説明

液体に速やかに溶解できる固体膜

【課題】液体、特に生体液に速やかに溶解することができ、薬学的、化粧用および栄養的物質を放出する固体膜を提供すること。
【解決手段】この固体膜は、有機生体液にも可溶で、瘢痕化、殺菌性および化粧用物質を放出することにより、人体の創傷を防護する。この膜は香味物質を湿気を含む栄養生成物上に直接放出する目的に使用することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の薬学的治療、化粧的処置または栄養補給の目的、もしくは芳香物質および類似物質をヒトの栄養となる製品に放出する目的に利用可能な、液体に速やかに溶解できる固体膜に関する。この膜は獣医学分野にも適用することができる。
【0002】
あらゆる投与方法の中で、経口薬物投与は恐らく患者および臨床医の両方から好まれている方法である。しかし直接経口薬物投与には、いくつかの欠点がある(例えば、肝初回通過代謝および一定の薬物クラス、特にペプチドおよびタンパク質に対して、この種の投与を妨げる消化管内における酵素劣化など)。この結果、他の吸収粘膜が薬物投与部位候補として検討されている。
【0003】
経粘膜ルート(特に直腸、膣、眼および口腔からの投与)には、経口ルートに比べて様々な利点がある。これらの利点として、具体的には、肝初回通過の迂回および消化管での全身化前の除去の回避が可能であること、特定の薬物に対して、吸収により適した酵素フローラが存在すること等が挙げられる。直腸、膣および眼の粘膜には、いくつかの利点があるが、患者にあまり受容されていないため、これらは全身投与ではなく、局所投与にのみ有用であることを意図する。対照的に、口腔は患者に十分に受容されており、この粘膜は比較的透過性を備え、豊富に血液が供給され、強力であり、ストレスまたは損傷の後、短時間で回復を示す。さらに、ランゲルハンス細胞が存在しないため、口腔粘膜は潜在的アレルゲンに対する耐性を有する。これらの要因のため、口腔は薬物、ならびに化粧品および栄養品の全身的放出のための部位として非常に関心を集めている。
【背景技術】
【0004】
一般に、口腔粘膜は表皮と腸粘膜との間の一種の中間的上皮組織を表し、歯痛、細菌感染症、真菌症、アフタおよび歯原性口内炎の速やかで、有効な治療を可能にする。前述のことは、口腔粘膜が重要な投与ルートの1つになっていることを意味し、この結果、様々な処方が開発されてきた。これらの処方として、具体的には、接着剤錠剤、ゲル剤、軟膏、パッチおよびより最近では固体膜が挙げられる。ポリマー膜は錠剤を極端な環境から防護する、錠剤の見かけを良くする、不快な味を隠す、薬物の放出を制御するなどの目的で、錠剤を被覆する処方として広く使われた(Peh,KKおよびWong、J.Pharm.Pharmaceut.Sci.2(2)、53−61頁、1999年)。可食性膜を製造する技術の開発は、将来の重要課題の1つになっており、この用途は上記の機能を超えて広がりつつある。この点で、口腔膜は快適性および柔軟性の見地から、接着剤錠剤よりも好まれ始めている。この膜は創傷の表面を簡単に防護して、痛みを軽減すること等ができ、口腔疾患をより効果的に治癒することもできる(Peh、1999年)。さらに可食性膜は、適切な薬物用量を自己投与するのが難しい高齢者および子どもの場合により適している。これらのデバイスを使うことで、窒息の危険を減らし、患者のコンプライアンスを高めることができる。「可食性」という用語は、医薬および栄養補給用途での使用向けに規制当局が承認している食品グレードの素材に適用される(Augello、米国特許第6,723,342号明細書)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,723,342号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Peh,KKおよびWong、J.Pharm.Pharmaceut.Sci.2(2)、53−61頁、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、薬学的、化粧用および/または薬草(例えば、栄養補助食品)活性成分の媒体として利用可能な可食性固体膜を提供することである。主に必要とされることは、活性生成物をこれらの活性を発現させるのに十分なパーセンテージで挿入可能にするような、単純な構造を有する固体膜を実現することである。
