説明

液体を超音波処理する装置

【課題】、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲内のキャビテーションと、それと関連する振動伝達ソノトロード面の摩耗とを、50%以上乃至完全に抑制することができる装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも1個のソノトロード(1)を有する超音波システム(2)を具備し、このソノトロードが円筒状反応容器(5)に挿入され、液体が少なくとも1つの入口(4)と少なくとも1つの出口を経て円筒状反応容器(5)を通過する、作動周波数が15〜100kHz、音響出力が50〜20,000Wの超音波によってキャビテーションを発生させて液体を超音波処理するための装置において、円筒状反応容器(5)の有効横断面積が、円筒状反応容器(5)内のインサート(10)によって振動伝達ソノトロード面(3)から間隔をおいて、少なくとも少しずつ連続的に減少するように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のソノトロードを有する低周波−高出力−超音波システムを具備し、このソノトロードが反応容器に挿入され、液体が少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口を経て反応容器を通過する、低周波−高出力−超音波によって液体を超音波処理するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低周波−高出力−超音波(NFLUS)は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜60kHz、例えば20kHzで、音響出力が10Wよりも高く、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力の超音波である。超音波を発生するために例えば圧電システムまたは磁歪システムが使用される。線形の音響変換器と平面状または湾曲したプレート変換器またはパイプ共振器が知られている。低周波−高出力−超音波は食品、化粧品、顔料およびナノ材料のような液体を処理するために数多く使用される。処理液体に対する低周波−高出力−超音波の作用は主として、液体内で発生したキャビテーションに基づいている。液体を超音波処理する際にキャビテーションが発生する。このキャビテーションは公知のごとく、(振動を伝達するソノトロード面の)大きな振幅の振動を液状媒体に伝達するソノトロードの面を摩耗することになる。ソノトロード材料、例えばチタンのこの材料削り取り屑は、超音波処理された液体内に達する。従って、摩耗はソノトロードの交換コストを必要とし、超音波処理すべき液体を汚染することになる。
【0003】
摩耗と材料削り取りを減少または抑制するために、過去において種々の方法が知られている。
【0004】
特許文献1では、低周波−高出力−超音波で処理される反応容器内でキャビテーションを完全にまたは大幅に抑制する圧力が反応容器内で発生させられる。それによって、摩耗と材料削り取りが大幅にまたは十分に減少する。しかしながら、液体に対するキャビテーションの作用も大幅にまたは十分に弱まる。
【0005】
特許文献2により、ソノトロードと超音波処理媒体との間の層によって振動伝達ソノトロード面自体のキャビテーション摩耗を大幅にまたは十分に減少させる方法が知られている。しかしながら、振動伝達層が摩耗し、この層の補充/交換が必要となる。
【0006】
振動伝達ソノトロード面から十分に離れた範囲に、低周波−高出力−超音波を収斂させるための解決策が知られている。収斂のために装置の三次元的な寸法が大きいという欠点がある。例えば水内で20kHzの場合の音波長が約60〜80cmであり、レンズの適切な寸法が波長の少なくとも10倍であるので、収斂するための超音波レンズは、600mmよりも大きな直径を有する。更に、キャビテーションが音場を攪乱する。
【0007】
低周波−高出力−超音波を例えば水のような結合液内に供給することができる(例えば特許文献3参照)。この結合液は振動を容器の壁、例えばガラスに伝達する。この容器の反対側には、超音波処理すべき液体が存在する。それによって、出力損失、従って超音波処理作用の低下を生じることになる。振動する容器壁の摩耗/削り取りが生じる。
【0008】
音伝達面のコーティングまたは表面効果によって、摩耗の遅延または減少が達成される。しかしながら、コーティングは高価であり、作用が時間的に制限される。更に、表面を被覆した材料の削り取り屑が液体内に達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 199 38 254.9
【特許文献2】DE 10 2004 025 836 A1
【特許文献3】DE 102 43 837.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲内のキャビテーションと、それと関連する振動伝達ソノトロード面の摩耗とを、50%以上乃至完全に抑制することができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は本発明に従い、請求項1に記載の発明によって解決される。合目的な実施形は従属請求項の対象である。
【0012】
この特徴によれば、キャビテーションを大幅に減少するかまたは完全に回避する、圧力−振幅−特性曲線の近くまたは上方の圧力/振幅組み合わせを、反応容器内において振動伝達ソノトロード面の近距離範囲内に発生し、キャビテーションを生じる、圧力−振幅−特性曲線の下方の圧力/振幅組み合わせを、反応容器内において前記近距離範囲に接続する範囲内に少なくとも領域的におよび少なくとも一時的に発生する。
【0013】
例えば水または油、エマルジョン、懸濁液または分散液のような液体内におけるキャビテーション形成は、所定の温度、例えば20℃および所定の音周波数、例えば20kHzの場合、振幅Aと液体圧力pに依存する。上記条件下では、各振幅Aについて最高液体圧力pmax(A)が存在する。この最高液体圧力よりも高い圧力では、キャビテーションの発生が完全に抑制される。というのは、p>pmax(A)の場合、局所的な真空気泡の発生が不可能になるように、液体が振動伝達ソノトロード面に押し付けられるからである。従って、それとは逆に、各液体圧力pについて、最小振幅Amin(p)が存在する。この最小振幅よりも小さい振幅では、キャビテーションが生じない。
【0014】
方法に従って作動する装置は、反応容器の有効横断面積が、ソノトロード面から間隔をおいて、少なくとも少しずつ連続的に減少するように形成されている。
【0015】
