説明

液体充填装置

【課題】絞り弁の開度調整を数値管理することができ、開閉調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、良好な液体充填を実行することができる液体充填装置を提供すること。
【解決手段】充填する液体Lを貯留するタンク2と、容器Aに液体Lを注入する充填ノズル3と、タンク2と充填ノズル3との間に配設され液流路5と、流体アクチュエータ14によって駆動されて液流路の開閉操作を行う充填バルブ6とを備える液体充填装置であって、流体アクチュエータ14に対して作動用流体を給排させて出力用のプランジャ15を進退駆動させる第1流体流路19および第2流体流路20のそれぞれに作動用流体の給排量を制御する絞り弁21、22を設け、絞り弁21、22の開閉度を数値制御する電動アクチュエータを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンディングパウチ、アンプル、壜等の容器に液体を定量充填するための液体充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填包装業界等においては、容器へ定量充填するために、その充填経路における充填ノズルの手前に充填バルブを設け、この充填バルブを作動させることにより、充填開始および停止あるいはその充填流量の調整等が行われている。
【0003】
この種の充填バルブにおいては、流体アクチュエータの進退駆動によって開閉動作するように形成されているものが多い。また、流体アクチュエータとしては、最大作動範囲の途中においても停止可能な多位置式のものも利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−225894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流量計や重量計を用いて充填量を制御する充填機においては、容器に対する定量充填を精度よく実行するためには、充填バルブの開閉動作のタイミング、より具体的には充填バルブの駆動源である流体アクチュエータの出力用のプランジャの進退動作の開始から終了までの作動時間を所定時間に設定することが肝要である。
【0006】
そこで、従来においては、絞り弁(スピードコントローラー)によって流体アクチュエータに対する流体の給排量を制御して、流体アクチュエータの動作速度の調整を行っている。
【0007】
そして、容器に充填する液種が変わる度に、充填バルブの開閉スピードを変化させ適切な充填を行わせるために絞り弁の流体の給排量を調整している。
【0008】
しかしながら、従来の絞り弁の開度調整は内蔵されているニードル弁の開度を手動で行うものであるために、再現性がなく、精度の高い開度調整を行うには高度な熟練を要するとともに非常に困難な作業を伴い、実際には実施をしないことも多い。
【0009】
このように従来の絞り弁は人手によって設定するため、次のような不都合があった。
【0010】
即ち、絞り弁の開閉度の設定は、数値管理できず再現性がなかった。また、設定のために開度調整用の目盛りがついていても、微妙な調整ができず、調整者の熟練度に頼っていた。また、絞り弁にも個体差があり、同じ様に調整したつもりでも、実際には違った設定となってしまうことが多い。従って、開度調整に長時間を要するものであった。
【0011】
また、複数の容器に対して同時に充填する充填機においては、各容器毎に設けた複数個の充填バルブを有するため、各充填バルブに設置している絞り弁の流量調整を行って全ての充填バルブの開閉を均一化することが難しかった。
【0012】
また、運転を継続している間に、絞り弁においては汚れ・詰まりなどにより経路の抵抗に変化が発生し、流体アクチュエータにおいては経年劣化が発生するので、各種の運転条件が初期設定と異なってくるため、結果的に充填に大きな支障が出ることがあった。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、絞り弁の開度調整を数値管理することができ、当該開度調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、当該絞り弁によって流体アクチュエータの動作速度を適正に制御することができ、ひいては充填バルブの開閉速度の調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行して良好な液体充填を施すことができる液体充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