液体の撹拌・脱泡方法および装置
【課題】優れた撹拌脱泡効果を発揮するとともに、構造が簡単かつコンパクトで、ランニングコストの低減化も図ることができる撹拌・脱泡技術を提供する。
【解決手段】単一の駆動モータ11により、垂直な回転主軸6に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜支持された撹拌槽1を、回転主軸6まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、回転主軸6と平行に配された回転支軸20まわりに低速度で回転させることにより、撹拌槽1内の被処理液体Lに与える遠心力の作用方向に対して撹拌槽1の傾斜方向を変動させる。これにより、撹拌槽1の公転により生じる遠心力が、被処理液体Lに対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽1の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発し、被処理液体Lは、撹拌槽1内を上下左右方向へ流動(3次元運動)する。
【解決手段】単一の駆動モータ11により、垂直な回転主軸6に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜支持された撹拌槽1を、回転主軸6まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、回転主軸6と平行に配された回転支軸20まわりに低速度で回転させることにより、撹拌槽1内の被処理液体Lに与える遠心力の作用方向に対して撹拌槽1の傾斜方向を変動させる。これにより、撹拌槽1の公転により生じる遠心力が、被処理液体Lに対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽1の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発し、被処理液体Lは、撹拌槽1内を上下左右方向へ流動(3次元運動)する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の撹拌・脱泡方法および装置に関し、さらに詳細には、複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物について、その内部に混入している気泡を脱泡しながら攪拌処理する攪拌・脱泡技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物について、攪拌・脱泡する従来技術としては、これら複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物(以下、被処理液体と称する。)が充填収容された撹拌槽を公転させることにより、あるいはさらにこの公転に加えて撹拌槽を自転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入している気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する方法がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
ところが、このように大気圧下で撹拌槽を公転させることによる、さらにはこの公転に自転を加えることによる遠心力作用では、大気圧下で被処理液体中に混入した気泡までも完全に脱泡することは困難ないしは不可能であり、したがって、被処理液体にあまり高い精度の脱泡効果を要求されない場合には有効に機能する反面、高い精度の脱泡効果が要求される場合には十分に機能し得ないという問題があった。
【0004】
この点に関して、上記撹拌槽の公転(さらには自転の併用)による遠心力作用に加えて、この遠心力作用による撹拌・脱泡を真空状態下で行うようにした方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
この真空技術を利用した攪拌・脱泡装置は、図10に示すように、被処理液体が収容された撹拌槽a、aが、回転駆動するアーム体b上に自転可能に設けられるとともに、これら撹拌槽a、aおよびアーム体bが箱状の真空チャンバc内に収納されてなり、この真空チャンバc内が、真空ポンプdを備える真空手段eにより真空状態とされる構造とされている。
【0006】
そして、真空手段eの真空ポンプdにより、真空チャンバc内つまりは真空チャンバc内に設けられた撹拌槽a、a内が真空状態とされ、この真空状態下で、撹拌槽a、aが、駆動モータfによるアーム体bの回転動作による公転と、自転制御装置gによる自転とにより、撹拌槽a、a内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−71110号公報
【特許文献2】特開平7−289873号公報
【特許文献3】特許第3627220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような真空状態下で撹拌槽a、aを公転しながら自転させる方法・装置では、真空チャンバc内を真空状態に保つための構造が複雑かつ大掛かりとなり、装置コスト、ランニングコストの高騰を招いていた。
【0009】
すなわち、図10に示すように、真空チャンバc内には、装置の主要部である撹拌槽a、aおよびアーム体bが装着されることから、真空チャンバcの内容積つまり真空状態とすべき空間が大きくて、真空ポンプdの大容量化を招いており、また、これら回転系a、a、bが真空チャンバc外部に設けられた駆動源である駆動モータfおよび自転制御装置gと駆動連結されていることから、これら駆動連結部の気密性を保持するためのシール構造も複雑かつ大掛かりとなる。その結果、装置構造が大型かつ複雑で、装置コストの上昇を招くととともに、ランニングコストも上昇傾向にあった。
【0010】
また、従来のこの種の撹拌槽の公転・自転作用を利用した撹拌・脱泡装置においては、公転用の回転駆動源と自転用の回転駆動源の双方を必要として、この点においても、装置構造の大型化、複雑化を招き、やはり装置コスト、ランニングコストの高騰を招いていた。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、従来の液体の攪拌・脱泡技術と遜色のない優れた撹拌脱泡効果を発揮するとともに、構造が簡単かつコンパクトで、ランニングコストの低減化も図ることができる撹拌・脱泡方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的とするところは、上記撹拌・脱泡方法を有効に実施する構成を備えた撹拌・脱泡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液体の撹拌・脱泡方法は、被処理液体が充填収容された撹拌槽を水平方向に公転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入する気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する攪拌・脱泡方法であって、単一の駆動源により、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、上記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、上記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、上記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向を変動させることを特徴とする。
【0014】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、前記撹拌内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにしたもの。
【0015】
(2)上記撹拌槽の回転速度を、上記公転速度の−1/20〜1/20に設定するもの。
【0016】
(3)上記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度であるもの。
【0017】
(4)上記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分であるもの。
【0018】
(5)上記撹拌槽の公転速度を、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するようにしたもの。
【0019】
(6)上記撹拌工程の途中で、上記撹拌槽の公転方向を逆転させるようにしたもの。
【0020】
また、本発明の第1の液体の撹拌・脱泡装置は、上記撹拌・脱泡方法を実行するもので、被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、垂直な公転軸に対して、筒形容器からなる撹拌槽が所定の傾斜角度をもって傾斜支持され、上記撹拌槽は、単一の駆動源により、上記公転軸まわりに公転されるとともに、この公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転されて、上記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされていることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の第2の液体の撹拌・脱泡装置は、同じく上記撹拌・脱泡方法を実行するもので、被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、上記撹拌槽は、気密構造を備える真空容器の形態とされ、上記撹拌槽内を個別に真空状態とする真空手段を備えてなり、この真空手段は、上記撹拌槽に個別にかつ着脱可能に取付け接続されて、この撹拌槽内と連通可能な真空配管を備えることを特徴とする。
【0022】
上記第1および第2の液体の撹拌・脱泡装置の好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
【0023】
(1)上記公転軸を構成する回転主軸に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される回転テーブルと、この回転テーブル上に回転可能に支持されて上記垂直軸を構成する回転支軸に、傾斜した状態で取り付けられた上記撹拌槽と、上記回転主軸と回転支軸とを駆動連結する遊星歯車機構と、上記回転主軸を回転駆動する駆動モータとを備えてなり、この駆動モータによる上記回転主軸の回転駆動により、上記撹拌槽は、上記回転主軸まわりに所定の速度をもって公転されるとともに、上記回転支軸まわりに上記公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした所定の回転速度で回転されて、上記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている。
【0024】
(2)上記遊星歯車機構は、上記回転主軸と同心状にかつ静止状に設けられた上記太陽歯車と、上記回転支軸に同心状にかつ一体的に設けられた上記遊星歯車と、これら太陽歯車および遊星歯車の間に噛合状態で介装されるとともに、上記回転テーブルに回転可能に支持される少なくとも一つの中間歯車とを備えてなる。
【0025】
(3)上記太陽歯車と上記遊星歯車とが、単一の上記中間歯車を介して駆動連結されている。
【0026】
(4)上記太陽歯車と上記遊星歯車とが、二つの上記中間歯車を介して駆動連結されている。
【0027】
(5)上記撹拌槽の回転速度が、上記公転速度の−1/20〜1/20に設定されている。
【0028】
(6)上記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である。
【0029】
(7)上記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である。
【0030】
(8)上記駆動モータを駆動制御する制御手段を備えてなり、この制御手段は、上記撹拌槽の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように、上記駆動モータを駆動制御する。
【0031】
(9)上記制御手段は、上記撹拌工程の途中で、上記撹拌槽の公転方向を逆転させるように、上記駆動モータを駆動制御する。
【0032】
(10)上記真空手段は、上記撹拌槽の配設数に対応して設けられた複数本の上記真空配管を備え、これら真空配管の先端接続部には、上記撹拌槽にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える。
【0033】
(11)上記撹拌槽内に取出し可能に収納固定される液体容器を備え、この液体容器は、その天部に上記撹拌槽内に連通可能な連通穴が設けられている。
【0034】
