説明

液体を混合するための方法及び装置

【課題】異なる二つの内径間の過渡区域を通過するように液体の大部分を強制的に移動させて回転混合を引き起こすようにした、使い捨て吸引プローブ先端部の内部で液体を混合するための装置及び方法の提供。
【解決手段】血液を凝集させるのに使用することができ、ひいては血液型分類に使用することができるプローブ112先端部は単一の一体部品を含むこと、又は独立した二つの部分を含むことができ、過渡区域は、内径間の境界がシャープであっても滑らかであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引プローブの先端部の内部で二種の液体をそれらの間の反応を確実ならしめるために混合するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,773,305号及び同第5,174,162号明細書により、血液のような流体試料と希釈剤とをプローブ先端部の内部で、まず双方の液体を当該先端部内に吸引し、次いでこれらの液体を当該先端部の残部よりも内径の大きな混合チャンバーへとさらに引き上げることによって混合することが知られている。その混合は、例えば、液体の大部分を上下に何回も往復させることにより達成することができる。
【0003】
米国特許第5,773,305号明細書中の実施例では、液体を拡大チャンバーに保持し、そのチャンバー内で単に前後に振動を与えることにより混合を行っている。その図3を見ると、単に内径の拡大により創出された不連続ステップを越えて液体を拡大チャンバーに吸引するだけでは、混合物を創成するには非効果的であることが明らかである。すなわち、不連続ステップを越える単一の動きは、流体を均質には混合しないように示される。液体間には、最初に吸引された時に気泡も含まれ得る。吸引された液体の本体間のクロスオーバー汚染を、先端部の外側の周囲の不活性オイルシールドを放逐することにより防止することが好ましい(図7〜図11)。
【0004】
一般に、このような構成は、ピペットから二種の液体をより直径の大きな容器(混合チャンバー)に移し入れ、その容器の内部で液体を垂直方向に振動させて混合しようとするものと同等である。混合は比較的多い容量についてこのように起こり得るが、少量、例えば、全体で100〜600マイクロリットルの容量については効果的でない。すなわち、直径が一定の流路においては、本発明のように容量が小さい場合には慣性混合が抑えられる。この現象のため、均質混合を達成するためには、液体を混合チャンバー内で前後に20回も繰り返し動かす必要がある。このような混合工程の繰り返しは時間の無駄となるため、改良が望まれる。
【0005】
さらに、交差汚染はこのようなオイルシールドを用いることによってのみ防止可能であるというのは実情ではない。すなわち、場合によっては、最初に吸引された液体は、単に希釈剤による反復洗浄により、又は拭き取りにより、先端部から除去され得る。いずれにしても、洗浄が不十分であることがわかる場合には、オイルシールドの使用よりも信頼できる汚染防止法が必要であった。(オイルシールドは、先端部の外部周辺には複数の分配ノズルが配置されるため、先端部の周囲で完全に形成されることが保証されているものではない。)その上、タンパク質の中にはオイルのシールド効果を破壊するものもある。
【0006】
米国特許第5,174,162号明細書の実施例では、混合すべき液体の全部を拡大混合チャンバー内に完全に移動させ、当該チャンバーの外部へ完全に移動させ、次いでその中に戻す、等を行う。表面15におけるシャープな移行は乱流混合16を引き起こす(図2)。これは上記’305号特許の方法よりも効率的な混合法である。にもかかわらず、上記’162号特許に記載されているような混合装置においても改良が必要である。例えば、図2の形状についての最適化が何ら記載されていない。吸引される際の複数の液体を分離するために気泡を使用することについては何も記載がない。しかしながら、上記’305号特許に記載されているように、このような気泡は交差汚染を有効に防止する。ただ、どのような気泡も、混合中に迅速に排除されなければならない。
【0007】
さらに、上記’162号特許は、液体6のバルク容器の内部の二種の液体間の、液体4の直後に液体6を吸引した時の交差汚染を防止することについては、明らかに何ら教示がない。上記’305号特許のオイルシールドを上記’162号特許のプローブに適用することができるようにも見えるが、このようなオイルシールドには上述のような欠点がある。したがって、オイルシールド法以外に、交差汚染から防護する別の方法が望まれる。
【0008】
上記’162号特許の教示の別の欠点は、異なる二種の液体を境界15を横断して前後に移動させた場合、液体の一方又は両方の混合されない「テール部」が拡大チャンバー又はより狭い吸引部のいずれかにコーティングとして残留し得ることである。このような残留テール部は、液体の本体が境界15を横断して移動した時に混合されないため、そのようなテール部は望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、二種の液体を専らプローブで混合するように設計されたプローブにおいて既に実質的な開発がなされているが、改良の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述の必要な改良を提供する混合法及びその混合を内部で行うためのプローブ先端部を発明した。
より詳細には、本発明の一側面によると、
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
液体の速度×粘度の表面張力に対する比として定義される、前記工程cにおける混合から得られる毛管数が約0.01を上回ることがないため、前記混合工程cの際に形成されたいかなるテール部も最小となることを特徴とする方法が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、前記キャビティ部は、独立しているが結合可能な二つの先端部を含み、さらに液体の吸引の間に、前記内径の一方の先端部をその他方の内径の先端部の上に搭載する工程を含み、液体間のキャリオーバー汚染が防止されることを特徴とする方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、前記内径は各々前記キャビティ部のフロースルー横断面積であり、そして、混合効率を最大化するために、前記内径の大きい方の前記フロースルー横断面積は前記内径の小さい方のフロースルー横断面積の少なくとも3倍であることを特徴とする方法が提供される。
【0013】
