液体タンク及び液体タンクの製造方法
【課題】設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがない液体タンクを提供する。
【解決手段】リング枠2の周方向の複数個所をアンカー3によって基礎部1に固定し、リング枠2の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材4をリング枠2に固定し、勾配支持部材4に円形の勾配基礎枠5の周縁部を固定し、勾配基礎枠5にタンクの底板11を配して溶接により勾配基礎枠5に固定し、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板11の歪をなくした焼酎タンクとする。
【解決手段】リング枠2の周方向の複数個所をアンカー3によって基礎部1に固定し、リング枠2の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材4をリング枠2に固定し、勾配支持部材4に円形の勾配基礎枠5の周縁部を固定し、勾配基礎枠5にタンクの底板11を配して溶接により勾配基礎枠5に固定し、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板11の歪をなくした焼酎タンクとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンク及び液体タンクの製造方法に関し、特に、貯蔵量により酒税が検定される焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンク及び液体タンクの製造方法として用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、米、麦、芋、そば等の素材を原料として製造される蒸留酒である。例えば、芋を原料とした焼酎は、一次仕込みとして米麹に水と酵母を加えて熟成させることにより、米のデンプン質を糖化させると共に、酵母によりこの糖分をアルコール発酵させる、所謂、並行複発酵により一次もろみを造る。次に、二次仕込みとして、原料となる破砕した蒸し芋と仕込み水を一次もろみに加え、芋のデンプン質を発酵させて二次もろみを造る。その後、二次もろみを蒸留し、所定期間貯蔵タンクに貯蔵して成熟させることで焼酎が造られる。
【0003】
焼酎や焼酎廃液を貯蔵する貯蔵タンクは、傾斜した基礎枠の上にタンク本体に設けられた底板が載置され、基礎枠側に対してタンク本体が固定された状態のものが一般に使用されている(例えば、特許文献1参照)。傾斜した基礎枠の上に底板が載置されているため、底板の最低部に排出口を設けることで、大型の貯蔵タンクであっても内部の焼酎や焼酎廃液の排出が容易に行える。
【0004】
【特許文献1】特開2002−321791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の貯蔵タンク(液体タンク)は、傾斜した基礎枠に対して底板が載置され、基礎枠側にタンク本体が固定されて設置されているのが一般的である。このため、底板は基礎枠に対して直接固定されていない状態であり、貯蔵タンクの設置環境や焼酎の貯蔵状態によっては底板に歪が発生する虞があった。焼酎などの酒類は酒税の関係から貯蔵量に対して酒税が検定される。底板に歪が発生することで、液量(重量)により底板が上下に動いてしまい、検尺の数値にばらつきが生じて実際の液量と検尺値とが乖離した状態になる事が考えられ、酒税検定が困難になる虞があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンク及び液体タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0008】
第1の態様では、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがなくなる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所に径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材が固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0010】
第2の態様では、底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第3の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0012】
第3の態様では、底板の少なくとも中央部位が支持アンカーの部位で勾配基礎枠に溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2又は3の態様において、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0014】
第4の態様では、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されるため、溶接による底板の熱歪を低減することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第2〜4のいずれかの態様において、底板が複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0016】
第5の態様では、大径の底板であっても勾配基礎枠への取り付けが容易に行える。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、底板片同士の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0018】
第6の態様では、底板同士の接合と底板の勾配基礎枠への固定が3点溶接により行え、底板片同士の接合及び基礎枠への固定が確実且つ容易に行える。
【0019】
本発明の第7の態様は、第2〜6のいずれかの態様において、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0020】
第7の態様では、勾配基礎枠に固定された底板に対して筒状のタンク部材を取り付けることができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第2〜7のいずれかの態様において、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンクにある。
【0022】
