説明

液体カートリッジおよび液体噴射装置

【課題】カートリッジ着脱の際に、本体供給針から垂れたインクが筐体に付着した場合に、筐体表面に固着する虞を低減させ、カートリッジからのインク漏れを防止する。
【解決手段】液体カートリッジは、液体を収納する液体容器20が収容される筐体12と、筐体12の外面に形成された溝部30と、溝部の底面31に形成され、液体容器20に連通されて液体容器20の内部の液体を外部へ導出するための液体導出路40が抜き差しされる液体導出開口34と、液体が垂れる液垂方向における溝の端部から筐体の内部へ向けて延在した流路36と、流路36の、溝部30とは反対側の端部に設けられた液体吸収部材16と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等の液体噴射装置に装着可能な液体カートリッジ、および当該液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体噴射装置に装着可能な、液体カートリッジとしてのインクカートリッジが、特許文献1に開示されている。図11に示すように、特許文献1に記載のインクカートリッジでは、インク袋122がインクカートリッジ110内に内蔵されている。
【0003】
インクカートリッジ110が液体噴射装置としてのプリンタに装着される際、プリンタ本体に設けられた中空針140が、ゴム栓126を貫通して連通する。これによって、インク袋122からインクを取り出すことができる。インクカートリッジ110の着脱の際、中空針140の先端またはゴム栓126から、若干のインクが漏れ出ることがある。漏れたインクは、ゴム栓126の表面などに付着して、インクカートリッジ110を取り扱うユーザの手を汚したり、プリンタ本体を構成する部品を汚染したりするという問題がある。
【0004】
特許文献1では、インクカートリッジ110にゴム栓126が取り付けられており、インク栓126の周辺部に毛管通路127が設けられている。また、インクカートリッジ110の内部に、毛管通路127と連通したインク吸収体116が設けられている。これにより、中空針140から漏出してゴム栓126に付着したインクは、毛管通路127を通って、インク吸収体116に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−215870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のインクカートリッジ110では、漏出したインクは、ゴム栓126の周辺部に設けられたスリット状の多数の毛管通路127を通る。このように、細く分割され、毛管力の強い毛管通路127を用いると、毛管通路127の内部のインクが毛管力によって保持され、毛管通路127にインクが残留する可能性がある。その状態で放置された場合、残留したインクが固着して、毛管通路127を塞ぎ、ゴム栓126の表面にインクが残留することがあるという課題がある。
【0007】
特に、連続印刷や高品位の用紙を用いるユーザにおいては、プリンタを長期に連続運転する間にインクが無くなることを避けるため、長期に連続運転する前に予め新しいインクカートリッジに取り替えておくことがある。このとき、まだ使い切っていないインクカートリッジは、後に少量の印刷を行うときに、プリンタに再装着されることがある。このように、インクカートリッジは、再装着される前に長期間に渡って放置されることがある。
【0008】
長期間放置されると、上述したように、毛管通路のような狭い空間に保持されたインクが固着して毛管通路を塞ぐことがある。このようなインクカートリッジを再使用すると、インクカートリッジの表面に付着したインクがインク吸収体へ導かれず、場合によっては、インクカートリッジの外部にインクが漏れることもある。
【0009】
また、特許文献1では、インクカートリッジ110を構成する容器に形成された開口部分にゴム栓126が取り付けられ、このゴム栓126の周辺部に毛管通路127が形成されている。そのため、インク吸収体116は、開口の内部で、ゴム栓126に接して設置される。したがって、ゴム栓126や開口付近の設計の自由度が低下するという課題もある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題の少なくとも1つの解決を図る液体カートリッジおよび液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体カートリッジは、液体を収納する液体容器が収容される筐体と、筐体の外面に形成された溝部と、溝部の底面に形成され、液体容器に連通されて該液体容器の内部の液体を外部へ導出するための液体導出路が抜き差しされる液体導出開口と、液体が垂れる液垂方向における溝の端部から筐体の内部へ向けて延在した流路と、流路の、溝部とは反対側の端部に設けられた液体吸収部材と、を有する。
