説明

液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法

【課題】吐出口間で液体吐出特性がばらつくのを抑制する。
【解決手段】ヘッドの吐出面2aに、一定の幅で主走査方向に延在する10本の溝109a及び6本の溝109bが、副走査方向に互いに平行に配列されている。溝109a、109bの底部において、インク滴を吐出する吐出口108aが主走査方向に配列されている。互いに隣接する2つの溝109a、109bの輪郭同士を結ぶ最も短い線分の長さである離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下であるときは、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出特性を高めるために、吐出面におけるノズルの開口周縁に撥水膜が形成されたインクジェットヘッドがある。このようなインクジェットヘッドにおいて、吐出面を払拭するワイパから撥水膜を保護するために、吐出面に形成された長穴の底部にノズルの開口を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−334910号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインクジェットヘッドの製造工程においては、吐出面に撥水膜を形成したときに、ノズル内に不要な撥水膜が形成される。このため、吐出面をマスキング材で被覆することによって吐出面のみをマスキングし、ノズル内の不要な撥水膜の除去作業を行う。上述した技術によると、吐出面における長穴の形状及び位置関係によって、吐出面をマスキング材で被覆するときの各長穴内への浸入量が均一にならないことがある。このとき、各ノズル内にマスキング材が入り込まないように、マスキング材を被覆するときの圧力を正確に調整することが難しくなり、各ノズル内に形成された撥水膜のみを精度良く除去することが難しい。ノズル内に撥水膜が不均一に残存するとノズル間でインク吐出特性にばらつきが生じ、印刷品質が低下する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、吐出口間で液体吐出特性がばらつくのを抑制することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、複数の凹部が形成されていると共に、液滴を吐出する吐出口が前記複数の凹部の少なくとも1つの底部に開口している吐出面を備えており、前記凹部の底部に撥液膜が形成されており、前記複数の凹部から選択された、少なくとも一方の底部に前記吐出口が形成された互いに隣接する2つの前記凹部について、当該2つの凹部の輪郭同士を結ぶ最も短い線分である最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなっている。
【0007】
本発明に液体吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出する複数の吐出孔が厚み方向に貫通するように形成されていると共に、前記複数の吐出孔に係る液滴の吐出方向側の開口である複数の吐出口が配置された吐出面を有する板状基材と、前記複数の吐出孔に連通する液体流路が内部に形成された流路形成部材と、前記流路形成部材内の液体に液滴吐出エネルギーを付与するアクチュエータとを含む液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記複数の吐出孔、及び、前記吐出面において少なくとも1つの底部に前記吐出口が開口している複数の凹部を、前記板状基材に形成する基材形成工程と、前記複数の凹部が形成された前記吐出面に、撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、前記撥液膜が形成された前記吐出面に前記吐出口を封止するマスキング材を圧着させる圧着工程と、前記マスキング材で封止された前記吐出口内の前記撥液膜を、前記吐出面の反対側から除去する除去工程と、前記除去工程の後に、前記マスキング材を剥離する剥離工程とを備えている。前記基材形成工程において、前記複数の凹部から選択された、少なくとも一方の前記凹部の底部に前記吐出口が形成された互いに隣接する2つの前記凹部について、当該2つの凹部の輪郭同士を結ぶ最も短い線分である最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなるように前記凹部を形成する。
【0008】
本発明によると、液体吐出ヘッドの製造工程において、吐出面をマスキング材で被覆するときに、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化を図ることができる。これにより、吐出口内にマスキング材が入り込まないようにマスキング材の浸入量を正確に調整することができ、各吐出口内に形成された撥液膜のみを精度良く除去することができる。このため、吐出口間で液体吐出特性がばらつくのを抑制することができる。また、吐出面をクリーニングするワイパを吐出面に接触させたときに、各凹部に対するワイパの浸入量の均一化を図ることができる。これにより、吐出面を均一にクリーニングすることができると共に、ワイパや吐出面が部分的に劣化するのを抑制することができる。
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドにおいては、最も短い前記最短線分に関する前記2つの凹部の当該最短線分に沿う方向に関する長さが、当該2つの凹部以外の他の前記凹部に係る当該最短線分に沿う方向に関する長さ以下であることが好ましい。これによると、最も近接する2つの凹部にマスキング材が入り込みすぎるのを確実に防止することができる。
【0010】
このとき、最も短い前記最短線分に関する前記2つの凹部の当該最短線分に沿う方向に関する長さが互いに同じであることがより好ましい。これによると、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化をさらに図ることができる。
【0011】