る液体充填装置は、充填する液体を貯留するタンクと、容器に前記液体を注入する充填ノズルと、前記タンクと前記充填ノズルとの間に配設された液流路と、流体アクチュエータによって駆動されて前記液流路の開閉操作を行う充填バルブとを備える液体充填装置であって、前記流体アクチュエータに対して作動用流体を給排させて出力用のプランジャを進退駆動させる第1流体流路および第2流体流路のそれぞれに作動用流体の給排量を制御する絞り弁を設け、当該絞り弁の開閉度を数値制御する電動アクチュエータを設けたことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、電動アクチュエータによって絞り弁の開閉度を数値制御することができ、当該絞り弁の開度調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、当該絞り弁によって流体アクチュエータの動作速度を適正に制御することができ、ひいては充填ノズルに繋がる液流路の開閉操作を行う充填バルブの開閉速度の調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、液体の充填を良好に実行することができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様に係る液体充填装置は、前記絞り弁の開閉度が、前記プランジャおよび充填バルブの可動部の移動開始から所定位置に到達するまでの作動時間を設定することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、流体アクチュエータのプランジャおよび充填バルブの可動部の移動開始から所定位置に到達するまでの作動時間を数値制御することができ、より一層適正な充填作業を実行することができる。
【0018】
また、本発明の第3の態様に係る液体充填装置は、前記絞り弁の電動アクチュエータの駆動を制御する制御器を設け、前記プランジャおよび充填バルブの可動部が移動開始点および移動終了点に到達したことを検知する位置検知器を設け、前記制御器は、前記位置検知器によって検知された前記可動部の位置情報に基づいて前記可動部の作動時間を演算するとともに当該作動時間を所定時間に合わせるように前記電動アクチュエータの駆動を調整することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、位置検知器によって検知されたプランジャおよび充填バルブの可動部の位置情報を制御器にフィードバックしながら、制御器によって可動部の作動時間を演算するとともに当該作動時間を所定時間に合わせるように電動アクチュエータの駆動を自動調整することができる。従って、充填条件の初期設定を自動的に行うことができ、途中の構成各部の経年変化に対応して絞り弁の作動時間を自動的に適正値に変更することができ、常に適正な充填を実行することができる。
【0020】
また、本発明の第4の態様に係る液体充填装置は、前記タンクには、複数の前記液流路が分岐接続されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、分岐された複数の液流路にはそれぞれ前記充填ノズルおよび前記充填バルブが設置されているので、複数の充填バルブを有する液体充填装置においても、全部の充填バルブを同じ状態に保ちながら複数の容器に対して同時に適正な充填を実行することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液体充填装置によれば、絞り弁の開度調整を数値管理することができ、当該開度調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、当該絞り弁によって流体アクチュエータの動作速度を適正に制御することができ、ひいては充填バルブの開閉速度の調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行して良好な液体充填を施すことができるという優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る液体充填装置の一実施形態を示す概略側面図
【図2】図1に示す本発明に係る液体充填装置の可撓性チューブの全開状態を示す要部の拡大一部断面図
【図3】図1に示す本発明に係る液体充填装置の可撓性チューブの半開状態を示す要部の拡大一部断面図
【図4】図1に示す本発明に係る液体充填装置の可撓性チューブの全閉状態を示す要部の拡大一部断面図
