説明

消音器の製造方法

【課題】 消音器のうち特に高温に曝される吸音材、インナーパイプ又は溶接部位に、サブミクロンの均一なセラミックス被膜を、安価に且つ簡単に被覆し、もって優れた耐高温酸化性と耐食性を得る。
【解決手段】 インナーパイプ2に吸音材繊維としての平均繊維径30〜150μmのステンレス繊維3を嵩密度50〜500kg/m3 に巻設して一体化した後、この一体化したインナーパイプ2及びステンレス繊維3に、これらを同時に前駆体溶液A(B)に浸漬して乾燥する化学溶液法により、セラミックス被膜を膜厚0.05〜1μmに被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用等の内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の排気ガス温度は、コールドスタート対策や燃費向上等を目的としたエンジン燃焼改善により次第に高温化となる傾向がある。また、消音器内は、排気ガスの凝縮液による内部腐食と、冬期に高速道路等に散布される融雪塩による外部腐食とで、湿腐環境となりやすい。消音器内の温度がより高温環境下となると、高温側に曝される吸音材(ステンレス繊維等)、インナーパイプ又は溶接部位に、優れた耐高温酸化性と耐食性が要求される。
【0003】
この要求に対して、次のような先行技術が提案されている。
(1)排気ガスの温度が高く、汎用のステンレス鋼繊維では酸化劣化を生ずる過酷な用途に、高Al含有フェライト系ステンレス鋼繊維に希土類元素等を添加して耐熱特性向上を図った技術が、特許文献1〜3などに開示されている。
(2)さらに、高温引張強さを改善したものが、特許文献4などに開示されている。
(3)また、ステンレスの耐熱性改質や触媒機能加味のためのセラミックス被覆の先行技術が、特許文献5〜10に開示されている。特許文献5はコロイド状アルミナを含むアルミナゾルへの浸漬であり、特許文献6はアルミナ等のスラリーへの浸漬であり、特許文献7はセラミック混合混濁液の塗布であり、特許文献8はCVD法であり、特許文献9は粒子又は箔からの溶融被覆であり、特許文献10はシリカスラリー・アルミナスラリーへの浸漬である。
(4)他に耐熱塗料を被覆する方法もある。
【特許文献1】特開平4−354850号公報
【特許文献2】特開平6−172932号公報
【特許文献3】特開平6−172933号公報
【特許文献4】特開2000−273588号公報
【特許文献5】特開昭55−94646号公報
【特許文献6】特開平7−178343号公報
【特許文献7】特開平8−225956号公報
【特許文献8】特開平9−67672号公報
【特許文献9】特開平10−251862号公報
【特許文献10】特開平10−5603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記(1)〜(3)の各材料又は(5)〜(10)の各被覆加工品は、高価であり、低コストを要求される自動車用消音器の部品として不向きである。また、上記(4)の耐熱塗料の被覆では、膜厚が1μmを大きく超え、通常10〜50μmとなるため、吸音材に被覆した場合に吸音性能を著しく低下させてしまう。また、耐熱塗料としては宇部興産株式会社製の商品名チラノコート等が市販されているが、高価である。
【0005】
本発明の目的は、消音器のうち特に高温に曝される吸音材、インナーパイプ又は溶接部位に、サブミクロンの均一なセラミックス被膜を、安価に且つ簡単に被覆し、もって優れた耐高温酸化性と耐食性を得ることにある。さらに、吸音材がステンレス繊維である場合に、その吸音性能を損なうことなく耐高温酸化性と耐蝕性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法において、消音器の吸音材繊維、インナーパイプ又は溶接部位に、化学溶液法によりセラミックス被膜を被覆することを特徴とする。内燃機関の用途は、特に限定されず、自動車、鉄道車両、船舶等を例示できる。
【0007】
[被覆部位:吸音材繊維、インナーパイプ又は溶接部]
