説明

液体供給装置

【課題】姿勢変化や温度変化等が生じても、塗布部側で液体リッチ状態になることのない液体供給装置を提供する。
【解決手段】液体供給装置は、本体1内に隔壁2が設けられて、液体が貯留される貯留室3と大気に連通するリザーバ室4に分割されている。隔壁2には、先端に塗布部8を有する多孔質の中継芯10が挿通する貫通孔2aが形成されると共に、貯留室3側に突出して中継芯10の外周面と所定の隙間を有する隔壁延出部2bが形成されている。隔壁延出部2bには、貯留室3側において、挿通される中継芯に対して2箇所以上当接する当接部2Aが形成されており、中継芯10の外周面には、少なくとも隔壁2から当接部2Aに至る範囲にカバー11が被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アイライナーのような化粧用具、ペン(筆記具)、スタンプのように、様々な液体(化粧水、香水、インクなど)を収容し、これを塗布部に向けて供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したような液体供給装置として、例えば、特許文献1には、ペンタイプの本体内に液体を収容し、これを中央に配設された多孔質の中継芯を介して、中継芯先端側に設けられた塗布部に供給する構成が開示されている。具体的に、前記本体の空洞部は、隔壁を介して液体を収容する液体貯留室とリザーバ室とに区分けされており、隔壁の中央には、前記中継芯を所定の間隔を持って挿通させる貫通孔が形成されている。また、前記隔壁には、液体貯留室側に向けて延出し、中継芯との間で、毛細管力によって液体を保持することが可能なギャップを有する隔壁延出部が形成されており、この隔壁延出部は、塗布部を下向きにした際、液体貯留室内に収容される液体よりも高くなるように形成されている。さらに、前記リザーバ室には、中継芯を貫通させると共に、液体を吸収する液体吸収体が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3909775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した液体供給装置は、塗布部を下向きにした状態では、隔壁延出部によって液体が中継芯と接触することが防止されるため、塗布部側が液体リッチ状態になることはない。しかし、姿勢変化したり温度変化(温度上昇)した際に、液体貯留室に収容されている液体は、隔壁延出部の端部から、隔壁延出部と中継芯との間のギャップに入り込み易く、さらに、中継芯は、多孔質な素材で形成されていることから、入り込んだ液体は中継芯内に吸収されて、毛細管力が強い塗布部側に移動してしまう。
【0005】
また、塗布部側となるリザーバ室に配設される前記液体吸収体については、姿勢変化や温度変化がない場合、液体貯留室内の液体の移動がなく、液体吸収体が非飽和状態(飽和に近づかない状態)になることが望ましい。
このため、中継芯と液体吸収体の毛細管力については、液体吸収体の方を小さくすると共に、両者の差をある程度の範囲で大きくすることが望ましいが、液体吸収体の毛細管力の強さは不安定(気孔率にバラツキがある)なため、量産時に両者の差を一定の範囲に設定することが難しい。具体的に、両者の差が大きくなり過ぎると、姿勢変化や温度変化で中継芯内に押し出されたインクを吸収することができなくなってしまい、また、両者の差が小さくなり過ぎると、通常時において液体吸収体が飽和状態に近づき易く、液体を吸収する機能が損なわれてしまう。すなわち、液体吸収体の毛細管力については、部材毎にバラツキの度合いが大きく、上記の理由から、塗布部側が液体リッチ状態になり易くなる、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、液体貯留室とリザーバ室を、貫通孔が形成された隔壁によって区分けし、前記貫通孔に挿通される中継芯を介して液体貯留室内に収容された液体を中継芯の先端に設けられた塗布部に供給する液体供給装置において、姿勢変化や温度変化等が生じても、塗布部側で液体リッチ状態になることのない液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る液体供給装置は、空洞部を有する本体と、前記空洞部を、液体が貯留される液体貯留室と大気に連通するリザーバ室に分割すると共に、中央部に貫通孔が形成された隔壁と、前記本体に設けられ、前記液体貯留室内の液体を塗布する塗布部と、前記液体貯留室内の液体を前記塗布部に供給すると共に、前記貫通孔の内壁に対して所定の隙間をもって挿通される多孔質の中継芯と、前記隔壁から液体貯留室側に突出すると共に前記中継芯の外周面と所定の隙間を有し、中継芯の先端が液体