第8の態様では、下部に位置するピット穴から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の液体タンクとすることができる。
【0023】
上記目的を達成するための本発明の第9の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配され、底板は複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合され、底板片の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成され、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定され、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定され、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンクにある。
【0024】
第9の態様では、底板の少なくとも中央部位が支持アンカーの部位で勾配基礎枠に溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなり、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されるため、溶接による底板の熱歪を低減することができ、大径の底板であっても勾配基礎枠への取り付けが容易に行え、底板同士の接合と底板の勾配基礎枠への固定が3点溶接により行え、底板片同士の接合及び基礎枠への固定が確実且つ容易に行え、勾配基礎枠に固定された底板に対して筒状のタンク部材を取り付けることができ、下部に位置するピット穴から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の液体タンクとすることができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明の第10の態様は、高さが漸次低くなる勾配支持部材を介してリング状のリング枠に円形の勾配基礎枠を支持し、周方向の複数個所をアンカーによって基礎部に固定することで勾配基礎枠が支持されたリング枠を水平に配置し、リング枠の内周縁を型枠の位置決めに用いて勾配基礎枠にコンクリートを打設し、勾配基礎枠にタンクの底板を構成する底板片を配置し、底板片を互いに溶接接合すると共に、溶接接合部を勾配基礎枠との接合部と共通の溶接部として勾配基礎枠に固定し、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面を勾配支持枠に溶接固定し、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定したことを特徴とする液体タンクの製造方法にある。
【0026】
第10の態様では、底板が勾配基礎枠に支持アンカーの部位で溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがない液体タンクを製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の液体タンクは、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンクとすることができる。
【0028】
また、本発明の液体タンクの製造方法は、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンクを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本実施形態例は、液体タンクとして焼酎を貯蔵する焼酎タンクを例に挙げて説明してある。本発明は、液体タンクとして焼酎タンクに限らず、水やジュース等の飲料水を貯蔵するタンクとして適用することが可能である。
【0030】
本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクは、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されている。即ち、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによってコンクリートの基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによってコンクリートの基礎部に固定され、勾配基礎枠の部位を含めてコンクリートが打設されて勾配基礎枠が基礎部とされ、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されている。
【0031】
このため、底板の少なくとも中央部位が勾配基礎枠に支持アンカーの部位で溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0032】
図1乃至図12に基づいて本発明の液体タンク(焼酎タンク)の実施形態例を具体的に説明する。
【0033】
図1には本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクの断面、図2には図1中の底板を表す平面、図3には底板及びタンク本体が固定されていない状態の図1中矢印III部の詳細状況、図4には図3中のIV−IV線矢視、図5にはタンク本体が固定された状態の図1中矢印III部の詳細状況、図6には図1中VI部の詳細状況を示してある。また、図7乃至図12には焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明を示してある。
【0034】
図1、図2に示すように、コンクリートの基礎部1にはリング状のリング枠2が水平に設けられ、リング枠2の周方向の複数個所がアンカー3によって基礎部1に固定されている。アンカー3の部位には勾配支持部材4(図5参照、詳細構造は後述する)が固定され、勾配支持部材4はリング枠2の径方向で一端から他端に向かって(図1中左端から右端に向かって)高さが漸次低くなっている。複数の勾配支持部材4には円形で格子状の枠体とされた勾配基礎枠5(詳細な全体形状は後述する図8参照)の周縁部が固定され、勾配基礎枠5の上面が傾斜状態に配置されている。勾配基礎枠5の面の適宜箇所は支持アンカー6によって基礎部1に固定され、勾配基礎枠5の部位を含めてコンクリートが打設されている。そして、上面が傾斜状態とされた勾配基礎枠5には円形の底板11が配され、底板11の外周縁部にタンク本体21が固定されている。
【0035】
図3、図4、図5に基づいて勾配支持部材4の構成を説明する。