吸音材繊維の材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ステンレス合金等のステンレス材料(ステンレス繊維)が好ましく、フェライト系ステンレス鋼(例えばSUS434)が特に好ましい。繊維の製作法としては、特に限定されないが、単線引抜き法、集束伸線法、ワイヤー切削法、ひびり振動切削法、コイル材切削法等を例示できる。また、平均繊維径は、ステンレス繊維の場合には30〜150μmを例示でき、80〜120μmが好ましい。平均繊維径が細いほど、吸音性能が良好となるが、比表面積が高くなり、耐高温酸化性能が低下する。嵩密度は、ステンレス繊維の場合には50〜500kg/m3 が好ましい。50kg/m3 未満であると吸音性能がほとんどなく、500kg/m3 を越えると重くなる。
【0008】
インナーパイプは、サブマフラーやメインマフラーの内管として使用されるものである。インナーパイプの材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ステンレス合金等のステンレス材料が好ましい。
【0009】
溶接部位としては、インナーパイプ自体の継ぎ目、インナーパイプと外筒やセパレータとの接合部等における溶接部位を例示できる。溶接部位の溶接金属としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ステンレス合金等のステンレス材料が好ましい。溶接方法としては、特に限定されないが、MIG(金属−不活性ガス)、TIG(タングステン−不活性ガス)、MAG溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、プラズマアーク溶接、抵抗溶接、溶加材で接合するろう接を例示できる。
【0010】
[セラミックス被膜]
セラミックス被膜の膜厚(複数積層の場合は合計膜厚)は、特に限定されないが、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.3μmが特に好ましい。1μmを超えると、被膜にひび割れが生じやすくなり、また、特に吸音材繊維に被覆した場合には吸音性能の低下が始まる。一方、0.05μm未満であると、十分な耐高温酸化性能が得られにくい。従って、吸音材繊維、インナーパイプ又は溶接部位のうち、少なくとも平均繊維径30〜150μmの吸音材繊維としてのステンレス繊維にセラミックス被膜を膜厚0.05〜1μmに被覆することが好ましい。
【0011】
セラミックス被膜のセラミックスとしては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等を例示できる。また、セラミックスの単体若しくは混合物による単層又は複数積層、あるいはセラミックスの異材による複数積層が可能である。但し、金属との密着性とコストからはシリカが好ましく、従ってセラミックス被膜はシリカを主成分とするものが好ましい。具体的には、シリカの単体若しくはシリカを主とする混合物によるシリカ被膜の単層又は複数積層、あるいはシリカ被膜を含む異材の複数積層が好ましい。
【0012】
化学溶液法を用いたセラミックスコーティングは、主として、出発原料である金属有機化合物を酸や水とともに溶液中に混合溶解してなる前駆体溶液を、被処理物に塗布して乾燥させた後、加熱処理して製膜する方法である。同法は、比較的安価で、複雑形状(吸音材繊維等)に対しても、サブミクロンの均一な被覆が得られやすい。
【0013】
(ア)シリカ被膜の場合、テトラエトキシシランを出発原料とするものが好ましく、そのための前駆体溶液としては、テトラエトキシシラン、酢酸及び水を適度なモル比でエタノール中に混合溶解し、加熱濃縮して生成したものを例示できる。
(イ)アルミナ被膜の場合、酢酸エチルに溶解したアルミニウムブトキシドを出発原料とするものが好ましく、そのための前駆体溶液としては、アルミニウムブトキシド、酢酸及び水を適度なモル比でエタノール中に混合溶解し、加熱濃縮して生成したものを例示できる。
(ウ)ジルコニア被膜の場合、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシドを出発原料とするものが好ましく、そのための前駆体溶液としては、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、アセチルアセトン及び酢酸を適度なモル比でエタノール中に混合溶解し、加熱濃縮して生成したものを例示できる。
(エ)チタニア被膜の場合、チタニウムテトラ−n−ブトキシドを出発原料とするものが好ましく、そのための前駆体溶液としては、チタニウムテトラ−n−ブトキシド及び酢酸を適度なモル比でエタノール中に混合溶解し、加熱濃縮して生成したものを例示できる。
【0014】
