説明

液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置

【課題】吸引・注出力が高く、しかも充填液体の略全量を使い切ることができる液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置を提供する。
【解決手段】可撓性を有する液体容器2と、液体容器2に充填された液体を吸引・注出するポンプ手段3と、ポンプ手段3に接続されると共に液体容器内に挿入されることで液体容器を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管4と、を有し、液体容器2が容器内の液体の吸引・注出時の内部負圧化により収縮(縮小)していく構成において、吸引管4の上端近傍の側壁部分及び下端近傍の側壁部分の各々に上方吸引孔41及び下方吸引孔42を有し、上方吸引孔41が、先ず上方吸引・注出を始め、上方吸引・注出により収縮する液体容器の内壁が上方吸引孔41を閉塞した後に、下方吸引孔42が下方吸引・注出を始め、液体容器2内の液体の吸引・注出が限界に達した際の液体残留を限りなく少なく抑制する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置に関し、詳しくは可撓性の液体充填袋・液体充填ボトルに装着されて内容物である液体を吸引・注出する液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する液体充填袋や軟質合成樹脂製の液体充填ボトルに充填された液体をポンプ手段により吸引・注出する吸引式液体注出ポンプ装置では、使用開始の時点では液体の吸引・注出を問題なく行うことができる(図8の(A)参照)が、液体残量が少なくなってくると吸引管の吸引口に液体充填袋や液体充填ボトルの内壁部が徐々に吸い寄せられることになる。尚、図8において、符号1は吸引式液体注出ポンプ装置、符号2は可撓性を有する液体充填袋である液体容器、符号3はポンプ手段、4はポンプ手段に接続された吸引管、43はこの吸引管4の先端に設けられた吸引口、5はポンプ装置本体部、を各々示す。
【0003】
前記内壁部の吸引口43への吸い寄せによって、該吸引口43付近での液体の移動スペースが狭小化するため吸引量が減少し注出量が減少してしまったり、更に吸い寄せられることで前記内壁部が吸引口43に密着してしまい該吸引口43が閉塞され、液体の吸引・注出が不可能となってしまうことがあった。吸引・注出途中における吸引口43の閉塞は、液体充填袋や液体充填ボトルに液体が残留してしまい液体の全量を使い切ることができないと言う不都合を有している。
【0004】
かかる液体残留は、吸引口43から離れた部分の液体が吸引によって該吸引口43に移動する以前に前記内壁部が該吸引口43を閉塞してしまうことで生じるためである。特に、充填される液体が高粘度の場合には流動性が低く液体容器内での液体の移動が円滑には行われ難いことから、吸引口43から離れた部分に未だ多くの液体が残留しているにもかかわらず、吸引口43周囲乃至は吸引口43近傍の液体を吸引した時点で該吸引口43が閉塞されてしまい、従って残留量も粘性の低い液体に比べてより多くなってしまう(図8の(B)参照)という不都合を有している。
【0005】
そこで、液体残量が少なくなり内壁部が密着し易くなった場合であっても、吸引口の閉塞を防止するだけでなく、吸引口への液体移動経路をも確保することで、液体残留の抑制を図る技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1、2の技術は、いずれも吸引管の上端から下端の外周に複数本の凸条を付加することで液体充填袋の内壁部の吸引口への密着による閉塞を防止し、更に前記凸条によって吸引管の外周面への前記液体充填袋の内壁部の密着を防ぐことで該吸引管に沿って間隙を形成して吸引口に至る液体通路を確保する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2584405号
【特許文献2】実用新案登録第2606953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2の技術では、吸引口が閉鎖されることなく充填された液体の吸引・注出が可能であるが、吸引管の外周の凸条によって形成される間隙が液体通路を確保する点では有効に作用するが、この間隙が吸引・注出の終了時点まで残存してしまうが故にこの間隙内に液体が残留してしまい液体の全量を使い切ることができないことが本願発明者の研究で明らかになった。
