説明

液体入浴剤

【課題】皮膚保湿効果が高く、かつ浴水が透明感のある乳清色になるエマルション型液体入浴剤の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)を含有し、エマルション粒子のメジアン粒子径が0.1〜0.4μmであるエマルション型液体入浴剤。
(A)ワセリンを含む炭化水素系油剤を入浴剤中10〜40質量%含む油性成分10〜45質量%
(B)モノエステルを35モル%以上含むポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩0.1〜5質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保湿性が高く、かつ入浴剤を添加した際に浴水が透明感のある乳清色を呈するエマルション型液体入浴剤に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴は、身体を清潔にし、精神的にリラックスさせる効果を有する。かかる入浴に際し、芳香によるリラックス効果得るため、また血行促進効果を増強する目的で種々の入浴剤が用いられている。入浴剤には、一般に、肌からの油分の喪失の防止、入浴後の肌のかさつき防止の目的で、油性成分を配合している。
【0003】
油性成分を配合した液状入浴剤は、浴水に投入したときに乳化する自己乳化型の入浴剤と、予め乳化されているエマルション型の入浴剤の2種に大別される。前者の自己乳化型入浴剤は、浴水に添加した際に乳化するという特殊な性質をもつため、油剤量を多くできる反面、種類が限定される傾向がある。それに対し、エマルション型入浴剤は比較的多様な油剤を配合できる。そこで、エマルション型入浴剤は、多様な油剤を組成物中に安定に配合するため、例えば平均HLBが8〜14の非イオン界面活性剤と色素を配合する方法(特許文献1)、非イオン界面活性剤と特定の多価アルコールを配合する方法(特許文献2)が行なわれている。
【特許文献1】特開平6−92839号公報
【特許文献2】特開平10−101547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、十分な皮膚保湿効果を得るため油剤量を多くした場合、入浴剤を添加した浴水が真白になり、濁りが強すぎる傾向がある。濁りが強すぎると、例えば乳児等を入浴させる場合に、乳児の肌を観察することに適さなくなる。また、多量の油剤により入浴後の肌がべたつく傾向も十分に改善できなかった。
従って、本発明の目的は、十分な皮膚保湿効果を有しつつ、浴水に投入した際に透明感のある乳清色を呈するエマルション型液体入浴剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、十分な皮膚保湿効果と浴水の透明感という相反する課題を解決すべく種々検討した結果、ワセリンを含む炭化水素系油剤を一定量含む油性成分と、特定の構造を有するリン酸エステルとを組み合せて配合することにより、粒子径が小さく、透明感のある乳清色を呈するエマルション型液体入浴剤が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は次の成分(A)及び(B)を含有し、エマルション粒子のメジアン粒子径が0.1〜0.4μmであるエマルション型液体入浴剤を提供するものである。
(A)ワセリンを含む炭化水素系油剤を入浴剤中10〜40質量%含む油性成分10〜45質量%
(B)モノエステルを35モル%以上含むポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩0.1〜5質量%
【発明の効果】
【0007】
本発明の入浴剤は、優れた皮膚保湿効果を有するとともに、入浴剤を添加した浴水が透明感のある乳清色を呈する。従って、乳児等を入浴させる際、親が乳児の肌状態等を視認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の入浴剤に用いられる油性成分(A)は、少なくともワセリンを含む炭化水素系油剤を入浴剤中10〜40質量%含むものである。必須成分であるワセリンは、皮膚保湿効果の点から、入浴剤中に1〜10質量%用いるのが好ましく、更に3〜8質量%用いるのがより好ましい。また、ワセリン以外の炭化水素系油剤としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、マイクロクリスタンワックス、オゾケライト、セレシン、プリスタン等が挙げられる。特に、浴水に添加した際に、浴水が透明感を呈するような入浴剤を得る点から、ワセリン以外の炭化水素系油剤は25℃で液状であることが好ましく、たとえば流動パラフィンを含むことが特に好ましい。
【0009】
当該炭化水素系油剤は、皮膚保湿効果及び浴水に溶解した際に浴水の透明感を得る点から、入浴剤中に10〜40質量%含有することが必要である。10質量%未満では皮膚へ十分な保湿効果を与えることができず、反対に40質量%を超えるとべたつきの原因ともなり、また乳清色の浴水を得ることが難しい。特に、良好な皮膚保湿効果と浴水に溶解した際に透明感のある乳清色を呈する入浴剤を得る点から、炭化水素系油剤の好ましい含有量は、15〜35質量%である。
【0010】
炭化水素系油剤以外の油性成分としては、オクタン酸セチル、アジピン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸グリセリド、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸コレステリル等のエステル系油剤;糠油、オリーブ油、ホホバ油、大豆油、アーモンド油、オリーブ油、ヒノキ油、桂皮油、ひまし油、ヤシ油、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズ油、セージ油等の植物油;セラミド、脂肪酸、ミツロウ、カルナウバロウ等の固体油性成分;ラノリン等が挙げられる。
