説明

液体の分析および合成のためのモジューラ試験室機器と液体の分析および合成の方法

液体の分析および合成のためのモジューラ試験室機器は、液体タンク(50)、中央電子評価ユニット(30)、複数の機能モジュール(40)、および複数の流体モジュール(42)を有する。機能モジュール(40)は直列に配置されて互いに機械的および流体的に接続する。少なくとも1つの流体モジュール(42)は液体タンク(50)にまた機能モジュール(40)の1つに流体的に接続し、また機能モジュール(40)および流体モジュール(42)を中央電子評価ユニット(30)に接続する電気的接続部(52)を備える。本発明に係るモジューラ試験室機器を用いる液体の分析および合成の方法では、中央電子評価ユニット(30)が分析および/または合成プログラムにより機能モジュール(40)および流体モジュール(42)を制御して、分析プログラムおよび/または合成プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の分析および合成のためのモジューラ試験室機器と、液体の分析および合成の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体の分析および合成は試験室で行われ、種々の個別のプロセス・ステップを実行して、例えば関係する全ての物理的および化学的特性を決定する。物理的特性の例としては、濁度、色、粒子寸法などがある。化学的特性の例としては、金属などの成分(特にカルシウムおよびマグネシウム(水の硬度)、窒素および燐(肥料残留物)、塩素およびナトリウム)がある。飲み水に関しては、非常に多くの異なる汚染物質(特に、バクテリアなどの生物的内容や工業的毒性物質)が重要である。ここで適用される規制は政府機関または国際機関(WHO)により定められている。これらの規制に従っているかどうかをチェックするには、設備の整った試験室および訓練されたスタッフを揃えることだけでなく、物的および人的資源においてかなりの出費が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、多数のプロセス・ステップを自動的に実行しまた個別の要求に合うように柔軟に設計することができる、コンパクトな液体分析および液体合成装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる試験室装置を提供する。
本発明では、モジューラ試験室機器は、液体タンク、中央電子評価ユニット、多数の機能モジュール、および多数の流体モジュールを含む。機能モジュールは直列に配置され、互いに機械的および流体的に接続する。少なくとも1つの流体モジュールは液体タンクおよび機能モジュールの1つに流体的に接続し、また機能モジュールおよび流体モジュールを中央電子評価ユニットに接続する電気的接続を備える。本発明に係るモジューラ試験室機器は多数の機能モジュールおよび流体モジュールを備え、望ましい機能に従って、これらを並べまた互いに機械的および流体的に接続することができるので、このモジューラ試験室装置は必要に応じて簡単で費用効果のある方法で柔軟に調整することができるし、また将来必要が生じた場合は拡張することができる。多くの分析および/または合成のステップを並列に1つの機器で実行することができるので、プロセスの実行時間が短くなる。
【0005】
本発明は液体の分析および合成の方法を更に提供する。この方法は、信頼性、柔軟性および低いプロセ・スコストの点で優れている。
本発明の方法では、中央電子評価ユニットが分析プログラムおよび/または合成プログラムにより機能モジュールおよび流体モジュールを制御して、分析および/または合成プログラムを実行する。個別のモジュールは電気的接続により中央電子評価ユニットに接続するので、分析および合成の実行または進行を中央で制御し、機能モジュールのセンサ信号を記録しまた評価し、測定結果や分析および合成の結果を評価しまた査定することができる。分析および/または合成を自動的に実行して進めるので、これまで多くの個別のステップで手動的に実行されていたプロセスを自動化しまた標準化することができる。このため、一方ではプロセスの信頼性が高くなり、他方ではプロセス・コストが低くなる。連続的な監視も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の更なる特徴および構成は、従属クレームから、また以下の図に示す好ましい例示の実施の形態の説明から明らかになる。
【図1】本発明に係るモジューラ試験室装置の好ましい例示の実施の形態の側面図を示す。
【図2】図1のモジューラ試験室装置の組立分解図を示す。
【図3】図1および図2に示すモジューラ試験室装置のモジューラ・サブユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すモジューラ試験室装置は、上部ハウジング部分12と下部ハウジング部分14とを有するハウジング10を含む。下部ハウジング部分14は、環境への複数の流体的接続部16、電源48(図3に示す)のための外部接続部18、および環境への電気的接続部20を備える。図2に示すように、上部ハウジング部分12は複数の動作要素22および通信インターフェース24を備える。上部ハウジング部分12は、表示ユニット28用に形成された凹所26を更に有する。表示ユニット28は中央電子評価ユニット30の一部で、モジューラ試験室装置のモジューラ・サブユニット32を構成する。
【0008】
ハウジング内に収められた別のモジューラ・サブユニット34の詳細を図3に示す。モジューラ・サブユニット34は多数の機能モジュール40および多数の流体モジュール42を有する。流体モジュール42および機能モジュール40は標準化された機械的接続(ここには図示されていない)によりモジュール間で互いに接続する。流体モジュール42および機能モジュール40は、これらのモジュールと他のモジュールとを流体的および電気的に互いに接続するための標準化された電気的接続および流体的接続44を更に含む。流体モジュール42は、ポンプおよび/またはバルブ要素46を更に備える。
【0009】