【0009】
そこで本発明の目的は、高粘度液体であっても、吸引・注出力が高く、しかも充填液体の略全量を使い切ることができる液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
【0011】
1.液体の吸引・注出手段によって液体容器内の液体を吸引・注出するに従って、前記液体容器内の負圧化に伴って収縮(縮小)していく、液体の吸引注出方法において、
前記液体容器を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管の上端近傍の側壁部分及び下端近傍の側壁部分の各々に液体吸引孔を有し、
先ず、上端近傍側壁部分の液体吸引孔である上方吸引孔からの液体の吸引・注出である上方吸引・注出を始め、
該上方吸引・注出により収縮する液体容器の内壁が前記上方吸引孔を閉塞した後に、
前記下端近傍側壁部分の液体吸引孔である下方吸引孔からの液体の吸引・注出である下方吸引・注出を始め、
前記液体の吸引・注出手段による液体容器内の液体の吸引・注出が限界に達した際の該液体容器内の液体残留を限りなく少なく抑制することを特徴とする液体の吸引・注出方法。
【0012】
2.液体の吸引・注出手段が吐出ノズルを備えた吸引ポンプ式であることを特徴とする請求項1に記載の液体の吸引・注出方法。
【0013】
3.可撓性を有する液体容器と、該液体容器に充填された液体を吸引・注出するポンプ手段と、該ポンプ手段に接続されると共に前記液体容器内に挿入されることで該液体容器を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管と、を有し、
前記液体容器が該液体容器内の液体の吸引・注出時の内部負圧化により収縮(縮小)していく構成の吸引式液体注出ポンプ装置において、
前記吸引管の上端近傍の側壁部分及び下端近傍の側壁部分の各々に上方吸引孔及び下方吸引孔を有し、
前記上方吸引孔が、先ず上方吸引・注出を始め、
該上方吸引・注出により収縮する液体容器の内壁が前記上方吸引孔を閉塞した後に、
前記下方吸引孔が下方吸引・注出を始め、
前記ポンプ手段による液体容器内の液体の吸引・注出が限界に達した際の該液体容器内の液体残留を限りなく少なく抑制する構成であることを特徴とする吸引式液体注出ポンプ装置。
【0014】
4.前記液体容器が、可撓性を有する袋体であると共に、該袋体に前記吸引管を突き刺すことで内外に通じさせて液体の吸引・注出を行う構成であると共に、
前記吸引管が突き刺される突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【0015】
5.前記突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜が、未延伸ナイロンフィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムを含む積層フィルムで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【0016】
6.前記液体容器が、可撓性を有する袋体であると共に、該袋体の開口部にポンプ手段を液密性及び気密性を保持可能に且つ脱着可能に固定する構成であることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【0017】
7.前記液体容器が、軟質合成樹脂製のボトル容器であり、該液体容器内の液体の吸引・注出による内部負圧化に伴って収縮する構成であることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【0018】
8.前記吸引管の下端が開口構成であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【発明の効果】
【0019】
請求項1又は3に示す発明によれば、高粘度液体であっても、吸引・注出力が高く、しかも充填液体の略全量を使い切ることができる液体の吸引注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置を提供することができる。
【0020】