【図5】図1に示す本発明に係る液体充填装置の絞り弁の一例を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る液体充填装置の実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0025】
本実施形態の液体充填装置は、図1に示すように、テーブル1上に載置した容器Aに対し、食品等の液体の定量の充填処理が行われるものであり、充填する液体Lを貯留するタンク2と、充填部位において容器Aの上方に位置される充填ノズル3と、タンク2と充填ノズル3との間を接続させる配管4を有する液流路5と、液流路5の開閉操作を行う充填バルブ6とを備えている。本実施形態における充填バルブ6は、液流路5の一定区間に配設されて配管4と共に当該液流路5を構成する可撓性チューブ5aと、液流路5に沿って配置された壁部材7との間に可撓性チューブ5aを挟んで押圧し、液流路5の開閉操作を行う作動手段8とを備えている。
【0026】
ここで、図1乃至図5に示す一実施形態の液体充填装置において、可撓性チューブ5aは、液流路5に設けたゴム等の可撓性(弾性)を有する素材により断面円形のチューブ状に形成され、タンク2に接続された配管4の端末部に接続されている。
【0027】
作動手段8は、可撓性チューブ5aが配設された液流路5部分において、可撓性チューブ5aを押圧し、または、その押圧を解除することで、液流路5の開閉操作を行うものである。この作動手段8は、配管4からなる液流路5に付設した支持体9と、当該支持体9に植立されている枢軸10へ正逆回転自在に支持された回動体11と、当該回動体11の一側部(可撓性チューブ5a側)に軸12により支持されて、可撓性チューブ5aに当接する回転自在の押さえローラ13と、回動体11の他側部に接続されて回動体11を正逆回転させることで、押さえローラ13の可撓性チューブ5aに対する押し付け量を変化させる駆動源となる流体アクチュエータ14とによって形成されている。なお、以下においては、押さえローラ13の可撓性チューブ5aに対する押圧を弱めるときの回動体11の回転方向(図1において反時計方向)を「正方向」とし、押さえローラ13の可撓性チューブ5aに対する押圧を強めるときの回動体11の回転方向(図1において時計方向)を「逆方向」として説明する。
【0028】
ここで、押さえローラ13は、比較的硬質材により成形されており、可撓性チューブ5aの外側部においてその長さ方向の略中間部に当接するように配設されており、可撓性チューブ5aを押圧し、閉塞した際の内径(幅)より幅広の当接面を有する必要がある。本実施形態においては、押さえローラ13は、回動体11の回動に伴って、可撓性チューブ5aの外側面を円滑に転動し得る遊転状態にして軸12により取り付けられている。このように、押さえローラ13を回動体11に軸支し、可撓性チューブ5aとの係合時に自らが回転しつつ摺接させる構成とすることで、可撓性チューブ5aに対する押さえローラ13の当接時の摩擦を弱めることができ、可撓性チューブ5aの耐久寿命を長くすることができる。
【0029】
前記した流体アクチュエータ14は、エアー、オイル等の作動用流体を用いて、出力用のプランジャ15を進退駆動させて、プランジャ15に連結されている回動体11を介して押さえローラ13を枢軸10回りに回動させて可撓性チューブ5aの開け閉めを行うものである。流体アクチュエータ14は、シリンダ16の先端部分を支点17によって支持体9に枢着されているとともに、プランジャ15の先端を回動体11に軸18をもって取り付けられている。流体アクチュエータ14としては、プランジャ15の最大作動範囲の途中においても停止可能な多位置式のものを用いるとよい。
【0030】
本実施形態においては、流体アクチュエータ14のプランジャ15の進退位置を変更することによって可撓性チューブ5aの開閉状態を調整することとなる。具体的には、プランジャ15の最大退入位置(図1および図2参照)においては、押さえローラ13による可撓性チューブ5aに対する押し付けが行われない液流路5の全開状態となる。プランジャ15の中間進出位置(図3参照)においては、押さえローラ13を可撓性チューブ5aに軽く押し付けて液流路5の一部が流通する一部開放状態(図3において半開状態)となる。プランジャ15の最大進出位置(図4参照)においては、押さえローラ13を可撓性チューブ5aに強く押し付けて液流路5の全部が閉塞される全閉状態となる。これらの操作はその一つが選択的に行なわれる。
【0031】
プランジャ15の最大進出位置(図4参照)においては、押さえローラ13を可撓性チューブ5aに強く押し付けて液流路5の全部が閉塞される全閉状態としてから更に押さえローラ13を逆方向に回動させて、充填ノズル3内の液体Lを奥に引いて液体Lの漏れを防止する液漏れ防止状態となる。