本発明のまたさらに別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、前記より大きな内径が、(1)第一先端部としてその少なくとも一部がプローブ先端部のより小さな内径よりもはるかに大きな内径を有するテーパー付き先端を選択し、そして(2)前記テーパー付き先端を、より小さな内径を有するプローブ先端に結合することによって得られることを特徴とする方法が提供される。
【0014】
本発明のまたさらに別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、工程bにおける液体の全量が、すべての液体がより大きな内径を有する前記部分中に移動した場合に、当該より大きな内径が全液体の高さよりも大きいが、全液体の高さの2倍よりは小さいため、工程cでの混合が最高となることを特徴とする方法が提供される。
【0015】
本発明のまたさらに別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、工程cにおいて、前記液体の少なくとも大部分を、少なくとも前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分と、前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分の両端部に位置した前記キャビティのより大きな内径の部分との間で前後に移動させるため、液体が、前記より小さな内径のキャビティ部分の一端ではなく前記両端部を越えて移動するので液体の回転による混合効率が高くなることを特徴とする方法が提供される。
【0016】
本発明のまたさらに別の側面によると、上記工程a〜cを含む複数の液体を混合する方法であって、工程cにおいて、前記液体の少なくとも大部分を、少なくとも前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分と、前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分の両端部に位置した前記キャビティのより大きな内径の部分との間で前後に移動させるため、液体が、前記より小さな内径のキャビティ部分の一端ではなく前記両端部を越えて移動するので液体の回転による混合効率が高くなることを特徴とする方法が提供される。
【0017】
本発明のまたさらに別の側面によると、先端部内に液体を吸引した後に液体を混合するためのプローブ先端部であって、
内径の異なる3つの連結されたキャビティを画定する壁を含み、その区画の一つは中央区画として末端区画を形成する他の二つの間に挟まれており、隣接する二つのキャビティは各々過渡区域壁により連結されており、そして前記内径は、前記二つの隣接キャビティにおいて、液体が前記過渡区域壁を通過して移動する際に液体の回転混合を引き起こすのに十分なほど異なり、
一つのキャビティの前記過渡区域は、最中央のキャビティが他の二つの末端キャビティのいずれかに向けて過渡するにつれ増加する前記内径の分散によって形成されていることを特徴とするプローブ先端部が提供される。
【0018】
本発明のまたさらに別の側面によると、所定の波長の光を透過することができる壁を含む中空容器の内部で凝集反応の強度を測定する方法であって、
a)第一の内径を有する前記容器の第一キャビティの内部に試料と凝集剤との混合物を用意し、
b)前記混合物を、前記第一の内径よりも実質的に小さい第二の内径を有する第二キャビティに移し、
c)前記工程bの際に前記所定の波長の光線で前記第二キャビティ内部の液体を走査し、その10%部分は前記第一キャビティに最も近い部分であり、
d)前記工程cの走査後、前記光線による前記10%部分により吸収又は散乱された光の量を検出し、
e)前記混合物を前記第一キャビティに移して戻し、
f)工程b〜dを、凝集した材料の一部が凝集していない材料から分離されるまで少なくとも一回繰り返し、そして
g)前記工程dで検出された吸光度又は散乱から凝集量を算出する各工程を含む方法が提供される。
【0019】
本発明のまたさらに別の側面によると、全血において血球細胞を凝集させる方法であって、
a)プローブに取り付けた使い捨て先端部内に全血を吸引し、前記先端部は、過渡区域によって互いに連結された、内径が有意に異なる少なくとも二つの部分を有し、
b)その後、同一の先端部内に凝集試薬を吸引し、そして
c)前記血液と試薬を、液体全体として、まず全体を前記部分の一方に、次いで全体を前記部分の他方に、全血の細胞の凝結を引き起こすに十分な回数、前後に動かした後、凝結した細胞と血漿とを分離する各工程を含む方法が提供される。
【0020】
本明細書中の用語「プローブ先端部」又は「プローブ先端部分」とは、記載した特徴、すなわちオリフィス、当該オリフィスから間隔を置いた内部チャンバー及び当該オリフィスとチャンバーとを結ぶ通路とを含み、吸引プローブに取り付け可能であり、その内部に液体を吸引することができる、使い捨てが可能であってもなくてもよい容器のすべてを意味する。したがって、先端部又は先端部分は、Columbusの米国特許第4,347,875号に記載されているような常用の使い捨て可能な先端部であること、又は底にオリフィスがあるカップもしくはウェル、例えば、米国特許第5,441,895号に記載されているカップの底にオリフィスを付けたもの、であることができる。先端部は、一体型であってもよいし、複数の部分で構成されていてもよい。
【0021】
したがって、本発明の有利な特徴は、従来の装置に比べ、先端部に吸引された二種の液体の混合が先端部の内部でより一層迅速に起こるということである。
本発明の関連する有利な特徴として、吸引のために用いられる先端部の先に、混合するための追加の装置は一切必要がないことが挙げられる。
【0022】
本発明の別の有利な特徴は、実施態様の中に、洗浄を繰り返す方法よりも時間の浪費が少ない安価な機械装置によって、吸引される液体間のキャリオーバー汚染を防止できるものがあることである。
上記のキャリオーバー汚染を防止するための機械装置の関連する利点は、本発明の先端部の製造適性をより高めることである。
その他の有利な特徴については、添付の図面に照らして実施態様の詳細な説明を参照することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、従来技術により構築されたプローブ先端部の破断立断面図である。
【図2】図2(A)〜(C)は、本発明の方法を示す、図1と類似の破断立断面図である。
【図3】図3は、特定の好適な実施態様を示す、図2と類似の破断立断面図である。
【図4】図4は、特定の好適な実施態様を示す、図2と類似の破断立断面図である。