特に、先ず充填液体はポンプ手段に近い位置に形成されている上方吸引孔から吸引・注出されることで従来では残留し易い位置であった部分の液体の吸引・注出が可能であり、この位置での液体の吸引・注出に伴って液体容器の内壁部が上方吸引孔に吸い寄せられることで液体容器が上方部分から窄まり液体が下方に押し下げられるように移動し、上方吸引孔の位置の液体が無くなるまで吸引・注出が行われることにより、該上方吸引孔が液体容器の内壁部の密着によって閉塞され、次に下方吸引孔から引き続いて吸引・注出が行われることとなり、液体容器の下方乃至は前記の下方に押し下げられるように上方から移動した液体も吸引・注出され、液体容器の上方での残留が生じない状態での吸引・注出が可能となり、従って、液体が液体容器内に残留することなく略全量を使い切ることができる。
【0021】
液体容器内の液体の使い切りに際しては、吸引管には該吸引管の外周に間隙を形成するような凸条が形成される必要がないため、吸引・注出されることなく残留してしまう液体が存在するスペースも無く、従って、ポンプ手段の吸引能力・液体容器の柔軟性等の他の条件が従来と同一であっても、限りなく全量に近い量の液体を吸引・注出することが可能である。
【0022】
請求項2に示す発明によれば、液体の吸引・注出方法に用いる装置として一般的な構成であるポンプ装置を容易に適用することができる。
【0023】
請求項4に示す発明によれば、液体の吸引・注出に伴う負圧化に柔軟に追随し、吸引管を突き刺した突き刺し部分の液密性及び気密性を保持できるので、液体容器内の液体の全量乃至は限りなく全量に近い量まで使い切ることができる。
【0024】
請求項5に示す発明によれば、吸引・注出の開始から液体の全量使い切りに至るまで吸引管と突き刺し部分の液密性及び気密性を確実に保持することができる。
【0025】
請求項6に示す発明によれば、例えば袋体の口部に螺合するスクリュー式の固定構造のポンプ手段とすることで極めて容易に液体容器とポンプ装置とを液密性及び気密性を保持した状態で接続することができる。
【0026】
請求項7に示す発明によれば、トリートメントやパック等の高粘度液体の充填に適した液体容器とすることができる。
【0027】
請求項8に示す発明によれば、吸引管として、下端が開口構成である管類を用いて作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る吸引式液体注出ポンプ装置の一実施例の構成を示す構成説明図
【図2】図1の吸引式液体注出ポンプ装置のポンプ手段及び吸引管を示す正面図
【図3】図1の吸引式液体注出ポンプ装置による液体の吸引・注出過程を示す説明図
【図4】本発明に係る吸引式液体注出ポンプ装置の他の実施例の構成を示す構成説明図
【図5】本発明に係る吸引式液体注出ポンプ装置の他の実施例の構成を示す構成説明図
【図6】本発明に係る吸引式液体注出ポンプ装置の他の実施例の構成を示す構成説明図
【図7】実験例に用いる各吸引管の構成を示す要部正面図
【図8】従来の吸引式液体注出ポンプ装置による液体の吸引・注出時の問題点を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る液体の吸引・注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置(以下、単にポンプ装置ということもある。)について図面に基づき詳細に説明する。
【0030】
本発明は、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、その他の頭髪用品をはじめ、化粧液、歯磨き、ソース、マヨネーズ、食用油、機械油、その他の各種液体(ゲル状或いはゼリー状等の高粘度液体を含む)が充填された液体容器から前記液体をポンプ手段による吸引・注出することで使用することができるポンプ装置であり、
図1〜図3に示すように、ポンプ装置1は、本体外装体部51と該本体外装体部51が装着される本体内装体部52とを有して成るポンプ装置本体部5と、前記本体内装体部52内に収容される可撓性を有する液体容器2と、該液体容器2に充填された液体を吸引・注出すると共に前記本体外装体部51に脱着可能に取り付けられるポンプ手段3と、該ポンプ手段3に接続されると共に前記液体容器2内に挿入されることで該液体容器2を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管4と、を有し、
