説明

液体タンク、および、液体供給装置

【課題】外部にインク供給することによって、インクカートリッジ内のインク液面が下がることを低減する。
【解決手段】インクカートリッジ4は、インク20と、インク20よりも密度が大きい第2の液体30を貯留し、インク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊する移動部材11を有する。インク20を外部に供給すると、移動部材11が沈下し、インク20と第2の液体30の界面を上昇させるとともに、移動部材11とインク20の液面を上昇させて、インク20の液面高さが下がることを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留する液体タンク、および、液体タンクを装着して液体を供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を貯留する液体タンクとして、例えばインクジェットプリンタに装着され、記録ヘッドに供給されるインクを貯留するインクカートリッジがある。かかるインクカートリッジが装着されたインクジェットプリンタは、記録ヘッドのノズルに連通する圧力室内のインクに圧力を付与することで、ノズルからインクを吐出させており、この吐出されたインクを記録媒体上に着弾させることで、記録媒体上に文字や画像等を記録している。
【0003】
このとき、記録ヘッドから吐出されるインクの体積にばらつきが生じると、記録媒体上に着弾したインクの面積にばらつきが生じることとなり、記録媒体に記録される画像の品質にばらつきが生じることとなる。この吐出されるインクの体積のばらつきは、インクの消費に伴いインクカートリッジ内のインク残量が減少することで、記録ヘッド内のインクに作用する圧力が変動して生じることが知られている。すなわち、インクを吐出しないときに、記録ヘッドからインクが流出するのを防止するために、記録ヘッド内のインクに大気圧よりも低い圧力である負圧を与えており、そのためにインクカートリッジと記録ヘッドとの鉛直方向の高さの差である水頭差を利用する方式や、インクカートリッジ内の吸収体を利用する方式を採用しているが、インクカートリッジ内のインク残量が減少すると、この負圧が変化する。
【0004】
そこで、記録ヘッド内のインクに作用する負圧を一定にするために、特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、インクカートリッジを保持するバネ部材を備え、インクの消費に伴うインクカートリッジの重量変化に追従してインクカートリッジの設置高さを変化させている。これにより、インクカートリッジ内のインク液面の高さを常に一定に保ち、インクカートリッジと記録ヘッドとの水頭差を一定に保つことで、記録ヘッド内のインクに常に一定の負圧を作用させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−185601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、インクの消費に伴いインクカートリッジの鉛直方向の位置を上昇させるために、インクカートリッジを保持するためのバネ部材が必要であり、インクカートリッジ単体ではインク液面の高さを一定に保つことができない。また、インクジェット記録装置には、インクカートリッジが鉛直方向に移動可能な空間を設ける必要があるため、インクジェット記録装置が大型化してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、液体供給装置に液体タンク以外の部材を追加することなく、液体タンク単体で、液体の消費による液体タンク内の液面高さが下がることを低減することができる液体タンク、および、液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の液体タンクは、外部に供給される第1の液体を貯留する貯留部と、前記貯留部内の前記第1の液体の液面より低い位置に保持され、前記第1の液体と混合しない、前記第1の液体とは異なる流体と、前記第1の液体と前記流体から浮力を受けて浮遊するとともに、前記第1の液体の液量に応じて鉛直方向に移動可能な移動部材を備えた液体タンクにおいて、前記移動部材は、鉛直方向から見て前記流体と重なる領域を鉛直方向に移動可能であるとともに、鉛直方向における上端が第1の液体の液面以上であり、かつ、鉛直方向における下端が前記流体と隣接していることを特徴としている。ここで、移動部材の鉛直方向における下端が流体と隣接しているとは、移動部材と流体が当接しているものも、介在物を介して移動部材と流体とが隣接しているものも含むものである。
【0009】
これによれば、第1の液体が外部に供給されて貯留部に貯留されている第1の液体の液量が減少すると、移動部材は第1の液体から受ける浮力が減少するため、第1の液体の液面よりも低い位置に保持されている流体に向かって沈下することとなる。そして、移動部材が流体に沈下した部分の体積が第1の液体の液面を上昇させる。したがって、第1の液体が外部に供給されることによる第1の液体の液面高さが下がることを低減することができる。