【0036】
図に示すように、リング枠2にはアンカー3がボルト部を介してナット3aにより固定され、リング枠2のアンカー3に対する固定部には円周方向の内側に延びるベース板7の一端(図3、図5中左端)がアンカー3に固定されている。ベース板7の多端(図3、図5中右端)には矩形板状の基礎枠支持板8が立設されている。即ち、ベース板7及び基礎枠支持板8によって勾配支持部材4が構成されている。リング枠2の円周方向に複数設けられた勾配支持部材4の基礎枠支持板8は、リング枠2の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低く形成されている。高さが低くなるように形成された複数の基礎枠支持板8の上端に円形の勾配基礎枠5(全体の形状は図2及び後述する図8参照)の周縁が固定され、勾配基礎枠5の上面が傾斜状態にされる。
【0037】
尚、図5に示すように、基礎枠支持板8を含めて勾配基礎枠5の上面の部位までコンクリートが打設された状態になっているが、リング枠2の内側の縁がコンクリート打設用の型枠31の位置決めストッパとなるため、リング枠2を備えたことで勾配基礎枠5の上面の部位までのコンクリートの打設を正確に且つ容易に実施することができる。
【0038】
図2、図6に基づいて勾配基礎枠5及び支持アンカー6を説明する。
【0039】
図2に示すように、勾配基礎枠5は枠部5aが格子状の円形に形成された枠体とされている(後述する図8も合わせて参照)。また、図2、図6に示すように、枠部5aの交差部5bに対応して基礎部1には支持アンカー6が固定され、交差部5bの部位で枠部5aが支持アンカー6の上端に固定されている。また、交差部5b以外の枠部5aの部位に対応する適宜位置にも支持アンカー6が固定され、枠部5aの適宜位置が支持アンカー6の上端に固定されている。つまり、勾配基礎枠5は支持アンカー6によって浮き上がりが防止されている。
【0040】
図2、図5、図6に基づいて底板11を説明する。
【0041】
図2に示すように円形の底板11は複数枚に分割された底板片11aが互いに溶接により接合されて構成されている。図5に示すように、底板片11aが互いに溶接により接合された底板11の径は勾配基礎枠5の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に溶接により固定されて溶接部13とされている。底板11の裏面と勾配基礎枠5との溶接は勾配支持部材4の部位に施工されている。勾配支持部材4の部位で勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に固定されていることで、底板片11aが溶接接合された底板11の径方向に縮む応力が抑制される。
【0042】
図2、図6に示すように、底板片11a同士は溶接により接合されると共に(後述する図10、図11も合わせて参照)、底板片11aの接合部と勾配基礎枠5に対する底板11の接合部とが共通の部位とされて底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5への固定が共通の溶接部13で構成されている。即ち、2枚の底板片11a及び勾配基礎枠5の3点が共通の溶接部13で拘束されている。
【0043】
図1、図5に基づいてタンク本体21を説明する。
【0044】
図に示すように、底板11の周縁にはタンク本体21の内径側が溶接により固定されている。具体的には、タンク本体21は複数の帯状鋼板を繋いで巻回することで円筒状に固定され、円筒状の筒体が複数段重ねられることでタンク本体21が構成される(後述する図12も参照)。図1に示すように、供給口22を備えた屋根部23が設けられて焼酎タンク25とされる。
【0045】
図1、図2に示すように、底板11の最低部位置(図中右端位置)にはピット32につながるピット穴15が形成され、ピット32には図示しない開閉バルブが取り付けられる。焼酎タンク25に貯蔵された焼酎はピット32から外部に取り出される。
【0046】
上述した焼酎タンク25は、底板11が溶接により勾配基礎枠5に固定されるため、焼酎タンク25の設置環境や焼酎の貯蔵状態(貯蔵量)に拘わらず傾斜状態で配される底板11に歪が生じることがなくなる。このため、液量(重量)により底板11が上下に動くことがなく検尺の数値にばらつきが生じず、実際の液量と検尺値とが常に一致した状態になり(液深に変化がない)、酒税検定を正確且つ容易に実施できる。
【0047】
また、底板11は複数の底板片11aが溶接接合されて構成されているので、大径の底板11であっても勾配基礎枠5への取り付けが容易に行え、勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に溶接により固定されるため、溶接による底板11の径方向の熱歪を低減することができる。そして、底板11を複数の底板片11aで構成したことにより、歪を分散して全体の歪をなくすことができる。
【0048】
また、底板片11aの接合部と勾配基礎枠5に対する底板11の接合部とが共通の溶接部13とされて底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5への固定が共通の部位とされるので、底板片11a同士の接合と底板11の勾配基礎枠5への固定が3点溶接により施工でき、底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5の固定が確実且つ容易に行える。
【0049】
また、底板11の円周の外周縁に筒状のタンク本体21が固定され、底板11の最低部位置にはピット穴15が形成され、貯蔵された焼酎がピット穴15を介して取り出されるので、勾配基礎枠5に固定された底板11に対して筒状のタンク本体21を取り付けることができ、下部に位置するピット穴15から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の焼酎タンク25とすることができる。更に、底板11に歪が生じないためピット穴15(取り出し口)を低い位置に配置することができるので、取り出し口周りの焼酎タンク25の設計の自由度を増すことができる。
【0050】
図7乃至図12に基づいて上述した焼酎タンク25の製造方法を説明する。
【0051】
図7に示すように、リング枠2は図示しない基礎部に設けられたアンカー3に固定される。図8に示すように、例えば、予めリング枠2に高さが漸次低くなる勾配支持部材4を介して勾配基礎枠5を一体的に組み立てておき、周方向の複数個所を勾配基礎枠5が一体となったリング枠2をアンカー3によって基礎部に固定することでリング枠2を水平に支持する。この時、基礎部に設けられた支持アンカー6が勾配基礎枠5の交差部5b(枠部5aの適宜位置)に対応する。
