説明

液体収容容器、及び、液体噴射システム

【課題】液体注入口を備えた液体収容容器において、不具合の発生を低減する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】液体収容容器は、使用姿勢と注入姿勢とが異なる姿勢となるように使用され、液体収容容器は、複数の壁部によって形成された液体収容室であって、液体を収容するための液体収容室と、液体注入口と、導出部と、液体収容室の液体が消費され液体収容室の液体の量が第1の閾値になったことを外部から識別するための下限部と、注入姿勢において、液体注入口から液体収容室に液体が注入され液体収容室の液体の量が第2の閾値になったことを外部から識別するための上限部と、を備える。第1の壁部は、使用姿勢において、液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部であり、第2の壁部は、注入姿勢において、液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器、及び、液体収容容器を備えた液体噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例であるプリンターは、記録ヘッドからインクを記録対象物(例えば、印刷用紙)に吐出し印刷を行う。記録ヘッドへのインク供給技術として、プリンターの外側に配置されたインクタンクからチューブを介して記録ヘッドにインクを供給する技術が知られている(例えば、特許文献1)。インクタンクは液体注入口(インク充填口)を備え、利用者は容易に液体注入口からインクを注入(補充)できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−219483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクタンクは、インクタンクからプリンターにインクを供給する際の使用姿勢と、液体注入口から内部にインクを注入する際の注入姿勢とが異なる姿勢で使用される場合があった。使用姿勢と注入姿勢が異なる場合、利用者は各姿勢においてインクタンクに収容されているインクの量を確認することが困難な場合があった。
【0005】
上記のような問題は、インクタンクに限らず液体噴射装置が噴射する液体を収容する液体収容容器であって、内部に液体を注入するための液体注入口を備える液体収容容器に共通する問題であった。
【0006】
従って、本発明は、液体注入口を備えた液体収容容器において、収容されている液体の量を利用者が容易に確認できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の使用姿勢と、前記液体収容容器の内部に液体を注入する際の注入姿勢とが異なる姿勢となるように使用され、
前記液体収容容器は、
複数の壁部によって形成された液体収容室であって、前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体を前記液体収容室に注入するための液体注入口と、
前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に供給するための導出部と、
前記複数の壁部のうち外部から視認可能な第1の壁部に設けられた下限部であって、前記使用姿勢において、前記液体収容室の前記液体が消費され前記液体収容室の前記液体の量が第1の閾値になったことを外部から識別するための下限部と、
前記複数の壁部のうち前記第1の壁部とは異なる第2の壁部であって外部から視認可能な第2の壁部に設けられた上限部であって、前記注入姿勢において、前記液体注入口から前記液体収容室に前記液体が注入され前記液体収容室の前記液体の量が第2の閾値になったことを外部から識別するための上限部と、を備え、
前記第1の壁部は、前記使用姿勢において、前記液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部であり、
前記第2の壁部は、前記注入姿勢において、前記液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部である、液体収容容器。
【0009】
適用例1に記載の液体収容容器によれば、下限部と上限部がそれぞれ設けられていることから、各姿勢において液体収容室の液体の量が第1又は第2の閾値になったことを利用者は容易に確認することができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の液体収容容器であって、
前記下限部は、前記使用姿勢において水平な直線状であり、
前記上限部は、前記注入姿勢において水平な直線状である、液体収容容器。
適用例2に記載の液体収容容器によれば、利用者は各姿勢において液面と下限部又は上限部を比較することで液体収容室の液体の量をより容易に確認することができる。
【0011】
[適用例3]液体噴射システムであって、
適用例1又は適用例2に記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器の前記導出部と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室に収容されている前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。
適用例3に記載の液体噴射システムによれば、使用姿勢と注入姿勢の各姿勢において液体収容室の液体の量を容易に確認できる液体収容容器を備えた液体噴射システムを提供できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、上述した液体収容容器、液体噴射装置と液体収容容器を備えた液体噴射システムのほか、上述した液体収容容器の製造方法、上述した液体噴射システムを用いた液体噴射方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。
【図2】タンクユニット50の外観斜視図である。
【図3】実施例の液体噴射システム1を説明するための第2の図である。
【図4】大気導入口317から液体導出部306に至る経路を概念的に示す図である。
