説明

液体収納容器

【課題】インクタンクの状態に関する報知をLEDなどの発光部によって行う構成において、ユーザの視認性や操作性を阻害し得る電気配線を必要とせずに、ユーザが目視し易い位置での表示を行うようにする。これとともに、出射光がユーザおよび装置側の受光部の双方に好ましく到達するようにする。
【解決手段】発光部101と表示部585とを分離し、両者間の光接続を行う導光部580を設ける。表示部には、光の出射を適切に制限する部材21を設ける。これにより、インクタンク上での電気配線の這い回しを必要とせずに表示部を最適な位置へ配置可能となるとともに、ユーザの視認性向上と受光部の動作安定化との双方にとって好ましい光量を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収納容器に関し、詳しくは、インクジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など、液体収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の普及に伴って、パーソナルコンピュータ(PC)を介さずにデジタルカメラと記録装置としてのプリンタとを直接接続して印刷する用途が増えつつある。これは「カメラダイレクト印刷」と呼ばれることもある。さらに、デジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデータ転送を行い、印刷を行う形態も増えつつある。これは「カードダイレクト印刷」とも呼ばれる。また、プリンタとスキャナとを一体化してPCを介さない複写機能をもつとともに、さらには上記のダイレクト印刷機能をも併せもつ、所謂マルチファンクションプリンタも急速に市場に普及してきている。
【0003】
インクジェットプリンタでは、例えばインクタンクの装着状態やインク残量など、個々のインクタンクの状態に関する情報の把握をユーザが要望する場合や、その情報をユーザに認識させておくことが望ましい場合がある。例えば、ユーザが、インクタンク内のインク残量が少ないことが分かれば、記録を始める前に予め新しいインクタンクに交換しておくことで、記録の途中でインク量不足のために記録が実質的にできなくなる事態を未然に防止できるからである。
【0004】
従来は、そのような情報をプリンタに接続されたPCに転送し、PCのモニタに表示することによりユーザへの報知を行っていた。これに対し、PCを介さずに記録を行う場合は、プリンタ本体にディスプレイを設け、それらの情報を表示することが考えられる。しかしながら、ディスプレイを設けることで、コストアップやプリンタの大型化につながるだけでなく、プリンタのデザイン等にも影響を及ぼすことになるので、ディスプレイを設けることは必ずしも好ましいことではない。また、ディスプレイを設けたとしても、ユーザがこれを視認して一目瞭然にインクタンクの状態を把握できるとは限らない。
【0005】
従来、インクタンクの状態をユーザに報知する構成として、LEDなどの表示素子を用いたものが知られている。特許文献1には、記録ヘッドと一体のインクタンクに2つのLEDが設けられ、これらが2段階のインク残量に応じてそれぞれ点灯することが記載されている。より具体的には、インクジェットヘッドとインクタンクとを一体化したインクカートリッジにインクジェットヘッドの通電回数をカウントする手段と、カウント値を記憶する手段がある。更にはカウント値の累積値がニアエンド判定値に達すると点灯するニアエンド表示用LEDと、インクエンド判定値に達すると点灯するインクエンドLEDとが採用されており、インクタンクの状態をユーザに報知するようにしている。
【0006】
特許文献2にも同様に、インクタンクまたはこれ搭載するキャリッジに、インク残量に応じて点灯するランプを設けることが記載されている。また、同文献では、記録装置で用いる4つのインクタンクそれぞれに上記のランプを設けることも開示されている。
【0007】
一方、さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)インクに、濃度の薄い淡色マゼンタ、淡色シアンといったインクが使われるようになってきている。さらにはレッド、ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案されてきている。このような場合、インクジェットプリンタに対しては7〜8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際に、間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要となってくる。特許文献3には、インクタンクがキャリッジに搭載される際の、キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をインクタンクごとに異ならせる構成が開示されている。これにより、インクタンクが誤った位置に装着されることを防止しているのである。
【0008】
【特許文献1】特開平4−275156号公報
【特許文献2】特開2002−301829号公報
【特許文献3】特開2001−253087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1には、プリンタ本体と電気的な通信を行うためのプリント回路基板(PCB)に表示用のLEDが取り付けられたインクカートリッジの構成が記載されている。しかしかかる構成では、ユーザがLEDを視認し易い位置にPCBを配置する必要がある。一方、PCBにはプリンタ本体と電気的な通信を行う電気的接続部も設ける必要がある。これら配置の自由度が制約されてしまう問題が生じる。電気的接続部分の好ましい配設位置とLEDの好ましい配設位置とをカバーするために大面積のPCBを設けることも考えられるが、その分コストが上昇してしまうことになる。また、特許文献1に記載の構成を各色について独立した複数のインクタンクを搭載可能なプリンタに適用すると、プリンタに対するインクタンクの装着構成が制限される。このため、インクタンクの実質的な容積を小さくしなければならないか、あるいはプリンタを大型化する必要が生じる。
【0010】
一方、特許文献2に記載のインクタンクでは、インク警告ランプをユーザに認識させ易い場所に設ける旨の開示はあるが、インク警告ランプへ電力や信号を供給するための好ましい構成については開示されていない。その図6から図8からは、インクジェット記録装置とインク警告ランプとを結ぶ導線が設けられることが示唆され得る。しかし、インク警告ランプの数量に見合った数の導線が必要となり、配線が錯綜しかつコストが高くなるだけでなく、配線やその接続部分によってランプの視認性を阻害する恐れがある。さらに、特許文献2の図6および図7には、インクタンクを搭載するキャリッジ上、インクタンクを固定するために操作される可動部材である固定レバーにインク警告ランプが設けられた構成が開示されている。しかし、そのような場合は導線の配置がさらに複雑となり、かつコストも上昇し、しかもインクタンク着脱時の操作性を低下させてしまう恐れがある。
