面には、厚さがごく薄い0mm以上0.1mm以下というゴムまたは樹脂Aの層が形成されていることから、高圧でホースに通水されるときも緯糸が適度に伸びることができ、一般に、ホース径では約5〜10%程度は膨らむことができる。かかる構造により、過大な圧力損失を伴うことなく通水することができるとともに、水走りの速さ、良さも非常に良好に放水することができる。
【0019】
また、上記のように、消防ホースの外周面においては、厚さが0mm以上0.1mm以下という非常に薄いものでありながらもゴムまたは樹脂の層Aが形成されていることから、全体に軽量でありかつ耐摩耗性は良好であり、長く連結されて使用される場合でも特に放水性能、放水操作性に優れまた耐久性に優れる。また、水走りが良いことからホースの蛇行の問題も少ない。
【0020】
請求項2にかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の消防ホースにおいて、さらに、外周の層を形成するゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成するゴムまたは樹脂Bとが、同一組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であるようにしたことにより、上述した請求項1にかかる本発明の効果をより明確に得ることができる。
【0021】
請求項3にかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の消防ホースにおいて、さらに、外周の層を形成するゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成するゴムまたは樹脂Bとが、相違する組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であるようにしたことにより、上述した請求項1にかかる本発明の効果を得るとともに、特にホース外周面に要請される耐摩耗性や耐外傷性の向上などの所望する機能特性を、それらの点で特に優れた樹脂Aを使用することにより付与できる。
【0022】
請求項4にかかる本発明の消防ホースによれば、滑り止めのための樹脂製の小突起が多数形成されていることから、多数本のホースを連結して使用する場合であって全体重量が過大になる場合にあっても、操作者がより確実に該消防ホースを保持して、迅速・正確に目標とする地点に達することや消火動作の遂行ができる。
【0023】
請求項5にかかる本発明の消防ホースによれば、上述した効果を良好に得ながら、水走りが速く、適度な圧力損失のもとで適切な放水を速く行うことができ、消防ホースを多数本連結して使用する場合にもより迅速な放水操作を行うことができる。
【0024】
請求項6にかかる本発明の消防ホースによれば、緯糸の交錯点が経糸2本分となることにより、緯糸の自由度が大きく、緯糸がより伸び縮みしやすいことから、より適度で低い圧力損失を実現するとともに、外側と内側に1本1本交互に交錯する場合と比較して、緯糸の織組織に基づく凸部の割合が全体として大きくなり、その結果、外表面の樹脂量全体を少なくできることになり全体の軽量化がさらにできるとともに、また耐摩耗性も有する消防ホースを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、更に詳しく本発明の消防ホースについて説明する。
【0026】
本発明の消防ホース1は、図1に概略横断面図を示したように、ホース長手方向に配された経糸4に、ホース周方向に配された緯糸5を交錯させて織成した筒状織物2を用いて構成され、該消防ホース内周の全面にゴムまたは樹脂Bから形成された被覆層3を有し、かつ、少なくとも該消防ホース1の外周の全面にある経糸4および緯糸2の織組織に基づく凸部の表面には、厚さが0mm以上0.1mm以下でゴムまたは樹脂Aからなる層が形成されている。
【0027】
この消防ホース1の外周にある経糸4および緯糸2の織組織に基づく凸部の表面に、厚さが0mm以上0.1mm以下というゴムまたは樹脂Aからなるごく薄い層Aが形成されていることにより、放水時に高い水圧が加わったときに、緯糸を真っ直ぐに伸ばすようにホース全体径を膨らませようとするホース挙動を邪魔することなく、ホース内径が大きくなる挙動を示す。また、経糸も、筒状織物中で緯糸に比較して屈曲度合いは小さいものの屈曲して存在しており、その屈曲もホース径の膨張とともにさらに真っ直ぐになる挙動を示す。これらの構造から高圧で通水をしても圧力損失が非常に小さく水走りが良好である。
【0028】
