説明

液体ディスペンサ装置

液体ディスペンサ装置(10)は、
装置からの液体を遮断および通過させる弁部材形成部(54)と、
取り外せないように弁(16)を容器(13)に締結するための締結縁部(50)であって、内側筒状壁(60)と外側筒状壁(30)との間に挟み込まれる筒状締結壁(50)を備える締結縁部と
を備える弁(16)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、点眼薬または点耳薬などの医薬品の分野の液滴状の液体の分注の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5154325号明細書では、容器に取り付けられる支持体とハウジングとの間に配置される弁部材を形成するエラストマーダイアフラムを含む液体ディスペンサ装置が開示されている。ダイアフラムは、周囲環状ビードを含み、支持体の上面とハウジングの底面との間でビードを挟圧することで装置上で保持される。したがって、ダイアフラムは、装置の軸方向に沿って挟圧されることで装置内で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5154325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このタイプのアセンブリの欠点は、使用者が液体を吐出するために容器を絞ると、液体がダイアフラムを開口するために軸方向にダイアフラムに圧力を加え、その圧力により液体がダイアフラムの周辺で漏れてしまうということである。この漏れのリスクは、部品が製造上の公差に応じて変化する恐れのある寸法または相対位置を示す場合には、さらに可能性が高くなる。残念なことに、装置からの漏れがあれば、特に、液体が防腐剤を含まない場合には厄介である。それは、液体が漏れて装置内の望ましくない場所に存在することになり、そのことが細菌の発生を助長し、その結果、液体を汚染する可能性があるためである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特定の目的は、無菌性が改善されたディスペンサ装置を提供することである。
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は、特に、
装置からの液体を遮断および通過させるための弁部材形成部と、
取り外せないように弁を容器に締結するための締結縁部であって、内側筒状壁と外側筒状壁との間に挟まれた筒状締結壁を備える締結縁部と
を備える弁を含む液体ディスペンサ装置を提供する。
【0007】
内側筒状壁および外側筒状壁は、弁の締結壁を半径方向に圧迫するように、すなわち、筒状壁の軸に垂直な方向に対応する半径方向に締結壁の両側を押圧するように配置され、この半径方向の圧迫が弁を封止する働きをすることは理解できる。
【0008】
すなわち、弁締結領域では、ディスペンサ装置はできるだけ短い3つの同心管を有し、内側管は内側筒状壁に対応し、中間管は弁の締結壁に対応し、外側管は外側筒状壁に対応する。これらの管は全て、ディスペンサ装置の軸に対応する同一の軸を有し、この軸は、一般に、液体が弁部材から出る方向に対応した装置の回転軸、特に容器の回転軸である。十分に封止するために、内側筒状壁の直径は締結壁の直径よりやや大きく、締結壁の直径は外側筒状壁の直径よりやや大きいことは理解できるであろう。
【0009】
このように、半径方向に挟圧して弁を締結することによって、液体排出方向以外の方向に締め付けることで封止が得られる。したがって、液体が装置から出て弁が液体通過配置になるように弁に圧力を加えると、液体によって軸方向に加えられた圧力は弁を締結する方向にはかからないことになる。すなわち、液体は装置から出る時に弁に軸方向の圧力を加えるので、弁の半径方向には比較的低い応力が生じる。さらに、弁の締結要素、例えば、内側および外側筒状壁が動くリスクも比較的小さい。いずれにしても、内側および外側筒状壁が動くリスクは、軸方向に弁が締め付けられて締結される場合よりも小さくなる。軸方向は、ほぼ締結要素が組み合わされる方向であり、この方向に締結要素が動きやすく漏れが生じやすい。提案されている構造は締結要素に加わる応力が小さいので、より良好な封止が得られ、そのため装置はより無菌性で良好に動作することは理解できるであろう。
【0010】
提案されている装置では、締結要素の寸法の精度はそれほど求められない。管によって挟圧することで、製造上の公差または軸方向に組み立てる時の位置決め公差により部品の相対位置が軸方向にわずかに変化しても、十分な封止が保証される。
【0011】
また、ディスペンサ装置は軸方向に組み立てられることがよくあるので、有利には、外側筒状壁または内側筒状壁が弁をセンタリングするための壁となって、装置の組み立てを容易にする。
【0012】
