液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
【課題】ヘッドユニット間の位置決め精度を緩和しつつ、ヘッドユニット間のつなぎ部における冗長ノズルの削減を図る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】複数のノズルを具備するヘッドユニット(12)と、ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニット(14)と、中間ユニットごとに交換可能に中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部とを備え、中間ユニットは第1の方向と直交する第2の方向に隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が第1の方向について重なり合い、該隣接するヘッドユニットの第2の方向の位置が重ならないようにヘッドユニットが配置され、第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なるつなぎ部において、同一の中間ユニットのヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBが、次式NA<NBを満たす。
【解決手段】複数のノズルを具備するヘッドユニット(12)と、ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニット(14)と、中間ユニットごとに交換可能に中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部とを備え、中間ユニットは第1の方向と直交する第2の方向に隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が第1の方向について重なり合い、該隣接するヘッドユニットの第2の方向の位置が重ならないようにヘッドユニットが配置され、第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なるつなぎ部において、同一の中間ユニットのヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBが、次式NA<NBを満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に係り、特に複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成された液体吐出ヘッドの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に適用されるインクジェットヘッドには、複数のヘッドユニット(ヘッドモジュール)をつなぎ合わせた形態がある。このようなインクジェットヘッドは、より広い印字領域に対して一度に印字することが可能となる。また、製造時の検査において不合格となった場合や、故障の発生や寿命により交換をする場合には、ヘッドユニットごとに交換することができるというメリットもある。
【0003】
一方、ヘッドユニットをつなぎ合わせる際に正確な位置決めが必要となる。ヘッドユニットごとの位置にばらつきが発生すると、ヘッドユニット間のつなぎ部において画像に濃度むら(すじむら)が発生してしまう。
【0004】
このようなヘッドユニットのつなぎ部におけるノズル配置の不連続に起因する濃度むらを緩和するために、つなぎ部ではヘッドユニット(ノズル)を重複させて、つなぎ部におけるノズル密度をつなぎ部以外よりも高密度とし、高密度に配置されたノズルを適宜選択して打滴することで、画像の濃度むらを緩和している。
【0005】
特許文献1は、複数のインクジェットヘッドをつなぎ合わせた形態のヘッドユニットを備えたインクジェット記録装置を開示している。各ヘッドユニット(ノズル列群)は一部を重複するように千鳥状に配置されており、不良のインクジェットヘッドを適宜交換することで、ヘッドユニットの歩留まりを向上させている。
【0006】
特許文献2は、複数のインクジェットヘッドを数個配置したインクジェットヘッドユニットを開示している。複数のインクジェットヘッドは、長手方向において重なり合い、かつ、各々インクジェットヘッド端部ノズル付近同士が長手方向において近接しないように配置されている。
【0007】
特許文献3は、機能液吐出ヘッドをキャリッジの所定位置に位置決めし、機能液吐出ヘッドとキャリッジとの間に接着剤を流入させ、接着剤が固化するまでの間、機能液吐出ヘッドをキャリッジに位置決めした状態を維持する液体吐出ヘッドの組み立て方法を開示している。
【0008】
特許文献4は、12個のインクジェットヘッドがサブキャリッジに搭載されたヘッドユニットを開示している。インクジェットヘッドはヘッド保持部材にねじ止め固定され、ヘッド保持部材は本体プレートに接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−225255号公報
【特許文献2】特開2007−261021号公報
【特許文献3】特開2009−66566号公報
【特許文献4】特開2008−185365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ヘッドユニットのつなぎ部におけるノズル密度を高密度にすると、1ドットを形成するために一方のヘッドユニット又は他方のヘッドユニットのいずれかのみのノズルを使用することになる。そうすると、つなぎ部において使用しないノズル(冗長ノズル)が発生してしまう。
【0011】
各ヘッドユニットの位置決め精度を上げることで冗長ノズルを減らすことが可能であるものの、ヘッドユニットごとに取り付け(交換)が行われることを考えると、ヘッドユニットの位置決め精度を上げることは困難である。
【0012】
特許文献1から特許文献4には、ヘッドユニット(インクジェットヘッド)のつなぎ部における冗長ノズルに関する開示はない。つまり、特許文献1から特許文献4は、ヘッドユニット間の位置決め精度を緩和しつつ、つなぎ部における冗長ノズルを削減するという本願発明の技術課題やその解決方法を開示するものではない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘッドユニット間の位置決め精度を緩和しつつ、ヘッドユニット間のつなぎ部における冗長ノズルを削減する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッドユニット同士のつなぎ部、及び中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、高精度に位置決めされ固定されたヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAをより少なくすることで、つなぎ部の無駄なノズルを減らすことができ、かつ、ヘッドユニットよりも位置決め精度が緩和されて固定された中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズルNBをより多くすることで、中間ユニット単位の交換が容易となり、中間ユニットの交換の工数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの全体構成を示す平面透視図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの一部拡大図
【図3】図1に示すヘッドユニットの概略構造を示す平面透視図
【図4】ヘッドユニットの他のノズル配置例を示す概略平面図
【図5】つなぎ部におけるノズル配置を説明する図
【図6】つなぎ部における液体噴射制御を説明する図
【図7】つなぎ部における他の液体噴射制御を説明する図
【図8】つなぎ部におけるさらに他の液体噴射制御を説明する図
【図9】ヘッドユニット同士のつなぎ部におけるノズル数の説明図
【図10】中間ユニット同士のつなぎ部におけるノズル数の説明図
【図11】ヘッドユニットの固定方法を模式的に図示した説明図
【図12】中間ユニットの固定方法を模式的に図示した説明図
【図13】中間ユニットの他の固定方法の説明図
【図14】中間ユニットのさらに他の固定方法の説明図
【図15】中間ユニットの変形例を示す平面図
【図16】中間ユニットの他の変形例を示す平面図
【図17】図1から図9に示す液体吐出ヘッドが適用されるインクジェット記録装置の全体構成図
【図18】図17に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0018】
〔インクジェットヘッドの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)10の概略構成を示す平面透視図であり、ノズル(図1中不図示、図3に符号20を付して図示)が形成される面(ノズル面、図11に符号30を付して図示)の反対側の面から見た図である。
【0019】
図1に示すインクジェットヘッド10は、噴射させた液体を付着させる媒体の液体を付着させる領域の全幅(媒体の移動方向と直交する方向の全長)に対応する長さにわたって、複数のノズルが配置されたフルライン型ヘッドである。
【0020】
インクジェットヘッド10は、最小構成単位であるヘッドユニット12と、複数のヘッドユニット12を具備する中間ユニット14と、を備えて構成されている。インクジェットヘッド10の長手方向(第1の方向)xは媒体の幅方向(媒体の移動方向と直交する方向)に対応している。
【0021】
インクジェットヘッド10に具備されるヘッドユニット12は、平面方向に主に単一の素材により構成されている。例えば、ノズルが形成されるノズルプレートは、1枚のプレートにより構成され、ノズルと連通する流路が形成されるプレートも面方向については1枚のプレートにより構成される。また、インクジェットヘッド10は複数のヘッドユニット12が、長手方向xに沿って二列の千鳥状に配置されている。
【0022】
中間ユニット14は、複数のヘッドユニット12と複数の素材にて組み合わせて構成される。複数の素材の例として、セラミックス、シリコン(Si)、ガラス、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、アクリルニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)、ポリアセタール(POM、ポリカーボネート(PC)、エポキシなどの各種樹脂や、ステンレススティール、ニッケル、アルミ、アルミ合金、銅、鋼鉄などの金属の中から2つ以上の素材を組み合わせた形態が挙げられる。
【0023】
すなわち、中間ユニット14のそれぞれは、同一構成を有するヘッドユニット12が同一数具備され、中間ユニット14自体が同一の構造を有している。また、図1に示す中間ユニット14‐1から中間ユニット14‐5は、インクジェットヘッド10の長手方向xに沿って一列に配置されている。
【0024】
図1に示すインクジェットヘッド10は、二列の千鳥状に配置された4つのヘッドユニット12を具備する中間ユニット14(14‐1から14‐5)を備えている。ヘッドユニット12のインクジェットヘッド10の長手方向xにおける配置ピッチPxは、ヘッドユニット12のノズルが設けられている領域であるノズル配設領域15の同方向における長さLx未満である。
【0025】
また、ヘッドユニット12のインクジェットヘッド10の短手方向(第2の方向)yにおける配置ピッチPyは、ヘッドユニット12の同方向における長さLyを超えている。
【0026】
図1に示すように、中間ユニット14はインクジェットヘッド10の長手方向xについて、隣接する中間ユニット14と干渉しないように配置されている。
【0027】
中間ユニット14はインクジェットヘッド10の長手方向xの両端に凸部14A,14Bを有し、一方の端(同図中左側の端)の凸部14Aと、他方の端(同図中右側の端)の凸部14Bとはインクジェットヘッド10の短手方向y(媒体の移動方向に対応)における位置がずらされた平面形状を有している。
【0028】
図1における左端の中間ユニット14‐1の凸部14Bに対応する凹みに、中間ユニット14‐1の右隣に位置する中間ユニット14‐2の凸部14Aが入り込むように中間ユニット14‐1,14‐2が配置される。中間ユニット14‐3から中間ユニット14‐5も同様に配置されている。
【0029】
インクジェットヘッド10の短手方向yに隣接するヘッドユニット12は、ノズル配設領域15の長手方向xにおける位置が重なり合うように配置されている。このノズル配設領域15が重なり合う領域がつなぎ部13となる。例えば、ヘッドユニット12‐11とヘッドユニット12‐12とは、インクジェットヘッド10の短手方向yについて隣接しており、ヘッドユニット12‐11の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐12の左側の端部近傍がインクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合っている。
【0030】
同様に、ヘッドユニット12‐12の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐13の左側の端部近傍、ヘッドユニット12‐13の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐14の左側の端部近傍も、インクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合っている。このように、隣接するヘッドユニット12同士がインクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合う部分が、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aとなっている。
【0031】
また、インクジェットヘッド10の短手方向yに隣接するヘッドユニット12が異なる中間ユニット14に属する場合、このつなぎ部は中間ユニット14間のつなぎ部13Bとなる。
【0032】
例えば、中間ユニット14‐1に属するヘッドユニット12‐14と、中間ユニット14‐2に属するヘッドユニット12‐21とのつなぎ部は、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bとなる。
【0033】
図2は、図1に示すインクジェットヘッド10の一部(2つの中間ユニット分)を拡大して図示した拡大図である。なお、図2は図1と同様にノズル面の反対側面から見た平面透視図であるが、ヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0034】
また、図2に符号16を付して図示した斜めの実線は、ヘッドユニット12のノズル列(多数のノズル列を代表して3列のみ図示)を表している。すなわち、図2に示すヘッドユニット12は、ノズルがマトリクス配置された構造を有している。
【0035】
同一の中間ユニット14に属するヘッドユニット12間のつなぎ部13Aの総ノズル数をNA、中間ユニット14間のつなぎ部(異なる中間ユニット14に属するヘッドユニット12間のつなぎ部)13Bの総ノズル数をNBとすると、これらは、NA<NBの関係を満たしている。
【0036】
「つなぎ部の総ノズル数」は、つなぎ部13を構成する2つのヘッドユニット12のつなぎ部に含まれるノズルの総数である。例えば、ヘッドユニット12‐11とヘッドユニット12‐12とのつなぎ部では、ヘッドユニット12‐11のつなぎ部13Aに含まれるノズル数と、ヘッドユニット12‐12のつなぎ部13Aに含まれるノズル数とを合算したノズル数となる。
【0037】
図2に符号18を付して図示した部材は、中間ユニット14をインクジェットヘッド10の中間ユニット取付部(不図示)に固定するための固定部材(例えば、ねじ)である。インクジェットヘッド10は、中間ユニット14ごとに交換をすることができるように、中間ユニット14の固定には機械的固定部材を用いて固定されている(詳細後述)。
【0038】
一方、図2における図示は省略するが、ヘッドユニット12は、中間ユニット14のヘッドユニット固定部(不図示)に高精度(位置決め誤差が数マイクロメートル程度)に位置決めされ、接着剤により接着される(図11参照)。なお、ヘッドユニット12を高精度に位置決めする形態として、ヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体形成することも可能である。
【0039】
ヘッドユニット12の固定には高精度の位置決めが可能な固定方法が採用されるので、ヘッドユニット12間のつなぎ部における、噴射の不連続性を緩和するためのノズル数をより少なくすることができる。
【0040】
一方、中間ユニット14の固定には、取り付け及び取り外しの容易性が優先されるので、ヘッドユニット12の固定と同程度の高精度の位置決めが困難であり、つなぎ部のノズル数をより多くして、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を緩和している。
【0041】
