説明

液体供給装置

【課題】液体を吐出するための複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドへ、液体を供給する液体供給装置において、液体高さ検出をおこなってから、その検出値に基づいて、高さ制御をおこなっておりインク供給装置の構造が複雑になる。
【解決手段】液体供給装置内の液体残量を検出する検出窓手段41と、検出窓手段41の周辺に液体残量を目視測定可能な目盛りを設けた目盛り手段42と、液体高さ調整機構を有することにより、液体タンク内の液体の残量に応じて鉛直方向に上下させ液体高さ調整が迅速におこなうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給装置及びプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙やプラスチック薄板などの記録媒体にインクを吐出させて所定の画像を記録するインクジェット記録装置が提案され、実用化されている。インクジェット記録装置はインク吐出口(ノズル)を有する液体吐出ヘッドを備えており、係る吐出ヘッドのノズルから記録媒体に向けてインクを吐出することにより、所定の画像を記録するようになっている。
【0003】
このような構成からなるインクジェット記録装置では、インクの消費に伴いインクを適宜供給する必要がある。このためインクを供給するための手段が提案されている。例えば特許文献1には、インクの消費に伴うインク貯蔵器内のインク液面低下を検出し、これに対応する液体高さ調整機構を設ける、又は記録画像の解像度に対応して液体高さ調整機構を設ける、あるいは記録紙の種類に対応して液体高さ調整機構を設ける等が記載されている。
【0004】
また特許文献2では、上下動可能かつ収容したインクを、パイプを通してインクジェットヘッドのノズル部へ供給可能なインクタンクと、このインクタンク内に収容されたインク質量が減少した場合には減少分だけインクタンクを上昇させ、かつインク質量が増大した場合には増大分だけインクタンクを下降させてインク液面がインクジェットヘッドのノズル部よりも所定距離だけ下方の所定レベルとなるように調整するインクタンク高さ調整手段とを設け、さらにインクタンクの上下方向位置に基きインク切れを検出するインク切れ検出手段を設けたことを特徴とするインク供給装置が記載されている。
【特許文献1】特開平4−239648号公報
【特許文献2】特開平10−109425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置では液体高さ調整機構を固定軸にラック、上下移動するためにピニオンを用いたラックピニオン機構を採用し、検出手段からの信号により、駆動モータを回転する制御手段を用いて高さ調整をおこなうようにしたものである。また特許文献2に記載のインク供給装置の高さ調整機構は、インク供給装置をコイル支持台を介して筐体に懸架する4個のコイルスプリングよりおこなっている。
【0006】
しかし何れの高さ調整機構においても、液体高さの検出をおこない、その検出値に基づいて高さ制御をおこなっているのでインク供給装置の構造が複雑になり、製造コスト面からも問題がある。
【0007】
本発明の目的は、液体供給装置において液体の種類、使用環境によって、吐出ヘッド高さに対する最良な液面高さ位置がわかるように目盛りを設け、液体高さ調整が迅速におこなえる液体供給装置及びプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.液体を吐出するための複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドと、
前記液体を貯蔵する液体タンクと、
前記液体タンクから前記液体を供給する液体供給手段と、
前記液体タンク内の液体残量に応じて鉛直方向に移動させて液体の液面高さを所定値に調整する液体高さ調整手段と、
を有する液体供給装置において、
前記液体高さ調整手段は、高さ保持状態と高さ調整状態が切り換え可能な液体高さ調整機構と、
前記液体タンクの鉛直方向への移動を規制するガイド部材と、
前記ガイド部材に摺動するように嵌合する前記液体タンクを保持する保持部材と、
前記保持部材の嵌合部を前記ガイド部材に挟圧保持する弾性部材と、
前記液体タンク内の液体残量を検出する検出窓手段と、
前記検出窓手段の周辺に液体残量を目視測定可能な目盛りを設けた目盛り手段と、
を有することを特徴とする液体供給装置。
2.複数の前記液体高さ調整手段を有し、個々に高さ調整が可能なことを特徴とする1に記載の液体供給装置。