また、たとえ厚さ0mm以上0.1mm以下と薄いものであっても、ゴムまたは樹脂Aの層が消防ホースの外周面にある経糸および緯糸の織組織に基づく凸部の表面に明確に存在しているために、軽量であるにもかかわらず耐摩耗性が良好であり、長距離にわたり引きずられるようなことがあっても操作性・耐久性ともに良好である。
【0029】
なお、「厚さが0mm以上0.1mm以下の層」とは、緯糸内または/および経糸内にゴムまたは樹脂Aが浸透していて厚さ(高さ)として検出できない場合(ゼロと検出される場合)を含んでいる意味であり、外周表面にゴムまたは樹脂が何も付与されていない場合を含むという意味ではない。また、外周表面上であっても織組織に基づく凹部には、ゴムまたは樹脂Aが厚さ0.1mmを超えて層を成して付着していてもよいものであり、特に、本発明では凸部における付着状態に注目したものである。
【0030】
本発明の消防ホースにおいて、消防ホースの外周面に付与されているゴムまたは樹脂Aの重量は、凸部と凹部の全合計量で、好ましくはホース外周表面積当たり10〜250g/mであり、より好ましくは30〜200g/mである。これは、従来の類似のものと比較して小さいと言えるものであり、全体の軽量化への寄与効果が大きい。
【0031】
外周面に付与されるゴムまたは樹脂Aと、内周面に付与されて被覆層を構成するゴムまたは樹脂Bとは、同一の組成のものであってもよく、あるいは相違する組成のものであってもよく、それぞれで利点として活かすことができる。
【0032】
ゴムまたは樹脂A、ゴムまたは樹脂Bは、従来から消防ホースの内周面の被覆材料として使用されているものを使用でき、例えば、天然ゴム(NR)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム材料、塩化ビニルやポリウレタンやポリエステル等の合成樹脂材料、またはこれらの混合物や誘導体などを使用することができる。
【0033】
特に、外周に使用されるゴムまたは樹脂Aは、内周の被覆層3に使用されているゴムまたは樹脂Bと相違するものとして、例えば、優れた耐摩耗特性を有するポリプロピレン樹脂などを用いてもよく、あるいは、発色・発光剤が含有されたゴムまたは樹脂材料を使用するようにしてもよい。
【0034】
内周の全面に被覆層を構成しているゴムまたは樹脂Bからなる層と、消防ホースの外周にある経糸および緯糸の織組織に基づく凸部におけるゴムまたは樹脂Aの層は、それらの厚さの合計で0.2mm以上0.4mm以下であることが好ましく、それよりも厚くなると、全体の重量が増大することになり、本発明の所期の効果が失われていく方向となるので注意が必要である。消防ホース内周面のゴムまたは樹脂Bの被覆層3の厚さは、好ましくは0.2〜0.5mm程度である。
【0035】
なお、本発明の消防ホースにおいて、ゴムまたは樹脂の層Aの外周側に、他のゴムまたは樹脂の層Cが形成されていてもよい。この他のゴムまたは樹脂の層Cは、消防ホースに特別な付加的機能を付与することのできるゴムまたは樹脂材料を使用するのが良く、例えば、優れた耐摩耗特性を有するポリプロピレン樹脂、あるいは発色・発光剤、蓄光剤などが含有されたゴムまたは樹脂材料などを好ましく使用できる。中でも、発色・発光剤あるいは蓄光剤などが含有されたポリプロピレン樹脂などは、夜間や暗い中の使用でも良好な視認性を有しかつ耐摩耗性に優れていることから好ましい。
【0036】
このゴムまたは樹脂の層Aの外周側に使用される他のゴムまたは樹脂の層Cは、外周の全表面を被覆するように均一な層として存在してもよいが、そうでなくともよく、特に線状や散点状などのように要所だけに存在するものであってもよい。その場合には、該ゴムまたは樹脂Cの層の厚さは数mm程度あっても差し支えない。例えば、消防ホースの最外周(ゴムまたは樹脂Aの層のさらに外周)に、滑り止めのためのゴムまたは樹脂Cからなる小突起が多数形成されていてもよく、例えば、通常、操作者により保持されると考えられる消防ホース外周の適宜の部位に、タック性のあるゴムや塩化ビニル樹脂あるいはポリウレタン樹脂などで形成された半球状凸部などの小突起を多数設けてもよい。あるいは同様に、耐摩耗性に優れたゴムまたは樹脂で、耐摩耗性を向上させるために半球状凸部などの小突起を全周面にわたり多数設けてもよい。
【0037】
緯糸は、放水時に、筒径が膨らんで全体径をある程度大きくすることができるように、比較的大きな波(織りクリンプ)を呈して経糸に交錯して筒状織物に織成されていることが好ましい。その緯糸の波形(織りクリンプ)の程度は、製織時(交錯状態の形成時)に、経糸、緯糸にそれぞれかかる張力の強弱バランスを調整することや、さらに製織した後(交錯状態の形成直後)にホース長さ方向(経糸方向)に引張り力を加えて経糸に真直ぐに伸ばす力を付与することなどにより、所望する織糸(特に緯糸、加えて経糸も)に波形のクリンプ状態を呈した筒状織物を製織することができる。