【0012】
本発明の液体噴射装置は、上記液体カートリッジと、液体導出開口に挿入されて液体容器に連通し、液体容器の内部の液体を導出するための液体導出路と、を備えている。液体カートリッジが液体噴射装置に装着された姿勢で、流路は、液体導出開口の鉛直方向の下方に位置する。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、筐体の、液体導出開口付近に液体が保持されず、液体が固着する虞が低減される。また、液体導出開口と流路の位置は離れているため、液体導出開口付近の設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態における液体カートリッジの分解斜視図である。
【図2】図1に示す液体カートリッジの、筐体外面の液体導出開口側から見た概略平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った、液体カートリッジの概略断面図である。
【図4】第1実施形態の液体カートリッジにおいて、液体導出開口付近に付着した液体の移動経路を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態の液体カートリッジの変形例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における液体カートリッジの分解斜視図である。
【図7】(a)は、図6に示す液体カートリッジの、筐体外面の液体導出開口側から見た概略平面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った、液体カートリッジの概略断面図である。
【図8】第2実施形態の液体カートリッジにおいて、液体導出開口付近に付着した液体の移動経路を示す模式図である。
【図9】本発明の第3実施形態における液体カートリッジの吸収部材室近傍をタンクケースの側面から見た概略図である。
【図10】本発明の第3実施形態における液体カートリッジの、液体導出開口が形成された側から見た概略平面図である。
【図11】特許文献1に記載のインクカートリッジの構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の液体カートリッジは、例えばインクジェットプリンタのような液体噴射装置に装着されるインクカートリッジとして好適に用いられる。しかし、これに限定されず、本発明は、任意の液体を収納する液体カートリッジに適用できる。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における液体カートリッジの分解斜視図であり、図2は液体カートリッジの概略平面図である。図3は、図2のA−A線に沿った概略断面図である。液体カートリッジ10は、液体を収納する液体容器20が収容される筐体12と、筐体12の内部に設けられた液体吸収部材16と、を有する。
【0017】
本実施形態では、筐体12は、一方が開放した箱状のタンクケース13と、タンクケース13の蓋となるタンクカバー14とを有する。筐体12は、内部の液体容器20を保護している。液体容器20には、液体を外部に供給するための液体供給通路25が形成された流路形成部材24が固定されている。
【0018】
液体容器20は、変形可能な可撓性材料によって構成された液体収納袋22を含むことが好ましい。液体の使い切り性を良好にするため、可撓性材料としては、液体収納袋22が潰れ易い柔軟性の高い材料を含む層構成からなることがより望ましい。一例として、柔軟性の高い材料であるポリエチレンフィルムを、耐衝撃性を高めるナイロンと溶着層であるポリプロピレンフィルムとにより挟み込んだラミネートシートの構成が挙げられる。また、液体収納袋22の内部の液体の蒸発を抑制する一手段として、ラミネートシートの一部にアルミ層を用いたフィルムや、PETフィルムを基材としてシリカ等の蒸着層を形成した複層フィルムの構成を用いても良い。
【0019】
液体収納袋22の内側に面する層と流路形成部材24とは、ポリプロピレンやポリエチレン等の同一材料で構成されており、熱溶着によってシールされていることが好ましい。液体収納袋22に熱溶着された流路形成部材24は、タンクケース13に固定される。筐体12は、タンクケース13に固定された液体容器20を保護するためのタンクカバー14が取り付けられる。
