説明

液ダレ防止チェック弁

【課題】従来のチェック弁の構造を改善して真空雰囲気中で直接注液動作を行う際に発生していた液ダレを防止する。
【解決手段】本体50の内側には入口開口部A縁辺に肩がかかる鍔部51と出口開口部B縁辺に肩がかかる圧縮コイルばね52を収容し、鍔部51と出口開口部B端面の間に圧縮コイルばね52を挿嵌して鍔部51を入口開口部A側に付勢する。鍔部51は、軸心に引張部材53を挿通し、引張部材53は、一端に抜け止め54を設け、他端に弁体としてのボール55を一体に接続する。出力ポートP2の出口開口部縁辺にはゴムなどの弾性体で形成した弁座(ボールシート)56を設け、閉弁時は弁座56にボール55を当接して出力ポートP2の出口開口部を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプとニードルの間に設けて注液の逆流を阻止するチェック弁に関し、特に真空雰囲気中で直接注液動作を行う際に発生していた液ダレを防止する液ダレ防止チェック弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチェック弁は、図5に示すように、ポンプ側の弁7の入口もしくは途中の上流側に開閉部8を設けていたため、注液を停止して開閉部8を閉じた後、上流側は閉塞されるが下流側は開放されたままになっている。
そのため開閉部8より下流側の弁7内に残留した注液は真空の影響を受けて注液完了後にニードル側の弁7の出口から漏出し、液ダレを起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、従来のチェック弁の構造を改善して真空雰囲気中で直接注液動作を行う際に発生していた液ダレを防止することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上流側入口開口部と下流側出口開口部にそれぞれ入力ポートと出力ポートを連接するチェック弁において、前記出力ポートの出口に開閉部の一方を構成する弁座を設け、開閉部の他方を構成する弁体には引張部材の一端を接続し、引張部材の他端には上流側入口開口部に係止する鍔部を接続し、鍔部と下流側出口開口部の間には鍔部を上流側に付勢するバネを挿嵌し、これより開弁時は前記出力ポートの出口にかかる液圧で弁体が弁座から離れ、閉弁時は前記鍔部にかかるバネ圧で弁体が弁座に当接するようにしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、従来の弁の構造を改善して開閉部を最も下流に位置する出力ポートの出口に持ってこられるようにしたので、注液停止後は弁の最下流部が閉塞され、弁内に残留した注液の漏出がなくなる。その結果、従来真空雰囲気中で直接注液動作を行う際に発生していた液ダレを防止できる
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明を実施したシリンジポンプの構成図である。
【図2】本発明を実施したチェック弁の断面概略図である。
【図3】鍔部の平面図である。
【図4】図2とは別のチェック弁の断面概略図である。
【図5】従来のチェック弁の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1に、本発明を実施したシリンジポンプの構成図を示す。
シリンジポンプは、中空のシリンジ1内に円筒形のプランジャ2を挿嵌してポンプ3を形成し、ポンプ3出口に接続した配管4にチェック弁5を介してニードル6を着脱可能に取り付ける。
ポンプ3は、シリンジ1内のプランジャ2を往復運動させるアクチュエータ(不図示)を制御してシリンジ1内に充填した材料aを定量吐出する。
チェック弁5は、ポンプ3の配管4とニードル6の間に配置して真空雰囲気中で直接材料aを吐出する際に発生する液ダレを防止する。
ニードル6は、材料aをより狭小な空間に吐出するために使用する。
【0009】
図2に、本発明を実施したチェック弁の断面概略図を示す。
図2(a)は閉弁時の状態を表し、図2(b)は開弁時の状態を表す。
チェック弁5は、中空円筒状の本体50の上流側(ポンプ3側)入口開口部Aと下流側(ニードル6側)出口開口部Bにそれぞれ入力ポートP1と出力ポートP2を連接して入力ポートP1と出力ポートP2が一直線上に並ぶインラインチェック弁を形成する。
本体50の内側には入口開口部A縁辺に肩がかかる鍔部51と出口開口部B縁辺に肩がかかる圧縮コイルばね52を収容し、鍔部51と出口開口部B端面の間に圧縮コイルばね52を挿嵌して鍔部51を入口開口部A側に付勢する。
鍔部51は、軸心に引張部材53を挿通し、引張部材53は、一端に抜け止め54を設け、他端に弁体としてのボール55を一体に接続する。
出力ポートP2の出口開口部縁辺にはゴムなどの弾性体で形成した弁座(ボールシート)56を設け、閉弁時は弁座56にボール55を当接して出力ポートP2の出口開口部を閉塞する。弾性体の弁座56に替え、金属製のOリングを設け、これにボール55を当接して出力ポートP2の出口開口部をシールしてもよい。
【0010】
鍔部51は、図3に示すように、軸心の円周上に多数の通孔sを穿ち、材料aの流通を自由にする。
圧縮コイルばね52は、材料aの通しはじめの圧力、すなわちクラッキング圧力を決めるもので、ばねの強弱によってクラッキング圧力を調整して使用することができる。
引張部材53は、棒の他に引っ張っても伸び縮みしない鎖、針金、紐などの部材であってもよい。
また、図2には弁体をボール55としているが、本発明は弁体をボール55に限定するものではない。
【0011】
本発明を実施したチェック弁は以上のような構成で、ポンプ3を作動するとチェック弁5内に材料aが流入し、材料aの吐出圧力でボール55が下流側へ変位して弁座56から離れ、ボール55と弁座56の隙間に流路ができてポンプ3側からニードル6側へ材料aが流出する。これによりチェック弁5が開弁する。