【図5】インク供給の原理について説明するための図である。
【図6】インクタンク30の第1の外観斜視図である。
【図7】インクタンク30の第2の外観斜視図である。
【図8】インクタンク30の第3の外観斜視図である。
【図9】液体収容室340のインク残量が少なくなった状態を示す図である。
【図10】インクタンク30へのインク注入を説明するための図である。
【図11】インクの状態を説明するための図である。
【図12】比較例の液体噴射システム1kを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.実施例及び比較例:
B.変形例:
【0015】
A.実施例及び比較例:
A−1.液体噴射システムの構成:
図1は、実施例の液体噴射システム1を説明するための図である。図1(A)は液体噴射システム1の第1の外観斜視図である。図1(B)は、液体噴射システム1の第2の外観斜視図であり、本発明の実施例の液体収容容器30を示した図である。なお、図1には方向を特定するために互いに直交するXYZ軸が図示されている。なお、これ以降の図に関しても必要に応じて互いに直交するXYZ軸が図示されている。
【0016】
図1(A)に示すように、液体噴射システム1は、液体噴射装置としてのインクジェットプリンター12(単に「プリンター12」ともいう。)と、タンクユニット50とを備える。プリンター12は、用紙給紙部13と、用紙排出部14と、キャリッジ(サブタンク装着部)16と、4つのサブタンク20と、を備える。4つのサブタンク20は色の異なるインクを収容している。具体的には、4つのサブタンク20は、ブラックインクを収容するサブタンク20Bkと、シアンインクを収容するサブタンク20Cnと、マゼンダインクを収容するサブタンク20Maと、イエローインクを収容するサブタンク20Ywである。4つのサブタンク20は、キャリッジ16に搭載されている。
【0017】
用紙給紙部13にセットされた印刷用紙は、プリンター12内部に搬送され、印刷後の印刷用紙が用紙排出部14から排出される。
【0018】
キャリッジ16は、主走査方向(紙巾方向、X軸方向)に移動可能である。この移動は、ステッピングモーター(図示せず)の駆動によりタイミングベルト(図示さず)を介して行われる。キャリッジ16の下面には、記録ヘッド(図示せず)が備え付けられている。この記録ヘッドの複数のノズルからインクが印刷用紙上に噴射され印刷が行われる。なお、タイミングベルトやキャリッジ16等のプリンター12を構成する各種部品は、ケース10内部に収容されていることで保護されている。
【0019】
タンクユニット50は、上面ケース54と、第1の側面ケース56と、第2の側面ケース58と、底面ケース(図示せず)を備える。ケース54,56,58及び底面ケースは、ポリプロピレン(PP)やポリスチレン(PS)等の合成樹脂により成形することができる。本実施例では、ケース54,56,58及び底面ケースはポリスチレンを用いて成形されると共に、所定の色(例えば、黒色)に着色され不透明である。さらに、図1(B)に示すように、タンクユニット50は、ケース(蓋部材)54,56,58及び底面ケース(蓋部材)により囲まれた4つの液体収容容器としてのインクタンク30を備える。ケース54,56,58及び底面ケースによってタンクユニット50がより安定して所定の場所(例えば、机や棚等の水平面)に設置される。
【0020】
4つのインクタンク30は、4つのサブタンク20が収容する色に対応したインクを収容している。すなわち、4つのインクタンク30は、ブラックインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクをそれぞれ収容する。各インクタンク30は、所定の部分からインクの状態を外部から確認することができる。なお、インクタンク30は、サブタンク20よりも多くの量のインクを収容できる。
【0021】
各色のインクを収容したインクタンク30は、対応した色のインクを収容するためのサブタンク20にホース(チューブ)24によって接続されている。ホース24は合成ゴム等の可撓性を有する部材で形成されている。記録ヘッドからインクが噴射されサブタンク20のインクが消費されると、ホース24を介してインクタンク30のインクがサブタンク20に供給される。これにより、液体噴射システム1は、長時間に亘って中断動作なしに連続して印刷を続けることができる。なお、サブタンク20を設けずに、ホース24を介して直接にインクタンク30から記録ヘッドにインクを供給しても良い。
【0022】
図2は、タンクユニット50の外観斜視図である。図2では上面ケース54及び底面ケースの図示は省略している。タンクユニット50は、プリンター12にインクを供給する際の使用姿勢ではZ軸方向が鉛直方向となり、Z軸負方向が鉛直下方向となる。各インクタンク30は、隣り合うインクタンク30と嵌め合わされ一体とするための嵌合ユニット328を有する。嵌合ユニット328は、孔部325aと突起状の突起部324とを備える。1のインクタンク30の孔部325aに隣り合う他のインクタンク30の突起部324が嵌め合わされることで隣り合うインクタンク30同士が組み立てられ一体となる。なお、外力により突起部324は孔部325aから取り外すことができ、一体となったインクタンク30を容易に分解できる。これにより、プリンター12に用いられるインク色の数や仕様に応じて、タンクユニット50はインクタンク30の配置数(積層数)を容易に変更できる。
【0023】
インクタンク30は、内部にインクを注入(補充)するための液体注入口304と、液体注入口304を塞ぐ栓部材302とを備える。液体注入口304は円筒形状であり、後述する液体収容室に連通している。栓部材302は、液体注入口304に着脱可能に取り付けられている。また、1のインクタンク30の液体注入口304を塞ぐ栓部材302と、隣り合う他のインクタンク30の液体注入口304を塞ぐ栓部材302とは連結部材303によって連結されている。すなわち、2つの栓部材302は連結部材303によって分離できないように一体に構成されている。
【0024】
液体注入口304は、インクタンク30の使用姿勢では、水平方向(実施例ではX軸正方向)に向かって開口するように設けられている。なお、この詳細は後述する。
