液体供給装置及び液滴吐出装置
【課題】管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる液体供給装置及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】インク供給路と、内部にインクが満たされたインク供給路を押圧し、該押圧部位をインク供給路の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって液体を送出する供給用チューブポンプと、インク供給路の周面に固定され、供給用チューブポンプによりインクが送出されているときにインク供給路の歪みを検出して歪み検出信号を出力する圧電素子184と、圧電素子184から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する異常検出器196と、を備える。
【解決手段】インク供給路と、内部にインクが満たされたインク供給路を押圧し、該押圧部位をインク供給路の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって液体を送出する供給用チューブポンプと、インク供給路の周面に固定され、供給用チューブポンプによりインクが送出されているときにインク供給路の歪みを検出して歪み検出信号を出力する圧電素子184と、圧電素子184から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する異常検出器196と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録用の液滴(例えば、インク滴)を吐出する吐出口を備えた記録ヘッドを有し、記録ヘッドの吐出口より液滴を吐出することにより画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。この種のインクジェット記録装置は、記録ヘッドへ液体を供給するための流路を構成する管状部材(例えば、ポリプロピレンで構成したチューブ)内の液体への気泡の混入、及び管状部材からの液体漏れといったトラブルを発生する可能性がある。特に、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置の場合は、管状部材の規模が大きくなり、多数のバルブや継ぎ手、液体貯留用のタンクなどが存在し、上記のようなトラブルを起こす可能性は高くなる。
【0003】
ところで、管状部材内の液体への気泡の混入は、気泡が記録ヘッド内にまで達すると液滴の吐出異常を引き起こす。また、気泡は液体より圧縮性が高いので、圧力ダンパーとして働き、本来精密に制御したい圧力を正確に制御できなくなる。
【0004】
管状部材からの液体漏れは、圧力制御に対して悪影響を及ぼす。また、液体の漏れ量が多量になれば、電気系統での漏電やショートといった大きなトラブルを引き起こすことになる。従って、管状部材内の液体に含まれる気泡の検出、及び管状部材からの液体漏れの検出はインクジェット記録装置の信頼性を確保する上で重要である。
【0005】
管状部材内の液体に混入した気泡の検出方法として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、気泡を光学的に検出する方法が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、液滴を吐出するための圧電素子の残響振動を電気的に検出する方法が開示されている。更に、特許文献5には、インクの電気抵抗(インピーダンス)を検出する方法が開示されている。なお、管状部材からの液体漏れの検出方法としては、送液側と回収側のポンプの回転数(累積送液量)の比較により検出する技術が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−15841号公報
【特許文献2】特開2004−58531号公報
【特許文献3】特開平10−114068号公報
【特許文献4】特開2004−276366号公報
【特許文献5】特開2005−41212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術は、インク顔料による検出面の汚れなどの影響を受けるため検出不良となる虞がある、という問題点があった。また、特許文献3及び特許文献4の技術は、吐出圧力室内部の気泡の検出にのみ有効であり、検出回路が複雑で検出閾値の設定も難しい、という問題点があった。また、特許文献5の技術は、非導電性のインクには適用できないばかりか、電極間にあるインクのみを検出するので、例えばチューブなどの管状部材内の液体に含まれる気泡の検出には不向きである、という問題点があった。また、上述した管状部材からの液体漏れの検出方法は、送液量が誤差やバラツキを含むので、液体漏れが発生してからしばらくしないと(漏れ量が一定以上の量にならないと)検出できない、という問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる液体供給装置及び液滴吐出装置を提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の液体供給装置は、可撓性の管状部材と、内部に液体が満たされた前記管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体を送出する送出手段と、前記管状部材の周面に固定され、前記管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段と、前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する信号出力手段と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項1記載の液体供給装置によれば、送出手段により、内部に液体が満たされた可撓性の管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体が送出される。
【0011】
ところで、管状部材内に満たされた液体を管状部材の一端側から他端側に送出するにあたり、送出手段が管状部材に当接する際、或いは管状部材から離れる際に該管状部材内にスパイク状の圧力波(以下、「圧力リップル」とも言う。)が発生し、これによって、管状部材に歪みが生じる。管状部材内の液体に気泡が存在した場合、気泡はインクに比べて圧縮性が高いため、圧力リップルを吸収する。管状部材からの液体漏れがある場合、管状部材内の圧力が低下するため、気泡と同じように作用し、結果的に圧力リップルが吸収されることになる。従って、圧力リップルの大きさが通常よりも所定値以上小さくなったことをもって、管状部材内の液体に気泡が存在しているか、或いは管状部材から液体が漏れていると判断することができる。
【0012】
そこで、本発明では、前記管状部材の周面に固定された歪み検出手段により前記管状部材の歪みが検出されて歪み検出信号が出力され、信号出力手段により、前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号が出力される。
【0013】
このように、本発明によれば、管状部材の歪みが検出されて出力される歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号が出力されるので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0014】
なお、請求項1に記載の液体供給装置は、請求項2記載の発明のように、前記歪み検出手段をPVDFで構成してもよい。これにより、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れをより一層精度良くかつ容易に検知することができる。
【0015】
また、請求項1または請求項2記載の液体供給装置は、請求項3記載の発明のように、前記送出手段による送出速度の増減に対応して前記閾値を増減させることにより該閾値を変更する変更手段を更に含んで構成されてもよい。これにより、送出手段による送出速度が変化しても、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、請求項4記載の液滴吐出装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と、前記送出手段により送出された前記液体が供給されるように前記管状部材に接続されると共に、記録媒体へ液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、を含んで構成されている。
【0017】
従って、本発明の液滴吐出装置によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と同様に作用するので、当該液体供給装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係るヘッドのノズル毎に設けられた液体吐出素子(1つのノズルに対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。
【図3】実施形態に係るインク貯蔵/装填部の構成を示す構成図である。
【図4】実施形態に係る圧電素子として適用しているPVDFの一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図5】実施形態に係る供給用チューブポンプの一例を示す構成図である。
【図6】実施形態に係るインクジェット記録装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態に係る異常検出器の一例を示す構成図である。
【図8】実施形態に係るインク供給路内で発生する圧力リップルの波形を示す図である。
【図9】実施形態に係る異常検知処理プログラムの流れを示すフローチャートである。
【図10】歪み検出信号と閾値電圧との関係を示す図である。
【図11】実施形態に係るインク貯蔵/装填の他の構成例を示す構成図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を液滴としてインク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
【0021】
図1には、本発明の液滴吐出装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図が示されている。同図に示すように、インクジェット記録装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という。)Pの搬送方向上流側に、用紙Pを給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙Pの搬送方向に沿って、用紙Pの記録面に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙Pの記録面に画像を記録する画像記録部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙Pに定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙Pを排出する排出部21が設けられている。
【0022】
給紙搬送部12には、用紙Pが積載される積載部22が設けられており、積載部22の上部には、該積載部22に積載された用紙Pを一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。給紙部24の用紙Pの搬送方向下流側(以下、「用紙Pの搬送方向」を省略する場合もある。)には、複数のローラ26対で構成された搬送部28が設けられている。給紙部24によって給紙された用紙Pは、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0023】
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙Pの先端部を挟持して用紙Pを保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙Pを保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0024】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38及び定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙Pの受け渡しが行われる。