【0052】
図9に示すように、リング枠2の内周縁を位置決めストッパとして型枠(図示省略)を配置し勾配基礎枠5にコンクリートを打設して基礎部1を形成する。基礎部1が形成された後、勾配基礎枠5の上面に底板11を配置する。即ち、図10に示すように、勾配基礎枠5の上面に底板片11aを配置して底板片11a同士の接合と底板11の勾配基礎枠5への固定を3点溶接で施工して溶接部13を形成する。
【0053】
図11に示すように、複数枚の底板片11a同士の溶接及び勾配基礎枠5への溶接が終了して底板11が勾配基礎枠5に溶接固定されると、勾配支持部材4の部位に対応する勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面を、勾配基礎枠5に溶接により固定して溶接部12とする。
【0054】
底板11が勾配基礎枠5に所定の状態で溶接により固定されると、図12に示すように、タンク本体21を構成する筒部材21aを底板11の円周の外周縁に溶接により固定すると共に、筒部材21a同士を積上げてタンク本体21を形成する。
【0055】
従って、底板11が支持アンカー6を含む部位で勾配基礎枠5に溶接により固定されるため、設置環境や焼酎の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板11に歪が生じることがなく液深の変化がない焼酎タンク25を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンクの産業分野で利用することができる。
【0057】
また、本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンクの製造方法の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクの断面図である。
【図2】図1中の底板を表す平面図である。
【図3】底板及びタンク本体が固定されていない状態の図1中矢印III部の詳細図である。
【図4】図3中のIV−IV線矢視図である。
【図5】タンク本体が固定された状態の図1中矢印III部の詳細図である。
【図6】図1中VI部の詳細図である。
【図7】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図8】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図9】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図10】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図11】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図12】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 基礎部
2 リング枠
3 アンカー
4 勾配支持部材
5 勾配基礎枠
6 支持アンカー
7 ベース板
8 基礎枠支持板
11 底板
12,13 溶接部
15 ピット穴
21 タンク本体
22 供給口
23 屋根部
25 焼酎タンク
32 ピット
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンク及び液体タンクの製造方法に関し、特に、貯蔵量により酒税が検定される焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンク及び液体タンクの製造方法として用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、米、麦、芋、そば等の素材を原料として製造される蒸留酒である。例えば、芋を原料とした焼酎は、一次仕込みとして米麹に水と酵母を加えて熟成させることにより、米のデンプン質を糖化させると共に、酵母によりこの糖分をアルコール発酵させる、所謂、並行複発酵により一次もろみを造る。次に、二次仕込みとして、原料となる破砕した蒸し芋と仕込み水を一次もろみに加え、芋のデンプン質を発酵させて二次もろみを造る。その後、二次もろみを蒸留し、所定期間貯蔵タンクに貯蔵して成熟させることで焼酎が造られる。
【0003】
焼酎や焼酎廃液を貯蔵する貯蔵タンクは、傾斜した基礎枠の上にタンク本体に設けられた底板が載置され、基礎枠側に対してタンク本体が固定された状態のものが一般に使用されている(例えば、特許文献1参照)。傾斜した基礎枠の上に底板が載置されているため、底板の最低部に排出口を設けることで、大型の貯蔵タンクであっても内部の焼酎や焼酎廃液の排出が容易に行える。
【0004】
【特許文献1】特開2002−321791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の貯蔵タンク(液体タンク)は、傾斜した基礎枠に対して底板が載置され、基礎枠側にタンク本体が固定されて設置されているのが一般的である。このため、底板は基礎枠に対して直接固定されていない状態であり、貯蔵タンクの設置環境や焼酎の貯蔵状態によっては底板に歪が発生する虞があった。焼酎などの酒類は酒税の関係から貯蔵量に対して酒税が検定される。底板に歪が発生することで、液量(重量)により底板が上下に動いてしまい、検尺の数値にばらつきが生じて実際の液量と検尺値とが乖離した状態になる事が考えられ、酒税検定が困難になる虞があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンク及び液体タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0008】
第1の態様では、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがなくなる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所に径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材が固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0010】
第2の態様では、底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第3の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0012】