【0008】
求められる固体膜の主な特性は以下の通りである。
−操作性(結果としてエネルギーの節約をもたらす簡単、迅速な調製)、
−膜に挿入する1つまたは複数の活性生成物と独立した、展開パラメーター(温度、換気、速度等)の標準化、
−膜の柔軟性および可塑性(脆弱な膜は扱いにくく、全ての製造ステップ、例えば打ち抜きを受けることは難しい。)、
−平面性(展開ステップ後に丸まる傾向のある膜は、以降の製造ステップに回すことはできない。)、
−粉末活性生成物を膜に挿入可能であること(このような活性生成物の挿入は、しばしば膜を脆弱にする。)、
−均一性(空気を取り込む傾向のある膜は脆弱なだけでなく、1つまたは複数の活性生成物を均一に分布するように膜に挿入することができない。)。
【0009】
前述の目的を達成するために、取り込まれている1つまたは複数の活性生成物を非常に短時間で放出することのできる、液体、特に唾液またはヒトの有機液体一般と接触した際に速やかに溶解できる固体膜が提供された。放出は特に口腔粘膜を通じた吸収によって全身的または投与部位で局所的に行われる。投与部位はやはり口腔粘膜もしくはその他の粘膜または皮膚とすることができる。
【0010】
この膜は、同じく簡単で効果的に、化粧用生成物、栄養的生成物、芳香物質および瘢痕形成薬等を取り込んで、放出できることも発見された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、パーセンテージを完成した固体膜の重量に対する重量として、アルギン酸ナトリウムを25%ないし60%、微結晶性セルロースを0.1%ないし20%、植物性タンパク質(例えば、マメ科植物由来または穀物由来)を0.1%ないし25%含み、固体膜が60ないし150μmの厚さを有し、水分活性(A)、すなわち、混合物中、特に固体膜中に存在する水分の蒸気圧の、同じ温度における純水の蒸気圧に対する比が0.1ないし0.3になるような量の水を含むことを特徴とする、人体または動物の治療のためおよび栄養補給用途のための、液体に速やかに溶解できる固体膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい態様によれば、前述の膜は、乳化生成物、乳化剤/質感付与剤、可塑剤/湿潤剤、膜形成剤、芳香剤、薬理活性生成物、化粧活性生成物および栄養補給性生成物からなる群から選択された少なくとも1つの物質を含む。好ましくは、前述の乳化生成物および乳化剤/質感付与剤は、ポリオキシエチレン誘導体(例えば、ポリソルベート60、ポリソルベート80)、天然ゴム(例えば、イナゴ豆種子粉、アラビアゴム)、天然乳化剤(例えば、ゼラチン)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース)およびでんぷん(例えば、トウモロコシおよびジャガイモ)からなる群から選択される。好ましくは、前述の薬剤はポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール)および酢酸のグリセロールとのエステル(グリセリルトリアセテート)からなる群から選択される。好ましくは、前述の膜形成性物質はGAGとしても知られるグリコサミノグリカン、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸)およびプルラン等の水溶性多糖類からなる群から選択される。
【0013】
前述の膜の可溶化時間は好ましくは10秒と20秒の間である。
【0014】
アルギン酸ナトリウムは、製薬および栄養産業において広く使用されている、膜形成特性および乳化特性を備えた、よく知られた物質であり、水溶性のアルギン酸塩であり、褐藻の全ての種に存在する、無毒の多糖類である。アルギン酸ナトリウムは、固体膜の重量の30%から50%の量で存在することが好ましい。