【0020】
流路形成部材24が筐体12に固定されることで、液体容器20は筐体12に固定される。流路形成部材24に形成された液体供給通路25には、液体の漏れを防ぐ封止体26が設けられていることが好ましい。封止体26は、一例として、弾性体としてのゴム栓によって構成される。流路形成部材24には、封止体26が外れないように押さえ部材27が設けられている。封止体26は、ゴム栓等の弾性体の代わりに、本体の中空針をシール可能な開口を有する弾性体に、前記開口を塞ぐように、バネによって液体収容袋22側から弁体を押し付ける等の構成であってもよい。
【0021】
筐体12には液体導出開口34が形成されており、液体容器20から外部に液体を導出する際、液体導出開口34を通じて、液体容器20に液体導出路としての中空針40が連通される。ゴム栓26は、中空針40が貫通できるように構成されている。中空針40は、例えば液体噴射装置に設けられ、中空針40を通って当該液体噴射装置に液体が供給される。一例として、中空針40の内部を吸引することで、中空針40を通じて液体を外部に導出することができる。
【0022】
筐体12の内部に設置されている液体吸収部材16は、吸水性の高い多孔質材料であることが好ましい。液体吸収部材16は、例えば、スポンジや不織布等のように多孔質体の構成を有することが好ましいが、液体を吸収することができれば、その材質はどのようなものであっても良い。
【0023】
次に、筐体12の液体導出開口34の付近の構成について説明する。なお、図2は、液体導出開口34が形成された側から見た、液体カートリッジ10の概略平面図である。筐体12の外面には溝部30が形成されており、溝部の底面31に液体導出開口34が形成されている(図3参照。)。液体導出開口34は、中空針40が通過可能な大きさを有する。溝部30は、筐体12の、鉛直方向と概ね平行に設置される外面に形成されており、溝部の底面31に付着した液体を鉛直方向下方に導く。溝部の底面31に沿って液体が垂れる液垂方向Tにおける溝部30の端部には、流路36の一端としての液体導入口が形成されている。流路36は、溝部の底面31から筐体12の内部へ向けて延在している。流路36の、溝部の底面31とは反対側の端部に液体吸収部材16が設けられている。
【0024】
流路36は、流路の延在方向に沿って延びた少なくとも1つのリブ37が内面に形成された単一の通路であることが好ましい。これにより、流路36の内面に細いスリット状の溝が形成され、流路36の毛管力が増大するため、液体を効率よく液体吸収部材16に向けて移動させることができる。
【0025】
ここで、流路36に形成されたリブ37は、流路36を複数の通路に分割するものではなく、流路36の大きさを維持しつつ、所定の毛管力を発揮することができる。これにより、液体が流路36中に残留する可能性が低減され、液体の固着によって流路36が閉塞される虞が低減される。仮に、流路36の溝に残存した液体が固着したとしても、流路全体が塞がれる虞は低減され、液体の移動させる機能は維持される。特に、流路36は、中空針40から垂れた液体の移動中に流路全体が塞がれない程度の大きさであることが好ましい。
【0026】
次に、筐体12の液体導出開口34付近に付着した液体42の移動経路について説明する。図3に示すように、中空針40が液体導出開口34に挿入されるとき、または抜かれるとき、中空針40の先から液体42が垂れることがある。この液体42は、自重により中空針40の下方へ垂れ下がった状態になる。この液体42は、液体導出開口34近傍の、溝部の底面31に付着することがある。
【0027】
以下、液体導出開口34近傍に付着した液体42の移動経路について、図4を用いて説明する。図4(a)は、液体導出開口34近傍に液体42が付着した直後の様子を示している。液体カートリッジ10は、流路36が液体導出開口34に対して鉛直方向の下向き(重力の方向)に位置するように設置される。これにより、液体導出開口34付近に付着した液体42は、自重により溝の底面31に沿って徐々に、液体が垂れる液垂方向Tにおける溝部30の端部、すなわち流路36の入口まで移動する。溝部30は、液体42が溢れない程度の深さを有している。
【0028】