貯留室内に突出するように中継芯を挿通させる隔壁延出部と、を備え、前記隔壁延出部には、前記液体貯留室側において、挿通される中継芯に対して2箇所以上当接する当接部が形成されており、前記中継芯の外周面には、少なくとも前記隔壁から当接部に至る範囲にカバーが被覆されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の液体供給装置によれば、液体貯留室内の液体は、前記隔壁に形成された貫通孔と中継芯との間の隙間、及び、隔壁延出部と中継芯との間の隙間を介して気液交換作用がなされ、隔壁延出部外に突出する中継芯の外周面(カバーが被覆されていない部分)から中継芯内に流入して中継芯を介して塗布部に供給される。この場合、姿勢変化して塗布部を下向きにしても、前記隔壁延出部によって、液体がリザーバ室に流れ込むようなことはなく、塗布部が液体リッチ状態になることはない。また、横向きにする等、姿勢変化したり、温度上昇(内圧上昇)が生じても、隔壁延出部の端部には、当接部が形成されていることから、液体は、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に流入し難いと共に、仮に液体がこの部分から流入しても、上記のように中継芯の外周面には、カバーが被覆されているため、液体は中継芯内に流入することはなく、塗布部が液体リッチ状態になることはない。すなわち、温度上昇、或いは姿勢変化等で塗布部が下向きになっても、隔壁延出部と中継芯との間の隙間から中継芯内に液体が流入することがないため、塗布部側の液体リッチ状態を防止することが可能となる。
【0009】
上記した構成では、前記リザーバ室に、前記中継芯を貫通させると共に液体を含浸保持可能な液体吸収体を設けておき、前記液体吸収体内の中継芯の外周面に前記カバーを被覆しておくことが好ましい。
【0010】
このような構成では、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に液体が流入し、かつ、その液体が隔壁に形成された貫通孔を介してリザーバ室内に流入しても、液体吸収体で吸収されるため、塗布部側で液体リッチ状態になることが防止される。また、液体吸収体と接触する中継芯の外周面には、カバーが被覆されていることから、中継芯を流れてきた液体が、液体吸収体によって吸収されることがなく、液体塗布時において、塗布部側が液体プア状態になることもない。
【0011】
また、リザーバ室に、このような液体吸収体を配設する構成では、液体吸収体内において、前記中継芯の外周面の一部に前記カバーを被覆しない領域を設けておくことが好ましい。
【0012】
このような構成では、中継芯の内部に多量の液体が流入した場合、その液体は、カバーを被覆していない部分を介して液体吸収体に吸収されるため、塗布部側での液体リッチ状態を効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記した構成では、前記隔壁の貫通孔に、挿通される中継芯に対して2箇所以上当接する当接部を形成しておくことが好ましい。
【0014】
このような構成では、隔壁の貫通孔と中継芯との間の隙間からリザーバ室に液体が流入し難くなると共に、隔壁部分の内圧が相対的に高まることから、横向きにする等、姿勢変化した状態で温度上昇(内圧上昇)が生じても、液体は、隔壁延出部の端部から、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に、より流入し難くすることができ、液体を無駄に消費することがなくなる。
【0015】
また、上記した構成では、前記隔壁延出部から突出する中継芯の外周面に、突出端領域を除いて前記カバー部材を被覆しておくことが好ましい。
【0016】
このような構成では、姿勢変化や温度上昇等があっても、隔壁延出部から突出する中継芯の外周面から内部に流入する液体の量を制限することができるため、塗布部側の液体リッチ状態を効果的に防止することが可能となり、かつ、液体を無駄にすることもなくなる。
【0017】
また、上記した構成では、前記液体吸収体は、前記液体貯留室側の気孔率が低く、塗布部側の気孔率が高くなるように設定しておくことが好ましい。
【0018】
このような構成では、液体が隔壁の貫通孔を介して液体吸収体に流入しても、その液体は気孔率が低い液体貯留室側に保持されることから、液体吸収体内において、液体貯留室側に液体によるシールを形成するようになる。このため、液体貯留室側からの液体の流入を防止して、液体の無駄な消費を抑制することが可能となる。
【0019】
また、上記した構成では、前記液体貯留室内に収容される液体の初期収容量は、前記本体を水平面に載置した状態で、前記隔壁延出部から突出する中継芯に接しない位置に設定されていることが好ましい。