(12)上記液体容器の内周面は、多角形状断面を有する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の撹拌・脱泡方法によれば、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、単一の駆動源により、上記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、上記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、上記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向を変動させるようにしたから、撹拌槽の公転により生じる遠心力が、被処理液体に対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発する。
【0036】
その結果、被処理液体は、上記撹拌槽内を上下左右方向へ流動(3次元運動)して、被処理液体中に混入している気泡が液体と有効に分離されながら(脱泡作用)、液体の撹拌が有効に行われる(攪拌作用)。
【0037】
この場合、上記撹拌槽の回転速度を、その公転速度の−1/20〜1/20という低速またはゼロに設定することにより、撹拌槽の回転により生じる遠心力が、撹拌槽の公転により生じる遠心力を相殺することなく最大限度有効に発揮させて、円滑な3次元運動を確保することができる。
【0038】
しかも、上記撹拌槽の公転と回転を単一の駆動源により行うことにより、駆動源の小型化・省力化を図り、ひいては、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を実現することができる。
【0039】
また、上記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、この撹拌槽内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにすることにより、大気圧下で被処理液体中に混入している気泡も完全に脱泡することができ、高い精度の脱泡効果が要求される被処理液の処理にも十分に機能を発揮し対応し得る。
【0040】
しかも、本来真空状態にする必要がある撹拌槽内を個別に真空にする方式としたことにより、従来のように真空チャンバ内に撹拌槽(通常複数個)を含めた回転系を装着して、撹拌槽内を真空状態にする方式に比較して、真空状態とすべき空間がはるかに小さく、真空手段の真空駆動源の容量の小型化を図ることができるとともに、真空空間の気密構造も簡素化でき、この点からも、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1である液体の撹拌・脱泡装置を示す正面図である。
【図2】同じく同撹拌・脱泡装置の内部構造を示す正面断面図である。
【図3】同じく同撹拌・脱泡装置の開閉蓋を取り除いて示す平面図である。
【図4】同じく同撹拌・脱泡装置の一部を切開するとともに図2のIV−IV線に沿った平面断面図である。
【図5】同撹拌・脱泡装置の撹拌槽の構造を示す一部断面正面図である。
【図6】同撹拌・脱泡装置の撹拌槽における真空配管の接続構造を拡大して示す断面図である。
【図7】同撹拌・脱泡装置の真空装置における配管仮置き部の構造を一部断面で示す正面図である。
【図8】同撹拌・脱泡装置の真空装置における液体フィルタの構造を示す正面断面図である。
【図9】同撹拌・脱泡装置の真空装置の全体構成を示すブロック線図である。
【図10】従来の液体の撹拌・脱泡装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0043】
実施形態1
本発明に係る液体の撹拌・脱泡装置が図1〜図9に示されており、この撹拌・脱泡装置は、具体的には、被処理液体Lとして例えば塗料や印刷用インクを撹拌・脱泡するためのものである。
【0044】
この撹拌・脱泡装置は、複数(図示の場合は4つ)の撹拌槽1、1、…、これら撹拌槽1、1、…の公転手段を構成する回転テーブル2、撹拌槽1、1、…の回転手段を構成する遊星歯車機構3、および撹拌槽1、1、…の内部を真空状態とする真空手段を構成する真空装置4を主要部として構成され、これら構成部1、2、3、4が装置ケース5内に装置されてなる。なお、装置ケース5において、50は開閉可能な蓋、51は装置ケース5の移動手段としての自在キャスタ、および52は装置ケース5を水平状態に姿勢調整するためのレベルアジャスタをそれぞれ示している。
【0045】
回転テーブル2は円盤状のもので、垂直な回転主軸6に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される。
【0046】
図示の実施形態においては、装置ケース5の基台フレーム7の中心位置に主軸台8が設けられ、この主軸台8に、上記回転主軸6が、回転軸受9、9を介して垂直状態で回転可能に軸支されており、この回転主軸6の上端部に、上記回転テーブル2が固定金具10により水平状態で固定的に取付け支持されている。
【0047】
また、上記回転主軸6の下部が軸支される主軸台8には、回転駆動源としての駆動モータ11が水平状態で取り付けられており、具体的には図示しないが、この駆動モータ11の出力軸に、上記回転主軸6の下部が直接的に歯車連結されている。
【0048】
そして、駆動モータ11の回転駆動により、上記回転主軸6と共に、上記回転テーブル2が水平方向へ所定の回転速度をもって回転駆動される。
【0049】
撹拌槽1は気密構造を備える真空容器の形態とされ、具体的には、図5に示すように、開閉可能な蓋体1aにより密閉可能な筒形容器からなる。蓋体1aは、施蓋時における容器本体1bとの嵌合部にOリング15が介装されて、この部位の気密性が確保されている。撹拌槽1の具体的な気密構造については、真空装置4との関係で後述する。
【0050】
撹拌槽1は、上記回転テーブル2の外周位置に円周方向へ等間隔をもって複数個取り付けられている。図示の実施形態の撹拌槽1は、その内周面が円筒面とされた円筒容器であり、回転テーブル2上に4つ装着される配置構成とされている。
【0051】
つまり、回転テーブル2の外周位置には、4本の回転支軸20、20、…が周方向へ等間隔をもって配置され、各回転支軸20は、軸受21、21により垂直状態で、つまり上記回転主軸6と平行状態で回転可能に軸支され、この回転支軸20の上端部20aに、上記撹拌槽1を取外し可能に収容支持する撹拌槽受け22が傾斜状態で取付け固定されている。23は撹拌槽1を撹拌槽受け22に固定させるための押え金具を示しており、この押え金具23の具体的な締付けについては、真空装置4および撹拌槽1の気密構造との関係で後述する。
【0052】
上記撹拌槽受け22は、図2に示すように、その底部が上記回転支軸20の上端部20aに固設されるとともに、その上部が開放されて、撹拌槽1を上側から収容保持される形状とされている。そして、この撹拌槽受け22に撹拌槽1が収容された状態において、撹拌槽1は、その軸線が上記回転主軸6の軸線に対して所定角度αだけ傾斜するように構成されている。
【0053】
上記撹拌槽1の軸線の傾斜角度αは、具体的には10度〜45度、望ましくは12度〜20度に設定され、図示の実施形態においては、15度の傾斜角度αとされている。
【0054】
このように傾斜角度αが設定されるのは、傾斜角度αが10度よりも小さい場合、および45度よりも大きい場合、撹拌槽1の内周傾斜面と後述する撹拌槽1の公転により生じる遠心力との協働作用が確実に得られないからである。
【0055】
遊星歯車機構3は、前述したように撹拌槽1の回転手段を構成するもので、少なくとも、上記回転主軸6と同心状に設けられた太陽歯車25と、上記回転支軸20に同心状に設けられた遊星歯車26とを含んでなり、具体的には、上記太陽歯車25、上記遊星歯車26、およびこれら太陽歯車25および遊星歯車26の間に噛合状態で介装される少なくとも一つの中間歯車27とを備えてなる。中間歯車27の配設数は、遊星歯車26つまり撹拌槽1の回転方向と回転速度を考慮して設定される。図示の実施形態においては、太陽歯車25と遊星歯車26とが単一の中間歯車27を介して駆動連結されて、遊星歯車26つまり撹拌槽1が公転方向(回転テーブル2の回転方向)と逆方向へ回転する構成とされている。
【0056】
太陽歯車25は、上記回転テーブル2の回転主軸6と同心状にかつ静止状に設けられており、具体的には、図2に示すように、軸受28、28を介して上記回転主軸25に相対回転可能に軸支されるとともに、図示しない回止め手段によって、その回転運動が静止固定されている。
【0057】
遊星歯車26は、上記回転テーブル2に回転可能に軸支された上記回転支軸20に同心状にかつ一体的に設けられており、具体的には、図2に示すように、回転テーブル2の下側に突出した上記回転支軸20の下端部に、一体的に取付けられている。
【0058】
中間歯車27は、太陽歯車25および遊星歯車26の間に噛合状態で介装されるもので、具体的には、図2に示すように、上記回転テーブル2の下側において、回転テーブル2に支持固定された回転支軸29に、軸受30、30を介して回転可能に軸支されるとともに、上記太陽歯車25および遊星歯車26にそれぞれ噛合されている。
【0059】
すなわち、図3および図4を参照して、回転テーブル2の回転(矢符X方向)により、この回転テーブル2上に配置支持された4つの撹拌槽1、1、…も回転(公転)するところ、これら撹拌槽1、1、…の回転支軸20、20、…には、上記遊星歯車機構3の遊星歯車26がそれぞれ取付け固定されている。この遊星歯車機構3において、太陽歯車25は上述のごとく静止固定されているから、これら両歯車20、21に噛合連結された中間歯車27を介して、上記遊星歯車26は太陽歯車25のまわりをX方向へ公転しながら、この公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした回転速度をもって公転方向と逆方向へ回転することになる。
【0060】
この場合、上記撹拌槽1の回転速度は、遊星歯車機構3を構成する太陽歯車25、中間歯車27および遊星歯車26の歯車比により決定され、公転速度の−1/20〜0に設定され、望ましくは−1/30〜−1/40に設定される。上記撹拌槽1の公転速度は、遠心力が有効に働くことを考慮して、100〜300回転/分に設定されており、したがって、撹拌槽1の回転速度は5回転〜15回転/分に設定される。
【0061】
このように撹拌槽1の回転速度が設定されるのは、撹拌槽1の回転速度が公転速度の1/20よりも大きいと、撹拌槽1の公転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果が、撹拌槽1の回転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果によって減小され、ないしは相殺されて十分に発揮されず、撹拌槽1内における被処理液体Lの活発な動きが得られず、一方、撹拌槽1の回転速度が公転速度の0〜1/20の大きさにあると、撹拌槽1の公転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果が十分に発揮されて、被処理液体Lの動きが、単なる水平方向の動きに止まらず、撹拌槽1の傾斜角度αによる傾斜内面との協働作用による上下方向の動きも誘発されるからであり(3次元運動)、この作用効果は、撹拌槽1の回転速度が公転速度の−1/30〜−1/40に設定されると、より大きな作用効果が得られる。
【0062】
また、撹拌槽1が公転のみで、回転しない場合(つまり回転速度0の場合)よりも、上記のように公転速度の1/20以下の非常にゆっくりした回転速度をもって回転する方が、撹拌槽1内の被処理液L全体に上記撹拌槽1の公転による遠心力が有効に作用して、撹拌槽1内のすべての被処理液Lが円滑な3次元運動を行うことができる。
【0063】
図示の実施形態においては、撹拌槽1の回転速度は公転速度の1/36に設定されている。
【0064】
真空装置(真空手段)4は、撹拌槽1、1、…の内部を真空状態とするもので、具体的には、これら撹拌槽1、1、…の内部を個別に真空状態にする構成とされている。
【0065】
この真空装置4は、図9に示すように、駆動源である真空ポンプ35、液体フィルタ36、マニホールド37、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)および真空ゲージ39を主要部として備えてなる。
【0066】
真空ポンプ35は、排気口35aが配管40aを介して大気に解放されるとともに、吸気口35bが配管40bを介して上記液体フィルタ36の排気口36aに連通されている。
【0067】
液体フィルタ36は、撹拌槽1から吸い上げた空気中に含まれる被処理液体Lを濾過除去するもので、具体的構造が図8に示されている。図示の実施形態の液体フィルタ36は、箱型容器の形態とされた中空のフィルタ本体36cの天井部に、上記排気口36aおよび吸気口36bが設けられている。これら排気口36aおよび吸気口36bは、それぞれ、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、これら継手部材100a、100aの具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様であり、具体的に図示しないが、接続相手となる配管40b、40cの端部にも、後述する継手部材100b、100bが設けられている。上記排気口36aおよび吸気口36bは、それぞれニップル41、42を介して、フィルタ本体36c内部に連通されている。