【図5】図5は、特定の好適な実施態様を示す、図2と類似の破断立断面図である。
【図6】図6は、図2〜5と類似の破断立断面図であるが、(A)は、吸引間に付加される第二先端部が第一先端部よりも狭い内径を有する別態様を示し、(B)は後続の混合工程を示し、そして(C)は別の態様を示す。
【図7】図7(A)〜(H)は、図6(A)〜(C)と類似の立断面図であるが、混合のための第二先端部から第一先端部への液体の流れが、内径の広い方ではなく狭い方へ動くように強制されているさらに別の実施態様を示す。
【図8】図8は、図4と類似の立断面図であるが、本発明のさらに別の実施態様を示す。
【図9】図9は、図4と類似の立断面図であるが、本発明のさらに別の実施態様を示す。
【図10】図10は、凝集反応の強度を検出する方法を示すための、先端部を介して走査する光線により走査した吸光度を液体量に対してプロットしたグラフである。
【図11】図11は、凝集反応の強度を検出する方法を示すための、先端部を介して走査する光線により走査した吸光度を液体量に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい実施態様の説明
以下、本発明を特定の好ましい実施態様との関連で説明する。ここで、一つは体液である一種以上の液体の混合を、好ましい形状の一つ又は二つの部分を有する使い捨て可能な先端部を用いて実施する。第一液体が吸引された後の第二の液体のキャリオーバー汚染を防止するため、第二を第一から分離又は第一へ添加することが好ましく、第一液体は血液であることが好ましく、第二液体は凝集溶液であり、そして混合は、好ましくは血液型分類を起こさせるために好適な流速及び剪断速度において行う。さらに、本発明は、先端部が分割される部分の数や形状に関わらず、第二部分が独立して付加されるか既に存在するか、又は汚染を防止するために用いられるか否かに関わらず、液体の組成物に関わらず、それらの添加順序に関わらず、先端部内部での流速や剪断速度に関わらず、そして混合の最終結果が何であるかに関わらず、有用である。但し、先端部の形状は、液体がキャビティ部分間を流れる際に液体の回転混合が引き起こされるに十分な異なる直径を有するキャビティ部分間を強制的に混合液体を移動させることにより混合を誘発することが条件である。すなわち、迅速混合を引き起こすのは、一定の内径の内部で液体を振動させるのではなく、径の変化における反復移動である。このため、体液と相互作用する試薬は、例えば、免疫アッセイ用の試薬とすることができる。
【0025】
あまり効果的ではない方法は、図1に示した従来技術の方法である。これは、実質的に上記米国特許第5,773,305号の教示によるものである。このような構成では、吸引プローブ12は、端部36の開口部34から、内径がキャビティ14よりも有意に幅広い混合キャビティ18にかけて延びている狭いキャビティ又は通路14を含む。これら二つの内径の間には、比較的なシャープな境界を有する過渡領域28が設けられている。通路40に部分真空を適用して、まず液体44を、次いで第二の液体54を、それらの間に気泡(図示なし)を伴うか又は伴わずに、キャビティ18の中に吸引する。最初の’305号特許に記載されているように、両方の液体が通路14からキャビティ18に移動する最初は、二つの液体が分離されたままであるため、完全な混合を生ぜしめることはない。実際の混合は、二つの液体を、キャビティ18の内部で、過渡区域28の端部とキャビティ18の反対端部32との間で振動(矢印30)させることにより達成される。さらに、液体44が表面36を被覆しないように、また液体54を吸引する時にその本体を汚染しないように、プローブの外部表面36にオイルシールドが存在すると有用であると教示されている。上述のように、このような技法では、混合を達成するのに20回もの多数の振動(矢印30)が必要である。
【0026】
’305号特許においても本発明においても、先端部内の液体の動きは、先端部がピペットに付いている間に、ピストンシリンダー(図示なし)内部のピストンの動作により、部分圧又は部分真空を生ぜしめることにより達成される。例えば、ピストンは手動で作動させることができる。
【0027】
本発明(図2A〜2C)によると、単に、液体の大部分を強制的に毎回過渡区域128を通過するように流動させることにより、振動の回数を3回程度に削減することができる。これは、順に、両方の液体の大部分を強制的に過渡区域に隣接した一つのキャビティからそのように隣接した他のキャビティに流し込み、その後戻すことにより確実となる。本明細書中の用語「液体の大部分」が移動するとは、液体の90%以上を意味する。
【0028】
より具体的には、好ましくは使い捨て可能な先端部112の形態にあるプローブは、従来技術のものと実質的に同様に構築され、より狭いキャビティ114は過渡区域128によってそのより狭いものに連結されたより広いキャビティ118に通じている。双方のキャビティを通して共通の対称軸100が延びていることが好ましい。この例では、過渡区域は、各キャビティとの接合部における比較的シャープな縁部134、136によって画定されている。「比較的シャープな」とは、接合部における曲率半径が25μm未満であることを意味する。これより大きな半径は、区域128と各キャビティとの間に滑らかな過渡を生ぜしめる傾向がある。実際には、このような比較的大きな曲率半径を使用することによる滑らかな過渡は好ましいが、必須ではない。このような滑らかな過渡は、血液型分類のための血液凝集が混合の目的である場合には、より良好な結果を与える。すなわち、比較的大きな曲率半径を使用する滑らかな過渡は、本体の流速、等その他すべての事項が同等である場合に、凝集物を破壊させにくくする。このような比較的大きな曲率半径を使用した滑らかな過渡の一例を図4に示す。例えば、図4のR1 及びR2 は、それぞれ1.2mmとすることができる。
【0029】
構造は、一般的に従来技術の図1のものと同一であるため、主な違いは、少なくとも図2(A)〜(C)に関しては、プローブ112の使用にある。すなわち、第一の液体144をキャビティ114の中に吸引し、次いで気泡160を吸引する。その後、第二の液体154を、両方共依然としてキャビティ114の中に存在するように(図2A)、吸引する。
【0030】
次に、両方の液体の大部分、好ましくは全部を、区域128を越えてキャビティ118の中に吸引する(図2B)。過渡区域128によって、液体が混合し始めるに十分な回転(矢印170)が発生する。しかしながら、図1に示したように、この工程だけでは十分ではない。次に、液体の大部分、好ましくは全部を、キャビティ118から過渡区域128を越えてキャビティ114の中に排出する(図2C矢印172)。さらに、このプロセスを、完全な混合が起こるまで繰り返す(幽霊矢印174)。含まれる液体に依存して、完全な混合に必要なキャビティ114からキャビティ118への通過回数が3回だけの場合もあるが、それ以上行うことは可能である。