【0038】
経糸と緯糸は、経糸1本の外側と経糸1本の内側とに交互に交錯させて製織したものでもよいが、織糸が形成する外周面の凸部にごく薄い(厚さ:0mm〜0.1mm)ゴムまたは樹脂の層Aを形成した効果をより大きくできる点で、最外周面の凸部面積を織組織として比較的大きくできることから、図1に示したように、緯糸を経糸2本の外側と経糸2本の内側とに交互に交錯させて筒状織物を織成したものが好ましい。
【0039】
また、消防ホース内周の全面に形成されたゴムまたは樹脂Bの被覆層3が、ホース長さ方向に延在する複数本の突条リブ構造を有する構造とすることも好ましい。例えば、特開平7−4569号公報に記載されている、かつ現在、市販の消防ホースにも一部採用されている突条リブを有する構造とすることにより、全体の軽量化を実現するとともに、突条リブの存在による整流効果によってさらに水走りの速度(通水速度)を速くすることができる。通水速度が速いことは、ホース連結長さが長くなるほど通水性能のみならず、操作性、安全性などの種々の点から要請されることであり、重要なことである。この整流効果をより効果的に得る上で突条リブの高さは0.3〜2mmとするのが好ましい。
【0040】
本発明の消防ホースを製造するには、筒状織物2を織成し、その後、筒状織物を裏返して、ゴムまたは樹脂を吐出する環状口金の環状孔内に通過させながらその裏返された外表面(製品ホースでの内周面)の全表面にゴムまたは樹脂Bの被覆層3を所望の厚さで形成する。被覆層3に突条リブを形成するには、上記の環状口金として前記突条リブに対応した凹部が周縁に設けられたものを使用することにより行い得る。その後、また裏返して製品ホースでの外周面を表側にし、その外周全表面に環状の塗布口金(ダイス)などによりゴムまたは樹脂Aを塗布した後、その塗布されたゴムまたは樹脂Aが硬化する前に、環状のエッジ等を使用してその中を張力をかけて通すことにより、ホース外周の経糸と緯糸とが交錯して形成された凸部にゴムまたは樹脂の所要量(厚さが0mm以上0.1mm以下)が付与された消防ホースを得ることができる。
【0041】
その際、さらに全外周面に、ゴムまたは樹脂の層Cを上塗りしたい場合には、ゴムまたは樹脂Aの層を形成した後に、さらにAと同様の手法でゴムまたは樹脂Cの塗布を行えばよい。ゴムまたは樹脂の層Cを外周面の一部だけに形成したいときは、適宜の塗布口金を用いて所望の箇所に塗布を行えばよい。
【0042】
また、あるいは、本発明の消防ホースを製造する他の方法として、筒状織物2を織成し、その後、その筒状織物を特に裏返したりせずにそのまま、ゴムまたは樹脂Bを吐出する環状口金の環状孔内に通過させて、外周面側からゴムまたは樹脂Bを内周面に滲み出るほどに圧入し付与する方法があり、そのゴムまたは樹脂Bが、外周面の層を構成するゴムまたは樹脂Aと同一組成のもので構成したい場合は、そのまま外周表面に至るまで圧入付与し、外周面上で所要量(厚さが0mm以上0.1mm以下となるまで)の付与がなされるまでその圧入付与行うことにより製造できる。一方、そのゴムまたは樹脂Bを、外周面の層を構成するゴムまたは樹脂Aと相違する組成のものとしたい場合は、適宜量のゴムまたは樹脂Bの付与を終えた後、さらに第二の環状口金でゴムまたは樹脂Aを外周表面に至るまで圧入付与し、さらに外周面上で所要量(厚さが0mm以上0.1mm以下となるまで)の付与がなされるまで圧入付与を行う。
【実施例】
【0043】
実施例1
経糸にポリエステルフィラメント糸の1100dtexの3本撚り糸(1100dtex/3)、211本を使用し、緯糸にはポリエステルフィラメント糸の1100dtexの6本撚り糸(1100dtex/6)を使用し、緯糸打込み本数48本/10cm長さとして、図1に示したように、経糸2本の外側と経糸2本の内側とに交互に緯糸を交錯させた織組織の筒状織物を製造した。
この筒状織物を、環状口金を有する樹脂付与装置に供給し、樹脂Aおよび樹脂Bとして、ウレタン樹脂を使用して内周面の被覆層を形成し、さらに外周の凸部表面にウレタン樹脂を付与して、本発明の消防ホース(内周径:64.5mm)を製造した。
該ウレタン樹脂の全体付着量は、ホース長さ1m当たり110gであり、外周面の経糸及び緯糸の織組織に基づく凸部の表面のウレタン樹脂Aの層の厚さは0.05mmであった。また、内周面のウレタン樹脂Aの被覆層の厚さは、0.35mmであった。