したがって、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBが上記の関係を満たすように構成することで、つなぎ部13(13A)における冗長ノズルの数が削減されるとともに、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13A、及び中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を緩和している。
【0042】
なお、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数NA、及び中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBの詳細は後述する。
【0043】
〔ヘッドユニットの説明〕
図3は、ヘッドユニット12の概略構造を示す平面透視図である。同図に示すように、ヘッドユニット12はノズル20及びノズル20と連通する圧力室21を含む吐出素子24がマトリクス配置され、全体として決められた噴射解像度を実現できるノズル配置密度となっている。
【0044】
すなわち、ヘッドユニット12に含まれるノズル20(圧力室21)は、インクジェットヘッド10の長手方向xに沿う行方向、及びインクジェットヘッド10の長手方向x(短手方向y)と所定の角度をなす列方向に沿って並べられており、インクジェットヘッド10の長手方向xにおける実質的なノズル間ピッチはPNである。
【0045】
図3では6行7列のマトリクス配置を例示したが、1列あたりのノズル数やノズル列の数はこの例に限定されるものではない。
【0046】
また、ヘッドユニット12のノズル配置は、図3に図示したマトリクス配置に限定されない。例えば、図4(a)に示すようにインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って一列に並べる態様や、図4(b)に示すようにインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って二行の千鳥状に配置する態様などを適用することができる。
【0047】
〔つなぎ部の説明〕
(つなぎ部の構造)
次に、上述した「つなぎ部」について詳細に説明する。図5は、つなぎ部におけるノズル配置を説明する図であり、図6から図8はつなぎ部における液体噴射制御を説明する図である。
【0048】
隣り合うヘッドユニット12は、噴射幅(液体が噴射されるノズル20が設けられているノズル配設領域15(図1参照)のインクジェットヘッド10の長手方向の長さ)に対して重なり合う噴射幅を有している。噴射幅が重なり合う領域の噴射解像度は、インクジェットヘッド全体の噴射解像度よりも高解像度になっている。
【0049】
なお、ここでいう「高解像度」とは、均等な噴射ピッチでなくもある領域内に液体を噴射することができるノズルが多いことを意味している。つまり、つなぎ部13は、つなぎ部13以外の他の部分よりもノズル20の配置密度が高くなっている。
【0050】
図5から図8では、説明を簡単にするために、ヘッドユニット12‐1,12‐2は、インクジェットヘッド10の長手方向に沿ってノズル20が一列に並べられている構造とする。
【0051】
図5(a)は、ヘッドユニット12‐1,12‐2が位置決め誤差がなく組み立てられた状態が図示されている。ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bと、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dとは、インクジェットヘッド10の長手方向xにおける位置のずれがなく、同方向の位置が一致している。
【0052】
このように、ヘッドユニット12‐1,12‐2の位置決め誤差がなく理想的に組み立てられると、つなぎ部13におけるノズル配置間隔(ノズル間ピッチ)と、他の部分のノズル間ピッチが一致し、ヘッドユニット12‐1からヘッドユニット12‐2にわたって均一なノズル間ピッチとなり、ノズル20A,20B又はノズル20C,20Dのいずれか一方を使用することで、つなぎ部13における噴射の不連続性は発生しない。
【0053】
しかし、ヘッドユニット12を位置決め誤差がなく組み立てることは実質的に不可能であり、図5(b)に示すように、最大でインクジェットヘッド10の標準のノズル間ピッチの1/2の位置決め誤差が生じてしまう。
【0054】
図5(b)において、ヘッドユニット12‐1に属するノズル20及びヘッドユニット12‐2に属するノズル20をインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って並ぶように投影させた投影ノズル列を考えたときに、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bに対応するノズル20A’,20B’と、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dに対応するノズル20C’,20D’との位置は一致せず、ノズル20A’とノズル20B’との間にノズル20C’が位置し、ノズル20B’のノズル20A’と反対側のノズル20B’から位置決め誤差分だけ離れた位置にノズル20D’が位置してしまう。
【0055】
つなぎ部13では、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bと、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dと、を選択的に使用することで、目標とする(インクジェットヘッドにおける標準の)噴射解像度を達成している。
【0056】
換言すると、ヘッドユニット12-1,12‐2間のつなぎ部13に含まれるノズル20Aからノズル20Dのうち、ノズル20A,20Bのいずれか一方、及びノズル20C,20Dのいずれか一方は冗長ノズルと考えることができる。
【0057】
なお、図5(a),(b)では、図を簡略化するためにヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20の数を2ノズルずつ、計4ノズルとしたが、つなぎ部13に含まれるノズル20は2ノズル以上(各ヘッドユニット12から1つずつ)であればよい(詳細後述)。
【0058】
(つなぎ部における液体噴射制御)
つなぎ部13では、以下に説明する噴射制御を行うことで、つなぎ部13におけるノズル配置の不連続性に起因する噴射の不連続性を緩和している。
【0059】
図6は、つなぎ部13における液体噴射制御の一例を模式的に図示した説明図である。図6(a)は、ヘッドユニット12‐1とヘッドユニット12‐2とのつなぎ部13のノズル配置の関係を示す図であり、図6(b)は、ヘッドユニット12‐1から噴射された液滴(ドット)22A(白抜きにより図示)、ヘッドユニット12‐2から噴射されたドット22B(ドットハッチを付して図示)の配置を示す図である。
【0060】
なお、図6(a)では、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズルはまとめて符号20‐1を付し、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズルはまとめて符号20‐2を付してある。
【0061】
ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル数は、それぞれ9ノズルずつ、合計18ノズルとし、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1と、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2とは、標準のノズル間ピッチの1/2位置ずれが生じているものとする。
【0062】
図6(b)に示すように、つなぎ部13における噴射制御では、ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2を1ノズルおきに間引いて噴射させている。図6(a)において黒塗りにより図示したノズルが噴射をしないノズルである。
【0063】
つまり、ノズル20‐1,20‐2を1ノズルおきに冗長ノズルとして選択し、冗長ノズルを使用しないようにノズル20‐1,ノズル20‐2の液体噴射が制御される。一方、インクジェットヘッド10の短手方向y(媒体搬送方向)についてはノズルの間引きをしていない。
【0064】
かかる噴射制御によって、つなぎ部13により形成されたドット22の配置密度を他の部分により形成されるドット22の配置密度と整合させている。また、つなぎ部13に含まれるノズルから噴射される液体の噴射量を調整することで、ヘッドユニット12の位置ずれに起因する液体の噴射位置のずれを補償しうる(詳細後述)。
【0065】
図7(a),(b)は、つなぎ部13における他の噴射制御を説明する図である。なお、図7(a),(b)中、図6(a),(b)と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図7(b)に示す例では、インクジェットヘッド10の長手方向xについて、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1を1ノズルおきに間引いて噴射させるとともに、インクジェットヘッド10の短手方向yについて、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2を1ノズルおきに間引いて噴射させている。
【0067】
かかる噴射制御によって、つなぎ部13により形成されたドット22の配置密度を他の部分により形成されるドット22の配置密度と整合させるとともに、つなぎ部13により形成されたドット22の濃度むらの視認性を緩和している。
【0068】
図8(a),(b)は、つなぎ部13におけるさらに他の噴射制御を説明する図であり、図8(a)は図6(a)及び図7(a)と同一の図である。図8(b)に示す例では、ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2のデューティを徐々に変化させている。
【0069】
すなわち、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1は徐々にデューティが小さくされ、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2は徐々にデューティが大きくされることで、ヘッドユニット12‐1により形成されるドット22Aと、ヘッドユニット12‐2により形成されるドット22Bとの配置密度を徐々に変えている。
【0070】
図6から図8に示すように、ヘッドユニット12間のつなぎ部13では、当該つなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2を選択的に使用しつつ、間引き制御、噴射デューティ可変等の液体噴射を工夫することで、つなぎ部13における噴射の不連続性を緩和している。
【0071】
なお、図5に図示したつなぎ部の構造、及び図6から図8に図示したつなぎ部の液体噴射制御は、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aだけでなく、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにも適用される。
【0072】
(つなぎ部に含まれるノズル数)
次に、つなぎ部13に含まれるノズル数について詳細に説明する。図9は、ヘッドユニット12間のつなぎ部13Aにおけるノズル数NA(図2参照)の説明図である。
【0073】
図9に示す例では、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数は10ノズルとなっている。ヘッドユニット12‐11に属するノズル20‐11からノズル20‐15、及びヘッドユニット12‐12に属する20‐22からノズル20‐26がつなぎ部13Aに含まれるノズルである。
【0074】
ヘッドユニット12を接着により固定すると、位置決め誤差が5マイクロメートル程度の高精度の位置決めが可能である。噴射解像度を1200dpiとすると、一画素サイズ(ドット間ピッチ)は約20マイクロメートル(21.2マイクロメートル)となり、達成可能な位置決め誤差(5マイクロメートル)は、おおよそ1/4画素サイズ程度になる。
【0075】
図6(b)に示す1ノズルおきの間引き噴射制御において、ドットサイズのバリエーションをつけた噴射制御を行うことで、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置決め誤差を埋めることが可能である。
【0076】
例えば、直径20マイクロメートル(小滴、基準の一画素)、25マイクロメートル(中滴、基準の一画素の1.25倍)、40マイクロメートル(大滴、基準の一画素の2倍)のドットを形成するように液体噴射を制御し、大滴と小滴を交互に並べることが考えられる。
【0077】
ドット間ピッチが20マイクロメートルの場合に、5マイクロメートルの位置ずれが生じると実際のドット間ピッチは25マイクロメートルとなる。大滴と小滴と交互にならべると、依然としてドット間に5マイクロメートルの重なりが確保される。
【0078】
以上まとめると、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置ずれであれば、ドットサイズを打ち分ける噴射制御を採用することにより、つなぎ部をカバーすることが可能であり、つなぎ部に含まれるノズル数として、2ノズルから10ノズル程度のオーバーラップで実現可能である。
【0079】
例えば、複数のヘッドユニット12間のつなぎ部13Aにおいて、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置ずれが起きている場合は、つなぎ部13Aにおけるヘッドユニット12の位置ずれに起因する濃度むらの視認性が緩和される。5マイクロメートルは程度の小さいぎりぎりの視認性であるため、最小のノズル数である2ノズルから10ノズル程度のオーバーラップで、濃度むらの視認性を下げて複数のヘッドユニット12つなぐことが可能である。
【0080】
図10は、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおけるノズル数NB(図2参照)の説明図である。なお、図10では、図示の都合上、実質的なノズル間ピッチを図9に対して1/2としている。
【0081】
図10に示す例では、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bのノズル数は、50ノズルとなっている。すなわち、中間ユニット14‐1(ヘッドユニット12‐14)の左から一列目の一番上のノズル20‐116、左から二列目のノズル20‐121からノズル20‐126、左から三列目のノズル20‐131からノズル20‐136、左から四列目のノズル20‐141からノズル20‐146、左から五列目のノズル20‐151からノズル20‐156と、ヘッドユニット12‐21の左から一列目のノズル20‐211からノズル20‐216、左から二列目のノズル20‐221からノズル20‐226、左から三列目のノズル20‐231からノズル20‐236、左から四列目のノズル20‐241からノズル20‐246、左から五列目の一番下のノズル20‐151が、中間ユニット14間のつなぎ部13Bに含まれる。
【0082】
先に説明したように、中間ユニット14はヘッドユニット12よりも位置決め精度が要求されず、最大1/2画素(ドット間ピッチの1/2)の位置ずれが考えられる。例えば、液体噴射解像度を1200dpiとすると、最大10マイクロメートルの位置ずれが生じてしまう。
【0083】
先に説明した3種類のドットサイズの打ち分けでは、10マイクロメートルの位置ずれを埋めることは困難であり、ヘッドユニット12‐14から噴射されるドットと、ヘッドユニット12‐21から噴射されるドットと、の比率を順番に変えることが必要となる。
【0084】
例えば、ヘッドユニット12‐14から噴射されるドットと、ヘッドユニット12‐21から噴射されるドットと、の比率を、4:0、3:1、2:2、1:3、0:4のように3段階に順に変更する態様が考えられる。
【0085】
このドット比率は2段階から5段階に変更することが考えられる。1段階あたりに必要なノズル数がヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAと同一であるとすると、2段階では2×NAノズル、5段階では5×NAノズルが必要となる。
【0086】
すなわち、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれるノズル数NBは、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAの少なくとも2倍であり、ドット比率の段階数にヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAを乗じたノズル数である。
【0087】
なお、つなぎ部13のインクジェットヘッド10の長手方向xにおける長さは、人間の目によって視認されにくい幅(例えば0.5ミリメートル)にするとよい。
【0088】
(液体供給路の説明)