【0031】
図3は、一般に最適な混合にとって好ましい特定のパラメーターを説明するものである。プローブ112は、従来技術のものと同様に、開口部134とその開口部に隣接した外部表面136とを有する。しかしながら、内径D2 により与えられるキャビティ118のフロースルー横断面積A2 は、キャビティ114の内径D1 により与えられるフロースルー横断面積A1 の9倍以上であることが好ましい。さらに、内径D1 及びD2 は一般には一定であるため、それぞれのキャビティは円筒形である。したがって、D2 はD1 の3倍以上であることが好ましい。
1 及びD2 の有用な例として、全高H2 (図5)を約3mmとした場合に、例えば、それぞれ0.8mmと3.2mmが挙げられる。
【0032】
さらに、混合中の気泡160(図2A)の分散を助長するために、少なくともキャビティ118の、また必要に応じてキャビティ114についても、壁面を問題の液体で濡れやすい、すなわちメニスカスの接触角が小さくなる材料から選択する。このため、周知のように、その表面に用いられる材料は混合すべき液体が関係してくる。最も好ましくは、(第二の吸引中の液体間の交差汚染を防止する上で助けになるように存在する)気泡を最大限に分散させるため、系の毛管数が0.001を上回らないようにする。ここで毛管数は、常用されているように、液体の移動速度(矢印170)を液体混合物の表面張力で割った値である。
【0033】
しかしながら、汚染を回避するために気泡を存在させることは必須ではない。’305号特許に記載されているようにオイルシールドを使用してもよいし、また別法として、第二の液体を吸引する前にプローブ112を拭き取ることもできる。その場合、毛管数をより高くすることができるが、0.01を上回らないことが好ましい。これより高くなると、キャビティ間の液体の動きが、出口キャビティに液体の「テール部」を残留せしめ、これが混合過程を遅延させ、さらには荒廃させる可能性があるからである。
【0034】
気泡を使用する場合にはさらに、気泡の大きさ又は容積が、液体が過渡区域を通過して流れる際の液体の混合を妨げるようなものよりも小さくなければならないことも考慮事項となる。このため、気泡は、プローブ内容物がキャビティ118(図3)の中に吸引された後には、気泡(図3中、図示なし)が二種の液体を完全に分離し続けるような大きさ、すなわちキャビティ118の内径に等しい直径を有してはならない。したがって、図3の場合、気泡の容積はπ(D23 /6未満でなければならない。
【0035】
血液型分類のために混合を行う場合には、上記の項目の他、さらなる因子が重要となる。すなわち、回転作用(図3、矢印170)が所望の血液細胞凝集を著しく破壊することを防止するため、過渡区域128を通過するいずれの方向における流速も、壁に沿った剪断速度が約20 sec-1を超えない速度であることが好ましい。これは、もちろん、液体の粘度の、直径D1 、D2 の、及び角度αの関数にもなる。
【0036】
混合の最終用途とは関係なく、図3の実施態様を、乾燥形態でキャビティ114又は118のいずれかに体液と反応する試薬をコーティングすることにより、一つの液体のみ、すなわち体液のみを開口部134において吸引する必要があるように使用することも可能である。このため、凝集用試薬溶液を、キャビティ114又は118のいずれか又は両方をコーティングすることにより製造中に提供することができる。その後、このコーティングは、適当なキャビティに全血が吸引された時に再溶解される。
他の用途のため、免疫アッセイ用抗体のような他の試薬をキャビティ壁面に永久的に結合させることもできる。
【0037】
プローブがすべて一物品である必要はなく、また汚染をオイルシールドや拭き取りだけで防止する必要もない。その代わりに(図4)、プローブが二つの部分112A及び112Bを含み、その一方(112B)が他方(112A)の内径の少なくとも一部とは異なる、例えば、これより小さい、内径を有するものが有用である。その目的は、第一部分の上から嵌合する部分に、残留性の第一の液体44が残留し得る開口部134に隣接した外部表面136を被覆させることである。図示したように、部分112Bのキャビティ165の内径D3 は内径D1 と実質的に同等であるが、部分112Aの内径D2 よりは小さい。使用する際には、部分112Bを存在させずに液体44を部分112Aに吸引する。次いで、部分112Aの上に部分112Bを滑り摩擦のあるはめあいによって取り付ける。この時点で、液体44を下方(矢印180)に動かして部分112Bの幽霊位置182にまで下げ、160に一定量の空気を残存させて次の工程における気泡を形成させる。その工程は、先端部を合体したプローブを、部分112Bのみが液体54(図示なし)の本体中に挿入されるように動かすことである。次いで、吸引により、182に位置した液体44と、気泡160と、一定量の第二の液体とをプローブ内に吸引させる。所望の量の第二液体を存在させた時点でプローブを液体54の本体から離し、そして上述のように液体の大部分を過渡区域128を通過するように繰り返し動かして混合を進める。
【0038】
この構成は、部分112Aに残留する第一液体が液体54の本体と接触しないようにすることと、得られる部分112A及び112Bの長さが容易に型どられることとの両方を確実にする。
この実施態様では、また曲率半径R1 及びR2 で与えられる二つのキャビティと区域128との間の滑らかな過渡を利用するいずれの態様でも、上記の角度αは、二つの半径により与えられる壁の定義の間にある区域128の壁のある点に引いた接線A−Aに対して測定される。
【0039】
図5に、プローブ112の別の好ましい態様を示す。すなわち、部分112又は112Aのキャビティ118は、その中に吸引された全液体の高さH2 よりも値が大きくなるように選ばれた直径D2 を有する。この関係の利点は、混合効率を高めることが見い出されたことである。しかしながら、同時に、D2 はH2 の2倍よりも小さくすべきである。そうでない場合には、キャビティ118における容量が少なくなり、液体をキャビティ114の中に押し込む(矢印200)ために圧力をかけた時に、中央でバーストする危険があるからである。このようなバーストは、もちろん、混合過渡区域を横断する液体の移行を妨害する。
【0040】
このため、好適な特徴のすべてを上述のように利用する場合には、全血試料及び凝集溶液を、液体の大部分をキャビティ118に移動させ且つ液体の大部分をキャビティ114に戻すサイクルを3回だけ行った後に十分に混合することができる。