【0025】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42及び処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙Pの記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥する。
【0026】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0027】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙Pの記録面側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙Pの記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0028】
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0029】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54及び赤外線ヒーター56(以下「IRヒーター56」という。)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54及びIRヒーター56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像記録部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0030】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙Pは、処理液塗布部14と画像記録部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0031】
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙Pを保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0032】
画像記録部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙Pを保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0033】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、シングルパス方式のインクジェットラインヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)64で構成されたヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるYMCKのヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を記録する。
【0034】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙P上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0035】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0036】
ヘッドユニット66は、画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0037】
インクジェット記録装置10は、YMCKのヘッド64の各々に供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部65を備えている。インク貯蔵/装填部65は、YMCKのヘッド64の各々に対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所定の管路を介してYMCKのヘッド64と連通されている。
【0038】
画像記録部16において記録面に画像が記録された用紙Pは、画像形成ドラム36の回転によって、画像記録部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0039】
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥部18の表面に近接して、熱風ノズル72及びIRヒーター74が複数配設されている。
【0040】
ここでは、一例として、上流側と下流側に熱風ノズル72が配置されるようにして、熱風ノズル72と平行配列された一対のIRヒーター74を交互に配置している。これ以外にも、上流側にIRヒーター74を多く配置して上流側で熱エネルギーを多く照射し水分の温度を上昇させ、下流側に熱風ノズル72を多く配置して飽和水蒸気を吹き飛ばすようにしても良い。
【0041】
ここで、熱風ノズル72は、熱風の吹きつけ角度を用紙Pの後端側に傾けて配置するようにしている。これにより、熱風ノズル72による熱風の流れを一方向に集めることができ、また、インク乾燥ドラム38側へ用紙Pを押し付け、該インク乾燥ドラム38の表面に用紙Pを保持させた状態を維持することができる。
【0042】
これらの熱風ノズル72及びIRヒーター74による温風によって、用紙Pにおける画像が記録された部分では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0043】
温風は用紙Pの搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定され、IRヒーター74の温度を200℃〜600℃に設定する事で、インク表面温度が50℃〜60℃になるよう設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0044】
記録面の画像が乾燥した用紙Pは、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0045】
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20は、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙P上に固着定着する機能を有する。
【0046】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0047】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている、この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙Pに対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0048】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙Pは、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0049】
なお、本実施形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0050】
図2には、ヘッド64のノズル毎に設けられた液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図が示されている。同図に示すように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0051】
圧力室152の一部の面(図2において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0052】
従って、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、画像情報から生成されるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、用紙Pを一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、用紙P上に所望の画像を記録することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0054】
ここで、本実施形態に係るインク貯蔵/装填部65の詳細な構成を説明する。図3には、本実施形態に係るインク貯蔵/装填部65の構成を示す構成図が示されている。同図に示すように、インク貯蔵/装填部65は、YMCKの各ヘッド64に対応して設けられているが、各インク貯蔵/装填部65は同一構成であるため、ここでは、1つのインク貯蔵/装填部65を代表して説明する。
【0055】
インク貯蔵/装填部65は、インクを貯蔵するメインタンク160を備えている。メインタンク160及びヘッド64はインク供給路180及びインク回収路182を介して接続されている。インク供給路180及びインク回収路182は共に可撓性のチューブで構成されている。インク供給路180の経路途中には、メインタンク160側からヘッド64側に向かって、供給用チューブポンプ172、供給タンク164、及び供給用バルブ176が順に設けられ、インク回収路182の経路途中には、メインタンク160側からヘッド64側に向かって、回収用チューブポンプ174、回収タンク168、及び回収用バルブ178が順に設けられている。なお、本実施形態に係るインク供給路180及びインク回収路182は、ポリプロピレンやポリエチレン等の弾性を有する適宜な合成樹脂材料により構成されたチューブであり、該チューブが後述するローラ172C及び172Dによって押圧され、この押圧が解除されたときに弾性復元力により元の形状に復元できる材料が好適である。
【0056】
このような構成により、インク供給路180及びインク回収路182内をインクが循環し、ヘッド64にインクが供給される。
【0057】
供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174は、インクがA方向またはB方向に流れるように回転駆動することが可能なポンプであり、各々インク供給路180およびインク回収路182内のインクに対する加圧や減圧が可能に構成されている。また、供給用バルブ176は、一時的にインクを貯留する供給タンク164とヘッド64との間の経路を開閉するための弁であり、回収用バルブ178は、一時的にインクを貯留する回収タンク168とヘッド64との間の経路を開閉するための弁である。
【0058】
インク供給路180は、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間に圧電素子184を備えており、圧電素子184は、インク供給路180の周面に固定されている。圧電素子184は、インク供給路180に歪みが発生すると、該歪みを検出して歪み検出信号を出力する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、圧電素子184として、一例として図4に示すように、シート部材に電極を取り付けた形態のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)で構成した圧電素子を採用しているが、これに限らず、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム、或いはニオブ酸リチウムなどで構成した圧電素子などの他の圧電素子を用いてもよい。
【0059】
ここで、本実施形態に係る供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174の詳細な構成を説明する。なお、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174は同一構成であるため、ここでは、供給用チューブポンプ172を用いて説明する。
【0060】