【0032】
本実施形態においては、流体アクチュエータ14に対して作動用流体の1種であるエアーを給排させてプランジャ15を進退駆動させる第1流体流路19および第2流体流路20が、シリンダ16の先端部と後端部とにそれぞれ接続されている。各流路19、20の他端部は切替弁33を介してエアー源となるエアーコンプレッサ(図示せず)に接続されている。各流路19、20には、それぞれに流体アクチュエータ14に対するエアーの給排量を制御する絞り弁21、22が設けられている。各絞り弁21、22は、図5に共通して示すように、電動モータ23によってニードル弁24の開閉度を数値制御するように形成されている。具体的には、絞り弁21、22の筐体25内に形成されているL字状の流路26の途中にニードル弁24を形成する弁座27とニードル28とが設けられている。ニードル28は筐体25を貫通しており、先細の先端を弁座27に対して進退自在とされ、後端部を筐体25の外部に露出させている。筐体25の外部には、このニードル28の後端部を取り囲むとともに軸方向に連続したハウジング29が固着されている。このハウジング29の後端部に電動アクチュエータとしての電動モータ23が設置されており、その出力軸23aはニードル28に向けて同軸上に設置されている。ハウジング29内において、互いに軸方向に対向している出力軸23aとニードル28は、一方の出力軸23aに連結されたボールねじ30が、他方のニードル28に連結されたボールねじナット体31内に挿通するようにして両者が連結されている。そして、電動モータ23が出力軸23aを数値制御するようにして回転させると、互いに係合しているボールねじ30とボールねじナット体31との協同動作によってニードル28が弁座27に向けて進退させられて、ニードル弁24の開閉度が数値制御される。この駆動モータ23としては、ステッピングモータ、サーボモータ等の回転角度を数値制御可能なモータを利用することができる。各絞り弁21、22には、ニードル弁24の弁座27の外周と流路26の内周との間に円環状の弾性体からなる逆止弁32がそれぞれ設けられている。この逆止弁32は、シリンダ16に向かうエアーを通し、逆方向のエアーを止めるように動作する。なお、ニードル弁24と逆止弁32の構造は、本実施形態に限られずに他の公知の構造を用いてもよい。
【0033】
流体アクチュエータ14のプランジャ15を進出させる場合には、切替弁33によってエア源と第2流体流路20とを接続し、第1流体流路19を開放する。この状態で、第2流体流路20および絞り弁22の逆止弁32を通してエアーをシリンダ16内に導入するとともに、絞り弁21の開閉度をニードル弁24によって所定量に絞ってシリンダ16内から第1流体流路19を通して排出されるエアーの流量を調整して、プランジャ15の進出速度を調整しながら進出させることとなる。この際に、電動モータ23によってニードル弁24の開閉度を数値制御して絞り弁21の開閉度を数値制御し、プランジャ15の進出速度を数値制御することとなる。
【0034】
また、逆に流体アクチュエータ14のプランジャ15を退入させる場合には、切替弁33によってエア源と第1流体流路19とを接続し、第2流体流路20を開放する。この状態で、第1流体流路19および絞り弁21の逆止弁32を通してエアーをシリンダ16内に導入するとともに、絞り弁22の開閉度をニードル弁24によって所定量に絞ってシリンダ16内から第2流体流路20を通して排出されるエアーの流量を調整して、プランジャ15の退入速度を調整しながら退入させることとなる。この際に、電動モータ23によってニードル弁24の開閉度を数値制御して絞り弁22の開閉度を数値制御し、プランジャ15の退入速度を数値制御することとなる。
【0035】
なお、両流体流路19、20とエアー源との間に設置した切替弁33を、両流体流路19、20とエアー源とを遮断する位置または両流体流路19、20とエアー源とを接続する位置に切替えると、流体アクチュエータ14におけるプランジャ15の位置を所定位置に停止させることができる。
【0036】
このように本実施形態によれば、電動モータ23によって絞り弁21、22の開閉度を数値制御することにより、流体アクチュエータ14の可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13が移動開始点から所定位置の移動終了点に到達するまでの作動時間、即ち押さえローラ13による可撓性チューブ5aの開閉作動時間を数値制御することができる。
【0037】