酸は、酢酸の他、硝酸、塩酸等でもよく、特に限定しない。アルコールは、エタノールの他、メタノール、トルエン、キシレン等でもよく、特に限定しない。アルコールの代わりに、シリコーンオイル等をオイル系を使用してもよく、また水のみでもよい。これら各種のアルコール、酸、オイル、水を、複数、適度に混合してもよい。また、これらのセラミックス溶液に市販の耐熱塗料を希釈し、混合使用してもよい。溶液は、金属有機化合物が溶液中で混合溶解していれば、特に限定されるものではない。
【0015】
前駆体溶液には、次のような添加物を加えることもできる。
(カ)有機バインダーを添加することにより、溶液の長期安定化と適度な被膜厚さの確保を図ることができる。有機バインダーとしては、PVB(ポリビニルブチラール)が、エタノールに直接可溶することから好ましく、添加量は0.5〜1質量%が作業性から最も好ましい。
(キ)ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタンド(Ln)等の稀土類元素を少量添加することにより、耐酸化性と密着性がより一層向上する。
(ク)白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)のうち少なくとも1種を含有させると、触媒担体が担時され、より高温側に適用することで、排気ガス浄化性能の向上に寄与することができる。
(ケ)部分安定化ジルコニア、アルミナ、チタニア、ランタン(La)−ジルコニウム(Zr)系酸化物、ストロンチウム(Sr)−ニオブ(Nb)系酸化物等の微粒子又は繊維質体を添加することにより、遮熱効果が高まり、耐酸化性能を向上することもできる。
【0016】
前駆体溶液の塗布方法としては、特に限定されないが、前駆体溶液に浸漬する方法、前駆体溶液をスプレーで吹き付ける方法等を例示できる。塗布後の乾燥温度は、200〜500℃が好ましく、250〜350℃が特に好ましい。200℃未満であると、付着した前駆体溶液(シリカ溶液等)分子中の水酸基の重縮合反応を進めるのに不十分で、密着性が劣り、350℃を超えると、エネルギー効率と生産性が低下し、コストが顕著に高くなる。
【0017】
より具体的には、内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法において、インナーパイプに吸音材繊維としてのステンレス繊維を嵩密度50〜500kg/m3 に巻設して一体化した後、この一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維に、同時に化学溶液法によりセラミックス被膜を被覆することが好ましい。ステンレス繊維のセラミックス被膜の飛散・脱落・ひび割れを抑制でき、インナーパイプ(及び(有る場合には)溶接部位)も同時に被覆することができるからである。また、インナーパイプに巻設するステンレス繊維の密着性を高めることもできる。なお、ステンレス繊維に化学溶液法によりセラミックス被膜を被覆した後、これをインナーパイプに巻設してもよいが、その場合には、巻設時にステンレス繊維のセラミックス被膜の飛散・脱落・ひび割れが起こるおそれがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る消音器の製造方法によれば、吸音材繊維、インナーパイプ又は溶接部位に、化学溶液法によりサブミクロンの均一なセラミックス被膜を、安価に且つ簡単に被覆することができ、もって優れた耐高温酸化性と耐食性が得られる。
【0019】
上記効果に加え、平均繊維径30〜150μmのステンレス繊維にセラミックス被膜を膜厚0.05〜1μmに被覆することで、吸音性能を損なうことなく、優れた耐高温酸化性と耐食性が得られる。
【0020】
また、テトラエトキシシランを出発原料とするシリカ被膜を採用することで、特に優れた耐高温酸化性能が得られる。
【0021】