図5には、本実施形態に係る供給用チューブポンプ172の構成を示す構成図が示されている。同図に示すように、供給用チューブポンプ172は、内周が半円弧状のガイド部材172Aと、ガイド部材172Aの内周に沿って湾曲して配置されたインク供給路180と、インク供給路180を交互に押圧するローラ172C及び172Dと、一端部でローラ172Cを、他端部でローラ172Dを各々回転自在に支持すると共に、中央部に回転軸172Eを有するロッド状の支持部材172Fと、を含んで構成されている。支持部材172Fは、モータ(図示省略)の駆動力を受けて、回転軸を中心にしてガイド部材172Aの内周面上に配置されるインク供給路180の長手方向に沿って同図の円弧矢印方向に回転する。これによって、ローラ172C及び172Dがインク供給路180を交互に押圧することになる。内部にインクが満たされたインク供給路180をローラ172C(172D)で押圧すると共に押圧部位をインク供給路180のメインタンク160側から供給タンク164側に向かって移動させることによって、インク供給路180のメインタンク160側の端部が負圧になり、メインタンク160内のインクがインク供給路180内に吸い込まれる一方、インク供給路180の供給タンク164側の端部が正圧となり、メインタンク160からインク供給路180内に吸い込まれたインクが供給タンク164へ排出される。
【0061】
図6は、インクジェット記録装置10の電気系の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インタフェース186、システムコントローラ188、ROM(Read Only Memory)190、画像メモリ191、UI(ユーザ・インタフェース)パネル192、及びプリント制御部194を含んで構成されている。
【0062】
システムコントローラ188には、通信インタフェース186、ROM190、画像メモリ191、UIパネル192、プリント制御部194、及び異常検知器196が接続されている。
【0063】
通信インタフェース186は、ユーザがインクジェット記録装置10に対して印刷の指示等を行うため等に用いられるホスト装置11とのインタフェース部である。通信インタフェース186にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載しても良い。
【0064】
ホスト装置11から送出された用紙Pに記録すべき画像を示す画像情報は通信インタフェース186を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ191に記憶される。画像メモリ191は、通信インタフェース186を介して入力された画像信号を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ188を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ191は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0065】
UIパネル192は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、ユーザがタッチパネルに触れることにより所望の情報や指示が入力される。
【0066】
システムコントローラ188は、CPU(中央演算処理装置)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ188は、通信インタフェース186、ROM190、画像メモリ191、及びプリント制御部194の各部を制御し、UIパネル192への各種情報の表示、UIパネル192に対するユーザの操作指示内容の把握、ホスト装置11との間の通信制御、ROM190及び画像メモリ191の読み書き制御等を行うと共に、搬送系のモータ(図示省略)を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部194に対しては、制御信号の他に、画像メモリ191に記憶された画像情報を送信する。
【0067】
また、ROM190には、システムコントローラ188が実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM190は、書換不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0068】
画像メモリ191は、画像情報の一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びシステムコントローラ188の演算作業領域としても利用される。
【0069】
プリント制御部194は、システムコントローラ188の制御に従い、システムコントローラ188から送信された画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データに基づいてヘッド64の吐出駆動を制御するものであり、YMCKの各ヘッド64に対して1つずつ設けられている。
【0070】
また、システムコントローラ188には、供給用チューブポンプ172、回収用チューブポンプ174、供給用バルブ176、及び回収用バルブ178が接続されている。従って、システムコントローラ188は、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174の駆動制御と、供給用バルブ176及び回収用バルブ178の開閉制御と、を各々行うことができる。例えば、通常の画像記録動作時には、システムコントローラ188は、供給タンク164及び回収タンク168の各々の内部の圧力に応じて、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174を駆動して、供給タンク164内の圧力が回収タンク168内の圧力より一定値だけ高くなるように制御を行うと共に、供給用バルブ176及び回収用バルブ178を開状態とするように制御を行う。これにより、インクはメインタンク160から供給タンク164に供給され、該供給されたインクは供給タンク164からヘッド64を介して回収タンク168に向けて流れ、インク供給路180及びインク回収路182からなる循環経路内を一定の流速で循環する。
【0071】
また、インクジェット記録装置10は、異常検知器196を含んで構成されている。異常検知器196は圧電素子194に接続されており、圧電素子184から入力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値を下回ったことを検知することによりインク供給路180内で異常が発生したことを検知するものである。なお、異常検知器196はシステムコントローラ188に接続されている。従って、システムコントーラ188は、異常検知器196での検知結果を把握することができる。
【0072】
図7には、本実施形態に係る異常検知器196の一例を示す構成図が示されている。同図に示すように、異常検知器196は、ボルテージフォロアとして機能する増幅器196Aと、負帰還回路を構成する反転増幅器196Bと、コンパレータ196Cと、が直列に接続されて構成されている。
【0073】
増幅器196Aは、出力端子が抵抗R1を介して反転増幅器196Bの反転入力端子に接続されている。圧電素子184は、一方の電極が接地され、他方の電極が増幅器196Aの入力端子に接続されている。従って、増幅器196Aには、入力端子を介して圧電素子184から歪み検出信号が入力される。
【0074】
反転増幅器196Bは、非反転入力端子が接地され、反転入力端子が抵抗R2を介して自身の出力端子に接続されている。
【0075】
コンパレータ196Cは、非反転入力端子が増幅器196Bの出力端子に接続され、反転入力端子が直流電源196Dの正極端子に、出力端子がシステムコントローラ188の入力端子に接続されている。なお、直流電源196Dの負極端子は接地されている。
【0076】
このように構成された異常検知器196では、反転増幅器196Bが圧電素子184から増幅器196Aを介して入力された歪み検出信号の電圧を予め定められた割合だけ増幅させてコンパレータ196Cに出力する。そして、コンパレータ196Cが非反転入力端に入力された歪み検出信号の電圧と反転入力端子に接続された直流電源196Dの電圧(以下、「閾値電圧」とも言う。)とを比較し、当該比較結果をハイレベル信号又はローレベル信号として出力する。つまり、コンパレータ196Cは、非反転入力端に入力された信号の電圧が閾値電圧より高い場合にはローレベル信号を出力し、逆の場合はハイレベル信号を出力する。
【0077】
異常検知器196を上記構成とすることにより、定常的な圧力値が除去され、圧力の変化(微分)のみ(供給用チューブポンプ172の作用により発生する圧力リップル分のみ)が出力されることになる。なお、一般的な歪み/圧力検出素子の場合は、出力が圧力変化ではなく定常的な圧力値であるため、信号処理による微分により求めることになる。
【0078】
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の作用を説明する。
【0079】
本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、積載部22から給紙部24によって用紙Pが給紙され、搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。処理液塗布部14では、用紙Pの記録面に処理液が塗布され、該処理液を乾燥させる。その後、該用紙Pは、中間搬送部58を経て、画像記録部16へ搬送され、画像形成ドラム36の表面に保持される。そして、画像記録部16では、画像情報に基づいてヘッド64のノズル151から用紙Pの記録面に対してインク滴が吐出される。これによって用紙Pの記録面には上記画像情報により示される画像が記録される。
【0080】
画像記録部16において記録面に画像が記録された用紙Pは、中間搬送部70を経て、インク乾燥部18へ搬送される。インク乾燥部18では、用紙Pの記録面のインクに含まれる溶媒を乾燥させる。その後、該用紙Pは、中間搬送部76を経て、画像定着部20へ搬送される。画像定着部20では、用紙Pの記録面に記録された画像の定着処理が行われる。そして、記録面に画像が定着した用紙Pは、画像定着ドラム40の回転によって排出部21側へ搬送される。
【0081】
ところで、上述したような画像記録動作時におけるインク供給路180内のインクへの気泡の混入は、気泡がヘッド64内にまで達するとインク滴の吐出異常を引き起こす。また、気泡はインクより圧縮性が高いので、圧力ダンパーとして働き、本来精密に制御したい圧力を正確に制御できなくなる。また、インク供給路180からのインク漏れは、圧力制御に対して悪影響を及ぼす。更に、インクの漏れ量が多量になれば、電気系統での漏電やショートといった大きなトラブルを引き起こすことになる。従って、インク供給路180内のインクに含まれる気泡の検出、及びインク供給路180からのインク漏れの検出はインクジェット記録装置10の信頼性を確保する上で重要である。
【0082】
そこで、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、供給用チューブポンプ172が、構造上、一例として図8に示すように、ローラ172C又は172Dがインク供給路180の外周面から離れる際、或いは当接する際に圧力リップルを発生するという性質を有していることを利用して、インク供給路180内のインクへの気泡の混入及びインク供給路180からのインク漏れを検知する異常検知処理が実行される。
【0083】
図9を参照して上記異常検知処理が実行される際のインクジェット記録装置10の作用を説明する。なお、図9は、画像記録動作中に所定時間(例えば、1秒)毎にシステムコントローラ188によって実行される異常検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM190の所定領域に予め記憶されている。なお、ここでは、錯綜を回避するために、インクがインク供給路180及びインク回収路182内を一定の流速で循環しているものとする。
【0084】