本実施形態においては、図1に示すように、流体アクチュエータ14の可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の移動開始から所定位置に到達するまでの作動時間を自動的に設定するために絞り弁21、22の電動モータ23の駆動を制御する制御器34を設置している。流体アクチュエータ14には、可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の位置情報を検知するための位置検知器としてプランジャ位置検知器35a、35bをシリンダ16の外周面に固着している。一方のプランジャ位置検知器35aはプランジャ15が流体アクチュエータ14の進出端に到達したことを検知する位置に設置され、他方のプランジャ位置検知器35bはプランジャ15が流体アクチュエータ14の退入端に到達したことを検知する位置に設置されている。そして、各プランジャ位置検知器35a、35bからそれぞれが検知した可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の位置情報を示す信号を制御器34の演算部36に出力(フィードバック)するようにしている。制御器34には、液体Lの種類、充填容量、充填速度等の種々の作業条件に応じて予め適正値とされている各絞り弁21、22の開閉度に対応する電動モータ23による数値制御値や切替弁33の動作タイミング値や、動作プログラム等を記憶してあるメモリ37が設けられている。また、制御器34には、メモリ37から読出した電動モータ23による数値制御値や切替弁33の動作タイミング値等を電動モータ23および切替弁33に出力する指令出力部38が設けられている。前記演算部36は、プランジャ位置検知器35a、35bから受領した可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の位置情報に基づいて各可動部の実際の作動時間を演算し、指令出力部38からの指令情報に基づく各可動部の作動時間とを比較して、両者に差が有る場合には、差がなくなるまで電動モータ23による絞り弁21、22の開閉度を示す数値制御値を変更して指令出力部38に送出する。指令出力部38は変更された数値制御値を電動モータ23に出力する。また、制御器34には、液体Lの種類、充填容量、充填速度等の種々の作業条件を入力するタッチパネル等の入力部39、入力情報や演算部36の出力情報等を表示する液晶パネル等の表示部40、構成各部を関連動作させるCPU41等が設けられている。
【0038】
なお、本実施形態の液体充填装置は、容器Aに対する液体Lの充填量を検出するために図示しない公知の充填量検出手段を備えている。充填量検出手段は、いわゆる重量式・流量式の別を問わない。前記制御器34は、充填量検出手段により検出した充填量に基づき、切替弁33の切替位置を制御し、流体アクチュエータ14のプランジャ15の進退位置、これによって決定される回動体11の回動量を調整可能とされている。
【0039】
また、タンク2に対して複数の液流路5を分岐接続して、複数の容器Aに液体Lを充填する場合には、それぞれに図1に示す本実施形態と同一構成の液体充填装置を設けるとよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
<初期設定>
制御器34の入力部39および表示部40を用いて液体Lの種類、充填容量、充填速度等の種々の作業条件を入力すると、指令出力部38がメモリ37から読出した電動モータ23による数値制御値や切替弁33の動作タイミング値等を電動モータ23および切替弁33に出力する。
【0042】
例えば、流体アクチュエータ14のプランジャ15を最大退入位置から最大進出位置まで移動させるための指令(充填バルブ6の最大開放位置から全閉位置まで移動させるための指令に相当する)を受領した絞り弁21の電動モータ23はボールねじ30を数値制御によって所定量回転させる。これによりボールねじナット体31に連結されているニードル28が移動させられて絞り弁21のニードル弁24の開閉度が設定される。続いて切替弁33が作動して、エア源と第2流体流路20とを接続し、第1流体流路19を開放すると、第2流体流路20および絞り弁22の逆止弁32を通してエアーをシリンダ16内に導入するとともに、シリンダ16内から第1流体流路19および開閉度を数値制御された絞り弁21のニードル弁24を通してエアーが排出されて、プランジャ15が制御された速度で進出する。同時にこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13も充填バルブ6を最大開放位置から全閉位置まで移動させる方向に制御された速度で移動する。