【0015】
微結晶性セルロースは増粘/安定化および乳化機能を有し、無味無臭の白色結晶性粉末の形態をした、精製され、部分的に解重合されたセルロースである。微結晶性セルロースの特性および調製方法はよく知られている。
【0016】
微結晶性セルロースは、溶媒の蒸発後、(総重量に対し)重量で0.1%から20%、好ましくは2.5%から11%の量で完成した膜に存在する。
【0017】
本発明の膜に使われる植物性タンパク質は、例えば、押出し成形として知られている方法により製造される栄養製品領域、朝食用シリアルおよび菓子製品類等の中で乳化剤/質感付与剤として一般に使われているものとすることができる。好ましくはマメ科植物または穀物に由来する、より好ましくはエンドウ豆に由来する植物性タンパク質を挿入することで、0.1ないし0.3のA値を達成しやすくなり、生成物を乾燥させて、膜の機械的特性、特にこの柔軟性を劣化させる必要なく、また、望ましくない可能性もある他の種類の物質を挿入することなく、生成物を保存することが可能になる。これらの植物性タンパク質は、溶媒の蒸発後、完成品の重量の0.1%から25%、好ましくは5%から15%の量で存在する。
【0018】
本発明の固体製剤は、好ましくは以下の群から選択された少なくともさらに1つの成分を含む。
−ポリソルベート60およびポリソルベート80等のポリオキシエチレン誘導体を含む群から選択され、溶媒の蒸発後、完成品の重量の0%から20%、好ましくは5%から12%の量で存在する乳化物質。
−グリセリンおよびソルビトール等のポリオール類(これは複数個の水酸基を含有する化合物を指す。)に属し、溶媒の蒸発後、完成品の重量の0%から50%、好ましくは15%から45%の量で存在する湿潤/可塑物質。
−でんぷん類に関係する乳化剤/質感付与剤。でんぷんはこの物理化学的特性および機能的特性のために、栄養補給技術においても同様に重要な役割を果たす。でんぷん類はソースやスープの粘度を高めるための増粘剤として、ゲルまたは乳化安定剤として、結合剤として、および水と結合することができるため充填剤として使われている。食品業界において、主要な5つのでんぷん源は、トウモロコシ、ジャガイモ、米、タピオカおよび小麦である。これらの物質は、溶媒の蒸発後、完成品の重量の0%から5%、好ましくは1%から4%の量で存在することができる。
【0019】
本発明に従って得られる固体組成物は、60と150μmの間の厚さを有する固体膜の形態で製造することができ、医薬品、化粧品および栄養補助食品の分野で通常使われている活性成分を運搬することができる。
【0020】
前述の固体膜は、良好な寸法安定性を備えており、それぞれの用途(医薬品/栄養補助食品)に応じた最適な形式に打ち抜きまたは切断することができる。
【0021】
前述の固体組成物は次の方法で得ることができる。完成品に付与する特性に基づいて選択した前述の組成物を、50℃と70℃の間の温度に予熱した水を入れたミキサーで徐々に分散させる。混合物が均一になるまで、攪拌し続ける。
【0022】
次いで、塊の形成を防ぐために、ゆっくりと混合しながら、アルギン酸ナトリウムおよび微結晶性セルロースを徐々に入れる。
【0023】
ゆっくりと攪拌しながら(約30℃まで)冷却し、生成物の官能特性をチェックした後、得られた塊体をドクターブレードを使用して、支持体ベルトのシリコーン被覆した表面上に180ないし270μmの厚さの膜の形態に拡げる。この支持体ベルトは、温度を最高120℃まで上昇させる複数の連続加熱ステーションを有し、最終ステーションが最も低い温度、すなわち、60℃ないし90℃に設定されている、換気トンネル炉を通過する。炉の出口で、60ないし150μmの厚さを有する固体膜が支持体ベルトから剥離し、周囲温度に冷却後、必要とされる形状および寸法に打ち抜き、単位部分に分割する。
【0024】
次いで、得られた単位部分を、使用時にそこから引き出し可能な最終パッケージ中に挿入することができる。
【0025】