上述したように、プローブが二つの部分を含む場合、付加される部分の内径が、被覆されるプローブ部分の内径と同等であることは必須ではない。残りの実施態様は、実際にそれが当てはまらないものを説明する。既述のものと同等の部分には同一の参照番号を付し、それに識別記号として’又は”を付した。
【0041】
このため、図6Aの実施態様では、第二部分112B’は、キャビティ165’の内径D3 がキャビティ118’の内径D2 よりもかなり小さい。実際には、プローブ112’はキャビティ118’及び165’を有する分離可能な二つの部分112A’及び112B’に分割され、その間に混合を引き起こす過渡区域128’が設けられる。すなわち、区域128’は、270°である外角α(図5に示す)によって形成される。
【0042】
使用時には、液体44’を部分112A’の中にそれ自身で吸引する。次いで、図6Aに示したように、部分112B’を部分112A’に固定し、そして液体44’を部分112B’の中に押し下げる(矢印200)。次いで、部分112B’が液体54’の本体の中に、好ましくは開口部134’において気泡160’を伴いながら、挿入するようにプローブを動かす(図6B)。吸引(矢印202)によって、液体44’、気泡160’及び液体54’のすべてをキャビティ165’を介して過渡区域128’を通過し、キャビティ118’の中に移動させ、よって回転による混合(矢印170’)を開始する。その後、矢印200及び202によるすべての液体の振動運動を、混合を完了するのに必要な回数繰り返す。
【0043】
別法として(図6C)、付加部分112B’を外部表面136A’の開口部134A’の近傍に配置した時に設けられる過渡区域を、図4の実施態様のような滑らかな過渡区域128’とすることもできる。この場合には、内径の過渡が滑らかなものとなるように、部分112A’及び112B’が開口部134A’において適切に整合することが確実になるよう注意しなければならない。しかしながら、同時に、開口部134A’において実質的に正確に整合することを除き、より小さい内径は、部分112A’ではなく部分112B’と共に残存する。
【0044】
図6(A)及び(B)の反対を図7(A)〜(H)に示す。すなわち、付加される第二の先端部分の内径が、過渡区域において、既に液体を吸引するのに用いた第一の先端部分の内径よりも実質的に大きい。さらに、この実施態様は、過渡区域に隣接した二つのキャビティが円筒である必要はなく、それらの対称軸100に沿ってテーパーが付いていてもよいことを説明する(図7B)。
【0045】
このように(図7A)、プローブ部112A”は、開口部134A”からポンプ(図示なし)に連結される上部132A”の方へ、キャビティ118”の内径が開口部から遠くに離れるにつれ大きくなるように拡張している円錐形キャビティ118”を含む。二つの部分112A”及び112B”を互いに結合するため、コルクカラーを部分112A”の残部に固定する方式のように、開口部134A”に隣接した外部表面136A”が、テーパー形状と共に、拡大している。開口部134A”における内径は比較的小さく、例えば、約1mmである。
【0046】
第二のプローブ部分112B”(図7B)は、表面136A”と摩擦的に結合するような形状にされた、すなわち拡大した内径を有する上部132B”を有する。部分112B”は、開口部134B”が位置する下部に向けてテーパー付けられ、前記拡大された内径から大幅に縮小され、実際には開口部134A”とほぼ同一であることが好ましい内径を有するキャビティ165”を形成する。
【0047】
この実施態様の使用法は図6(A)〜(B)について説明したものと同様である。このため、部分112A”がそれ自身で液体44”の本体に挿入され、アリコートを吸引する(図7A)。次いで、プローブ部分112B”をカラーの表面136A”の上に取り付ける(図7B)。その後、液体44”を部分112A”から部分112B”のキャビティの中に押し込む又は排出する(図7C)。
次いで(図7D)、合体したプローブの部分112B”の開口部134B”を液体54”の本体に挿入し、気泡160”(図7E)をキャビティ165”の中に吸引する。
【0048】
ここで、実際の混合工程のためのステージがセットされる。すなわち、図7(F)〜(H)、開口部134A”における狭い内径により形成された過渡区域を通過するように液体のすべてを前後に吸引、排出する。図7(F)において、まずキャビティ118”の中に引き込み(矢印202”)、図7(G)に示した状態を作りだす。次いで、それをキャビティ165”の中に排出し戻し(図7H、矢印200”)、回転混合が起こる。この過程を、液体の性質により、二つの液体が均質になるまで、又はできるだけ均質になるまで、必要により繰り返す。
【0049】
上述した第二の液体を吸引する前に第一部分112Aの上に第二のプローブ部分112Bを取り付ける実施態様のすべてにおいて、別の態様は、このような第二の吸引とすべての液体の第一部分への吸引に続いて、第二部分を取り外し、そしてその第二部分の代わりに第一部分の上に、第二液体の吸引と同様の方法でさらに別の第三の液体をプローブ中に吸引する目的で、内径の等しい、小さい又は大きい清浄な第三の部分を取り付けるというものである。
【0050】
異なる内径間の混合過渡区域を追加することができる。すなわち、内径の変化する隣接区画は二つしか存在しない、ということは必須ではない。実際、このような区画を三つ連続して連結したものを含むプローブ先端(図8、9)は、上述のすべての実施態様の混合において最も効率的であることが証明された。最も好ましくは、このような構成において、中央の区画は過渡区域の内径が最も小さい。既述のものと同等の部分には同一の参照番号を付し、それに識別記号として上付き添字’”を付した。
【0051】
こうして(図8)、図4の設計と同様、プローブ112’”は、永久プローブ(図4)の上に取り付けられたキャビティ118’”の上部と、過渡区域壁128’”によりキャビティ118’”に一体連結された下部キャビティ114’”とを含み、キャビティ118の内径D2 はD1 よりも大きく、好ましくはD1 の3倍以上である。図4に記載したように、キャビティ114の外側部分に追加のキャビティ165を設け、矢印210において吸引が起こる。しかしながら、キャビティ165’”はキャビティ114’”に一体連結されており、三つのキャビティのすべては共通の壁、好ましくは成形された壁で形成されている。さらに、キャビティ165’”の内径D3 は内径D1 よりも有意に大きく、図4の実施態様には存在しない過渡区域220を作り出している。D3 の値は、D2 の値と同様、先端部112’”に吸引された液体の大部分、好ましくは全部がキャビティ114’”からキャビティ165’”の中へ過渡区域220を通って移動する時に回転混合が引き起こされるように選定される。したがって、D2 と同様、D3 ’はD1 の3倍以上であることが最も好ましい。D3 とD1 とは、同一であっても異なっていてもよい。