【0020】
このような構成では、液体貯留室内に収容されている液体は、本体を水平状態にしたり姿勢変化で塗布部を下側にしても、中継芯を介して多量に塗布部側に流れることがなく、また、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に流入する量も減るため、塗布部側での液体リッチ状態を効果的に防止できると共に、液体の無駄な消費を抑制することが可能となる。
【0021】
また、上記した構成では、前記液体貯留室内に収容される液体の初期収容量は、前記塗布部が上向きとなるように前記本体を水平面に載置した状態で、前記隔壁延出部の端面に接しない位置に設定されていることが好ましい。
【0022】
このような構成では、前記塗布部を上向きにして前記本体を水平面に載置している状態では、液体貯留室内に収容されている液体は、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に流入することがなく、塗布部側での液体リッチ状態を確実に防止できると共に、液体の無駄な消費を抑制することが可能となる。また、上記した状態で急激に温度上昇したり、或いは、その状態から姿勢変化させても、収容される液体容量が少なく、隔壁延出部と中継芯との間の隙間に液体が流入し難いことから、塗布部側での液体リッチ状態を効果的に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、姿勢変化や温度変化等が生じても、塗布部側で液体リッチ状態になることのない液体供給装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図であり、(a)は全体構成を示す図、(b)は図(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は図(a)のB−B線に沿った断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す全体構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態を示す全体構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態を示す全体構成図。
【図5】本発明の第5の実施形態を示す図であり、(a)は全体構成を示す図、(b)は図(a)のC−C線に沿った断面図。
【図6】本発明の第6の実施形態を示す全体構成図。
【図7】本発明の第7の実施形態を示す全体構成図。
【図8】本発明の第8の実施形態を示す全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を示す図である。この実施形態の液体供給装置は、化粧用具であるアイライナーとして構成されており、空洞部を有し、たとえば円筒形状に形成された本体1を備えている。この本体1の空洞部は、軸方向と直交する方向に配置される隔壁2によって、塗布液(アイライナー液)Hが貯留される貯留室3、及び貯留室3から流出するインクを受けるリザーバ室4に区画されている。また、本体1の尾端側には、本体1に対して着脱可能なキャップ状の尾栓5が取付けられ、本体1の先端側には、開口7aを有する先口7が形成され、この部分にリザーバ室4に開口する大気連通孔7bを介在させて塗布部8が取り付けられている。
【0026】
前記隔壁2は、円板状の部材を本体1の内周面に圧入して構成されたものであり、図1(c)に示すように、中心部に、細長状の中継芯10が所定の隙間G(大気が貯留室3側に移動して気液交換できる程度の隙間)を持って挿通されるように、貫通孔2aが形成されている。前記中継芯10は、例えば、軸方向に平行な多数の繊維を収束して圧縮することで、多孔質の棒状の部材として形成されており、その表面には、後端領域10aを除いて、樹脂等、塗布液が通過することのできない材料で構成されるカバー11が被覆されている。
【0027】
この場合、中継芯10は、毛細管力によって貯留室3内に貯留された塗布液Hを塗布部8に向けて感度良く供給できるように、内部で気液交換しない(空気の通路を形成しない)ように、できるだけ気孔率が低くなるように形成される。また、前記カバー11は、塗布液が実質的に内部に流入できないような材料で、その表面に被覆されていれば良く、例えば、後端領域10aにマスキングをしておき、樹脂液に含浸させて中継芯の表面に被覆したり、予め筒状に形成された液体不透過性のカバー体に対して中継芯10を嵌入することで形成することが可能である。このため、カバー11が被覆された中継芯10に対しては、後端領域10aから塗布液が内部に流入可能となっている。