図4(b)は、液体42が溝部30の端部に設けられた流路36の入口に集まっている様子を示している。溝部30は、液体42が溢れないように十分な幅(液垂方向Tに直交する方向の幅)が取られている。また、溝部30は、液体導出開口34よりも液垂方向Tの下流側において、液垂方向Tに向かうにつれて、液垂方向Tに直交する方向の幅が小さくなっていることが好ましい。つまり、鉛直方向に対して、溝部30の側面が傾斜している。これにより、液体42は、液垂方向Tにスムーズに流れ、流路36が単一の通路であっても流路の入口に液体42を導くことができる。
【0029】
図4(c)は、流路36の入口に移動した液体42が、流路36を通じて、筐体12の内部に設けられた液体吸収部材16へ導かれる様子を示している。前述のように、流路36にはリブ37が形成されている。このリブ37によって生じる毛管力によって、液体42は、筐体12の内部側に向けて流路36内に引き込まれる。
【0030】
図4(d)は、流路36に引き込まれた液体42が、液体吸収部材16に吸収されている様子を示している。流路36に引き込まれた液体42は、液体吸収部材16と接した部分から吸収される。液体吸収部材16は、流路36の毛管力よりも強いものが用いられる。このため、スムーズに液体42が移動し、液体42が流路36中に残留する可能性が低減される。なお、液体吸収部材16は、筐体内に設けられた吸収部材室18内に配されることが好ましい。
【0031】
上記のように、液体42は、溝部の底面に沿って自重によりスムーズに流れるため、筐体12の外面に向けられた溝部30の底面に液体が保持されず、溝部30で液体が固着する虞が低減される。液体吸収部材16は、ユーザが液体カートリッジ10に中空針40を数回装着した場合であっても、その際に垂れた液体を吸収するのに十分な大きさを有することが望ましい。一回の装着で垂れる液体42の量は、中空針40の構成によっても異なるが、例えば、一回の装着で垂れる液体の量が最大0.1g程度であれば、少なくとも0.2g以上の液体を吸収することができる大きさであることが望ましい。
【0032】
上述した構成によれば、溝部30に形成された液体導出開口34と流路36の入口とは、離れて設けられている。そのため、液体吸収部材16は、液体導出開口34から離れた所に配置することができ、液体カートリッジ10の液体導出開口34付近の設計上の自由度が向上する。
【0033】
図5は、本実施形態の液体カートリッジの変形例を示している。図5に示すように、溝部30の液体導出開口34に中空針40を案内する突出部50が、溝部の底面31に形成されていてもよい。これにより、中空針40の装着時の信頼性を高めることができる。具体的には、突出部50は、液体導出開口34の周囲を取り囲み、液体導出開口34に向けて傾斜した斜面を含んでいる。この場合、以下の第2の実施形態で説明するように、液体導出開口34付近に付着した液体は、突出部50によって、溝部30の側面に誘導される。
【0034】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る液体カートリッジについて、図6および図7を用いて説明する。第2の実施形態の液体カートリッジ60では、筐体12の内部の気圧を制御し、液体容器20を構成する可撓性の液体収納袋22を加圧することによって、中空針を通じて液体を外部に導出する。例えば、大判印刷や高速印字を目的とするプリンタのような液体噴射装置においては、液体の供給速度を向上させるために、液体容器20が収容された容器室を密閉空間とし、外部から容器室の内部の気圧を増大させることで液体の供給が行われる。
【0035】
図6(a)は第2の実施形態の液体カートリッジ60の分解斜視図を示しており、図6(b)は図6(a)の液体導出開口34付近の拡大図を示している。また、図7(a)は、第2実施形態における液体カートリッジ60の、液体導出開口34側から見た概略平面図を示しており、図7(b)は図7(a)のB−B線に沿った断面を示している。図面中、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号が付されている。
【0036】
第2の実施形態では、液体容器20が配設された容器室を密閉空間とするため、タンクケース13に密閉用フィルム15が溶着される。また、液体カートリッジ60が液体噴射装置に装着され、液体導出開口34に中空針が挿入されたときに、中空針の周囲をシールするためのシールゴム62と、シールゴム62を押さえるためのシールゴム押さえ部材64が設けられている。シールゴム62は、中空針40が液体導出開口34に挿入されたときに、中空針40と密着するように構成されている。これにより、筐体12の内部の容器室が密閉される。シールゴム押さえ部材64は、液体導出開口34の周囲を取り囲み、溝部の底面31から突出した突出部を構成している。また、このシールゴム押さえ部材64は、筐体42の側面よりも一段低くなっている。これによって、仮にシールゴム押さえ部材64の表面にインク(液体)が残り、同側面を下側に机上等に置かれた場合にも、インクが机上等に転写され、汚れるおそれがない。