このプランジャ15の進出動作中の可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の位置情報はプランジャ位置検知器35a、35bによって検知されており、例えば、プランジャ15が流体アクチュエータ14の退入端(移動開始点)から移動して進出端(移動終了点)に到達した位置情報を示す信号が制御器34の演算部36に出力(フィードバック)される。この演算部36は、プランジャ位置検知器35a、35bから受領した可動部であるプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の位置情報に基づいて各可動部の実際の作動時間(最大移動範囲の移動時間)を演算し、先の指令出力部38からの指令情報に基づく各可動部の作動時間と比較し、両者に差がない場合には初期設定を終了し、両者に差が有る場合には、差がなくなるまで初期設定1が繰り返される。
【0043】
この初期設定の繰り返しにおいては、電動モータ23による絞り弁21、22の開閉度を示す数値制御値を変更して指令出力部38に送出することを繰り返す。この再試行の前には切替弁33の切替によってプランジャ15は最大退入位置に戻されている。具体的には、CPU41の指令によって、演算部36から再度指令を受領した指令出力部38は変更された数値制御値を絞り弁21の電動モータ23に出力し、ニードル弁24の開閉度が数値制御によって再度設定される。その後、前記と同様にして、プランジャ15の進出、プランジャ15等の可動部の位置情報のフィードバック等の一連の動作を行うことにより、最終的に各可動部が作動条件に合致した最大移動範囲の移動時間に基づいて移動できるように正確に設定される。
【0044】
また、プランジャ15を退入する逆方向に最大移動範囲を移動させる場合には、数値制御の対象を絞り弁21から絞り弁22に変えて同様にして行われる。
【0045】
この初期設定には、作業員による絞り弁21、22の流量調整作業が不要となり、短時間に、しかも精度よく確実に実行される。
【0046】
<充填動作>
充填開始前には、充填バルブ6の作動手段8における流体アクチュエータ14のプランジャ15を最大進出位置まで進出させて、回動体11を枢軸10を中心に逆方向に回動させて、回動体11の一側部に軸支した押さえローラ13を上方へ揺動移動させて、図4に示すように、可撓性チューブ5aを完全に閉塞させて、下側部の充填ノズル3へ流体Lが送り込まれないようにしておく。
【0047】
タンク2より自重若しくは加圧下で配管4に供給される流体Lは、液流路5を通して可撓性チューブ5a内に流入している。
【0048】
その後の液体Lの容器A内への充填は、液体Lが泡の立ちにくい性質を有する場合には、液流路5の全開状態、一部開放状態、全閉状態と順に進められ、液体Lが泡の立ち易い性質を有する場合には、液流路5の一部開放状態、全開状態、一部開放状態、全閉状態と順に進められる。
【0049】
以下においては、泡の立ち易い液体Lを充填する場合について説明する。
【0050】
<液流路5の一部開放状態による充填>
液体Lの泡立ちを抑えるため、充填バルブ6の開放度を絞ることによって充填初期において流路5の流量を絞ることが望ましい。
【0051】
充填バルブ6の開放度を絞るために、切替弁33によるエア源と第1流体流路19とを接続し、第2流体流路20を開放する時間長を、例えば流体アクチュエータ14のプランジャ15を最大進出位置から最大退入位置まで移動させるために必要な時間の約半分とする。その後、切替弁33をエアー源と両流路19、20との接続を遮断する位置または両流体流路19、20のいずれとも接続する位置に切替える。これによりプランジャ15が最大移動範囲の約半分退入するとともにその位置を保持する。これに伴って、回動体11が正方向に回動し、その一側部に取り付けた押さえローラ13が可撓性チューブ5aに対して下方へ揺動移動する。これにより、図3に示すように、可撓性チューブ5aは押さえローラ13による圧迫が一部解除され、可撓性チューブ5aの可撓性によりへこみが約半分復元して液流路5が一部開放状態となる。
【0052】
このようにして、可撓性チューブ5aには所定量が絞られた小流量の液流路5が形成されるので、流体Lは、その重力または当該流体への加圧により可撓性チューブ5a内の流路を落下する。そして、下側部の充填ノズル3から容器Aに液体Lが少しずつ充填されて、泡の発生が有効に抑えられる。
【0053】
<液流路5の全開状態による充填>