【0028】
前記隔壁2には、前記中継芯10に沿って貯留室3側に突出すると共に、前記所定の隙間Gを、そのまま尾栓5側に向けて維持するように隙間を具備した隔壁延出部2bが形成されている(図において、そのような隙間をG´で示す)。この場合、隔壁延出部2bは、隔壁2と同一材料で一体形成されたものであっても良いし、別部材を一体化して構成したものであっても良い。
【0029】
前記中継芯10の先端には、前記塗布部8が連結されると共に、その後端側は、隔壁延出部2bの後端開口2cから貯留室3内に突出しており(尾栓5内に突出している)、その突出した中継芯10の後端領域10aの外周面を除いて、前記カバー11が被覆されている。この場合、先端側に設けられる塗布部8は、貯留室3に収容された塗布液Hがアイラインに沿って塗布できるように構成されたものであれば良く、例えば、中継芯10と同一素材で中継芯の先端を太径化して一体形成したもの、中継芯の先端に連結可能なもの、例えば刷毛状の部材、保湿性を有する部材等によって構成することが可能である。また、塗布部8における毛細管力は、中継芯10よりも大きく設定されており、中継芯内に入り込んだ塗布液は、塗布部8内に移動して、その表面から塗布できるようになっている。なお、中継芯10の毛細管力は、長手方向に沿って略均一に設定されているが、塗布部側の毛細管力が大きくなっていることが好ましく、これにより、後端領域10aを介して中継芯10内に流入した塗布液を塗布部8側に流れ易くすることが可能となる。
【0030】
前記カバー11は、貯留室3内に突出した中継芯10の表面にも形成されており、これにより、貯留室3内に貯留される塗布液は、中継芯10の後端領域10aから内部に流入して塗布部8に供給可能となっている。
【0031】
前記隔壁延出部2bの後端開口2cの内部には、図1(b)に示すように、挿通される中継芯10の外周面に対して部分的(少なくとも2箇所以上)に当接する当接部2Aが形成されている。この当接部2Aは、中継芯10の位置決めを果たすと共に、後端開口2cを介して隔壁延出部2b内に塗布液を流入し難いようにしている。具体的に、当接部2Aは、後端開口2cの内壁に、略90°間隔で、中継芯10の外周面に対して4箇所で当接する当接片(突片)として構成されており、これにより、貯留室3内の塗布液を隔壁延出部2b内に流入し難くしている(例えば、0.02mm程度の隙間にすることで、隔壁延出部内に流入し難いようにしている)。なお、温度上昇した場合等、大きな環境変化があった場合には、貯留室内の塗布液は、4箇所に形成された当接片間の隙間から前記隙間G´内に流入することは可能となっている。
【0032】
前記当接部2Aは、突片以外にも、後端開口2cの内壁を多角形状にしたり、或いは楕円形状にする等、適宜変形することが可能である。また、当接部が形成される位置については、隔壁延出部2bの後端開口2cの位置以外にも、多少、隔壁延出部2b内に入り込んだ位置(後端開口側であることが好ましい)であっても良い。或いは、そのような当接部については、中継芯10を挿通させる隔壁2の貫通孔2aの部分にも形成しても良い。
【0033】
上記したリザーバ室4内には、図に示すように、カバー11が被覆された中継芯10を挿通させ、塗布液Hを含浸保持できる液体吸収体12を配設しておくことが好ましい。このような液体吸収体12は、繊維材料等、多孔質の材料(綿等)によって構成され、このような液体吸収体12を配設しておくことにより、前記隙間G´から隙間Gを介して流入した塗布液を保持することが可能となって、塗布部側で液体リッチ状態になることが防止される。また、液体吸収体12と接触する中継芯10の外周面には、カバー11が被覆されていることから、中継芯10を流れてきた液体が、液体吸収体12によって吸収されることはなく、液体塗布時において、塗布部側が液体プア状態になることもない。なお、このような液体吸収体12は、後述する実施形態のように、リザーバ室4内に設けない構成であっても良い。
【0034】
上記した構成のアイライナーによれば、貯留室3内に収容された塗布液Hは、隔壁2に形成された貫通孔2a、及び、隔壁延出部2bと中継芯10との間の隙間G´を介して気液交換作用がなされ、隔壁延出部2bから突出する中継芯10の後端領域(カバーが被覆されていない部分)10aから中継芯内に流入して塗布部8側に移動する。この場合、塗布液Hは、姿勢変化することで中継芯10の後端領域10aと接触することが可能となっており、後端領域と接触した塗布液Hは、直ちに塗布部8側に移動して塗布部8で使用(塗布)される。また、中継芯10の後端領域のみを露出(カバー11を被覆しない)させているため、姿勢変化や温度上昇等があっても、隔壁延出部2bから突出する中継芯10の外周面から内部に流入する塗布液の量を制限することができ、塗布部8側の液体リッチ状態を効果的に防止することが可能となる。