【0011】
入浴剤中の油性成分(A)の含有量は、皮膚保湿効果、浴水に溶解した際に透明感のある乳清色の入浴剤を得る点から10〜45質量%が好ましく、特に好ましくは15〜40質量%である。
【0012】
本発明の入浴剤においては、入浴剤を浴水に投入したときに、油性成分の粒子径が小さく安定な乳化系であって、透明感のある乳化系とする上で、ポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩(B)を乳化剤として含有させることが必要である。ポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩のポリオキシエチレン数は、1〜20が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜7が特に好ましい。また、アルキル鎖はC10−C14である。
【0013】
また、本発明で用いるポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステルとしては、少なくともモノエステルを35モル%以上含むものであるが、特に35〜65モル%、更に40〜60モル%含むものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアルギニン等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0014】
また、ポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステルは、乳化粒子を小さくし、かつ安定なものとする点からトリエステルの含有量が少ないことが好ましく、特に10モル%以下、更に5モル%以下が好ましい。更に、モノエステルとジエステルとのモル比率は、35〜65:65〜35が好ましく、更に40〜60:60〜40が好ましい。
【0015】
当該リン酸エステルは、入浴剤中に0.1〜5質量%含まれるが、乳化粒子を小さくし、かつ安定なものとする点で、好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは1〜4質量%含有できる。
【0016】
本発明の入浴剤は、エマルション型液体入浴剤であり、水中油型エマルションを形成しており、エマルション粒子のメジアン粒子径は0.1〜0.4μmであるが、べたつき防止、浴水の透明性の確保の点から0.1〜0.3μmが好ましい。ここで、粒子径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社、LA−910)によって測定できる。
【0017】
本発明の入浴剤には、上記成分以外に、(B)以外の界面活性剤、無機又は有機酸類、生薬/植物エキス/ビタミン類等の薬効成分、多糖/蛋白/アミノ酸/酵素類、アルコール類又は多価アルコール類、水溶性高分子類、香料、染料/色素/顔料等を配合することができる。
【0018】
(B)ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル以外の他の界面活性剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤;並びに各種のカチオン性界面活性剤や両性界面活性剤が挙げられる。特に、乳化安定性の点からノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0019】
無機塩類としては、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸鉄燐酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硼酸、メタ珪酸、無水珪酸等が挙げられる。有機酸類としては、安息香酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、ピロリドンカルボン酸、コハク酸、リンゴ酸やその塩類等が挙げられる。
【0020】
生薬/植物エキス/ビタミン類としては、ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コクボク、センキュウ、橙皮、トウキ、ショウキョウ末、ニンジン、ケイヒ、シャクヤク、ハッカ葉、オウゴン、サンシン、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、リュウノウ、サフラン、オウバクエキス、チンピ、ウイキョウ、カンピ末、カミツレ、アロエ、アロエベラ、メリッサ、ローズマリー、マロニエ、西洋ノコギリ草、米糠エキス、オニオンエキスやガーリックエキス、アルニカ、ビタミンA、B、C、D、E、F、K等が挙げられる。
【0021】
多糖/蛋白/アミノ酸/酵素類としては、澱粉、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ヒブロイン、カゼインやその誘導体、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン等のアミノ酸、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素類、核酸(DNA、RNA)等が挙げられる。
【0022】