【0011】
これらの問題は、近年のプリンタの小型化や多機能化に伴ない、ユーザの目視に供し得る表示位置もインクタンク着脱時の操作部ないしはその近傍に限定することが好ましいことから一層顕著となる。また、特にプリンタ上部にスキャナを搭載したようなマルチファンクションプリンタでは表示位置がより限定されるため、視認性と操作性との両立がさらに要望されることになる。
【0012】
また、表示はユーザの目視に供されるだけでなく、装置本体側が行う所要の制御のためにも供され得るものであり、本発明者らはこれに関連して次のような課題も認識した。
【0013】
上述のように、特許文献2には、インクタンクにランプが設けられている構成が記載されている。しかしこの場合であっても、インク残量が少ないインクタンクを本体側制御部が認識した場合には、そのような認識に基づくランプの点灯などのために信号を送るべきインクタンクを特定しなければならない。例えばインクタンクが間違った位置に装着されていた場合には、インクがなくなっていないインクタンクについてインク残量なしと間違って表示する可能性がある。従って、ランプ等表示器の発光制御では、その前提として、搭載されるインクタンクの搭載位置を特定しておくことが必要となる。
【0014】
インクタンクの搭載位置を特定する構成としては、特許文献3のように、搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら、この場合は特に、インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタンクを製造する必要があり、上述したようにインクの色数ないしはインクタンクの個数が増大する傾向にある状況下、製造効率やコストの点で不利となる。
【0015】
そこで、複数のインクタンクに対して個別にLEDなどの発光制御を行い、プリンタ内に固定された受光器の出力状態に基づいてインクタンクが搭載されている位置を特定するように構成できる。このような構成では、インクタンクのLEDは、ユーザに状態を報知するために発光する機能と、インクタンクの搭載位置を特定するために受光器に向けて発光する機能との、2つの機能を有することになる。
【0016】
この場合において、出射光量が小さいと、受光器にとっては十分でも、ユーザの視認が困難となる恐れがある。一方、出射光量が大きすぎると隣接インクタンクとの間で誤認が生じ易く、インクタンクの正確な特定が困難となる恐れがある。これは受光部についても同様であり、着目するインクタンクでなく隣接インクタンクからの光を受光してしまう恐れがある。
【0017】
従って、表示部の出射光がユーザおよび受光部の双方に好ましく到達するような構成を採ることが望ましい。
【0018】
本発明は、以上に鑑みてなされたもので、構成簡単かつ廉価にしてしかもユーザの操作性を損なうことなく、液体収納容器の状態に関する報知を視認性良好に行い得るようにすることを目的とする。
また、本発明の他の目的は、ユーザの視認性の向上と受光部の動作安定化とを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのために、本発明は、インクジェット記録装置で用いられる液体を収納するための液体収納容器であって、
光を出射することで情報を表示するための表示部と、
前記表示部の周縁に設けられて光の出射を制限する出射光制限部材と、
を具えたことを特徴とする。
【0020】
上記液体収納容器は、前記液体としてのインクを収納してなるものであり、本発明はまた、前記表示部に対向可能な受光部を具えるとともに、かかる液体収納容器をインク供給源として用いて記録を行うことが可能なインクジェット記録装置にも存する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表示部からの光の出射を適切に制限することで、表示部におけるユーザの視認性向上と受光部の動作安定化との双方にとって好ましい光量を得ることが可能となる。また、発光源と表示部とを分離し、両者間の光接続を行う導光部を液体収納容器に設ける構成をとっている。この構成により視認性および操作性を阻害する電力供給および信号授受の配線等を必要とせず、発光源と表示部とを個々に最適な位置へ配置する構成を廉価に得ることが可能となる。また、それにより、ユーザ視認性が良好な位置への表示部の配置の自由度を確保することができ、ユーザはその発光状態を容易に目視することにより、液体収納容器に係る所定の情報を認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
1.基本構成
図1(a)、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の基本構成に係る液体収納容器であるインクタンクの側面図、正面図および底面図である。なお、以下の説明において、インクタンクの正面とは、ユーザに向き合うことでその操作(着脱操作等)およびユーザへの情報提供(後述する表示部からの光の出射)を可能とする面を言う。
【0023】
図1において、本実施形態のインクタンク1は正面側の下部に支持された支持部材3を有している。支持部材3はインクタンク1の外装と一体に、樹脂により形成されており、後述するタンクホルダへの装着操作等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。インクタンク1の背面側および正面側には、タンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合部5および第2係合部6(本例では支持部材3に一体化されている)が設けられ、これらの係合によってインクタンク1のタンクホルダへの装着状態が確保される。この装着時の動作については図5(a)〜(c)により後述する。
【0024】
インクタンク1の底面には、タンクホルダへの装着時に、後述する記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのインク供給口7が設けられている。この底面と正面とが交わる部分にあって、支持部材3の支持部分の底面側には、基体が設けられている。基体の形状としてはチップ形状であっても、板状であっても良いが、以下では基板100として説明する。
【0025】
本発明の基本構成の実施形態に係る主要部の構成および機能について説明する。ここで、図2(a)および(b)は本発明の基本構成に係るインクタンクに配置される導光部等の機能の概略を説明するための模式的側面図およびその要部拡大図、図3はさらにその一部を拡大して示す図である。
【0026】
まず、図2(a)に示すように、記録ヘッド105’を備えた記録ヘッドユニット105に一体化されているホルダ150の第1係止部155および第2係止部156に対し、インクタンク1の第1係合部5および第2係合部6をそれぞれ係合させる。これにより、インクタンク1がホルダ150に装着され、固定される。またこのとき、ホルダ150に設けられた接点(以下コネクタと称す)152と、インクタンクに設けられた基板100の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド102(図2(b))とが接触し、電気的接続が可能となる。