【0068】
また、フィルタ本体36cの天井部には、内部に濾過され貯留された被処理液体L等を排出するための排液口43が設けられている。この排液口43は、蓋部材44により開閉可能に閉塞されている。45はOリングを示している。
【0069】
マニホールド37は、その排気口37aが配管40cを介して上記液体フィルタ36の吸気口36bに連通されるとともに、配管40dを介して真空ゲージ39に連通可能とされている。配管40dには電磁弁46が設けられている。この電磁弁46は上記真空ポンプ35に連動して開閉され、真空ポンプ35がON(稼働)のとき開弁されて、真空ゲージ39により撹拌槽1の真空度が計測され、一方、真空ポンプ35がOFF(停止)のとき閉弁される。上記排気口37bは、具体的には図示しないが、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、その具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様である。同様に、具体的に図示しないが、接続相手となる配管40cの端部にも、後述する継手部材100bが設けられている。
【0070】
また、マニホールド37は、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の配設数に対応して複数(図示の場合は4つ)の吸気口37bを備えこれら吸気口37b、37b、37b、37bがそれぞれ接続用真空配管38A、38B、38C、38Dに接続されている。これら吸気口37b、37b、37b、37bは、具体的には図示しないが、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、これら継手部材100a、…の具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様である。同様に、具体的に図示しないが、接続相手となる接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の端部にも、後述する継手部材100bが設けられている。
【0071】
接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)は、上記4つの撹拌槽1、1、1、1にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える。
【0072】
この管継手構造を構成する管継手(カプラー)100は、図5に示すように、撹拌槽1の蓋体1aに取り付けられて、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材100aと、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の接続端に取り付けられる継手部材100bとからなる従来周知の基本構造を備え、その具体的構造が図6に示される。
【0073】
すなわち、この管継手100は、雄部材としてのプラグの形態とされた継手部材100aと、雌部材としてのソケットの形態とされた継手部材100bとからなり、これら両者100a、100bは、ワンタッチでの着脱が可能な構造と、非接続時は常時閉止し、接続時は常時開口する弁構造を備えている。
【0074】
プラグ100aは図示のごとく雄型円筒形状とされ、その外周部に環状のロックボール係止溝101が設けられるとともに、内部に弁体102が開閉動作可能に内装されている。この弁体102は、弾発スプリング103により、弁座104との当接係合方向へ常時弾発付勢されて、プラグ100aを常態(非接続時)において閉止状態に保つ。プラグ100aは、ニップル105を介して、撹拌槽1の蓋体1aに連通可能に接続されて、撹拌槽1の排気口50を形成している。
【0075】
ソケット100bは、図示のごとく雌型円筒形状とされ、複数のロックボール106、106、…が径方向へ移動可能に収容保持されるとともに、外周部に、これらロックボール106、106、…の径方向移動を制御する操作スリーブ107が軸方向へ移動可能に設けられている。108は、操作スリーブ107を常時ソケット先端方向へ弾発付勢する弾発スプリングを示している。ソケット100bとソケット100bは、接続端部109が接続真空配管38(38A、38B、38C、38D)の端部に嵌入接続されている。
【0076】
そして、ソケット100bの操作スリーブ107を、弾発スプリング108の弾発付勢力に抗して、ソケット先端部から後退させることにより、ロックボール106、106、…の径方向移動が可能となり、プラグ100aのソケット100bへの挿入が可能となる。プラグ100aのソケット100bへの挿入により、ロックボール106、106、…がプラグ100aのロックボール係止溝101に突入係止した状態で、操作スリーブ107を弾発スプリング108の弾発付勢力によりソケット先端部へ移動させることにより、ロックボール106、106、…のロックボール係止溝101に対する突入係止状態がロックされ、プラグ100aとソケット100bの接続状態が得られる(図6(b)参照)。
【0077】
一方、この接続状態から、操作スリーブ107を再びソケット先端部から後退させて、上記と逆の操作をすることにより、ロックボール106、106、…が上記ロックボール係止溝101から離脱して、プラグ100aとソケット100bの接続状態が解除される。このように、プラグ100aとソケット100bの着脱(接続と取外し)は、操作スリーブ107のワンタッチ操作で行える。
【0078】
また、管継手100は、図6(a)に示すように、プラグ100aとソケット100bの非接続時においては、プラグ100aが閉止状態にあり、一方、図6(b)に示すように、プラグ100aとソケット100bの接続時においては、ソケット100bの弁体110がプラグ100aの弁体102を弾発スプリング103の弾発付勢力に抗して後退させる結果、弁体102が弁座104から離脱して、プラグ100aを開放状態に保ち、プラグ100aとソケット100bの連通状態が保たれる。
【0079】
なお、管継手100の構造は同様の機能を有する限り、図示のものに特に限定されず、一般市販のものが適宜選択採用される。図示の実施形態の管継手100は、日東工器株式会社製のSPカプラ(商品名)が採用されている。
【0080】
また、上記のように、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38Dが、撹拌槽1内を真空状態にする時のみ撹拌槽1に接続される構造に関連して、図3に示すように、装置ケース5の上面側部には、これら接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)のソケット100b、100b、100b、100bを仮置きするための仮置き部111と、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)を収納する配管収納部112が設けられている。
【0081】
仮置き部111は、図7に示すように、上記4つのソケット100b、100b、100b、100bを起立状に差込み保持する保持プラグ111a、111a、111a、111aが、基台111b上に整列配置されてなる。
【0082】
配管収納部112は、上記仮起き部111に隣接して設けられ、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)を折り曲げ収納する収納凹部の形態とされている。
【0083】
また、前述したように、上記真空装置4との関係で、撹拌槽1は気密構造を備え、その具体的構造が図5に示されている。
【0084】
撹拌槽1としては、気密性に優れるとともに、液体に対する耐性に優れる材料からなるものが好ましく、例えば、構成材料としてアセタール樹脂が好適に採用され、図示の実施形態においては、「デルリン」(登録商標:米国デュポン社)が構成材料として使用されている。
【0085】
また、上記撹拌槽1の蓋体1aの施蓋構造は、撹拌槽1を撹拌槽受け22に取付け固定する際の押え金具23により共締め固定する構成とされている。
【0086】
すなわち、図1、図3および図5に示すように、上記押え金具23は、直線棒状の形態とされて、その両端部23a、23b(図5参照)が、撹拌槽受け22の係合凹部22a、22bに挿入係止する構造とされるとともに、その中央部に手動操作可能な締付けボルト51が設けられている。この締付けボルト51は、上記押え金具23に、上下方向へ螺進退可能に取り付けられるとともに、その先端51aが撹拌槽1の蓋体1aに設けられた受け部材52の上面に当接係止している。
【0087】
そして、撹拌槽1の容器本体1bの開口を蓋体1aにより閉塞するとともに、押え金具23の両端部23a、23bを、撹拌槽受け22の係合凹部22a、22bにそれぞれ挿入係止した状態で、締付けボルト51を締付け回転操作すると、締付けボルト51が、押え金具23を螺進しながら、その先端51aで蓋体1aを押圧する。これにより、押え金具23と蓋体1aは、互いに離れる方向へ押されて共締め状態となり、蓋体1aが容器本体1bに緊密に施蓋されると同時に、撹拌槽1が撹拌槽受け22に締付け固定されることになる。
【0088】
また、図5に二点鎖線で示すように、上記撹拌槽1内に取出し可能に収納固定される液体容器55を備えることも可能である。このような構成とすることにより、液体容器55は個々の被処理液体Lに専用の容器として使用することができ、撹拌槽1の内周面に被処理液体Lが直接触れることを避けることができるとともに、撹拌・脱泡処理後もそのまま被処理液体Lの収納容器として使用することができ、取扱い性が大幅に向上する。
【0089】
なお、このような構成とした場合には、液体容器55の天部に撹拌槽1内に連通可能な連通穴(図示省略)が設けられることになる。
【0090】
さらに、この液体容器55の内周面が多角形状断面とされることにより、撹拌槽1の公転による撹拌作用の向上を図ることができる。
【0091】
しかして、以上のように構成された撹拌・脱泡装置において、被処理液体Lにあまり高い精度の脱泡効果を要求されない場合、回転テーブル2上に回転可能に設けられた撹拌槽受け22、22、…に、被処理液Lを充填収容された撹拌槽1、1、…がそれぞれ収容保持された状態で、回転テーブル2が回転駆動されると、撹拌槽1は垂直な回転主軸(公転軸)6まわりに水平方向に所定の速度をもって公転され、これにより、撹拌槽1内の被処理液Lに遠心力が与えられて、被処理液体L中に混入する気泡が脱泡されながら、被処理液体Lが攪拌される。
【0092】
この場合、撹拌槽1は、上記回転主軸6に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜支持されるとともに、上記回転主軸6と平行に配された回転支軸(垂直軸)20まわりにゆっくりした所定の低速度で回転されるので、撹拌槽1の傾斜方向が上記撹拌槽1内の被処理液体Lに与える遠心力の作用方向に対して変動する。
【0093】
したがって、撹拌槽1の公転により生じる遠心力は、被処理液体Lに対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽1の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発することになり、その結果、被処理液体Lは、撹拌槽1内を上下左右方向へ流動(3次元運動)して、被処理液体L中に混入している気泡が液体と有効に分離されながら(脱泡作用)、液体の撹拌が有効に行われる(攪拌作用)。
【0094】
この場合、上記撹拌槽1の回転速度が、その公転速度の−1/20〜1/20という低速に設定されていることにより、撹拌槽1の回転により生じる遠心力が、撹拌槽1の公転により生じる遠心力を相殺することなく最大限度有効に発揮させて、円滑な3次元運動を確保することができる。
【0095】
しかも、上記撹拌槽1の公転と回転が単一の駆動源である駆動モータ11により行われることにより、駆動源の小型化・省力化が図られ、ひいては、装置構造の小型化、簡素化が促進されて、装置コスト、ランニングコストの低減化を実現することができる。
【0096】
また、被処理液体Lに高い精度の脱泡効果が要求される場合には、真空装置4を駆動させて、上述した撹拌工程を行う。
【0097】
すなわち、気密構造を備える真空容器からなる各撹拌槽1内に被処理液体Lを充填収容して密封した後、各撹拌槽1内を個別に真空状態として、上述した撹拌工程を行う。これにより、大気圧下で被処理液体L中に混入している気泡も完全に脱泡することができ、高い精度の脱泡効果が要求される被処理液体Lの処理にも十分に機能を発揮し対応し得る。
【0098】