充填を短時間に達成するためには充填バルブ6の開放度を最大にすることによって大量充填をより長く行うことが望ましい。
【0054】
前記の泡の発生が有効に抑えられる時間の経過後に、切替弁33によってエアー源と両流路19、20との接続を遮断する状態または両流体流路19、20のいずれとも接続する状態から再びエア源と第1流体流路19とを接続し、かつ、第2流体流路20を開放する状態に切替え、流体アクチュエータ14のプランジャ15を約半分の退入位置から最大退入位置まで移動させる。これによりプランジャ15が最大退入位置まで退入するとともにその位置を保持する。プランジャ15の退入に伴って、回動体11が更に正方向に回動し、その一側部に取り付けた押さえローラ13が可撓性チューブ5aに対して下方へ揺動移動する。これにより、図2に示すように、押さえローラ13による可撓性チューブ5aの圧迫が解除され、可撓性チューブ5aの可撓性によりへこみが復元して液流路5が全開状態となる。
【0055】
このようにして可撓性チューブ5aの全内径量分の液体Lが流動するといういわゆる大容量充填が容器Aに対して下側部の充填ノズル3を通して行われる。
【0056】
<液流路5の一部開放状態による再充填>
容器Aの充填が終了近くなれば、その充填量等の精度を向上させるため、充填バルブ6の開放度を再び絞ることによって液流路5の流量を絞ることが望ましい。
【0057】
液体Lの大容量充填が所定時間実行された後に、充填バルブ6の開放度を再び絞るために、制御器34から指令を発して、例えばエア源と第2流体流路20とを接続し、第1流体流路19を開放する時間長を、流体アクチュエータ14のプランジャ15を最大退入位置から最大進出位置まで移動させるために必要な時間の約半分とする。その後、切替弁33をエアー源と両流路19、20との接続を遮断する位置または両流体流路19、20のいずれとも接続する位置に切替える。これによりプランジャ15が最大退入位置から最大移動範囲の約半分進出するとともにその位置を保持する。これに伴って、回動体11が逆向に回動し、その一側部に取り付けた押さえローラ13が可撓性チューブ5aに対して上方へ揺動移動する。これにより、図3に示すように、可撓性チューブ5aは押さえローラ13によって一部を圧迫されてへこみ、液流路5が一部開放状態となる。
【0058】
このようにして、可撓性チューブ5aには流量が絞られた小流量の液流路5が形成されるので、流体Lは、その重力または当該流体への加圧により可撓性チューブ5a内の流路を落下する。そして、下側部の充填ノズル3から容器Aに液体Lが少しずつ充填される。
【0059】
<液流路5の全閉塞状態による充填終了>
流体Lの規定量が容器A内に充填される直前になると、制御器34から指令を発して、切替弁33によってエアー源と両流路19、20との接続を遮断する状態または両流体流路19、20のいずれとも接続する状態から再びエア源と第2流体流路20とを接続し、かつ、第1流体流路19を開放する状態に切替え、流体アクチュエータ14のプランジャ15を約半分の進出位置から最大進出位置まで移動させる。これによりプランジャ15が最大進出位置まで進出するとともにその位置を保持する。プランジャ15の進出に伴って、回動体11が更に逆方向に回動し、その一側部に取り付けた押さえローラ13が可撓性チューブ5aに対して上方へ揺動移動する。これにより、図4に示すように、押さえローラ13が可撓性チューブ5aを圧迫し、ついにはその液流路5を全閉にするため、該液流路5を流動していた液体Lはその流動が停止され、充填が終了する。このとき、上方へ揺動移動する押さえローラ13により、該押さえローラ13の下部に位置する液流路5a部に残存する流体は、図4において矢印pの方向へ吸い上げられるため、充填ノズル3の先端部において液体Lが液垂れしようとしても、該充填ノズル3内に引き戻され、液垂れを生じない(サックバック効果)。
【0060】
なお、本実施形態においては、押さえローラ13をばね等の弾性手段(図示せず)によって常に可撓性チューブ5aを全閉状態に圧迫する弾力を回動体11に付与してあるので、例え、作動手段8における液体アクチュエータ14に対するエアー供給がなくなっても、前記弾性手段による弾力により回動体11を回動させ続け、押さえローラ13を可撓性チューブ5aに圧接させて全閉状態に維持するため、不必要な流体の流動を生じさせず安全である。
【0061】