【0027】
インクタンク1の内部は、正面側に位置するインク収納室11と、背面側に位置してインク供給口7に連通する負圧発生部材収納室(不図示)とに分割されており、両者は接続されている。インク収納室11にはインクIがそのまま貯留される一方、負圧発生部材収納室には、インクを含浸保持するスポンジや繊維集合体等のインク吸収体(以下、便宜的に多孔質部材と示す)が設けられている。この多孔質部材は、記録ヘッドのインク吐出用のノズル部に形成されるメニスカスの保持力と平衡してインク吐出部からのインク漏れを防止するに十分で、かつ記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある適切な負圧を発生するためのものである。
【0028】
なお、インクタンク1の内部構成は、このような多孔質部材の収納室とインクをそのまま貯留する収納室とに分かれた形態に限られない。例えば、多孔質部材がインクタンク内部空間の実質的に全体に充填されるものでもよい。また、負圧発生手段として多孔質部材を用いるのではなく、容積を拡張する方向に張力を発生するゴム等の弾性材料で形成した袋状部材内にインクをそのまま充填し、この袋状部材が発生する張力によって内部のインクに負圧を作用するようにしたものでもよい。さらには、インク収容空間の少なくとも一部を可撓性部材で構成し、その空間内にインクだけを収容するとともに、可撓性部材にばね力を作用させることで負圧を発生させるようにしたものでもよい。
【0029】
インクタンク1の内側に向かって位置する基板100の面には、LEDなど可視光を発生する発光部101と、この発光部を制御する制御素子103とが設けられている。そして、コネクタ152よりパッド102を介して供給される電気信号により、制御素子103は発光部101の発光の制御を行う。なお、図2(b)では、制御素子103を基板100に実装した後に、保護用の封止剤でこれを被覆した状態を示している。また、インクタンクが収納しているインクの色やインク残量などの情報を記憶させておくメモリ素子を搭載する場合にも、これを同じ位置に実装して封止剤で被覆することができる。
【0030】
図2(a)、(b)および図3に示すように、発光部101との対向部位からは、光を導くための導光部450がインクタンク外装の正面側壁面から間隔をおいて立設されている。その導光部450の先端付近の正面側の部分がユーザの目視に好ましく供される表示部455となっている。ここで、発光部101が発する光を導光部450へ投光する際の光量の減衰を抑制するため、基板100は発光部101が導光部450の光入射面123の近傍において対向するように配置されている(図2(b))。
【0031】
このように、本実施形態では、発光部と表示部とを分離し、両者間の光接続を行う導光部450をインクタンク101に設けた。これにより、視認性および操作性を阻害する電力供給用および信号授受用の配線等を必要とせず、発光部142と表示部455とを個々に最適な位置へ配置する構成を廉価に得ることが可能となる。それにより、ユーザ視認性が良好な位置への表示部455の配置の自由度を確保することができ、ユーザはその発光状態を容易に目視することにより、インクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。また、導光部450をインクタンク1の外装と一体成型したものとすれば、製造コストの大幅な上昇も伴うことがない。
【0032】
さらに、本実施形態では、導光部450をインク収納室11を形成するインクタンク外装の正面側の壁との間に空気層が介在するように配置している。導光部をインクタンク外装の正面側の壁と一体化すること、すなわちインクタンク外装の正面側の壁を導光部に兼用することも考えられるが、本実施形態のような構成とすることで、表示部455への導光を効率良く行うことが可能となる。この点について説明する。
【0033】
本実施形態では、図2(a)および(b)に示すように、導光部450はインク収納室106の外装と一体であるが、正面側の壁からは独立している。すなわち、本実施形態の構成では、導光部450とインク収納室11との間には空気層が存在する。なお、インクタンクの外装は、双方ともにポリプロピレンで形成されているものとする。従ってまた、本実施形態の場合、導光部450がインク収納室106の外装と一体成型されたものであれば、その材質もポリプロピレンである。
【0034】
本実施形態の場合、図3に示すように、発光部101が発した光は、導光部450の端面である光入射面123より導光部450内に入射し、導光部450を通りユーザに光を表示させる表示部455まで到達する。発光部101は、上述したように可視光を採用しており拡散光であるため、矢印A1〜A3で示すような複数の光線を導く。
【0035】
ここで、実施形態の導光部450に関し、ポリプロピレンの屈折率が1.49(=n1)であるとする。また、空気の屈折率は1.00(=n2)であることから、本例のポリプロピレンから空気への臨界屈折角は、スネルの法則である
n1・sinθ1=n2・sinθ2
より、約43°となる。
【0036】
よって、図3のポイント(i)での入射角θが43°以上の光線は、ポリプロピレン(導光部450)と空気との界面で全反射する。そして、矢印A1やA3に示すように、導光部450内で全反射を繰り返しながら、上端部に形成された傾斜面452に到達し、ここで反射されて表示部455に到る。傾斜面452の位置は支持部材3裏面側にあって、操作部3Mより高い位置まで延在している。そしてその正面側が高く、インク収納室11の正面に対向する部分(背面側)が低くなるように傾斜している。
【0037】
従って、発光部101が発光すると、光は導光部450の底面側端面から上端部の傾斜面452へと案内され、傾斜面452によって反射されて表示部455に到る。ここで、傾斜面452により反射された光を表示部455に円滑に到達させるためには、傾斜面452の光軸456に対する傾斜角θを臨界角以上に設定することが望ましい。すなわち本例の場合、図2(b)に示すように、光軸に対する傾斜角(=入射角)θを43°以上に設定すればよく、本例においては傾斜角を45°として全反射条件を満たすようにしている。これにより、導光部450によって案内された光が傾斜面452で全反射されて表示部455に到達するので、ユーザの視認性が向上する。
【0038】
なお、インクタンク(液体収容容器)1の所定の情報としては次のようなものがある。インクタンク1の装着良否(装着が完全か否か)、装着位置の適否(予め定められているホルダ上の装着位置に正しく装着されているか否か)、インク残量等である。そして、発光の有無や発光の状態(点滅など)によりそれらの情報の提示が可能となる。
【0039】