前述のプロセスを最適化するために、加熱されたトンネル炉は、少なくとも1つの可変温度乾燥ステーションを有する必要があり、より好ましくは4つの連続ステーションを有し、この第1は、60℃ないし80℃の温度に、第2および第3は70℃ないし90℃の温度に、第4は60℃ないし80℃の温度に加熱する。
【0026】
本発明の固体組成物の特性およびこれらの製造方法は、以下に記載する、いくつかの非制限的実施形態の説明によってより明確になる。
【0027】
(実施例)
【実施例1】
【0028】
皮膚の小さな創傷のための瘢痕化膜形成作用を有する固体膜の製造
本発明に従って(固体膜の形態をした)組成物を調製するために、以下の成分を使用する。
【0029】
【表1】

【0030】
操作方法
以下のステップを連続的に実施する。
【0031】
A) 成分5(ポリソルベート80)および6(グリセリン)を、50℃ないし70℃に予熱した水1を入れたミキサーの中で攪拌下に分散させ、成分が完全に溶解するまで攪拌を続ける。
【0032】
B) 成分2(アルギン酸ナトリウム)、3(微結晶性セルロース)および4(植物性タンパク質)を徐々に入れ、成分が完全に分散し、ゲルが均一になるまで、この混合物をゆっくりとした攪拌により30分間攪拌する。
【0033】
C) 攪拌下で、徐冷を開始し、25℃まで冷却する。混合物が均一になるまで攪拌を続ける。
【0034】
D) なおも攪拌下で、蠕動ポンプを使用して、得られた混合物を30℃に加熱したドクターブレード上に供給し、次いでシリコンを被覆したポリエステル製ベルト支持体上で200μm厚の膜に形成する。膜形成の間、換気トンネル炉を使用し、これに備わった4つの連続加熱ステーションの温度はそれぞれ70/80/80/70℃とする。
【0035】
E) 炉の出口において、80μm厚の膜(水分蒸発後)がポリエステル製支持体から自動的に剥離する。
【0036】
F) ローラーパンチを使用して、膜を寸法3×2cmの長方形に打ち抜く。
【0037】
G) これらの長方形を固体組成物の調剤メカニズムとして作用する密閉容器に自動的に入れる。
【0038】
完成した固体膜の特性
1単位(寸法3×2cm)の重量 47mg
厚さ 80μm
(水分活性、すなわち、組成物中に存在する水分の蒸気圧と、同じ温度における純水の圧との比) 0.3
アルギン酸ナトリウム 47.29%
微結晶性セルロース 9.24%
植物性タンパク質 5.43%
ポリソルベート80 10.87%
グリセリン 27.17%
(パーセンテージは、完成した固体膜の総重量に対する重量である。)。
【0039】
得られた膜を約6cmのシート状に打ち抜き、膜を得て、少なくとも10枚を収容することができるプラスチック容器に入れる。この容器は、適切なラベル添付および密閉により販売用に作製されている。
【0040】
アルギン酸塩および微結晶性セルロースが小さな創傷の滲出液と接触すると、溶解して一種のゲルを形成し、創傷を塞ぎ、これにより瘢痕化を促進するので、このように形成された生成物は小さな創傷に特に有用である。
【実施例2】
【0041】
アフタ治療のための瘢痕化膜形成作用を有する固体膜の製造
本発明による(固体膜の形態をした)組成物を調製するために、以下の成分を使用する。
【0042】
【表2】

【0043】
操作方法
以下のステップを連続的に実施する。
【0044】
A) 成分5(ポリソルベート80)、6(グリセリン)、7(ソルビトール70%)および9(ヒアルロン酸)を、50℃ないし70℃に予熱した水1を入れたミキサーの中で攪拌下に分散させ、塊のない透明ゲルが得られるまで、攪拌を続ける(成分9(ヒアルロン酸)が完全に分散したことを確認する。)。
【0045】
B) 成分2(アルギン酸ナトリウム)、3(微結晶性セルロース)および4(植物性タンパク質)を徐々に入れ、成分が完全に分散し、ゲルが均一になるまで、この混合物をゆっくりとした攪拌により30分間攪拌する。
【0046】
C) 攪拌下で、徐冷を開始し、25℃まで冷却し、次いで成分8(香味料)を添加する。混合物が均一になるまで攪拌を続ける。
【0047】