【0025】
また、インクタンク30は、大気導入口317を備える。大気導入口317は後述する大気開放流路の両端部のうちの1つであり、外部の大気をインクタンク30内部に導入するために設けられている。インクタンク30の液体導出部(図示せず)からホースを介してプリンター12にインクが供給されると、外部の大気が大気導入口317を介してインクタンク30内部に導入される。
【0026】
図3は、実施例の液体噴射システム1を説明するための第2の図である。図3(A)は、インクタンク30が使用姿勢である時の液体噴射システム1を示す図である。図3(B)は、インクタンク30がインクを注入する際の姿勢である注入姿勢である時の液体噴射システム1を示す図である。なお、液体噴射システム1はX軸とY軸で規定される水平面である設置面に設置され、使用される。
【0027】
図3(A)に示すように、インクタンク30は、使用姿勢において、一部の壁部(第1の壁部)370c1が外部から視認可能な状態で設置される。使用姿勢において、第1の壁部370c1は、設置面に対して立設状態となる壁部である。すなわち、使用姿勢において第1の壁部370c1は、インクタンク30の下方から上方に向かって延びる壁部である。本実施例では、第1の壁部370c1は、設置面に対して略垂直な壁部である。なお、第1の壁部370c1は、インクタンク30の注入姿勢において、インクタンク30の底面を構成する。
【0028】
第1の壁部370c1には下限部としての下限線LM1が設けられている。下限線LM1は、使用姿勢において水平な直線状である。下限線LM1は、インクタンク30の使用姿勢において、内部のインクが消費され、内部のインクが第1の閾値となったことを識別するために設けられている。利用者は、インクの液面が第1の閾値近傍になった場合に、インクをインクタンク30内部に補充する。
【0029】
図3(B)に示すように、インクタンク30内部にインクを注入(補充)する場合、使用姿勢から液体注入口304が鉛直上方(Z軸正方向)に向かって開口する注入姿勢に利用者はインクタンク30の姿勢を変化させる。そして、上面ケース54を開ける。利用者は栓部材302を液体注入口304から取り外し、液体注入口304からインクを内部に注入する。
【0030】
ここで、上面ケース54を開けることにより第1の壁部370c1とは異なる第2の壁部370c2が外部から視認可能となる。第2の壁部370c2は、設置面に対して立設状態となる壁部である。すなわち、使用姿勢において第2の壁部370c2は、下方から上方に向かって延びる壁部である。本実施例では、第2の壁部370c2は、注入姿勢において設置面に対して略垂直な壁部である。
【0031】
第2の壁部370c2には上限部としての上限線LM2が設けられている。上限線LM2は、注入姿勢において、水平な直線状である。上限線LM2は、インクタンクの注入姿勢において、液体注入口304から液体収容室340にインクが注入され、液体収容室340のインクが第2の閾値になったことを識別するために設けられている。
【0032】
利用者は、インク液面が上限線LM2近傍に達するまでインクをインクタンク30内部に注入(補充)する。インクの補充が行われた後は、図3(A)に示す使用姿勢にインクタンク30の姿勢は変化される。このように、利用者は各姿勢においてインクタンク30内部のインクの量を容易に確認することができる。
【0033】
A−2.インクタンク30の概略:
インクタンク30の詳細構成を説明する前に、理解の容易のため、大気導入口317から液体導出部306に至る経路について図4を参照して概念的に説明する。図4は、大気導入口317から液体導出部306に至る経路を概念的に示す図である。
【0034】
大気導入口317から液体導出部306に至る経路は、大気開放流路300と、液体収容室340とに大きく分けられる。大気開放流路300は、上流から順に第1の流路310と、空気収容室330と、第2の流路350(連通部350ともいう。)とから構成される。
【0035】
第1の流路310は、一端部である大気開放口318が空気収容室330内で開口し、他端部である大気導入口317が外部へ向かって開口することで、空気収容室330と外部とを連通させる。第1の流路310は、連通流路320、気液分離室312、連通流路314と、を有する。連通流路320は、一端部が大気導入口317と連通し、他端部が気液分離室312と連通している。連通流路320の一部は細長い流路であり、液体収容室340に貯留されたインクの水分が拡散により大気開放流路300から蒸発することを抑制する。気液分離室312の上流から下流に向かう間にはシート部材(フィルム部材)316が配置されている。このシート部材316は、気体を透過すると共に液体を透過しない性質を有する。このシート部材316を大気開放流路300の途中に配置することにより、液体収容室340から逆流してきたインクがシート部材316より上流側に流入することを抑制している。なお、このシート部材316はインクで一旦濡れると、気液分離膜としての本来の機能が損なわれ、空気を透過しなくなる場合がある。
【0036】
連通流路314は、気液分離室312と空気収容室330とを連通させる。ここで、連通流路314の一端部は大気開放口318である。
【0037】
空気収容室330は、後述する第2の流路350よりも流路断面積が大きく、所定の容積を有する。これにより、液体収容室340から逆流してきたインクを貯留し、空気収容室330よりも上流側にインクが流入することを抑制できる。
【0038】
第2の流路350は、一端部である空気側開口351が空気収容室330内で開口し、他端部である液体側開口352が液体収容室340内で開口することで、空気収容室330と液体収容室340とを連通させる。また、第2の流路350は、メニスカス(液面架橋)を形成可能な程度に流路断面積が小さい流路となっている。
【0039】