図4は上記実施形態に係るインクタンクが着脱可能に構成された記録ヘッドユニットの一例を示す斜視図、図5(a)〜(c)はインクタンクを記録ヘッドユニットに装着する際の動作を説明するための図である。なお、ここで説明する取り付け部は、後述する各実施形態ないし変形例にも適用可能なものである。
【0040】
記録ヘッドユニット105は、概して、複数(図では4個)のインクタンクを着脱可能に保持するホルダ150と、底面側に配置される記録ヘッド105’(図4では不図示)とからなっている。そしてインクタンクをホルダ150に装着することで、ホルダ底部に位置する記録ヘッド側のインク導入口107とインクタンクのインク供給口7とが結合し、両者間のインク連通路が形成される。
【0041】
記録ヘッド105’としては、ノズルを構成する液路内に電気熱変換素子を設けたものとすることができる。特に、電気熱変換素子に記録信号となる電気パルスを与えることによりインクに熱エネルギを付与し、そのときのインクの相変化により生じる発泡(沸騰)時の圧力をインクの吐出に利用するものを用いることができる。そして、後述するキャリッジ205に設けられた信号伝達用の電気接点部(不図示)と記録ヘッドユニット105側の電気接点部157とのコンタクトが行われ、配線部158を介して記録ヘッド105’の電気熱変換素子駆動回路への記録信号の伝達が行われる。また、電気接点部157からはコネクタ152に至る配線部159も延設されている。
【0042】
インクタンク1を記録ヘッドユニット105に装着する場合には、ホルダ150の上方でインクタンク1を取り扱う(図5(a))。次に、インクタンク背面側に設けられた突起状の第1係合部5を、ホルダ背面側に設けられた貫通孔状の第1係止部155に挿通した状態でホルダ底面上に載置する(図5(b))。この状態でインクタンク1の正面側上端を矢印Pに示すように押下すると、インクタンク1は第1係合部5および第1係止部155の係合部分を回動支点として矢印R方向に回動し、インクタンク正面側が下方に変位してゆく。この過程で、インクタンク正面側の支持部材3に設けられた第2係合部5の側面がホルダ正面側に設けられた第2係止部156に押されながら、支持部材3も矢印Q方向に変位してゆく。
【0043】
そして第2係合部6の上面が第2係止部156の下方に至ると、支持部材3は自身の弾性力によってQ’方向に変位し、第2係合部6が第2係止部156によって係止される。この状態(図5(c))では、第2係止部156が支持部材3を介してインクタンク1を水平方向に弾性的に付勢し、インクタンク1の背面がホルダ150の背面に当接する。また、インクタンク1上方への変位は、第1係合部5が係合した第1係止部155および第2係合部6が係合した第2係止部156によって抑制される。これがインクタンク1の装着完了状態であり、このときインク供給口7およびインク導入口107、またパッド102およびコネクタ152が接合した状態となる。
【0044】
図6は、以上説明したインクタンクを装着して記録を行うインクジェットプリンタ200の外観を示す図であり、図7は、図14に示す本体カバー201を開放した状態を示す斜視図である。なお、ここで説明する記録装置は、後述する各実施形態ないし変形例にも適用可能なものである。
【0045】
図6に示すように、プリンタ200は、ヘッドおよびタンクを搭載したキャリッジが走査のための移動をして記録を行うプリンタの主要部分が、本体カバー201およびその他のケース部分によって覆われているプリンタ本体を備える。プリンタ本体の前後には、排紙トレイ203と、自動給紙装置(ASF)202とが備えられる。また、本体カバーを閉じた状態および開いた状態の両方で本プリンタの状態を表示するための表示器、電源スイッチおよびリセットスイッチを備えた操作部213が設けられている。
【0046】
本体カバー201を開放した状態で、図7のように、ユーザは、ヘッドユニット105およびタンク1K、1Y、1M、1Cを搭載したキャリッジ205が移動する範囲と周辺を見ることができる。なお以下では、これらのインクタンクを同一の符号「1」で示す場合もある。実際は、本体カバー201を開けると、キャリッジ205が自動的に同図に示すほぼ中央の位置(以下、「タンク交換位置」ともいう)へ移動するシーケンスが実行され、ユーザは、このタンク交換位置でそれぞれのインクタンクの交換操作などを行うことができる。
【0047】
本実施形態のプリンタは、各色のインクに対応したチップ形態の記録ヘッド(不図示)が設けられた記録ヘッドユニット105を用いる。これら各色の記録ヘッドがキャリッジ205の移動によって用紙などの記録媒体に対して走査を行い、この走査の間に記録媒体にインクを吐出して記録を行う。すなわち、キャリッジ205は、その移動方向に延在するガイド軸207と摺動可能に係合するとともに、キャリッジモータおよびその伝動機構によって、上述の移動をすることができる。そして、K、Y、M、Cのインクに対応したそれぞれの記録ヘッドでは、フレキシブルケーブル206を介して本体側の制御回路から送られる吐出データに基づいてインク吐出が行われる。また、紙送りローラや排紙ローラなどの紙送り機構が設けられ、自動給紙装置202から給紙された記録媒体(不図示)を排紙トレイ203まで搬送することができる。また、キャリッジ205には、インクタンクホルダを一体に備えた記録ヘッドユニット105が着脱自在に装着され、一方、この記録ヘッドユニット105に対してそれぞれのインクタンク1が着脱自在に装着される。
【0048】
記録動作に際しては、記録ヘッドが上記の移動によって走査しその間にそれぞれの記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録ヘッドにおける吐出口配列範囲(記録ヘッド主走査方向に直交する方向)に対応した有効幅の領域に記録を行う。この走査と次の走査の間に、上記紙送り機構によって上記幅またはそれ未満の所定量の紙送りを行うことにより、記録媒体に対して順次記録を行ってゆく。また、上記のキャリッジ移動による記録ヘッドの移動範囲の端部には、各記録ヘッドについてその吐出口が配設された面を覆うキャップなどの吐出回復ユニットが設けられている。これにより、記録ヘッドは所定の時間間隔で回復ユニットが設けられた位置へ移動して、予備吐出などの回復処理を行う。
【0049】
各インクタンク1のタンクホルダ部を備えた記録ヘッドユニット105には、前述したように、各インクタンクに対応してコネクタが設けられており、それぞれのコネクタは装着されるインクタンク1に設けられている基板100のパッド102と接触する。これにより、それぞれの発光部101について、記録装置が実行する所定のシーケンスに従った点灯ないし点滅の制御を行うことができる。これにより、インクタンクの状態に関する情報の報知が可能となる。
【0050】
具体的には、上記のタンク交換位置で、各タンク1についてインク残量が少なくなった時、該当するタンクの発光部101を点灯または点滅させ、導光部450および表示部452を介し、目視に供する。また、発光部の点灯などの制御の他の例として、上記タンク交換位置で、インクタンク1が正しい位置に正しく装着されたときに、そのタンクの発光部101を点灯させることで、導光部450および表示部452を介し、ユーザの目視に供することもできる。これらの制御は、記録ヘッドのインク吐出などの制御と同様、フレキシブルケーブル206を介して本体側の制御回路からそれぞれのインクタンクに対して制御データ(制御信号)が送られることによって実行される。