【0010】
第2の発明の液体タンクは、前記第1の発明において、前記流体は、前記第1の液体よりも密度が大きく、前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体であることを特徴としている。
【0011】
これによれば、流体が第1の液体よりも密度が大きく、第1の液体と互いに混合しない第2の液体からなるため、第1の液体と第2の液体を混合させないための部材を追加する必要がなく、液体タンクを簡単な構成とすることができる。
【0012】
第3の発明の液体タンクは、前記第1の発明において、前記第1の液体と前記流体とを隔離する隔離膜をさらに備えたことを特徴としている。
【0013】
これによれば、第1の液体をすべて外部に供給した液体タンクを新たな液体タンクに交換するような場合において、流体が隔離膜によって保持されているため、流体が外部に流れ出すこと防止することができる。
【0014】
第4の発明の液体供給装置は、前記第1から第3のいずれかの発明の液体タンクと、前記移動部材の移動量を検出する移動量検出手段と、前記液体タンク内に貯留されている第1の液体の液量を算出する液量算出手段を備えた液体供給装置において、前記液量算出手段は、前記移動量検出手段によって検出された前記移動部材の移動量に基づいて、前記液体タンク内に貯留されている第1の液体の液量を算出することを特徴としている。
【0015】
液体供給装置においては、一般に、液体タンクに貯留されている液体の消費に伴う液面の低下を検出することで液体の残量を検出する残量検出手段が備えられている。しかしながら、本発明においては、移動部材の移動量を検出し、その移動量に基づいて液体タンクに貯留されている第1の液体の液量を算出している。すなわち、第1の液体の液面高さの低下を抑制するための移動部材を、第1の液体の液量を算出するために使用することができる。そのため、第1の液体の液量を検出するために、液体タンク内に新たに部材を追加する必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液体タンクは、第1の液体の消費に伴い、移動部材が流体保持部領域内に沈む量が増加することで、第1の液体の液面を押し上げることができ、液体タンク単体で、第1の液体の消費による第1の液体の液面高さが下がることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係るインクカートリッジ、および装着部の概略構成を示す断面図である。
【図3】インクの供給に伴うインクカートリッジ内のインクの液面の変化を説明する模式図である。
【図4】変形形態に係るインクカートリッジの概略構成を示す断面図である。
【図5】別の変形形態に係るインクカートリッジの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態は、液体供給装置として、記録用紙に対してインクを噴射して画像等を記録する、インクジェットプリンタのインク供給系に本発明を適用したものである。
【0019】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、キャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載された図示しない記録ヘッドおよびサブタンク3と、4つのインクカートリッジ4a〜4d(液体タンク)と、これら4つのインクカートリッジ4a〜4dが着脱可能な装着部5(液体供給装置)と、装着部5とサブタンク3を連通するチューブ6や、プリンタ1の状態を表示する図示しないディスプレイなどを備えている。
【0020】
キャリッジ2は、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイド軸7a、7bに沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト8が連結されており、キャリッジ駆動モータ9によって無端ベルト8が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト8の走行に伴って走査方向に移動するようになっている。
【0021】
このキャリッジ2には、記録ヘッドとサブタンク3が搭載されている。記録ヘッドは、その下面(図1の紙面向こう側の面)に複数の噴射ノズルと、その噴射ノズルに連通する圧力室などからなるインク流路と、圧力室内のインクに圧力を付与するアクチュエータを備えている。このアクチュエータを駆動させて圧力室内のインクに圧力を付与することで、噴射ノズルからインクを噴射させている。このアクチュエータとしては、ピエゾ素子などの電気機械変換体や、発熱抵抗体を有する発熱素子などの電気熱変換体などの形式を採用することができる。この記録ヘッドは、サブタンク3と連通しており、サブタンク3はチューブ6を介して装着部5と連結している。装着部5にインクカートリッジ4a〜4dが装着されると、インクカートリッジ4a〜4dとサブタンク3がチューブ6を介して連通される。
【0022】