このような装置は単独配置または複数個を直列配置してもよいし、異なる変形の組み合わせからなっていてもよい。場合によっては、個々の要素、例えばノズルおよび/またはソノトロードおよび/または入口および/または出口を複数個配置してもよい。その際、複数のソノトロードは平行にまたは向き合わせて配置してもよいし、共にキャビテーション領域の方へ向けてもよい。ソノトロードは中央からずれた位置に配置してもよいし、キャビテーション領域の方へ斜めに向けてもよい。同様に、振動を伝達しないようにソノトロードを支持し、圧力を漏らさぬようにソノトロード反応容器に挿入することができる。ソノトロードは、平らでない表面、例えば凹形または凸形に湾曲した表面を有していてもよい。
【0016】
1つまたは複数の出口を側方に配置してもよいし、ソノトロードに向き合わせて配置してもよい。1つの出口は付加的に絞り、例えばニードル弁またはボール弁を備えていてもよい。絞りは手動でまたは自動的に調節可能である。入口圧力または流速は手動でまたは自動的に調節可能である。そのために、ノズル間隔および/またはノズル開口が調節可能である。反応容器内のインサートも調節または制御可能に形成されている。調節は反応容器内の圧力に依存してあるいは出力またはキャビテーション形成に依存して行うことができる。
【0017】
ノズルはキャビテーション耐性の材料からなっていてもよいし、コーティングしてもよい。ソノトロードまたは反応容器も同様である。反応容器は場合によっては縮小個所だけをキャビテーション耐性の材料によって形成してもよいし、コーティングしてもよい。
【0018】
反応容器の長さは共鳴長さに合わせることができる。
【0019】
供給ポンプは例えば歯車ポンプでもよいし、遠心ポンプでもよい。
【0020】
手段はプレート変換器、円形浸漬変換器、プレート浸漬変換器および槽にも適している。
【0021】
本発明による手段は、キャビテーションが振動伝達ソノトロード面に直接発生しないかまたは大幅に減少し、それに対して反応容器の他のところでは液体にとって有効なキャビテーションが発生するという利点がある。これにより、振動伝達ソノトロード面の摩耗が大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲内のキャビテーションと、それと関連する振動伝達ソノトロード面の摩耗とを、50%以上乃至完全に抑制することができる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】反応容器内の圧力とソノトロードの振幅に依存してキャビテーションの発生を示す図
【図2】装置の第1変形を示す図
【図3】図2の変形に類似する変形を示す図
【図4】第2の種類の装置を示す図
【図5】図4の装置に類似する変形を示す図
【図6】他の種類の装置を示す図
【図7】本発明による装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、複数の実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
【0025】
図1は、液体圧力pmax(A)のおおまかな変化を示している。この液体圧力よりも高い液体圧力では、キャビテーションの発生が完全に抑制される。というのは、p>pmax(A)の場合、局所的な真空気泡が発生しなくなるように、液体が振動を伝達するソノトロード面に押し付けられるからである。これとは逆に、すべての液体圧力pについて、最小振幅Amin(p)が存在する。この最小振幅よりも小さな振幅では、キャビテーションが発生しない。最高液体圧力pmax(A)と最小振幅Amin(p)は種々の液体について経験的に調べることが可能である。例えば振動伝達面のキャビテーションエロージョンまたは高周波音波放出が測定値として役立つ。高周波音波放出はキャビテーション気泡の爆発的な収縮の際のメガヘルツ範囲の振動の発生を利用する。
【0026】
振動伝達ソノトロード面からの異なる距離Dにおける振幅Aの本発明による変化によってあるいは振動伝達ソノトロード面からの異なる距離Dにおける液体圧力pの変化によってあるいは両変化の組み合わせによって、上記の近距離範囲内ではキャビテーションの発生が大幅に減少するかまたは完全に抑制され、一方、音場内のこの近距離範囲外では液体を処理するためのキャビテーションが可能になる。そのために、近距離範囲内においては液体圧力pがpmax(A)近くの圧力、すなわちp>0.7×pmax(A)またはpmax(A)よりも高い圧力に選定されるかあるいは振幅AがAmin(p)近くの振幅、すなわちA<1.3×Amin(p)またはAmin(p)よりも小さな振幅に選定される。音場内の近距離範囲外では、液体圧力がpmax(A)よりも低いかあるいは振幅がAmin(p)よりも大きな振幅まで増大する。
【0027】
近距離範囲は振動伝達ソノトロード面の前の0〜50mm、好ましくは0〜10mm、例えば0〜2mmの距離Dを含む。
【0028】
振動伝達ソノトロード面から異なる距離D内における振幅Aの変化と、振動伝達ソノトロード面から異なる距離D内における液体圧力pの変化と、この両変化の組み合わせは、例えば図2〜7に示した装置によって達成される。
【0029】
装置は次の原理を利用する。
・図2及び図3に示した、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲内における圧力上昇。
・図4及び図5に示した、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲外における反応容器内の横断面縮小。
・図6及び図7に示した、振動伝達ソノトロード面の近距離範囲外における媒体を介しての振幅増幅。
すべての原理の組み合わせも可能である。
【0030】
図2〜7におけるすべての変化にとって低周波−高出力−超音波システム2のソノトロード(音極)1が共通している。このソノトロードのソノトロード面3は反応容器5に挿入されている。媒体の供給は適当な開口4を経て行われる。ソノトロード1の運転時に反応容器5内では音場6が形成される。
【0031】
低周波−高出力−超音波システム2の図示の隣にはそれぞれ、ソノトロード面3からの距離Dに対する圧力Pの変化が示してある。
【0032】
図2に示した装置の場合には、環状ノズルとして形成された開口4を経て媒体を供給することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内の圧力pが値p1まで上昇するので、そこのキャビテーションは大幅に減少するかまたは完全に回避される。振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲外では、圧力pが値p2まで低下し、音場6内でキャビテーションが発生する。
【0033】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば20kHzの低周波−高出力−超音波で運転される。