インクジェットヘッド10の外部の液体供給系と接続される液体供給路は、中間ユニット14ごとに設けられる構成を採用することができる。中間ユニット14ごとの液体供給路からヘッドユニット12ごとに供給流路を分岐させる。かかる構成により、中間ユニット14ごとの交換が容易になる。
【0089】
〔ヘッドユニットの固定方法〕
(接着剤を用いた固定)
図11は、ヘッドユニット12を中間ユニット14に固定するための固定方法を模式的に図示した説明図である。図11(a)はヘッドユニット12(中間ユニット14)をノズル面と直交する面からインクジェットヘッド10の短手方向について見た図(図1において下から上方向を見た図)であり、図11(b)はヘッドユニット12をノズル面30から見た平面図である。
【0090】
先に説明したように、ヘッドユニット12を中間ユニット14に固定する方法には、ヘッドユニット12が高精度に位置決めされうる、接着剤による接着やヘッドユニット12と中間ユニット14との一体形成が適用される。
【0091】
図11(a),(b)に示す例では、接着剤を用いてヘッドユニット12を中間ユニット14に固定する形態が図示されている。
【0092】
ヘッドユニット12は位置決め用の穴32が設けられ、中間ユニット14はヘッドユニット12の位置決め用のピン34が設けられている。中間ユニット14のヘッドユニット12との接合面には接着剤36が塗布されており、ヘッドユニット12の穴32を中間ユニット14のピン34に差し込むことで、ヘッドユニット12の固定位置が高精度に決められる。
【0093】
ヘッドユニット12が中間ユニット14に位置決めされると、所定の温度で熱処理を施して接着剤を硬化させる。接着剤36が塗布される領域を凹部とすることで、接着剤のはみ出しが防止される。
【0094】
図11(a)には、中間ユニット14に接着剤36が塗布される形態を図示したが、接着剤36はヘッドユニット12に塗布されてもよいし、ヘッドユニット12及び中間ユニット14の両方に塗布されてもよい。
【0095】
また、図11(a),(b)では、位置決め用の穴32及びピン34が平面形状の矩形のヘッドユニット12の対角線上に設けられている態様を例示したが、位置決め用の穴32及びピン34がヘッドユニット12の少なくとも1つの頂角に設けられていればよい。
【0096】
さらに、ヘッドユニット12の穴32及び中間ユニット14のピン34を用いた位置決めに代わり、ヘッドユニット12の接合面と中間ユニット14の接合面に嵌合する形状(例えば、凸形状と凹形状)を形成する形態も可能である。
【0097】
(一体形成)
図示は省略するが、中間ユニット14に属する複数のヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体に形成して、ヘッドユニット12を高精度に位置決めすることも可能である。
【0098】
例えば、複数のヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体に形成したユニットを薄膜(キャビティプレート)の積層により形成する形態が考えられる。積層構造を形成する薄膜は薄膜形成プロセスを用いて高精度に形成することが可能である。
【0099】
ヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体形成とすることで、ヘッドユニット12の高精度の位置決めが実現される。
【0100】
〔中間ユニットの固定方法〕
次に、中間ユニット14の固定方法について説明する。本例に示すインクジェットヘッド10は、中間ユニット14ごとに交換ができるように、中間ユニット14の固定には機械的な固定部材を用いた方法が適用される。
【0101】
(ねじ止めによる固定)
図12は、ねじ止めによる中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。同図は、図1の中間ユニット14‐1を図1の下から上方向に見た側面図である。
【0102】
図12に示すように、ヘッドユニット12‐1から12‐4が固定された中間ユニット14‐1には、ねじ40の軸42が挿入される貫通穴44が設けられている。また、インクジェットヘッド10(中間ユニット14‐1が固定される固定部46)には、ねじ40のねじ山に対応するめねじ加工が施されたねじ穴48が設けられている。
【0103】
所定の位置決め冶具を用いて中間ユニット14‐1とインクジェットヘッド10(固定部46)との位置合わせがされた後にねじ40を締め付けることで、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0104】
(弾性部材による固定)
図13は、弾性部材(板ばね)50を用いた中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。同図は図1の中間ユニット14‐1をノズル面の反対側面から見た平面透視図であるが、図2と同様にヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0105】
図13に示すように、ヘッドユニット12‐11から12‐14が固定された中間ユニット14は、インクジェットヘッド10の長手方向xの両端部(凸部14A,14B)が板ばね50により固定されている。
【0106】
固定部材52によりインクジェットヘッド10に固定されている板ばね50の弾性力(復元力)によって、中間ユニット14‐1はインクジェットヘッド10に押し付けられ、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0107】
(はめ込みによる固定)
図14は、はめ込みによる中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。図14は図1の中間ユニット14‐1をノズル面の反対側面から見た平面透視図であり、図2と同様にヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0108】
図14に示すように、ヘッドユニット12‐11から12‐14が固定された中間ユニット14は、インクジェットヘッド10の長手方向xの両端部(凸部14A,14B)がはめ込み部60(60A,60B)により固定されている。
【0109】
図14に示すはめ込み部60A,60Bは、一方(60A)がインクジェットヘッド10に固定され、他方(60B)がインクジェットヘッド10の長手方向xの位置を調整することができるように構成されている。
【0110】
また、はめ込み部60A,60Bは、中間ユニット14の端部(凸部14A,14B)と嵌合可能な構造を有している。インクジェットヘッド10に固定されたはめ込み部60Aに中間ユニット14‐1の凸部14Aを挿入し、中間ユニット14‐1の凸部14Bにはめ込み部60Bをはめ込むとともに、はめ込み部60Bをはめ込み部60Aの方へ移動させ、中間ユニット14‐1をはめ込み部60A,60Bによって挟み込んだ状態ではめ込み部60Bの位置を固定することで、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0111】
なお、中間ユニット14の固定には、上述した固定方法以外の固定方法を適用することも可能である。例えば、突き当て、弾性部品による押し当てなどの他の機械的固定方法を適用することも可能である。
【0112】
上に例示した機械的固定方法における中間ユニット14の位置決め精度は、20マイクロメートルから50マイクロメートル程度である。300dpiから600dpiの噴射解像度を想定した場合、ドット間ピッチ(ノズル間ピッチ)は40(42.3)マイクロメートルから80(84.7)マイクロメートルであり、液体の噴射むらとして問題となるドット間ピッチの1/2(20マイクロメートルから40マイクロメートル)の位置決め精度は確保することができる。
【0113】
しかし、600dpiを超える解像度、例えば、1200dpiの噴射解像度を想定すると、ドット間ピッチは約20マイクロメートルとなる。液体の噴射むらとして問題となるドット間ピッチの1/2(約10マイクロメートル)の位置決め精度は確保することは困難である。
【0114】
したがって、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける総ノズル数NBをより多くすることで、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を回避している。
【0115】
中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおいて、一方の中間ユニット14に属するヘッドユニット12と他方の中間ユニット14に属するヘッドユニット12から選択的に使用するノズルを選ぶ場合、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおいて、隣接する中間ユニット14間に大きな位置ずれが生じていても、双方の中間ユニット14(ヘッドユニット12)から交互に打滴を行うことや、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bの周辺のドットサイズを調整することで、当該位置ずれに起因する画像(濃度)不連続性を緩和することができる。
【0116】
ただし、この画像の不連続性の緩和を狭い領域(少ないつなぎノズル数)で行うと、つなぎ部13Bにおける単位長さあたりの変化が大きくなるために、当該画像の不連続性が視認されてしまう。隣接する中間ユニット14間の位置ずれの緩和レベルを複数持ち、かつ総ノズル数を多くして、徐々に切り換えていくことで、当該画像の不連続性の視認性を下げることが可能となる。
【0117】
上記の如く構成されたインクジェットヘッド10は、高精度に位置決めされたヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aには少数のノズル20が配置されることで、冗長ノズルの数が削減され、かつ、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにはより多くのノズル20が配置されることで、中間ユニット14の交換時の位置決め精度が緩和され、中間ユニット14の交換が容易となり、中間ユニット14の交換における工数の削減に寄与する。
【0118】
すなわち、インクジェットヘッド10は、ヘッドユニット12同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBとの関係が、NA<NBを満たすように構成されることで、中間ユニット14単位の交換を可能とする位置決め精度の緩和を実現しつつ、つなぎ部における冗長ノズルの数の削減を実現している。
【0119】
さらに、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBを2×NA以上、5×NAとすることで、液体の噴射解像度が600dpiを超える場合(例えば、1200dpi)に対応することができる。
【0120】
(インクジェットヘッドの吐出方式)
本例に示すインクジェットヘッド10の吐出方式は、圧電素子のたわみ変形を利用した圧電方式を適用してもよいし、ノズルと連通する液室内のインクの膜沸騰現象を利用したサーマル方式を適用してもよい。
【0121】
圧電方式における吐出素子は、ノズルと、ノズルと連通する圧力室と、圧力室を構成する壁に形成される圧電素子と、を含む形態がある。また、サーマル方式における吐出素子は、ノズルと、ノズルと連通する液室と、液室内の液を加熱する加熱素子(ヒータ)と、を含む形態がある。
【0122】
〔変形例〕
図15及び図16は、本発明の変形例に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す平面透視図である。図15に示すインクジェットヘッド10’は、1つの中間ユニット14’が2個のヘッドユニット12を具備する態様であり、中間ユニット14’の平面形状は、2つの長方形を長辺方向にずらした形状となっている。
【0123】
また、図16に示すインクジェットヘッド10”は、1つの中間ユニット14”が3つのヘッドユニット12を具備する態様であり、中間ユニット14”の平面形状は凸字形状(山型形状)である。
【0124】
中間ユニット14により多くのヘッドユニット12を備えると、1つのインクジェットヘッド10に具備される中間ユニット14の数を減らすことができるので、インクジェットヘッド10全体として中間ユニット14の取り付けのばらつきを抑えることができる。
【0125】
一方、中間ユニット14に具備されるヘッドユニット12の数をより少なくすることで、中間ユニット14内のヘッドユニット12の固定位置のばらつきを抑えることができる。
【0126】
なお、中間ユニット14に具備されるヘッドユニット12の数は、2個から4個に限定されず、5個以上のヘッドユニット12を1つの中間ユニットに具備する態様も可能である。
【0127】
〔装置構成例〕
次に、上述したインクジェットヘッド10(10’,10”)が適用される装置構成例について説明する。図17は、本発明に係るインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置の全体構成図である。
【0128】
同図に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体102を保持して搬送する記録媒体搬送部104と、記録媒体搬送部104に保持された記録媒体102に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを含む印字部106と、を含んで構成されている。
【0129】
図17に示すインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、上述したインクジェットヘッド10(10’,10”)が適用される。
【0130】
記録媒体搬送部104は、記録媒体102が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト108と、搬送ベルト108が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ、従動ローラ)110,112と、記録媒体保持領域の搬送ベルト108の裏側(記録媒体102が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴に負圧を発生させるチャンバー114と、チャンバー114に負圧を発生させる真空ポンプ116と、を含んでいる。
【0131】
記録媒体102が搬入される搬入部118には、記録媒体102の浮きを防止するための押圧ローラ120が設けられるとともに、記録媒体102が排出される排出部122にもまた、押圧ローラ124が設けられている。
【0132】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に保持される。
【0133】
記録媒体102の搬送路上には、印字部106の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体102の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部126が設けられるとともに、印字部106の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体102上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)128が設けられている。
【0134】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部126による温度調節処理が施された後に、印字部106において画像記録が行われる。
【0135】
画像記録がされた記録媒体102は、読取装置128によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部122から排出される。
【0136】
(印字部の構成)
印字部106に具備されるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体102の全幅を超える長さにわたって複数のノズルが配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。
【0137】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yと記録媒体102とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体102全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0138】
なお、印字部106は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド106を具備してもよい。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの配置順も適宜変更可能である。
【0139】
本例では、フルライン型の記録ヘッドを具備する形態を例示したが、記録媒体102に幅方向に短尺のインクジェットヘッドを走査させて同方向への画像記録を行い、同方向への一回の画像記録が終了すると、記録媒体102をインクジェットヘッドの走査方向と直交する方向へ所定量移動させて、次の領域に対してインクジェットヘッドを走査させながら画像記録を行う動作を繰り返して、記録媒体102の全域にわたって画像記録を行うシリアル方式を適用することも可能である。
