説明

液体加圧容器

【課題】加圧気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めない液体加圧容器を提供すること。
【解決手段】液体加圧容器10は、液体と気体の境界面に浮かぶフロート20を備え、フロートの周縁21と、容器11の内壁111との隙間12の範囲は、加圧部30の減圧によって液体に溶け込んだ気体から発生した気泡、又は外部から混入した気泡が抜ける隙間12以上であり、加圧部30の加圧によって気体が液体に溶け込む量が所定の量の隙間12以下である。さらに、フロート20の底面22は円錐形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の溶け込みを軽減した液体加圧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラントや鉄鋼プラントで使用されている中型の流量計や大型の流量計を校正するために、それぞれ中流量や大流量の液体流量校正設備が存在する。
【0003】
従来の液体流量校正設備の概要を説明する。図8は、従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。図8において、液体流量校正設備は、液体を溜めた試験液タンク906から液体を試験管路908に導き、試験管路908において安定な流れを発生させる。発生させた安定な流れは、試験管路908に設けた流量計905を通過し、サンプルノズル902と秤量容器907との間に設けたダイバータ901を経由して秤量容器907に流入する。その後、液体流量校正設備は、所定時間(流入時間)経過後、ダイバータ901により流れを高速で切り替えて、秤量容器907への液体の流入を停止させる。そして、液体流量校正設備は、秤量容器907へ流入した液体の流入量と流入時間とから単位時間あたりの液体の流量を求め、求めた流量と、流量計905によって計測された流量とにより、流量計905を校正する。
【0004】
このような液体流量校正設備において、流量計の校正等を行うために、液体を流す必要がある場合、試験液タンク906に液体を入れ上部から気体で加圧して液体を送り出す方法が使用される。このような液体を送り出す方法では、試験液タンク906内の液体面全面に加圧気体が接し、液体内に加圧に使用している気体が溶け込む。液体内に溶け込んだ気体は、液体圧力が大気圧になる等、減圧されたときに気体に戻り、気泡が発生する。このような気泡が、液体と共に試験管路908を流れると、流量が一定とならないので、流量計の校正等を行う際に支障となる。
【0005】
図3は、従来の液体加圧容器911を示す図である。図3(1)及び液体加圧容器911を上部から見た図3(2)が示すように、従来の液体加圧容器911では、液体101の全面に加圧した気体102が接し、接している気体102を加圧すると加圧された気体102が液体101に溶け込む。
【0006】
図5は、従来のダイヤフラム920を有する液体加圧容器911を示す図である。従来のダイヤフラム920を有する液体加圧容器911では、加圧された気体102は、液体101に溶け込まないが、減圧されると、液体101中にすでに溶け込んでいる気体による気泡201、又は戻し口502を通り外部から混入した気泡201が、図5に示すようにダイヤフラム920上部に溜まる。
【0007】
図6は、従来のベローズ921を有する液体加圧容器911を示す図である。従来のベローズ921を有する液体加圧容器911では、加圧された気体102は、液体101に溶け込まないが、減圧されると、液体101中にすでに溶け込んでいる気体による気泡201、又は戻し口502を通り外部から混入した気泡201が、図6に示すようにベローズ921上部に溜まる。
【0008】
図7は、従来のピストン922を有する液体加圧容器911を示す図である。従来のピストン922を有する液体加圧容器911では、加圧された気体102は、液体101に溶け込まないが、減圧されると、液体101中にすでに溶け込んでいる気体による気泡201、又は戻し口502を通り外部から混入した気泡201が、図7に示すようにピストン922下部に溜まる。このように気泡201が溜まると、ピストン、シリンダ間の摺動抵抗及び摺動抵抗の変化により、一定圧力で液体を圧送できない。また、ピストン、シリンダ間の液体リークでピストン922上部に液体が溜まるため、気泡201を定期的に抜く必要がある。
【0009】
この他に、液体中への気体の溶け込みを防ぐ装置として、特許文献1及び特許文献2が知られている。特許文献1に開示された腐食防止構造の大気圧式温水ボイラは、ボイラ本体内の保有水の水面部を、柔軟な膜部材で気密に被覆し、ボイラ本体内の保有水と大気との接触を遮断し、大気中の酸素、炭酸ガスのような腐食性ガスの溶け込みをなくし、腐食性ガスによるボイラ本体の腐食を防止する。