ここに示す例示の実施の形態ではポンプおよび/またはバルブ要素46は流体モジュール42の構成要素であるが、本発明では、これらは別個の制御モジュールとして設けてもよい。その場合は、制御モジュールは、それ自体、標準化された接続により流体モジュールおよび機能モジュールに電気的、機械的、および流体的に接続してよい。
【0010】
図3に示すモジューラ・サブユニット34は電源48および液体タンク50を更に備える。機能モジュール40は複数のレベルに配置する。モジューラ・サブユニット34の個々のレベルは電気的接続部52により互いにまた中央電子評価ユニット30に接続する。流体モジュール42の少なくともいくつかは流体タンク50に流体的に接続する。流体モジュール42は機能モジュール40の側とは反対側にカバー54を更に含む。カバー54は流体的接続部56を備え、これを用いて流体モジュール42に給気または脱気を行い、またはサンプル流体または試薬や分析または合成に必要な流体を注入する。流体的接続部56は、下部ハウジング部分14に形成される環境への流体コネクタ16の1つとそれぞれ接続する。
【0011】
機能モジュール40は所望の測定を行うためのセンサを備えてよい。例えば、機能モジュールは、有機および無機成分のpH、導電率、濁度、濃度を測定するためのセンサを備えてよい。また、機能モジュール40を用いて、液体タンク50および/または流体モジュール42からのサンプル液体と、例えば、トレーサ流体または第3の液体の合成のための第2の液体などの別の液体とを中で混合することもできる。サンプル液体と混合する液体は別の流体モジュール42から対象の機能モジュール40に直接にまたは別の機能モジュール40を介して送ってよい。また、機能モジュール40は、合成または分析に必要な供給液体を保管するための貯蔵器を備えてもよい。
【0012】
液体を分析または合成するには、調べるべき液体または合成する必要のある液体を液体タンク50に注入する。これは、下部ハウジング部分14に形成される環境への流体的接続16の1つを用いて行ってよい。部分サンプルはポンプおよびバルブ要素46により液体タンク50から流体モジュール42に分配してよい。この場合は、異なる成分(硝酸塩、重金属、塩素など)の濃度を、例えば、これらの各部分サンプルで並列に決定してよい。しかし、規定された分析または合成のシーケンスを直列に行うこともできる。個別の流体モジュール42は、標準化された接続部44により、選択された機能モジュール40に流体的および電気的にリンクされる。
【0013】
濃度の値を決定するには、個別の流体モジュール42の液体をそれぞれの機能モジュール40に分配する。この場合は、所望の測定はその機能モジュール40内で行う。しかし、機能モジュール40はその液体と別の液体とを混合するのにも用いてよい。この場合は、測定のためにこの混合物を別の機能モジュール40に移してよい。機能モジュールの別の可能な機能としては、例えば、偏析、計測、貯蔵、ろ過、分離、および沈殿がある。
連続的に監視するには、規定された時間間隔でまたは連続的に液体を液体タンク50に注入してよい。
【0014】
中央電子評価ユニット30は分析および/または合成プログラムにより機能モジュール40および流体モジュール42を制御して、分析および/または合成プログラムを自動的に実行する。分析および/または合成で決定された液体の特定の特性が所定の値を超えるかまたは達しない場合は、中央電子評価ユニット30は警告または警報メッセージを出す。個別のモジュールは電気的接続52を介して中央電子評価ユニット30により駆動され、センサ信号は中央電子評価ユニットに送られる。中央電子評価ユニットでは、センサ信号および全ての測定結果と分析および/または合成結果とを登録し、評価し、査定する。センサを有するこれらの機能モジュール40は、信号調整を測定するための自分自身の電子ユニットを備えるのが好ましい。中央電子評価ユニット30は規定のプログラムにより手動および自動でポンプおよびバルブ要素46を駆動し、これにより機能モジュールおよび流体モジュールで形成されるネットワークを通して任意の望ましい経路をプログラムし活動化できることが好ましい。
【0015】
本発明に係るモジューラ試験室装置は卓上ユニットとしての応用に適しており、また例えば電池を電源として用いるときは野外での測定に用いることもできる。
【0016】
機能モジュール40、流体モジュール42、または必要であれば制御モジュールは、所望の要求に従って、互いに並べまた必要に応じて拡張することができるので、本発明に係るモジューラ試験室装置は高い柔軟性を備え、また簡単で費用効果のある方法で新しい要求に合わせることができる。中央電子評価ユニットが全ての測定結果と分析および合成の結果とを中央で登録し、評価し、査定するので、費用効果があり、かつ時間を節約できる方法を提供することができる。結果は記憶されるので、後日に検索して追跡することもできる。分析および/または合成を自動的に実行して進めるので、これまで多くの個別のステップで手動的に実行されていたプロセスを自動化しまた標準化することができる。このため、一方ではプロセスの信頼性が高くなり、他方でプロセスのコストが低くなる。連続的な監視も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の分析および合成のためのモジューラ試験室機器であって、
液体タンク(50)と、
中央電子評価ユニット(30)と、
多数の機能モジュール(40)と、
多数の流体モジュール(42)と、
を備え、
機能モジュール(40)は直列に配置されて互いに機械的および流体的に接続し、
少なくとも1つの流体モジュール(42)は液体タンク(50)にまた機能モジュール(40)の1つ以上に流体的に接続し、また
機能モジュール(40)および流体モジュール(42)を中央電子評価ユニット(30)におよび/または互いに接続する電気的接続部(52)を備える、
モジューラ試験室機器。
【請求項2】
機能モジュール(40)は複数のレベルに配置する、請求項1記載のモジューラ試験室機器。
【請求項3】
個々のレベルの機能モジュール(40)は電気的接続部(52)により互いに接続する、請求項2記載のモジューラ試験室機器。