第3の態様では、底板の少なくとも中央部位が支持アンカーの部位で勾配基礎枠に溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第2又は3の態様において、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0014】
第4の態様では、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されるため、溶接による底板の熱歪を低減することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第2〜4のいずれかの態様において、底板が複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0016】
第5の態様では、大径の底板であっても勾配基礎枠への取り付けが容易に行える。
【0017】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、底板片同士の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0018】
第6の態様では、底板同士の接合と底板の勾配基礎枠への固定が3点溶接により行え、底板片同士の接合及び基礎枠への固定が確実且つ容易に行える。
【0019】
本発明の第7の態様は、第2〜6のいずれかの態様において、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定されていることを特徴とする液体タンクにある。
【0020】
第7の態様では、勾配基礎枠に固定された底板に対して筒状のタンク部材を取り付けることができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第2〜7のいずれかの態様において、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンクにある。
【0022】
第8の態様では、下部に位置するピット穴から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の液体タンクとすることができる。
【0023】
上記目的を達成するための本発明の第9の態様は、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配され、底板は複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合され、底板片の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成され、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定され、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定され、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンクにある。
【0024】
第9の態様では、底板の少なくとも中央部位が支持アンカーの部位で勾配基礎枠に溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなり、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されるため、溶接による底板の熱歪を低減することができ、大径の底板であっても勾配基礎枠への取り付けが容易に行え、底板同士の接合と底板の勾配基礎枠への固定が3点溶接により行え、底板片同士の接合及び基礎枠への固定が確実且つ容易に行え、勾配基礎枠に固定された底板に対して筒状のタンク部材を取り付けることができ、下部に位置するピット穴から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の液体タンクとすることができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明の第10の態様は、高さが漸次低くなる勾配支持部材を介してリング状のリング枠に円形の勾配基礎枠を支持し、周方向の複数個所をアンカーによって基礎部に固定することで勾配基礎枠が支持されたリング枠を水平に配置し、リング枠の内周縁を型枠の位置決めに用いて勾配基礎枠にコンクリートを打設し、勾配基礎枠にタンクの底板を構成する底板片を配置し、底板片を互いに溶接接合すると共に、溶接接合部を勾配基礎枠との接合部と共通の溶接部として勾配基礎枠に固定し、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面を勾配支持枠に溶接固定し、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定したことを特徴とする液体タンクの製造方法にある。
【0026】
第10の態様では、底板が勾配基礎枠に支持アンカーの部位で溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがない液体タンクを製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の液体タンクは、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンクとすることができる。
【0028】
また、本発明の液体タンクの製造方法は、設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず底板に歪が生じることがない液体タンクを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本実施形態例は、液体タンクとして焼酎を貯蔵する焼酎タンクを例に挙げて説明してある。本発明は、液体タンクとして焼酎タンクに限らず、水やジュース等の飲料水を貯蔵するタンクとして適用することが可能である。
【0030】
本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクは、底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されている。即ち、リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによってコンクリートの基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによってコンクリートの基礎部に固定され、勾配基礎枠の部位を含めてコンクリートが打設されて勾配基礎枠が基礎部とされ、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されている。