しかも、本来真空状態にする必要がある撹拌槽1内を個別に真空にする方式であるから、図10に示す従来装置のように、真空チャンバc内に撹拌槽(通常複数個)aを含めた回転系を装着して、撹拌槽a内を真空状態にする方式に比較して、真空状態とすべき空間がはるかに小さく、真空装置4の真空ポンプ35の容量の小型化を図ることができるとともに、真空空間の気密構造つまり撹拌槽1の気密構造も簡素化でき、この点からも、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【0099】
実施形態2
本実施形態は、実施形態1の撹拌・脱泡装置の構成を改変したものであり、本実施形態の撹拌・脱泡装置は、回転主軸6を回転駆動する駆動モータ11を駆動制御する制御部(制御手段)200を備えて、撹拌槽1の公転速度が可変に自動制御される構成とされている。
【0100】
すなわち、本実施形態の駆動モータ11は、上記制御部200に電気的に接続されており、この制御部200の工程プログラムに従って自動制御される。
【0101】
制御部200は、具体的には、CPU、ROM、RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成され、この制御部200には、上述した撹拌工程を実行させるための工程プログラム等が予め組み込まれるとともに、駆動モータ11の駆動に必要な種々の情報、例えば、回転テーブル2の回転速度(撹拌槽1の公転速度)、動作時間、速度変更タイミングあるいは撹拌工程の加工時間等が、制御データとして予め、または装置ケース5に設けられた操作盤201のタッチパネル201a(図3参照)により適宜選択的に入力設定されており、これらのデータに従って上記駆動モータ11が自動制御される。
【0102】
上記操作盤201は、上記タッチパネル201aのほか、装置の起動および停止ボタン201b、201c、真空装置4のONおよびOFFボタン201d、201eを備える。
【0103】
上記タッチパネル201aは、設定部と表示部の両機能を兼備したタッチパネルディスプレイ装置の形態とされており、このタッチパネルディスプレイ装置201aは、液晶画面からなるディスプレイ部が、手指によるタッチ操作により上記設定部と表示部を切替え表示する構成とされている。
【0104】
そして、上記タッチパネルディスプレイ装置201aのディスプレイ部が上記設定部の画面を液晶表示している時は、この設定部の操作パネルを手指によりタッチ操作することにより、上記制御データを入力設定することができ、一方、上記表示部の画面を液晶表示している時は、装置の運転条件(回転テーブル2の回転速度や動作時間)、あるいは運転経過時間等の必要情報が液晶表示される。
【0105】
そして、駆動モータ11の回転駆動により、上記回転主軸6と共に、上記回転テーブル10が水平方向へ所定の回転速度をもって回転駆動される。この場合の回転テーブル10の回転速度つまり後述する撹拌槽1の公転速度は、後述するように、制御部200の工程プログラムに従って、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように自動制御される。
【0106】
本実施形態における具体的な工程プログラムとしては、従来装置と同様な一般的な工程パターン、つまり、撹拌槽1、1、…の公転速度が撹拌工程の開始から完了まで所定の一定値になるように、上記駆動モータ11が駆動制御される定速工程パターンと、撹拌槽1、1、…の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように上記駆動モータ11が駆動制御される変速工程パターンとが含まれている。
【0107】
また、後者の変速工程パターンとしては、例えば、(1)撹拌槽1の公転速度が、撹拌工程の初期から仕上期に向けて段階的に低速から高速に変更するパターン、また(2)撹拌槽1の公転速度が、撹拌工程の初期から仕上期に向けて連続的に低速から高速に変更するパターンなどがある。
【0108】
さらに、(3)撹拌工程の加工時間が回転テーブル2の動作時間の合計の2倍の時間に設定されて、上記定速工程パターンまたは変速工程パターンの撹拌加工の完了後、これに続く残りの動作時間が仕上期の高速と同じ速度でまたは変更した速度で逆回転する逆転仕上期とされるパターンがある。
【0109】
図示の実施形態においては、(1)の工程パターンとして、撹拌工程の初期が100rpmの低速度で1分間、中期が150rpmの中速度で2分間、および仕上期が180rpmの高速度で3分間撹拌工程を行うように設定されている。
【0110】
また、(2)の工程パターンとして、撹拌工程の初期の100rpmの低速度から仕上期の180rpmの高速度まで連続的に増速し、この仕上期が3分間に設定されている。
【0111】
しかして、以上のように構成された撹拌・脱泡装置において、回転テーブル2上に自転可能に設けられた撹拌槽受け22、22、…に、被処理液体Lが充填収容された撹拌槽1がそれぞれ収容保持された状態で、操作盤201で所望の工程プログラムを選択した後、起動ボタン201bを起動操作することにより、制御部200により、駆動モータ11が自動制御されて、回転テーブル2が予め設定された工程パターンをもって回転駆動される。
【0112】
以上のように、本実施形態によれば、撹拌工程において、撹拌槽1の公転速度を予め設定された工程プログラムに沿って、または適宜変更するように制御されるから、被処理液Lの種類・特性に関わらず、最適な条件での撹拌工程が実行し得る。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
【0113】
なお、上述した実施形態1および2はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲において種々の設計変更が可能である。
【0114】
例えば、図示の実施形態の遊星歯車機構3においては、太陽歯車25と遊星歯車26とが単一の中間歯車27を介して駆動連結されて、撹拌槽1が公転方向(回転テーブル2の回転方向)Xと逆方向へ自転する構成とされているところ、具体的には図示しないが、前述した公転速度と回転速度との関係を保持しつつ、上記太陽歯車25と上記遊星歯車26とが、二つの中間歯車27、27を介して駆動連結される構成とすることにより、撹拌槽1が上記公転方向Xと同一方向へ自転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 撹拌槽
2 回転テーブル
3 遊星歯車機構
4 真空装置(真空手段)
6 回転主軸(公転軸)
11 駆動モータ
20 回転支軸(垂直軸
22 撹拌槽受け
23 押え金具
25 太陽歯車
26 遊星歯車
27 中間歯車
35 真空ポンプ
36 液体フィルタ
37 マニホールド
38(38A、38B、38C、38D) 接続用真空配管
39 真空ゲージ
L 被処理液体
α 撹拌槽の傾斜角度
100 管継手
111 仮置き部
200 制御部(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の撹拌・脱泡方法および装置に関し、さらに詳細には、複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物について、その内部に混入している気泡を脱泡しながら攪拌処理する攪拌・脱泡技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物について、攪拌・脱泡する従来技術としては、これら複数種類の液体、液体と粉末、あるいはこれらの混合物(以下、被処理液体と称する。)が充填収容された撹拌槽を公転させることにより、あるいはさらにこの公転に加えて撹拌槽を自転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入している気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する方法がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
ところが、このように大気圧下で撹拌槽を公転させることによる、さらにはこの公転に自転を加えることによる遠心力作用では、大気圧下で被処理液体中に混入した気泡までも完全に脱泡することは困難ないしは不可能であり、したがって、被処理液体にあまり高い精度の脱泡効果を要求されない場合には有効に機能する反面、高い精度の脱泡効果が要求される場合には十分に機能し得ないという問題があった。
【0004】
この点に関して、上記撹拌槽の公転(さらには自転の併用)による遠心力作用に加えて、この遠心力作用による撹拌・脱泡を真空状態下で行うようにした方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
この真空技術を利用した攪拌・脱泡装置は、図10に示すように、被処理液体が収容された撹拌槽a、aが、回転駆動するアーム体b上に自転可能に設けられるとともに、これら撹拌槽a、aおよびアーム体bが箱状の真空チャンバc内に収納されてなり、この真空チャンバc内が、真空ポンプdを備える真空手段eにより真空状態とされる構造とされている。
【0006】
そして、真空手段eの真空ポンプdにより、真空チャンバc内つまりは真空チャンバc内に設けられた撹拌槽a、a内が真空状態とされ、この真空状態下で、撹拌槽a、aが、駆動モータfによるアーム体bの回転動作による公転と、自転制御装置gによる自転とにより、撹拌槽a、a内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−71110号公報
【特許文献2】特開平7−289873号公報
【特許文献3】特許第3627220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような真空状態下で撹拌槽a、aを公転しながら自転させる方法・装置では、真空チャンバc内を真空状態に保つための構造が複雑かつ大掛かりとなり、装置コスト、ランニングコストの高騰を招いていた。
【0009】
すなわち、図10に示すように、真空チャンバc内には、装置の主要部である撹拌槽a、aおよびアーム体bが装着されることから、真空チャンバcの内容積つまり真空状態とすべき空間が大きくて、真空ポンプdの大容量化を招いており、また、これら回転系a、a、bが真空チャンバc外部に設けられた駆動源である駆動モータfおよび自転制御装置gと駆動連結されていることから、これら駆動連結部の気密性を保持するためのシール構造も複雑かつ大掛かりとなる。その結果、装置構造が大型かつ複雑で、装置コストの上昇を招くととともに、ランニングコストも上昇傾向にあった。
【0010】
また、従来のこの種の撹拌槽の公転・自転作用を利用した撹拌・脱泡装置においては、公転用の回転駆動源と自転用の回転駆動源の双方を必要として、この点においても、装置構造の大型化、複雑化を招き、やはり装置コスト、ランニングコストの高騰を招いていた。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、従来の液体の攪拌・脱泡技術と遜色のない優れた撹拌脱泡効果を発揮するとともに、構造が簡単かつコンパクトで、ランニングコストの低減化も図ることができる撹拌・脱泡方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的とするところは、上記撹拌・脱泡方法を有効に実施する構成を備えた撹拌・脱泡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液体の撹拌・脱泡方法は、被処理液体が充填収容された撹拌槽を水平方向に公転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入する気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する攪拌・脱泡方法であって、単一の駆動源により、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、上記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、上記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、上記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向を変動させることを特徴とする。
【0014】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、前記撹拌内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにしたもの。
【0015】
(2)上記撹拌槽の回転速度を、上記公転速度の−1/20〜1/20に設定するもの。
【0016】
(3)上記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度であるもの。
【0017】
(4)上記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分であるもの。
【0018】
(5)上記撹拌槽の公転速度を、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するようにしたもの。