インクカートリッジ4は、後述するインク20の液面の高さが、記録ヘッドの噴射ノズルの鉛直方向の位置よりも低い位置となるように設置されている。これにより、記録ヘッド内のインクに圧力を付与してないときに、噴射ノズルからインクが流出しないように、記録ヘッド内のインクに大気圧よりも低い圧力である、いわゆる負圧を与えている。
【0023】
図2に示すように、インクカートリッジ4は、インク20(第1の液体)を貯留する貯留部10を有し、インク20の密度よりも大きく、インク20と混合しない第2の液体30がインク20の下部に貯留されている。さらに、インク20を外部に供給するための供給口12と供給チューブ13、および貯留部10に外部から大気を流入させる大気連通口14を備えている。供給チューブ13の一端は、インク20内に浸かり、他端は供給口12と連結している。
【0024】
さらに、インクカートリッジ4は、水平方向の断面が一様な移動部材11を備えている。この移動部材11は、インク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊し、インク20の外部への供給に伴い移動可能であり、貯留されているインク20と第2の液体30から受ける浮力と移動部材11に作用する重力が釣り合った位置で静止する。
【0025】
装着部5には、インクカートリッジ4a〜4dが着脱され、インクカートリッジ4が装着された際に、供給口12と係合する流出口15と、移動部材11を検出するセンサー16を備えている。流出口15には、チューブ6がつながれており、装着されたインクカートリッジ4内のインク20が流出口15、およびチューブ6を通じて記録ヘッドに供給される。
【0026】
プリンタ1の全体の制御を司る図示しない制御装置は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むマイクロコンピュータを備えている。あるいは、この制御装置は、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0027】
次に、記録用紙Pへの画像の記録について説明する。まず、制御手段は、図示しない搬送手段を制御して、記録用紙Pをその先端がキャリッジ2に重なる位置まで図1の下方向(紙送り方向)に搬送する。そして、キャリッジ2を制御して走査方向に移動させつつ、キャリッジ2に搭載された記録ヘッドのアクチュエータを制御して噴射ノズルからインクを吐出させて、記録用紙Pに所定幅の画像がそれぞれ記録される。
【0028】
その後、記録用紙Pを紙送り方向に所定量搬送し、キャリッジ2を制御して上述の方向とは逆の方向に移動させつつ、記録ヘッドの噴射ノズルからインクを吐出させて、さらに記録用紙Pに所定幅の画像がそれぞれ記録される。これを繰り返すことで、記録用紙Pに画像を形成する。
【0029】
噴射ノズルからインクが吐出されると、インクカートリッジ4から記録ヘッドに新たにインクが供給される。このときのインクカートリッジ4内のインク20の液面、インク20と第2の液体30の境界面、および移動部材11の移動について、図3のインクカートリッジ4の模式図を用いて説明する。図3では、簡単のため、供給チューブ13などの図示を省略している。
【0030】
図3(a)は、移動部材11がインク20と第2の液体30から浮力を受けて、その上端がインク20の液面以上に突出し、その下端が第2の液体30に接していて静止している状態である。この状態から、記録ヘッドの噴射ノズルからインクが吐出され、インクカートリッジ4から記録ヘッドにインクが供給されると、図3(b)に示すように、図3(a)のインク20の液面の位置(図3(b)中の点線)が低下する。このとき、移動部材11のインク20内に浸かっている体積が減少するため、移動部材11がインク20から受ける浮力が減少することになり、その結果、図3(c)に示すように、移動部材11が沈下し、第2の液体30内に浸かっている体積が増加する。これにより、減少した浮力に相当する浮力を第2の液体30から受けて移動部材11の沈下は止まる。このとき、移動部材11が第2の液体30内に沈下して、第2の液体30を押しのけることになり、第2の液体30とインク20の境界面を上昇させる。この境界面の上昇に伴い、図3(d)に示すように、インク20の液面と、移動部材11が上昇することとなる。
【0031】
以上の図3(a)〜(d)では、インク20の液面の低下(図3(b))、移動部材11の沈下(図3(c))、および、インク20と第2の液体30の境界面の移動とインク20の液面と移動部材11の上昇(図3(d))を段階的に説明したが、実際には、図3(a)〜(d)がほぼ同時に進行し、図3(a)の状態から図3(d)の状態に変化することとなる。仮に、移動部材11が固定されているとすると、記録ヘッドにインク20が供給されると、インク20の液面は図3(b)に示す液面の位置まで低下する。しかしながら、本実施形態においては、移動部材11はインク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊しているため、記録ヘッドにインク20が供給された後である図3(d)におけるインク20の液面高さは、図3(b)のインク20の液面高さに対して高い位置に保たれている。すなわち、インクカートリッジ4から記録ヘッドにインク20が供給されても、インク20の液面の高さが下がることを低減することができる。