また、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記2つの凹部に係る一方の前記凹部について他方の前記凹部と反対側に隣接する第3の前記凹部がある場合、前記一方の凹部及び前記第3の凹部に関する前記最短線分が、当該2つの凹部に関する前記最短線分よりも短いとき、前記一方の凹部に係る当該2つの凹部に関する前記最短線分に沿う長さが、前記他方の凹部に関する当該最短線分に沿う長さよりも短くなっており、前記一方の凹部及び前記第3の凹部に関する前記最短線分が、当該2つの凹部に関する前記最短線分よりも長いとき、前記一方の凹部に係る当該2つの凹部に関する前記最短線分に沿う長さが、前記他方の凹部に関する当該最短線分に沿う長さよりも長くなっていることが好ましい。これによると、凹部に関する線分に沿う長さが、他方の凹部及び反対側の凹部との位置関係によって決定されるため、各凹部に対するマスキング材の浸入量のさらなる均一化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値の5倍以下であるとき、当該最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなることが好ましい。本発明の発明者は、当該線分に沿う方向に関する凹部の中心間距離が、当該線分に沿う方向に関する当該凹部の長さの平均値の5倍を超えると、各凹部に対するマスキング材の浸入量が中心間距離によって変化し難くなることを知見した。これによると、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化を効率よく図ることができる。また、中心間距離が長くなるのを抑制することができるため、液体吐出ヘッドが大型化するのを抑制することができる。
【0013】
このとき、前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値の5倍を超えているとき、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値は、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値の5倍以下となる他の前記2つの凹部に係る当該最短線分に沿う方向に関する当該凹部の長さのうち最も大きい長さと同じであることがより好ましい。これによると、液体吐出ヘッドの不必要な剛性低下を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値の5倍以下であり、且つ、当該最短線分の長さが互いに隣接する複数の範囲のうち同一の範囲にある前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値が互いに同じであってもよい。これによると、凹部の設計が容易になる。
【0015】
さらに、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記凹部の底部に形成された前記吐出口の開口径が互いに異なる前記2つの凹部について、前記開口径の大小関係が、当該2つの凹部に係る前記最短線分に沿う方向に関する長さの大小関係と同じであることが好ましい。これにより、各凹部に対するマスキング材の浸入量がより均一化する。
【0016】
また、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法においては、前記基材形成工程において、前記凹部の底部に形成された前記吐出口の開口径が互いに異なる前記2つの凹部について、前記開口径の大小関係が、当該2つの凹部に係る前記最短線分に沿う方向に関する長さの大小関係と同じになるように、前記板状基材に、前記複数の吐出孔及び前記複数の凹部を形成することが好ましい。これらによると、各吐出口に対するマスキング材の浸入量の調整を行うことが容易になる。
【0017】
加えて、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記複数の吐出口が、前記吐出面において、一方向に沿って複数の前記吐出口が配列された複数の吐出口列を形成し、前記吐出口列に属する複数の前記吐出口に対応する少なくとも2以上の前記凹部、及び、当該凹部同士を前記一方向に互いに連結する連結部が、前記一方向に延在する新たな前記凹部である溝を形成していてもよい。このとき、前記溝の幅が一定であることが好ましい。これによると、凹部を容易に形成することができると共に、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化を効率よく図ることができる。
【0018】
さらに、本発明の液体吐出ヘッドにおいては、前記複数の吐出口が開口する基材と、前記複数の吐出口を露出させるように前記基材の表面に形成されたメッキ層とによって、前記凹部が画定されていることが好ましい。これによると、凹部をさらに容易に形成することができる。
【0019】
本発明の液体吐出ヘッドの製造方法においては、前記圧着工程において、押圧部材が、前記マスキング材を前記吐出面に押圧しつつ前記板状基材と前記最短線分に沿う方向と直交する方向に相対移動することによって、前記マスキング材を前記吐出面に圧着させることが好ましい。これによると、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化を効率よく図ることができる。
【0020】
このとき、前記基材形成工程において、前記板状基材に、一方向に延在しつつ前記一方向と直交する直交方向に配列されつつ、前記直交方向の長さが一定になるように前記複数の凹部を形成し、前記圧着工程において、前記押圧部材が、前記板状基材と前記直交方向に相対移動することがより好ましい。これによると、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化をさらに効率よく図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、液体吐出ヘッドの製造工程において、吐出面をマスキング材で被覆するときに、各凹部に対するマスキング材の浸入量の均一化を図ることができる。これにより、吐出口内にマスキング材が入り込まないようにマスキング材の浸入量を正確に調整することができ、各吐出口内に形成された撥液膜のみを精度良く除去することができる。このため、吐出口間で液体吐出特性がばらつくのを抑制することができる。また、吐出面をクリーニングするワイパを吐出面に接触させたときに、各凹部に対するワイパの浸入量の均一化を図ることができる。これにより、吐出面を均一にクリーニングすることができると共に、ワイパや吐出面が部分的に劣化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態によるインクジェットプリンタの内部構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの上面図である。