【0140】
(制御系の構成)
次に、本例に示すインクジェット記録装置100の制御系について説明する。図18は、インクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0141】
インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システム制御部172、搬送制御部174、画像処理部176、ヘッド駆動部178を備えるとともに、画像メモリ180、ROM182を備えている。
【0142】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ184から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース170は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0143】
システム制御部172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ180及びROM182のメモリコントローラとして機能する。
【0144】
すなわち、システム制御部172は、通信インターフェース170、搬送制御部174等の各部を制御し、ホストコンピュータ184との間の通信制御、画像メモリ180及びROM182の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0145】
ホストコンピュータ184から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、画像処理部176によって所定の画像処理が施される。
【0146】
画像処理部176は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部178に供給する制御部である。
【0147】
画像処理部176において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部178を介してインクジェットヘッド140の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。なお、ヘッド駆動部178は、中間ユニット14ごと、又はヘッドユニット12ごとに複数のブロックから構成されていてもよい。
【0148】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図18に示すヘッド駆動部178には、インクジェットヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0149】
搬送制御部174は、画像処理部176により生成された印字データに基づいて記録媒体102(図17参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図18における搬送駆動部186は、記録媒体102を搬送する記録媒体搬送部104の駆動ローラ110(112)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部174は該モータのドライバーとして機能している。
【0150】
画像メモリ(一時記憶メモリ)180は、通信インターフェース170を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM182に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部176の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ180には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0151】
ROM182は、システム制御部172のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部172を通じてデータの読み書きが行われる。ROM182は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0152】
パラメータ記憶部190は、インクジェット記録装置100の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部172は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0153】
プログラム格納部192は、インクジェット記録装置100を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部172(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部192から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0154】
なお、本発明の適用範囲は、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0155】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0156】
(発明1):液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たす液体吐出ヘッド。
【0157】
本発明によれば、ヘッドユニット同士のつなぎ部、及び中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、高精度に位置決めされ固定されたヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAをより少なくすることで、つなぎ部の無駄なノズルを減らすことができ、かつ、ヘッドユニットよりも位置決め精度が緩和されて固定された中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズルNBをより多くすることで、中間ユニット単位の交換が容易となり、中間ユニットの交換の工数を削減することが可能となる。
【0158】
ヘッドユニットをすべて同一構成とする態様が好ましい。また、中間ユニットをすべて同一構成とする態様も好ましい。
【0159】
ヘッドユニットの具備されるノズルの配置には、マトリクス配置、第1の方向について一列配置、第1の方向について二列の千鳥配置を適用可能である。
【0160】
(発明2):発明1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドユニットは、前記第1の方向に並ぶようにすべてのノズルを投影させた投影ノズル列におけるノズル間ピッチが均一である態様が好ましい。
【0161】
かかる態様によれば、ヘッドユニット単位で所定の噴射解像度が実現される。
【0162】
(発明3):発明2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットは、前記投影ノズル列におけるノズル間ピッチの1/4以下の位置決め精度で、前記ヘッドユニットが固定される態様が好ましい。
【0163】
かかる態様によれば、ヘッドユニットは中間ユニットに対して高精度に位置決めされ、固定される。
【0164】
かかる態様において、投影ノズルのノズル間ピッチの1/10以下の位置決め精度でヘッドユニットが位置決めされ、固定される態様がより好ましい。
【0165】
(発明4):発明3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記複数の中間ユニットは、前記ヘッドユニットの固定における位置決め精度よりも低く、前記投影ノズル列のノズル間ピッチの1/2以下の位置決め精度で固定される態様が好ましい。
【0166】
かかる態様によれば、中間ユニットの位置決め精度はヘッドユニットの中間ユニットに対する位置決め精度よりも緩和されるので、中間ユニット単位での取り付け(交換)が容易になる。
【0167】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式2×NA≦NBを満たす態様が好ましい。
【0168】
小モジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式5×NA≦NBを満たす態様も好ましい。
【0169】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAは、次式2≦NA≦10を満たす態様が好ましい。
【0170】
かかる態様において、液体吐出ヘッドの噴射解像度が600ドット毎インチ(投影ノズル列におけるノズル間ピッチが42.4マイクロメートル)を超える場合でも、ヘッドユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる冗長ノズルの数をより少なくすることができる。
【0171】
(発明7):発明1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBは、次式NB≦50を満たす態様が好ましい。
【0172】
かかる態様において、液体吐出ヘッドの噴射解像度が600ドット毎インチ(投影ノズル列におけるノズル間ピッチが42.4マイクロメートル)を超える場合でも、中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和することができる。
【0173】
(発明8):発明1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットに具備される前記ヘッドユニットは、接着により接合されるか、又は前記中間ユニットと一体に形成される態様が好ましい。
【0174】
かかる態様によれば、ヘッドユニットを高精度に(数マイクロメートル程度の位置決め精度で)固定しうる。
【0175】
(発明9):発明1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットは機械的固定部材を用いて前記取付部に固定される態様が好ましい。
【0176】
かかる態様によれば、中間ユニットごとの取り付けが容易であり、中間ユニット単位の交換が可能である。
【0177】
かかる態様における「機械的固定部材」を用いた固定の具体例として、ねじによる固定、ばねによる固定、はめ込みによる固定、突き当てによる固定、弾性部品による押し当てなどが挙げられる。
【0178】
(発明10):液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たす液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【0179】
本発明において、発明2から発明9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える態様が好ましい。
【0180】
(発明11):発明10に記載の液体吐出装置において、前記つなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第1の方向について前記つなぎ部に含まれるノズルの一部を使用せずに間引き噴射を行うように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する噴射制御手段を備える態様が好ましい。
【0181】
かかる態様において、第2の方向についても間引き噴射をする態様が好ましい。
【0182】
(発明12):発明11に記載の液体吐出装置において、前記噴射制御部は、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第2の方向について一方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に減らすとともに、他方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に増やすように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する態様が好ましい。
【0183】
かかる態様において、噴射デューティを2段階から5段階に変更する態様が好ましい。
【0184】
(発明13):発明10から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドから吐出させた液体を受容する媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段を備え、前記液体吐出ヘッドは、前記媒体の液体が噴射される領域の前記移動手段の移動方向と直交する方向の長さにわたってノズルが配置される構造を有し、前記第1の方向は前記移動手段の移動方向と直交する方向であり、前記第2の方向は前記移動手段の移動方向である態様が好ましい。
【符号の説明】
【0185】
10,10’,10”,106K,106C,106M,106Y,140…インクジェットヘッド、12…ヘッドユニット、13,13A,13B…つなぎ部、14,14’,14”…中間ユニット、15…ノズル配設領域、18,40…ねじ、20…ノズル、36…接着剤、50…弾性部材、60A,60B…はめ込み部材、172…システムコントローラ、178…ヘッド駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に係り、特に複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成された液体吐出ヘッドの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に適用されるインクジェットヘッドには、複数のヘッドユニット(ヘッドモジュール)をつなぎ合わせた形態がある。このようなインクジェットヘッドは、より広い印字領域に対して一度に印字することが可能となる。また、製造時の検査において不合格となった場合や、故障の発生や寿命により交換をする場合には、ヘッドユニットごとに交換することができるというメリットもある。
【0003】
一方、ヘッドユニットをつなぎ合わせる際に正確な位置決めが必要となる。ヘッドユニットごとの位置にばらつきが発生すると、ヘッドユニット間のつなぎ部において画像に濃度むら(すじむら)が発生してしまう。
【0004】
このようなヘッドユニットのつなぎ部におけるノズル配置の不連続に起因する濃度むらを緩和するために、つなぎ部ではヘッドユニット(ノズル)を重複させて、つなぎ部におけるノズル密度をつなぎ部以外よりも高密度とし、高密度に配置されたノズルを適宜選択して打滴することで、画像の濃度むらを緩和している。
【0005】
特許文献1は、複数のインクジェットヘッドをつなぎ合わせた形態のヘッドユニットを備えたインクジェット記録装置を開示している。各ヘッドユニット(ノズル列群)は一部を重複するように千鳥状に配置されており、不良のインクジェットヘッドを適宜交換することで、ヘッドユニットの歩留まりを向上させている。
【0006】
特許文献2は、複数のインクジェットヘッドを数個配置したインクジェットヘッドユニットを開示している。複数のインクジェットヘッドは、長手方向において重なり合い、かつ、各々インクジェットヘッド端部ノズル付近同士が長手方向において近接しないように配置されている。
【0007】
特許文献3は、機能液吐出ヘッドをキャリッジの所定位置に位置決めし、機能液吐出ヘッドとキャリッジとの間に接着剤を流入させ、接着剤が固化するまでの間、機能液吐出ヘッドをキャリッジに位置決めした状態を維持する液体吐出ヘッドの組み立て方法を開示している。
【0008】
特許文献4は、12個のインクジェットヘッドがサブキャリッジに搭載されたヘッドユニットを開示している。インクジェットヘッドはヘッド保持部材にねじ止め固定され、ヘッド保持部材は本体プレートに接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−225255号公報
【特許文献2】特開2007−261021号公報
【特許文献3】特開2009−66566号公報
【特許文献4】特開2008−185365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ヘッドユニットのつなぎ部におけるノズル密度を高密度にすると、1ドットを形成するために一方のヘッドユニット又は他方のヘッドユニットのいずれかのみのノズルを使用することになる。そうすると、つなぎ部において使用しないノズル(冗長ノズル)が発生してしまう。
【0011】
各ヘッドユニットの位置決め精度を上げることで冗長ノズルを減らすことが可能であるものの、ヘッドユニットごとに取り付け(交換)が行われることを考えると、ヘッドユニットの位置決め精度を上げることは困難である。
【0012】