同図のステップ200では、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度が変化したか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ202の処理を実行せずにステップ204へ移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ202へ移行する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、上記ステップ200の処理として、供給用チューブポンプの支持部材172Fの回転速度を検出することにより、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度が変化したか否かを判定する処理を行っているが、これに限らず、インク供給路180内を流れるインクの流速を測定してもよい。
【0085】
ステップ202では、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度に対応する閾値電圧となるように直流電源196Dを制御した後、ステップ204へ移行する。
【0086】
ところで、インク供給路180内のインクに気泡が存在した場合、上述したように気泡はインクに比べて圧縮性が高いため、圧力リップルを吸収する。また、インク供給路180からのインク漏れがある場合、インク供給路180内の圧力が低下するため、気泡の場合と同じように作用し、結果的に圧力リップルが吸収されることになる。従って、圧力リップルの大きさが通常よりも所定値以上小さくなったことをもって(歪み検出信号の信号レベルが閾値よりも小さくなったことをもって)インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク供給路180からインクが漏れていると判断することができる。
【0087】
そこで、ステップ204では、異常検出器196からハイレベル信号が入力されたか否かを判定することにより歪み検出信号の電圧(信号レベル)が閾値電圧を下回っているか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ200へ戻る一方、肯定判定となった場合にはインク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生しているとみなしてステップ206へ移行する。
【0088】
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の異常検出器196では、一例として図10に示すように、歪み検出信号の電圧が閾値電圧以上の場合はインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていないと判断され、歪み検出信号の電圧が閾値電圧を下回っている場合はインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていると判断される。なお、圧力リップルの大きさは、その性質上、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度(支持部材172Fの回転速度)に比例するので、上記ステップ200及び202の処理では、該送出速度に応じた閾値電圧の変更を行っている。
【0089】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、上記閾値電圧として、インクジェット記録装置10の実機による実験やインクジェット記録装置10の設計仕様に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって、画像記録動作中にインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていないときの歪み検出信号の電圧の下限値として予め得られた値を用いている。
【0090】
ステップ206では、UIパネル192に対して、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報を表示させた後、本異常検知処理プログラムを終了する。
【0091】
なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、UIパネル192を用いて、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報の可視表示を行っているが、これに限らず、スピーカ等の音声再生装置を用いて可聴表示を行ったり、印字することによる永久可視表示を行っても良い。また、上記可視表示、可聴表示及び永久可視表示の複数を組み合わせても良い。
【0092】
また、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報の表示を行う以外にも、システムコントローラ188が、インク供給路180及びインク回収路182内のインクの循環を停止するように供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174を制御してもよい。また、システムコントローラ188が、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報をホスト装置11に送信してもよい。また、これらの各処理を組み合わせてもよい。このように、システムコントローラ188が、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していると判断したときに行う処理はインクジェット記録装置10の設計仕様や使用目的などに応じて決定すればよい。
【0093】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、可撓性の管状部材(ここでは、インク供給路180)と、内部に液体(ここでは、インク)が満たされた管状部材を押圧すると共に押圧部位を管状部材の一端側(ここでは、メインタンク160側)から他端側(ここでは、供給タンク164側)に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって液体を送出する送出手段(ここでは、供給用チューブポンプ172)と、管状部材の周面に固定され、管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段(ここでは、圧電素子184)と、歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号(ここでは、ハイレベル信号)を出力する信号出力手段(ここでは、異常検出器196)と、を備えているので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0094】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、歪み検出手段をPVDFで構成しているので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れをより一層精度良くかつ容易に検知することができる。
【0095】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、送出手段による送出速度の増減に対応して閾値(ここでは、閾値電圧)を増減させることにより該閾値を変更する変更手段(ここでは、システムコントローラ188)を更に備えているので、送出手段による送出速度が変化しても、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0096】
以上、本発明を上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の主旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、また、上記実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における状況に応じた組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0098】
例えば、上記実施形態では、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間のインク供給路180にのみ圧電素子184を固定する場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として図11に示すように、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間のインク供給路180に加え、回収タンク168と回収用チューブポンプ174との間のインク回収路182の周面に圧電素子184Bを、供給タンク164と供給用バルブ176との間のインク供給路180の周面に圧電素子184Cを、回収タンク168と回収用バルブ178との間のインク回収路182の周面に圧電素子184Dを、各々固定してもよい。この場合、圧電素子184に対して異常検出器196が設けられているように、圧電素子184B〜Cに対しても異常検出器196と同様の構成をしたものを各々設ける。これにより、回収タンク168と回収用チューブポンプ174との間のインク回収路182、供給タンク164と供給用バルブ176との間のインク供給路180、及び回収タンク168と回収用バルブ178との間のインク回収路182の各々に対して、インクへの気泡の混入及びインク漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、インクの送出速度が2段階で変更可能な場合の形態例を挙げて説明したため、閾値電圧を2段階に変更可能としたが、インクの送出速度が3段階以上に変速可能とされている場合には送出速度の段階数に応じた数の閾値電圧を用意し、該送出速度に対応した閾値電圧を設定することが好ましい。
【0100】
また、上記実施形態で説明したインクジェット記録装置10の構成(図1,図2,図3,図6,及び図7を参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0101】
また、上記実施形態で説明したフローチャートの流れ(図9を参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0102】
10 インクジェット記録装置
64 インクジェットラインヘッド(記録ヘッド)
172 供給用ポンプ(送出手段)
180 インク供給路(管状部材)
184 圧電素子(歪み検出手段)
188 システムコントローラ(変更手段)
196 異常検出器(異常検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録用の液滴(例えば、インク滴)を吐出する吐出口を備えた記録ヘッドを有し、記録ヘッドの吐出口より液滴を吐出することにより画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。この種のインクジェット記録装置は、記録ヘッドへ液体を供給するための流路を構成する管状部材(例えば、ポリプロピレンで構成したチューブ)内の液体への気泡の混入、及び管状部材からの液体漏れといったトラブルを発生する可能性がある。特に、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置の場合は、管状部材の規模が大きくなり、多数のバルブや継ぎ手、液体貯留用のタンクなどが存在し、上記のようなトラブルを起こす可能性は高くなる。
【0003】
ところで、管状部材内の液体への気泡の混入は、気泡が記録ヘッド内にまで達すると液滴の吐出異常を引き起こす。また、気泡は液体より圧縮性が高いので、圧力ダンパーとして働き、本来精密に制御したい圧力を正確に制御できなくなる。
【0004】
管状部材からの液体漏れは、圧力制御に対して悪影響を及ぼす。また、液体の漏れ量が多量になれば、電気系統での漏電やショートといった大きなトラブルを引き起こすことになる。従って、管状部材内の液体に含まれる気泡の検出、及び管状部材からの液体漏れの検出はインクジェット記録装置の信頼性を確保する上で重要である。
【0005】
管状部材内の液体に混入した気泡の検出方法として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、気泡を光学的に検出する方法が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、液滴を吐出するための圧電素子の残響振動を電気的に検出する方法が開示されている。更に、特許文献5には、インクの電気抵抗(インピーダンス)を検出する方法が開示されている。なお、管状部材からの液体漏れの検出方法としては、送液側と回収側のポンプの回転数(累積送液量)の比較により検出する技術が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−15841号公報