【0037】
筐体12には、筐体内部に設けられた容器室の気圧を制御するための気圧制御開口66が形成されている。液体カートリッジ60が気圧制御機構を備えた液体噴射装置に装着された際、液体噴射装置の気圧制御機構は気圧制御開口66を通じて容器室の気圧を制御する。液体容器20は、容器室の内部の気圧に応じて変形可能な可撓性材料からなる液体収納袋22を含んでいる。
【0038】
また、液体吸収部材16が設けられた吸収部材室18と容器室とは隔離されていることが好ましい。これにより、液体吸収部材16に吸収された液体が、衝撃などにより容器室の内部に付着することが防止される。また、容器室が、気圧制御開口66以外の全ての部分で密閉されるため、容器室の内部の気圧を制御することができる。
【0039】
次に、液体導出開口34付近に付着した液体42の移動経路について、図8を用いて説明する。第2の実施形態では、突出部としてのシールゴム押さえ部材64が溝部の底面31に配置されており、液体導出開口34付近に付着した液体42は、液体導出開口34の中央部に垂れる液体42の他に、シールゴム押さえ部材64を介して、溝部の側面32に誘導される。つまり、液体導出開口34に付着した液体42は、図8(a)に示すように、一旦、シールゴム押さえ部材64と溝部の側面32との毛管力によって保持される。次に、液体42は、溝部の側面32に沿って移動し(図8(b)参照)、流路36の入口へ導かれる(図8(c)参照)。液体導出開口34よりも液垂方向Tの下流側において、溝部30は、液垂方向Tに向かうにつれて、液垂方向Tに直交する方向の幅が小さくなっているころが好ましい。これにより、溝部の側面32に沿って流れる液体42は、徐々にかつスムーズに移動する。これにより、大量の液体42が一気に流路の入口に到達する虞が低減され、液体42が溝部30から溢れたり、溝部30に溜まったりする虞が低減される。なお、流路36内の液体42の流れについては、第1の実施形態と同様である。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の係る第3の実施形態に係る液体カートリッジについて図9および図10を用いて説明する。第3の実施形態に係る液体カートリッジは、液体吸収部材16に吸収された液体が、液体吸収部材16から漏れ出ないようにする構成となっている。通常、液体吸収部材16へ吸収されたインクは、液体吸収部材16の保持力により漏れる事はないが、落下等の衝撃や、保持力以上に液体が吸収された場合には、液体が漏れ出す可能性がある。これにより、筐体12の表面を伝って、外側へ液体が漏れ出す可能性がある。
【0041】
具体的には、筐体12は、液体吸収部材16が収納された吸収部材室18を有している。そして、図9に示すように、吸収部材室18にフィルム等からなる吸収部材室カバー19を溶着する事で液体吸収部材16が取り囲まれている。このようにして、外部への液体漏れが防止される。これにより、液体カートリッジに強い衝撃が加えられたとしても、液体吸収部材16に吸収された液体が別の構成部品に付着することが防止される。
【0042】
液体の漏れを防ぐことができれば、液体吸収部材16を囲むための方法や材料は、どのようなものであっても良い。また、第2の実施形態のように、液体容器20が配設された容器室を密閉空間とするための密閉用フィルム15によって、吸収部材室18を覆っても良い。この場合、液体カートリッジの部品や製造工程の軽減となる。
【0043】
このように、吸収部材室18が囲まれた空間である場合、液体が流路36内を移動するときに、吸収部材室18内の空気を排出させながら液体が移動する。したがって、流路36は、移動中の液体を十分に保持できる大きさであることが好ましい。ただし、流路36が塞がれてしまう程度に大量の液体が垂れてきた場合には、内部の空気の逃げ場が無く、液体の移動が阻害される可能性がある。そのため、流路36とは別に、吸収部材室18と外部の大気とを連通する大気連通口90が筐体12に形成されていることが好ましい。これにより、流路36内の液体は、液体吸収部材16に向けてスムーズに移動する。また、大気連通口90は、溝部30に付着した液体が流れ込まないように、溝の底面とは異なる、筐体の面に形成されることが好ましい(図10参照。)。図10(a)および図10(b)に示すように、第3の実施形態で説明した吸収部材室18および大気連通口90などの構成は、第1の実施形態の液体カートリッジに適用しても良く、第2の液体カートリッジに適用しても良い。大気連通口90は、少なくとも1か所形成されていれば良い。液体吸収部材16に吸収された液体が大気連通口90を通じて外部に出ないように、大気連通口90の、吸収部材室18側の端部は液体吸収部材16と接しないように構成されることが好ましい。