【0019】
(6)上記撹拌工程の途中で、上記撹拌槽の公転方向を逆転させるようにしたもの。
【0020】
また、本発明の第1の液体の撹拌・脱泡装置は、上記撹拌・脱泡方法を実行するもので、被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、垂直な公転軸に対して、筒形容器からなる撹拌槽が所定の傾斜角度をもって傾斜支持され、上記撹拌槽は、単一の駆動源により、上記公転軸まわりに公転されるとともに、この公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転されて、上記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされていることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の第2の液体の撹拌・脱泡装置は、同じく上記撹拌・脱泡方法を実行するもので、被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、上記撹拌槽は、気密構造を備える真空容器の形態とされ、上記撹拌槽内を個別に真空状態とする真空手段を備えてなり、この真空手段は、上記撹拌槽に個別にかつ着脱可能に取付け接続されて、この撹拌槽内と連通可能な真空配管を備えることを特徴とする。
【0022】
上記第1および第2の液体の撹拌・脱泡装置の好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
【0023】
(1)上記公転軸を構成する回転主軸に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される回転テーブルと、この回転テーブル上に回転可能に支持されて上記垂直軸を構成する回転支軸に、傾斜した状態で取り付けられた上記撹拌槽と、上記回転主軸と回転支軸とを駆動連結する遊星歯車機構と、上記回転主軸を回転駆動する駆動モータとを備えてなり、この駆動モータによる上記回転主軸の回転駆動により、上記撹拌槽は、上記回転主軸まわりに所定の速度をもって公転されるとともに、上記回転支軸まわりに上記公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした所定の回転速度で回転されて、上記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている。
【0024】
(2)上記遊星歯車機構は、上記回転主軸と同心状にかつ静止状に設けられた上記太陽歯車と、上記回転支軸に同心状にかつ一体的に設けられた上記遊星歯車と、これら太陽歯車および遊星歯車の間に噛合状態で介装されるとともに、上記回転テーブルに回転可能に支持される少なくとも一つの中間歯車とを備えてなる。
【0025】
(3)上記太陽歯車と上記遊星歯車とが、単一の上記中間歯車を介して駆動連結されている。
【0026】
(4)上記太陽歯車と上記遊星歯車とが、二つの上記中間歯車を介して駆動連結されている。
【0027】
(5)上記撹拌槽の回転速度が、上記公転速度の−1/20〜1/20に設定されている。
【0028】
(6)上記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である。
【0029】
(7)上記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である。
【0030】
(8)上記駆動モータを駆動制御する制御手段を備えてなり、この制御手段は、上記撹拌槽の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように、上記駆動モータを駆動制御する。
【0031】
(9)上記制御手段は、上記撹拌工程の途中で、上記撹拌槽の公転方向を逆転させるように、上記駆動モータを駆動制御する。
【0032】
(10)上記真空手段は、上記撹拌槽の配設数に対応して設けられた複数本の上記真空配管を備え、これら真空配管の先端接続部には、上記撹拌槽にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える。
【0033】
(11)上記撹拌槽内に取出し可能に収納固定される液体容器を備え、この液体容器は、その天部に上記撹拌槽内に連通可能な連通穴が設けられている。
【0034】
(12)上記液体容器の内周面は、多角形状断面を有する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の撹拌・脱泡方法によれば、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、単一の駆動源により、上記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、上記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、上記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して上記撹拌槽の傾斜方向を変動させるようにしたから、撹拌槽の公転により生じる遠心力が、被処理液体に対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発する。
【0036】
その結果、被処理液体は、上記撹拌槽内を上下左右方向へ流動(3次元運動)して、被処理液体中に混入している気泡が液体と有効に分離されながら(脱泡作用)、液体の撹拌が有効に行われる(攪拌作用)。
【0037】
この場合、上記撹拌槽の回転速度を、その公転速度の−1/20〜1/20という低速またはゼロに設定することにより、撹拌槽の回転により生じる遠心力が、撹拌槽の公転により生じる遠心力を相殺することなく最大限度有効に発揮させて、円滑な3次元運動を確保することができる。
【0038】
しかも、上記撹拌槽の公転と回転を単一の駆動源により行うことにより、駆動源の小型化・省力化を図り、ひいては、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を実現することができる。
【0039】
また、上記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、この撹拌槽内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにすることにより、大気圧下で被処理液体中に混入している気泡も完全に脱泡することができ、高い精度の脱泡効果が要求される被処理液の処理にも十分に機能を発揮し対応し得る。
【0040】
しかも、本来真空状態にする必要がある撹拌槽内を個別に真空にする方式としたことにより、従来のように真空チャンバ内に撹拌槽(通常複数個)を含めた回転系を装着して、撹拌槽内を真空状態にする方式に比較して、真空状態とすべき空間がはるかに小さく、真空手段の真空駆動源の容量の小型化を図ることができるとともに、真空空間の気密構造も簡素化でき、この点からも、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1である液体の撹拌・脱泡装置を示す正面図である。
【図2】同じく同撹拌・脱泡装置の内部構造を示す正面断面図である。
【図3】同じく同撹拌・脱泡装置の開閉蓋を取り除いて示す平面図である。
【図4】同じく同撹拌・脱泡装置の一部を切開するとともに図2のIV−IV線に沿った平面断面図である。
【図5】同撹拌・脱泡装置の撹拌槽の構造を示す一部断面正面図である。
【図6】同撹拌・脱泡装置の撹拌槽における真空配管の接続構造を拡大して示す断面図である。
【図7】同撹拌・脱泡装置の真空装置における配管仮置き部の構造を一部断面で示す正面図である。
【図8】同撹拌・脱泡装置の真空装置における液体フィルタの構造を示す正面断面図である。
【図9】同撹拌・脱泡装置の真空装置の全体構成を示すブロック線図である。
【図10】従来の液体の撹拌・脱泡装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0043】
実施形態1
本発明に係る液体の撹拌・脱泡装置が図1〜図9に示されており、この撹拌・脱泡装置は、具体的には、被処理液体Lとして例えば塗料や印刷用インクを撹拌・脱泡するためのものである。
【0044】
この撹拌・脱泡装置は、複数(図示の場合は4つ)の撹拌槽1、1、…、これら撹拌槽1、1、…の公転手段を構成する回転テーブル2、撹拌槽1、1、…の回転手段を構成する遊星歯車機構3、および撹拌槽1、1、…の内部を真空状態とする真空手段を構成する真空装置4を主要部として構成され、これら構成部1、2、3、4が装置ケース5内に装置されてなる。なお、装置ケース5において、50は開閉可能な蓋、51は装置ケース5の移動手段としての自在キャスタ、および52は装置ケース5を水平状態に姿勢調整するためのレベルアジャスタをそれぞれ示している。
【0045】
回転テーブル2は円盤状のもので、垂直な回転主軸6に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される。
【0046】
図示の実施形態においては、装置ケース5の基台フレーム7の中心位置に主軸台8が設けられ、この主軸台8に、上記回転主軸6が、回転軸受9、9を介して垂直状態で回転可能に軸支されており、この回転主軸6の上端部に、上記回転テーブル2が固定金具10により水平状態で固定的に取付け支持されている。
【0047】
また、上記回転主軸6の下部が軸支される主軸台8には、回転駆動源としての駆動モータ11が水平状態で取り付けられており、具体的には図示しないが、この駆動モータ11の出力軸に、上記回転主軸6の下部が直接的に歯車連結されている。
【0048】
そして、駆動モータ11の回転駆動により、上記回転主軸6と共に、上記回転テーブル2が水平方向へ所定の回転速度をもって回転駆動される。
【0049】
撹拌槽1は気密構造を備える真空容器の形態とされ、具体的には、図5に示すように、開閉可能な蓋体1aにより密閉可能な筒形容器からなる。蓋体1aは、施蓋時における容器本体1bとの嵌合部にOリング15が介装されて、この部位の気密性が確保されている。撹拌槽1の具体的な気密構造については、真空装置4との関係で後述する。
【0050】
撹拌槽1は、上記回転テーブル2の外周位置に円周方向へ等間隔をもって複数個取り付けられている。図示の実施形態の撹拌槽1は、その内周面が円筒面とされた円筒容器であり、回転テーブル2上に4つ装着される配置構成とされている。
【0051】
つまり、回転テーブル2の外周位置には、4本の回転支軸20、20、…が周方向へ等間隔をもって配置され、各回転支軸20は、軸受21、21により垂直状態で、つまり上記回転主軸6と平行状態で回転可能に軸支され、この回転支軸20の上端部20aに、上記撹拌槽1を取外し可能に収容支持する撹拌槽受け22が傾斜状態で取付け固定されている。23は撹拌槽1を撹拌槽受け22に固定させるための押え金具を示しており、この押え金具23の具体的な締付けについては、真空装置4および撹拌槽1の気密構造との関係で後述する。
【0052】
上記撹拌槽受け22は、図2に示すように、その底部が上記回転支軸20の上端部20aに固設されるとともに、その上部が開放されて、撹拌槽1を上側から収容保持される形状とされている。そして、この撹拌槽受け22に撹拌槽1が収容された状態において、撹拌槽1は、その軸線が上記回転主軸6の軸線に対して所定角度αだけ傾斜するように構成されている。
【0053】
上記撹拌槽1の軸線の傾斜角度αは、具体的には10度〜45度、望ましくは12度〜20度に設定され、図示の実施形態においては、15度の傾斜角度αとされている。
【0054】
このように傾斜角度αが設定されるのは、傾斜角度αが10度よりも小さい場合、および45度よりも大きい場合、撹拌槽1の内周傾斜面と後述する撹拌槽1の公転により生じる遠心力との協働作用が確実に得られないからである。
【0055】
遊星歯車機構3は、前述したように撹拌槽1の回転手段を構成するもので、少なくとも、上記回転主軸6と同心状に設けられた太陽歯車25と、上記回転支軸20に同心状に設けられた遊星歯車26とを含んでなり、具体的には、上記太陽歯車25、上記遊星歯車26、およびこれら太陽歯車25および遊星歯車26の間に噛合状態で介装される少なくとも一つの中間歯車27とを備えてなる。中間歯車27の配設数は、遊星歯車26つまり撹拌槽1の回転方向と回転速度を考慮して設定される。図示の実施形態においては、太陽歯車25と遊星歯車26とが単一の中間歯車27を介して駆動連結されて、遊星歯車26つまり撹拌槽1が公転方向(回転テーブル2の回転方向)と逆方向へ回転する構成とされている。
【0056】
太陽歯車25は、上記回転テーブル2の回転主軸6と同心状にかつ静止状に設けられており、具体的には、図2に示すように、軸受28、28を介して上記回転主軸25に相対回転可能に軸支されるとともに、図示しない回止め手段によって、その回転運動が静止固定されている。
【0057】
遊星歯車26は、上記回転テーブル2に回転可能に軸支された上記回転支軸20に同心状にかつ一体的に設けられており、具体的には、図2に示すように、回転テーブル2の下側に突出した上記回転支軸20の下端部に、一体的に取付けられている。