最後に、筒状壁を使用することは小型化の点で有利であることは理解されたい。締結領域の軸方向位置は、ディスペンサ装置のより下流側方向、例えば、弁部材形成部の両側に定められ、そうすることで、ディスペンサ装置のエンドピースの直径を小さくすることができる。また、筒状壁によって封止されることで、締結要素による圧迫の領域が大きくなり、より良好な封止が得られる。
【0013】
提案されている装置は、防腐剤を含まない液体を分注するのが望まれる場合に、非常に有用であることは理解されたい。このタイプの液体を使用して、確実に、特に信頼性の高い封止が行われるようにする必要がある。
【0014】
装置はさらに、以下の1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0015】
外側筒状壁は、容器に取り付けられた支持体によって担持される。
【0016】
支持体は、略ディスク状で、外側筒状壁によって画定される弁座を含む。この外側筒状壁は、ディスクの遠位面から(液体ディスペンサ端部に近い方の面から)突出するのが好ましい。したがって、支持体は、全体の形が円形トレイであり、その筒状部は内側筒状壁と外側筒状壁との間に挟まされるのに十分な高さの縁部を構成する。
【0017】
弁座はさらに、液体遮断配置の時に弁の弁部材形成部を支承するための支承面を形成する遠位端を有する円筒状中央部を含む。さらに好ましくは、この中央部は、ディスクの遠位面から突出する。
【0018】
弁は、締結壁によって周囲が画定されるスクリーンを含む。
【0019】
弁はさらに、スクリーンから突出して弁の弁部材形成部を構成する遠位端を有する円筒状中央部を含む。したがって、弁の形状は支持体位置に相補的な形状になる。
【0020】
内側筒状壁は、容器に取り付けられて弁を少なくとも部分的に覆うハウジングによって担持される。ハウジングは、弁の遠位端が貫通する中央オリフィスを含むのが好ましい。
【0021】
ハウジングは、内側筒状壁と底壁と外側シェルとによって画定される溝を含み、この溝は外側筒状壁と共に弁の締結壁を挟み込む。
【0022】
装置は、ハウジングを支持体にスナップ留めするためのスナップ留め手段を含む。スナップ留めは軸方向に行われるのが好ましい、すなわち、部品はスナップ留めするために軸方向に互いに向かって動かされる。
【0023】
スナップ留めするためのスナップ留め手段は、スナップ留めがさらに内側筒状壁と外側筒状壁との間の挟圧によって弁を取り外せないように締結することに対応するような構造である。
【0024】
弁の弁部材形成部および弁の締結縁部は、エラストマー材料製である。
【0025】
弁は、好ましくはバネの支承面としての働きをする剛性部分を含む。
【0026】
本発明はさらに、装置の組立方法であって、
弁の締結壁を外側筒状壁の内側に差し込むことによって弁を支持体に設置するステップと、
内側筒状壁を弁の締結壁の内側に差し込むことによって弁の上にハウジングを設置するステップと、
ハウジングを支持体にスナップ留めするステップと
の連続ステップを含む方法を提供する。
【0027】
任意で、弁を支持体に設置するステップとハウジングを弁の上に設置するステップとの間で、バネが差し込まれてもよく、バネは弁の中央円筒状部の周囲に差し込まれる。
【0028】
本発明は、単なる例として添付図面を参照して詳述される以下の説明を読めばより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態のディスペンサ装置の断面図である。
【図2a】図1の装置の組立方法を示した斜視図である。
【図2b】図1の装置の組立方法を示した斜視図である。
【図2c】図1の装置の組立方法を示した斜視図である。
【図2d】図1の装置の組立方法を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、液滴状の液体を分注するための装置10を示す。この例では、分注される液体は、点眼薬または点耳薬になる液体のような薬剤液である。装置10は、容器13の首部にねじ留めされるディスペンサエンドピース12を備える。装置10は、使用者が容器13を絞ることで液体を分注する構造である。この例では、容器は、使用者によって絞られた後に前の形状に戻るように弾性変形可能である。装置10または少なくとも容器13は、ほぼ液体排出方向に対応する回転軸Xを有する。
【0031】
エンドピース12は、支持体14、弁16、バネ17、ハウジング18、および疎水性フィルタ20を備える。
【0032】
この例では、支持体14は、容器13に支持体を締結するためにエンドピースの近位端に配置される締結部22を備える。締結部22は、容器13の首部にねじ留めされるようにねじ切りされた外側スカート部24と、容器13とディスペンサエンドピース12とを封止する働きをする筒状形状の内側スカート部26とを備える。
【0033】