液体収容室340はインクを収容し、液体導出部306の液体出口部349からホース24を介してサブタンク20(図1)にインクを流通させる。液体収容室340は液体保持部345を有する。液体保持部345は区画壁部342を有する。区画壁部342は、液体収容室340内の所定方向へのインクの流れを堰き止めることで、液体保持部345から液体収容室340の他の部分にインクが流れ出ることを抑制する。また、上述のごとく液体収容室340には液体注入口304が設けられている。液体注入口304の一端部である上端部304pは外部へ向かって開口し、他端部である下端部304mは液体収容室340内で開口している。
【0040】
さらに理解の容易のために、図5を用いてインクタンク30がサブタンク20にインクを供給する原理について説明する。図5は、インクタンク30からサブタンク20へのインク供給の原理について説明するための図である。図5には、インクタンク30をY軸正方向側から見た場合のインクタンク30が示されている。また、図5は、ホース24及びプリンター12の内部の様子を模式的に示している。
【0041】
液体噴射システム1は、所定の水平面sf上に設置されている。インクタンク30の液体導出部306と、サブタンク20の液体受入部202は、ホース24を介して接続されている。サブタンク20は、ポリスチレンやポリエチレン等の合成樹脂により成形されている。サブタンク20は、インク貯留室204と、インク流動路208と、フィルター206とを備える。インク流動路208には、キャリッジ16のインク供給針16aが挿入されている。フィルター206は、インクに異物等の不純物が混入していた場合に、その不純物を捕捉することで記録ヘッド17への不純物の流入を防止する。インク貯留室204のインクは、記録ヘッド17からの吸引によって、インク流動路208、インク供給針16aを流れて、記録ヘッド17に供給される。記録ヘッド17に供給されたインクは、ノズルを介して外部(印刷用紙)へ向かって噴射される。
【0042】
注入姿勢で液体注入口304からインクを液体収容室340に注入した後に、液体注入口304を栓部材302で密封し使用姿勢にした場合、液体収容室340内の空気が膨張し、液体収容室340は負圧に維持される。また、空気収容室330は大気開放口318と連通することで大気圧に維持されている。使用姿勢において、液体収容室340と空気収容室330とは水平方向に並んで配置されている。
【0043】
使用姿勢において、メニスカスが形成されインクが保持される第2の流路350は、液体注入口304の下端部304mよりも下方に位置する。本実施例では、第2の流路350は、使用姿勢におけるインクタンク30の下端部近傍に位置する。言い換えれば、下限線LM1よりも下方に位置する。こうすることで、液体収容室340のインクが消費され、液体収容室340の液面が低下しても、大気と直接に接触するインク液面(大気接触液面)LAは長時間(インク液面が下限線LM1に達する程度の時間)に亘り一定の高さに維持することができる。また、使用姿勢において、第2の流路350は、記録ヘッド17よりも低い位置になるように配置される。これにより、水頭差d1が発生する。なお、使用姿勢において、第2の流路350にメニスカスが形成された状態での水頭差d1を「定常時水頭差d1」とも呼ぶ。
【0044】
インク貯留室204のインクが記録ヘッド17によって吸引されることで、インク貯留室204は所定の負圧以上となる。インク貯留室204が所定の負圧以上になると、液体収容室340のインクがホース24を介してインク貯留室204に供給される。すなわち、インク貯留室204には、記録ヘッド17に流出した量のインクが液体収容室340から自動的に補充されることになる。言い換えれば、インクタンク30内の空気収容室330(すなわち、大気)と接するインク液面(大気接触液面)LAと、記録ヘッド(詳細にはノズル)との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭差d1よりも、プリンター12側からの吸引力(負圧)がある程度大きくなることでインクが液体収容室340からインク貯留室204へ供給される。ここで、記録ヘッド17にインクタンク30から安定してインクを供給するためには、大気接触液面LAが記録ヘッド17と等しいかそれよりも低い位置に位置する必要があると共に、記録ヘッド17に対して過度に低い位置にあってはならない。大気接触液面LAが記録ヘッド17よりも高い位置に位置する場合、インクタンク30からプリンター12にインクが過多に供給され、記録ヘッド17からインクが漏れ出す場合が生じる。また、記録ヘッド17に対して大気接触液面LAが過度に低い位置にある場合、記録ヘッド17の吸引力ではインクタンク30のインクをプリンター12に吸い上げられない場合が生じる。ここで、本実施例の場合、インクタンク30がプリンター12に安定してインクを供給する条件として、大気接触液面LAは高さH1〜H2の範囲に位置する必要があるものとする。
【0045】
液体収容室340のインクが消費されると、空気収容室330の空気G(「気泡G」ともいう。)が第2の流路350を介して液体収容室340に導入される。これにより液体収容室340の液面は低下する。一方で、第2の流路350によって大気と直接に接触するメニスカス(大気接触液面LA)が形成されている。よって、水頭差d1は維持されることから、記録ヘッド17の所定の吸引力により、インクタンク30から記録ヘッド17に安定してインクを供給することができる。
【0046】
A−3.インクタンクの詳細構成:
次に、図6〜図8を用いてインクタンク30の構成を説明する。図6は、インクタンク30の第1の外観斜視図である。図7は、インクタンク30の第2の外観斜視図である。図8は、インクタンク30の第3の外観斜視図である。なお、図6〜図8には、栓部材302(図2)の図示は省略している。
【0047】
図6〜図8に示すように、インクタンク30は略柱体形状(詳細には略角柱形状)をしている。図6に示すように、インクタンク30は、タンク本体32と、第1のフィルム34と、第2のフィルム322とを備える。タンク本体32は、ポリプロピレン等の合成樹脂により成形されている。また、タンク本体32は半透明である。これにより利用者は外部から内部のインクの状態(インクの水位)を確認できる。タンク本体32の形状は、一側面が開口した凹状形状である。タンク本体32の凹部には様々な形状のリブ(壁部)362が形成されている。ここで、開口している一側面(開口を形成するタンク本体32の外枠を含む一側面)を開口側面370(開口壁部370)とも言う。