【図3】図2に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図4】図3に示すIV-IV線に係る断面図である。
【図5】図4に示すノズル孔の拡大断面図である。
【図6】図4に示す吐出面の部分拡大図である。
【図7】図1に示すインクジェットヘッドの製造工程を示すブロック図である。
【図8】図4に示すインクジェットヘッドの製造工程を説明ずるための図である。
【図9】図7に示すマスキング材圧着工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
インクジェットプリンタ(以降、単にプリンタと記す)1は、ライン式のカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1は、図1に示すように、直方体形状の筐体1aを有している。筐体1aの上部には、排紙部31が設けられている。筐体1a内は、上から順に3つの空間A、B、Cに区分できる。空間A及びBは、排紙部31に連なる用紙の搬送経路が構成された空間である。空間Aでは、用紙の搬送と用紙への画像形成とが行われる。空間Bでは、用紙の収容と空間Aへの供給が行われる。空間Cは、インク供給源が収容されており、インクの供給が行われる。
【0025】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド(以降、単にヘッドと記す)2、用紙を搬送する搬送ユニット20、用紙をガイドするガイド部等が配置されている。4つのヘッド2は、主走査方向に長尺なラインヘッドであって、略直方体の外形形状を有する。4つのヘッド2の下面(吐出面2a:図4及び図6参照)から、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴が吐出される。各ヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並んでいる。
【0026】
搬送ユニット20は、図1に示すように、ベルトローラ6、7および両ローラ6、7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ5及び剥離プレート13、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9、テンションローラ10等を有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータMによって、図1中時計回りに回転する。このとき、搬送ベルト8は、太矢印に沿って走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8の走行に伴い、図1中時計回りに回転する。ニップローラ5は、ベルトローラ6に対向配置され、前段のガイド部から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート13は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して後段のガイド部に導く。プラテン9は、4つのヘッド2に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド2の吐出面2aとの間には、画像形成に適した所定の間隙が形成される。テンションローラ10は、下側ループを下方に付勢する。これにより、搬送ベルト8の弛みがなくなる。
【0027】
ガイド部は、搬送ユニット20を挟んで両側に配置されている。上流側のガイド部は、2つのガイド27a、27b及び一対の送りローラ26を有する。このガイド部は、給紙ユニット1bと搬送ユニット20とを繋ぐ。下流側のガイド部は、2つのガイド29a、29bおよび二対の送りローラ28を有する。このガイド部は、搬送ユニット20と排紙部31とを繋ぐ。
【0028】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ23は、筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口した箱体であって、複数の用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、後段のガイド部に供給する。
【0029】
上述したように、空間A及び空間Bによって、給紙ユニット1bから搬送ユニット20を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。給紙トレイ23から繰り出された用紙Pは、送りローラ26によって搬送ユニット20に供給される。用紙Pが各ヘッド2の真下を副走査方向に通過する際、順にヘッド2からインク滴が吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。用紙Pは、搬送ベルト8の右端で剥離され、さらに2つの送りローラ28によって上方に搬送される。各ガイド部における用紙Pの搬送は、各ガイド27a、28b、29a、29bに沿う。さらに、用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排紙される。
【0030】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット20において用紙Pが搬送されるときの搬送方向に平行な方向であって、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0031】
空間Cには、インクタンクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクタンクユニット1cには、4つのインクタンク49が並んで収納されている。インクタンク49内のインクは、対応するヘッド2に対してチューブ(図示せず)を介して供給される。
【0032】
次に、ヘッド2について説明する。なお、図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及びノズル孔108を実線で描いている。
