説明

液体口腔用組成物

【課題】十分な有効量の収斂成分を含有しつつ、苦味、渋味などの味が改善された液体口腔用組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(E):
(A)水溶性アルミニウム塩、水溶性亜鉛塩及び水溶性マグネシウム塩から選ばれる多価金属塩 0.02〜0.3質量%、
(B)グリセリン 2〜9質量%、
(C)スクラロース 0.002〜0.01質量%、
(D)糖アルコール 0.5〜10質量%、及び
(E)水 75〜95質量%
を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比(B/A)が20〜90であって、
成分(C)と成分(A)の質量比(C/A)が0.02〜0.1である液体口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用感の良好な液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩等の金属塩は優れた収斂作用に基づき、歯肉をひきしめ、炎症を抑制し、止血作用、象牙質知覚過敏症の症状を緩和する作用等を有することから、歯周病や歯肉炎予防用の歯磨剤や洗口剤に配合されている。
ところが、これらの収斂剤を多量に含有する口腔用組成物は、白濁や沈殿を生じる、苦味や渋味を有する等の問題があった。かかる欠点を抑制すべく、鎖式炭化水素化合物やロウ類を配合する(特許文献1、2)、糖アルコールを配合する(特許文献3)、アミノ酸や蛋白質を配合しpHを調整する(特許文献4)、フッ素との配合比率を調整する(特許文献5)等が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−87458号公報
【特許文献2】特開平11−21219号公報
【特許文献3】特開平10−231237号公報
【特許文献4】特開昭61−23768号公報
【特許文献5】特開平5−155745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの技術によっては、苦味や渋味を十分に抑制できなかったり、苦味、渋味を抑制できるが収斂感も失われ、種々の成分を多量に配合すると、例えば炭化水素等を多量に配合すると歯磨剤や洗口剤としての使用感が大きく損なわれてしまうという新たな問題も生じた。かかる口腔内の使用感の問題は練歯磨剤よりも洗口剤等のような液体口腔用組成物において特に顕著である。
従って、本発明の課題は、十分な収斂感を有しつつ、苦味、渋味などの味が改善された液体口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、アルミニウム塩等の収斂成分と種々の成分を組み合せて配合し、その収斂作用及び味等について検討してきたところ、収斂成分に、2〜9質量%のグリセリンと一定量のスクラロースと一定量の糖アルコールとを組み合せて配合し、多量の水を含む液体口腔用組成物にすると、収斂感を有しつつ、組成物を口腔内に適用中の苦味や渋味が低減されるだけでなく、全く意外にも、当該組成物を口腔内に適用後の後味が顕著に良好になることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(E):
(A)水溶性アルミニウム塩、水溶性亜鉛塩及び水溶性マグネシウム塩から選ばれる多価金属塩 0.02〜0.3質量%、
(B)グリセリン 2〜9質量%、
(C)スクラロース 0.002〜0.01質量%、
(D)糖アルコール 0.5〜10質量%、及び
(E)水 75〜95質量%
を含し、成分(B)と成分(A)の質量比(B/A)が20〜90であって、成分(C)と成分(A)の質量比(C/A)が0.02〜0.1である液体口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体口腔用組成物を用いれば、収斂成分による優れた収斂感を有しつつ、苦味、渋味などの味が改善され、しかも、液体口腔用組成物を口腔内への適用後までも苦味、渋味が低減される結果、適用中から適用後までも使用感が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられる(A)水溶性アルミニウム塩、水溶性亜鉛塩及び水溶性マグネシウム塩から選ばれる多価金属塩は、収斂作用を奏し、歯肉のひきしめ、抗炎症作用等を示す成分である。このうち、収斂効果と苦味抑制の点から水溶性アルミニウム塩が好ましい。水溶性アルミニウム塩としては、乳酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物)、ナトリウムミョウバン(硫酸ナトリウムアルミニウム十二水和物)硝酸アルミニウム等が挙げられ、収斂効果及び渋味抑制の点から、このうちアラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウムが特に好ましい。
【0009】
水溶性亜鉛塩としては、パラフェノールスルホン酸亜鉛塩、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0010】
水溶性マグネシウム塩としては、グルコン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0011】
成分(A)の多価金属塩は、本発明の液体口腔用組成物中に0.02〜0.3質量%含有する。この範囲であれば、十分な収斂作用を奏し、かつ苦味、渋味が抑制される。より好ましい含有量は0.05〜0.2質量%であり、さらに好ましくは0.075〜0.15質量%である。
【0012】
本発明に用いられる(B)グリセリンは、成分(A)の多価金属塩の味を改善する作用を有する。グリセリンの含有量は、本発明組成物を口腔内適用中及び適用後の苦味、渋味改善効果、及び収斂感を維持する点から液体口腔用組成物中2〜9質量%であり、より好ましくは2.5〜8.5質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。グリセリンの含有量が少ない場合には味の改善作用が十分でなく、多すぎる場合は、甘味が強すぎ、後味が悪くなり収斂感が失われる。
【0013】
本発明に用いられる(C)スクラロースは人工甘味料であり、液体口腔用組成物中に0.002〜0.01質量%含有する。この含有量の範囲としたときに、(B)グリセリン及び(D)糖アルコールとの相互作用により、口腔内への適用時だけでなく、適用後までも苦味や渋味が低減され、使用感が良好になる。好ましい含有量は0.0025〜0.009質量%であり、特に好ましくは0.003〜0.008質量%である。
【0014】
本発明に用いられる(D)糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、α−D−グルコピラノシル−1,6ーマンニトール、α−D−グルコピラノシル−1,6ーソルビトール等が挙げられ、このうちエリスリトール、キシリトール、マルチトールが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(D)糖アルコールの含有量は、液体口腔用組成物中に0.5〜10質量%であり、1〜10質量%が好ましく、特に3〜7質量%が好ましい。この含有量の範囲であれば、多価金属塩の収斂作用を保持し、かつ口腔内適用中及び適用後の苦味、渋味改善効果が良好である。