【特許文献2】特開2004−58531号公報
【特許文献3】特開平10−114068号公報
【特許文献4】特開2004−276366号公報
【特許文献5】特開2005−41212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術は、インク顔料による検出面の汚れなどの影響を受けるため検出不良となる虞がある、という問題点があった。また、特許文献3及び特許文献4の技術は、吐出圧力室内部の気泡の検出にのみ有効であり、検出回路が複雑で検出閾値の設定も難しい、という問題点があった。また、特許文献5の技術は、非導電性のインクには適用できないばかりか、電極間にあるインクのみを検出するので、例えばチューブなどの管状部材内の液体に含まれる気泡の検出には不向きである、という問題点があった。また、上述した管状部材からの液体漏れの検出方法は、送液量が誤差やバラツキを含むので、液体漏れが発生してからしばらくしないと(漏れ量が一定以上の量にならないと)検出できない、という問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる液体供給装置及び液滴吐出装置を提供する目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の液体供給装置は、可撓性の管状部材と、内部に液体が満たされた前記管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体を送出する送出手段と、前記管状部材の周面に固定され、前記管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段と、前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する信号出力手段と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項1記載の液体供給装置によれば、送出手段により、内部に液体が満たされた可撓性の管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体が送出される。
【0011】
ところで、管状部材内に満たされた液体を管状部材の一端側から他端側に送出するにあたり、送出手段が管状部材に当接する際、或いは管状部材から離れる際に該管状部材内にスパイク状の圧力波(以下、「圧力リップル」とも言う。)が発生し、これによって、管状部材に歪みが生じる。管状部材内の液体に気泡が存在した場合、気泡はインクに比べて圧縮性が高いため、圧力リップルを吸収する。管状部材からの液体漏れがある場合、管状部材内の圧力が低下するため、気泡と同じように作用し、結果的に圧力リップルが吸収されることになる。従って、圧力リップルの大きさが通常よりも所定値以上小さくなったことをもって、管状部材内の液体に気泡が存在しているか、或いは管状部材から液体が漏れていると判断することができる。
【0012】
そこで、本発明では、前記管状部材の周面に固定された歪み検出手段により前記管状部材の歪みが検出されて歪み検出信号が出力され、信号出力手段により、前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号が出力される。
【0013】
このように、本発明によれば、管状部材の歪みが検出されて出力される歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号が出力されるので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0014】
なお、請求項1に記載の液体供給装置は、請求項2記載の発明のように、前記歪み検出手段をPVDFで構成してもよい。これにより、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れをより一層精度良くかつ容易に検知することができる。
【0015】
また、請求項1または請求項2記載の液体供給装置は、請求項3記載の発明のように、前記送出手段による送出速度の増減に対応して前記閾値を増減させることにより該閾値を変更する変更手段を更に含んで構成されてもよい。これにより、送出手段による送出速度が変化しても、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0016】
一方、上記目的を達成するために、請求項4記載の液滴吐出装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と、前記送出手段により送出された前記液体が供給されるように前記管状部材に接続されると共に、記録媒体へ液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、を含んで構成されている。
【0017】
従って、本発明の液滴吐出装置によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と同様に作用するので、当該液体供給装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係るヘッドのノズル毎に設けられた液体吐出素子(1つのノズルに対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。
【図3】実施形態に係るインク貯蔵/装填部の構成を示す構成図である。
【図4】実施形態に係る圧電素子として適用しているPVDFの一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図5】実施形態に係る供給用チューブポンプの一例を示す構成図である。
【図6】実施形態に係るインクジェット記録装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態に係る異常検出器の一例を示す構成図である。
【図8】実施形態に係るインク供給路内で発生する圧力リップルの波形を示す図である。
【図9】実施形態に係る異常検知処理プログラムの流れを示すフローチャートである。
【図10】歪み検出信号と閾値電圧との関係を示す図である。
【図11】実施形態に係るインク貯蔵/装填の他の構成例を示す構成図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を液滴としてインク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に適用した場合について説明する。
【0021】
図1には、本発明の液滴吐出装置の一実施形態を示すインクジェット記録装置の全体構成図が示されている。同図に示すように、インクジェット記録装置10には、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という。)Pの搬送方向上流側に、用紙Pを給紙搬送する給紙搬送部12が設けられている。この給紙搬送部12の下流側には、用紙Pの搬送方向に沿って、用紙Pの記録面に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙Pの記録面に画像を記録する画像記録部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙Pに定着させる画像定着部20、画像が定着した用紙Pを排出する排出部21が設けられている。
【0022】
給紙搬送部12には、用紙Pが積載される積載部22が設けられており、積載部22の上部には、該積載部22に積載された用紙Pを一枚ずつ給紙する給紙部24が設けられている。給紙部24の用紙Pの搬送方向下流側(以下、「用紙Pの搬送方向」を省略する場合もある。)には、複数のローラ26対で構成された搬送部28が設けられている。給紙部24によって給紙された用紙Pは、複数のローラ26対で構成された搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。
【0023】
処理液塗布部14では、処理液塗布ドラム30が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙Pの先端部を挟持して用紙Pを保持する保持部材32が設けられており、該保持部材32を介して、処理液塗布ドラム30の表面に用紙Pを保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0024】
なお、後述する中間搬送ドラム34、画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38及び定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に保持部材32が設けられている。そして、この保持部材32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙Pの受け渡しが行われる。
【0025】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42及び処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布装置42によって、用紙Pの記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、該処理液が乾燥する。
【0026】
ここで、処理液はインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材(顔料)と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0027】
このグラビアローラ48にはゴムローラ50が圧接して配置されており、該ゴムローラ50が用紙Pの記録面側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48にはスキージ(図示省略)が接触しており、用紙Pの記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0028】
処理液膜厚はヘッド打滴の液滴より十分小さいことが理想である。例えば2plの打滴量の場合、ヘッド打滴の液滴の平均直径は15.6μmであり、処理液膜厚が厚い場合、インクドットは用紙の記録面と接触することなく処理液内で浮遊する。2plの打滴量で着弾ドット径を30μm以上得るには処理液膜厚を3μm以下にすることが好ましい。
【0029】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル54及び赤外線ヒーター56(以下「IRヒーター56」という。)が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル54及びIRヒーター56により、処理液中の水などの溶媒を蒸発させ、固体もしくは薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像記録部16でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応し色材凝集して用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0030】
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙Pは、処理液塗布部14と画像記録部16の間に設けられた中間搬送部58へ搬送される。
【0031】
中間搬送部58には、中間搬送ドラム34が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34に設けられた保持部材32を介して、中間搬送ドラム34の表面に用紙Pを保持し、中間搬送ドラム34の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0032】
画像記録部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられており、画像形成ドラム36に設けられた保持部材32を介して、画像形成ドラム36の表面に用紙Pを保持し、画像形成ドラム36の回転によって該用紙Pを下流側へ搬送する。
