説明

液体吐出装置

【課題】発泡液を循環させて発泡液の高温化を回避し得ると共に、発泡液室内に安定した圧力を維持することが可能な液体吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体吐出装置は、第1の流路と第2の流路CH2とを分離する分離膜を変位させ、ノズルから液滴を吐出させる液体吐出装置において、第2の流路における発泡用の液体を流動させるスクリューポンプ60を備える。スクリューポンプ60は、供給流路内に収納されたスクリュー61と、供給流路10の外に設けられた駆動手段67と、駆動手段の駆動力を磁力によってスクリューに伝達する非接触型の動力伝達手段65と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギ等によって液体内に気泡を発生させ、その気泡の発生圧力によって液体を吐出口より吐出させる液体吐出ヘッドに関し、特に吐出すべき液体と気泡を発生させる液体とを分離する可動分離膜を用いた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体の微細な滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット方式の記録装置は、ランニングコストが低く、記録時の静粛性に優れ、さらには複数色のインクを用いることによって比較的容易にカラー画像の記録を行えるというメリットがある。また、液滴を吐出するための圧力発生素子としてヒータを用いたインクジェット方式では、圧力発生素子を高密度に配列するのが比較的容易であり、高解像度の記録を行うのに有利な方式とされている。
【0003】
その一方で、従来の熱エネルギを用いたインクジェット方式おいては、ヒータがインクに接した状態で加熱を繰り返すため、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生する場合があった。また、吐出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や、十分に発泡が得られにくい液体の場合、前述のように吐出すべき液体を発熱体で直接的に加熱することにより気泡を形成する方法では、良好な吐出が行われない場合もある。
【0004】
このような問題を解消し得るものとして、特許文献1には、吐出液を発熱体によって直接加熱しない構成の液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドは、吐出口から吐出する液体と、熱によって気泡を発生させる発泡液とが、可動分離膜によって分離された構成を備える。また、この液体吐出ヘッドでは、発泡液をヒータの熱によって加熱して気泡を発生させ、その気泡の圧力によって可動分離膜を変形させることにより、吐出液の液滴を吐出口から吐出させるものとなっている。このように可動分離膜を使用する液体吐出ヘッドとしては、特許文献2に示すように、液体吐出ヘッドの内部空間全体を大きな可動分離膜によって上下に分離し、2つの流路を形成したものもある。この大きな分離膜は、液路を形成する2つの板材によって挟持され、この膜によって2つの液路内の液体が互いに混合されないように構成されている。
【0005】
また、特許文献3には、熱によって気泡を発生させる発泡液を循環させるためのポンプ、放熱手段としての放熱フィン、異物除去手段としてのフィルタなどの手段を備えたインクジェット記録装置も提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−81172号公報
【特許文献2】特開昭59−26270号公報
【特許文献3】特開2007−112099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の吐出液を直接加熱する方式のインクジェット記録ヘッドにおいては、ヒータで加熱されて熱量を持った液滴がヘッド外へと吐出されるため、この液滴の吐出はヘッド内の排熱機能をも果たしている。しかしながら、吐出液と発泡液とを分離膜で分離した液体吐出方式においては、加熱された発泡液がヘッド内部に滞留するため、連続吐出時には、ヒータで加熱された発泡液の温度及びヘッド内の温度が過剰に上昇するという問題が生じる。すなわち、連続的に吐出動作が行われた場合には、ヒータ近傍の発泡液が発泡室に対して出入りを繰り返し、何度も加熱を受けて過剰に昇温してしまい、正常な発泡が阻害されたり、発泡液が変質してしまい液滴が吐出されなくなるという不都合が生じる。
【0008】
これに対し、特許文献3に開示のインクジェット記録装置にあっては、発泡室に連結された流路内を発泡液がポンプによって循環し、放熱部にて発泡液が冷却されるため、発泡液及びヘッド内の過剰な昇温を回避することができる。しかしながら、この特許文献3に開示の装置にあっては、ポンプによって循環される発泡液の発泡室内における圧力を一定に保つために圧力を感知する圧力センサが必要となる。このため、コスト高を招くと共に圧力センサに基づくポンプ制御も必要になり、装置の制御が複雑化するという問題も生じる。また通常のチューブポンプを用いた構造では液体の流れに脈動が起こり、流路内に圧力差が生じ易い。しかも、発泡室内の圧力は、圧力センサからの信号に基づいて、ポンプの起動と停止を順次行うことによって調整するこことなるため、起動時及び停止時にも圧力変動が生じる虞がある。このため、圧力センサの検出結果に基づいてポンプを制御したとしても、発泡室内の圧力を一定に保つことは困難であり、これが液滴の適正な吐出を妨げる要因となっている。すなわち、発泡室内の圧力が高くなり過ぎる場合、分離膜は膨らんだ状態になり、ヒータ駆動時において分離膜の変位量が十分に得られず、吐出液の吐出動作が阻害されることとなる。また逆に、発泡室内の圧力が低過ぎた場合、その負圧によって分離膜が吐出口側に変位しにくくなり、この場合にも吐出液を十分に吐出口から吐出させることができない。