【0035】
また、前記貯留室3内には、隔壁延出部2bが突出しているため、姿勢変化して塗布部8を下向きにしても、隔壁延出部2bによって、塗布液がリザーバ室4に流れ込むようなことはなく、塗布部8が液体リッチ状態になることはない。また、本体1を横向きにする等、姿勢変化した状態で温度上昇(内圧上昇)が生じて、塗布液が隔壁延出部2b内に流入しても、中継芯10の表面にはカバー11が被覆されているため、塗布液が中継芯10の内部に入り込むことはなく、結果として塗布部8が液体リッチ状態になることはない。この場合、隔壁延出部2b内に塗布液が流入し、さらに、上記した隔壁2の貫通孔2aを介して、リザーバ室4内に流入することも考えられるが、その部分には、液体吸収体12が配設されており、流入した塗布液Hは吸収されることから、塗布部8が液体リッチ状態になることはない。
【0036】
なお、隔壁延出部2bの開口端部2cには、上記したように、当接部2Aが形成されており、内部に塗布液が流入し難い状態(開口端部2cの付近で表面張力によって塗布液が溜まり、内部に流入し難い状態)となっていることから、塗布液がリザーバ室4側に流出することを極力、抑制することが可能となる。
すなわち、温度上昇が生じて内圧が高くなったり、姿勢変化等によって塗布液が隔壁延出部の開口端部に接しても、隔壁延出部2bと中継芯10との間の隙間から、塗布液が隔壁延出部2b内に流入し難くしているため、塗布部8側の液体リッチ状態を防止し、かつ塗布液の無駄な消費を防止することが可能となる。
【0037】
また、リザーバ室4に液体吸収体12を配設しても、上記したように、中継芯10の外周面には、カバー11が被覆されていることから、中継芯10の内部を流れてきた塗布液が、液体吸収体12によって吸収されることはなく、塗布時において、塗布部8側が液体プア状態になることもない。すなわち、液体吸収体12は、隔壁2の貫通孔2aから流出する塗布液を吸収して塗布部8側を液体リッチ状態になることを抑制するだけで良いため、中継芯10との関係で毛細管力を厳密に管理する必要もない。
【0038】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上記した第1の実施形態と同一の構成部材については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す図である。
この実施形態では、リザーバ室4に配設された液体吸収体12の内部を貫通する中継芯10の外周面に、カバー11を被覆しない領域(切欠部12a)が形成されている。すなわち、切欠部12aによって、中継芯10の外周面と液体吸収体12は、部分的に接触した状態となっている。
【0040】
このような構成では、温度上昇等によって中継芯10の内部に多量の塗布液が流入した場合、その塗布液は、カバー11を被覆していない部分を介して液体吸収体12に吸収されることが可能となるため、塗布部8側での液体リッチ状態を、より効果的に抑制することが可能となる。なお、このような構成では、中継芯10の後端領域において、塗布液Hと接触することができる面積を増加することも可能となる。
【0041】
図3は、本発明の第3の実施形態を示す図である。
中継芯10の外周に被覆されるカバー11については、上記したように、貯留室3内で、塗布液が中継芯内に流入できるようになっており、かつ、隔壁延出部2b内に塗布液が流入しても、中継芯10内に流れ込まないようになっていれば良い。
【0042】
このため、前記カバー11については、少なくともリザーバ室4との境界となる隔壁2が配設されている領域から、隔壁延出部2bに形成されている当接部2Aに至る領域の範囲内に形成されていれば良い。すなわち、このような範囲にカバー11が被覆されていれば、隔壁延出部2b内に塗布液が入り込んでも、中継芯10内には流入しないことから、塗布部8側での液体リッチ状態を効果的に抑制することが可能となる。なお、カバー11は、隔壁延出部2b内において、中継芯10の全外周面に被覆されているのが好ましいが、部分的に切欠部等が形成されていても良い。
【0043】
図4は、本発明の第4の実施形態を示す図である。
上記したように、隔壁延出部2bに当接部2Aを形成したことにより、隔壁延出部2b内に塗布液が流入し難いことから、結果的に、隔壁2に形成された貫通孔2aからリザーバ室4内に塗布液が流れ込むことが抑制されるため、リザーバ室4内に、液体吸収体を配設しない構成であっても良い。
【0044】
このように、リザーバ室4内に液体吸収体を配設しないことで、製造コストを低減することが可能となる。