【0048】
第1のフィルム34は、ポリプロピレン等の合成樹脂により成形されており、透明状である。第1のフィルム34は熱溶着によって開口側面370の開口を覆うようにタンク本体32に貼り付けられる。具体的には、第1のフィルム34は、リブ362の端面、および、タンク本体32の外枠の端面に隙間が生じないように緻密に貼り付けられている。これにより複数の小部屋が形成されている。具体的には、主に、空気収容室330と液体収容室340と第2の流路350とが形成される。すなわち、タンク本体32と第1のフィルム34によって空気収容室330、液体収容室340、第2の流路350が形成されている。なお、第1のフィルム34のタンク本体32への貼り付けは、熱溶着に限られず、例えば粘着剤を用いて貼り付けても良い。
【0049】
液体収容室340は、複数の壁部により形成されている。具体的には、主に、第1のフィルム34により形成された開口壁部370と、内部空間(例えば液体収容室340)を挟んで開口壁部370と対向する対向壁部370b(図7)と、開口壁部370と対向壁部370bに接続された複数の接続壁部370c(図6、図8)とを備える。図6及び図7に示すように、開口壁部370の外形と対向壁部370bの外形は同一形状(凸形状)である。
【0050】
図6及び図8に示すように、複数の接続壁部370cは、第1の壁部370c1(図8)と、第2の壁部370c2(図8)と、第3の壁部である空気側壁部370c3(図6)とを含む。タンクユニット50としてインクタンク30が組み立てられた場合(図3(A))、第1の壁部370c1は外部から視認でき、第2の壁部370c2は上面ケース54を開けることで外部から視認できる(図3(B))。なお、液体収容室340を形成する複数の壁部のうち、複数のインクタンク30の配置方向(積層方向、Y軸方向)に垂直な平面を有する開口壁部370(図6)及び対向壁部370b(図7)は、タンクユニット50としてインクタンク30が組み付けられた場合、外部から視認できない。
【0051】
図6に示すように、空気側壁部370c3は、インクタンク30の使用姿勢において、インクタンクが設置された設置面(X軸とY軸で規定される水平面)に対して立設状態となる壁部である。すなわち、空気側壁部370c3は、インクタンク30の使用姿勢において、下方から上方に向かって延びる壁部である。本実施例の場合、空気側壁部370c3は、インクタンクの使用姿勢において、設置面に対して略垂直な角度を有するようにインクタンク30の壁部を構成する。
【0052】
液体注入口304は、インクタンク30の使用姿勢では、上端部304pが水平方向(X軸正方向)に向かって開口し、インクタンク30の注入姿勢では鉛直上方向(X軸正方向)に向かって開口するように、空気側壁部370c3に設けられている。一般に、利用者が液体注入口304から液体収容室340にインクを注入する場合、液体注入口304の上端部304pが鉛直上方向に向かって開口している方が、利用者はインクを液体収容室304に注入しやすい。よって、液体注入口304を上記のように空気側壁部370c3に設けることで、インク注入時にインクタンク30を注入姿勢にすることを利用者に促すことができる。また、空気側壁部370c3に液体注入口304を設けることで、インク注入の際にインクタンク30を注入姿勢にすることを利用者に促すことができる液体注入口304を容易に形成することができる。ここで、「上端部304pが水平方向に向かって開口する」とは、使用姿勢において上端部304pに平らな紙を当接させた場合に、当接させた紙と水平方向とが成す角度が45°より大きく90°以下の範囲にある関係をいう。また、「上端部304pが鉛直上方向に向かって開口する」とは、注入姿勢において上端部304pに平らな紙を当接させた場合に、当接させた紙と鉛直方向とが成す角度が45°よりも大きく90°以下の範囲にある関係をいう。
【0053】
図8に示すように、下限線LM1及び上限線LM2は、各線が設けられた壁部370c1、370c2の外面から突出した突起状であり、タンク本体32と一体成形されている。
【0054】
A−4.インクの注入方法:
図9は、液体収容室340のインク残量が少なくなった状態を示す図である。なお、実際には、液体導出部306とサブタンク20の液体受入部202とはホース24を介して接続されているが、ホース24の図示は省略している。
【0055】
図9に示すように、液体収容室340のインクがプリンター12に供給され消費されるとインク液面が低下し、下限線LM1にインク液面が到達する。下限線LM1は、インクタンク30の使用姿勢において、液体収容室340のインクの量が少なくなり、液体収容室340へのインク注入(インク補充)を利用者に促すための目印である。すなわち、下限線LM1は、液体収容室340のインクの量が第1の閾値になったことを利用者に示すための目印である。下限線LM1近傍にインク液面が到達した場合、利用者はインクを液体収容室340に注入(補充)する。このように、液体収容容器30は、下限線LM1によって利用者に液体収容室340へのインク補充を促すことで、液体収容室340にインクが無い状態でプリンター12による印刷が行われることを防止できる。よって、空気(気泡)が液体収容室340からプリンター12に導入される可能性を低減できる。これにより、プリンター12の不具合の発生(ドット抜け等)を防止することができる。
【0056】
インクを液体収容室340に注入する際には、矢印YRで示すように、液体注入口304の開口が水平方向を向いた状態から鉛直上向きを向くようにインクタンク30が回転させる。これにより、使用姿勢から注入姿勢にインクタンク30の姿勢が変化する。すなわち、インクタンク30は、液体注入口304の上端部304pが外部に向かって開口する方向が異なる使用姿勢と注入姿勢との2姿勢で使用される。
【0057】