前記液体容器2が該液体容器2内の液体の吸引・注出時の内部負圧化により収縮(縮小)していく構成を基本的構成とする(主として図1参照)。
【0031】
本発明では更に、前記吸引管4の上端近傍の側壁部分4A及び下端近傍の側壁部分4Bに液体吸引孔41・42を有し(主として図2参照)、
先ず、上端近傍側壁部分4Aの液体吸引孔である上方吸引孔41からの液体の吸引・注出である上方吸引・注出を始め(図3の(A)→(B)参照)、
該上方吸引・注出により収縮する液体容器2の内壁が前記上方吸引孔41を閉塞した後に、
前記下端近傍の側壁部分4Bの液体吸引孔である下方吸引孔42からの液体の吸引・注出である下方吸引・注出を始め(図3の(C)参照)、
前記ポンプ手段3による液体容器2内の液体の吸引・注出が限界に達した際(図3の(D)参照)の該液体容器2内の液体残留を限りなく少なく抑制する構成となっている。
【0032】
即ち、従来のポンプ装置(例えば、図8参照)では高粘度液体が特に残留し易い位置であった液体容器2の上方であるポンプ手段3のポンプ作動部31に近い位置に、本発明では上方吸引孔41が形成されており、吸引・注出に際しては先ずこの上方吸引孔41から吸引・注出が開始される。従って、従来では残留し易い位置であった部分の液体の吸引・注出が可能である。
【0033】
次に、図3の(B)に示すように、この位置での液体の吸引・注出に伴って液体容器2の内壁部が上方吸引孔41に吸い寄せられることで液体容器2が上方部分から窄まり、例え高粘度の液体であっても下方に押し下げられるように移動する。
【0034】
そして上方吸引孔41の近傍の液体が無くなるまで吸引・注出が行われることで図3(C)に示すように該上方吸引孔41が液体容器2の内壁部の密着によって閉塞されることになる。
【0035】
上方吸引孔41が閉塞することで、ポンプ手段3による吸引・注出は自ずから下方吸引孔42が引き継ぐことになる。この下方吸引孔42によって吸引・注出が行われることで液体容器2の下方乃至は前記の下方に押し下げられるように上方から移動した液体も吸引・注出され、液体容器2の上方での残留が生じない状態での吸引・注出が可能となり、従って、図3の(D)に示すように液体が液体容器2内に残留することなく略全量を使い切ることができる。
【0036】
次に本発明のポンプ装置1の各構成について更に詳述する。
【0037】
本発明に用いられる液体容器2としては、液体容器2内の液体を吸引・注出するに従って、前記液体容器2内の負圧化に伴って収縮(縮小)していく可撓性を有する液体充填袋や軟質合成樹脂製の液体充填ボトルであって液体の吸引注出方法・ポンプ装置に用いられる公知公用の液体容器を特別の制限無く用いることができる。
【0038】
液体容器2が可撓性を有する袋体である場合、該袋体に前記吸引管4を突き刺すことで内外に通じさせて液体の吸引・注出を行う構成であり、前記吸引管4が突き刺される突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜で構成されたものであることが好ましい。
【0039】
前記突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜としては、未延伸ナイロンフィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムを含む積層フィルムで構成されたものを挙げることができる。本構成の液体容器2は、図1及び図3に示す本発明の実施例に用いられるものや、図8に示す従来技術のポンプ装置に用いられるものと同様のものであり、吸引管4の突き刺し箇所は袋体の底面の略中央箇所であり、かかる袋体の底面はポンプ装置本体部5の本体内装体部52に収容する際には上方に位置することになる。
【0040】
また、可撓性を有する袋体の別態様としては、図4に示す構成、即ち、前述のように吸引管4を液体容器2に突き刺すことで内外を通じさせる構成ではなく、液体容器2である袋体の開口部である口部21に螺合構成を配設し、該口部21にポンプ手段3の被螺合構成を液密性及び気密性を保持可能に且つ脱着可能に螺合固定することで吸引管4を液体容器2内に挿入させて内外を通じさせる構成を挙げることができる。
【0041】