また、インナーパイプに所定嵩密度でステンレス繊維を巻設した後、同時に化学溶液法を行うことで、巻設時のセラミックス被膜の飛散・脱落・ひび割れを抑制でき、インナーパイプ及び溶接部位も同時に被覆でき、優れた耐高温酸化性と耐食性を有する消音器を安価に且つ簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法において、インナーパイプに吸音材繊維としての平均繊維径30〜150μmのステンレス繊維を嵩密度50〜500kg/m3 に巻設して一体化した後、この一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維に、同時に化学溶液法によりセラミックス被膜を膜厚0.05〜1μmに被覆する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明をサブマフラーに具体化した実施例について説明する。図2(a)に示すように、サブマフラー1は、多数の通気孔が貫設されたステンレス鋼製のインナーパイプ2と、その外周に巻設された吸音材繊維としてのフェライト系のステンレス繊維3と、ステンレス繊維3を覆いインナーパイプ2に溶接された外管4とからなる。インナーパイプ2は、ステンレス鋼板を曲げて接合部をTIG溶接してなる継ぎ目あり鋼管であり、自身に溶接部位5を有している。溶接部位5の溶接金属はJIS Z3321に規定されているY430である。なお、本発明は、図2(b)に示すような、メインマフラー11のインナーパイプ12や吸音材繊維(図示略)に具体化することもできる。
【0024】
[実施例1] 図1(a)に示すように、平均繊維径80μmに切削加工したSUS434からなるステンレス繊維3をSUS410製のインナーパイプ2に嵩密度400kg/m3 で巻設して一体化した後、この一体化したインナーパイプ2及びステンレス繊維3を、図1(b)に示すように、前駆体溶液Aに浸漬後、軽く振って、図1(c)に示すように、乾燥炉9に入れ250℃にて20分乾燥した。前駆体溶液Aは、テトラエトキシシラン、酢酸及び水を1:3:4のモル比で混合した溶液に、0.5質量%PVBのエタノール溶液を添加し、ホットスターラーを用いて80℃の温度で0.5モル/リットルまで加熱濃縮し作成した。乾燥後、インナーパイプから適量のステンレス繊維を取出して実施例1の供試繊維とした。また、ステンレス繊維を抜取り、インナーパイプを指定サイズに加工して実施例1の供試パイプとした。
【0025】
[実施例2] 実施例1と同様に一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維について、実施例1と同様の浸漬から乾燥までの工程を2回繰返し、2回目の乾燥後、インナーパイプから適量のステンレス繊維を取出して実施例2の供試繊維とした。また、ステンレス繊維を抜取り、インナーパイプを指定サイズに加工して実施例2の供試パイプとした。
【0026】
[実施例3] 実施例1と同様に一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維について、前駆体溶液Bに浸漬後、軽く振って、250℃にて20分乾燥した。前駆体溶液Bは、テトラエトキシシラン、酢酸及び水を1:3:2のモル比で混合した溶液に、1質量%PVBのエタノール溶液を添加し、ホットスターラーを用いて80℃の温度で0.5モル/リットルまで加熱濃縮し作成した。乾燥後、インナーパイプから適量のステンレス繊維を取出して実施例3の供試繊維とした。また、ステンレス繊維を抜取り、インナーパイプを指定サイズに加工して実施例3の供試パイプとした。
【0027】
[実施例4] 実施例1と同様のインナーパイプ及びステンレス繊維について、実施例3と同様の浸漬から乾燥までの工程を2回繰返し、2回目の乾燥後、インナーパイプから適量のステンレス繊維を取出して実施例4の供試繊維とした。また、ステンレス繊維を抜取り、インナーパイプを指定サイズに加工して実施例4の供試パイプとした。
【0028】
[比較例1] 実施例1と同様に一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維について、セラミックス被覆することなく、インナーパイプから適度のステンレス繊維を取出し、比較例1の供試繊維とした。また、セラミックス被覆していないインナーパイプを指定サイズに加工して比較例1の供試パイプとした。
【0029】
[比較例2] 平均繊維径120μmに切削加工したSUS434からなるステンレス繊維をSUS410製のインナーパイプに嵩密度400kg/m3 で巻設して一体化した後、セラミックス被覆することなく、インナーパイプから適度のステンレス繊維を取出し、比較例2の供試繊維とした。
【0030】
[試験1]耐高温酸化性試験