特許文献1から特許文献4には、ヘッドユニット(インクジェットヘッド)のつなぎ部における冗長ノズルに関する開示はない。つまり、特許文献1から特許文献4は、ヘッドユニット間の位置決め精度を緩和しつつ、つなぎ部における冗長ノズルを削減するという本願発明の技術課題やその解決方法を開示するものではない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘッドユニット間の位置決め精度を緩和しつつ、ヘッドユニット間のつなぎ部における冗長ノズルを削減する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッドユニット同士のつなぎ部、及び中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、高精度に位置決めされ固定されたヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAをより少なくすることで、つなぎ部の無駄なノズルを減らすことができ、かつ、ヘッドユニットよりも位置決め精度が緩和されて固定された中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズルNBをより多くすることで、中間ユニット単位の交換が容易となり、中間ユニットの交換の工数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの全体構成を示す平面透視図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの一部拡大図
【図3】図1に示すヘッドユニットの概略構造を示す平面透視図
【図4】ヘッドユニットの他のノズル配置例を示す概略平面図
【図5】つなぎ部におけるノズル配置を説明する図
【図6】つなぎ部における液体噴射制御を説明する図
【図7】つなぎ部における他の液体噴射制御を説明する図
【図8】つなぎ部におけるさらに他の液体噴射制御を説明する図
【図9】ヘッドユニット同士のつなぎ部におけるノズル数の説明図
【図10】中間ユニット同士のつなぎ部におけるノズル数の説明図
【図11】ヘッドユニットの固定方法を模式的に図示した説明図
【図12】中間ユニットの固定方法を模式的に図示した説明図
【図13】中間ユニットの他の固定方法の説明図
【図14】中間ユニットのさらに他の固定方法の説明図
【図15】中間ユニットの変形例を示す平面図
【図16】中間ユニットの他の変形例を示す平面図
【図17】図1から図9に示す液体吐出ヘッドが適用されるインクジェット記録装置の全体構成図
【図18】図17に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0018】
〔インクジェットヘッドの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)10の概略構成を示す平面透視図であり、ノズル(図1中不図示、図3に符号20を付して図示)が形成される面(ノズル面、図11に符号30を付して図示)の反対側の面から見た図である。
【0019】
図1に示すインクジェットヘッド10は、噴射させた液体を付着させる媒体の液体を付着させる領域の全幅(媒体の移動方向と直交する方向の全長)に対応する長さにわたって、複数のノズルが配置されたフルライン型ヘッドである。
【0020】
インクジェットヘッド10は、最小構成単位であるヘッドユニット12と、複数のヘッドユニット12を具備する中間ユニット14と、を備えて構成されている。インクジェットヘッド10の長手方向(第1の方向)xは媒体の幅方向(媒体の移動方向と直交する方向)に対応している。
【0021】
インクジェットヘッド10に具備されるヘッドユニット12は、平面方向に主に単一の素材により構成されている。例えば、ノズルが形成されるノズルプレートは、1枚のプレートにより構成され、ノズルと連通する流路が形成されるプレートも面方向については1枚のプレートにより構成される。また、インクジェットヘッド10は複数のヘッドユニット12が、長手方向xに沿って二列の千鳥状に配置されている。
【0022】
中間ユニット14は、複数のヘッドユニット12と複数の素材にて組み合わせて構成される。複数の素材の例として、セラミックス、シリコン(Si)、ガラス、ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、アクリルニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)、ポリアセタール(POM、ポリカーボネート(PC)、エポキシなどの各種樹脂や、ステンレススティール、ニッケル、アルミ、アルミ合金、銅、鋼鉄などの金属の中から2つ以上の素材を組み合わせた形態が挙げられる。
【0023】
すなわち、中間ユニット14のそれぞれは、同一構成を有するヘッドユニット12が同一数具備され、中間ユニット14自体が同一の構造を有している。また、図1に示す中間ユニット14‐1から中間ユニット14‐5は、インクジェットヘッド10の長手方向xに沿って一列に配置されている。
【0024】
図1に示すインクジェットヘッド10は、二列の千鳥状に配置された4つのヘッドユニット12を具備する中間ユニット14(14‐1から14‐5)を備えている。ヘッドユニット12のインクジェットヘッド10の長手方向xにおける配置ピッチPxは、ヘッドユニット12のノズルが設けられている領域であるノズル配設領域15の同方向における長さLx未満である。
【0025】
また、ヘッドユニット12のインクジェットヘッド10の短手方向(第2の方向)yにおける配置ピッチPyは、ヘッドユニット12の同方向における長さLyを超えている。
【0026】
図1に示すように、中間ユニット14はインクジェットヘッド10の長手方向xについて、隣接する中間ユニット14と干渉しないように配置されている。
【0027】
中間ユニット14はインクジェットヘッド10の長手方向xの両端に凸部14A,14Bを有し、一方の端(同図中左側の端)の凸部14Aと、他方の端(同図中右側の端)の凸部14Bとはインクジェットヘッド10の短手方向y(媒体の移動方向に対応)における位置がずらされた平面形状を有している。
【0028】
図1における左端の中間ユニット14‐1の凸部14Bに対応する凹みに、中間ユニット14‐1の右隣に位置する中間ユニット14‐2の凸部14Aが入り込むように中間ユニット14‐1,14‐2が配置される。中間ユニット14‐3から中間ユニット14‐5も同様に配置されている。
【0029】
インクジェットヘッド10の短手方向yに隣接するヘッドユニット12は、ノズル配設領域15の長手方向xにおける位置が重なり合うように配置されている。このノズル配設領域15が重なり合う領域がつなぎ部13となる。例えば、ヘッドユニット12‐11とヘッドユニット12‐12とは、インクジェットヘッド10の短手方向yについて隣接しており、ヘッドユニット12‐11の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐12の左側の端部近傍がインクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合っている。
【0030】
同様に、ヘッドユニット12‐12の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐13の左側の端部近傍、ヘッドユニット12‐13の右側の端部近傍とヘッドユニット12‐14の左側の端部近傍も、インクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合っている。このように、隣接するヘッドユニット12同士がインクジェットヘッド10の長手方向xについて重なり合う部分が、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aとなっている。
【0031】
また、インクジェットヘッド10の短手方向yに隣接するヘッドユニット12が異なる中間ユニット14に属する場合、このつなぎ部は中間ユニット14間のつなぎ部13Bとなる。
【0032】
例えば、中間ユニット14‐1に属するヘッドユニット12‐14と、中間ユニット14‐2に属するヘッドユニット12‐21とのつなぎ部は、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bとなる。
【0033】
図2は、図1に示すインクジェットヘッド10の一部(2つの中間ユニット分)を拡大して図示した拡大図である。なお、図2は図1と同様にノズル面の反対側面から見た平面透視図であるが、ヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0034】
また、図2に符号16を付して図示した斜めの実線は、ヘッドユニット12のノズル列(多数のノズル列を代表して3列のみ図示)を表している。すなわち、図2に示すヘッドユニット12は、ノズルがマトリクス配置された構造を有している。
【0035】
同一の中間ユニット14に属するヘッドユニット12間のつなぎ部13Aの総ノズル数をNA、中間ユニット14間のつなぎ部(異なる中間ユニット14に属するヘッドユニット12間のつなぎ部)13Bの総ノズル数をNBとすると、これらは、NA<NBの関係を満たしている。
【0036】
「つなぎ部の総ノズル数」は、つなぎ部13を構成する2つのヘッドユニット12のつなぎ部に含まれるノズルの総数である。例えば、ヘッドユニット12‐11とヘッドユニット12‐12とのつなぎ部では、ヘッドユニット12‐11のつなぎ部13Aに含まれるノズル数と、ヘッドユニット12‐12のつなぎ部13Aに含まれるノズル数とを合算したノズル数となる。
【0037】
図2に符号18を付して図示した部材は、中間ユニット14をインクジェットヘッド10の中間ユニット取付部(不図示)に固定するための固定部材(例えば、ねじ)である。インクジェットヘッド10は、中間ユニット14ごとに交換をすることができるように、中間ユニット14の固定には機械的固定部材を用いて固定されている(詳細後述)。
【0038】
一方、図2における図示は省略するが、ヘッドユニット12は、中間ユニット14のヘッドユニット固定部(不図示)に高精度(位置決め誤差が数マイクロメートル程度)に位置決めされ、接着剤により接着される(図11参照)。なお、ヘッドユニット12を高精度に位置決めする形態として、ヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体形成することも可能である。
【0039】
ヘッドユニット12の固定には高精度の位置決めが可能な固定方法が採用されるので、ヘッドユニット12間のつなぎ部における、噴射の不連続性を緩和するためのノズル数をより少なくすることができる。
【0040】
一方、中間ユニット14の固定には、取り付け及び取り外しの容易性が優先されるので、ヘッドユニット12の固定と同程度の高精度の位置決めが困難であり、つなぎ部のノズル数をより多くして、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を緩和している。
【0041】
したがって、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBが上記の関係を満たすように構成することで、つなぎ部13(13A)における冗長ノズルの数が削減されるとともに、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13A、及び中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を緩和している。
【0042】
なお、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数NA、及び中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBの詳細は後述する。
【0043】
〔ヘッドユニットの説明〕
図3は、ヘッドユニット12の概略構造を示す平面透視図である。同図に示すように、ヘッドユニット12はノズル20及びノズル20と連通する圧力室21を含む吐出素子24がマトリクス配置され、全体として決められた噴射解像度を実現できるノズル配置密度となっている。
【0044】
すなわち、ヘッドユニット12に含まれるノズル20(圧力室21)は、インクジェットヘッド10の長手方向xに沿う行方向、及びインクジェットヘッド10の長手方向x(短手方向y)と所定の角度をなす列方向に沿って並べられており、インクジェットヘッド10の長手方向xにおける実質的なノズル間ピッチはPNである。
【0045】
図3では6行7列のマトリクス配置を例示したが、1列あたりのノズル数やノズル列の数はこの例に限定されるものではない。
【0046】
また、ヘッドユニット12のノズル配置は、図3に図示したマトリクス配置に限定されない。例えば、図4(a)に示すようにインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って一列に並べる態様や、図4(b)に示すようにインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って二行の千鳥状に配置する態様などを適用することができる。
【0047】
〔つなぎ部の説明〕
(つなぎ部の構造)
次に、上述した「つなぎ部」について詳細に説明する。図5は、つなぎ部におけるノズル配置を説明する図であり、図6から図8はつなぎ部における液体噴射制御を説明する図である。
【0048】
隣り合うヘッドユニット12は、噴射幅(液体が噴射されるノズル20が設けられているノズル配設領域15(図1参照)のインクジェットヘッド10の長手方向の長さ)に対して重なり合う噴射幅を有している。噴射幅が重なり合う領域の噴射解像度は、インクジェットヘッド全体の噴射解像度よりも高解像度になっている。
【0049】
なお、ここでいう「高解像度」とは、均等な噴射ピッチでなくもある領域内に液体を噴射することができるノズルが多いことを意味している。つまり、つなぎ部13は、つなぎ部13以外の他の部分よりもノズル20の配置密度が高くなっている。
【0050】
図5から図8では、説明を簡単にするために、ヘッドユニット12‐1,12‐2は、インクジェットヘッド10の長手方向に沿ってノズル20が一列に並べられている構造とする。
【0051】
図5(a)は、ヘッドユニット12‐1,12‐2が位置決め誤差がなく組み立てられた状態が図示されている。ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bと、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dとは、インクジェットヘッド10の長手方向xにおける位置のずれがなく、同方向の位置が一致している。
【0052】
このように、ヘッドユニット12‐1,12‐2の位置決め誤差がなく理想的に組み立てられると、つなぎ部13におけるノズル配置間隔(ノズル間ピッチ)と、他の部分のノズル間ピッチが一致し、ヘッドユニット12‐1からヘッドユニット12‐2にわたって均一なノズル間ピッチとなり、ノズル20A,20B又はノズル20C,20Dのいずれか一方を使用することで、つなぎ部13における噴射の不連続性は発生しない。
【0053】
しかし、ヘッドユニット12を位置決め誤差がなく組み立てることは実質的に不可能であり、図5(b)に示すように、最大でインクジェットヘッド10の標準のノズル間ピッチの1/2の位置決め誤差が生じてしまう。
【0054】
図5(b)において、ヘッドユニット12‐1に属するノズル20及びヘッドユニット12‐2に属するノズル20をインクジェットヘッド10の長手方向xに沿って並ぶように投影させた投影ノズル列を考えたときに、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bに対応するノズル20A’,20B’と、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dに対応するノズル20C’,20D’との位置は一致せず、ノズル20A’とノズル20B’との間にノズル20C’が位置し、ノズル20B’のノズル20A’と反対側のノズル20B’から位置決め誤差分だけ離れた位置にノズル20D’が位置してしまう。
【0055】
つなぎ部13では、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20A,20Bと、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20C,20Dと、を選択的に使用することで、目標とする(インクジェットヘッドにおける標準の)噴射解像度を達成している。
【0056】
換言すると、ヘッドユニット12-1,12‐2間のつなぎ部13に含まれるノズル20Aからノズル20Dのうち、ノズル20A,20Bのいずれか一方、及びノズル20C,20Dのいずれか一方は冗長ノズルと考えることができる。
【0057】
なお、図5(a),(b)では、図を簡略化するためにヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20の数を2ノズルずつ、計4ノズルとしたが、つなぎ部13に含まれるノズル20は2ノズル以上(各ヘッドユニット12から1つずつ)であればよい(詳細後述)。
【0058】
(つなぎ部における液体噴射制御)
つなぎ部13では、以下に説明する噴射制御を行うことで、つなぎ部13におけるノズル配置の不連続性に起因する噴射の不連続性を緩和している。