【0051】
さらに、キャリッジの移動範囲において、上述の回復ユニットが設けられた位置と反対側の端部付近に、受光素子を有した受光部210を設けることができる。これにより、キャリッジ205の移動に伴ってそれぞれのインクタンク1の表示部452がこの受光部を通過する際に発光部101を発光させ、その光を導光部450および表示部452を介して受光部に受光させることができる。そして受光したときのキャリッジ205の位置に基づいて、キャリッジ205におけるそれぞれのインクタンク1が装着されているか否かや、正しい位置に装着されているか否かなどを検出することができる。つまり、表示部452は、ユーザの目視のためだけでなく、記録装置が実行する検出動作および制御にも供し得るものである。なお、これらを両立するためのより好ましい構成については、次の実施形態で述べる。
【0052】
2.特徴構成の第1例
ユーザは、表示部から光の出射をしているインクタンクを正確に特定できることが強く望ましい。ここで、出射光量が小さすぎると視認自体が困難となる。一方、出射光量が大きすぎると隣接インクタンクとの間で誤認が生じ易く、インクタンクの正確な特定が困難となる恐れがある。これは受光部についても同様であり、着目するインクタンクでなく隣接インクタンクからの光を受光してしまう恐れがある。
【0053】
従って、表示部の出射光がユーザおよび受光部の双方に好ましく到達するような構成を採ることが望ましく、以下ではそのための構成について説明する。
【0054】
図8は上述の前提構成に加え、特徴構成を採用した実施形態に係るインクタンクの斜視図、図9(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、そのインクタンクの側面図、上面図、底面図および正面図である。また、図9(e)および(f)は、それぞれ、蓋部材を取り外して示すインクタンクの上面図の一部および正面図である。
【0055】
本例は、基本的に図1とほぼ同様の構成を有している。すなわち、傾斜面582を有する導光部580を発光部101との対向部位から立設し、その上側の正面に位置する部分から光が出射されるようにして、この部位を表示部585としているものである。そして本例では、表示部585に対向して、所定の開口部21Aを有するとともに表示部585の周縁部分を覆うことで光の出射を制限する出射光制限部材21を設けてある。
【0056】
符号2で示すものは、インクタンク1の上面に装着されてその内部を覆うとともに、内部を大気と連通させる大気連通口20を有した蓋部材である。本例では、出射光制限部材21を例えば熱可塑性エラストマーで形成することで、蓋部材2に融着して一体化したものとすることができる。なお、熱可塑性エラストマーは透明な材料であるので、上記周縁部分からの光の出射をより低減し、受光部210での受光動作の安定化およびユーザの視認性の向上するために、例えば着色顔料を添加することで着色したものとしても良い。あるいはエラストマー以外の材料を用いることもできるし、また蓋部材2と同一の材料として一体に成型されたものとすることもできる。ここで、蓋部材2が透明な部材で形成されるのであれば、出射光制限部材21をなす部分の表裏少なくとも一方の面に凹凸形状を設けたり、ブラスト処理を施したり、あるいは塗装を施したりすること等により光の出射を制限するようにしても良い。
【0057】
本実施形態によれば、表示部からの光の出射を適切に制限することで、表示部周縁に言わば額縁状にコントラストをつけることができ、ユーザの視認性向上と受光部の動作安定化との双方にとって好ましい光量を得ることが可能となる。そのようにコントラストをつけることが可能なものであれば、出射光制限部材21はどのような形状のものであってもよい。しかし上記出射光制限部材の、開口部21A周囲部分からの光の出射を遮光し、開口部21Aを経由した光のみ出射するために、光を透過しない(すなわち光を遮る)遮光材にて出射光制限部材21を形成することが好ましい。
【0058】
ところで、ユーザはプリンタの配置等によってプリンタ内のインクタンクの表示部を様々な方向から見る可能性があるため、なるべく表示部からは広範囲に光を照射させることが望ましい。一方、表示部はユーザの目視のためだけでなく、記録装置が実行するインクタンク検出動作および制御にも供されるものであり、そのために記録装置内には受光部210(図7)が設けられる。
【0059】
例えば、受光部210に対してキャリッジ205を走査させると、搭載されている各インクタンクないしはその表示部が受光部210に順次対向しながら通過して行く。その過程で、各色のインクタンクがそれぞれ本来装着されるべき部位に装着されているか否かを検出することができる。すなわち、あるインクタンクが受光部210と対向するタイミングで、その対向位置にあるべき色のインクを収納したインクタンクの発光部を発光させ、表示部から光の出射を行わせる。このとき受光部210が受光すれば、そのインクタンクは正しい部位に装着されているものと認識でき、受光しなければ誤った部位に装着されているものと認識できる。そして、後者であれば、例えば記録動作を許可せず、ユーザに本体カバー201(図6)の開放を促し、さらに誤装着に係るインクタンクの発光部ないし表示部を点滅させる等して、装着のやり直しを促すことができる。これにより、インクタンクの誤装着に起因して色再現が狂ってしまうという不都合や、インク残量がないインクタンクについて表示が行われない一方で残量のあるインクタンクについて表示が行われてしまうという不都合などを予防できる。
【0060】
このようなインクタンクの検出や制御に供される受光部210は、キャリッジに搭載されて走査されるインクタンクに対し、装置内に固定されて配置されるため、検出動作時においてインクタンクの表示部との位置関係は一定となる。そのため、表示部には、ユーザの目視に供される場合と異なり、受光部を記録装置に固定する際の取り付け精度の中でできるだけ狭い範囲に光の出射を行うことで光量の密度を高くし、受光部に向かうへ光量を安定的に確保することが求められる。
すなわち、表示部には2つの機能を満たすために相反することが要求されることになる。そこで本実施形態では、ユーザの視認性と受光部の受光量安定化とをさらに向上できるようにした構成を採用している。
【0061】
図10(a)は記録装置に図8に示したインクタンク1を複数搭載した状態を正面から見た模式図であり、特にシアンタンク1C、マゼンタタンク1M、イエロータンク1Yに着目したものである。また、図10(b)は同図(a)の配列においてマゼンタインク用のインクタンク1Mの表示部に対向して受光部が位置している状態を示している。さらに、図11は本例の導光部の機能を説明するためのインクタンク1の側面図である。なお、これらの図においては、導光部580ないし表示部585を誇張して描くとともに、蓋部材2ないしは出射光制限部材21を省略している。