このように本実施形態によれば、電動アクチュエータとしての電動モータ23によって絞り弁21、22の開閉度を数値制御することができ、当該絞り弁21、22の開度調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができる。この絞り弁によって流体アクチュエータ14の動作速度を適正に制御することができ、ひいては充填ノズル3に繋がる液流路5の開閉操作を行う充填バルブ6の開閉速度の調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、液体の充填を良好に実行することができる。
【0062】
また、流体アクチュエータ14の出力用のプランジャ15およびこのプランジャ15に連結されている充填バルブ6の可動部である回動体11および押さえローラ13の移動開始から所定位置に到達するまでの作動時間を数値制御することができ、より一層適正な充填作業を実行することができる。また、絞り弁21、22の電動モータ23の駆動を制御する制御器34を設け、プランジャ15および充填バルブ6の可動部が移動開始点および移動終了点に到達したことを検知する位置検知器としてのプランジャ位置検知器35a、35bを設けているので、プランジャ位置検知器35a、35bによって検知された各可動部の位置情報を制御器34にフィードバックしながら、制御器34によって各可動部の作動時間を演算するとともに当該作動時間を所定時間に合わせるように電動モータ23の駆動を自動調整することができる。従って、充填条件の初期設定を自動的に行うことができ、途中の構成各部の経年変化に対応して絞り弁21、22の作動時間を自動的に適正値に変更することができ、常に適正な充填を実行することができる。また、タンク2に複数の液流路5を分岐接続して、それぞれに図1に示す本実施形態と同一構成の液体充填装置を設けると、全部の充填バルブ6を同じ状態に保ちながら複数の容器Aに対して同時に適正な充填を実行することができる。
【0063】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0064】
例えば、前記実施形態における充填バルブ6に代えて公知の充填バルブを用いて前記実施形態の流体アクチュエータ14によって駆動するとよい。また、電動アクチュエータとしては、電動モータに代えてソレノイドによって電気的に可動子を往復動させるもの等のように数値制御可能なアクチュエータを用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
3 充填ノズル
5 液流路
5a 可撓性チューブ
6 充填バルブ
7 壁部材
8 作動手段
13 押さえローラ
14 流体アクチュエータ
15 プランジャ
19 第1流体流路
20 第2流体流路
21、22 絞り弁
23 電動モータ
34 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填する液体を貯留するタンクと、容器に前記液体を注入する充填ノズルと、前記タンクと前記充填ノズルとの間に配設された液流路と、流体アクチュエータによって駆動されて前記液流路の開閉操作を行う充填バルブとを備える液体充填装置であって、
前記流体アクチュエータに対して流体を給排させてプランジャを進退駆動させる第1流体流路および第2流体流路のそれぞれに作動用流体の給排量を制御する絞り弁を設け、当該絞り弁の開閉度を数値制御する電動アクチュエータを設けた
ことを特徴とする液体充填装置。
【請求項2】
前記絞り弁の開閉度は、前記プランジャおよび充填バルブの可動部の移動開始から所定位置に到達するまでの作動時間を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体充填装置。
【請求項3】
前記絞り弁の電動アクチュエータの駆動を制御する制御器を設け、
前記プランジャおよび充填バルブの可動部が移動開始点および移動終了点に到達したことを検知する位置検知器を設け、
前記制御器は、前記位置検知器によって検知された前記可動部の位置情報に基づいて前記可動部の作動時間を演算するとともに当該作動時間を所定時間に合わせるように前記電動アクチュエータの駆動を調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の液体充填装置。
【請求項4】
前記タンクには、複数の前記液流路が分岐接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79101(P2013−79101A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220867(P2011−220867)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(390029090)靜甲株式会社 (30)
【Fターム(参考)】