【0059】
図6は、つなぎ部13における液体噴射制御の一例を模式的に図示した説明図である。図6(a)は、ヘッドユニット12‐1とヘッドユニット12‐2とのつなぎ部13のノズル配置の関係を示す図であり、図6(b)は、ヘッドユニット12‐1から噴射された液滴(ドット)22A(白抜きにより図示)、ヘッドユニット12‐2から噴射されたドット22B(ドットハッチを付して図示)の配置を示す図である。
【0060】
なお、図6(a)では、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズルはまとめて符号20‐1を付し、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズルはまとめて符号20‐2を付してある。
【0061】
ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル数は、それぞれ9ノズルずつ、合計18ノズルとし、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1と、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2とは、標準のノズル間ピッチの1/2位置ずれが生じているものとする。
【0062】
図6(b)に示すように、つなぎ部13における噴射制御では、ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2を1ノズルおきに間引いて噴射させている。図6(a)において黒塗りにより図示したノズルが噴射をしないノズルである。
【0063】
つまり、ノズル20‐1,20‐2を1ノズルおきに冗長ノズルとして選択し、冗長ノズルを使用しないようにノズル20‐1,ノズル20‐2の液体噴射が制御される。一方、インクジェットヘッド10の短手方向y(媒体搬送方向)についてはノズルの間引きをしていない。
【0064】
かかる噴射制御によって、つなぎ部13により形成されたドット22の配置密度を他の部分により形成されるドット22の配置密度と整合させている。また、つなぎ部13に含まれるノズルから噴射される液体の噴射量を調整することで、ヘッドユニット12の位置ずれに起因する液体の噴射位置のずれを補償しうる(詳細後述)。
【0065】
図7(a),(b)は、つなぎ部13における他の噴射制御を説明する図である。なお、図7(a),(b)中、図6(a),(b)と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図7(b)に示す例では、インクジェットヘッド10の長手方向xについて、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1を1ノズルおきに間引いて噴射させるとともに、インクジェットヘッド10の短手方向yについて、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2を1ノズルおきに間引いて噴射させている。
【0067】
かかる噴射制御によって、つなぎ部13により形成されたドット22の配置密度を他の部分により形成されるドット22の配置密度と整合させるとともに、つなぎ部13により形成されたドット22の濃度むらの視認性を緩和している。
【0068】
図8(a),(b)は、つなぎ部13におけるさらに他の噴射制御を説明する図であり、図8(a)は図6(a)及び図7(a)と同一の図である。図8(b)に示す例では、ヘッドユニット12‐1,12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2のデューティを徐々に変化させている。
【0069】
すなわち、ヘッドユニット12‐1のつなぎ部13に含まれるノズル20‐1は徐々にデューティが小さくされ、ヘッドユニット12‐2のつなぎ部13に含まれるノズル20‐2は徐々にデューティが大きくされることで、ヘッドユニット12‐1により形成されるドット22Aと、ヘッドユニット12‐2により形成されるドット22Bとの配置密度を徐々に変えている。
【0070】
図6から図8に示すように、ヘッドユニット12間のつなぎ部13では、当該つなぎ部13に含まれるノズル20‐1,20‐2を選択的に使用しつつ、間引き制御、噴射デューティ可変等の液体噴射を工夫することで、つなぎ部13における噴射の不連続性を緩和している。
【0071】
なお、図5に図示したつなぎ部の構造、及び図6から図8に図示したつなぎ部の液体噴射制御は、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aだけでなく、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにも適用される。
【0072】
(つなぎ部に含まれるノズル数)
次に、つなぎ部13に含まれるノズル数について詳細に説明する。図9は、ヘッドユニット12間のつなぎ部13Aにおけるノズル数NA(図2参照)の説明図である。
【0073】
図9に示す例では、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれる総ノズル数は10ノズルとなっている。ヘッドユニット12‐11に属するノズル20‐11からノズル20‐15、及びヘッドユニット12‐12に属する20‐22からノズル20‐26がつなぎ部13Aに含まれるノズルである。
【0074】
ヘッドユニット12を接着により固定すると、位置決め誤差が5マイクロメートル程度の高精度の位置決めが可能である。噴射解像度を1200dpiとすると、一画素サイズ(ドット間ピッチ)は約20マイクロメートル(21.2マイクロメートル)となり、達成可能な位置決め誤差(5マイクロメートル)は、おおよそ1/4画素サイズ程度になる。
【0075】
図6(b)に示す1ノズルおきの間引き噴射制御において、ドットサイズのバリエーションをつけた噴射制御を行うことで、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置決め誤差を埋めることが可能である。
【0076】
例えば、直径20マイクロメートル(小滴、基準の一画素)、25マイクロメートル(中滴、基準の一画素の1.25倍)、40マイクロメートル(大滴、基準の一画素の2倍)のドットを形成するように液体噴射を制御し、大滴と小滴を交互に並べることが考えられる。
【0077】
ドット間ピッチが20マイクロメートルの場合に、5マイクロメートルの位置ずれが生じると実際のドット間ピッチは25マイクロメートルとなる。大滴と小滴と交互にならべると、依然としてドット間に5マイクロメートルの重なりが確保される。
【0078】
以上まとめると、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置ずれであれば、ドットサイズを打ち分ける噴射制御を採用することにより、つなぎ部をカバーすることが可能であり、つなぎ部に含まれるノズル数として、2ノズルから10ノズル程度のオーバーラップで実現可能である。
【0079】
例えば、複数のヘッドユニット12間のつなぎ部13Aにおいて、5マイクロメートル(1/4画素)程度の位置ずれが起きている場合は、つなぎ部13Aにおけるヘッドユニット12の位置ずれに起因する濃度むらの視認性が緩和される。5マイクロメートルは程度の小さいぎりぎりの視認性であるため、最小のノズル数である2ノズルから10ノズル程度のオーバーラップで、濃度むらの視認性を下げて複数のヘッドユニット12つなぐことが可能である。
【0080】
図10は、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおけるノズル数NB(図2参照)の説明図である。なお、図10では、図示の都合上、実質的なノズル間ピッチを図9に対して1/2としている。
【0081】
図10に示す例では、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bのノズル数は、50ノズルとなっている。すなわち、中間ユニット14‐1(ヘッドユニット12‐14)の左から一列目の一番上のノズル20‐116、左から二列目のノズル20‐121からノズル20‐126、左から三列目のノズル20‐131からノズル20‐136、左から四列目のノズル20‐141からノズル20‐146、左から五列目のノズル20‐151からノズル20‐156と、ヘッドユニット12‐21の左から一列目のノズル20‐211からノズル20‐216、左から二列目のノズル20‐221からノズル20‐226、左から三列目のノズル20‐231からノズル20‐236、左から四列目のノズル20‐241からノズル20‐246、左から五列目の一番下のノズル20‐151が、中間ユニット14間のつなぎ部13Bに含まれる。
【0082】
先に説明したように、中間ユニット14はヘッドユニット12よりも位置決め精度が要求されず、最大1/2画素(ドット間ピッチの1/2)の位置ずれが考えられる。例えば、液体噴射解像度を1200dpiとすると、最大10マイクロメートルの位置ずれが生じてしまう。
【0083】
先に説明した3種類のドットサイズの打ち分けでは、10マイクロメートルの位置ずれを埋めることは困難であり、ヘッドユニット12‐14から噴射されるドットと、ヘッドユニット12‐21から噴射されるドットと、の比率を順番に変えることが必要となる。
【0084】
例えば、ヘッドユニット12‐14から噴射されるドットと、ヘッドユニット12‐21から噴射されるドットと、の比率を、4:0、3:1、2:2、1:3、0:4のように3段階に順に変更する態様が考えられる。
【0085】
このドット比率は2段階から5段階に変更することが考えられる。1段階あたりに必要なノズル数がヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAと同一であるとすると、2段階では2×NAノズル、5段階では5×NAノズルが必要となる。
【0086】
すなわち、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれるノズル数NBは、ヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAの少なくとも2倍であり、ドット比率の段階数にヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aに含まれるノズル数NAを乗じたノズル数である。
【0087】
なお、つなぎ部13のインクジェットヘッド10の長手方向xにおける長さは、人間の目によって視認されにくい幅(例えば0.5ミリメートル)にするとよい。
【0088】
(液体供給路の説明)
インクジェットヘッド10の外部の液体供給系と接続される液体供給路は、中間ユニット14ごとに設けられる構成を採用することができる。中間ユニット14ごとの液体供給路からヘッドユニット12ごとに供給流路を分岐させる。かかる構成により、中間ユニット14ごとの交換が容易になる。
【0089】
〔ヘッドユニットの固定方法〕
(接着剤を用いた固定)
図11は、ヘッドユニット12を中間ユニット14に固定するための固定方法を模式的に図示した説明図である。図11(a)はヘッドユニット12(中間ユニット14)をノズル面と直交する面からインクジェットヘッド10の短手方向について見た図(図1において下から上方向を見た図)であり、図11(b)はヘッドユニット12をノズル面30から見た平面図である。
【0090】
先に説明したように、ヘッドユニット12を中間ユニット14に固定する方法には、ヘッドユニット12が高精度に位置決めされうる、接着剤による接着やヘッドユニット12と中間ユニット14との一体形成が適用される。
【0091】
図11(a),(b)に示す例では、接着剤を用いてヘッドユニット12を中間ユニット14に固定する形態が図示されている。
【0092】
ヘッドユニット12は位置決め用の穴32が設けられ、中間ユニット14はヘッドユニット12の位置決め用のピン34が設けられている。中間ユニット14のヘッドユニット12との接合面には接着剤36が塗布されており、ヘッドユニット12の穴32を中間ユニット14のピン34に差し込むことで、ヘッドユニット12の固定位置が高精度に決められる。
【0093】
ヘッドユニット12が中間ユニット14に位置決めされると、所定の温度で熱処理を施して接着剤を硬化させる。接着剤36が塗布される領域を凹部とすることで、接着剤のはみ出しが防止される。
【0094】
図11(a)には、中間ユニット14に接着剤36が塗布される形態を図示したが、接着剤36はヘッドユニット12に塗布されてもよいし、ヘッドユニット12及び中間ユニット14の両方に塗布されてもよい。
【0095】
また、図11(a),(b)では、位置決め用の穴32及びピン34が平面形状の矩形のヘッドユニット12の対角線上に設けられている態様を例示したが、位置決め用の穴32及びピン34がヘッドユニット12の少なくとも1つの頂角に設けられていればよい。
【0096】
さらに、ヘッドユニット12の穴32及び中間ユニット14のピン34を用いた位置決めに代わり、ヘッドユニット12の接合面と中間ユニット14の接合面に嵌合する形状(例えば、凸形状と凹形状)を形成する形態も可能である。
【0097】
(一体形成)
図示は省略するが、中間ユニット14に属する複数のヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体に形成して、ヘッドユニット12を高精度に位置決めすることも可能である。
【0098】
例えば、複数のヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体に形成したユニットを薄膜(キャビティプレート)の積層により形成する形態が考えられる。積層構造を形成する薄膜は薄膜形成プロセスを用いて高精度に形成することが可能である。
【0099】
ヘッドユニット12と中間ユニット14とを一体形成とすることで、ヘッドユニット12の高精度の位置決めが実現される。
【0100】
〔中間ユニットの固定方法〕
次に、中間ユニット14の固定方法について説明する。本例に示すインクジェットヘッド10は、中間ユニット14ごとに交換ができるように、中間ユニット14の固定には機械的な固定部材を用いた方法が適用される。
【0101】
(ねじ止めによる固定)
図12は、ねじ止めによる中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。同図は、図1の中間ユニット14‐1を図1の下から上方向に見た側面図である。
【0102】
図12に示すように、ヘッドユニット12‐1から12‐4が固定された中間ユニット14‐1には、ねじ40の軸42が挿入される貫通穴44が設けられている。また、インクジェットヘッド10(中間ユニット14‐1が固定される固定部46)には、ねじ40のねじ山に対応するめねじ加工が施されたねじ穴48が設けられている。
【0103】
所定の位置決め冶具を用いて中間ユニット14‐1とインクジェットヘッド10(固定部46)との位置合わせがされた後にねじ40を締め付けることで、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0104】
(弾性部材による固定)
図13は、弾性部材(板ばね)50を用いた中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。同図は図1の中間ユニット14‐1をノズル面の反対側面から見た平面透視図であるが、図2と同様にヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0105】
図13に示すように、ヘッドユニット12‐11から12‐14が固定された中間ユニット14は、インクジェットヘッド10の長手方向xの両端部(凸部14A,14B)が板ばね50により固定されている。
【0106】
固定部材52によりインクジェットヘッド10に固定されている板ばね50の弾性力(復元力)によって、中間ユニット14‐1はインクジェットヘッド10に押し付けられ、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0107】
(はめ込みによる固定)
図14は、はめ込みによる中間ユニット14の固定方法を模式的に図示した説明図である。図14は図1の中間ユニット14‐1をノズル面の反対側面から見た平面透視図であり、図2と同様にヘッドユニット12などノズル面からのみ見えるものも実線により図示されている。
【0108】
図14に示すように、ヘッドユニット12‐11から12‐14が固定された中間ユニット14は、インクジェットヘッド10の長手方向xの両端部(凸部14A,14B)がはめ込み部60(60A,60B)により固定されている。
【0109】
図14に示すはめ込み部60A,60Bは、一方(60A)がインクジェットヘッド10に固定され、他方(60B)がインクジェットヘッド10の長手方向xの位置を調整することができるように構成されている。
【0110】
また、はめ込み部60A,60Bは、中間ユニット14の端部(凸部14A,14B)と嵌合可能な構造を有している。インクジェットヘッド10に固定されたはめ込み部60Aに中間ユニット14‐1の凸部14Aを挿入し、中間ユニット14‐1の凸部14Bにはめ込み部60Bをはめ込むとともに、はめ込み部60Bをはめ込み部60Aの方へ移動させ、中間ユニット14‐1をはめ込み部60A,60Bによって挟み込んだ状態ではめ込み部60Bの位置を固定することで、中間ユニット14‐1がインクジェットヘッド10に固定される。