必須ではないが、キャビティ165’”の内径は、液体が最初に吸引される(矢印210)端部においてD3 ”まで狭くなっていてもよい。
【0052】
さらに、図9に示したように、先端部112’”のキャビティ165’”を、最初の液体が吸引された後に部分112B’”を付加でき、部分112B’”が外部表面136’”の上に残存している第一液体を被覆するように、図4の実施態様にあるように着脱可能な先端部分112B’”の壁によって形成することができる。次いで、第二液体の吸引を、図9の矢印210’”に示したように行う。しかしながら、図4の実施態様とは異なり、キャビティ114’”及び165’”の接合部における内径D3 は内径D1 よりも大きく、図4にあるように同等ではないので、図8の区域220と同様の過渡区域220’”が形成され、液体がキャビティ114’”からキャビティ165’”に移動する際に回転混合を有効に引き起こす。この例では、過渡区域におけるD3 ’は、D1 +Tの値の2倍に等しい。ここで「T」は外部表面136’”を与える壁の厚さである。このような例では、D3 ’は、Tの値に応じて、D1 の3倍以上であってもなくてもよい。
図8の実施態様の場合と同様に、キャビティ165’”の内径は、液体が最初に吸引される端部においてD3 ”まで狭くなっていてもよい。
【0053】
過渡区域を通過するように前後に繰り返し移動させる最少のサイクル数で完全に混合される上で最も効率的であることが立証されたのが図8及び図9の実施態様である。例えば、図9の実施多様では、全体で20μLの二種の液体が、50μL/秒の流速で、このような前後の移動を7.5回繰り返すだけで、約10秒で完全に混合された。
【0054】
凝集反応
上述したように、この混合作用の好ましい用途は、血液型分類を可能ならしめるに十分な血液細胞の凝集を作りだすことである。この目的のため、液体の一方はもちろん全血とし、その他方は凝集試薬とし、どちらかの順序で先端部に吸引する。このような溶液のいずれを使用してもよい。非常に好ましい例は、細胞上清から処方された抗−B IgMクローン(濃度1、20及び31μg/mL)と0.004%のFD&C青色素第1番とを含有する0.1モル/Lのリン酸で緩衝化された生理食塩水に3%のウシ血清アルブミンを含むものである。濃度はすべて質量%である。
【0055】
このような血液型分類の強い反応、弱い反応又は陰性反応の検出を混合先端部の外側で行う必要はない。代わりに、先端内部での凝集分離の量、すなわち血液型分類反応の強度を検出することによって達成することができる。
【0056】
図8に目を向けると、この検出は、より狭い先端部114’”におけるある位置において吸光度又は光散乱を走査することによって行うことが好ましい。(本発明の他のいずれの実施態様でも使用することもできる。)すなわち、矢印300の位置において、適当な光学素子、例えば、常用のファイバーオプティクスを使用して、所定の波長の光を送り、次いで先端部を透過させる。混合が完了してから約10分後に測定した吸光量を、矢印302に概略的に示したように検出するか、又は、光散乱量を矢印304に示したように検出する。後述するように、これらの結果は発生した凝集量に応じて異なる。吸光度を使用する場合、適当な波長として540nm及び/又は830nmが挙げられる。前者は、ヘモグロビンのピーク吸収であるため、特に有用である。304における光散乱量の検出は、溶血による干渉を回避するために特に有用である。
【0057】
図10及び図11に、吸光度及び照射波長540nmを使用した方法を示す。図10の場合には、液体を、十分に混合されてから10分間経過後に部分118’”から下方へ部分114’”まで通過させる。通過量の0〜約18%において、吸光量は空気の通過のため0から上昇する。その後、液体のみがスキャナーにより通過され、そして液体の最初の部分は、反応が陰性か、弱いか又は強いかに関わらず、非常に吸収性である。しかしながら、液体の約50%が走査された後は、達成された凝集量に応じて結果が離れてくる。強い反応は赤血球を十分に凝集させるので、約65%後は、液体は実質的に細胞を含まずに透明となる。弱い反応は、吸光度が減少するが、容量の65%を走査した後でもなお強い反応よりははるかに高い。
【0058】
別法として、液体を、部分165’”から上方に狭い部分114’”の中に、そして続けて上方に部分118’”の中に移動させて走査を行うこともできる。結果を図11に示す。結果の差別化は、容量の0〜18%を走査した時点で起こる。すなわち、スキャナーを通過して流れる最初の部分は、強い反応の場合、細胞のほとんどすべてが互いに凝集しているため、赤血球細胞を含まない液体部分である。しかし、弱い反応の場合、図11の中央の曲線が示すように、容量の最初の部分には一部の赤血球細胞が未凝集のまま残存する。
【0059】
本発明の先端部における凝集反応として有用なものは、血液型分類の凝集だけではない。凝集剤により引き起こされる凝集は、全血の細胞画分の血漿からの分離を先端部で行うことを可能にする。すなわち、凝集試薬を、高分子電解質のような常用の凝集試薬、例えば、ポリリジン、又は抗グリコフォリンのような抗体から選ぶ場合、上述の先端部内の混合は、すべての赤血球細胞の凝集を引き起こすだけでなく、凝集した細胞を血漿から物理的に分離することにもなる。細胞は先端部の底部、例えば、図9の先端部又はキャビティ165’”に沈降する。この際、これらの細胞を、先端部のオリフィスから小出しすることにより放出し、血漿のみを残留させることができる。次いで、その血漿を適当な試験用プラットフォームに、例えば、米国特許第5,441,895号に記載されているような免疫アッセイ用のウェル又はカップの中に、分配することができる。
【実施例】
【0060】
以下は本発明の混合工程の非限定的な実施例である。
例1
内径の異なる二つの毛管を有するプローブを構築した。小さい方の毛管の内径は0.557mmとした。大きい方の毛管の内径は2.29mmとした。小さい方の毛管の長さは41mmとし、最大で10μLの液体を保持する。大きい方の毛管の長さは30mmとした。
B型の血液4μLを小さい方の毛管の底部末端からポンプで吸引した。次いで、そのポンプで小さい方の毛管に1μLの空気を吸引し続けた。その後、上記の凝集試薬4μLを吸引した。気泡は、小さい方の毛管において二種の液体を分離した。