【0034】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力で作動する。振動伝達ソノトロード面3では、音を液体に伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば10μmの振幅が使用される。振動するソノトロード1は反応容器5に対して、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって封止されている。0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば5リットルの容積の反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属、例えば特殊鋼からなっている。
【0035】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えば水または油は、反応容器壁の上側範囲内の適当な開口4、好ましくはノズル、例えば高圧ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器5内に供給され、振動伝達ソノトロード面3の方へ案内される。媒体が5〜90°、好ましくは20〜80°、例えば45°の角度でおよびpmax(A)近くの圧力またはpmax(A)よりも高い圧力pで振動伝達ソノトロード面3に当たることにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内ではキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避される。この圧力pは例えば振幅が10μmのときに例えば20バールである。
【0036】
選択されたソノトロード1は好ましくはλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器5内に挿入されている。
【0037】
反応容器5内において振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲外で圧力が降下することにより、値pmax(A)を下回るので、反応容器5内において振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外側の範囲内でキャビテーションが可能となる。例えば、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲外の圧力が1.5バールに降下し得るので、10μmの振幅の場合、水内でキャビテーションが可能である。超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲、好ましくは側壁または底、例えば底の中央から排出される。圧力p2の媒体の排出は制御して、または制御しないで行われ、例えばセル内の圧力pに影響を与えることができるようにするために制御して行われる。近距離範囲内または近距離範囲外の媒体の値は、いろいろなセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。
【0038】
この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード1、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。
【0039】
ポンプ圧力は必要な圧力pmax(A)に依存して、適当なポンプを選択することによって、例えば制御可能な歯車ポンプを用いて発生させることが可能である。
【0040】
図3に示した装置の場合には、媒体の適当な供給部、ここでは中央ノズル7として形成された供給部によって、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内で圧力pが値p3まで高められるので、そこではキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避される。振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲外では、圧力pが値p4まで降下し、音場6内でキャビテーションが発生する。
【0041】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば20kHzの低周波−高出力−超音波によって運転される。
【0042】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力によって作動させられる。振動伝達ソノトロード面3では、液体に音を伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば20μmの振幅が使用される。振動するソノトロード1は、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって、反応容器5に対して封止されている。容積が0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば5リットルの反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属またはセラミックスからなっている。
【0043】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えば油は、ノズル、例えば高圧ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器底の中央から振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内に供給される。媒体が自由に選択可能な角度、例えば90°の角度でおよびほぼpmax(A)またはpmax(A)よりも高い圧力pで振動伝達ソノトロード面3に当たることにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内でのキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0044】
選択されたソノトロード1は好ましくはλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器5内に挿入されている。
【0045】
反応容器5内において振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外側で圧力が降下することにより、値pmax(A)を下回るので、反応容器5内において音場6内でキャビテーションが可能となる。近距離範囲外の反応容器5内の圧力は例えば5バールである。
【0046】
超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲、好ましくは側壁または下側の底、例えば下側の底の中心から離れたところから排出される。圧力p4の媒体の排出は制御して、または制御しないで行われ、例えば、セル内の圧力pに影響を与えることができるようにするために制御して行われる。近距離範囲内または近距離範囲外の媒体の値は、いろいろなセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード1、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。