【0111】
なお、中間ユニット14の固定には、上述した固定方法以外の固定方法を適用することも可能である。例えば、突き当て、弾性部品による押し当てなどの他の機械的固定方法を適用することも可能である。
【0112】
上に例示した機械的固定方法における中間ユニット14の位置決め精度は、20マイクロメートルから50マイクロメートル程度である。300dpiから600dpiの噴射解像度を想定した場合、ドット間ピッチ(ノズル間ピッチ)は40(42.3)マイクロメートルから80(84.7)マイクロメートルであり、液体の噴射むらとして問題となるドット間ピッチの1/2(20マイクロメートルから40マイクロメートル)の位置決め精度は確保することができる。
【0113】
しかし、600dpiを超える解像度、例えば、1200dpiの噴射解像度を想定すると、ドット間ピッチは約20マイクロメートルとなる。液体の噴射むらとして問題となるドット間ピッチの1/2(約10マイクロメートル)の位置決め精度は確保することは困難である。
【0114】
したがって、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける総ノズル数NBをより多くすることで、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおける噴射の不連続性を回避している。
【0115】
中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおいて、一方の中間ユニット14に属するヘッドユニット12と他方の中間ユニット14に属するヘッドユニット12から選択的に使用するノズルを選ぶ場合、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにおいて、隣接する中間ユニット14間に大きな位置ずれが生じていても、双方の中間ユニット14(ヘッドユニット12)から交互に打滴を行うことや、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bの周辺のドットサイズを調整することで、当該位置ずれに起因する画像(濃度)不連続性を緩和することができる。
【0116】
ただし、この画像の不連続性の緩和を狭い領域(少ないつなぎノズル数)で行うと、つなぎ部13Bにおける単位長さあたりの変化が大きくなるために、当該画像の不連続性が視認されてしまう。隣接する中間ユニット14間の位置ずれの緩和レベルを複数持ち、かつ総ノズル数を多くして、徐々に切り換えていくことで、当該画像の不連続性の視認性を下げることが可能となる。
【0117】
上記の如く構成されたインクジェットヘッド10は、高精度に位置決めされたヘッドユニット12同士のつなぎ部13Aには少数のノズル20が配置されることで、冗長ノズルの数が削減され、かつ、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bにはより多くのノズル20が配置されることで、中間ユニット14の交換時の位置決め精度が緩和され、中間ユニット14の交換が容易となり、中間ユニット14の交換における工数の削減に寄与する。
【0118】
すなわち、インクジェットヘッド10は、ヘッドユニット12同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBとの関係が、NA<NBを満たすように構成されることで、中間ユニット14単位の交換を可能とする位置決め精度の緩和を実現しつつ、つなぎ部における冗長ノズルの数の削減を実現している。
【0119】
さらに、中間ユニット14同士のつなぎ部13Bに含まれる総ノズル数NBを2×NA以上、5×NAとすることで、液体の噴射解像度が600dpiを超える場合(例えば、1200dpi)に対応することができる。
【0120】
(インクジェットヘッドの吐出方式)
本例に示すインクジェットヘッド10の吐出方式は、圧電素子のたわみ変形を利用した圧電方式を適用してもよいし、ノズルと連通する液室内のインクの膜沸騰現象を利用したサーマル方式を適用してもよい。
【0121】
圧電方式における吐出素子は、ノズルと、ノズルと連通する圧力室と、圧力室を構成する壁に形成される圧電素子と、を含む形態がある。また、サーマル方式における吐出素子は、ノズルと、ノズルと連通する液室と、液室内の液を加熱する加熱素子(ヒータ)と、を含む形態がある。
【0122】
〔変形例〕
図15及び図16は、本発明の変形例に係るインクジェットヘッドの概略構成を示す平面透視図である。図15に示すインクジェットヘッド10’は、1つの中間ユニット14’が2個のヘッドユニット12を具備する態様であり、中間ユニット14’の平面形状は、2つの長方形を長辺方向にずらした形状となっている。
【0123】
また、図16に示すインクジェットヘッド10”は、1つの中間ユニット14”が3つのヘッドユニット12を具備する態様であり、中間ユニット14”の平面形状は凸字形状(山型形状)である。
【0124】
中間ユニット14により多くのヘッドユニット12を備えると、1つのインクジェットヘッド10に具備される中間ユニット14の数を減らすことができるので、インクジェットヘッド10全体として中間ユニット14の取り付けのばらつきを抑えることができる。
【0125】
一方、中間ユニット14に具備されるヘッドユニット12の数をより少なくすることで、中間ユニット14内のヘッドユニット12の固定位置のばらつきを抑えることができる。
【0126】
なお、中間ユニット14に具備されるヘッドユニット12の数は、2個から4個に限定されず、5個以上のヘッドユニット12を1つの中間ユニットに具備する態様も可能である。
【0127】
〔装置構成例〕
次に、上述したインクジェットヘッド10(10’,10”)が適用される装置構成例について説明する。図17は、本発明に係るインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置の全体構成図である。
【0128】
同図に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体102を保持して搬送する記録媒体搬送部104と、記録媒体搬送部104に保持された記録媒体102に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを含む印字部106と、を含んで構成されている。
【0129】
図17に示すインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、上述したインクジェットヘッド10(10’,10”)が適用される。
【0130】
記録媒体搬送部104は、記録媒体102が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト108と、搬送ベルト108が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ、従動ローラ)110,112と、記録媒体保持領域の搬送ベルト108の裏側(記録媒体102が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴に負圧を発生させるチャンバー114と、チャンバー114に負圧を発生させる真空ポンプ116と、を含んでいる。
【0131】
記録媒体102が搬入される搬入部118には、記録媒体102の浮きを防止するための押圧ローラ120が設けられるとともに、記録媒体102が排出される排出部122にもまた、押圧ローラ124が設けられている。
【0132】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に保持される。
【0133】
記録媒体102の搬送路上には、印字部106の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体102の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部126が設けられるとともに、印字部106の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体102上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)128が設けられている。
【0134】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部126による温度調節処理が施された後に、印字部106において画像記録が行われる。
【0135】
画像記録がされた記録媒体102は、読取装置128によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部122から排出される。
【0136】
(印字部の構成)
印字部106に具備されるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体102の全幅を超える長さにわたって複数のノズルが配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。
【0137】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yと記録媒体102とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体102全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0138】
なお、印字部106は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド106を具備してもよい。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの配置順も適宜変更可能である。
【0139】
本例では、フルライン型の記録ヘッドを具備する形態を例示したが、記録媒体102に幅方向に短尺のインクジェットヘッドを走査させて同方向への画像記録を行い、同方向への一回の画像記録が終了すると、記録媒体102をインクジェットヘッドの走査方向と直交する方向へ所定量移動させて、次の領域に対してインクジェットヘッドを走査させながら画像記録を行う動作を繰り返して、記録媒体102の全域にわたって画像記録を行うシリアル方式を適用することも可能である。
【0140】
(制御系の構成)
次に、本例に示すインクジェット記録装置100の制御系について説明する。図18は、インクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0141】
インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システム制御部172、搬送制御部174、画像処理部176、ヘッド駆動部178を備えるとともに、画像メモリ180、ROM182を備えている。
【0142】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ184から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース170は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0143】
システム制御部172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ180及びROM182のメモリコントローラとして機能する。
【0144】
すなわち、システム制御部172は、通信インターフェース170、搬送制御部174等の各部を制御し、ホストコンピュータ184との間の通信制御、画像メモリ180及びROM182の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0145】
ホストコンピュータ184から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、画像処理部176によって所定の画像処理が施される。
【0146】
画像処理部176は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部178に供給する制御部である。
【0147】
画像処理部176において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部178を介してインクジェットヘッド140の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。なお、ヘッド駆動部178は、中間ユニット14ごと、又はヘッドユニット12ごとに複数のブロックから構成されていてもよい。
【0148】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図18に示すヘッド駆動部178には、インクジェットヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0149】
搬送制御部174は、画像処理部176により生成された印字データに基づいて記録媒体102(図17参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図18における搬送駆動部186は、記録媒体102を搬送する記録媒体搬送部104の駆動ローラ110(112)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部174は該モータのドライバーとして機能している。
【0150】
画像メモリ(一時記憶メモリ)180は、通信インターフェース170を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM182に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部176の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ180には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0151】
ROM182は、システム制御部172のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部172を通じてデータの読み書きが行われる。ROM182は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0152】
パラメータ記憶部190は、インクジェット記録装置100の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部172は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0153】
プログラム格納部192は、インクジェット記録装置100を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部172(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部192から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0154】
なお、本発明の適用範囲は、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0155】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0156】
(発明1):液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たす液体吐出ヘッド。
【0157】
本発明によれば、ヘッドユニット同士のつなぎ部、及び中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、高精度に位置決めされ固定されたヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAをより少なくすることで、つなぎ部の無駄なノズルを減らすことができ、かつ、ヘッドユニットよりも位置決め精度が緩和されて固定された中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズルNBをより多くすることで、中間ユニット単位の交換が容易となり、中間ユニットの交換の工数を削減することが可能となる。
【0158】
ヘッドユニットをすべて同一構成とする態様が好ましい。また、中間ユニットをすべて同一構成とする態様も好ましい。
【0159】
ヘッドユニットの具備されるノズルの配置には、マトリクス配置、第1の方向について一列配置、第1の方向について二列の千鳥配置を適用可能である。
【0160】
(発明2):発明1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドユニットは、前記第1の方向に並ぶようにすべてのノズルを投影させた投影ノズル列におけるノズル間ピッチが均一である態様が好ましい。