【0061】
次いで、ポンプを駆動して液体のすべてを小さい毛管と大きい毛管との間を過渡区域を横断するように0.5μL/秒の流速で移動させた。大きい方の毛管において球形の気泡が表面張力によって発生し、そして二種の液体が出会い混合し始めた。ポンプが流体を下方に小さい方の毛管に0.5μL/秒の流速で流し込むと、気泡は排除された。
【0062】
二種の流体の混合物を二つの毛管間で0.5μL/秒の一定流速で振動させた。この運動の最初のサイクルの終了時には凝集構造の形成が目視できた。第二サイクルの終了時には小さい毛管において相分離が非常に顕著となり、透明な上清が上部に、そして凝集した細胞構造物が底部に存在した。この段階では、上清中、なお非常に小さな凝集細胞が多少は目視できた。第三サイクルの終了時には相分離は完全となり、上清に残存する細胞構造物はほとんど皆無であった。
3回のサイクルの総時間は2分であった。弱い反応の場合にはさらに長時間を要することが予測できる。
【0063】
完全な混合が達成された後には、凝集結果から血液型を決定することがもちろん必要である。本発明を構成するものではないが、これを実施する方法の一つは、凝集反応の一定時間内に凝集量を測定するために混合物を透過する光透過率を目視測定する方法である。チャートを対比用に使用し、ユーザーは、合体した液体がその時間に存在しているプローブ部分において観測された凝集又は凝集量から、血液型を推定する。
【0064】
例2
図9に示したようなプローブを構築したが、但し、先端部165’”を線C−Cのところで切断し、D3 の内径が約2.54mmで、切断線C−Cが約1mmで、円錐角が約20°で、そして長さが10mmの円錐形の先端部を製作した。先端部114’”の長さは約15mmで、そして内径D1 は約1mmとした。先端部118’”の内径D2 は約4.7mmとした。10μLの量の血液を円錐部分165’”を介して先端部の全体に吸引し、その後、円錐部をきれいに拭った。次いで、10μLの試薬を同様にして先端部に吸引し、液体の全体容量を20μLとした。次いで、この全体容量を前後に移動させて、混合が完了するまで、部分118’”の中に全体を入れ、次いで部分165’”の中に全体を入れる、等を進行させた。このために要した反復回数(サイクル)は、50μL/秒の流速において7.5回であった。流体の全排出量は各移動方向において40μLであり、完全混合に要した時間は約15秒であった。
【0065】
ここに開示した本発明は、ここには具体的に開示されていない要素がなくても実施することができる。
本発明をその好ましい実施態様を特に参照しながら詳細に説明してきたが、本発明の精神及び範囲内の変更及び変形が可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
液体の速度×粘度の表面張力に対する比として定義される、前記工程cにおける混合から得られる毛管数が約0.01を上回ることがないため、前記混合工程cの際に形成されたいかなるテール部も最小となることを特徴とする方法。
【請求項2】
工程cの毛管数が約0.001を上回ることがないため、前記液体が混合される際に連行されたいかなる気泡もより容易に前記液体から除去されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記いかなる気泡も、前記複数の液体の間に、前記キャビティの前記内径の大きい方を有する部分における液体の混合を妨害する量よりも少ない容量で前記プローブ先端部に吸引されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
前記キャビティ部は、独立しているが結合可能な二つの先端部を含み、さらに液体の吸引の間に、前記内径の一方の搭載可能な先端部をその他方の内径の前記先端部の上に搭載する工程を含み、液体間のキャリオーバー汚染が防止されることを特徴とする方法。
【請求項5】
追加の各液体を吸引した後に前記先端部を取り外し、そして前記プローブ先端部に追加の液体を吸引する前に新規な先端部を取り付けることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記搭載可能な先端部が、それが搭載される前記先端部の内径よりも大きな内径を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記搭載可能な部分が搭載されている前記先端部が、さらに有意に異なる値の二つの内径を含むため、前記異なる値を有する内径間の境界区域を通過する前記液体の流れがさらに液体の回転混合を提供することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記異なる値を有する内径の大きい方が、前記搭載可能な先端部の最大内径と少なくとも同等の大きさであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記異なる値を有する内径の大きい方が、前記異なる値を有する内径の小さい方の値の少なくとも3倍であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記搭載可能な先端部の前記内径の最大値が、前記異なる値を有する内径の小さい方の値の少なくとも3倍であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
前記内径は各々前記キャビティ部のフロースルー横断面積測定値であり、そして前記内径の大きい方の前記フロースルー横断面積は前記内径の小さい方のフロースルー横断面積の少なくとも3倍であることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記液体の一方が全血であり、そして前記移動工程が凝集した細胞がばらばらになりにくいような混合のみを引き起こすことを特徴とする、請求項1、4又は11に記載の方法。
【請求項13】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
前記より大きな内径が、(1)第一先端部としてその少なくとも一部がプローブ先端部のより小さな内径よりもはるかに大きな内径を有するテーパー付き先端を選択し、そして(2)前記テーパー付き先端を、工程bの前記先端部の周囲に搭載した結合カラーを使用して、より小さな内径を有する前記プローブ先端に結合することによって得られることを特徴とする方法。
【請求項14】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