図10は、インクタンク30へのインク注入を説明するための図である。図10(A)は、インク液面が下限線LM1に到達した状態で、インクタンク30を使用姿勢から注入姿勢に変化させた際のインクタンク30内部のインクの状態を示している。図10(B)は、液体注入口304から液体収容室340にインクを注入する様子を示した図であり、インク液面が上限線LM2に到達した状態を示している。なお、図10(A)及び(B)は、インクタンク30をY軸正方向側から見た場合の図である。また、図10(A)及び(B)は、実際には、液体導出部306とサブタンク20の液体受入部202とはホース24を介して接続されているが、ホース24の図示は省略している。なお、図10(A)は、インクタンク30を注入姿勢にした後に、栓部材302を取り外した状態を示している。
【0058】
使用姿勢では、空気側開口351を含む第2の流路350は、液体注入口304の他端部である下端部304mよりも下方に位置していたが、図10(A)に示すように、インクタンク30の注入姿勢では、空気側開口351は下端部304mよりも上方に位置する。また、注入姿勢では、液体注入口の上端部304pは鉛直上方に向かって開口する。また、注入姿勢では、空気収容室330と液体収容室340は鉛直方向に並んで配置され、かつ、空気収容室330は液体収容室340よりも上方に配置されている。
【0059】
インク残量が少ない状態で使用姿勢から注入姿勢に姿勢を変化させた場合において、液体保持部345はインクが液体収容室340の他の部分に流れ出すことを抑制する。すなわち、区画壁部342は、液体出口部349から離れる方向(Z軸正方向)へのインクの流れを堰き止める。このため、注入姿勢において、液体保持部345では他の部分よりも水位を高く維持することができる。より詳細には、注入姿勢において液体出口部349よりも高い位置まで延びる区画壁部342によって、液体保持部345のインクの水位(液面)を液体出口部349の高さ以上に維持することが可能となる。これにより、インク残量が少ない場合でも、液体導出部306内のインクと液体保持部345のインクとは空気を介さず連続して存在することが可能となる。よって、インク注入時に空気(気泡)が液体出口部349から液体導出部306に流入し、ホース24を介してサブタンク20へ流入する可能性を低減することができる。これにより、インク注入時に記録ヘッド17(図3)側に空気が流れ込まないため、空打ちによるドット抜けを抑制し、印字品質の低下を抑制することができる。
【0060】
図10(B)に示すように、液体収容室340へのインクの補充は、インクを収容した補充用容器980を用いて行われる。具体的には、補充用容器980からインクを液体収容室340に滴下して、液体収容室340にインクが補充される。上限線LM2は液体注入口304からインクが注入され、液体収容室340内に十分な量(液体注入口304に液面が到達し、インクが液体注入口304から溢れ出さない程度の量、第2の閾値)のインクが収容されていることを利用者に示すために設けられている。図10(B)に示すように、利用者は液体収容室340のインク液面が上限線LM2に達する程度までインクを液体収容室340に注入する。すなわち、注入姿勢において、液体注入口304からインクが溢れ出さない程度にインクを液体収容室340に収容した場合に、空気側開口351は、インク液面よりも上方に位置する。これにより、インク注入時において、空気側開口351を介してインクが空気収容室330に導入されることを防止する。
【0061】
図11は、使用姿勢のインクタンク30内部のインクの状態を説明するための図である。図11は、注入姿勢においてインク液面が上限線LM2に達する程度にインクが液体収容室340に収容されている状態で、インクタンク30を注入姿勢から使用姿勢に変化させた直後の状態を示している。なお、この状態を、充填直後状態ともいう。図11には、Y軸正方向側から見た場合のインクタンク30が示されている。
【0062】
図11に示すように、充填直後状態では、大気と直接に接する液面(「大気接触液面」ともいう。)LAは空気側開口351近傍に位置している。この状態から、記録ヘッド17からの吸引によってインクタンク30内部のインクが消費されると、空気側開口351近傍のインク液面は、第2の流路350内まで移動し、第2の流路350内でメニスカスを形成する。メニスカスを形成後は、液体収容室340内のインクが消費され、液体収容室340内のインク液面が除々に低下する。そして、液体収容室340内のインク液面が下限線LM1近傍に到達すると、利用者によってインクタンク30が使用姿勢から注入姿勢に変化され、液体注入口304から液体収容室340にインクが注入(補充)される。
【0063】
図11に示すように、充填直後状態では、大気接触液面LAは高さH1〜H2の範囲に位置する。よって、充填直後状態においても、インクタンク30からプリンター12へ安定してインクを供給することができる。すなわち、充填直後状態において、大気接触液面LAと記録ヘッド17との鉛直方向の高さの差によって発生する水頭差d1a(「初期水頭差d1a」とも言う。)は、インクを安定して供給できる所定範囲内となる。
【0064】
A−5.比較例:
図12は、比較例の液体噴射システム1kを説明するための図である。図12は、インクタンク30kのインクが消費され、利用者がインクタンク30k内部にインクを充填した直後の状態を示している。実施例との違いは、インクタンク30、30kの構成であり、プリンター12(図1)等のその他の構成については、実施例と同様の構成である。比較例のインクタンク30kは、注入姿勢と使用姿勢が同一の姿勢で用いられる。このため、インクタンク30kは、第2の壁部370c2に液体注入口304kが設けられている。また、下限線LM1及び上限線LM2が共に、第1の壁部370c1に設けられている。
【0065】
インクタンク30k内部のインクが消費され、液体収容室340のインク液面が下限線LM1に到達した場合、図12に示すインクタンク30kの姿勢で利用者はインクを液体注入口304kからインクタンク30k内部に注入(補充)する。ここで、利用者が実施例で収容されるインク量と同様のインク量になるまで液体収容室340にインクを注入する場合を考える。すなわち、図12に示す上限線LM2にインク液面が到達するまで利用者がインクをインクタンク30k内部に注入する場合を考える。
【0066】