【0033】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、シングルパス方式のインクジェットラインヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)64で構成されたヘッドユニット66が配設されている。このヘッドユニット66では、少なくとも基本色であるYMCKのヘッド64が画像形成ドラム36の周方向に沿って配列され、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上に各色の画像を記録する。
【0034】
処理液はインク中に分散する色材(顔料)とラテックス粒子を処理液に凝集する効果を持たせ、用紙P上で色材流れなど発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用い色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。
【0035】
ヘッド64は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸68の精度、ドラム表面速度に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0036】
ヘッドユニット66は、画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、ヘッド64のノズル面清掃や増粘インク排出などのメンテナンス動作は、該ヘッドユニット66を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
【0037】
インクジェット記録装置10は、YMCKのヘッド64の各々に供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部65を備えている。インク貯蔵/装填部65は、YMCKのヘッド64の各々に対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所定の管路を介してYMCKのヘッド64と連通されている。
【0038】
画像記録部16において記録面に画像が記録された用紙Pは、画像形成ドラム36の回転によって、画像記録部16とインク乾燥部18の間に設けられた中間搬送部70へ搬送されるが、中間搬送部70については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0039】
インク乾燥部18には、インク乾燥ドラム38が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥部18の表面に近接して、熱風ノズル72及びIRヒーター74が複数配設されている。
【0040】
ここでは、一例として、上流側と下流側に熱風ノズル72が配置されるようにして、熱風ノズル72と平行配列された一対のIRヒーター74を交互に配置している。これ以外にも、上流側にIRヒーター74を多く配置して上流側で熱エネルギーを多く照射し水分の温度を上昇させ、下流側に熱風ノズル72を多く配置して飽和水蒸気を吹き飛ばすようにしても良い。
【0041】
ここで、熱風ノズル72は、熱風の吹きつけ角度を用紙Pの後端側に傾けて配置するようにしている。これにより、熱風ノズル72による熱風の流れを一方向に集めることができ、また、インク乾燥ドラム38側へ用紙Pを押し付け、該インク乾燥ドラム38の表面に用紙Pを保持させた状態を維持することができる。
【0042】
これらの熱風ノズル72及びIRヒーター74による温風によって、用紙Pにおける画像が記録された部分では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0043】
温風は用紙Pの搬送速度によっても異なるが、通常は50℃〜70℃に設定され、IRヒーター74の温度を200℃〜600℃に設定する事で、インク表面温度が50℃〜60℃になるよう設定されている。蒸発した溶媒はエアーと共に画像形成装置10の外部へ排出されるが、エアーは回収される。このエアーは、冷却器/ラジエータ等で冷却して液体として回収しても良い。
【0044】
記録面の画像が乾燥した用紙Pは、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20の間に設けられた中間搬送部76へ搬送されるが、中間搬送部76については、中間搬送部58と構成が略同一であるため説明を省略する。
【0045】
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられており、画像定着部20は、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱/加圧されて溶融し、用紙P上に固着定着する機能を有する。
【0046】
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ78が配設されている。この加熱ローラ78は熱伝導率の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、該加熱ローラ78によって、ラテックスのTg温度以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることを可能とする。
【0047】
加熱ローラ78の下流側には、定着ローラ80が設けられている、この定着ローラ80は画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配置され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ80又は画像定着ドラム40のうち、少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙Pに対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0048】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙Pは、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
【0049】
なお、本実施形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、この画像定着部20は必ずしも必要ではない。
【0050】
図2には、ヘッド64のノズル毎に設けられた液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図が示されている。同図に示すように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0051】
圧力室152の一部の面(図2において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0052】
従って、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、画像情報から生成されるドット配置データに応じて各ノズル151に対応したアクチュエータ158の駆動を制御することにより、ノズル151からインク滴を吐出させることができる。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、用紙Pを一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル151のインク吐出タイミングを制御することによって、用紙P上に所望の画像を記録することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0054】
ここで、本実施形態に係るインク貯蔵/装填部65の詳細な構成を説明する。図3には、本実施形態に係るインク貯蔵/装填部65の構成を示す構成図が示されている。同図に示すように、インク貯蔵/装填部65は、YMCKの各ヘッド64に対応して設けられているが、各インク貯蔵/装填部65は同一構成であるため、ここでは、1つのインク貯蔵/装填部65を代表して説明する。
【0055】
インク貯蔵/装填部65は、インクを貯蔵するメインタンク160を備えている。メインタンク160及びヘッド64はインク供給路180及びインク回収路182を介して接続されている。インク供給路180及びインク回収路182は共に可撓性のチューブで構成されている。インク供給路180の経路途中には、メインタンク160側からヘッド64側に向かって、供給用チューブポンプ172、供給タンク164、及び供給用バルブ176が順に設けられ、インク回収路182の経路途中には、メインタンク160側からヘッド64側に向かって、回収用チューブポンプ174、回収タンク168、及び回収用バルブ178が順に設けられている。なお、本実施形態に係るインク供給路180及びインク回収路182は、ポリプロピレンやポリエチレン等の弾性を有する適宜な合成樹脂材料により構成されたチューブであり、該チューブが後述するローラ172C及び172Dによって押圧され、この押圧が解除されたときに弾性復元力により元の形状に復元できる材料が好適である。
【0056】
このような構成により、インク供給路180及びインク回収路182内をインクが循環し、ヘッド64にインクが供給される。
【0057】
供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174は、インクがA方向またはB方向に流れるように回転駆動することが可能なポンプであり、各々インク供給路180およびインク回収路182内のインクに対する加圧や減圧が可能に構成されている。また、供給用バルブ176は、一時的にインクを貯留する供給タンク164とヘッド64との間の経路を開閉するための弁であり、回収用バルブ178は、一時的にインクを貯留する回収タンク168とヘッド64との間の経路を開閉するための弁である。
【0058】
インク供給路180は、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間に圧電素子184を備えており、圧電素子184は、インク供給路180の周面に固定されている。圧電素子184は、インク供給路180に歪みが発生すると、該歪みを検出して歪み検出信号を出力する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、圧電素子184として、一例として図4に示すように、シート部材に電極を取り付けた形態のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)で構成した圧電素子を採用しているが、これに限らず、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム、或いはニオブ酸リチウムなどで構成した圧電素子などの他の圧電素子を用いてもよい。
【0059】
ここで、本実施形態に係る供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174の詳細な構成を説明する。なお、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174は同一構成であるため、ここでは、供給用チューブポンプ172を用いて説明する。
【0060】
図5には、本実施形態に係る供給用チューブポンプ172の構成を示す構成図が示されている。同図に示すように、供給用チューブポンプ172は、内周が半円弧状のガイド部材172Aと、ガイド部材172Aの内周に沿って湾曲して配置されたインク供給路180と、インク供給路180を交互に押圧するローラ172C及び172Dと、一端部でローラ172Cを、他端部でローラ172Dを各々回転自在に支持すると共に、中央部に回転軸172Eを有するロッド状の支持部材172Fと、を含んで構成されている。支持部材172Fは、モータ(図示省略)の駆動力を受けて、回転軸を中心にしてガイド部材172Aの内周面上に配置されるインク供給路180の長手方向に沿って同図の円弧矢印方向に回転する。これによって、ローラ172C及び172Dがインク供給路180を交互に押圧することになる。内部にインクが満たされたインク供給路180をローラ172C(172D)で押圧すると共に押圧部位をインク供給路180のメインタンク160側から供給タンク164側に向かって移動させることによって、インク供給路180のメインタンク160側の端部が負圧になり、メインタンク160内のインクがインク供給路180内に吸い込まれる一方、インク供給路180の供給タンク164側の端部が正圧となり、メインタンク160からインク供給路180内に吸い込まれたインクが供給タンク164へ排出される。