更に、本発明に用いられる液体容器2としては、上記した袋体構成のものに限らず、例えば図5に示すような軟質合成樹脂製のボトル容器とすることもできる。液体容器2がボトル容器の場合であっても、該液体容器2内の液体の吸引・注出に際しては、内部負圧化に伴って軟質合成樹脂製のボトル容器は収縮する構成となっていることは勿論である。尚、本構成の場合、液体容器2内の液体が満杯の際にはボトル容器はボトル形状を維持しているため自立可能であるが、液体の吸引・注出に伴って収縮していくことで自立不可能となるためボトル容器の外皮体となる底面開放及び上部口部開放型のポンプ装置本体部5に収容された状態での使用が好ましい。
【0042】
更にまた、本発明に用いられる液体容器2としては、図6に示すようなフィルム積層体からなる円筒体構成の容器とすることもできる。図6に示す構成について詳説すると、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等のフィルム積層体から成る酸素透過抑制積層フィルムによって円筒体が形成され、この円筒体の上方開放端部には螺旋を有する口部21を設けた樹脂製上蓋22が、及びこの円筒体の下方開放端部には樹脂製底板23が、各々インジェクション成形によって一体成形されている。尚、上記上蓋22は樹脂製としてインジェクション成形し、一方、上記底板は、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、アルミ箔、ポリエチレンを順次積層した酸素透過抑制積層フィルムで形成して、熱溶着により一体化してもよい。図6に示す上記液体容器2は、上端開放部を有する外装体53に挿入され、螺合リングによって上蓋54の外周下端面が、この外装体53の上端開放部の上端面に締付け止着される。この外装体53及び上蓋54内に液体容器2を収容する構成によって、液体の吸引・注出に伴って収縮してもポンプ装置1を自立させた状態のまま使用することができる。
【0043】
ポンプ手段3としては、この種のポンプ式のポンプ装置に用いられる公知公用のポンプを特別の制限なく用いることができ、上部の押下部を押込操作することでポンプ動作部31内のピストン・シリンダ内を通って液体容器2内の液体を吐出口から吐出することができる。尚、ポンプ手段3のポンプ構成については、この種の液体取出装置に用いられる一般的なポンプ構成であるため、本明細書ではポンプ手段3のポンプ機構についての説明は省略する。
【0044】
吸引管4は、先端が液体容器2の突き刺し部分に突き刺し可能な先鋭状態に形成されており、この先端部分の開口である吸引口43・上方吸引孔41・下方吸引孔42がポンプ手段3を介して吐出口に連通することで液体容器2内の液体を吸引・注出する構成となっている。尚、吸引管4の先端部分は開口して吸引口43となっているものに限らず、先端部分が単に突き刺しのために先鋭形状となっているだけで閉塞された構成のものについても本発明に包含される。
【0045】
吸引管4は、前述したようにポンプ手段3に接続されるものであり、上方吸引孔41はポンプ手段3のポンプ動作部31の直下近傍部分に形成されることが好ましく、下方吸引孔42は該吸引管4の下端である先端部分の近傍に部分に形成されることが好ましい。上方吸引孔41・下方吸引孔42の各々の形成位置としては、吸引管4の液体容器2に突き刺され挿入される部分の長さL{図3(A)参照}を100としたとき、吸引管4の挿入管端から上方吸引孔41の下端までの長さl{図3(A)参照}が好ましくは10〜30、より好ましくは15〜25であり、吸引管4の先端から下方吸引孔42の上端までの長さl{図3(A)参照}が好ましくは10〜30、より好ましくは15〜25である。また、上方吸引孔41・下方吸引孔42の形成数としては、各々1つずつであってもよいし、図2に示すように吸引管4の側壁外周に沿って2つ又は3つ以上並列的に形成されていてもよい。
【0046】
また吸引管4の長さとしては、先端である下端部分が液体容器2の少なくとも半分より下にあることが好ましく、下方3分の1より下にあることがより好ましく、下方4分の1から5分の1にあることがとりわけ好ましい。尚、吸引管4の先端である下端部分が液体容器2の内底に接触する長さであってもよい。
【0047】
本発明を適用する液体の粘度としては、7000cps以上、好ましくは1万cps以上であり、かかる粘度以上について本発明を有効に適用することができ、特に2万cps以上、とりわけ特に3万cps以上の高粘度液体において本発明の効果が顕著である。