【0058】
中間歯車27は、太陽歯車25および遊星歯車26の間に噛合状態で介装されるもので、具体的には、図2に示すように、上記回転テーブル2の下側において、回転テーブル2に支持固定された回転支軸29に、軸受30、30を介して回転可能に軸支されるとともに、上記太陽歯車25および遊星歯車26にそれぞれ噛合されている。
【0059】
すなわち、図3および図4を参照して、回転テーブル2の回転(矢符X方向)により、この回転テーブル2上に配置支持された4つの撹拌槽1、1、…も回転(公転)するところ、これら撹拌槽1、1、…の回転支軸20、20、…には、上記遊星歯車機構3の遊星歯車26がそれぞれ取付け固定されている。この遊星歯車機構3において、太陽歯車25は上述のごとく静止固定されているから、これら両歯車20、21に噛合連結された中間歯車27を介して、上記遊星歯車26は太陽歯車25のまわりをX方向へ公転しながら、この公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした回転速度をもって公転方向と逆方向へ回転することになる。
【0060】
この場合、上記撹拌槽1の回転速度は、遊星歯車機構3を構成する太陽歯車25、中間歯車27および遊星歯車26の歯車比により決定され、公転速度の−1/20〜0に設定され、望ましくは−1/30〜−1/40に設定される。上記撹拌槽1の公転速度は、遠心力が有効に働くことを考慮して、100〜300回転/分に設定されており、したがって、撹拌槽1の回転速度は5回転〜15回転/分に設定される。
【0061】
このように撹拌槽1の回転速度が設定されるのは、撹拌槽1の回転速度が公転速度の1/20よりも大きいと、撹拌槽1の公転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果が、撹拌槽1の回転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果によって減小され、ないしは相殺されて十分に発揮されず、撹拌槽1内における被処理液体Lの活発な動きが得られず、一方、撹拌槽1の回転速度が公転速度の0〜1/20の大きさにあると、撹拌槽1の公転により被処理液体Lに生じる遠心力の作用効果が十分に発揮されて、被処理液体Lの動きが、単なる水平方向の動きに止まらず、撹拌槽1の傾斜角度αによる傾斜内面との協働作用による上下方向の動きも誘発されるからであり(3次元運動)、この作用効果は、撹拌槽1の回転速度が公転速度の−1/30〜−1/40に設定されると、より大きな作用効果が得られる。
【0062】
また、撹拌槽1が公転のみで、回転しない場合(つまり回転速度0の場合)よりも、上記のように公転速度の1/20以下の非常にゆっくりした回転速度をもって回転する方が、撹拌槽1内の被処理液L全体に上記撹拌槽1の公転による遠心力が有効に作用して、撹拌槽1内のすべての被処理液Lが円滑な3次元運動を行うことができる。
【0063】
図示の実施形態においては、撹拌槽1の回転速度は公転速度の1/36に設定されている。
【0064】
真空装置(真空手段)4は、撹拌槽1、1、…の内部を真空状態とするもので、具体的には、これら撹拌槽1、1、…の内部を個別に真空状態にする構成とされている。
【0065】
この真空装置4は、図9に示すように、駆動源である真空ポンプ35、液体フィルタ36、マニホールド37、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)および真空ゲージ39を主要部として備えてなる。
【0066】
真空ポンプ35は、排気口35aが配管40aを介して大気に解放されるとともに、吸気口35bが配管40bを介して上記液体フィルタ36の排気口36aに連通されている。
【0067】
液体フィルタ36は、撹拌槽1から吸い上げた空気中に含まれる被処理液体Lを濾過除去するもので、具体的構造が図8に示されている。図示の実施形態の液体フィルタ36は、箱型容器の形態とされた中空のフィルタ本体36cの天井部に、上記排気口36aおよび吸気口36bが設けられている。これら排気口36aおよび吸気口36bは、それぞれ、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、これら継手部材100a、100aの具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様であり、具体的に図示しないが、接続相手となる配管40b、40cの端部にも、後述する継手部材100b、100bが設けられている。上記排気口36aおよび吸気口36bは、それぞれニップル41、42を介して、フィルタ本体36c内部に連通されている。
【0068】
また、フィルタ本体36cの天井部には、内部に濾過され貯留された被処理液体L等を排出するための排液口43が設けられている。この排液口43は、蓋部材44により開閉可能に閉塞されている。45はOリングを示している。
【0069】
マニホールド37は、その排気口37aが配管40cを介して上記液体フィルタ36の吸気口36bに連通されるとともに、配管40dを介して真空ゲージ39に連通可能とされている。配管40dには電磁弁46が設けられている。この電磁弁46は上記真空ポンプ35に連動して開閉され、真空ポンプ35がON(稼働)のとき開弁されて、真空ゲージ39により撹拌槽1の真空度が計測され、一方、真空ポンプ35がOFF(停止)のとき閉弁される。上記排気口37bは、具体的には図示しないが、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、その具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様である。同様に、具体的に図示しないが、接続相手となる配管40cの端部にも、後述する継手部材100bが設けられている。
【0070】
また、マニホールド37は、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の配設数に対応して複数(図示の場合は4つ)の吸気口37bを備えこれら吸気口37b、37b、37b、37bがそれぞれ接続用真空配管38A、38B、38C、38Dに接続されている。これら吸気口37b、37b、37b、37bは、具体的には図示しないが、開閉可能な弁構造を備えた継手部材100aからなり、これら継手部材100a、…の具体的な構造は、後述するように、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材と同様である。同様に、具体的に図示しないが、接続相手となる接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の端部にも、後述する継手部材100bが設けられている。
【0071】
接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)は、上記4つの撹拌槽1、1、1、1にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える。
【0072】
この管継手構造を構成する管継手(カプラー)100は、図5に示すように、撹拌槽1の蓋体1aに取り付けられて、撹拌槽1の排気口50を構成する継手部材100aと、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)の接続端に取り付けられる継手部材100bとからなる従来周知の基本構造を備え、その具体的構造が図6に示される。
【0073】
すなわち、この管継手100は、雄部材としてのプラグの形態とされた継手部材100aと、雌部材としてのソケットの形態とされた継手部材100bとからなり、これら両者100a、100bは、ワンタッチでの着脱が可能な構造と、非接続時は常時閉止し、接続時は常時開口する弁構造を備えている。
【0074】
プラグ100aは図示のごとく雄型円筒形状とされ、その外周部に環状のロックボール係止溝101が設けられるとともに、内部に弁体102が開閉動作可能に内装されている。この弁体102は、弾発スプリング103により、弁座104との当接係合方向へ常時弾発付勢されて、プラグ100aを常態(非接続時)において閉止状態に保つ。プラグ100aは、ニップル105を介して、撹拌槽1の蓋体1aに連通可能に接続されて、撹拌槽1の排気口50を形成している。
【0075】
ソケット100bは、図示のごとく雌型円筒形状とされ、複数のロックボール106、106、…が径方向へ移動可能に収容保持されるとともに、外周部に、これらロックボール106、106、…の径方向移動を制御する操作スリーブ107が軸方向へ移動可能に設けられている。108は、操作スリーブ107を常時ソケット先端方向へ弾発付勢する弾発スプリングを示している。ソケット100bとソケット100bは、接続端部109が接続真空配管38(38A、38B、38C、38D)の端部に嵌入接続されている。
【0076】
そして、ソケット100bの操作スリーブ107を、弾発スプリング108の弾発付勢力に抗して、ソケット先端部から後退させることにより、ロックボール106、106、…の径方向移動が可能となり、プラグ100aのソケット100bへの挿入が可能となる。プラグ100aのソケット100bへの挿入により、ロックボール106、106、…がプラグ100aのロックボール係止溝101に突入係止した状態で、操作スリーブ107を弾発スプリング108の弾発付勢力によりソケット先端部へ移動させることにより、ロックボール106、106、…のロックボール係止溝101に対する突入係止状態がロックされ、プラグ100aとソケット100bの接続状態が得られる(図6(b)参照)。
【0077】
一方、この接続状態から、操作スリーブ107を再びソケット先端部から後退させて、上記と逆の操作をすることにより、ロックボール106、106、…が上記ロックボール係止溝101から離脱して、プラグ100aとソケット100bの接続状態が解除される。このように、プラグ100aとソケット100bの着脱(接続と取外し)は、操作スリーブ107のワンタッチ操作で行える。
【0078】
また、管継手100は、図6(a)に示すように、プラグ100aとソケット100bの非接続時においては、プラグ100aが閉止状態にあり、一方、図6(b)に示すように、プラグ100aとソケット100bの接続時においては、ソケット100bの弁体110がプラグ100aの弁体102を弾発スプリング103の弾発付勢力に抗して後退させる結果、弁体102が弁座104から離脱して、プラグ100aを開放状態に保ち、プラグ100aとソケット100bの連通状態が保たれる。
【0079】
なお、管継手100の構造は同様の機能を有する限り、図示のものに特に限定されず、一般市販のものが適宜選択採用される。図示の実施形態の管継手100は、日東工器株式会社製のSPカプラ(商品名)が採用されている。
【0080】
また、上記のように、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38Dが、撹拌槽1内を真空状態にする時のみ撹拌槽1に接続される構造に関連して、図3に示すように、装置ケース5の上面側部には、これら接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)のソケット100b、100b、100b、100bを仮置きするための仮置き部111と、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)を収納する配管収納部112が設けられている。
【0081】
仮置き部111は、図7に示すように、上記4つのソケット100b、100b、100b、100bを起立状に差込み保持する保持プラグ111a、111a、111a、111aが、基台111b上に整列配置されてなる。
【0082】
配管収納部112は、上記仮起き部111に隣接して設けられ、接続用真空配管38(38A、38B、38C、38D)を折り曲げ収納する収納凹部の形態とされている。
【0083】
また、前述したように、上記真空装置4との関係で、撹拌槽1は気密構造を備え、その具体的構造が図5に示されている。
【0084】
撹拌槽1としては、気密性に優れるとともに、液体に対する耐性に優れる材料からなるものが好ましく、例えば、構成材料としてアセタール樹脂が好適に採用され、図示の実施形態においては、「デルリン」(登録商標:米国デュポン社)が構成材料として使用されている。
【0085】
また、上記撹拌槽1の蓋体1aの施蓋構造は、撹拌槽1を撹拌槽受け22に取付け固定する際の押え金具23により共締め固定する構成とされている。
【0086】
すなわち、図1、図3および図5に示すように、上記押え金具23は、直線棒状の形態とされて、その両端部23a、23b(図5参照)が、撹拌槽受け22の係合凹部22a、22bに挿入係止する構造とされるとともに、その中央部に手動操作可能な締付けボルト51が設けられている。この締付けボルト51は、上記押え金具23に、上下方向へ螺進退可能に取り付けられるとともに、その先端51aが撹拌槽1の蓋体1aに設けられた受け部材52の上面に当接係止している。