【0061】
図6は、インクジェット記録装置10の電気系の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インタフェース186、システムコントローラ188、ROM(Read Only Memory)190、画像メモリ191、UI(ユーザ・インタフェース)パネル192、及びプリント制御部194を含んで構成されている。
【0062】
システムコントローラ188には、通信インタフェース186、ROM190、画像メモリ191、UIパネル192、プリント制御部194、及び異常検知器196が接続されている。
【0063】
通信インタフェース186は、ユーザがインクジェット記録装置10に対して印刷の指示等を行うため等に用いられるホスト装置11とのインタフェース部である。通信インタフェース186にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載しても良い。
【0064】
ホスト装置11から送出された用紙Pに記録すべき画像を示す画像情報は通信インタフェース186を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ191に記憶される。画像メモリ191は、通信インタフェース186を介して入力された画像信号を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ188を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ191は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0065】
UIパネル192は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、ユーザがタッチパネルに触れることにより所望の情報や指示が入力される。
【0066】
システムコントローラ188は、CPU(中央演算処理装置)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ188は、通信インタフェース186、ROM190、画像メモリ191、及びプリント制御部194の各部を制御し、UIパネル192への各種情報の表示、UIパネル192に対するユーザの操作指示内容の把握、ホスト装置11との間の通信制御、ROM190及び画像メモリ191の読み書き制御等を行うと共に、搬送系のモータ(図示省略)を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部194に対しては、制御信号の他に、画像メモリ191に記憶された画像情報を送信する。
【0067】
また、ROM190には、システムコントローラ188が実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM190は、書換不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0068】
画像メモリ191は、画像情報の一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びシステムコントローラ188の演算作業領域としても利用される。
【0069】
プリント制御部194は、システムコントローラ188の制御に従い、システムコントローラ188から送信された画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データに基づいてヘッド64の吐出駆動を制御するものであり、YMCKの各ヘッド64に対して1つずつ設けられている。
【0070】
また、システムコントローラ188には、供給用チューブポンプ172、回収用チューブポンプ174、供給用バルブ176、及び回収用バルブ178が接続されている。従って、システムコントローラ188は、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174の駆動制御と、供給用バルブ176及び回収用バルブ178の開閉制御と、を各々行うことができる。例えば、通常の画像記録動作時には、システムコントローラ188は、供給タンク164及び回収タンク168の各々の内部の圧力に応じて、供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174を駆動して、供給タンク164内の圧力が回収タンク168内の圧力より一定値だけ高くなるように制御を行うと共に、供給用バルブ176及び回収用バルブ178を開状態とするように制御を行う。これにより、インクはメインタンク160から供給タンク164に供給され、該供給されたインクは供給タンク164からヘッド64を介して回収タンク168に向けて流れ、インク供給路180及びインク回収路182からなる循環経路内を一定の流速で循環する。
【0071】
また、インクジェット記録装置10は、異常検知器196を含んで構成されている。異常検知器196は圧電素子194に接続されており、圧電素子184から入力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値を下回ったことを検知することによりインク供給路180内で異常が発生したことを検知するものである。なお、異常検知器196はシステムコントローラ188に接続されている。従って、システムコントーラ188は、異常検知器196での検知結果を把握することができる。
【0072】
図7には、本実施形態に係る異常検知器196の一例を示す構成図が示されている。同図に示すように、異常検知器196は、ボルテージフォロアとして機能する増幅器196Aと、負帰還回路を構成する反転増幅器196Bと、コンパレータ196Cと、が直列に接続されて構成されている。
【0073】
増幅器196Aは、出力端子が抵抗R1を介して反転増幅器196Bの反転入力端子に接続されている。圧電素子184は、一方の電極が接地され、他方の電極が増幅器196Aの入力端子に接続されている。従って、増幅器196Aには、入力端子を介して圧電素子184から歪み検出信号が入力される。
【0074】
反転増幅器196Bは、非反転入力端子が接地され、反転入力端子が抵抗R2を介して自身の出力端子に接続されている。
【0075】
コンパレータ196Cは、非反転入力端子が増幅器196Bの出力端子に接続され、反転入力端子が直流電源196Dの正極端子に、出力端子がシステムコントローラ188の入力端子に接続されている。なお、直流電源196Dの負極端子は接地されている。
【0076】
このように構成された異常検知器196では、反転増幅器196Bが圧電素子184から増幅器196Aを介して入力された歪み検出信号の電圧を予め定められた割合だけ増幅させてコンパレータ196Cに出力する。そして、コンパレータ196Cが非反転入力端に入力された歪み検出信号の電圧と反転入力端子に接続された直流電源196Dの電圧(以下、「閾値電圧」とも言う。)とを比較し、当該比較結果をハイレベル信号又はローレベル信号として出力する。つまり、コンパレータ196Cは、非反転入力端に入力された信号の電圧が閾値電圧より高い場合にはローレベル信号を出力し、逆の場合はハイレベル信号を出力する。
【0077】
異常検知器196を上記構成とすることにより、定常的な圧力値が除去され、圧力の変化(微分)のみ(供給用チューブポンプ172の作用により発生する圧力リップル分のみ)が出力されることになる。なお、一般的な歪み/圧力検出素子の場合は、出力が圧力変化ではなく定常的な圧力値であるため、信号処理による微分により求めることになる。
【0078】
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の作用を説明する。
【0079】
本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、積載部22から給紙部24によって用紙Pが給紙され、搬送部28を経て、処理液塗布部14へ搬送される。処理液塗布部14では、用紙Pの記録面に処理液が塗布され、該処理液を乾燥させる。その後、該用紙Pは、中間搬送部58を経て、画像記録部16へ搬送され、画像形成ドラム36の表面に保持される。そして、画像記録部16では、画像情報に基づいてヘッド64のノズル151から用紙Pの記録面に対してインク滴が吐出される。これによって用紙Pの記録面には上記画像情報により示される画像が記録される。
【0080】
画像記録部16において記録面に画像が記録された用紙Pは、中間搬送部70を経て、インク乾燥部18へ搬送される。インク乾燥部18では、用紙Pの記録面のインクに含まれる溶媒を乾燥させる。その後、該用紙Pは、中間搬送部76を経て、画像定着部20へ搬送される。画像定着部20では、用紙Pの記録面に記録された画像の定着処理が行われる。そして、記録面に画像が定着した用紙Pは、画像定着ドラム40の回転によって排出部21側へ搬送される。
【0081】
ところで、上述したような画像記録動作時におけるインク供給路180内のインクへの気泡の混入は、気泡がヘッド64内にまで達するとインク滴の吐出異常を引き起こす。また、気泡はインクより圧縮性が高いので、圧力ダンパーとして働き、本来精密に制御したい圧力を正確に制御できなくなる。また、インク供給路180からのインク漏れは、圧力制御に対して悪影響を及ぼす。更に、インクの漏れ量が多量になれば、電気系統での漏電やショートといった大きなトラブルを引き起こすことになる。従って、インク供給路180内のインクに含まれる気泡の検出、及びインク供給路180からのインク漏れの検出はインクジェット記録装置10の信頼性を確保する上で重要である。
【0082】
そこで、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、供給用チューブポンプ172が、構造上、一例として図8に示すように、ローラ172C又は172Dがインク供給路180の外周面から離れる際、或いは当接する際に圧力リップルを発生するという性質を有していることを利用して、インク供給路180内のインクへの気泡の混入及びインク供給路180からのインク漏れを検知する異常検知処理が実行される。
【0083】
図9を参照して上記異常検知処理が実行される際のインクジェット記録装置10の作用を説明する。なお、図9は、画像記録動作中に所定時間(例えば、1秒)毎にシステムコントローラ188によって実行される異常検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM190の所定領域に予め記憶されている。なお、ここでは、錯綜を回避するために、インクがインク供給路180及びインク回収路182内を一定の流速で循環しているものとする。
【0084】
同図のステップ200では、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度が変化したか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ202の処理を実行せずにステップ204へ移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ202へ移行する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、上記ステップ200の処理として、供給用チューブポンプの支持部材172Fの回転速度を検出することにより、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度が変化したか否かを判定する処理を行っているが、これに限らず、インク供給路180内を流れるインクの流速を測定してもよい。
【0085】
ステップ202では、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度に対応する閾値電圧となるように直流電源196Dを制御した後、ステップ204へ移行する。