【0033】
図2に示すように、ヘッド2は、4つのアクチュエータユニット21が、流路ユニット9の上面9aに固定されている。図3及び図4に示すように、流路ユニット9は、圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、図示しないドライバICに駆動されることによって、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
【0034】
流路ユニット9は、直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、図示しないインクリザーバからインクが供給される計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2及び図3に示すように、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。流路ユニット9の下面には、多数の吐出口108a(ノズル108の開口)が、マトリクス状に配置された吐出面2aが形成されている。流路ユニット9の上面9aには、圧力室110が、ノズル孔108と同様に、マトリクス状に多数配列されている。
【0035】
本実施形態では、アクチュエータユニット21と対向する領域において、主走査方向に配列された複数の圧力室110が形成する圧力室列が、副走査方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、アクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側から短辺側に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出口108aもこれと同様の配置がされている。このため、吐出面2aにおいては、圧力室110の列に対応して、主走査方向に配列された複数の吐出口108aが形成する吐出口列が、副走査方向に互いに平行に16列配列されている(図6参照)。
【0036】
図4に示すように、流路ユニット9は、ステンレス鋼など金属材料からなる9枚のプレート122〜130及びプレート130の表面に形成されたニッケルのメッキ層131から構成されている。プレート122〜130及びメッキ層131は、主走査方向に長尺な矩形状の平面を有する。
【0037】
プレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、プレート122〜130に形成された貫通孔が連結され、流路ユニット9内に、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経てノズル孔108の吐出口108aに至る多数の個別インク流路132が形成される。
【0038】
リザーバユニットからインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介してノズル孔108に至る。
【0039】
ノズルプレート130の下方の面が、吐出面2aである。図5及び図6に示すように、吐出面2aには、一定の幅で主走査方向に延在する10本の溝109a及び6本の溝109bが、副走査方向に互いに平行に配列されている。溝109a、109bの底部に、吐出口108aが主走査方向に配列されている。別の観点から観ると、溝109a、109bは、同一の吐出口列に属する一又は複数の吐出口108aが配置された複数の凹部同士を、連結溝(連結部)が主走査方向に互いに連結することによって形成されている。溝109a、109bは、ノズルプレート130の下方の面、及び、メッキ層131に係る吐出口列を露出させる長穴の内壁面によって画定されている。また、溝109a、109bの底部を含む吐出面2a全域(吐出口108aを除く)に、撥水膜2bが形成されている。なお、メッキ層131の厚み、すなわち、溝109a、109bの深さは、2μmである。
【0040】
吐出面2aの各アクチュエータユニット21に対向する領域には、副走査方向に関する一方(図6上方)から順に、2本の溝109aで構成される溝群X1、2本の溝109a及び2本の溝109aの間に配置された2本の溝109bで構成される3つの溝群X2〜X4、及び、2本の溝109aで構成される溝群X5が配列されている。溝109aの幅(副走査方向に関する長さ)は0.2mmであり、溝109bの幅は0.1mmである。
【0041】
互いに隣接すると共に互いに異なる溝群X1〜X5に属する溝109a同士の副走査方向に関する中心間距離が、1.78mmとなっている。溝群X1、X5について、互いに隣接する溝109a同士の副走査方向に関する中心間距離が、0.75mmとなっている。溝群X2〜X4について、互いに隣接する溝109a及び溝109bの副走査方向に関する中心間距離が、0.5mmとなっており、互いに隣接する溝109b同士の副走査方向に関する中心間距離が、0.24mmとなっている。
【0042】
このように、互いに隣接する2つの溝109a、109bの輪郭同士を結ぶ最も短い線分(最短線分)、本実施形態においては、副走査方向に関する離隔距離(以下、単に離隔距離と称す)が最も短い(本実施形態においては、0.24−0.1=0.14mm)2つの溝109bの幅が、他の溝109aの幅より短く且つ互いに同じ長さになっている。
【0043】
また、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下であるときは、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が小さくなっている。具体的には、離隔距離が0.55(0.75−0.2)mmで互いに隣接する2つの溝109aの幅の平均値は、0.2mmであり、離隔距離が0.35(0.50−0.15)mmで互いに隣接する2つの溝109a、109bの幅の平均値は、0.15mmであり、離隔距離が0.14mmで互いに隣接する2つの溝109bの幅の平均値は、0.1mmである。
【0044】