なお、リザーバ室4内に液体吸収体12を配設しない構成の場合、隔壁2の貫通孔2aに、挿通される中継芯10の外周に対して2箇所以上当接する当接部を形成しておくことが好ましい。
【0045】
すなわち、隔壁2の貫通孔2a部分に、上記した当接部2Aと同様な当接部を形成しておくことにより、隔壁2の貫通孔2aと中継芯10との間の隙間からリザーバ室4内に塗布液が侵入し難くなると共に、隔壁2部分における内圧も高まることから、本体1を横向きにする等、姿勢変化した状態で温度上昇(内圧上昇)が生じても、塗布液は、隔壁延出部2bの開口端部から、隔壁延出部内に、より侵入し難くすることができ、塗布液を無駄に消費することがなくなる。
【0046】
図5は、本発明の第5の実施形態を示す図であり、(a)は全体構成を示す図、(b)は図(a)のC−C線に沿った断面図である。
この実施形態では、リザーバ室4内に第2の隔壁30を形成しており、この隔壁30の中心に、中継芯10を挿通させる貫通孔30aを形成している。この場合、貫通孔30aに、上述した当接部2Aと同様な当接部30Aを形成しておくことで、隔壁2の貫通孔2aから流出した塗布液は、隔壁2と隔壁30との間に僅かに流出するものの、塗布部側には流出し難くなるため、上記した第4実施形態と同様、リザーバ室4内に液体吸収体12を配設しなくても、塗布部側での液体リッチ状態を防止することが可能となる。勿論、隔壁2の貫通孔2aにも、同様な当接部を形成しても良いし、リザーバ室4に液体吸収体を配設しても良い。
【0047】
図6は、本発明の第6の実施形態を示す図である。
この実施形態では、貯留室3内に収容される塗布液Hの初期収容量を、前記本体1を水平面Pに載置した状態で、隔壁延出部2bから突出する中継芯(中継芯が露出する端部領域10a)に接しない位置に設定している。
【0048】
このような構成では、貯留室3内に収容されている塗布液Hは、本体1を水平状態にしたり姿勢変化で塗布部8を下側にしても、中継芯10を介して多量に塗布部側に流れることがなくなり、また、隔壁延出部2bと中継芯10との間の隙間に流入する量も減るため、塗布部8側での液体リッチ状態を効果的に防止できると共に、塗布液の無駄な消費を抑制することが可能となる。
【0049】
図7は、本発明の第7の実施形態を示す図である。
この実施形態では、貯留室3内に収容される塗布液Hの初期収容量を、塗布部8が上向きとなるように本体1を水平面Pに載置した状態で、隔壁延出部2bの端面に接しない位置に設定している。
【0050】
このような構成では、塗布部8を上向きにして本体1を載置している状態では、貯留室3内に収容されている塗布液は、隔壁延出部2bと中継芯10との間の隙間に流入することがなくなり、塗布部8側での液体リッチ状態を確実に防止できると共に、液体の無駄な消費を抑制することが可能となる。さらに、図7に示す状態において、急激に温度上昇したり、或いは、その状態から姿勢変化させても、隔壁延出部2bと中継芯10との間の隙間に塗布液が流入しないか、もしくは流入し難いことから、塗布部8側での液体リッチ状態を、より効果的に防止することが可能となる。
【0051】
図8は、本発明の第8の実施形態を示す図である。
この実施形態では、リザーバ室4内に配設される液体吸収体12について、貯留室3側の気孔率を低く、塗布部8の気孔率を高くなるように構成している。具体的には、単一材料で構成される液体吸収体12を、前記隔壁2と一体形成されるホルダ2Dに嵌合させると共に、ホルダ2Dに小径保持部2fと大径保持部2gを形成することで、液体吸収体12の気孔率を簡単な構成で変化させるようにしている。すなわち、貯留室側の小径保持部2fでは、圧縮力が強く、液体吸収体12の気孔率が低くなり(符号Yで示す領域)、塗布部側の大径保持部2gでは、圧縮力が弱く、液体吸収体12の気孔率が高くなる(符号Xで示す領域)ようにしている。
【0052】
このような構成では、塗布液が隔壁2の貫通孔2aを介して液体吸収体12に流入しても、その塗布液は気孔率が低く設定された貯留室3側に保持されることから、液体吸収体12内において、貯留室側に塗布液によるシールが形成されるようになる。このため、貯留室3側からの塗布液の流入を抑制して、塗布液の無駄な消費をより効果的に抑制することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上述した実施形態では、液体供給装置として、化粧用具であるアイライナーを例示して説明したが、それ以外にも、各種液体を収容して塗布する装置、例えば、筆記具、スタンプ、シューズクリーナ、白髪染め等に適用することが可能である。この場合、中継芯と連結される塗布部や、本体1の形状や液体の収容量については、使用用途に応じて適宜変形することが可能である。