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、(イソ)ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。
【0023】
水溶性高分子類としては、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0024】
香料としては、各種精油、例えばジャスミン、カモミル、ネロリ、はっか、レモン、ペルペナ、シトロネラ、カヤプテ、サルピア、タイム、ローズマリー、ヒソップ、ページル、ペリラ、マジョラム、ローレル、ジュニパーベリー、ナッツメグ、ジンジャー、オニオン、ガーリック、ベルガモット、クラリーセージ、ペパーミント、ジャスミン、プチグレン、ナッツメグ、シナモン、クローブ、メース、オレンジ、樟脳、アルテミジア、サルビア、サンダルウッド油、コスタス油、ラブダナム油等、蟻酸、酢酸、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸エステル、亜硝酸アミル、トリメチルシクロヘキサノール、アリルサルファイド等の覚醒用香料や、ノニルアルコール、デシルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸メチル、炭酸エチル等の催眠用香料や、フェニル酢酸エステル、グアヤコール、インドール、クレゾール、チオフェノール、p−ジクロロベンゼン、p−メチルキノリン、イソキノリン、ピリジン、有機アミン類、カンファー、メルカプタン、アンモニア、硫化水素等の食欲抑制用香料や、カルボン、エストラゴール、エレモール等の食欲促進用香料や、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ロジノール等の不安解消・抗うつ用香料や、その他の香料として、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、アブシンス油酢酸、アンバー、ムスク、α−ピネン、リモネン、サリチル酸メチル、テルペン系化合物等が挙げられる。
【0025】
染料/色素/顔料類としては、赤色106号、赤色2号、黄色4号、緑色3号、青色1号、赤色213号、橙色205号、黄色202号の1、緑色204号、青色2号等の厚生省令タール色素別表I及びIIの色素、クロロフィル、リボフラビン、アンナット、カンタキサンチン、クロシン、コチニール、べにばな、アントラキノン等の食品添加剤として認められる天然色素や酸化チタン、酸化亜鉛、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(ベンガラ)、黒色酸化鉄、群青等の無機顔料が挙げられる。
【0026】
また、本発明の入浴剤は、皮膚への刺激性の点から弱酸性であるのが好ましく、特にpH4〜7、さらにpH4〜6.8であるのが好ましい。また、その粘度は投入しやすさ、分散性の点から20〜8000mPa・s、特に50〜5000mPa・s、更に50〜1000mPa・sであるのが好ましい。
【0027】
本発明の入浴剤は、前記成分を混合して乳化させることにより製造できる。その乳化系は長期間安定である。
【実施例】
【0028】
実施例1及び比較例1
香料及び精製水以外の成分を80℃で攪拌混合し、溶解した後攪拌しながら精製水を徐々に添加した。香料を添加攪拌後、室温まで冷却し、エマルション型液体入浴剤を調整した。
【0029】
[保湿効果]
5L40℃のお湯に実施例1又は比較例1を1.5g添加し十分攪拌した。これに、健常成人3人の左右それぞれの前腕部を20分間湯浸した。処理前後の角層水分量をインピーダンスメーター(IBS社)にて測定した。
【0030】
また、しっとり感の官能評価も同時に行い、得られた結果を表1に示す。しっとり感の評価は3:「しっとりする」、2:「ややしっとりする」、1:「しっとりしない」の3段階で評価した。
【0031】
[浴水透明度]
浴槽に40℃150Lのお湯を入れ、実施例1及び比較例1を40mL投入し十分攪拌した。直径5cmの円形の黒色ゴム板を浴水に沈め、完全に見えなくなる深度を透明度とし測定した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1より、本発明の入浴剤は、乳清色で透明感があり、お湯の内部が視認できるものであった。これに対し、モノエステルを35モル%以上含むポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩を含有しない入浴剤は、保湿効果も十分でなく、かつ乳白色でお湯の内部が視認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含有し、エマルション粒子のメジアン粒子径が0.1〜0.4μmであるエマルション型液体入浴剤。
(A)ワセリンを含む炭化水素系油剤を入浴剤中10〜40質量%含む油性成分10〜45質量%
(B)モノエステルを35モル%以上含むポリオキシエチレンC10−C14アルキルリン酸エステル又はその塩0.1〜5質量%
【請求項2】
成分(B)中のトリエステル含有量が、10モル%以下である請求項1記載の液体入浴剤。
【請求項3】
成分(B)のモノエステル:ジエステルのモル比率が35:65〜65:35である請求項1記載の液体入浴剤。

【公開番号】特開2008−81426(P2008−81426A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261819(P2006−261819)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】