【0015】
成分(B)と成分(A)との質量比(B/A)は、収斂感を損なわずに苦味及び渋味改善効果の点から、20〜90であって、好ましくは25〜85であって、特に30〜80が好ましい。
【0016】
成分(C)と成分(A)との質量比(C/A)は、適用時及び後味における収斂感の維持と苦味及び渋味改善の両立から、0.02〜0.1であって、好ましくは0.025〜0.9であって、特に0.03〜0.08が好ましい。
【0017】
また、成分(A)と成分(B)及び甘味度を考慮し調整した(C)の合計量との質量比(A/(B+C×875))は、収斂作用、組成物適用中及び適用後の味の点から0.007〜0.0135が好ましく、さらに0.0077〜0.0132が好ましい。
【0018】
また、成分(B)と成分(D)の合計含有量は、収斂作用の維持と、組成物適用中及び適用後の味の点から、5〜15質量%が好ましく、さらに6〜12質量%が好ましい。
【0019】
本発明の液体口腔用組成物中の(E)水の含有量は、使用感の点で75〜95質量%が好ましく、さらに77〜93質量%が好ましく、特に80〜93質量%が好ましい。
【0020】
本発明の液体口腔用組成物には(F)エタノールを含有させてもよいが、エタノールは苦味、刺激の点から含有しないか又は液体口腔用組成物中に10質量%以下とするのが好ましく、さらに8質量%以下とすることが好ましく、特に6質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明の液体口腔用組成物には、前記成分の他、例えば、界面活性剤、グリセリン以外の湿潤剤、pH調整剤、保存料、殺菌剤、酵素、金属塩以外の薬効成分、顔料、色素、香料等を適宜含有させることができる。
【0022】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。このうち使用感の点から非イオン界面活性剤が好ましく、さらにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。非イオン界面活性剤の含有量は、味と油成分の溶解性の点から0.3〜3質量%が好ましく、さらに0.5〜1.5質量%が好ましい。
【0023】
グリセリン以外の湿潤剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、その1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0024】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油、ハツカ油、アニス油、冬緑油等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、乳酸ナトリウム等の一塩基酸及びその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらを組み合わせて配合することができる。
【0026】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、液体ハミガキ、洗口液として特に有用である。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0028】
実施例1〜7及び比較例1〜10
表1及び表2に示す組成の洗口液を調製し、10名のパネラーにより、組成物(洗口液)10mLを口に含み、20秒間含漱した後、吐き出すことにより味及び収斂感を評価した。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は有効量(100%換算値)を示す。
【0029】
(1)収斂感
収斂感は下記の3段階の基準で評価を行い、その平均値で示した。
評価基準
1:引き締まる
2:やや引き締まる
3:変わらない
【0030】
(2)渋味(洗口中)(洗口後)
洗口中の渋味は、組成物を口に含んでいる時の渋味を評価した。洗口後の渋味は、組成物を口から吐き出した後の渋味を評価した。渋味の程度は下記の3段階の基準で味の評価を行い、その平均値で示した。
評価基準
1:渋くない
2:あまり渋くない
3:渋い
【0031】
(3)苦味(洗口中)(洗口後)
洗口中の苦味は、組成物を口に含んでいる時の苦味を評価した。洗口後の苦味は、組成物を口から吐き出した後の苦味を評価した。苦味の程度は下記の3段階の基準で味の評価を行い、その平均値で示した。
評価基準
1:苦くない
2:あまり苦くない
3:苦い
【0032】
結果を表1及び表2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
表1及び表2より、(E)水を多量に含有し、(A)多価金属塩、(B)グリセリン、(C)スクラロース及び(D)糖アルコールを一定量の範囲に調整した本発明の液体口腔用組成物(洗口液)は、優れた収斂感を維持しつつ、口腔に適用中及び適用後の苦味及び渋味が抑制され使用感が良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E):
(A)水溶性アルミニウム塩、水溶性亜鉛塩及び水溶性マグネシウム塩から選ばれる多価金属塩 0.02〜0.3質量%、
(B)グリセリン 2〜9質量%、
(C)スクラロース 0.002〜0.01質量%、
(D)糖アルコール 0.5〜10質量%、及び
(E)水 75〜95質量%
を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比(B/A)が20〜90であって、
成分(C)と成分(A)の質量比(C/A)が0.02〜0.1である液体口腔用組成物。
【請求項2】
成分(B)と成分(D)の合計含有量が、液体口腔用組成物中5〜15質量%である請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
(F)エタノールを含有しないか、又は10質量%以下含有する請求項1又は2記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
成分(A)が、水溶性アルミニウム塩である請求項1〜3のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
【請求項5】
成分(A)と成分(B)及び成分(C)との質量比(A/(B+C×875))が0.007〜0.0135である請求項1〜4のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。

【公開番号】特開2012−140333(P2012−140333A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291908(P2010−291908)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】