工程bで提供される液体の全量が、すべての液体がより大きな内径を有する前記部分中に移動した場合に、当該より大きな内径が移動した全液体の高さよりも大きいが、移動した全液体の高さの2倍よりは小さいため、工程cでの混合が最高となることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記混合をプローブ先端の実質的な攪動又は振動を伴わずに行うことを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
a)異なる複数の内径を有する内部キャビティを具備したプローブ先端部を用意し、
b)前記プローブ先端部の一部の内側に複数の液体を吸引により提供し、
c)前記液体の少なくとも大部分を、前記キャビティのより小さな内径を有する部分とより大きな内径を有する部分との間で少なくとも数回前後に移動させ、前記より大きな内径とより小さな内径とは、液体がこれらの内径間を移動する際に混合されるに十分な液体の回転を提供するに十分なものである各工程を含む複数の液体を混合する方法であって、
工程cが、前記液体の少なくとも大部分を、少なくとも前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分と、前記より小さな内径を有する前記キャビティ部分の両端部に位置した前記キャビティのより大きな内径の部分との間で前後に移動させる工程を含むため、液体が、前記より小さな内径のキャビティ部分の一端ではなく前記両端部を越えて移動するので液体の回転による混合効率が高くなることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記液体を、前記前後移動の反復回数7.5回以内で、1秒当たり約50マイクロリットルの流速で、約10秒以内に完全に混合することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
先端部内に液体を吸引した後に液体を混合するためのプローブ先端部であって、
内径の異なる3つの連結されたキャビティを画定する壁を含み、その区画の一つは中央区画として末端区画を形成する他の二つの間に挟まれており、隣接する二つのキャビティは各々過渡区域壁により連結されており、そして前記内径は、前記二つの隣接キャビティにおいて、液体が前記過渡区域壁を通過して移動する際に液体の回転混合を引き起こすのに十分なほど異なり、
一つのキャビティの前記過渡区域は、最中央のキャビティが他の二つの末端キャビティのいずれかに向けて過渡するにつれ増加する前記内径の分散によって形成されていることを特徴とするプローブ先端部。
【請求項19】
前記末端キャビティの一つが、前記中央キャビティを画定している壁に着脱可能に取り付けられた壁部分によって画定されていることを特徴とする、請求項18に記載のプローブ。
【請求項20】
前記末端キャビティの少なくとも一つの内径が、前記値の異なる内径のより小さい方の値の少なくとも3倍であることを特徴とする、請求項18又は19に記載のプローブ。
【請求項21】
所定の波長の光を透過することができる壁を含む中空容器の内部で凝集反応の強度を測定する方法であって、
a)第一の内径を有する前記容器の第一キャビティの内部に試料と凝集剤との混合物を用意し、
b)前記混合物を、前記第一の内径よりも実質的に小さい第二の内径を有する第二キャビティに移し、
c)前記工程bの際に前記所定の波長の光線で前記第二キャビティ内部の液体を走査し、前記10%部分は前記第一キャビティに最も近い部分であり、
d)前記工程cの走査後、前記光線による前記10%部分により吸収又は散乱された光の量を検出し、
e)前記混合物を前記第一キャビティに移して戻し、
f)工程b〜dを、凝集した材料の一部が凝集していない材料から分離されるまで少なくとも一回繰り返し、そして
g)前記工程dで検出された吸光度又は散乱から凝集量を算出する各工程を含む方法。
【請求項22】
前記移し工程が液体を第一キャビティから前記第二キャビティへ下方に移動させるものであるため、工程fの分離において重力が助力となることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程gが、起こった凝集の%、すなわち強度を示すものとして、凝集反応を表示する走査された容量の予め選定されたパーセントにおいて可能な全吸光度の何%が検出されるかを測定する工程を含むことを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出工程dが、ヘモグロビンのピーク吸収波長の約540nmの輻射線を使用することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記検出工程dが、散乱した輻射線の量を検出して、溶血による干渉を回避することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
全血において血球細胞を凝集させる方法であって、
a)プローブに取り付けた使い捨て先端部内に全血を吸引し、前記先端部は、過渡区域によって互いに連結された、内径が有意に異なる少なくとも二つの部分を有し、
b)その後、同一の先端部内に凝集試薬を吸引し、そして
c)前記血液と試薬を、液体全体として、まず全体を前記部分の一方に、次いで全体を前記部分の他方に、全血の細胞の凝結を引き起こすに十分な回数、前後に動かした後、凝結した細胞と血漿とを分離する各工程を含む方法。
【請求項27】
前記細胞を前記先端部の出口オリフィスの近傍に沈降させ、d)その後、前記細胞を前記先端部から分出して先端部に血漿のみを残留させることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項28】
さらに、e)前記先端部から前記残留血漿の少なくとも一部を、その血漿の免疫アッセイを実施するのに適した反応ウェルの中に分出する工程を含むことを特徴とする、請求項27に記載の分離方法。
【請求項29】
前記凝集試薬が高分子電解質又は抗体であることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−241066(P2009−241066A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−125512(P2009−125512)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願2000−38177(P2000−38177)の分割
【原出願日】平成12年2月10日(2000.2.10)
【出願人】(594199337)オルソ−クリニカル ダイアグノスティクス,インコーポレイティド (14)
【Fターム(参考)】