D) なおも攪拌下で、蠕動ポンプを使用して、得られた混合物を30℃に加熱したドクターブレード上に供給し、次いでシリコンを被覆したポリエステル製ベルト支持体上で200μm厚の膜に形成する。膜形成の間、換気トンネル炉を使用し、これに備わった4つの連続加熱ステーションの温度はそれぞれ65/70/75/80℃とする。
【0048】
E) 炉の出口において、67μm厚の膜(水分蒸発後)がポリエステル製支持体から自然と剥離する。
【0049】
F) ローラーパンチを使用して、膜を寸法3×2cmの長方形に打ち抜く。
【0050】
G) これらの長方形を固体組成物の小出し機構として作用する密閉容器に自動的に入れる。
【0051】
完成した固体膜の特性
1単位(寸法3×2cm)の重量 45mg
厚さ 67μm
(水分活性、すなわち、組成物中に存在する水分の蒸気圧と、同じ温度における純水の圧との比) 0.1
アルギン酸ナトリウム 34.92%
微結晶性セルロース 2.50%
植物性タンパク質 9.97%
ポリソルベート80 9.97%
グリセリン 24.94%
ソルビトール70% 8.73%
ミント香味料 4.98%
ヒアルロン酸 3.99%
(パーセンテージは、完成した固体膜の総重量に対する重量である。)。
【0052】
得られた膜を約6cmのシート状に打ち抜き、膜を得て、少なくとも10枚のシートを収容することができるプラスチック容器に入れる。この容器は、適切なラベル添付および密閉により販売用に作製されている。
【0053】
アルギン酸塩および微結晶性セルロース、しかし特にヒアルロン酸が口腔粘膜と接触すると、これらの成分がアフタ感染の障壁となる膜を形成するように構造化し、迅速に治療を促すため、このようにして作製された生成物は口腔感染症に特に有用である。
【実施例3】
【0054】
メラトニンを含有する固体膜の製造
本発明による組成物(固体膜の形態をした)を調製するために、以下の成分を使用する。
【0055】
【表3】

【0056】
操作方法
A) 成分5(ポリソルベート60)、6(グリセリン)および7(ソルビトール70%)を、50℃と70℃の間に予熱した水1を入れたミキサーの中で攪拌下に分散させ、成分が完全に溶解するまで攪拌を続ける。
【0057】
B) 成分2(アルギン酸ナトリウム)、3(微結晶性セルロース)、4(植物性タンパク質)および8(メラトニン)を徐々に入れ、成分が完全に分散し、ゲルが均一になるまで、この混合物をゆっくりとした攪拌により30分間攪拌する。
【0058】
C) 攪拌下で、徐冷を開始し、25℃まで冷却し、混合物が均一になるまで攪拌を続ける。
【0059】
D) なおも攪拌下で、蠕動ポンプを使用して、得られた混合物を30℃に加熱したドクターブレード上に供給し、次いでシリコンを被覆したポリエステル製ベルト支持体上で200μm厚の膜に形成する。膜形成の間、換気トンネル炉を使用し、これに備わった4つの連続加熱ステーションの温度はそれぞれ60/70/70/80℃とする。
【0060】
E) 炉の出口において、70μm厚の膜(水分蒸発後)がポリエステル製支持体から自然と剥離する。
【0061】
F) ローラーパンチを使用して、膜を寸法3×2cmの長方形に打ち抜く。
【0062】
G) これらの長方形を固体組成物の調剤メカニズムとして作用する密閉容器に自動的に入れる。
【0063】
完成した固体膜の特性
1単位(寸法3×2cm)の重量 40mg
厚さ 70μm
(水分活性、すなわち、組成物中に存在する水分の蒸気圧と、同じ温度における純水の圧との比) 0.2
アルギン酸ナトリウム 42.68%
微結晶性セルロース 9.47%
植物性タンパク質 11.84%
ポリソルベート60 9.48%
グリセリン 4.74%
ソルビトール70% 9.95%
メラトニン 11.84%
(パーセンテージは、完成品の総重量に対する重量である。)。
【0064】
得られた膜を約6cmのシート状に打ち抜いてデバイスを得て、これらのデバイスを少なくとも10枚収容することができるプラスチック容器に入れる。この容器は、適切なラベル添付および密閉により販売用に作製されている。
【0065】