【0032】
仮に、インクの消費に伴ってインクカートリッジ内のインクの液面高さが低下する場合には、インクの液面高さと記録ヘッドの噴射ノズルの鉛直方向の高さの差によって記録ヘッド内のインクに作用する負圧が変化することとなる。噴射ノズルからインクを噴射させる際に、アクチュエータが常に同じ圧力を記録ヘッド内のインクに付与していると、インクに作用する負圧が変化することで、噴射されるインクの速度や体積が変化することとなる。噴射されるインクの速度が変化すると、記録用紙上に着弾するインクの位置にずれが生じることとなる。また、噴射されるインクの体積が変化すると、記録用紙上に記録される画像の色合いが変化することとなる。
【0033】
しかしながら、本発明のインクカートリッジ4は、インク20と、インク20よりも密度が大きい第2の液体30と、インク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊する移動部材11を有しているため、インク20を外部に供給しても、移動部材11が第2の液体30内に沈下して、インク20の液面を上昇させることから、インク20の液面高さが下がることを低減することができる。そのため、記録ヘッド内のインクに作用する負圧の変動を抑制することができ、噴射されるインクの速度や体積の変化を抑えることができる。したがって、記録用紙P上に記録される画像を略均一な印字品質に保つことができる。
【0034】
例えば、仮にインク20と第2の液体30の密度が同じであり、移動部材11の水平方向の断面積を貯留部10の水平方向の断面積の半分とすると、インク20を外部に供給したときに、本発明によらない場合におけるインク20の液面の低下に対して、インク20の液面の低下を半分にすることができる。
【0035】
次に、インクカートリッジ4内のインク20の残量の検出について説明する。インクカートリッジ内のインクの残量を検出するために、インクに浮遊し、インク液面の変動に合わせて移動する残量検出用フロートを備えたインクカートリッジが知られている。この場合には、インクカートリッジ底面付近にフロートが位置するか否かをインクカートリッジ外部の光学センサー等によって検知している。これは、インク液面を直接検出することが困難であるため、所定位置におけるフロート有無からインク液面高さを検出して、インクの残量を検出している。
【0036】
本実施形態では、インク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊する移動部材11を備えているため、制御装置が、センサー16を制御して移動部材11がインクカートリッジ4の所定位置に位置するか否か検知する。このセンサー16は、インク20の残量がなくなるときの移動部材11の位置に対応して設置されており、その位置は、インク20、第2の液体30、移動部材11の密度、第2の液体30の体積、および、移動部材11、貯留部10の水平方向の断面形状から算出される。移動部材11が所定位置に位置する場合には、制御装置は、インクカートリッジ4内のインク20の残量がなくなったことをディスプレイに表示させてユーザに報知する。これにより、ユーザは、インク20の残量がなくなったインクカートリッジ4を新たなインクカートリッジ4に交換する。ここで、移動部材11をインク20の残量を算出するためのフロートとしても利用することができ、別途残量検出用フロートを設置する必要がない。
【0037】
また、本実施形態においては、インク20を外部に供給したときに、インクカートリッジ4内のインク20の液面高さが下がることを低減することについて説明していたが、これには限られず、インク20の密度と、第2の液体30の密度を考慮して、移動部材11の水平方向の断面や材質(密度)を適宜設定することで、インク20を外部に供給したときに、供給したインク20の体積に相当する液面の高さを略一定に保つように構成してもよい。上記の実施形態と同様に、記録ヘッド内のインクに作用する負圧の変化を抑えることができるため、噴射されるインクの速度や体積の変化を抑制することができる。したがって、記録用紙P上に記録される画像の印字品質を略一定に保つことができる。
【0038】
次に、本実施形態に種々の変更を加えた変形形態について説明する。ただし、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0039】
第1変形形態は、図4(a)に示すように、インクカートリッジ4が変形自在なフィルム31(隔離膜)で区画されており、その上部にインク20、下部に第2の液体30が貯留されている。フィルム31の周囲端部は、インクカートリッジ4の筐体に固着されている。本実施形態では、第2の液体30は、インク20と混合しない液体であったが、ここでは、インク20と第2の液体30はフィルム31で区画されているため、第2の液体30はインク20と混合する液体であってもよく、また、その密度はインク20の密度以上であればいかなる液体でもよく、第2の液体30を自由に選択するとして用いることができる。
【0040】