【0062】
本例の導光部580の形状は、略T字形状の横断面を有し、上方(z方向)からみると、走査方向に延在する部分と、それに垂直な方向に延在する部分とが組み合わされた形状となっている(図11)。また、図10(a)においては傾斜面582によって導光部580をカットした形状を望むことができる。その形状は、正面方向から見ればやはり走査方向(x方向)に延在する部分Eと、それに垂直な方向(z方向)に延在する部分Dとが組み合わされた略T字形状となって現われる。
【0063】
導光部580の底面側端部において略T字形状を構成する上記2つの部分の交に対向する位置に発光部101が配されている。発光部101が発した光が導光部580に入射すると、図11において破線511で示すように導光部580内を案内されて傾斜面582で反射され、インクタンクの正面側から前方(図11の右方)に出射される。
【0064】
ここで、記録装置内に固定されている受光部210は、その実装時の取り付け公差により、インクタンクとの相対位置関係が変化し得る。すなわち、図10(b)において、キャリッジ走査方向(x方向)と、これに垂直な方向(y方向)と、図面に直交する方向(以下、z方向)とについてずれが生じ得る。しかし本例では、導光部580の形状によってこれら各方向におけるずれを許容しながら、インクタンクの装着状態の良否や装着位置の適否を判定するためのインクタンク検出動作を正しく行うことを可能としている。
【0065】
本例の場合、受光部210は、前方(y方向)において出射光を受けるよう配置される。従ってy方向のずれは、光の出射位置から受光部210までの距離の変化に影響するため、表示部585から出射された光の検出強度が変化することになる。しかし、公差の範囲での光量変化を許容するよう適切な閾値設定を行うことで、y方向の受光部210のずれを許容し、インクタンク検出動作を正しく行うことができる。
【0066】
また、x方向のずれは、インクタンク1の発光部101を発光させ、キャリッジを走査しながら表示部585の出射光を受光部210で連続的に受光させることで許容される。x方向での受光部のずれがあっても、そのずれに見合った範囲で発光ないし受光を行わせるようにすればインクタンク検出動作を正しく行うことができる。また、部分Dの存在により、受光部210の受光量変化曲線は最大値(ピーク値)をもつので、その検出時点を知ることで、次回以降の検出動作のための発光部101の発光タイミングを調整し、x方向のずれを補正することも可能である。
【0067】
さらに、正面方向から見た場合の部分Dのz方向の長さが、z方向の受光部210の取り付け位置公差範囲以上であれば表示部585からの光を受光することができる。このことにより、z方向の受光部210のずれが許容され、インクタンク検出動作を正しく行うことができる。なお、部分Dの長さが短いほど、表示部585から出射される光の密度が高くなり、受光部210が受光する光量が多くなるため、外乱光などの影響を受けることなく確実にインクタンク検出動作を行うことができる。従って、部分Dの長さは、受光部210の取り付け位置公差と受光部210が受光する好ましい光量とに基づいて適宜設計することができる。
【0068】
一方、表示部である表示部585は、例えばインクタンクのインクが少なくなったときに点灯もしくは点滅する等によりユーザの目視に供されるものである。従って、ユーザが様々な位置や角度から視認できるよう、光の出射領域は広く取ることが望ましい。そのため、主として受光部の検出動作にとって好ましくなるよう寸法および形状を定めた部分Dに加えて、部分Eの寸法および形状を適宜設計することで、光の出射領域について十分な広がりを確保することができる。つまり、表示部585はインクタンク1の幅方向へも延在しており、幅方向に広く光を出射することができる。それにより、ユーザが視認できるエリアを広くし、視認性をさらに向上することができる。
【0069】
なお、本例では、略T字形状の横断面をもつ角柱の形態の導光部としたが、表示部である上端部552において好ましい光の出射が得られる形状および寸法が実現されるものであれば、上端部552に至るまでの導光部の形状は適宜定め得るものである。上端部は略T字形状以外の形でもよい。本発明の特徴は、表示部からの出射光を適切に制限し、表示部での視認性向上と受光部の動作安定化双方に好ましい光量を得るものである。必ずしも導光部においてそのような形状を採用することを必須とするものではない。すなわち、導光部横断面ないしその光の出射部の形状は矩形や円形など、より単純な形状であってもよい。これらは次に述べる第2例でも同様である。
【0070】
3.特徴構成の第2例
図12(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、特徴構成の第2例に係るインクタンクの側面図、上面図、底面図および正面図である。図13(a)は記録装置に図12(a)、(b)、(c)および(d)に示したインクタンク1を複数搭載した状態を正面から見た模式図であり、特にシアンタンク1C、マゼンタタンク1M、イエロータンク1Yに着目したものである。また、図13(b)は同図(a)の配列においてマゼンタインク用のインクタンク1Mの表示部に対向して受光部が位置している状態を示している。さらに、図14は本例の導光部の機能を説明するためのインクタンク1の側面図である。なお、これらの図においては、導光部580ないし表示部585を誇張して描いている。
【0071】
上記特徴構成の第1例では、導光部580の上側の正面位置から光が出射されるようにするとともにその部位に出射光制限部材21を設けてこの部位を表示部とした。これに対し本例は、傾斜面582が支持部材3の操作部3Mの裏側に位置するように導光部580の高さを第1例に比べて低いものとしている。また、操作部3Mの一部に開口29を設け、その開口29を通して、導光部580の傾斜面582で反射されて上側の正面位置から出射された光を目視ないし受光できるようにしている。すなわち本例の場合、操作部3Mが出射光制限部材をなし、その開口が表示部として機能する。
【0072】
ここで、操作部3Mを例えば熱可塑性エラストマーで形成することで、支持部材3に融着して一体化もしくは一体成型したものとすることができる。なお、熱可塑性エラストマーは透明な材料であるので、上記周縁部分からの光の出射をより低減し、受光部210での受光動作の安定化およびユーザの視認性の向上するために、着色したものとしても良い。あるいはエラストマー以外の材料を用いることもできる。また、操作部3Mが支持部材3とともに導光部580と一体に透明な部材で形成されるのであれば、出射光制限部材をなす操作部3Mの表裏少なくとも一方の面に凹凸形状を設けることにより光の出射を制限するようにしても良い。また、ブラスト処理を施したり、あるいは塗装したりすること等により光の出射を制限するようにしても良い。
【0073】