【0010】
特許文献2に開示された加圧タンクを用いた高粘度流体の送液装置は、加圧タンクの上部に加圧ポートとガス抜きポートを設けると共に加圧タンクの底部に供給ポートと送液ポートを設け、さらに、加圧タンクの内部に、薬液に浮いて薬液の液面の上下変位に伴い自在に上下変位しかつ薬液と加圧ガスとを分離するフロートを設けている。このフロートは、裏面が平らになっていて、さらに、フロートの下方には下限位置で送液ポートを塞ぐ栓部が設けられ、上方には、フロートの送液前後での変位量を検知する為の支柱が設けられている。そして、加圧ガスを加圧ポートから加圧タンク内に送り込んで加圧することにより、送液ポートから薬液を送出する。よって、送液装置は、分離した液や変化、変質した液を送出することがなく、必要とする正常な液を安定して送出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−86510号公報
【特許文献2】特開2003−182800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、従来の容器内の液体面全面に加圧気体が接する構造では、液体内に加圧に使用している気体が溶け込み、溶け込んだ気体が液体の圧力が大気圧になる等、減圧されたとき気体に戻り気泡が発生し、流量計の校正時に問題となっていた。また、加圧気体と液体の境界をダイヤフラム、ベローズ、ピストン等で隔壁し加圧した場合、加圧気体の溶け込みは発生しないが、液体内から発生した気泡、又は外部から混入した気泡は、境界隔離部に溜り続ける問題が発生していた。
【0013】
そこで、加圧気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めない容器が求められている。
【0014】
本発明は、加圧気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めない液体加圧容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0016】
(1) 液体を溜める容器と、前記容器内の液体を送り出すために加圧する加圧部と、を有する液体加圧容器であって、液体と気体との境界面に浮かぶフロートを備え、前記フロートの周縁と、前記容器の内壁との隙間の範囲は、前記加圧部の減圧によって液体に溶け込んだ気体から発生した気泡、又は外部から混入した気泡が抜ける隙間以上であり、前記加圧部の加圧によって気体が液体に溶け込む量が所定の量の隙間以下である、液体加圧容器。
【0017】
(1)の構成によれば、本発明に係る液体加圧容器は、液体と気体の境界面に浮かぶフロートを備え、フロートの周縁と、容器の内壁との隙間の範囲は、加圧部の減圧によって液体に溶け込んだ気体から発生した気泡、又は外部から混入した気泡が抜ける隙間以上であり、加圧部の加圧によって気体が液体に溶け込む量が所定の量の隙間以下である。
【0018】
したがって、本発明に係る液体加圧容器は、容器内の液体に加圧気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めないで容器内の気層部に抜けさせることができる。
【0019】
(2) 前記フロートの底面は円錐形状である、(1)に記載の液体加圧容器。
【0020】
したがって、(2)に記載の液体加圧容器は、容器内の液体に加圧気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めないで容器内の気層部にさらに抜け易くさせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液体と気体の境界面に本発明に係るフロートを浮かべることによって、液体と加圧気体との接液面積を小さくすることで液体への加圧気体の溶け込み量を軽減すると同時に、フロート外径と容器内壁間との隙間から、液体内に発生した気泡又は外部から混入した気泡を気層部に抜けさせることができる。さらに、本発明に係るフロートは、フロート底面を円錐形状にすることで、気泡の気層部への抜けをスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態であるフロートを有する液体加圧容器の概要を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態である、底面が円錐状のフロートを有する液体加圧容器の概要を示す概要図である。
【図3】従来の液体加圧容器を示す図である。
【図4】液体加圧容器における測定環境を示す図である。
【図5】従来のダイヤフラムを有する液体加圧容器を示す図である。
【図6】従来のベローズを有する液体加圧容器を示す図である。
【図7】従来のピストンを有する液体加圧容器を示す図である。