この第1変形形態は、インク20が外部に供給されることで、移動部材11がフィルム31を鉛直方向下向きに押しながら第2の液体30に向かって沈下し、移動部材11の第2の液体30を押しのけた体積が、インク20の液面を上昇させることで、インク20の液面の高さが下がることを低減することができる。これにより、記録ヘッド内のインクに作用する負圧の変動を抑えることができ、噴射されるインクの速度や体積の変化を抑制することができる。したがって、記録用紙P上に記録される画像を略均一な印字品質に保つことができる。
【0041】
一方で、第2の液体30にインク20の密度より小さい液体を用いることも可能である。その場合には、フィルム31は可撓性があり、かつ、第2の液体30とインク20の間で発生する第2の液体30の浮力と釣り合う張力が発生して、第2の液体30の上方への移動を規制し、第2の液体30をインク20の液面よりも下側に保持できる程度にその変形が規制されていればよい。
【0042】
この場合には、移動部材11には、インク20と第2の液体30から受ける浮力と、張力が作用しているフィルム31が移動部材11の鉛直方向下方向への移動を規制する力とが作用して静止する。インク20が外部に供給されることで、移動部材11がインク20から受ける浮力が小さくなるため、移動部材11がフィルム31を鉛直方向下向きに押圧するが、その押圧する力がフィルム31が移動部材11の鉛直方向下向きへの移動を規制する力よりも大きくなったときに、移動部材11がフィルム31を鉛直方向下向きに押しながら第2の液体30に向かって沈下する。そして、移動部材11の第2の液体30を押しのけた体積が、インク20の液面を上昇させることで、インク20の液面の高さを一定に保つことができる。これにより、記録ヘッド内のインクに作用する負圧を一定に保つことができ、噴射されるインクの速度や体積の変化が生じない。したがって、記録用紙P上に記録される画像を常に均一な印字品質に保つことができる。
【0043】
第2変形形態は、図4(b)に示すように、インクカートリッジ4の貯留部10に変形自在なフィルム31で囲まれた空間に第2の液体30が充填されている。上述の形態とは異なり、この第2の液体30を保持するフィルム31の領域(以下、液体保持領域と称す)は、貯留部10の水平方向における一部の領域であるため、移動部材11が鉛直方向から見てその液体保持領域と重なる領域以外の領域に移動しないように、移動部材11の水平方向の移動を制限するガイド40が備えられている。
【0044】
第1変形形態と同様にインク20と第2の液体30はフィルム31で区画されているため、第2の液体30はインク20と混合する液体であってもよい。さらに、第2の液体30の密度は、インク20の密度以上であればいかなる液体でもよい。また、液体保持領域が、移動部材11がガイド40で規制された移動可能な領域以外の領域に移動しないように、フィルム31の底部の一部がインクカートリッジ4の筐体に固着されていてもよい。また、第1変形形態と同様に、第2の液体30にインク20の密度より小さい液体を用いることも可能である。この場合には、第2の液体30をインク20の液面より下側に保持するために、フィルム31の底部の一部がインクカートリッジ4の筐体に固着されているか、フィルム31と第2の液体30とを合わせた見かけ上の密度がインク20の密度よりも大きければよく、さらに、第2の液体30とインク20の間で発生する第2の液体30の浮力と釣り合う張力が発生して、第2の液体30の上方への移動を規制し、第2の液体30をインク20の液面よりも下側に保持できる程度にその変形が規制されていればよい。また、フィルム31に図示しない錘が固着されており、フィルム31と第2の流体30と錘とを合わせた見かけ上の密度がインク30の密度よりも大きくてもよい。
【0045】
この第2変形形態においても、第1変形形態と同様に、インク20が外部に供給されることで、移動部材11がフィルム31を鉛直方向下向きに押しながら第2の液体30に向かって沈下し、移動部材11の第2の液体30を押しのけた体積が、インク20の液面を上昇させることで、インク20の液面の高さが下がることを低減することができる。これにより、記録ヘッド内のインクに作用する負圧の変動を抑制することができ、噴射されるインクの速度や体積の変化を抑えることができる。したがって、記録用紙P上に記録される画像を略均一な印字品質に保つことができる。
【0046】
また、第2変形形態においても、第1変形形態と同様に、インク20の密度、第2の液体30の密度、フィルム31の密度、および錘の重量を考慮して、移動部材11の水平方向の断面や材質(密度)を設定することで、インク20を外部に供給したときに、インク20の液面高さを一定に保つように構成してもよい。
【0047】
いずれの変形形態においても、着脱可能なインクカートリッジ4は、第2の液体30がフィルム31で覆われているため、装着部5からインクカートリッジ4を取り外した後、インクカートリッジ4を持ち運ぶ際に、第2の液体30がインクカートリッジ4から外部に流れ出すことがない。
【0048】
また、第2変形形態にのみ移動部材11の移動を規制するガイド40が備えられていたが、これには限られず、本実施形態や第1変形形態においてもガイド40があってもよい。また、ガイド40は、移動部材11が転覆することも防止することができる。