このようにして作製された生成物は、大脳の弛緩およびこの結果、睡眠を促進する天然のプロモーターであるメラトニンの迅速投与に特に有用である。遥かに長時間を要する胃壁での消化を必要とする錠剤またはオペルキュラム(operculum)の場合に起きる効果とは対照的に、口腔吸収による迅速投与は有効であり、即時に効果が現われることが確実なため、特に睡眠の初期段階で有用である。
【実施例4】
【0066】
香味を添加した固体膜の製造
本発明による組成物(固体膜の形態をした)を調製するために、以下の成分を使用する。
【0067】
【表4】

【0068】
操作方法
以下のステップを連続的に実施する。
【0069】
A) 成分5(ポリソルベート80)、7(グリセリン)および8(ソルビトール70%)を、50℃ないし70℃に予熱した水1を入れたミキサーの中で攪拌下に分散させ、成分が完全に溶解するまで攪拌を続ける。
【0070】
B) 成分2(アルギン酸ナトリウム)、3(微結晶性セルロース)、4(植物性タンパク質)および6(コーンスターチ)を徐々に入れ、成分が完全に分散し、ゲルが均一になるまで、この混合物をゆっくりとした攪拌により30分間攪拌する。
【0071】
C) 攪拌下で、徐冷を開始し、25℃まで冷却し、次いで成分9(香味料)を添加し、混合物が均一になるまで攪拌を続ける。
【0072】
D) なおも攪拌下で、蠕動ポンプを使用して、得られた混合物を30℃に加熱したドクターブレード上に供給し、次いでシリコンを被覆したポリエステル製ベルト支持体上で200μm厚の膜に形成する。膜形成の間、換気トンネル炉を使用し、これに備わった4つの連続加熱ステーションの温度はそれぞれ60/70/70/80℃とする。
【0073】
E) 炉の出口において、75μm厚の膜(水分蒸発後)がポリエステル製支持体から自然と剥離する。
【0074】
F) ローラーパンチを使用して、膜を寸法3×2cmの長方形に打ち抜く。
【0075】
G) これらの長方形を固体組成物の調剤メカニズムとして作用する密閉容器に自動的に入れる。
【0076】
得られた固体デバイスの特性
1単位(寸法3×2cm)の重量 50mg
厚さ 80μm
(水分活性、すなわち、組成物中に存在する水分の蒸気圧と、同じ温度における純水の圧との比) 0.3
アルギン酸ナトリウム 30.39%
微結晶性セルロース 7.59%
ポリソルベート80 5.06%
グリセリン 25.32%
ソルビトール70% 8.86%
植物性タンパク質 15.19%
コーンスターチ 2.53%
サフランチンキ 5.06%
(パーセンテージは、完成品の総重量に対する重量である。)。
【0077】
得られた膜を約6cmのシート状に打ち抜いてデバイスを得て、これらのデバイスを少なくとも10枚収容することができるプラスチック容器に入れる。この容器は、適切なラベル添付および密閉により販売用に作製されている。
【0078】
このようにして作製されたデバイスは、特に料理および料理用調製品に香味を加えるのに有用であり、膜が速やかに溶解できるため、香味を料理全体に素早く適切に分散させることを確実とする。寸法のより大きな膜を作製し、香味が増すように、調理済みの食品または調理予定の食品を完全に包むようにすることができる。
【実施例5】
【0079】
止瀉剤を含有する薬用固体膜の製造
本発明による組成物(固体膜の形態をした)を調製するために、以下の成分を使用する。
【0080】
【表5】

【0081】
操作方法
以下のステップを連続的に実施する。
【0082】
A) 成分5(ポリソルベート80)、6(グリセリン)および7(ソルビトール70%)を、50℃と70℃の間に予熱した水1を入れたミキサーの中で攪拌下に分散させ、成分が完全に溶解するまで攪拌を続ける。
【0083】
B) 成分2(アルギン酸ナトリウム)、3(微結晶性セルロース)および4(植物性タンパク質)を徐々に入れ、成分が完全に分散し、ゲルが均一になるまで、この混合物をゆっくりとした攪拌により30分間攪拌する。
【0084】
C) 攪拌下で、徐冷を開始し、25℃まで冷却し、次いで成分8(エチルアルコール)に9(塩酸ロペラミド)を加えて形成した混合物を添加し、混合物が均一になるまで攪拌を続ける。
【0085】