支持体14はさらに、弁16の座部を形成する中間部28を含む。この中間部28は、軸Xに垂直な半径方向面Rに延在する略ディスク状である。ディスク28は、遠位面は、筒状外側壁30によって画定される。筒状外側壁は、ディスク28の周囲スカート部を形成し、以下で説明するように、弁16を受承するのに十分な高さで軸Xを有する管状にディスク28に対して垂直に延在する。ディスク28は、筒状壁30の底端部の近くに、弁16をセンタリングして弁16の縁部を受承するための溝を画定する環状リブ32を含む。ディスク28はさらに、弁を閉鎖するための円筒状中央部34を有し、円筒状中央部はディスク28の遠位側から中心から突出して、遠位端で弁16の支承面36を支承する。この中央部34は、弁16が開閉することができるシャッタペグとなる。また、ディスク28は、容器からの液体を通過させるためのチャネル38が通される。チャネル38は、特にディスク28の遠位面に形成される凹部で画定されるキャビティ40へと開口する。さらに、このキャビティ40は、ペグ34と弁16との間に画定される液体を通過させるための第2のチャネル42へと開口する。チャネル38および42は、軸Xに略平行な軸を有する。図1に見られるように、ディスク28と外側筒状壁30とシャッタペグ34とがまとまって、弁16を受承するための筒状キャビティを画定する。
【0034】
また、支持体14は、空気を容器へと通すためのチャネル44を有し、チャネル44は、疎水性フィルタ20を受承するためのハウジング46へと開口し、ハウジング46は、円筒状で、フィルタ20が差し込まれる近位端で開口している。
【0035】
弁16は、中央円筒状部48と環状周囲スカート部50とを有し、中央部48およびスカート部50は、材料のスクリーン52によって接続される。スクリーン52は、遠位面で、バネ17の支承面53を担持する。中央部48の遠位部54は、支承面36と協働することによって液体を遮断または通過させるための弁部材を形成する部分である。したがって、面36は、弁部材形成部54が液体遮断配置の時には前記弁部材形成部54の支承面となる。中央部48の上面は、液滴計量形状部58へと開口する液体排出チャネル56を含む。
【0036】
スカート部50は、弁16を容器13に取り外せないように締結するために、弁16を支持体に締結するための締結縁部を形成する。締結縁部は、軸Xを有し、外側筒状壁30の内径よりやや大きい直径を有する筒状締結壁50で構成される。
【0037】
この例では、弁16は、全体にエラストマー材料製である。しかしながら、弁はエラストマー材料製の一部とより剛性の材料でできた他の部分とを含むことも可能であり、特に部分53はバネ17を支承するための支承面を形成する。弁部材形成部54、スクリーン52、および締結壁50は、エラストマー材料製であるのが好ましい。
【0038】
ハウジング18は、スナップ留め手段59によって支持体16に取り付けられる。スナップ留め手段59により、ハウジング18は、軸方向Xに沿って組み合わされる時に支持体14にスナップ留めされる。スナップ留め手段59は、軸Xを中心とし、弁締結壁50の直径よりやや大きい直径を有する内側筒状壁60を担持する。ハウジング18はさらに、ハウジング18の残りの部分に対して近位方向に延在する外側スカート部を形成する外側シェル62と、さらに底壁64とを含み、底壁64は、壁60と底壁64とシェル62とが締結壁50と外側筒状壁30とを挟み込むための溝を画定するような形状である。ハウジング18は、弁16のほとんどの部分を覆うが、中心は弁の中央部48が通される。このために、ハウジング18は、弁16をセンタリングする働きをする筒状内側スカート部66によって円筒状キャブティを画定する。スカート部66はさらに、バネ17のための支承座を形成する溝68を画定する。
【0039】
装置10の操作について、以下に説明する。
【0040】
使用者が容器13を絞ると、流体は圧力を受け、流体は疎水性フィルタ20を通過することができないので、チャネル38に流れ込み、その後キャビティ40およびチャネル42に流れ込む。
【0041】
チャネル42における流体の圧力が弁部材形成部54を変形させて、弁部材形成部54が支承面36を持ち上げることで液体遮断配置から液体通過配置に変化する。この変形は、バネ17が液体の圧力で圧縮されることでより容易に行われる。このようにして、液体は液滴状で分注される。
【0042】
図2aから図2dを参照して、装置の組み立てについて以下に説明する。
【0043】
組み立ては、エンドピース12を組み立てるステップと、その後に、エンドピース12を容器13にねじ留めするステップとを含む。
【0044】