このとき引張部材53を介してボール55に引っ張られた鍔部51も下流側へ変位し、図2(b)に示すように、圧縮コイルばね52を押圧して圧縮させる。
【0012】
ポンプ3を停止すると材料aの吐出圧力が消滅し、図2(a)に示すように、鍔部51により圧縮された圧縮コイルばね52が元に戻り、鍔部51が付勢されて入口開口部A端面に係止する。
このとき引張部材53を介して鍔部51に引っ張られたボール55が弁座56に当接し、材料aの流路を閉じた状態になる。これによりチェック弁5が閉弁する。
【0013】
図4に、その他の実施例としてエアーで開閉するチェック弁の断面概略図を示す。
図4(a)は閉弁時の状態を表し、図4(b)は開弁時の状態を表す。
チェック弁9は、中空円筒状の本体90の側面入口開口部Aと底面出口開口部Bにそれぞれ入力ポートP1と出力ポートP2を連接して材料aの流れ方向を直角に変換するアングルチェック弁を形成する。
本体90の内側には仕切板91を設置してエアー室rを設け、エアー室r内にエアーで作動するプランジャ92を収容する。
エアー室rは、上面開口部Cと側面開口部Dにそれぞれエアーの出入ポートP3、P4を連接し、そこからエアーを出し入れしてプランジャ92を往復動させる。
プランジャ92は、仕切板91を貫通するシャフト93の一端を接続し、シャフト93の他端に弁体としてのボール94を一体に接続する。
出力ポートP2の出口開口部縁辺には弁座(ボールシート)95を設け、閉弁時は弁座95にボール94を当接して出力ポートP2の出口開口部を閉塞する。
【0014】
エアーで開閉するチェック弁は以上のような構成で、出入ポートP3、P4からエアーを供給・排出してプランジャ92を押し下げると、図4(b)に示すように、プランジャ92に連結するシャフト93、ボール94が下流側へ変位し、ボール94が弁座95から離れてシールを解除する。これによりチェック弁9が開弁する。
【0015】
出入ポートP4、P3からエアーを供給・排出してプランジャ92を押し上げると、図4(a)に示すように、プランジャ92に連結するシャフト93、ボール94が上流側へ変位し、ボール94が弁座95に当接して出力ポートP2の出口をシールする。これによりチェック弁9が閉弁する。
【符号の説明】
【0016】
1 シリンジ
2 プランジャ
3 ポンプ
4 配管
5 チェック弁
50 本体
51 鍔部
52 圧縮コイルばね
53 引張部材
54 抜け止め
55 ボール
56 弁座
6 ニードル
7 弁
8 開閉部
9 チェック弁
90 本体
91 仕切板
92 プランジャ
93 シャフト
94 ボール
95 弁座
A 入口開口部
B 出口開口部
C 上面開口部
D 側面開口部
P1 入力ポート
P2 出力ポート
P3 出入ポート
P4 出入ポート
a 材料
r エアー室
s 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側入口開口部と下流側出口開口部にそれぞれ入力ポートと出力ポートを連接するチェック弁において、
前記出力ポートの出口に開閉部の一方を構成する弁座を設け、
開閉部の他方を構成する弁体には連結部材の一端を接続し、
連結部材の他端には往復動する可動体を接続し、
これより開弁時は前記可動体の往動で弁体が弁座から離れ、
閉弁時は前記可動体の復動で弁体が弁座に当接するようにしたことを特徴とする液ダレ防止チェック弁。
【請求項2】
上流側入口開口部と下流側出口開口部にそれぞれ入力ポートと出力ポートを連接するチェック弁において、
前記出力ポートの出口に開閉部の一方を構成する弁座を設け、
開閉部の他方を構成する弁体には引張部材の一端を接続し、
引張部材の他端には上流側入口開口部に係止する鍔部を接続し、
鍔部と下流側出口開口部の間には鍔部を上流側に付勢するバネを挿嵌し、
これより開弁時は前記出力ポートの出口にかかる液圧で弁体が弁座から離れ、
閉弁時は前記鍔部にかかるバネ圧で弁体が弁座に当接するようにしたことを特徴とする液ダレ防止チェック弁。
【請求項3】
前記弁体はボールで、前記弁座はボールシートであることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項4】
前記引張部材は棒、鎖、針金、紐のうちのいずれかであることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項5】
前記鍔部は多孔板であることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項6】
前記鍔部は前記上流側入口開口部縁辺に肩がかかる大きさであることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項7】
前記バネは圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項8】
前記バネは前記下流側出口開口部縁辺に肩がかかる大きさであることを特徴とする請求項2記載の液ダレ防止チェック弁。
【請求項9】
上流側入口開口部と下流側出口開口部にそれぞれ入力ポートと出力ポートを連接するチェック弁において、
前記出力ポートの出口に開閉部の一方を構成する弁座を設け、
開閉部の他方を構成する弁体にはシャフトの一端を接続し、
シャフトの他端にはエアーで往復動するプランジャを接続し、
これより開弁時は前記プランジャの往動で弁体が弁座から離れ、
閉弁時は前記プランジャの復動で弁体が弁座に当接するようにしたことを特徴とする液ダレ防止チェック弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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