【請求項4】
機能モジュール(40)および流体モジュール(42)は立方形を有する、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項5】
機能モジュール(40)および流体モジュール(42)は横の隣接面に標準化された流体的接続部(44)を有する、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項6】
機能モジュール(40)および流体モジュール(42)は横の隣接面に標準化された電気的接続部(44)を有する、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項7】
機能モジュール(40)および流体モジュール(42)は横の隣接面に標準化された機械的接続部を有する、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項8】
流体モジュール(42)はマイクロバルブおよび/またはマイクロポンプ(46)を備える、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項9】
マイクロバルブおよび/またはマイクロポンプ(46)を備える制御モジュールを更に含む、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項10】
前記制御モジュールは流体モジュール(42)および機能モジュール(40)と並んで配置される、請求項9記載のモジューラ試験室機器。
【請求項11】
前記制御モジュールは流体モジュール(42)および機能モジュール(40)への標準化された流体的接続部を含む、請求項9または10記載のモジューラ試験室機器。
【請求項12】
前記制御モジュールは流体モジュール(42)および機能モジュール(40)への標準化された電気的接続部を含む、請求項9から11のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項13】
マイクロバルブおよび/またはマイクロポンプ(46)は手動で駆動する、請求項8から12のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項14】
マイクロバルブおよび/またはマイクロポンプ(46)は中央電子評価ユニット(30)により電気的に駆動する、請求項8から13のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項15】
電源用の電源(48)および外部接続部(18)を更に含む、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項16】
流体モジュール(42)、機能モジュール(40)、液体タンク(50)、および電源(48)はモジューラ・サブユニット(34)を構成する、請求項15記載のモジューラ試験室機器。
【請求項17】
中央電子評価ユニット(30)は別のモジューラ・サブユニット(32)を構成する、請求項16記載のモジューラ試験室機器。
【請求項18】
環境への流体的接続部(16)を更に備える、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項19】
環境への電気的接続部(20)を更に備える、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項20】
機能モジュール(40)は液体の貯蔵器を備える、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項21】
ハウジング(10)であって、その上に動作要素(22)を備え、またその中に流体モジュール(42)、機能モジュール(40)、液体タンク(50)、および中央電子評価ユニット(30)を配置したハウジング(10)を更に含む、先行請求項のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器。
【請求項22】
請求項1−21のいずれか一項記載のモジューラ試験室機器を用いる液体の分析および合成の方法であって、中央電子評価ユニット(30)が分析および/または合成プログラムにより機能モジュール(40)および流体モジュール(42)を制御して、分析プログラムおよび/または合成プログラムを実行することを含む、液体の分析および合成の方法。
【請求項23】
液体タンク(50)にサンプル液体を注入し、また流体モジュール(42)によりサンプル液体の一部の量を機能モジュール(40)に割当てる、請求項22記載の液体の分析および合成の方法。
【請求項24】
液体タンク(50)に前記サンプル液体を規定の時間間隔で注入する、請求項22または23記載の液体の分析および合成の方法。
【請求項25】
前記分析および/または合成プログラムは連続的に実行する、請求項24記載の液体の分析および合成の方法。
【請求項26】
前記分析および/または合成で決定された液体の特定の特性が所定の値を超えるかまたは達しない場合は、中央電子評価ユニット(30)は警告または警報メッセージを出す、請求項22から25のいずれか一項記載の液体の分析および合成の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−508500(P2010−508500A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533752(P2009−533752)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009444
【国際公開番号】WO2008/052758
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(505144094)ビィウルケルト ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー カーゲー (5)
【Fターム(参考)】