一方、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍を超えるときは、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が、離隔距離が2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下となる2つの溝109a、109bの幅の平均値のうち最も長い値と同じになっている。具体的には、上述したように、離隔距離が2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下のとき、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値のうち最も長い値が0.2mmであるため、離隔距離が1.58(1.78−0.2)mmで互いに隣接する2つの溝109aの幅の平均値は、0.2mmとなっている。
【0045】
また、互い隣接していると共に互いに幅が異なる2つの溝109a、109bに係る一方の溝109a、109bについて、他方の溝109a、109bと反対側に隣接する第3の溝109a、109bがある場合、一方の溝109a、109b及び第3の溝109a、109bに関する離隔距離が、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離よりも短いとき、一方の溝109a、109bの幅が、他方の溝109a、109bの幅よりも短くなっている。また、一方の溝109a、109b及び第3の溝109a、109bに関する離隔距離が、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離よりも長いとき、一方の溝109a、109bの幅が、他方の溝109a、109bの幅よりも長くなっている。
【0046】
例えば、本実施形態においては、溝群X2における離隔距離が0.35mmの2つの溝109a、109bの一方の溝109aについて、他方の溝109bと反対側に隣接する第3の溝109aとの離隔距離が1.58mmとなっているため、一方の溝109aの幅(0.2mm)が、他方の溝109bの幅(0.1mm)より長くなっている。逆に、溝群X2における離隔距離が0.35mmの2つの溝109a、109bの一方の溝109bについて、他方の溝109aと反対側に隣接する第3の溝109bとの離隔距離が0.14mmとなっているため、一方の溝109bの幅(0.1mm)が、他方の溝109aの幅(0.2mm)より短くなっている。
【0047】
ヘッド2の製造方法を、ノズルプレート130の形成工程を中心に説明する。図7に示すように、ヘッド2の製造方法は、ノズル孔形成工程と、撥水膜形成工程と、マスキング材圧着工程と、撥水膜除去工程と、マスキング材剥離工程とを有している。ノズル孔形成工程においては、図8(a)に示すように、ノズルプレート130となる金属製の板状基材に、板状基材を貫通しつつ吐出面2aに向かって先細りとなったノズル孔108を形成する。具体的には、先細りとなったポンチを板状基材の吐出面2aとなる面の反対側から押圧することによって、ポンチの先端が板状基材を貫通する。そして、吐出面2aを研磨し、ノズル孔108の端部周縁に形成されたバリを除去する。これにより、所定の開口径を有する吐出口108aがノズル孔108の端部に形成される。
【0048】
さらに、図8(b)に示すように、ノズル孔108が形成された板状基材の吐出口108aが開口する吐出面2aに、ニッケルのメッキ層131を形成する。吐出面2aの溝109a、109bが形成される領域をマスキングした後に、吐出面2aを電解溶液に浸してニッケルの電解メッキ処理を行い、吐出面2aにメッキ層131を形成する。
【0049】
具体的には、吐出面2a全体に感光性のレジストシートを貼り付け、マスクを介して露光する。マスクには、各吐出口108aに対応した開口が形成されている。開口は、幅方向の中心線が吐出口108aの中心と重なり、例えば、吐出口108a(開口径:約20μm)に対して約5倍の幅を持つ。開口の長手方向の長さは、アクチュエータユニット21の対向領域における2つの斜辺間距離にほぼ等しい。平面視で、各開口は、それぞれ1本の吐出口108aの列を内包している。露光後、レジストシートの未露光部分は現像液によって除去され、露光部分が吐出面2a上に残る。露光部分は、それぞれ吐出口列内の全ての吐出口108aを封止している。この状態で、電解メッキ処理が行われる。このとき、例えば、厚さ2μmのメッキ層131が形成される。そして、ノズルプレート130を洗浄し、マスキング材を除去する。これにより、吐出面2aに複数の溝109a、109bが形成される。
【0050】
撥水膜形成工程においては、図8(c)に示すように、ノズル孔形成工程で複数の溝109a、109bが形成された吐出面2aに撥水膜2bを形成する。スプレー法によって吐出面2aに撥水剤を塗布した後、これを熱処理して撥水膜2bとする。このとき、塗布した撥水剤の一部が、吐出口108aからノズル孔108内に浸入するため、ノズル孔108の内壁面の一部にも不要な撥水膜2b’が形成される。
【0051】
マスキング材圧着工程においては、図8(d)に示すように、撥水膜2bが形成された吐出面2aにマスキング材72を圧着させる。具体的には、図9に示すように、テープ基材71の表面に保持されたマスキング材72を吐出面2aに対向させた状態で、マスキング材72が吐出面2aに一定の圧力で押圧されるように、ローラ75を、テープ基材71に接触させつつ吐出面2aの主走査方向に関する一方端部から他方端部に向かって回転移動させる。このとき、ローラ75からの押圧力は、各溝109a、109bの延在方向と直交する方向に延びている。上述したように、吐出面2aにおいて、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下であるときは、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が小さくなっているため、吐出面2aにマスキング材72を圧着するときに、各溝109a、109bに対するマスキング材72の浸入量が均一化される。このため、ローラ75がテープ基材71を介してマスキング材72を押圧する圧力を調整することによって、マスキング材72がノズル孔108内に入り込まないようにすることができる。仮に、マスキング材72がノズル孔108内に入り込んだとしても、その入り込み具合は均一である。
【0052】
撥水膜除去工程においては、図8(e)に示すように、マスキング材圧着工程で吐出面2aがマスクされたノズルプレート130の吐出面2aの反対側の面から、プラズマ処理を施す。これにより、マスキング材72にマスクされていないノズル孔108の内壁面に形成された不要な撥水膜2b’が除去される。