【0054】
また、上述した実施形態における中継芯10に被覆されるカバー11については、中継芯10の外周面に沿って軸方向全てに被覆されていることが好ましいが、部分的に切欠部が形成されていても良い。また、前記カバー11については、中継芯10が嵌入できる部材として構成し、これを隔壁2と一体構造としても良く、隔壁延出部2bについては、隔壁2と別体で構成しても良い。また、隔壁延出部2bによって規定される隙間G´については、隔壁2の隙間Gと連続した同一形状で無くても良い。
【0055】
また、上記した実施形態では、本体1に予め液体を収容した例について説明したが、液体を収容していない単なる容器として構成されたものであっても良い。すなわち、その容器を購入したユーザが、使用態様に応じて、各種の液体を貯留室3に収容し、塗布部8で塗布するような容器として構成されていても良い。このような構成では、上述した各実施形態で得られる作用効果が得られると共に、単に、尾栓5を取り外すだけで、簡単に貯留室3に液体を充填することが可能となる。また、上述した実施形態において、塗布部8側にキャップを装着したり、尾栓5を着脱できないように構成しても良い。
さらに、上述した各実施形態における構成部材は、その装置の使用態様、収容される液体の種類等に応じて、適宜、他の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 本体
2 隔壁
2a 貫通孔
2b 隔壁延出部
3 貯留室(液体貯留室)
4 リザーバ室
8 塗布部
10 中継芯
12 液体吸収体
G、G´ 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を有する本体と、
前記空洞部を、液体が貯留される液体貯留室と大気に連通するリザーバ室に分割すると共に、中央部に貫通孔が形成された隔壁と、
前記本体に設けられ、前記液体貯留室内の液体を塗布する塗布部と、
前記液体貯留室内の液体を前記塗布部に供給すると共に、前記貫通孔の内壁に対して所定の隙間をもって挿通される多孔質の中継芯と、
前記隔壁から液体貯留室側に突出すると共に前記中継芯の外周面と所定の隙間を有し、中継芯の先端が液体貯留室内に突出するように中継芯を挿通させる隔壁延出部と、
を備え、
前記隔壁延出部には、前記液体貯留室側において、挿通される中継芯に対して2箇所以上当接する当接部が形成されており、
前記中継芯の外周面には、少なくとも前記隔壁から当接部に至る範囲にカバーが被覆されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記リザーバ室には、前記中継芯を貫通させ、かつ、液体を含浸保持可能な液体吸収体が設けられており、
前記液体吸収体内の中継芯の外周面に前記カバーを被覆したことを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記中継芯の外周面には、液体吸収体内の一部において、前記カバーを被覆しない領域が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記隔壁の貫通孔に、挿通される中継芯に対して2箇所以上当接する当接部を形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記隔壁延出部から突出する中継芯の外周面に、突出端領域を除いて前記カバーを被覆したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記液体吸収体は、前記液体貯留室側の気孔率が低く、塗布部側の気孔率が高く設定されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記液体貯留室内に収容される液体の初期収容量は、前記本体を水平面に載置した状態で、前記隔壁延出部から突出する中継芯に接しない位置に設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項8】
前記液体貯留室内に収容される液体の初期収容量は、前記塗布部が上向きとなるように前記本体を水平面に載置した状態で、前記隔壁延出部の端面に接しない位置に設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102910(P2013−102910A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248209(P2011−248209)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(511275681)株式会社3S (1)
【Fターム(参考)】