3.前記所定値とは、前記ノズルからの液体吐出量を一定にするための液面高さであることを特徴とする1に記載の液体供給装置。
4.前記ガイド部材に挟持保持された前記保持部材は、上方向から加重がかかったときにおいても、下方向への挟圧力が保持されることを特徴とする1乃至3の何れかに記載の液体供給装置。
【発明の効果】
【0009】
液体を吐出するための複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドへ、液体を供給する液体供給装置において、液体を貯蔵する液体タンク内の液面の高さ位置がわかるように目盛りを設けることにより、液体高さ調整が迅速におこなえるようにし、さらに液体タンク内の液体残量に応じて鉛直方向に上下させて液滴を所定値に調整する液体高さ調整機構を有する液体供給装置を、簡易で低コストな構造で提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は液体供給装置の斜視図、図2は液体供給装置の内部を示す概略図、図3はその斜視図、図4は液体高さ調整手段の構成を下から見た詳細図である。
【0011】
また図7は液体供給装置Aと、吐出ヘッド4と、液体を吐出させるための制御手段と、印字するためのテーブルなどを配置したプリント装置Pを示す。
【0012】
液体供給装置Aは、図1に示すように、筐体Bに検出窓手段41が開口され、その周辺に、目盛り40が印刷された目盛り手段42が取り付けられている。ここでは目盛り手段42を別個に設けているが、直接筐体Bに印刷してもかまわない。さらに検出窓手段41には後述するグリップ板25が突出している。
【0013】
液体供給装置Aは、図2に示す如く、液体タンク1と液体高さ調整手段2とを設け、液体タンク1に収容した液体の液面3が液体吐出ヘッド4の液体吐出ノズル面5と所定の高さに調整できるように上下方向に調整可能な構造を有し、液体タンク1を位置決めするようになっている。液体タンク1は供給チューブ6を介して液体吐出ヘッド4のノズル部へ液体を供給可能に設けられている。液体タンク1の液体補給口11には、大気連通穴13付きのキャップ12が着脱自在に装着されている。
【0014】
液体高さ調整手段2は、ガイド軸23,24に摺動可能に嵌合された保持板21と、保持板21の支点軸22を中心にして回転し、ガイド軸24に勘合するグリップ板25と、グリップ板25を押し付ける圧縮ばね26とからなっている。ガイド軸24に嵌合する保持板21の嵌合穴部27,28は保持板21が滑らかに摺動するようにスライド軸受けが取り付けられているが、ガイド軸24に嵌合するグリップ板25の嵌合穴部29はガイド軸24の外径に対して大きな穴を設けている。本実施例では、ガイド軸外径24mmに対して嵌合穴部29は26mmとした(図5参照)。このような構造からなる液体高さ調整手段2は、図4に示すように嵌合穴部29のエッジ部30が圧縮ばね26によってガイド軸24に噛み合い、保持板21が保持される。
【0015】
次に、保持板21を上下方向に移動させて液体高さ調整をおこなうために、図6(a)の矢印fで示すように、グリップ板25を圧縮ばね26に抗して力を加え、嵌合穴部29のエッジ部30がガイド軸24との噛み合いを解除させながら(図6(b))、所定の位置に移動させ、グリップ板25を離すことにより高さを保持できる。
【0016】
このように、鉛直方向への移動を規制するガイド部材に嵌合する液体タンク保持部材の嵌合部エッジ部が、弾性部材によってガイド部材と噛み合い挟圧保持されるような構成となっているので、弾性部材を緊張/弛緩させることにより高さ保持状態と高さ調整状態の切り換えがおこなえ、液体タンク内の液体残量に応じて鉛直方向に液体タンクを上下させて、ノズル部からの液体吐出量を一定にするための液面高さである所定値に調整することが容易にできる。
【0017】
しかしながら吐出ヘッドのノズル高さに対する液面高さは、液体の種類(液体の粘性)、使用環境などにより異なる。例えば粘性が低い液体の場合は、吐出ヘッドのノズル高さに対する液面高さは、粘性が高い液体より低い位置が望ましい。このようにプリント装置Pにてプリントする際に、液体の種類によって吐出ヘッドのノズル高さに対する最良な液面高さ位置を調整するのは、調整時間を用し不便である。そこで吐出ヘッドのノズル高さ及び液体の液面高さ位置基準は、同位置の基準テーブルからの高さとし(図2参照)、上述したように筐体Bの検出窓手段41開口部周辺に、目盛り手段42を設けることにより、吐出ヘッドのノズル高さHに対する特定の液体の液面高さとの目盛り位置を予め求めておけば、グリップ板25の圧着、解除操作によってその目盛り位置に容易に移動することができる。
【0018】