各実施例1〜4及び比較例1,2の供試繊維10.00gを耐熱ルツボに入れ、電気炉にて耐高温酸化性能を測定し比較した。結果を表1に示す。加熱条件は、800℃で20時間加熱後、4時間冷却を1サイクルとし、17サイクル繰返し実施した。表1より明らかなように、本発明に従った各実施例1〜4の供試繊維は、何れも酸化増量が低下しており、優れた耐高温酸化性能を発揮している。これに対し、セラミックスを被覆しない同径の比較例1の供試繊維は、約3倍の酸化量が発生している。また、各実施例1〜4の供試繊維は、平均繊維径が80μmであるにも拘わらず、セラミックスを被覆しない120μmの比較例2と近似しており、比表面積当りの耐高温酸化性能に優れたものである。
【0031】
【表1】

【0032】
[試験2]耐食性試験
各実施例1〜4及び比較例1の供試繊維について、JASO(自動車技術会)M611−92自動車用マフラー内部腐食試験方法により、耐食性を測定し比較した。結果を表2に示す。試験条件は、A法(半浸漬試験)で全含浸とし、24時間毎に液交換し、80℃で試験時間を168hrsとした。表2より明らかなように、本発明に従った各実施例1〜4の供試繊維は、何れも腐食減量が低下しており、耐食性に優れたものである。これに対し、セラミックスを被覆しない比較例1,2の供試繊維は、2〜5倍の腐食が発生している。
【0033】
【表2】

【0034】
[試験3]吸音性試験
各実施例1〜4及び比較例1,2の供試繊維からJIS−A−1405に規定される円板形状の試験片(嵩密度400g/m3 、厚み10mm)を作成し、管内法により、垂直入射吸音率測定法に従って各周波数における吸音率を測定し比較した。結果を表3に示す。表3より明らかなように、本発明に従った各実施例1〜4の供試繊維は、何れも垂直入射吸音率の低下を伴うことなく、吸音性能に優れたものである。なお、膜厚が十分に厚い場合は、ステンレス繊維の繊維径が著しく太くなり、吸音性能が低下する。
【0035】
【表3】

【0036】
[試験4]パイプの耐食性試験
各実施例1〜4及び比較例1の溶接部位5のある供試パイプについて、JASO M611−92 自動車用マフラー内部腐食試験方法により、耐食性を測定し比較した。結果を表4に示す。試験条件は、冷却水循環機能付き半密閉型三角フラスコ中での半浸漬試験で80℃、500時間実施した。サイズは厚み1mmで、外径寸法φ50mmを円弧25mmに、長さ300mmを100mmに後加工した。表4より明らかなように、本発明に従った各実施例1〜4の供試パイプは、何れも腐食減量が低下しており、優れた耐食性を発揮している。これに対し、セラミックスを被覆しない比較例1の供試パイプは、5〜10倍の腐食減量と3倍以上の腐食孔深さが発生している。
【0037】
【表4】

【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施例のサブマフラーの製造方法を示し、(a)は吸音材繊維の巻設時の斜視図、(b)は前駆体溶液への浸漬時の概略図、(c)は乾燥時の概略図である。
【図2】(a)は同サブマフラーの断面図、(b)は別例のメインマフラーの正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 サブマフラー
2 インナーパイプ
3 ステンレス繊維
4 外管
5 溶接部位
9 乾燥炉
11 メインマフラー
12 インナーパイプ
A 前駆体溶液
B 前駆体溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法において、消音器の吸音材繊維、インナーパイプ又は溶接部位に、化学溶液法によりセラミックス被膜を被覆することを特徴とする消音器の製造方法。
【請求項2】
前記吸音材繊維が平均繊維径30〜150μmのステンレス繊維であり、少なくとも該吸音材繊維に前記セラミックス被膜を膜厚0.05〜1μmに被覆する請求項1記載の消音器の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックス被膜がシリカを主成分とするものであり、前記化学溶液法に用いる出発原料をテトラエトキシシランとする請求項1又は2記載の消音器の製造方法。
【請求項4】
内燃機関の排気系に設けられる消音器の製造方法において、インナーパイプに吸音材繊維としてのステンレス繊維を嵩密度50〜500kg/m3 に巻設して一体化した後、この一体化したインナーパイプ及びステンレス繊維に、同時に化学溶液法によりセラミックス被膜を被覆することを特徴とする消音器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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