【0031】
このため、底板の少なくとも中央部位が勾配基礎枠に支持アンカーの部位で溶接により固定されるため、液体タンクの設置環境や液体の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板に歪が生じることがなくなる。
【0032】
図1乃至図12に基づいて本発明の液体タンク(焼酎タンク)の実施形態例を具体的に説明する。
【0033】
図1には本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクの断面、図2には図1中の底板を表す平面、図3には底板及びタンク本体が固定されていない状態の図1中矢印III部の詳細状況、図4には図3中のIV−IV線矢視、図5にはタンク本体が固定された状態の図1中矢印III部の詳細状況、図6には図1中VI部の詳細状況を示してある。また、図7乃至図12には焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明を示してある。
【0034】
図1、図2に示すように、コンクリートの基礎部1にはリング状のリング枠2が水平に設けられ、リング枠2の周方向の複数個所がアンカー3によって基礎部1に固定されている。アンカー3の部位には勾配支持部材4(図5参照、詳細構造は後述する)が固定され、勾配支持部材4はリング枠2の径方向で一端から他端に向かって(図1中左端から右端に向かって)高さが漸次低くなっている。複数の勾配支持部材4には円形で格子状の枠体とされた勾配基礎枠5(詳細な全体形状は後述する図8参照)の周縁部が固定され、勾配基礎枠5の上面が傾斜状態に配置されている。勾配基礎枠5の面の適宜箇所は支持アンカー6によって基礎部1に固定され、勾配基礎枠5の部位を含めてコンクリートが打設されている。そして、上面が傾斜状態とされた勾配基礎枠5には円形の底板11が配され、底板11の外周縁部にタンク本体21が固定されている。
【0035】
図3、図4、図5に基づいて勾配支持部材4の構成を説明する。
【0036】
図に示すように、リング枠2にはアンカー3がボルト部を介してナット3aにより固定され、リング枠2のアンカー3に対する固定部には円周方向の内側に延びるベース板7の一端(図3、図5中左端)がアンカー3に固定されている。ベース板7の多端(図3、図5中右端)には矩形板状の基礎枠支持板8が立設されている。即ち、ベース板7及び基礎枠支持板8によって勾配支持部材4が構成されている。リング枠2の円周方向に複数設けられた勾配支持部材4の基礎枠支持板8は、リング枠2の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低く形成されている。高さが低くなるように形成された複数の基礎枠支持板8の上端に円形の勾配基礎枠5(全体の形状は図2及び後述する図8参照)の周縁が固定され、勾配基礎枠5の上面が傾斜状態にされる。
【0037】
尚、図5に示すように、基礎枠支持板8を含めて勾配基礎枠5の上面の部位までコンクリートが打設された状態になっているが、リング枠2の内側の縁がコンクリート打設用の型枠31の位置決めストッパとなるため、リング枠2を備えたことで勾配基礎枠5の上面の部位までのコンクリートの打設を正確に且つ容易に実施することができる。
【0038】
図2、図6に基づいて勾配基礎枠5及び支持アンカー6を説明する。
【0039】
図2に示すように、勾配基礎枠5は枠部5aが格子状の円形に形成された枠体とされている(後述する図8も合わせて参照)。また、図2、図6に示すように、枠部5aの交差部5bに対応して基礎部1には支持アンカー6が固定され、交差部5bの部位で枠部5aが支持アンカー6の上端に固定されている。また、交差部5b以外の枠部5aの部位に対応する適宜位置にも支持アンカー6が固定され、枠部5aの適宜位置が支持アンカー6の上端に固定されている。つまり、勾配基礎枠5は支持アンカー6によって浮き上がりが防止されている。
【0040】
図2、図5、図6に基づいて底板11を説明する。
【0041】
図2に示すように円形の底板11は複数枚に分割された底板片11aが互いに溶接により接合されて構成されている。図5に示すように、底板片11aが互いに溶接により接合された底板11の径は勾配基礎枠5の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に溶接により固定されて溶接部13とされている。底板11の裏面と勾配基礎枠5との溶接は勾配支持部材4の部位に施工されている。勾配支持部材4の部位で勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に固定されていることで、底板片11aが溶接接合された底板11の径方向に縮む応力が抑制される。
【0042】
図2、図6に示すように、底板片11a同士は溶接により接合されると共に(後述する図10、図11も合わせて参照)、底板片11aの接合部と勾配基礎枠5に対する底板11の接合部とが共通の部位とされて底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5への固定が共通の溶接部13で構成されている。即ち、2枚の底板片11a及び勾配基礎枠5の3点が共通の溶接部13で拘束されている。
【0043】
図1、図5に基づいてタンク本体21を説明する。
【0044】
図に示すように、底板11の周縁にはタンク本体21の内径側が溶接により固定されている。具体的には、タンク本体21は複数の帯状鋼板を繋いで巻回することで円筒状に固定され、円筒状の筒体が複数段重ねられることでタンク本体21が構成される(後述する図12も参照)。図1に示すように、供給口22を備えた屋根部23が設けられて焼酎タンク25とされる。
【0045】
図1、図2に示すように、底板11の最低部位置(図中右端位置)にはピット32につながるピット穴15が形成され、ピット32には図示しない開閉バルブが取り付けられる。焼酎タンク25に貯蔵された焼酎はピット32から外部に取り出される。
【0046】
上述した焼酎タンク25は、底板11が溶接により勾配基礎枠5に固定されるため、焼酎タンク25の設置環境や焼酎の貯蔵状態(貯蔵量)に拘わらず傾斜状態で配される底板11に歪が生じることがなくなる。このため、液量(重量)により底板11が上下に動くことがなく検尺の数値にばらつきが生じず、実際の液量と検尺値とが常に一致した状態になり(液深に変化がない)、酒税検定を正確且つ容易に実施できる。