【0053】
マスキング材剥離工程においては、撥水膜除去工程で不要な撥水膜2b’が除去されたノズルプレート130の吐出面2aからマスキング材72を剥離する。その後、ノズルプレート130を洗浄及び乾燥する。以上でノズルプレート130が完成する。
【0054】
以上のように、本実施形態のヘッド2によると、吐出面2aにおいて、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下であるときは、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が小さくなっているため、マスキング材圧着工程において吐出面2aにマスキング材72を圧着するときに、各溝109a、109bに入り込むマスキング材72に対する圧力が均一化される。つまり、マスキング材72の各溝109a、109b内への浸入量が均一となる。このため、ローラ75がテープ基材71を介してマスキング材72を押圧する圧力を調整することによって、マスキング材72がノズル孔108内に入り込まないようにすることができる。これにより、各ノズル孔108内に形成された撥水膜2b’のみを精度良く除去することができ、吐出口108a間でインク吐出特性がばらつくのを抑制することができる。また、これと同様に、吐出面2aをクリーニングするワイパを吐出面に接触させたときに、各溝109a、109bに対するワイパの浸入量の均一化を図ることができる。これにより、吐出面2aを均一にクリーニングすることができると共に、ワイパや吐出面2aが部分的に劣化したりワイパの接触圧が部分的に不足したりするのを抑制することができる。
【0055】
加えて、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍を超えるときは、各溝109a、109bに入り込むマスキング材72に対する圧力(各溝109a、109bに対するマスキング材72の浸入量)が離隔距離によって変化し難くなるため、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下のときにのみ各溝109a、109bの幅の平均値を変化させることによって、各溝109a、109bに入り込むマスキング材72の圧力の均一化を効率よく図ることができる。さらに、離隔距離が長くなるのが抑制され、ヘッド2が大型化するのを抑制することができる。
【0056】
離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍を超えるときは、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が、離隔距離が2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下となる2つの溝109a、109bの幅の平均値のうち最も長い値と同じになっているため、溝109a、109bの設計が容易になる。また、ノズルプレート130自体の剛性の低下を抑制することができる。ノズルプレート130の剛性低下は、ヘッド2の剛性低下に繋がり、特に長尺のヘッド2ではプリンタ1への組み込み時の変形を招く。ヘッド2の変形は、印刷品質を低下させるため、所定値以下の幅の維持は、印刷品質の維持に寄与する。
【0057】
また、離隔距離が最も短い2つの溝109bの幅が、他の溝109aの幅より短く且つ同じ長さになっているため、最も近接する2つの溝109bにマスキング材72が入り込みすぎるのを確実に防止しつつ2つの溝109bに入り込むマスキング材72に対する圧力の均一化をさらに図ることができ、その浸入量を均一にできる。
【0058】
さらに、互い隣接していると共に互いに幅が異なる2つの溝109a、109bに係る一方の溝109a、109bについて、他方の溝109a、109bの反対側に隣接する第3の溝109a、109bがある場合、各溝109a、109bに関する離隔距離同士の大小関係によって、各溝109a、109bの幅同士の大小関係が決定されている。このため、溝109a、109bに入り込むマスキング材72の圧力に対する均一化をさらに図ることができ、その浸入量を均一にできる。
【0059】
加えて、溝109a、109bの幅が、全長に亘って(両端部を除く)一定であるため、溝109a、109bを容易に形成することができると共に、各溝109a、109bに入り込むマスキング材72に対する圧力の均一化を効率よく図ることができ、その浸入量を均一にできる。
【0060】
また、溝109a、109bが、ノズルプレート130の下方の面、及び、メッキ層131に係る吐出口列を露出させる長穴の内壁面によって画定されているため、溝109a、109bをさらに容易に形成することができる。
【0061】
加えて、マスキング材圧着工程において、テープ基材71の表面に保持されたマスキング材72を吐出面2aに対向させた状態で、マスキング材72が吐出面2aに押圧されるように、ローラ75を、テープ基材71に接触させつつ吐出面2aの主走査方向に関する一方端部から他方に端部に向かって回転移動させる。このため、各溝109a、109bに入り込むマスキング材72に対する圧力の均一化を効率よく図ることができ、その浸入量を均一にできる。
【0062】
<第1変形例>
上述の実施形態においては、2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値を小さくする構成であるが、離隔距離の長さが、互いに隣接する複数の範囲のうち同一の範囲にある2つの溝について、2つの溝の幅の平均値を同じにする構成であってもよい。このとき、2つの溝の幅は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。これによると、溝の設計がさらに容易になる。
【0063】
<第2変形例>