【0047】
図4は、装置の他の変形を示している。この変形の場合、流通液体内において、近距離範囲外の横断面縮小によって、音場6内の圧力低下が生じるので、この個所でキャビテーションが発生し一方、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内ではキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0048】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば19kHzの低周波−高出力−超音波によって運転される。
【0049】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力によって作動させられる。振動伝達ソノトロード面3では、液体に音を伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば20μmの振幅が利用される。振動するソノトロード1は、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって、反応容器5に対して封止されている。容積が0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば5リットルの円筒状反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属、例えばチタンからなっている。反応容器5の内部の中心に、または中心からずれた位置に、横断面縮小部8が設けられている。この横断面縮小部8は液体が流れる際にベンチュリ効果による局所的な圧力低下を生じることになる。横断面縮小部8の寸法、形状および反応容器5内での高さは変更可能である。
【0050】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えば顔料は、適当な開口4、好ましくはノズル、例えば標準ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器壁の上側範囲から振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内に供給される。pmax(A)に近い圧力または圧力pmax(A)よりも高い圧力pで媒体を供給することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内においてキャビテーションの発生が大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0051】
選択されたソノトロード1は例えばλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器内に挿入されている。
【0052】
反応容器5の内部の横断面縮小部8により、媒体は横断面縮小部8の最小直径に達する前にせき止め作用を受ける。それによって、この個所の上方の反応容器5内の圧力pは、媒体のキャビテーションを可能にするには高すぎる。従って、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内では、キャビテーションが大幅に減少するかまたは発生しない。横断面縮小部8の下方では、ベンチュリ効果によって減張、すなわち媒体の減張による圧力低下が生じ、それに伴いキャビテーションが可能になる。この範囲において圧力pは値pmax(A)よりも低い。超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲から、好ましくは下側の底の中央からまたは円筒状反応容器5の下側の側壁から排出される。媒体の排出は制御してまたは制御せずに行うことができ、例えばセル内の圧力pに影響を及ぼすことができるようにするために制御して行うことができる。近距離範囲内と外の媒体の値は、種々のセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。
【0053】
この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。その代わりに、横断面縮小部8がソノトロード1から適当に離れている場合、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外でベンチュリ効果による局所的な圧力低下が行われるかぎり、流れ方向を逆にすることができる。
【0054】
図5は類似の装置を示している。この装置の場合、近距離範囲外の横断面縮小部8により、流れる液体の圧力低下が音場6内で発生する。従って、この個所でキャビテーションが発生し、一方、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内ではキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避される。付加的に組み込まれた絞り部9によって、静的な背圧が発生し、この背圧はソノトロード1の一層大きな機械的振幅を可能にする。
【0055】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば17kHzの低周波−高出力−超音波で運転される。
【0056】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば16,000Wの音響出力によって作動させられる。振動伝達ソノトロード面3では、液体に音を伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば15μmの振幅が利用される。振動するソノトロード1は、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって、反応容器5に対して封止されている。容積が0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば3リットルで端部が円錐形に先細になっている円筒状の反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属またはガラスからなっている。反応容器5の内部の中心に、または中心からずれた位置に、横断面縮小部8が設けられている。この横断面縮小部8は液体が流れる際にベンチュリ効果による局所的な圧力低下を生じることになる。横断面縮小部8の寸法、形状および反応容器5内での高さは変更可能である。