エンドピース12の組み立ては、弁16の締結壁50を支持体14の筒状壁30の内側に差し込むことによって弁16を支持体14に設置するステップで始まる。このステップは図2aに示されており、その後に、図2bに示されるように、バネ17を弁の中央部48の周囲に差し込むステップが続く。バネが定位置に設置されると、図2cに示されるように、内側筒状壁60を締結壁50の内側に差し込むことによって、ハウジング18を弁16に設置するステップが続く。ハウジング18の設置は、図2dに示されるように、ハウジングを支持体14にスナップ留めすることで終了し、このスナップ留めと同時に、弁16がエンドピース12に取り外せないように締結され、内側筒状壁60と外側筒状壁30との間に挟み込まれる。弁16が装置に締結されると、スクリーン2が弾性応力を受けて、端部54を面36に押し付けることは理解されたい。さらに、これは、バネからの戻し力によってより容易にされる。
【0045】
装置の利点の中でも、壁60および壁30を挟圧することによって締結壁50周囲を固定封止することが特に効果的であることは理解できるであろう。液体が容器13から出ると、液体は弁16に対してX方向に圧力を加えるが、このX方向の圧力は締結部50には伝わらない。それは、弁の締結は半径方向Rの圧迫によって行われるためである。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されないことは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(10)からの液体を遮断および通過させる弁部材形成部(54)と、
取り外せないように弁を容器(13)に締結するための締結縁部(50)であって、内側筒状壁(60)と外側筒状壁(30)との間に挟み込まれる筒状締結壁(50)を備える締結縁部と
を備える弁(16)を含み、内側筒状壁(60)は容器(13)に取り付けられたハウジング(18)によって担持され、ハウジング(18)は弁(16)を少なくとも部分的に覆う、液体ディスペンサ装置(10)。
【請求項2】
外側筒状壁(30)は、容器(13)に取り付けられた支持体(14)によって担持され、支持体は、外側筒状壁(30)によって画定される略ディスク状の弁座(28)を含むのが好ましい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
弁座(28)はさらに、液体遮断配置の時に弁の弁部材形成部(54)を支承するための支承面(36)を形成する遠位端を有する円筒状中央部(34)を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
弁は、締結壁(50)によって周囲が画定されるスクリーン(52)を含み、さらに、スクリーンから突出して端部が弁の弁部材形成部分(54)を構成する中央円筒状部(48)を含む、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
ハウジング(18)は、内側筒状壁(30)と底壁(64)と外側シェル(62)とによって画定される溝を含み、この溝は外側筒状壁(30)と共に弁の締結壁(50)を挟み込む、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
内側筒状壁(60)を担持するハウジング(18)と、外側筒状壁(30)を担持する支持体(14)とを軸方向にスナップ留めするためのスナップ留め手段(59)を含む、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
スナップ留め手段(59)は、スナップ留めがさらに内側筒状壁(60)と外側筒状壁(30)との間の挟圧によって弁(16)を取り外せないように締結することに対応するような構造である、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
弁の弁部材形成部(54)および弁の締結縁部(50)は、エラストマー材料製であり、弁(16)は任意で剛性部分(53)を含む、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の装置(10)の組立方法であって、
弁(16)の締結壁(50)を外側筒状壁(30)の内側に差し込むことによって弁を支持体(14)に設置するステップと、
内側筒状壁(60)を弁(16)の締結壁(50)の内側に差し込むことによって弁の上にハウジング(18)を設置するステップと、
ハウジング(18)を支持体(14)にスナップ留めするステップと
を含む、組立方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【公表番号】特表2013−504496(P2013−504496A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528426(P2012−528426)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051877
【国際公開番号】WO2011/030062
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512063287)
【Fターム(参考)】