上述の実施形態においては、溝109a、109bの底部に開口する吐出口108aの開口径が全て同じであるが、溝によって、底部に開口する吐出口の開口径が互いに異なっていてもよい。このとき、吐出口の開口径が互いに異なる2つの溝について、開口径の大小関係が、当該2つの溝の幅の大小関係と同じであることが好ましい。これによると、マスキング材圧着工程において、マスキング材が各吐出口に入り込まないように、マスキング材を押圧する圧力の調整を行うことが容易になる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、主走査方向に延在する溝109a、109bの底部に吐出口108aが開口する構成であるが、溝は主走査方向以外の方向に延在していてもよいし、溝同士の延在方向が互いに異なっていてもよい。また、溝の替りに、円形など他の開口形状を有する凹部の底部に吐出口が開口していてもよい。例えば、円形の凹部において、吐出口の中心と凹部の中心とが一致していることが好適である。
【0065】
さらに、溝又は凹部の底部には1又は複数の吐出口が開口していもよいし、互いに隣接する2つの溝又は凹部の一方については、底部に吐出口が開口していなくてもよい。なお、以上の場合において、離隔距離は、互いに隣接する2つの溝又は凹部の輪郭同士を結ぶ最も短い線分の長さによって決定され、溝又は凹部の幅は、当該線分に沿う長さとなる。
【0066】
また、上述の実施形態では、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下であるときは、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝109a、109bの幅の平均値が小さくなる構成であるが、離隔距離が、2つの溝の幅の平均値の5倍を超えたときも、当該2つの溝に関する離隔距離が短くなるに連れて、当該2つの溝の幅の平均値が小さくなる構成であってもよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態では、離隔距離が、2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍を超えるときは、当該2つの溝109a、109bの幅が、離隔距離が2つの溝109a、109bの幅の平均値の5倍以下となる2つの溝109a、109bの幅の平均値のうち最も長い値と同じになる構成であるが、当該最も長い値よりもさらに大きい値であってもよい。
【0068】
加えて、上述の実施形態においては、離隔距離が最も短い2つの溝109bの幅が、他の溝109aの幅より短く且つ同じ長さになっている構成であるが、当該2つの溝の幅が互いに異なっていてもよいし、このとき、当該2つの幅の一方を溝109bの幅より長くしてもよい。
【0069】
さらに、上述の実施形態においては、互い隣接していると共に互いに幅が異なる2つの溝109a、109bに係る一方の溝109a、109bについて、他方の溝109a、109bと反対側に隣接する第3の溝109a、109bがある場合、各溝109a、109bに関する離隔距離同士の大小関係によって、各溝109a、109bの幅同士の大小関係が決定される構成であるが、このような大小関係によって、各溝の幅が離隔距離同士の大小関係と無関係に決定されていてもよい。例えば、一方の溝109a、109b及び第3の溝109a、109bに関する離隔距離が、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離よりも短いとき、一方の溝109a、109bの幅が、他方の溝109a、109bの幅よりも長くなっていてもよいし、一方の溝109a、109b及び第3の溝109a、109bに関する離隔距離が、当該2つの溝109a、109bに関する離隔距離よりも長いとき、一方の溝109a、109bの幅が、他方の溝109a、109bの幅よりも短くなっていてもよい。
【0070】
加えて、上述の実施形態においては、溝109a、109bの幅が一定である構成であるが、溝の一部においてその幅が変化してもよい。例えば、連結溝が他の部位に比べて小さな幅を持っていてもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態においては、溝109a、109bが、ノズルプレート130の下方の面、及び、メッキ層131に係る吐出口列を露出させる長穴の内壁面によって画定される構成であるが、ノズルプレートにエッチング加工、パンチ加工或いは切削加工を施すことによって溝を形成する構成であってもよい。
【0072】
加えて、上述の実施形態では、マスキング材圧着工程において、テープ基材71の表面に保持されたマスキング材72を吐出面2aに対向させた状態で、マスキング材72が吐出面2aに押圧されるように、ローラ75を、テープ基材71に接触させつつ吐出面2aの主走査方向に関する一方端部から他方に端部に向かって回転移動させる構成であるが、ローラ75を固定してヘッド2を移動させる構成であってもよい。また、マスキング材を吐出面2aに押圧する構成は任意のものであってよい。例えば、押圧面を有する押圧部材によって、マスキング材を吐出面2a全域に押圧する構成であってもよい。
【0073】
上述の実施形態では、インク滴を吐出するヘッド2に本発明を適用した例について説明したが、インク以外の他の液体を吐出するあらゆる液体吐出ヘッドに対して本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 プリンタ
2 ヘッド
2a 吐出面
2b 撥水膜
9 流路ユニット
71 テープ基材
72 マスキング材
75 ローラ
108 ノズル孔
108a 吐出口
109a、109b 溝
110 圧力室
130 ノズルプレート
131 メッキ層
X1〜X5 溝群


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部が形成されていると共に、液滴を吐出する吐出口が前記複数の凹部の少なくとも1つの底部に開口している吐出面を備えており、
前記凹部の底部に撥液膜が形成されており、
前記複数の凹部から選択された、少なくとも一方の底部に前記吐出口が形成された互いに隣接する2つの前記凹部について、当該2つの凹部の輪郭同士を結ぶ最も短い線分である最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなっていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
最も短い前記最短線分に関する前記2つの凹部の当該最短線分に沿う方向に関する長さが、当該2つの凹部以外の他の前記凹部に係る当該最短線分に沿う方向に関する長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