本例によっても、表示部からの光の出射を適切に制限することで、表示部周縁に言わば額縁状にコントラストをつけることができ、ユーザの視認性向上と受光部の動作安定化との双方にとって好ましい光量を得ることが可能となる。
【0074】
また、本例においても、少なくとも導光部580が光を出射する部分において上記第1例と同様の形状とすることで、受光部210の実装時の取り付け公差に起因したx方向、y方向およびz方向のずれを補償して受光部の受光量安定化を図ることができる。また、これとともに、ユーザが視認できるエリアを広くし、良好な視認性を確保することができる。
【0075】
4.その他
なお、本発明は以上の各実施形態に限られるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜の変形が可能である。
【0076】
まず、導光部の形態や形状は上述のものに限られず、種々のものとすることができる。例えば、導光部がインクタンク外装ないし支持部と一体でなくてもよく、図15に示すように、導光部121をインクタンク1の外装と別体の部材にて形成した後に、両者を一体に組み立てたものでもよい。この形態では、それぞれの部材の材料に対しより適切なものを選択することができる。例えば、導光部121の材料として、発光部から発光された光をより効率良く導光することができる屈折率の高い材料、すなわち空気との屈折率との差が大きいポリカーボネイトやアクリル等を選択することができる。一方、インクタンク1の外装の材料としては、例えば内蔵するインクIの蒸発に対し抑制効果の高いポリプロピレンなどを選択することができる。両者を別の材料で形成できるため、出射光制限部材を設けるタンクの構成部品ないしは支持部材3の材料は特に透明なものに限る必要が無く、適宜選択することが可能となる。後工程において特別な処理を施さなくても出射光制限部材として機能させる部分を設けることが可能となる。
【0077】
本発明は導光部材を必須とするものではない。例えば発光部101を開口21Aもしくは操作部3Mに隣接した位置に設けることで、発光部101からの直接の出射光が出射光制限部材により制限される構成でもよい。
【0078】
また、インク収納室11と導光部との間に空気層を設けるのではなく、インク収納室11と導光部121との間に他の部材、例えば導光部よりも屈折率が低い低屈折率部材や、金属などで形成した反射部材を採用しても良い。あるいは、導光部と、これに接する空気または異種材料の屈折率の差を利用して導光を行うものする代わりに、コアとクラッドとからなる光ファイバを適用してもよい。また、導光部を中実の部材とするのではなく、光を反射する内側面をもつ中空部材(ステンレスパイプなど)を採用してもよい。
【0079】
さらに、導光部に設けた傾斜面は、光軸を表示部に向けて好ましく屈曲させる機能を果たすものである。従って傾斜面は、導光部450によって案内される光軸との角度(入射角)と、表示部側へ反射する角度(反射角)とが一致するよう設定されていればよく、使用する材料や屈曲させる角度等に応じ、全反射条件を満たす範囲で適宜設定することができる。また、光を効率よく反射させるために、高屈折率の部材や高反射率の部材で傾斜面を構成してもよく、例えば金属箔等を貼り付けてもよい。また、そのような傾斜面を設ける代わりに、導光部を湾曲させた形状のものとしてもよい。あるいは、表示部の配設部位に応じて光軸の屈曲が不要であれば、それらの傾斜面や湾曲部は不要であり、表示部が導光部の主軸と垂直になるようにすることもできる。
【0080】
いずれの場合においても、基本的には発光部と表示部とを分離し、両者間の光接続を行う導光部がインクタンクに設けられている。これにより、視認性および操作性を阻害する電力供給用および信号授受用の配線等を必要とせず、発光部と表示部とを個々に最適な位置へ配置する構成を廉価に得ることが可能となる。それにより、ユーザ視認性が良好な位置への表示部の配置の自由度を確保することができ、ユーザはその光の出射状態を容易に目視することにより、インクタンクに係る所定の情報を認識することが可能となる。
【0081】
そして、表示部の光の出射を適切に制限する部材を設けることで、表示部周縁に言わば額縁状にコントラストをつけることができ、ユーザの視認性向上と受光部の動作安定化との双方にとって好ましい光量を得ることが可能となるのである。
【0082】
また、本発明は、上述の諸例のような発光部を有さない形態のインクタンクへの適用も可能である。例えば、記録装置側に発光部としての光源が設けられていてもよ。そのような形態では、例えば、あるインクタンクのインクがなくなったとき、そのインクタンクの導光部入射面が光源と対向するよう設定を行い、その位置で光源を発光させることで、表示部を介して報知を行うことができる。
【0083】
吐出されたインク量に対応した量のインクが常に、ヘッドに対し連続的に供給されるように供給系を構成した方式のもの(連続供給方式)を説明した。キャリッジ等に搭載されて往復移動(主走査)する記録ヘッドに分離可能に取り付けられる形態のインクタンクを用いる構成に本発明を適用した場合について説明した。しかし本発明は、記録ヘッドに対して一体不可分に取り付けられたインクタンクを用いる構成に適用することもできる。そのような構成であっても、装着位置が異なれば異なる色のデータを受け取ったり、あるいは色の重なり順が設計とは異なることによって所望の記録品位が得られなくなることがあるからである。
【0084】
また本発明は、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドとは別体にインクタンクを記録装置の固定部位に取り付け、可撓性チューブを介してその固定インクタンクと記録ヘッドとを連結してインクを供給するチューブを用いる連続供給方式を採る構成にも適用できる。すなわち、固定のインクタンクに関して上述のいずれかの導光部を適用することもできる。この場合は、例えば、固定インクタンクをキャリッジの走査範囲に配置するとともに、装置側の検出ないし制御に供される受光部をキャリッジ上に設けたものとすることができる。
【0085】
さらに、このような構成は、チューブを用いた連続供給方式によるものだけでなく、間欠供給方式によるものに対しても適用が可能である。これは、記録ヘッドに少量のインクを貯留する貯留部(中間タンク)を備え、貯留部に対し大量のインクを補給する供給源(固定インクタンク)から適宜間欠的にインクが供給される供給系を構成した方式である。また、中間タンクへのインク充填を行う際にのみ固定インクタンクとのインク供給系が空間的に接続される形態のものでも良い。チューブ連通構造を採りつつも、その連通構造を弁等によって適宜開閉することによって、両タンク間を流体的に絶縁および接続するような構成を有するものであってもよい。
【0086】