【0087】
そして、撹拌槽1の容器本体1bの開口を蓋体1aにより閉塞するとともに、押え金具23の両端部23a、23bを、撹拌槽受け22の係合凹部22a、22bにそれぞれ挿入係止した状態で、締付けボルト51を締付け回転操作すると、締付けボルト51が、押え金具23を螺進しながら、その先端51aで蓋体1aを押圧する。これにより、押え金具23と蓋体1aは、互いに離れる方向へ押されて共締め状態となり、蓋体1aが容器本体1bに緊密に施蓋されると同時に、撹拌槽1が撹拌槽受け22に締付け固定されることになる。
【0088】
また、図5に二点鎖線で示すように、上記撹拌槽1内に取出し可能に収納固定される液体容器55を備えることも可能である。このような構成とすることにより、液体容器55は個々の被処理液体Lに専用の容器として使用することができ、撹拌槽1の内周面に被処理液体Lが直接触れることを避けることができるとともに、撹拌・脱泡処理後もそのまま被処理液体Lの収納容器として使用することができ、取扱い性が大幅に向上する。
【0089】
なお、このような構成とした場合には、液体容器55の天部に撹拌槽1内に連通可能な連通穴(図示省略)が設けられることになる。
【0090】
さらに、この液体容器55の内周面が多角形状断面とされることにより、撹拌槽1の公転による撹拌作用の向上を図ることができる。
【0091】
しかして、以上のように構成された撹拌・脱泡装置において、被処理液体Lにあまり高い精度の脱泡効果を要求されない場合、回転テーブル2上に回転可能に設けられた撹拌槽受け22、22、…に、被処理液Lを充填収容された撹拌槽1、1、…がそれぞれ収容保持された状態で、回転テーブル2が回転駆動されると、撹拌槽1は垂直な回転主軸(公転軸)6まわりに水平方向に所定の速度をもって公転され、これにより、撹拌槽1内の被処理液Lに遠心力が与えられて、被処理液体L中に混入する気泡が脱泡されながら、被処理液体Lが攪拌される。
【0092】
この場合、撹拌槽1は、上記回転主軸6に対して所定の傾斜角度αをもって傾斜支持されるとともに、上記回転主軸6と平行に配された回転支軸(垂直軸)20まわりにゆっくりした所定の低速度で回転されるので、撹拌槽1の傾斜方向が上記撹拌槽1内の被処理液体Lに与える遠心力の作用方向に対して変動する。
【0093】
したがって、撹拌槽1の公転により生じる遠心力は、被処理液体Lに対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらに撹拌槽1の傾斜内面の傾斜方向の変動との協働作用による上下方向の動きも誘発することになり、その結果、被処理液体Lは、撹拌槽1内を上下左右方向へ流動(3次元運動)して、被処理液体L中に混入している気泡が液体と有効に分離されながら(脱泡作用)、液体の撹拌が有効に行われる(攪拌作用)。
【0094】
この場合、上記撹拌槽1の回転速度が、その公転速度の−1/20〜1/20という低速に設定されていることにより、撹拌槽1の回転により生じる遠心力が、撹拌槽1の公転により生じる遠心力を相殺することなく最大限度有効に発揮させて、円滑な3次元運動を確保することができる。
【0095】
しかも、上記撹拌槽1の公転と回転が単一の駆動源である駆動モータ11により行われることにより、駆動源の小型化・省力化が図られ、ひいては、装置構造の小型化、簡素化が促進されて、装置コスト、ランニングコストの低減化を実現することができる。
【0096】
また、被処理液体Lに高い精度の脱泡効果が要求される場合には、真空装置4を駆動させて、上述した撹拌工程を行う。
【0097】
すなわち、気密構造を備える真空容器からなる各撹拌槽1内に被処理液体Lを充填収容して密封した後、各撹拌槽1内を個別に真空状態として、上述した撹拌工程を行う。これにより、大気圧下で被処理液体L中に混入している気泡も完全に脱泡することができ、高い精度の脱泡効果が要求される被処理液体Lの処理にも十分に機能を発揮し対応し得る。
【0098】
しかも、本来真空状態にする必要がある撹拌槽1内を個別に真空にする方式であるから、図10に示す従来装置のように、真空チャンバc内に撹拌槽(通常複数個)aを含めた回転系を装着して、撹拌槽a内を真空状態にする方式に比較して、真空状態とすべき空間がはるかに小さく、真空装置4の真空ポンプ35の容量の小型化を図ることができるとともに、真空空間の気密構造つまり撹拌槽1の気密構造も簡素化でき、この点からも、装置構造の小型化、簡素化を促進して、装置コスト、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【0099】
実施形態2
本実施形態は、実施形態1の撹拌・脱泡装置の構成を改変したものであり、本実施形態の撹拌・脱泡装置は、回転主軸6を回転駆動する駆動モータ11を駆動制御する制御部(制御手段)200を備えて、撹拌槽1の公転速度が可変に自動制御される構成とされている。
【0100】
すなわち、本実施形態の駆動モータ11は、上記制御部200に電気的に接続されており、この制御部200の工程プログラムに従って自動制御される。
【0101】
制御部200は、具体的には、CPU、ROM、RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成され、この制御部200には、上述した撹拌工程を実行させるための工程プログラム等が予め組み込まれるとともに、駆動モータ11の駆動に必要な種々の情報、例えば、回転テーブル2の回転速度(撹拌槽1の公転速度)、動作時間、速度変更タイミングあるいは撹拌工程の加工時間等が、制御データとして予め、または装置ケース5に設けられた操作盤201のタッチパネル201a(図3参照)により適宜選択的に入力設定されており、これらのデータに従って上記駆動モータ11が自動制御される。
【0102】
上記操作盤201は、上記タッチパネル201aのほか、装置の起動および停止ボタン201b、201c、真空装置4のONおよびOFFボタン201d、201eを備える。
【0103】
上記タッチパネル201aは、設定部と表示部の両機能を兼備したタッチパネルディスプレイ装置の形態とされており、このタッチパネルディスプレイ装置201aは、液晶画面からなるディスプレイ部が、手指によるタッチ操作により上記設定部と表示部を切替え表示する構成とされている。
【0104】
そして、上記タッチパネルディスプレイ装置201aのディスプレイ部が上記設定部の画面を液晶表示している時は、この設定部の操作パネルを手指によりタッチ操作することにより、上記制御データを入力設定することができ、一方、上記表示部の画面を液晶表示している時は、装置の運転条件(回転テーブル2の回転速度や動作時間)、あるいは運転経過時間等の必要情報が液晶表示される。
【0105】
そして、駆動モータ11の回転駆動により、上記回転主軸6と共に、上記回転テーブル10が水平方向へ所定の回転速度をもって回転駆動される。この場合の回転テーブル10の回転速度つまり後述する撹拌槽1の公転速度は、後述するように、制御部200の工程プログラムに従って、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように自動制御される。
【0106】
本実施形態における具体的な工程プログラムとしては、従来装置と同様な一般的な工程パターン、つまり、撹拌槽1、1、…の公転速度が撹拌工程の開始から完了まで所定の一定値になるように、上記駆動モータ11が駆動制御される定速工程パターンと、撹拌槽1、1、…の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように上記駆動モータ11が駆動制御される変速工程パターンとが含まれている。
【0107】
また、後者の変速工程パターンとしては、例えば、(1)撹拌槽1の公転速度が、撹拌工程の初期から仕上期に向けて段階的に低速から高速に変更するパターン、また(2)撹拌槽1の公転速度が、撹拌工程の初期から仕上期に向けて連続的に低速から高速に変更するパターンなどがある。
【0108】
さらに、(3)撹拌工程の加工時間が回転テーブル2の動作時間の合計の2倍の時間に設定されて、上記定速工程パターンまたは変速工程パターンの撹拌加工の完了後、これに続く残りの動作時間が仕上期の高速と同じ速度でまたは変更した速度で逆回転する逆転仕上期とされるパターンがある。
【0109】
図示の実施形態においては、(1)の工程パターンとして、撹拌工程の初期が100rpmの低速度で1分間、中期が150rpmの中速度で2分間、および仕上期が180rpmの高速度で3分間撹拌工程を行うように設定されている。
【0110】
また、(2)の工程パターンとして、撹拌工程の初期の100rpmの低速度から仕上期の180rpmの高速度まで連続的に増速し、この仕上期が3分間に設定されている。
【0111】
しかして、以上のように構成された撹拌・脱泡装置において、回転テーブル2上に自転可能に設けられた撹拌槽受け22、22、…に、被処理液体Lが充填収容された撹拌槽1がそれぞれ収容保持された状態で、操作盤201で所望の工程プログラムを選択した後、起動ボタン201bを起動操作することにより、制御部200により、駆動モータ11が自動制御されて、回転テーブル2が予め設定された工程パターンをもって回転駆動される。
【0112】
以上のように、本実施形態によれば、撹拌工程において、撹拌槽1の公転速度を予め設定された工程プログラムに沿って、または適宜変更するように制御されるから、被処理液Lの種類・特性に関わらず、最適な条件での撹拌工程が実行し得る。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
【0113】
なお、上述した実施形態1および2はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲において種々の設計変更が可能である。
【0114】
例えば、図示の実施形態の遊星歯車機構3においては、太陽歯車25と遊星歯車26とが単一の中間歯車27を介して駆動連結されて、撹拌槽1が公転方向(回転テーブル2の回転方向)Xと逆方向へ自転する構成とされているところ、具体的には図示しないが、前述した公転速度と回転速度との関係を保持しつつ、上記太陽歯車25と上記遊星歯車26とが、二つの中間歯車27、27を介して駆動連結される構成とすることにより、撹拌槽1が上記公転方向Xと同一方向へ自転するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 撹拌槽
2 回転テーブル
3 遊星歯車機構
4 真空装置(真空手段)
6 回転主軸(公転軸)
11 駆動モータ
20 回転支軸(垂直軸
22 撹拌槽受け
23 押え金具
25 太陽歯車
26 遊星歯車
27 中間歯車
35 真空ポンプ
36 液体フィルタ
37 マニホールド
38(38A、38B、38C、38D) 接続用真空配管
39 真空ゲージ
L 被処理液体
α 撹拌槽の傾斜角度
100 管継手
111 仮置き部
200 制御部(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液体が充填収容された撹拌槽を水平方向に公転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入する気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する攪拌・脱泡方法であって、
単一駆動源により、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、前記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、前記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、前記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向を変動させる
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項2】
前記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、
前記撹拌槽内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項3】
前記撹拌槽の回転速度を、前記公転速度の−1/20〜1/20に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項4】
前記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項5】
前記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項6】
前記撹拌槽の公転速度を、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するようにした
ことを特徴とする請求項5に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項7】