【0049】
以上においては、センサー16は、インク20の残量がなくなるときの移動部材11の位置に対応する位置に設置されていたが、これには限られず、図5(a)のように、鉛直方向において移動部材11と重なる位置にセンサー16が設置されており、移動部材11の鉛直方向の移動量を計測して、その移動量と、インク20、第2の液体30、移動部材11の密度、第2の液体30の体積、および、移動部材11、貯留部10の水平方向の断面形状から制御手段がインク20の残量を算出してもよい。この場合、センサー16には、レーザ変位計のような変位が測定可能なものが用いられる。また、図5(b)のように、移動部材11の側面に例えばエンコーダのような目盛りが設置されており、センサー16によって検出された目盛りの数(ON−OFFの回数)と、目盛りの間隔から制御装置が移動部材11の移動量を算出して、その移動量から同様にインク20の残量を算出してもよい。
【0050】
以上においては、移動部材11は一様の材質である必要はなく、移動部材11に錘を追加することで、移動部材11の見かけ上の密度を適宜設定してもよい。また、移動部材11は、その水平方向の断面が円筒や角柱のように一様であるものに限られず、円錐や角錐のような形状のものであってもよい。また、インク20の液面高さが一定に保たれる場合には、仮にインク20に浮遊する残量検知用のフロートを用いても、当該フロートは移動することがないため、インク20の残量を検出することができない。そのため、インク20の残量を算出するにあたり、インク20と第2の液体30から浮力を受けて浮遊する移動部材11の移動量を検出することは非常に有用である。
【0051】
また、以上においては、インクカートリッジ4内のインク20の残量がなくなった場合に、インクカートリッジ4を交換していたが、これに限られず、インク20を新たにインクカートリッジ4に追加してもよい。
【0052】
また、以上においては、インク20の液面より下側に保持される流体を第2の液体30として説明したが、当該流体は液体に限られず、ゾルやゲル等であってもよい。
【0053】
また、本発明はインクジェットプリンタに装着されるインクカートリッジに適用することに限られず、液体タンク内の液体の液面高さを一定に保つ、あるいは、液面高さの低下を低減するものであれば、いかなる液体タンクにも適用することができる。例えば、高層建物の屋上に設置される受水槽などに適用することで、建物内の各階の水道蛇口から排出される水圧を一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ
4a〜4d インクカートリッジ
5 装着部
11 移動部材
20 インク(第1の液体)
30 第2の液体
P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に供給される第1の液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の前記第1の液体の液面より低い位置に保持され、前記第1の液体と混合しない、前記第1の液体とは異なる流体と、
前記第1の液体と前記流体から浮力を受けて浮遊するとともに、前記第1の液体の液量に応じて鉛直方向に移動可能な移動部材を備えた液体タンクにおいて、
前記移動部材は、
鉛直方向から見て前記流体と重なる領域を鉛直方向に移動可能であるとともに、鉛直方向における上端が第1の液体の液面以上であり、かつ、鉛直方向における下端が前記流体と隣接していることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
前記流体は、前記第1の液体よりも密度が大きく、前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体であることを特徴とする請求項1に記載の液体タンク。
【請求項3】
前記第1の液体と前記流体とを隔離する隔離膜をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体タンク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の液体タンクと、
前記移動部材の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記液体タンク内に貯留されている第1の液体の液量を算出する液量算出手段を備えた液体供給装置において、
前記液量算出手段は、前記移動量検出手段によって検出された前記移動部材の移動量に基づいて、前記液体タンク内に貯留されている第1の液体の液量を算出することを特徴とする液体供給装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25491(P2011−25491A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172824(P2009−172824)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】