加えて、上述の各例では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色インクタンクを用いる形態について説明したが、用いるインクの色調(色および濃度)ないしはインクタンクの数はこれに限られることないことは勿論である。また、それらのインクに加え、淡色インクや、レッド,グリーン,ブルーなどの特色インクを用いる形態であってもよい。特にインクタンクの数が増すほど誤装着が発生しやすく、また配線やその接続部分によって視認性や着脱時の操作性を阻害し易くなったり、あるいは他のインクタンクの表示状態との誤識別が生じやすくなったりする。よって、これらを防ぐ意味で本発明の有効性が高くなると言い得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の基本構成に係るインクタンクの側面図、正面図および底面図である。
【図2】(a)および(b)は本発明の図1のインクタンクに配置される導光部等の機能の概略を説明するための模式的側面図およびその要部拡大図である。
【図3】図2の一部を更に拡大して示す模式的側面図である。
【図4】図1のインクタンクを着脱可能とすべく構成された記録ヘッドユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)はインクタンクを記録ヘッドユニットに装着する際の動作を説明するための図である。
【図6】インクタンクを装着して記録を行うインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図7】図6の記録装置を、その本体カバーを取り外して示す斜視図である。
【図8】本発明の特徴構成を用いる実施形態に係るインクタンクの斜視図ある。
【図9】(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、図8のインクタンクの側面図、上面図、底面図および正面図、(e)および(f)は、それぞれ、蓋部材を取り外して示すインクタンクの上面図および正面図である。
【図10】(a)は記録装置に図8に示したインクタンクを複数搭載した状態を正面から見た模式図、(b)はそのインクタンク群がキャリッジの移動によってプリンタ内に配された受光部に対向する状態を説明するための模式図である。
【図11】図8に示した導光部に光が入射してから出射していくまでの光線の様子を説明するための模式的側面図である。
【図12】(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、本発明の特徴構成を用いる他の実施形態に係るインクタンクの側面図、上面図、底面図および正面図である。
【図13】(a)は記録装置に図12に示したインクタンクを複数搭載した状態を正面から見た模式図、(b)はそのインクタンク群がキャリッジの移動によってプリンタ内に配された受光部に対向する状態を説明するための模式図である。
【図14】図12に示した導光部に光が入射してから表示部を通過していくまでの光線の様子を説明するための模式的側面図である。
【図15】本発明の別の実施形態に係るインクタンクを説明するための模式的側面図である。
【符号の説明】
【0088】
1、1K、1C、1M、1Y、501 インクタンク
2 蓋部材
3 支持部材
3M 支持部材操作部
5 第1係合部
6 第2係合部
7 インク供給口
21 出射光制限部材
21A、29 開口
100 基板
101 発光部(LED)
102 パッド(コンタクト端子)
103 制御素子(制御部)
105 記録ヘッドユニット
105’ 記録ヘッド
107 インク導入口
121、580 導光部
455、585 表示部
150 ホルダ
152 コネクタ
155 第1係止部
156 第2係止部
157 電気接点部
158、159 配線部
201 本体カバー
206 フレキシブルケーブル
209 エンコーダスケール
210 受光部
452、582 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録装置で用いられる液体を収納するための液体収納容器であって、
光を出射することで情報を表示するための表示部と、
前記表示部の周縁に設けられて光の出射を制限する出射光制限部材と、
を具えたことを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記出射光制限部材は前記表示部を額縁状に囲むよう配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記出射光制限部材が光を遮ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記出射光制限部材は、液体収納容器構成部材と同一材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記表示部に対して発光源からの光を導くための導光部を具えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記出射光制限部材は、前記液体収納容器構成部材と融着可能な熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記出射光制限部材は、着色顔料を添加することで着色されてなることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記表示部と、前記出射光制限部材と、液体収納容器構成部材とが同一材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記導光部は、前記表示部として光を出射する部分を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項10】
前記導光部は前記インクジェット記録装置またはこれに取り付けられる部材への前記液体収納容器の装着操作を受容する操作部に向けて光を照射する部分を有し、前記表示部および前記出射光制限部材は、それぞれ、当該照射光を出射する開口およびこれを形成する部分として前記操作部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項11】
前記インクジェット記録装置またはこれに取り付けられる部材に着脱可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項12】
前記発光源としての発光部と、装着時に前記発光部を駆動するための信号を受容する接点とを具えたことを特徴とする請求項11に記載の液体収納容器。
【請求項13】
前記液体としてのインクを収納してなることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項14】
前記表示部に対向可能な受光部を具え、請求項13に記載の液体収納容器をインク供給源として用いて記録を行うことが可能なインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−142818(P2006−142818A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306144(P2005−306144)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】