【0048】
以上、本発明に係る液体の吸引・注出方法及び吸引式液体注出ポンプ装置について実施例に基づき説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について実験例に基づき更に説明する。
【0050】
実施例1
図1〜図3に示す液体容器2、ポンプ手段3、吸引管4、ポンプ装置本体部5を用いて、粘度の異なる下記3種{1種+2条件下の1種}の液体a〜cの吸引・注出を行った。尚、吸引管4の構成は図7(A)に示す通りである。即ち、液体容器2に突き刺され挿入される部分の長さ{図3(A)の符号L参照}が90mmの吸引管であって、上方吸引孔41の下端が挿入管端から20mm{図3(A)の符号l参照}、下方吸引孔42の上端が管先端から25mm{図3(A)の符号l参照}の位置に設けた構成である。
【0051】
液体a:コンディショナー{常温環境下(約25℃)、粘度10,000cps、充填量1,000ml}
液体b:トリートメント{常温環境下(約25℃)、粘度20,000cps、充填量1,000ml}
液体c:トリートメント{冷蔵庫冷蔵室(約3℃)内に保管して実験時の温度は約5℃、粘度30,000cps、充填量1,000ml}
【0052】
液体a〜cの3種全てについて、全く問題なくスムースな吸引・注出を行うことができた。液体a〜cの吸引・注出後の液体容器2(袋体)を確認したところ、液体a及び液体bは残留液体が無く使い切った状態であり、液体cでさえも21mlという極僅かの残留液体であった。液体cは、粘度30,000cpsという高粘度の液体でありながら2.1%という極めて低い残留率であり、本発明は高粘度液体であっても吸引・注出力を持続できることが判った。
【0053】
実施例2
吸引管4について図7(B)に示すように、前記実施例1で用いた吸引管4(図7(A))の先端の吸引口43を吸引口閉鎖部材44により閉塞したものを用いた以外は実施例1と同様の構成にし、同じく実施例1と同様の3種の液体a〜cについて、吸引・注出を行った。
【0054】
液体a〜cの3種全てについて、全く問題なくスムースな吸引・注出を行うことができた。液体a〜cの吸引・注出後の液体容器2(袋体)を確認したところ、上記実施例1と同様、液体a及び液体bは残留液体が無く使い切った状態であり、液体cは22mlという極僅かの残留液体があった。液体cは、粘度30,000cpsという高粘度の液体でありながら2.2%という極めて低い残留率であり、本発明は実施例2からも高粘度液体であっても吸引・注出力を持続できることが判った。
【0055】
比較例1
吸引管4について図7(C)に示すように吸引管4の吸引孔が下端開口である吸引口43のみのもの、即ち、前記実施例1で用いた吸引管4(図6(A))の上方吸引孔41及び下方吸引孔42の無いものとした以外は実施例1と同様の構成の吸引管4を用い、他の構成である液体容器2、ポンプ手段3、ポンプ装置本体部5については実施例1と同様にし、同じく実施例1と同様の液体a〜cについて、吸引・注出を行った。
【0056】
液体a〜cのうち、液体aは、吸引・注出操作は特に問題なく行うことはできたが、吸引・注出後の液体容器2を確認したところ、吸引口43から離れた位置である液体容器2の上部に98ml(残留率9.8%)の残留があった。
【0057】
液体bは、吸引・注出は操作中は特に問題なく行うことはできたが、明らかに全量の吸引・注出が済んでいない段階で吸引力が低下し、吸引・注出が不可能となった。液体容器2を確認したところ、液体容器2の下半分程度が潰れており、吸引管4の吸引口43に液体容器2の内壁が密着した状態であった。液体容器2の上部に残留した量を計測したところ525ml(残留率52.5%)も残留していた。
【0058】
液体cは、吸引・注出操作が困難であり、液体の吸引・注出を行うにはポンプ操作に勢いを付ける必要があった。しかも、液体の吸引・注出を開始して間も無く、吸引管4の吸引口43付近の液体容器2が潰れ、吸引口43に液体容器2の内壁が密着して吸引・注出が不可能となってしまった。液体容器2に残留した量を計測したところ910ml(残留率91%)も残留しており、10%以下しか吸引・注出できないことが判った。
【0059】
比較例2