【図8】従来の液体流量校正設備の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態であるフロート20を有する液体加圧容器10の概要を示す概要図である。
【0025】
図1(1)において、液体加圧容器10は、液体を溜める容器11と、容器11内の液体101を送り出すために加圧する加圧部30と、を有し、液体101を溜めた液体加圧容器10の気層部112が加圧部30によって加圧されることによって、容器11から液体101が液量調整弁501を通過して管路に流れる。図1(2)は、液体加圧容器10を上部から見た図である。
【0026】
液体加圧容器10は、液体101と気体102との境界面103に浮かぶフロート20を備え、フロート20の周縁21と、容器11の内壁111との隙間12の範囲は、加圧部30の減圧によって液体101に溶け込んだ気体から発生した気泡201、又は容器11内の液体101に戻し口502を通り外部から混入した気泡201が抜ける隙間12以上であり、加圧部30の加圧によって気体102が液体101に溶け込む量が所定の量の隙間12以下である。例えば、容器11の内断面積44cmに対し、フロート20の断面積は、38.8cmである。
【0027】
このような液体加圧容器10において、液体101と加圧される気体102の境界面に浮かべたフロート20により液体101と加圧される気体102の接触面積が少なくなり加圧される気体102の溶け込み量を低減できる。また、液体加圧容器10において、減圧した場合に発生する液体101内の気泡201、又は戻し口502を通り外部から混入した気泡201は、上昇し容器11の内壁111と、フロート20の周縁21との隙間12より抜ける。
【0028】
例えば、図4に示すような測定環境によって測定すると、フロートなしの場合、200L/h、15分間循環での窒素溶け込み量は、クレンゾル1cm中に20℃、1013hPa換算で窒素0.16cmである。他方、液体加圧容器10(フロートあり)の場合、200L/h、15分間循環での窒素溶け込み量は、クレンゾル1cm中に20℃、1013hPa換算で窒素0.0cmである。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態である、底面が円錐状のフロート20を有する液体加圧容器の概要を示す概要図である。
【0030】
図2において、液体加圧容器10は、フロート20を備え、フロート20の底面22は円錐形状である。液体101と加圧された気体102の境界面103に浮かべた、底面22が円錐状のフロート20により、液体101内の気泡201は上昇し、フロート20の底面22に当り、円錐状の底面22に沿って上昇し、容器11の内壁111と、フロート20の周縁21の隙間12より気層部112に抜ける。
【0031】
本実施形態によれば、液体加圧容器10は、液体と気体の境界面に浮かぶフロート20を備え、フロートの周縁21と、容器11の内壁111との隙間12の範囲は、加圧部30の減圧によって液体に溶け込んだ気体から発生した気泡、又は戻し口502を通り外部から混入した気泡201が抜ける隙間12以上であり、加圧部30の加圧によって気体が液体に溶け込む量が所定の量の隙間12以下である。さらに、フロート20の底面22は円錐形状である。したがって、液体加圧容器10は、容器内の液体に加圧された気体を溶け込ませず、かつ、液体内から発生する気泡を溜めないで容器内の気層部に抜けさせることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
10 液体加圧容器
11 容器
20 フロート
22 底面
30 加圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を溜める容器と、前記容器内の液体を送り出すために加圧する加圧部と、を有する液体加圧容器であって、
液体と気体との境界面に浮かぶフロートを備え、
前記フロートの周縁と、前記容器の内壁との隙間の範囲は、
前記加圧部の減圧によって液体に溶け込んだ気体から発生した気泡、又は外部から混入した気泡が抜ける隙間以上であり、
前記加圧部の加圧によって気体が液体に溶け込む量が所定の量の隙間以下である、
液体加圧容器。
【請求項2】
前記フロートの底面は円錐形状である、請求項1に記載の液体加圧容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−144985(P2012−144985A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1538(P2011−1538)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】