最も短い前記最短線分に関する前記2つの凹部の当該最短線分に沿う方向に関する長さが互いに同じであることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記2つの凹部に係る一方の前記凹部について他方の前記凹部と反対側に隣接する第3の前記凹部がある場合、前記一方の凹部及び前記第3の凹部に関する前記最短線分が、当該2つの凹部に関する前記最短線分よりも短いとき、前記一方の凹部に係る当該2つの凹部に関する前記最短線分に沿う長さが、前記他方の凹部に関する当該最短線分に沿う長さよりも短くなっており、前記一方の凹部及び前記第3の凹部に関する前記最短線分が、当該2つの凹部に関する前記最短線分よりも長いとき、前記一方の凹部に係る当該2つの凹部に関する前記最短線分に沿う長さが、前記他方の凹部に関する当該最短線分に沿う長さよりも長くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値の5倍以下であるとき、当該最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値の5倍を超えているとき、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値は、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値の5倍以下となる他の前記2つの凹部に係る当該最短線分に沿う方向に関する当該凹部の長さのうち最も大きい長さと同じであることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の中心間距離が、当該最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値の5倍以下であり、且つ、当該最短線分の長さが互いに隣接する複数の範囲のうち同一の範囲にある前記2つの凹部について、前記最短線分に沿う方向に関する前記2つの凹部の長さの平均値が互いに同じであることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記凹部の底部に形成された前記吐出口の開口径が互いに異なる前記2つの凹部について、前記開口径の大小関係が、当該2つの凹部に係る前記最短線分に沿う方向に関する長さの大小関係と同じであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の吐出口が、前記吐出面において、一方向に沿って複数の前記吐出口が配列された複数の吐出口列を形成し、
前記吐出口列に属する複数の前記吐出口に対応する少なくとも2以上の前記凹部、及び、当該凹部同士を前記一方向に互いに連結する連結部が、前記一方向に延在する新たな前記凹部である溝を形成していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記溝の幅が一定であることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記複数の吐出口が開口する基材と、前記複数の吐出口を露出させるように前記基材の表面に形成されたメッキ層とによって、前記凹部が画定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
液滴を吐出する複数の吐出孔が厚み方向に貫通するように形成されていると共に、前記複数の吐出孔に係る液滴の吐出方向側の開口である複数の吐出口が配置された吐出面を有する板状基材と、前記複数の吐出孔に連通する液体流路が内部に形成された流路形成部材と、前記流路形成部材内の液体に液滴吐出エネルギーを付与するアクチュエータとを含む液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記複数の吐出孔、及び、前記吐出面において少なくとも1つの底部に前記吐出口が開口している複数の凹部を、前記板状基材に形成する基材形成工程と、
前記複数の凹部が形成された前記吐出面に、撥液膜を形成する撥液膜形成工程と、
前記撥液膜が形成された前記吐出面に前記吐出口を封止するマスキング材を圧着させる圧着工程と、
前記マスキング材で封止された前記吐出口内の前記撥液膜を、前記吐出面の反対側から除去する除去工程と、
前記除去工程の後に、前記マスキング材を剥離する剥離工程とを備えており、
前記基材形成工程において、前記複数の凹部から選択された、少なくとも一方の前記凹部の底部に前記吐出口が形成された互いに隣接する2つの前記凹部について、当該2つの凹部の輪郭同士を結ぶ最も短い線分である最短線分が短くなるに連れて、当該最短線分に沿う方向に関する当該2つの凹部の長さの平均値が小さくなるように前記凹部を形成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記圧着工程において、押圧部材が、前記マスキング材を前記吐出面に押圧しつつ前記板状基材と前記最短線分に沿う方向と直交する方向に相対移動することによって、前記マスキング材を前記吐出面に圧着させることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記基材形成工程において、前記板状基材に、一方向に延在しつつ前記一方向と直交する直交方向に配列されつつ、前記直交方向の長さが一定になるように前記複数の凹部を形成し、
前記圧着工程において、前記押圧部材が、前記板状基材と前記直交方向に相対移動することを特徴とする請求項13に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記基材形成工程において、前記凹部の底部に形成された前記吐出口の開口径が互いに異なる前記2つの凹部について、前記開口径の大小関係が、当該2つの凹部に係る前記最短線分に沿う方向に関する長さの大小関係と同じになるように、前記板状基材に、前記複数の吐出孔及び前記複数の凹部を形成することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207060(P2011−207060A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77381(P2010−77381)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】