吸引管4について図7(D)に示すように、吸引管4を前記比較例1で用いた下端に吸引口43のみを設けたものに従来技術(前記特許文献1及び2参照)の如き吸引管4の外周に凸条部45を付加した構成の吸引管4を用い、他の構成である液体容器2、ポンプ手段3、ポンプ装置本体部5については実施例1と同様にし、同じく実施例1と同様に液体a〜cについて吸引・注出を行った。
【0060】
液体a〜cのうち、液体aについてはスムースな吸引・注出を行うことができ、吸引・注出後の液体容器2の残留液体は21ml(残留率2.1%)という極く僅かな量であった。
【0061】
液体bについてもスムースな吸引・注出を行うことができ、吸引・注出後の液体容器2の残留液体は22ml(残留率2.2%)という極く僅かな量であった。
【0062】
液体cについては、吸引・注出量が約900mlに近付いた時点(892ml)でポンプの戻りが鈍くなり始め、約910mlを超えた時点(916ml)で更にポンプの戻りが鈍くなると共に1回の操作での吸引・注出量が急激に減少し、その後、直ぐに吸引・注出が不可能となった。吸引管4の吸引口43から離れた位置である液体容器2の上部に残留した残留液体量を計測したところ、76ml(残留率7.6%)であり、粘度30,000cpsと高粘度になると吸引・注出力が低下してしまうことが判った。
【0063】
比較例3
吸引管4について図7(E)に示すように、吸引管4を前記実施例1で用いた吸引口43・上方吸引孔41・下方吸引孔42を有する構成に加えて吸引管4の途中部分である上方吸引孔41と下方吸引孔42との間にも複数の吸引孔46を付加した構成の吸引管4を用い、他の構成である液体容器2、ポンプ手段3、ポンプ装置本体部5については実施例1と同様にし、同じく実施例1と同様に液体a〜cについて、吸引・注出を行った。
【0064】
液体a〜cのうち、液体aについては、液体容器2に残留した量を計測したところ202ml(残留率20.2%)も残留しており、約5分の4程度しか吸引・注出できないことが判った。
【0065】
液体bについても、液体容器2の下部に残留した残留液体量を計測したところ、169ml(残留率16.9%)であった。
【0066】
液体cについても、吸引・注出後の液体容器2を確認したところ、液体容器2の全域に亘って液体が残留しており、残留液体量を計測したところ90ml(残留率9.0%)であった。
【0067】
比較例4
吸引管4について図7(F)に示すように、図7(F)に示すように、ポンプ動作部31の下方にポンプ吸引口32を設けることにより、吸引口43・上方吸引孔41・下方吸引孔42を有する吸引管4を付加することなく、ポンプ動作部31の直下のポンプ吸引口32から直接的に吸引・注出する構成とした。更に、液体容器2の下方部分までの吸引・注出を可能とするための液体の通路を確保するスペーサー部材47を前記ポンプ動作部31の下方に垂設状態に取り付けた。他の構成である液体容器2、ポンプ手段3、ポンプ装置本体部5については実施例1と同様にし、同じく実施例1と同様に液体a〜cについて吸引・注出を行った。
【0068】
液体a〜cのうち、液体aについては、比較的スムースな吸引・注出を行うことができたが、吸引・注出量が約750mlを超えた時点(758ml)で吸引・注出が不可能となってしまった。これは、ポンプ吸引口32が液体容器2内の上方位置にあることから、液体容器2の下方部分の液体を吸引するには吸引力が不足してしまうことが原因と思われる。液体容器2に残留した量を計測したところ252ml(残留率25.2%)も残留しており、約4分の3程度しか吸引・注出できないことが判った。
【0069】
液体bについては、ポンプ操作にやや勢いが必要であり、強いポンプ操作により吸引・注出を行うことができたが、吸引・注出量が約770mlを超えた時点でポンプの戻りが鈍くなると共に1回の操作での吸引・注出量が急激に減少し、その後、直ぐに吸引・注出が不可能となった。液体容器2の下部に残留した残留液体量を計測したところ、219ml(残留率21.9%)であった。
【0070】
液体cについては、ポンプ操作に勢いが必要であり、強いポンプ操作により吸引・注出を行うことができたが、吸引・注出量が800mlを超えた時点を超えた時点でポンプの空動作が生じ、その後、直ぐに吸引・注出が不可能となった。液体容器2の下部に残留した残留液体量を計測したところ、185ml(残留率18.5%)であった。
【符号の説明】
【0071】
1 吸引式液体注出ポンプ装置
2 液体容器(袋体、ボトル容器)
21 口部
22 樹脂製上蓋