この消防ホース(長さ20m)を3本繋いで放水し圧力損失を測定したところ、従来市販の通常ホースを同様に繋いだものよりも10%ほど良好であった。
【0044】
実施例2
実施例1に記載したのと同様の筒状織物を使用して、環状口金を有する樹脂付与装置に供給し、内周の被覆層を形成する樹脂Bとして、オレフィン系樹脂を使用して層厚さ0.35mmの内周面の被覆層を形成し、さらに第二の環状口金を有する樹脂付与装置を用いて、外周にポリプロピレン樹脂の層を形成し、その凸部表面にポリプロピレン樹脂を付与して、該凸部での層厚さ0.15mmである本発明の消防ホース(内周径:64.5mm)を製造した。
この消防ホース(長さ20m)を3本繋いで実施例1と同様に圧力損失を測定し、また耐摩耗性についても評価を行った。その結果、圧力損失は実施例1と同等に良好であり、また、実施例1のホースと比較して耐摩耗性において数段優れているものであった。
【0045】
実施例3
実施例1で製造したものと同一の消防ホース(長さ20m)を15本繋いで放水した。その結果、従来市販の通常ホースを同様に繋いだものよりも、圧力損失、水走りの点で良好であり、かつ全体が軽量であり操作性の点で優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施態様として、消防ホースの筒状織物付近の状態を説明する要部横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 消防ホース
2 筒状織物
3 ゴムまたは樹脂の被覆層
4 経糸
5 緯糸
A 消防ホースの外周に形成される層をなすゴムまたは樹脂
B 消防ホースの内周の全面に形成される被覆層をなすゴムまたは樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース長手方向に配された経糸にホース周方向に配された緯糸を交錯させて織成した筒状織物を用いて構成した消防ホースにおいて、該消防ホースの内周の全面にゴムまたは樹脂Bから形成された被覆層を有し、かつ、少なくとも該消防ホースの外周の全面にある前記経糸および緯糸の織組織に基づく凸部の表面に厚さが0mm以上0.1mm以下のゴムまたは樹脂Aの層が形成されていることを特徴とする消防ホース。
【請求項2】
外周の層を形成する前記ゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成する前記ゴムまたは樹脂Bとが、同一組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる前記経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる前記内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1記載の消防ホース。
【請求項3】
外周の層を形成する前記ゴムまたは樹脂Aと、内周の被覆層を形成する前記ゴムまたは樹脂Bとが、相違する組成のゴムまたは樹脂であって、かつゴムまたは樹脂Aからなる前記経糸および緯糸の織組織に基づく外周の凸部に形成された層と、ゴムまたは樹脂Bからなる前記内周の被覆層の合計厚さが0.2mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1記載の消防ホース。
【請求項4】
前記消防ホースの最外周に、滑り止めのためのゴムまたは樹脂製の小突起が多数形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の記載の消防ホース。
【請求項5】
前記消防ホース内周の全面に形成されたゴムまたは樹脂の被覆層が、ホース長さ方向に延在する複数本の突条リブ構造を呈していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の消防ホース。
【請求項6】
前記緯糸を、経糸2本の外側と経糸2本の内側とに交互に交錯させて筒状織物を織成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消防ホース。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−151246(P2010−151246A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330537(P2008−330537)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【Fターム(参考)】