図7は本実施例を用いたプリント装置の斜視図である。図7に示すように、プリント装置Pは、複数の液体高さ調整手段2を取り付けた液体供給装置Aと、同じく複数の吐出ヘッド4、吐出ノズルからの液体を吸引する液体吸引ポンプ50、吐出ノズルからの液体を吸引する際に吐出ノズル面5に接触して、ノズル周辺に密閉性を上げるための吸引キャップ51、X方向に移動(副走査方向という)可能な搬送テーブル52、Y方向に移動(主走査方向という)可能なヘッド搬送テーブル53、吐出ヘッド4を駆動させるヘッド駆動基板54、搬送テーブル52、ヘッド搬送テーブル53を所定の位置に移動させるように制御し、さらにヘッド駆動基板54を制御する制御部80からなっている。
【0019】
図8はプリント装置Pの制御系を示すブロック図である。
【0020】
制御部80はパーソナルコンピュータ(パソコンPCという)の指示により、吐出ヘッド4に液体を吐出するように座標位置を検出するセンサ(不図示)信号に基づいてヘッド駆動基板54に信号を送る。また所定の位置に印字できるように搬送テーブル52、ヘッド搬送テーブル53へ信号を送る。ヘッド駆動基板54は吐出ヘッド4に駆動電圧、駆動時間などを与えて駆動させる基板である。
【0021】
このようにプリント装置Pは、複数の液体をそれぞれ液体に対応した吐出ヘッド4にて吐出することができるので、吐出ヘッドの特性又は、液体と吐出ヘッドとの相関を調べ、さらに吐出ヘッド4の品質評価など簡易にプリントするときに有効な装置である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】液体供給装置の斜視図である。
【図2】液体供給装置の内部を示す概略図である。
【図3】液体供給装置の内部の斜視図である。
【図4】液体高さ調整手段の構成を下から見た詳細図である。
【図5】グリップ板の嵌合穴部がガイド軸嵌合しているところを示す図である。
【図6】図6(a)はグリップ板を圧縮ばねに抗して力を加えたところを示し、図6(b)は嵌合穴部のエッジ部がガイド軸との噛み合いを解除させたところを示す図である。
【図7】プリント装置を示す斜視図である。
【図8】プリント装置Pの制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 液体タンク
2 液体高さ調整手段
3 液面
4 液体吐出ヘッド
5 液体吐出ノズル面
21 保持板
22 支点軸
23、24 ガイド軸
25 グリップ板
26 圧縮ばね
27、28、29 嵌合穴部
30 エッジ部
42 目盛り手段
50 吸引ポンプ
80 制御部
A 液体供給装置
B 筐体
P プリント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルが配列された液体吐出ヘッドと、
前記液体を貯蔵する液体タンクと、
前記液体タンクから前記液体を供給する液体供給手段と、
前記液体タンク内の液体残量に応じて鉛直方向に移動させて液体の液面高さを所定値に調整する液体高さ調整手段と、
を有する液体供給装置において、
前記液体高さ調整手段は、高さ保持状態と高さ調整状態が切り換え可能な液体高さ調整機構と、
前記液体タンクの鉛直方向への移動を規制するガイド部材と、
前記ガイド部材に摺動するように嵌合する前記液体タンクを保持する保持部材と、
前記保持部材の嵌合部を前記ガイド部材に挟圧保持する弾性部材と、
前記液体タンク内の液体残量を検出する検出窓手段と、
前記検出窓手段の周辺に液体残量を目視測定可能な目盛りを設けた目盛り手段と、
を有することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
複数の前記液体高さ調整手段を有し、個々に高さ調整が可能なことを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記所定値とは、前記ノズルからの液体吐出量を一定にするための液面高さであることを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記ガイド部材に挟持保持された前記保持部材は、上方向から加重がかかったときにおいても、下方向への挟圧力が保持されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−12792(P2008−12792A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186475(P2006−186475)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】