23 底板
3 ポンプ手段
31 ポンプ動作部
32 ポンプ吸引口
4 吸引管
41 上方吸引孔
42 下方吸引孔
43 吸引口
44 吸引口閉鎖部材
45 凸条部
46 吸引孔
47 スペーサー部材
5 ポンプ装置本体部
51 本体外装体部
52 本体内装体部
53 外装体
54 上蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吸引・注出手段によって液体容器内の液体を吸引・注出するに従って、前記液体容器内の負圧化に伴って収縮(縮小)していく、液体の吸引注出方法において、
前記液体容器を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管の上端近傍の側壁部分及び下端近傍の側壁部分の各々に液体吸引孔を有し、
先ず、上端近傍側壁部分の液体吸引孔である上方吸引孔からの液体の吸引・注出である上方吸引・注出を始め、
該上方吸引・注出により収縮する液体容器の内壁が前記上方吸引孔を閉塞した後に、
前記下端近傍側壁部分の液体吸引孔である下方吸引孔からの液体の吸引・注出である下方吸引・注出を始め、
前記液体の吸引・注出手段による液体容器内の液体の吸引・注出が限界に達した際の該液体容器内の液体残留を限りなく少なく抑制することを特徴とする液体の吸引・注出方法。
【請求項2】
液体の吸引・注出手段が吐出ノズルを備えた吸引ポンプ式であることを特徴とする請求項1に記載の液体の吸引・注出方法。
【請求項3】
可撓性を有する液体容器と、該液体容器に充填された液体を吸引・注出するポンプ手段と、該ポンプ手段に接続されると共に前記液体容器内に挿入されることで該液体容器を内外に通じさせて液体を吸引・注出する吸引管と、を有し、
前記液体容器が該液体容器内の液体の吸引・注出時の内部負圧化により収縮(縮小)していく構成の吸引式液体注出ポンプ装置において、
前記吸引管の上端近傍の側壁部分及び下端近傍の側壁部分の各々に上方吸引孔及び下方吸引孔を有し、
前記上方吸引孔が、先ず上方吸引・注出を始め、
該上方吸引・注出により収縮する液体容器の内壁が前記上方吸引孔を閉塞した後に、
前記下方吸引孔が下方吸引・注出を始め、
前記ポンプ手段による液体容器内の液体の吸引・注出が限界に達した際の該液体容器内の液体残留を限りなく少なく抑制する構成であることを特徴とする吸引式液体注出ポンプ装置。
【請求項4】
前記液体容器が、可撓性を有する袋体であると共に、該袋体に前記吸引管を突き刺すことで内外に通じさせて液体の吸引・注出を行う構成であると共に、
前記吸引管が突き刺される突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【請求項5】
前記突き刺し箇所の液密性及び気密性を保持可能な膜が、未延伸ナイロンフィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムを含む積層フィルムで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【請求項6】
前記液体容器が、可撓性を有する袋体であると共に、該袋体の開口部にポンプ手段を液密性及び気密性を保持可能に且つ脱着可能に固定する構成であることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【請求項7】
前記液体容器が、軟質合成樹脂製のボトル容器であり、該液体容器内の液体の吸引・注出による内部負圧化に伴って収縮する構成であることを特徴とする請求項3に記載の吸引式液体注出ポンプ装置。
【請求項8】
前記吸引管の下端が開口構成であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の吸引式液体注出ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−245993(P2012−245993A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117939(P2011−117939)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(599154652)龍江精工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】