D) なおも攪拌下で、蠕動ポンプを使用して、得られた混合物を30℃に加熱したドクターブレード上に供給し、次いでシリコンを被覆したポリエステル製ベルト支持体上で200μm厚の膜に形成する。膜形成の間、換気トンネル炉を使用し、これに備わった4つの連続加熱ステーションの温度はそれぞれ70/80/80/70℃とする。
【0086】
E) 炉の出口において、65μm厚の膜(水分蒸発後)がポリエステル製支持体から自然と剥離する。
【0087】
F) ローラーパンチを使用して、膜を寸法3×2cmの長方形に打ち抜く。
【0088】
G) これらの長方形は、固体組成物の調剤メカニズムとして作用する密閉容器に自動的に入れられるデバイスを形成する。
【0089】
完成した固体膜の特性
1単位(寸法3×2cm)の重量 40mg
厚さ 65μm
(水分活性、すなわち、組成物中に存在する水分の蒸気圧と、同じ温度における純水の圧との比) 0.3
アルギン酸ナトリウム 37.28%
微結晶性セルロース 7.26%
ポリソルベート80 8.57%
グリセリン 21.41%
ソルビトール70% 7.49%
植物性タンパク質 12.85%
塩酸ロペラミド 5.14%
(パーセンテージは、完成品の総重量に対する重量である。)。
【0090】
得られた膜を約6cmのシート状に打ち抜いてデバイスを得て、これらのデバイスを既知のプロセスにより、光、湿気および酸素に対する適切な障壁を提供できる包装材の中に入れて、封印する。
【0091】
迅速な舌下吸収により、口内で基質が迅速に溶解するため、薬物が即座に放出され、素早く作用できるので、このようにして作製された膜は急性の下痢発作の場合に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完成した固体膜の重量に対する重量のパーセンテージとして、アルギン酸ナトリウムを25%ないし60%、微結晶性セルロースを0.1%ないし20%、植物性タンパク質を0.1%ないし25%含み、および水分活性(A)が0.1ないし0.3になるような量の水を含み、固体膜が60ないし150μmの厚さを有することを特徴とする、人体の治療のためおよび栄養補給用途のための、液体に速やかに溶解できる固体膜。
【請求項2】
溶解時間が10秒ないし20秒であることを特徴とする、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
乳化生成物、乳化剤/質感付与剤、可塑剤/湿潤剤、膜形成剤、芳香剤、薬理活性生成物、化粧活性生成物および栄養補給性生成物からなる群から選択された少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
ポリオキシエチレン誘導体、特にポリソルベート60またはポリソルベート80、天然ゴム、特にイナゴ豆種子粉またはアラビアゴム、天然乳化剤、特にゼラチン、セルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、およびでんぷん、特にトウモロコシまたはジャガイモからなる群から選択された、乳化生成物または乳化剤/質感付与剤を含む、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
ポリオール、特にグリセリン、ソルビトールまたはプロピレングリコールおよび酢酸のグリセロールとのエステル(グリセリルトリアセテート)からなる群から選択される可塑/湿潤生成物を含む、請求項3または4に記載の膜。
【請求項6】
グリコサミノグリカン(GAG)、ムコ多糖類、特にヒアルロン酸および水溶性多糖類、特にプルランからなる群から選択される膜形成性物質を含む、請求項3から5のいずれかに記載の膜。

【公開番号】特開2010−37339(P2010−37339A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−177244(P2009−177244)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(505472872)
【Fターム(参考)】