【0057】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えば菜種油は、適当な開口4、好ましくはノズル、例えば標準ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器壁の上側範囲から振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内に供給される。pmax(A)に近い圧力または圧力pmax(A)よりも高い圧力pで媒体を供給することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内でキャビテーションの発生が大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0058】
選択されたソノトロード1は例えばλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器5内に挿入されている。
【0059】
反応容器5の内部の横断面縮小部8により、媒体は横断面縮小部8の最小直径に達する前にせき止め作用を受ける。それによって、この個所の上方の反応容器5内の圧力pは、媒体のキャビテーションを可能にするには高すぎる。従って、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内では、キャビテーションが大幅に減少するかまたは発生しない。最小の横断面の下方では、ベンチュリ効果によって減張、すなわち媒体の圧力低下が生じ、それに伴いキャビテーションが可能になる。圧力pは値pmax(A)よりも低い。超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲から、好ましくは下側の底の中央からまたは円筒状反応容器5の下側の側壁から排出される。媒体の排出は制御してまたは制御せずに行うことができ、例えばセル内の圧力pに影響を及ぼすことができるようにするために制御して行うことができる。近距離範囲内と外の媒体の値は、種々のセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。付加的に組み込まれた絞り部9によって、静的な背圧が発生し、この背圧はソノトロード1の一層大きな機械的振幅を可能にする。
【0060】
この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード1、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。その代わりに、横断面縮小部8がソノトロード1から適当に離れている場合、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外でベンチュリ効果による局所的な圧力低下が行われるかぎり、流れ方向を逆にすることができる。
【0061】
図6は装置の他の変形を示している。この変形の場合、反応容器を適当に採寸することによって、ここでは円錐形に先細になった反応容器5として形成することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外に向かって媒体の連続的な振幅増大が可能になるので、近距離範囲内においてはキャビテーションが大幅に減少するかまたは完全に回避され、一方、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外ではキャビテーションが発生する。その際、反応容器の長さは好ましくはn×λ(液体)/2(n∃1)、ここでは4×λ(液体)/2である。ゆっくり流れる媒体の場合の流れ方向と流速は重要ではない。特殊なケースでは流れないようにすることができる。反応容器5の有利な形状は例えば指数関数的形状または横断面の段階的変化である。
【0062】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば20kHzの低周波−高出力−超音波で運転される。
【0063】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力で作動する。振動伝達ソノトロード面3では、音を液体に伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば20μmの振幅が利用される。振動するソノトロード1は反応容器5に対して、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって封止されている。0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば4リットルの容積の反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属、例えばハステロイ(Hasteloy)からなっている。反応容器は異なる角度、好ましくは鋭角、例えば15°で底の方へ円錐台状に先細にすることができる。
【0064】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えばディーゼル油は、適当な開口4、好ましくはノズル、例えば標準ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器壁の上側範囲から振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内に供給される。キャビテーションのために必要な媒体圧力p以下で媒体を供給することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内でキャビテーションの発生が大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0065】
選択されたソノトロード1は好ましくはλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器5内に挿入されている。
【0066】
反応容器の構造的な横断面縮小部によって、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲の外の振幅は、面積に比例して、値Amin(p)よりも上昇し、例えば10倍上昇する。この範囲においてキャビテーションが発生する。この値はその都度λ−半分−ステップで上昇する。それによって、個々のまたは複数のキャビテーション領域が反応容器5内に発生し得る。キャビテーション領域の数、形状および大きさは構造に依存する。超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲から、好ましくは円錐台状の反応容器5の下側の底の中央から排出される。媒体の排出は制御して、または制御せずに行うことができ、例えばセル内の圧力pに影響を及ぼすことができるようにするために制御して行うことができる。近距離範囲内または近距離範囲外の媒体の値は、いろいろなセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。