【0047】
また、底板11は複数の底板片11aが溶接接合されて構成されているので、大径の底板11であっても勾配基礎枠5への取り付けが容易に行え、勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面が勾配基礎枠5に溶接により固定されるため、溶接による底板11の径方向の熱歪を低減することができる。そして、底板11を複数の底板片11aで構成したことにより、歪を分散して全体の歪をなくすことができる。
【0048】
また、底板片11aの接合部と勾配基礎枠5に対する底板11の接合部とが共通の溶接部13とされて底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5への固定が共通の部位とされるので、底板片11a同士の接合と底板11の勾配基礎枠5への固定が3点溶接により施工でき、底板片11a同士の接合及び勾配基礎枠5の固定が確実且つ容易に行える。
【0049】
また、底板11の円周の外周縁に筒状のタンク本体21が固定され、底板11の最低部位置にはピット穴15が形成され、貯蔵された焼酎がピット穴15を介して取り出されるので、勾配基礎枠5に固定された底板11に対して筒状のタンク本体21を取り付けることができ、下部に位置するピット穴15から焼酎を取り出すことができる焼酎貯蔵用の焼酎タンク25とすることができる。更に、底板11に歪が生じないためピット穴15(取り出し口)を低い位置に配置することができるので、取り出し口周りの焼酎タンク25の設計の自由度を増すことができる。
【0050】
図7乃至図12に基づいて上述した焼酎タンク25の製造方法を説明する。
【0051】
図7に示すように、リング枠2は図示しない基礎部に設けられたアンカー3に固定される。図8に示すように、例えば、予めリング枠2に高さが漸次低くなる勾配支持部材4を介して勾配基礎枠5を一体的に組み立てておき、周方向の複数個所を勾配基礎枠5が一体となったリング枠2をアンカー3によって基礎部に固定することでリング枠2を水平に支持する。この時、基礎部に設けられた支持アンカー6が勾配基礎枠5の交差部5b(枠部5aの適宜位置)に対応する。
【0052】
図9に示すように、リング枠2の内周縁を位置決めストッパとして型枠(図示省略)を配置し勾配基礎枠5にコンクリートを打設して基礎部1を形成する。基礎部1が形成された後、勾配基礎枠5の上面に底板11を配置する。即ち、図10に示すように、勾配基礎枠5の上面に底板片11aを配置して底板片11a同士の接合と底板11の勾配基礎枠5への固定を3点溶接で施工して溶接部13を形成する。
【0053】
図11に示すように、複数枚の底板片11a同士の溶接及び勾配基礎枠5への溶接が終了して底板11が勾配基礎枠5に溶接固定されると、勾配支持部材4の部位に対応する勾配基礎枠5の外側に位置する底板11の裏面を、勾配基礎枠5に溶接により固定して溶接部12とする。
【0054】
底板11が勾配基礎枠5に所定の状態で溶接により固定されると、図12に示すように、タンク本体21を構成する筒部材21aを底板11の円周の外周縁に溶接により固定すると共に、筒部材21a同士を積上げてタンク本体21を形成する。
【0055】
従って、底板11が支持アンカー6を含む部位で勾配基礎枠5に溶接により固定されるため、設置環境や焼酎の貯蔵状態に拘わらず傾斜状態で配される底板11に歪が生じることがなく液深の変化がない焼酎タンク25を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンクの産業分野で利用することができる。
【0057】
また、本発明は、底板の歪が少なく貯蔵量の把握が的確に行える液体タンクの製造方法の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態例に係る焼酎タンクの断面図である。
【図2】図1中の底板を表す平面図である。
【図3】底板及びタンク本体が固定されていない状態の図1中矢印III部の詳細図である。
【図4】図3中のIV−IV線矢視図である。
【図5】タンク本体が固定された状態の図1中矢印III部の詳細図である。
【図6】図1中VI部の詳細図である。
【図7】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図8】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図9】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図10】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図11】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【図12】焼酎タンクの製造方法を説明する工程説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 基礎部
2 リング枠
3 アンカー
4 勾配支持部材
5 勾配基礎枠
6 支持アンカー
7 ベース板
8 基礎枠支持板
11 底板
12,13 溶接部
15 ピット穴
21 タンク本体
22 供給口
23 屋根部
25 焼酎タンク
32 ピット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所に径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材が固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項3】
リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項4】
請求項2又は3において、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかにおいて、底板が複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項6】
請求項5において、底板片同士の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかにおいて、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかにおいて、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンク。
【請求項9】
リング状のリング枠が水平に設けられ、
リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、
勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、
勾配基礎枠にタンクの底板が配され、底板は複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合され、底板片の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成され、
底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定され、
底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定され、
底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出される
ことを特徴とする液体タンク。
【請求項10】
高さが漸次低くなる勾配支持部材を介してリング状のリング枠に円形の勾配基礎枠を支持し、
周方向の複数個所をアンカーによって基礎部に固定することで勾配基礎枠が支持されたリング枠を水平に配置し、
リング枠の内周縁を型枠の位置決めに用いて勾配基礎枠にコンクリートを打設し、
勾配基礎枠にタンクの底板を構成する底板片を配置し、
底板片を互いに溶接接合すると共に、溶接接合部を勾配基礎枠との接合部と共通の溶接部として勾配基礎枠に固定し、
勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面を勾配支持枠に溶接固定し、
底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定した
ことを特徴とする液体タンクの製造方法。
【請求項1】
底板の少なくとも中央部位が溶接により基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所に径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材が固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位が溶接により勾配基礎枠に固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項3】
リング状のリング枠が水平に設けられ、リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、勾配基礎枠にタンクの底板が配されると共に底板の少なくとも中央部位に位置する支持アンカーの部位で勾配基礎枠と底板が溶接により固定されることで勾配基礎枠に底板が固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項4】
請求項2又は3において、底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかにおいて、底板が複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項6】
請求項5において、底板片同士の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかにおいて、底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定されていることを特徴とする液体タンク。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかにおいて、底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出されることを特徴とする液体タンク。
【請求項9】
リング状のリング枠が水平に設けられ、
リング枠の周方向の複数個所がアンカーによって基礎部に固定され、リング枠の径方向で一端から他端に向かって高さが漸次低くなる勾配支持部材がアンカーによる固定部におけるリング枠に固定され、
勾配支持部材に円形の勾配基礎枠の周縁部を固定することで勾配基礎枠の面が傾斜状態に配置され、勾配基礎枠の面の適宜箇所が支持アンカーによって基礎部に固定され、
勾配基礎枠にタンクの底板が配され、底板は複数の底板片に分割されていると共に、底板片が溶接により互いに接合され、底板片の接合部と勾配基礎枠に対する底板の接合部とが共通の部位とされて底板片同士の接合及び勾配基礎枠への固定が共通の溶接部で構成され、
底板の径は勾配基礎枠の径よりも一回り大きく形成され、勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面が勾配基礎枠に溶接により固定され、
底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定され、
底板の最低部位置にはピット穴が形成され、タンクには焼酎が貯蔵され貯蔵された焼酎がピット穴を介して取り出される
ことを特徴とする液体タンク。
【請求項10】
高さが漸次低くなる勾配支持部材を介してリング状のリング枠に円形の勾配基礎枠を支持し、
周方向の複数個所をアンカーによって基礎部に固定することで勾配基礎枠が支持されたリング枠を水平に配置し、
リング枠の内周縁を型枠の位置決めに用いて勾配基礎枠にコンクリートを打設し、
勾配基礎枠にタンクの底板を構成する底板片を配置し、
底板片を互いに溶接接合すると共に、溶接接合部を勾配基礎枠との接合部と共通の溶接部として勾配基礎枠に固定し、
勾配基礎枠の外側に位置する底板の裏面を勾配支持枠に溶接固定し、
底板の円周の外周縁に筒状のタンク本体が固定した
ことを特徴とする液体タンクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−193171(P2006−193171A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5289(P2005−5289)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(595106512)明新工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(595106512)明新工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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