【0044】
上記の実施形態で説明した液体カートリッジは、好ましくは、液体噴射装置に装着されて利用される。液体噴射装置は、液体容器20の内部の液体を導出するための液体導出路としての中空針40を有する。液体カートリッジが液体噴射装置に装着された姿勢で、流路36は、液体導出開口34の鉛直方向の下方に位置する。このとき、中空針40は、液体導出開口34を通って、液体容器20に連通されている。
【符号の説明】
【0045】
10 液体カートリッジ
12 筐体
16 液体吸収部材
20 液体容器
30 溝部
34 液体導出開口
36 流路
T 液垂方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納する液体容器が収容される筐体と、
前記筐体の外面に形成された溝部と、
前記溝部の底面に形成され、前記液体容器に連通されて該液体容器の内部の液体を外部へ導出するための液体導出路が抜き差しされる液体導出開口と、
液体が垂れる液垂方向における前記溝の端部から前記筐体の内部へ向けて延在した流路と、
前記流路の、前記溝部とは反対側の端部に設けられた液体吸収部材と、を有する液体カートリッジ。
【請求項2】
前記流路は、該流路の延在方向に沿って延びた少なくとも1つのリブが内面に形成された単一の通路である、請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
前記液体導出開口よりも前記液垂方向の下流側において、前記溝部は、前記液垂方向に向かうにつれて、幅が小さくなっている、請求項1または2に記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
前記液体導出開口の周囲を取り囲み、前記溝部の底面から突出した突出部であって、該突出部に付着した液体を前記溝部の側面に誘導する突出部をさらに有する、請求項3に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
前記突出部は、前記液体導出開口に向けて傾斜した斜面を含む、請求項4に記載の液体カートリッジ。
【請求項6】
前記液体導出開口に取り付けられるシールゴムを有し、
前記突出部は前記シールゴムを固定している、請求項4に記載の液体カートリッジ。
【請求項7】
前記筐体は、前記液体吸収部材が収納された吸収部材室を有し、
前記液体容器が収容された容器室と前記吸収部材室とが隔離されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の液体カートリッジ。
【請求項8】
前記流路とは別の、前記吸収部材室と外部とを連通する大気連通口が、前記筐体の、前記溝の底面とは異なる面に形成されている、請求項7に記載の液体カートリッジ。
【請求項9】
前記筐体は、前記容器室の内部の気圧を制御するための気圧制御開口を有し、
前記液体容器は、前記容器室の内部の気圧に応じて変形可能な可撓性材料から構成された液体収納袋を含んでいる、請求項7または8に記載の液体カートリッジ。
【請求項10】
液体を収納する液体容器が収容される筐体と、前記筐体の外面に形成された溝部と、前記溝部の底面に形成された液体導出開口と、液体が垂れる液垂方向における前記溝の端部から前記筐体の内部へ向けて延在した流路と、前記流路の、前記溝部とは反対側の端部に設けられた液体吸収部材と、を有する液体カートリッジと、
前記液体導出開口に挿入されて前記液体容器に連通し、該液体容器の内部の液体を導出するための液体導出路と、を備えた液体噴射装置であって、
前記液体カートリッジが前記液体噴射装置に装着された姿勢で、前記流路は、前記液体導出開口の鉛直方向の下方に位置する、液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−240686(P2011−240686A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117251(P2010−117251)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】