【0067】
この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード1、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。
【0068】
図7は、図6に関連して説明したような装置を示し、この装置は反応容器の形状だけが異なっている。この装置では、円錐体10が円筒状反応容器5内に設けられている。
【0069】
装置は作動周波数が15〜100kHz、好ましくは15〜30kHz、例えば20kHzの低周波−高出力−超音波で運転される。
【0070】
その際、50〜20,000W、好ましくは100〜20,000W、例えば8,000Wの音響出力で作動する。振動伝達ソノトロード面3では、音を液体に伝達するために、0〜200μm、好ましくは10〜100μm、例えば10μmの振幅が利用される。振動するソノトロード1は反応容器5に対して、Oリングや振動を伝達しないフランジのような圧力を漏らさぬシールによって封止されている。0〜50リットル、好ましくは1〜10リットル、例えば5リットルの容積の反応容器5が使用される。反応容器5は種々の材料、好ましくは鋼、アルミニウム、品質を改良した金属またはポリマーからなっている。円錐体は反応容器5の内部の中央に配置され、種々の材料、好ましくは金属、非金属またはセラミックスからなっている。円錐体10は振動伝達ソノトロード面3の方へ鋭角状に、好ましくは5〜30°の角度で、例えば15°で先細になっている。それによって、ソノトロード1からの距離Dが増大するにつれて横断面が縮小する。この横断面縮小は適当な設計の場合液状媒体内の振幅増大を生じる。
【0071】
ねばねばしたものからさらさらしたものまでの媒体、好ましくはさらさらした媒体、例えばエマルジョンは、適当な開口4、好ましくはノズル、例えば標準ノズル、管または特殊供給部を通って、反応容器壁の上側範囲から振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内に供給される。その際、ゆっくり流れる媒体の場合の流れ方向と流速は重要ではない。特殊なケースでは流れないようにすることができる。キャビテーションのために必要な媒体圧力p以下で媒体を供給することにより、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲内でキャビテーションの発生が大幅に減少するかまたは完全に回避される。
【0072】
選択されたソノトロード1は好ましくはλ/4に相当する長さ、例えば60mmが反応容器5内に挿入されている。
【0073】
反応容器の構造的な横断面縮小部によって、振動伝達ソノトロード面3の近距離範囲外の振幅は、面積に比例して、値Amin(p)よりも上昇し、例えば10倍上昇する。この範囲においてキャビテーションが発生する。この値はその都度λ−半分−ステップで上昇する。それによって、個々のまたは複数のキャビテーション領域が反応容器5内に発生し得る。キャビテーション領域の数、形状および大きさは構造に依存する。超音波処理された媒体は反応容器5の下側範囲から、好ましくは円錐台状の反応容器5の下側の底の中央から排出される。媒体の排出は制御してまたは制御せずに行うことができ、例えばセル内の圧力pに影響を及ぼすことができるようにするために制御して行うことができる。近距離範囲内または近距離範囲外の媒体の値は、いろいろなセンサ、例えば圧力センサを介して検出し、評価し、そしてプロセス最適化のために使用可能である。
【0074】
この使用方法は、反応容器5内の任意の数のソノトロード1、例えば1個のソノトロード1、好ましくは5個までのソノトロード1によって行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1:ソノトロード
2:低周波−高出力−超音波システム
3:ソノトロード面
4:開口
5:反応容器
6:音場
7:中央ノズル
8:横断面縮小部
9:絞り部
10:円錐体
P:圧力
A:振幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のソノトロード(1)を有する超音波システム(2)を具備し、このソノトロードが円筒状反応容器(5)に挿入され、液体が少なくとも1つの入口(4)と少なくとも1つの出口を経て円筒状反応容器(5)を通過する、作動周波数が15〜100kHz、音響出力が50〜20,000Wの超音波によってキャビテーションを発生させて液体を超音波処理するための装置において、
円筒状反応容器(5)の有効横断面積が、円筒状反応容器(5)内のインサート(10)によって振動伝達ソノトロード面(3)から間隔をおいて、少なくとも少しずつ連続的に減少するように形成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
横断面積が線形に減少するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
横断面積が指数関数的に減少するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
横断面積が円錐状に減少していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
横断面積がピラミッド状に減少していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
横断面積が段階的に減少していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
インサート(10)が交換可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
振動伝達ソノトロード面(3)からのインサート(10)の距離が調節可能であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
液体の流れ方向がソノトロード(1)の方に向いていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192409(P2012−192409A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134797(P2012−134797)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【分割の表示】特願2008−527478(P2008−527478)の分割
【原出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(505186809)ドクター ヒールシャー ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】