インクタンク30kは、本実施例のインクタンク30と異なり、注入姿勢において空気側開口351を含む第2の流路350が液体注入口304kの下端部304mよりも低い位置に位置する。よって、インクが液体収容室340に注入されると、第2の流路350を介して空気収容室330にもインクが導入される。よって、充填直後状態では、空気収容室330にインクが充填されてしまい、大気開放口318からインクが溢れ出す。大気開放口318からインクが溢れ出すと、シート部材316(図4、図6)がインクで濡れてしまい、シート部材316の本来の機能が損なわれる。また、充填直後状態では、大気接触液面LAが記録ヘッド17よりも高い位置に位置する。これにより、インクタンク30からの水圧によって、記録ヘッド17からインクが漏れ出す場合が生じる。すなわち、初期水頭差d1kが定常時水頭差d1から大きくずれてしまい、インクタンク30kからプリンター12へ安定してインクを供給できない事態が生じる。
【0067】
上記のように、実施例のインクタンク30は、使用姿勢と注入姿勢とが異なる姿勢であり、注入姿勢では液体注入口304の下端部304mよりも空気側開口351が上方に位置する。よって、インク注入の際に空気収容室330にインクが導入される可能性を低減できる。これにより、インク注入時に空気収容室330に設けられた大気開放口318からインクが溢れ出す可能性を低減できる。また、インク注入の際に空気収容室330にインクが導入される可能性を低減できることから、充填直後状態における大気接触液面LAを所定の高さ範囲(高さH1〜H2)に維持することができる。言い換えれば、大気接触液面LAと記録ヘッド17との高さの差により生じる水頭差を所定の範囲内に維持することができる。よって、インクタンク30から記録ヘッド17に安定してインクを供給することができる。また、下限線LM1及び上限線LM2を有することから、利用者は各姿勢において液体収容室340のインクの量を容易に確認することができる。すなわち、利用者は、インクを補充するタイミング、及び、インク補充が完了したタイミングを容易に確認することができる。また、下限線LM1及び上限線LM2は各姿勢(使用姿勢、注入姿勢)において、水平な直線状であることから、インク液面と下限線LM1又は上限線LM2を比較することで、利用者はインクタンク30が水平面に設置されているかどうかを容易に判断できる。すなわち、インク液面に対して下限線LM1又は上限線LM2が傾いていれば、インクタンク30が水平面に設置されていないことが分かる。
【0068】
B.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
B−1.第1変形例:
上記実施例では、液体注入口304は、液体収容室340を形成する複数の壁部のうち、使用状態において設置面sfに対して立設状態にある立設壁部のうちの空気収容室330側に配置された空気側壁部370c3に設けられていたが、これに限定されるものではない。液体注入口304は、液体収容室340を形成する複数の壁部のいずれかに設けることができる。この場合、インク注入の際に、注入姿勢にインクタンク30の姿勢を変化させることを利用者に促すために、液体注入口304の上端部304pは、使用姿勢では水平方向に向かって開口し、注入姿勢では鉛直上方向に向かって開口するように液体注入口304を壁部に設けることが好ましい。例えば、液体注入口304を第2の壁部370c2(図8)に設ける場合、液体注入口304は第2の壁部370c2から上方(Z軸正方向)に延び、途中で空気収容室330側に向かう方向(X軸正方向)に屈曲するように構成する。
【0070】
また、上記実施例では液体注入口304は、液体収容室340を形成する壁部から所定長さ延びる円筒形状を有していたが(図6)、これに限定されるものではなく、一端部である上端部304pが外部に向かって開口し、他端部である下端部304mが液体収容室340内において開口していれば良い。例えば、液体収容室340を形成する壁部に貫通孔を設けることで液体注入口を形成しても良い。こうすることで、液体注入口が液体収容室340を形成する壁部に貫通孔を設けることで形成されるため、壁部から所定長さ延びる円筒形状の部材を用いる必要がない。
【0071】
B−2.第2変形例:
上記実施例では、下限線LM1及び上限線LM2は直線状であったが、これに限定されるものではなく、液体収容室340内のインクの量を外部から確認できる目印であれば良い。例えば、下限線LM1、上限線LM2の少なくとも1つを点状にしても良い。また、下限線LM1、上限線LM2を黒色等に着色しても良い。また、使用姿勢と注入姿勢の各姿勢における鉛直方向について、下限線LM1と上限線LM2の少なくとも1つにおいて異なる高さに複数の線(目印)を設ける構成としても良い。複数の目印を設けることで、利用者はより精度良く液体収容室340の液体の量を把握することができる。
【0072】
B−3.第3変形例:
上記実施例では、第1と第2の壁部370c1,370c2を含むタンク本体32は半透明であったが、透明であっても良い。また、少なくとも一部が外部からインクタンク30内部のインクを視認できる視認部を有すれば、その他の部分は外部からインクタンク30内部を視認できなくても良い。すなわち、外部から視認可能な第1の壁部370c1であって、外部から液体収容室340内部を視認できる第1の視認部を有する第1の壁部370c1に下限部としての下限線LM1を設ける。下限線LM1は、使用姿勢において、第1の視認部が設けられている高さの範囲に設けられていれば良い。第1の視認部は、例えば、透明又は半透明である。また、外部から視認可能な第2の壁部370c2であって、外部から液体収容室340内部を視認できる第2の視認部を有する第2の壁部370c2に上限部としての上限線LM2を設ける。上限線LM2は、注入姿勢において、第2の視認部が設けられている高さの範囲に設けられていれば良い。こうすれば、液体収容室340のインクの量が第1の閾値又は第2の閾値になったことを利用者は容易に確認することができる。
【0073】
B−4.第4変形例:
上記実施例ではインクタンク30は、第2の流路350や空気収容室330を有していたが、有さなくても良い。すなわち、液体収容室350と、液体注入口350と、液体導出部306と、液体収容室350のインク(液体)の消費に伴って内部に空気を導入するための導入部を有するインクタンク(液体収容容器)であって、注入姿勢と使用姿勢が異なるインクタンクに本発明は適用できる。すなわち、注入姿勢と使用姿勢において底面となる壁部が異なるインクタンク(液体収容容器)において、第1の壁部370c1に下限部LM1を設け、第1の壁部370c1とは異なる第2の壁部370c2に上限部LM2を設ける。第1の壁部370c1は、使用姿勢において、設置面に対して立設状態となる。第2の壁部370C2は、注入姿勢において、設置面に対して立設状態となる。こうすれば、実施例と同様に、利用者は各姿勢において液体収容室340のインクの量を容易に確認することができる。なお、インクタンク30がメニスカスを形成可能な流路を有さない場合は、液体収容室340のインクの消費に伴って大気接触液面LAが低下するに伴って、インクタンク30を上下方向に移動させて、大気接触液面LAと記録ヘッド17の高さの関係を一定にすることが好ましい。こうすることで、記録ヘッド17と大気接触液面LAの高さの関係を所定範囲に維持し、水頭差を一定に維持することができる。
【0074】
B−5.第5変形例:
上記実施例では、液体収容容器としてプリンター12に用いられるインクタンク30を例に説明を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば液晶ディスプレー等の色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等の液体噴射装置に液体を供給可能な液体収容容器であって、液体注入口を備える液体収容容器に本発明は適用できる。上記の各種の液体噴射装置に液体収容容器を使用する際には、各種の液体噴射装置が噴射する液体の種類に応じた液体(色材,導電ペースト,生体有機物等)を、液体収容容器内部に収容すれば良い。また、各種液体噴射装置と各種液体噴射装置に用いる液体収容容器を備える液体噴射システムとしても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…液体噴射システム
1k…液体噴射システム
10…ケース
12…インクジェットプリンター(プリンター)
13…用紙給紙部
14…用紙排出部
16…キャリッジ
16a…インク供給針
17…記録ヘッド
20…サブタンク
20Bk…サブタンク
20Ma…サブタンク
20Cn…サブタンク
20Yw…サブタンク
24…ホース
30…液体収容容器(インクタンク)
32…タンク本体
34…第1のフィルム
50…タンクユニット
54…上面ケース
56…第1の側面ケース
58…第2の側面ケース
202…液体受入部
204…インク貯留室
206…フィルター
208…インク流動路
300…大気開放流路
302…栓部材
303…連結部材
304…液体注入口
304k…液体注入口
304m…下端部(他端部)
304p…上端部(一端部)
306…液体導出部
310…第1の流路
312…気液分離室
314…連通流路
316…シート部材
317…大気導入口
318…大気開放口
320…連通流路
322…第2のフィルム
324…突起部
325a…孔部
328…嵌合ユニット
330…空気収容室
340…液体収容室
342…区画壁部
345…液体保持部
349…液体出口部
350…第2の流路(連通部)
351…空気側開口
352…液体側開口
362…リブ
370…開口壁部(開口側面)
370b…対向壁部
370c…接続壁部
370c1…第1の壁部
370c2…第2の壁部
370c3…空気側壁部
980…補充用容器
G…空気(気泡)
LA…大気接触液面
sf…水平面(設置面)
LM1…下限線
LM2…上限線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置に液体を供給するための液体収容容器であって、
前記液体噴射装置に前記液体を供給する際の使用姿勢と、前記液体収容容器の内部に液体を注入する際の注入姿勢とが異なる姿勢となるように使用され、
前記液体収容容器は、
複数の壁部によって形成された液体収容室であって、前記液体を収容するための液体収容室と、
前記液体を前記液体収容室に注入するための液体注入口と、
前記液体収容室の前記液体を前記液体噴射装置に供給するための導出部と、
前記複数の壁部のうち外部から視認可能な第1の壁部に設けられた下限部であって、前記使用姿勢において、前記液体収容室の前記液体が消費され前記液体収容室の前記液体の量が第1の閾値になったことを外部から識別するための下限部と、
前記複数の壁部のうち前記第1の壁部とは異なる第2の壁部であって外部から視認可能な第2の壁部に設けられた上限部であって、前記注入姿勢において、前記液体注入口から前記液体収容室に前記液体が注入され前記液体収容室の前記液体の量が第2の閾値になったことを外部から識別するための上限部と、を備え、
前記第1の壁部は、前記使用姿勢において、前記液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部であり、
前記第2の壁部は、前記注入姿勢において、前記液体収容容器が設置された設置面に対して立設状態となる壁部である、液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記下限部は、前記使用姿勢において水平な直線状であり、
前記上限部は、前記注入姿勢において水平な直線状である、液体収容容器。
【請求項3】
液体噴射システムであって、
請求項1又は請求項2に記載の液体収容容器と、
対象物に前記液体を噴射するためのヘッドを有する液体噴射装置と、
前記液体収容容器の前記導出部と前記液体噴射装置とを接続し、前記液体収容室に収容されている前記液体を前記液体噴射装置に流通させる流通管と、を備える、液体噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−51308(P2012−51308A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197274(P2010−197274)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】