【0086】
ところで、インク供給路180内のインクに気泡が存在した場合、上述したように気泡はインクに比べて圧縮性が高いため、圧力リップルを吸収する。また、インク供給路180からのインク漏れがある場合、インク供給路180内の圧力が低下するため、気泡の場合と同じように作用し、結果的に圧力リップルが吸収されることになる。従って、圧力リップルの大きさが通常よりも所定値以上小さくなったことをもって(歪み検出信号の信号レベルが閾値よりも小さくなったことをもって)インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク供給路180からインクが漏れていると判断することができる。
【0087】
そこで、ステップ204では、異常検出器196からハイレベル信号が入力されたか否かを判定することにより歪み検出信号の電圧(信号レベル)が閾値電圧を下回っているか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ200へ戻る一方、肯定判定となった場合にはインク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生しているとみなしてステップ206へ移行する。
【0088】
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の異常検出器196では、一例として図10に示すように、歪み検出信号の電圧が閾値電圧以上の場合はインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていないと判断され、歪み検出信号の電圧が閾値電圧を下回っている場合はインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていると判断される。なお、圧力リップルの大きさは、その性質上、供給用チューブポンプ172によるインクの供給タンク164への送出速度(支持部材172Fの回転速度)に比例するので、上記ステップ200及び202の処理では、該送出速度に応じた閾値電圧の変更を行っている。
【0089】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、上記閾値電圧として、インクジェット記録装置10の実機による実験やインクジェット記録装置10の設計仕様に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって、画像記録動作中にインク供給路180内のインクへの気泡の混入或いはインク漏れの発生が起こっていないときの歪み検出信号の電圧の下限値として予め得られた値を用いている。
【0090】
ステップ206では、UIパネル192に対して、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報を表示させた後、本異常検知処理プログラムを終了する。
【0091】
なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、UIパネル192を用いて、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報の可視表示を行っているが、これに限らず、スピーカ等の音声再生装置を用いて可聴表示を行ったり、印字することによる永久可視表示を行っても良い。また、上記可視表示、可聴表示及び永久可視表示の複数を組み合わせても良い。
【0092】
また、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報の表示を行う以外にも、システムコントローラ188が、インク供給路180及びインク回収路182内のインクの循環を停止するように供給用チューブポンプ172及び回収用チューブポンプ174を制御してもよい。また、システムコントローラ188が、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していることを示す情報をホスト装置11に送信してもよい。また、これらの各処理を組み合わせてもよい。このように、システムコントローラ188が、インク供給路180内のインクに気泡が混入しているか或いはインク漏れが発生していると判断したときに行う処理はインクジェット記録装置10の設計仕様や使用目的などに応じて決定すればよい。
【0093】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、可撓性の管状部材(ここでは、インク供給路180)と、内部に液体(ここでは、インク)が満たされた管状部材を押圧すると共に押圧部位を管状部材の一端側(ここでは、メインタンク160側)から他端側(ここでは、供給タンク164側)に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって液体を送出する送出手段(ここでは、供給用チューブポンプ172)と、管状部材の周面に固定され、管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段(ここでは、圧電素子184)と、歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号(ここでは、ハイレベル信号)を出力する信号出力手段(ここでは、異常検出器196)と、を備えているので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0094】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、歪み検出手段をPVDFで構成しているので、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れをより一層精度良くかつ容易に検知することができる。
【0095】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、送出手段による送出速度の増減に対応して閾値(ここでは、閾値電圧)を増減させることにより該閾値を変更する変更手段(ここでは、システムコントローラ188)を更に備えているので、送出手段による送出速度が変化しても、管状部材内の液体への気泡の混入及び管状部材からの液体漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0096】
以上、本発明を上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の主旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、また、上記実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における状況に応じた組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0098】
例えば、上記実施形態では、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間のインク供給路180にのみ圧電素子184を固定する場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として図11に示すように、供給タンク164と供給用チューブポンプ172との間のインク供給路180に加え、回収タンク168と回収用チューブポンプ174との間のインク回収路182の周面に圧電素子184Bを、供給タンク164と供給用バルブ176との間のインク供給路180の周面に圧電素子184Cを、回収タンク168と回収用バルブ178との間のインク回収路182の周面に圧電素子184Dを、各々固定してもよい。この場合、圧電素子184に対して異常検出器196が設けられているように、圧電素子184B〜Cに対しても異常検出器196と同様の構成をしたものを各々設ける。これにより、回収タンク168と回収用チューブポンプ174との間のインク回収路182、供給タンク164と供給用バルブ176との間のインク供給路180、及び回収タンク168と回収用バルブ178との間のインク回収路182の各々に対して、インクへの気泡の混入及びインク漏れを精度良くかつ容易に検知することができる。
【0099】
また、上記実施形態では、インクの送出速度が2段階で変更可能な場合の形態例を挙げて説明したため、閾値電圧を2段階に変更可能としたが、インクの送出速度が3段階以上に変速可能とされている場合には送出速度の段階数に応じた数の閾値電圧を用意し、該送出速度に対応した閾値電圧を設定することが好ましい。
【0100】
また、上記実施形態で説明したインクジェット記録装置10の構成(図1,図2,図3,図6,及び図7を参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0101】
また、上記実施形態で説明したフローチャートの流れ(図9を参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0102】
10 インクジェット記録装置
64 インクジェットラインヘッド(記録ヘッド)
172 供給用ポンプ(送出手段)
180 インク供給路(管状部材)
184 圧電素子(歪み検出手段)
188 システムコントローラ(変更手段)
196 異常検出器(異常検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の管状部材と、
内部に液体が満たされた前記管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体を送出する送出手段と、
前記管状部材の周面に固定され、前記管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段と、
前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する信号出力手段と、
を含む液体供給装置。
【請求項2】
前記歪み検出手段をPVDFで構成した請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記送出手段による送出速度の増減に対応して前記閾値を増減させることにより該閾値を変更する変更手段を更に含む請求項1または請求項2記載の液体供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と、
前記送出手段により送出された前記液体が供給されるように前記管状部材に接続されると共に、記録媒体へ液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
を含む液滴吐出装置。
【請求項1】
可撓性の管状部材と、
内部に液体が満たされた前記管状部材を押圧すると共に押圧部位を前記管状部材の一端側から他端側に向かって移動させることにより一端側から他端側に向かって前記液体を送出する送出手段と、
前記管状部材の周面に固定され、前記管状部材の歪みを検出して歪み検出信号を出力する歪み検出手段と、
前記歪み検出手段から出力された歪み検出信号の信号レベルが予め定められた閾値未満のときに異常信号を出力する信号出力手段と、
を含む液体供給装置。
【請求項2】
前記歪み検出手段をPVDFで構成した請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記送出手段による送出速度の増減に対応して前記閾値を増減させることにより該閾値を変更する変更手段を更に含む請求項1または請求項2記載の液体供給装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体供給装置と、
前記送出手段により送出された前記液体が供給されるように前記管状部材に接続されると共に、記録媒体へ液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
を含む液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−194879(P2010−194879A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42734(P2009−42734)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]