前記撹拌工程の途中で、前記撹拌槽の公転方向を逆転させるようにした
ことを特徴とする請求項6に記載液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項8】
被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、
垂直な公転軸に対して、筒形容器からなる撹拌槽が所定の傾斜角度をもって傾斜支持され、
前記撹拌槽は、単一駆動源により、前記公転軸まわりに公転されるとともに、この公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転されて、前記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項9】
被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、
前記撹拌槽は、気密構造を備える真空容器の形態とされ、
前記撹拌槽内を個別に真空状態とする真空手段を備えてなり、
この真空手段は、前記撹拌槽に個別にかつ着脱可能に取付け接続されて、この撹拌槽内と連通可能な真空配管を備える
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項10】
前記公転軸を構成する回転主軸に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される回転テーブルと、
この回転テーブル上に回転可能に支持されて前記垂直軸を構成する回転支軸に、傾斜した状態で取り付けられた前記撹拌槽と、
前記回転主軸と回転支軸とを駆動連結する遊星歯車機構と、
前記回転主軸を回転駆動する駆動モータとを備えてなり、
この駆動モータによる前記回転主軸の回転駆動により、前記撹拌槽は、前記回転主軸まわりに所定の速度をもって公転されるとともに、前記回転支軸まわりに前記公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした所定の回転速度で回転されて、前記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項11】
前記遊星歯車機構は、前記回転主軸と同心状にかつ静止状に設けられた前記太陽歯車と、前記回転支軸に同心状にかつ一体的に設けられた前記遊星歯車と、これら太陽歯車および遊星歯車の間に噛合状態で介装されるとともに、前記回転テーブルに回転可能に支持される少なくとも一つの中間歯車とを備えてなる
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項12】
前記太陽歯車と前記遊星歯車とが、単一の前記中間歯車を介して駆動連結されている
ことを特徴とする請求項11に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項13】
前記太陽歯車と前記遊星歯車とが、二つの前記中間歯車を介して駆動連結されている
ことを特徴とする請求項11に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項14】
前記撹拌槽の回転速度が、前記公転速度の−1/20〜1/20に設定されている
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項15】
前記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項16】
前記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項17】
前記駆動モータを駆動制御する制御手段を備えてなり、
この制御手段は、前記撹拌槽の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように、前記駆動モータを駆動制御する
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記撹拌工程の途中で、前記撹拌槽の公転方向を逆転させるように、前記駆動モータを駆動制御する
ことを特徴とする請求項17に記載液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項19】
前記真空手段は、前記撹拌槽の配設数に対応して設けられた複数本の前記真空配管を備え、これら真空配管の先端接続部には、前記撹拌槽にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項20】
前記撹拌槽内に取出し可能に収納固定される液体容器を備え、
この液体容器は、その天部に前記撹拌槽内に連通可能な連通穴が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項21】
前記液体容器の内周面は、多角形状断面を有する
ことを特徴とする請求項20に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項1】
被処理液体が充填収容された撹拌槽を水平方向に公転させることにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力を与えて、この被処理液体中に混入する気泡を脱泡しながら被処理液体を攪拌する攪拌・脱泡方法であって、
単一駆動源により、垂直な公転軸に対して所定の傾斜角度をもって傾斜支持された撹拌槽を、前記公転軸まわりに所定の速度をもって公転させるとともに、前記公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転させることにより、前記撹拌槽内の被処理液体に与える遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向を変動させる
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項2】
前記撹拌槽として、気密構造を備える真空容器を用いて、
前記撹拌槽内に被処理液を充填収容して密封した後、撹拌槽内を個別に真空状態として、撹拌工程を行うようにした
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項3】
前記撹拌槽の回転速度を、前記公転速度の−1/20〜1/20に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項4】
前記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項5】
前記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項6】
前記撹拌槽の公転速度を、撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するようにした
ことを特徴とする請求項5に記載の液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項7】
前記撹拌工程の途中で、前記撹拌槽の公転方向を逆転させるようにした
ことを特徴とする請求項6に記載液体の撹拌・脱泡方法。
【請求項8】
被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、
垂直な公転軸に対して、筒形容器からなる撹拌槽が所定の傾斜角度をもって傾斜支持され、
前記撹拌槽は、単一駆動源により、前記公転軸まわりに公転されるとともに、この公転軸と平行に配された垂直軸まわりに低速度で回転されて、前記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項9】
被処理液体が充填収容された撹拌槽が水平方向に公転することにより、撹拌槽内の被処理液体に遠心力が与えられて、この被処理液体中に混入する気泡が脱泡されながら被処理液体が攪拌される攪拌・脱泡装置であって、
前記撹拌槽は、気密構造を備える真空容器の形態とされ、
前記撹拌槽内を個別に真空状態とする真空手段を備えてなり、
この真空手段は、前記撹拌槽に個別にかつ着脱可能に取付け接続されて、この撹拌槽内と連通可能な真空配管を備える
ことを特徴とする液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項10】
前記公転軸を構成する回転主軸に対して水平に取り付けられて、所定の速度をもって回転駆動される回転テーブルと、
この回転テーブル上に回転可能に支持されて前記垂直軸を構成する回転支軸に、傾斜した状態で取り付けられた前記撹拌槽と、
前記回転主軸と回転支軸とを駆動連結する遊星歯車機構と、
前記回転主軸を回転駆動する駆動モータとを備えてなり、
この駆動モータによる前記回転主軸の回転駆動により、前記撹拌槽は、前記回転主軸まわりに所定の速度をもって公転されるとともに、前記回転支軸まわりに前記公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした所定の回転速度で回転されて、前記撹拌槽内の被処理液体に与えられる遠心力の作用方向に対して前記撹拌槽の傾斜方向が変動する構成とされている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項11】
前記遊星歯車機構は、前記回転主軸と同心状にかつ静止状に設けられた前記太陽歯車と、前記回転支軸に同心状にかつ一体的に設けられた前記遊星歯車と、これら太陽歯車および遊星歯車の間に噛合状態で介装されるとともに、前記回転テーブルに回転可能に支持される少なくとも一つの中間歯車とを備えてなる
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項12】
前記太陽歯車と前記遊星歯車とが、単一の前記中間歯車を介して駆動連結されている
ことを特徴とする請求項11に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項13】
前記太陽歯車と前記遊星歯車とが、二つの前記中間歯車を介して駆動連結されている
ことを特徴とする請求項11に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項14】
前記撹拌槽の回転速度が、前記公転速度の−1/20〜1/20に設定されている
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項15】
前記撹拌槽の傾斜角度が10度〜45度である
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項16】
前記撹拌槽の公転速度は100〜300回転/分である
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項17】
前記駆動モータを駆動制御する制御手段を備えてなり、
この制御手段は、前記撹拌槽の公転速度が撹拌工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように、前記駆動モータを駆動制御する
ことを特徴とする請求項10に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記撹拌工程の途中で、前記撹拌槽の公転方向を逆転させるように、前記駆動モータを駆動制御する
ことを特徴とする請求項17に記載液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項19】
前記真空手段は、前記撹拌槽の配設数に対応して設けられた複数本の前記真空配管を備え、これら真空配管の先端接続部には、前記撹拌槽にそれぞれ個別にかつ着脱可能に接続連通される管継手構造を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項20】
前記撹拌槽内に取出し可能に収納固定される液体容器を備え、
この液体容器は、その天部に前記撹拌槽内に連通可能な連通穴が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【請求項21】
前記液体容器の内周面は、多角形状断面を有する
ことを特徴とする請求項20に記載の液体の撹拌・脱泡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−235201(P2011−235201A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106027(P2010−106027)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(506423316)三恵ハイプレシジョン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(506423316)三恵ハイプレシジョン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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