【0161】
かかる態様によれば、ヘッドユニット単位で所定の噴射解像度が実現される。
【0162】
(発明3):発明2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットは、前記投影ノズル列におけるノズル間ピッチの1/4以下の位置決め精度で、前記ヘッドユニットが固定される態様が好ましい。
【0163】
かかる態様によれば、ヘッドユニットは中間ユニットに対して高精度に位置決めされ、固定される。
【0164】
かかる態様において、投影ノズルのノズル間ピッチの1/10以下の位置決め精度でヘッドユニットが位置決めされ、固定される態様がより好ましい。
【0165】
(発明4):発明3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記複数の中間ユニットは、前記ヘッドユニットの固定における位置決め精度よりも低く、前記投影ノズル列のノズル間ピッチの1/2以下の位置決め精度で固定される態様が好ましい。
【0166】
かかる態様によれば、中間ユニットの位置決め精度はヘッドユニットの中間ユニットに対する位置決め精度よりも緩和されるので、中間ユニット単位での取り付け(交換)が容易になる。
【0167】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式2×NA≦NBを満たす態様が好ましい。
【0168】
小モジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式5×NA≦NBを満たす態様も好ましい。
【0169】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAは、次式2≦NA≦10を満たす態様が好ましい。
【0170】
かかる態様において、液体吐出ヘッドの噴射解像度が600ドット毎インチ(投影ノズル列におけるノズル間ピッチが42.4マイクロメートル)を超える場合でも、ヘッドユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和しつつ、ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる冗長ノズルの数をより少なくすることができる。
【0171】
(発明7):発明1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBは、次式NB≦50を満たす態様が好ましい。
【0172】
かかる態様において、液体吐出ヘッドの噴射解像度が600ドット毎インチ(投影ノズル列におけるノズル間ピッチが42.4マイクロメートル)を超える場合でも、中間ユニット同士のつなぎ部における液体噴射の不連続性を緩和することができる。
【0173】
(発明8):発明1から7のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットに具備される前記ヘッドユニットは、接着により接合されるか、又は前記中間ユニットと一体に形成される態様が好ましい。
【0174】
かかる態様によれば、ヘッドユニットを高精度に(数マイクロメートル程度の位置決め精度で)固定しうる。
【0175】
(発明9):発明1から8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記中間ユニットは機械的固定部材を用いて前記取付部に固定される態様が好ましい。
【0176】
かかる態様によれば、中間ユニットごとの取り付けが容易であり、中間ユニット単位の交換が可能である。
【0177】
かかる態様における「機械的固定部材」を用いた固定の具体例として、ねじによる固定、ばねによる固定、はめ込みによる固定、突き当てによる固定、弾性部品による押し当てなどが挙げられる。
【0178】
(発明10):液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、を備え、前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式NA<NBを満たす液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【0179】
本発明において、発明2から発明9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える態様が好ましい。
【0180】
(発明11):発明10に記載の液体吐出装置において、前記つなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第1の方向について前記つなぎ部に含まれるノズルの一部を使用せずに間引き噴射を行うように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する噴射制御手段を備える態様が好ましい。
【0181】
かかる態様において、第2の方向についても間引き噴射をする態様が好ましい。
【0182】
(発明12):発明11に記載の液体吐出装置において、前記噴射制御部は、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第2の方向について一方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に減らすとともに、他方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に増やすように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する態様が好ましい。
【0183】
かかる態様において、噴射デューティを2段階から5段階に変更する態様が好ましい。
【0184】
(発明13):発明10から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドから吐出させた液体を受容する媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段を備え、前記液体吐出ヘッドは、前記媒体の液体が噴射される領域の前記移動手段の移動方向と直交する方向の長さにわたってノズルが配置される構造を有し、前記第1の方向は前記移動手段の移動方向と直交する方向であり、前記第2の方向は前記移動手段の移動方向である態様が好ましい。
【符号の説明】
【0185】
10,10’,10”,106K,106C,106M,106Y,140…インクジェットヘッド、12…ヘッドユニット、13,13A,13B…つなぎ部、14,14’,14”…中間ユニット、15…ノズル配設領域、18,40…ねじ、20…ノズル、36…接着剤、50…弾性部材、60A,60B…はめ込み部材、172…システムコントローラ、178…ヘッド駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、
複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、
前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、
を備え、
前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、
前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式
NA<NB
を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドユニットは、前記第1の方向に並ぶようにすべてのノズルを投影させた投影ノズル列におけるノズル間ピッチが均一であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド
【請求項3】
前記中間ユニットは、前記投影ノズル列におけるノズル間ピッチの1/4以下の位置決め精度で、前記ヘッドユニットが固定されることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の中間ユニットは、前記ヘッドユニットの固定における位置決め精度よりも低く、前記投影ノズル列のノズル間ピッチの1/2以下の位置決め精度で固定されることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式
2×NA≦NB
を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAは、次式
2≦NA≦10
を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBは、次式
NB≦50
を満たすことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記中間ユニットに具備される前記ヘッドユニットは、接着により接合されるか、又は前記中間ユニットと一体に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記中間ユニットは機械的固定部材を用いて前記取付部に固定されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、
複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、
前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、
を備え、
前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、
前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式
NA<NB
を満たす液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記つなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第1の方向について前記つなぎ部に含まれるノズルの一部を使用せずに間引き噴射を行うように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する噴射制御手段を備えたことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記噴射制御部は、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第2の方向について一方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に減らすとともに、他方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に増やすように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記液体吐出ヘッドから吐出させた液体を受容する媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記媒体の液体が噴射される領域の前記移動手段の移動方向と直交する方向の長さにわたってノズルが配置される構造を有し、
前記第1の方向は前記移動手段の移動方向と直交する方向であり、前記第2の方向は前記移動手段の移動方向であることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項1】
液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、
複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、
前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、
を備え、
前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、
前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式
NA<NB
を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドユニットは、前記第1の方向に並ぶようにすべてのノズルを投影させた投影ノズル列におけるノズル間ピッチが均一であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド
【請求項3】
前記中間ユニットは、前記投影ノズル列におけるノズル間ピッチの1/4以下の位置決め精度で、前記ヘッドユニットが固定されることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の中間ユニットは、前記ヘッドユニットの固定における位置決め精度よりも低く、前記投影ノズル列のノズル間ピッチの1/2以下の位置決め精度で固定されることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士の前記つなぎ位置における総ノズル数NBと、の関係が、次式
2×NA≦NB
を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ヘッドモジュール同士のつなぎ位置における総ノズル数NAは、次式
2≦NA≦10
を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBは、次式
NB≦50
を満たすことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記中間ユニットに具備される前記ヘッドユニットは、接着により接合されるか、又は前記中間ユニットと一体に形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記中間ユニットは機械的固定部材を用いて前記取付部に固定されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出させる複数のノズルを具備するヘッドユニットと、
複数の前記ヘッドユニットが固定される固定部を具備する中間ユニットと、
前記中間ユニットごとに交換できるように前記中間ユニットが取り付けられる中間ユニット取付部と、
を備え、
前記中間ユニットは、第1の方向と直交する第2の方向の隣接する2つのヘッドユニットのノズルの一部が前記第1の方向について重なり合い、前記第2の方向について隣接する2つのヘッドユニットの前記第2の方向における位置が重ならないように前記複数のヘッドユニットが配置された構造を有し、
前記第2の方向について隣接するヘッドユニットのノズルの一部が重なり合うつなぎ部において、同一の中間ユニットに属する前記ヘッドユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NAと、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれる総ノズル数NBと、の関係が、次式
NA<NB
を満たす液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記つなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第1の方向について前記つなぎ部に含まれるノズルの一部を使用せずに間引き噴射を行うように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御する噴射制御手段を備えたことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記噴射制御部は、前記中間ユニット同士のつなぎ部に含まれるノズルから液体を噴射させるときに、前記第2の方向について一方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に減らすとともに、他方の中間ユニットの噴射デューティを段階的に増やすように前記液体吐出ヘッドの噴射を制御することを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記液体吐出ヘッドから吐出させた液体を受容する媒体と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動手段を備え、
前記液体吐出ヘッドは、前記媒体の液体が噴射される領域の前記移動手段の移動方向と直交する方向の長さにわたってノズルが配置される構造を有し、
前記第1の方向は前記移動手段の移動方向と直交する方向であり、前記第2の方向は前記移動手段の移動方向であることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−49244(P2013−49244A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189671(P2011−189671)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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