【0009】
本発明は上記従来技術の課題に着目してなされたものであり、発泡液を循環させて発泡液の高温化を回避し得ると共に、発泡液室内に安定した圧力を維持することが可能な液体吐出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
【0011】
すなわち、本発明の液体吐出装置は、液滴を吐出するためのノズルに吐出用の液体が供給される第1の流路と、前記第1の流路に発泡用の液体が供給される第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路とを液体流通不能に分離する可動分離膜と、前記第2の流路内に設けられた発熱素子と、前記第2の流路内に発泡用の液体を供給する供給流路と、を備え、前記発熱素子に熱を発生させて前記気泡により前記分離膜を変位させ、前記ノズルから液滴を吐出させる液体吐出装置において、前記第2の流路における前記発泡用の液体を流動させるスクリューポンプを備え、前記スクリューポンプは、前記供給流路内に収納されたスクリューと、前記供給流路外に設けられた駆動手段と、前記駆動手段の駆動力を磁力によってスクリューに伝達する非接触型の動力伝達手段と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、発泡用の液体の供給流路内に設けたスクリューと、前記供給流路外に設けた駆動部とを磁気的に連結し、前記駆動部の駆動力によってスクリューを駆動するようになっている。このため、流路内の密閉性を確保することが可能になる。さらに流路内の内圧が上昇し、スクリューの回転に係る負荷が増大すると自動的にスクリューの回転は停止する。また、スクリューの停止によって流路内の内圧が下がれば、スクリューは自動的に回転を開始する。このため、流路内の内圧を検出するセンサは不要となり、安価に構成することができる。また、スクリューポンプによれば、チューブポンプのような脈流の発生を抑えることができ、安定した液体の供給を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この第1の実施形態における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を示す一部切欠底面図、図2は図1のA−A線断面図である。ここに示す液体吐出ヘッド30は、吐出液が充填される第1の流路CH1と、吐出液と発泡液が充填される第2の流路CH2とを可動分離膜33によって分離し、発泡液の発泡に伴って可動分離膜33を変位させることにより、液体を吐出するものとなっている。
【0014】
すなわち、液体吐出ヘッド30は、基板31と、その表面(図2では上面)に積層された第2流路壁32と、その表面に設けられた可動分離膜33と、その表面に設けられた第1流路壁34と、その表面に設けられたノズルプレート35とを有する。ノズルプレート35には、吐出口35aが形成されている。また、基板31には、吐出口35aと対向する位置にヒータ36が形成されると共に、第2流路CH2に連通する発泡液供給口31a及び発泡液排出口31bが形成されており、両口はそれぞれ後述の発泡液循環流路に接続されている。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、第1流路CH1内には、各吐出口35aの間の部分に対応して吐出液室形成部34aが配置されており、この吐出液形成部34aと、ノズルプレート35と、可動分離膜33とによって吐出液室R1が形成されている。また、第2流路CH2には、隣接するヒータ36の間にそれぞれ発泡室形成部35aが形成されている。そして、これら複数の発泡室形成部32aと、基板31と、可動分離膜33とにより複数の発泡室R2が形成されている。さらに第2流路CH2には、各発泡室R2に発泡液L2を流入させる供給流路CH21と、発泡室R2を通過した発泡液L2を流出口31bに導く排出流路CH22が形成されている。なお、可動分離膜33は、第1流路壁34と第2流路壁32との間に挟持された状態となっている。
【0016】
ここで、図3に基づき、第1の実施形態における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの吐出原理を説明する。なお、図3は図1のB−B線断面図である。
初期状態(図3(a))において、第1流路CH1には吐出液が、第2流路内CH2には発泡液L2が満たされている。この状態でヒータ36に電気エネルギを印加すると、ヒータ36が急激に加熱され、発泡液L2内には膜沸騰による気泡Bが発生する(図3(b))。この気泡Bの発生に伴う圧力は圧力波となって第2流路内CH2の発泡液L2に伝播し、可動分離膜33に作用してこれを変位させる。可動分離膜33の変位に伴って第1流路CH1内の吐出液L1が移動し(図3(c))、吐出が開始される。発生初期の高圧力により気泡Bが急速に成長すると、可動分離膜33はさらに変形して第1流路CH1内の吐出液L1を吐出口35aから押し出して液柱Lpを形成する(図3(d)参照)。その後、気泡Bが収縮過程に入ると可動分離膜33は逆方向(吐出口から離れる方向)へと変位を開始し(図3(e))、やがて初期の位置に復帰する。この時、吐出液L1は第1流路CH1内に引き込まれる方向に移動するため、液柱Lpが千切れて液滴Ldが形成され(図3(f))、液滴Ldは外方へと飛翔し、記録媒体等に着弾する。
【0017】
次に、上記液体吐出ヘッド30に連結される発泡液の循環流路を説明する。
【0018】
図4ないし図7は、この第1の実施形態における発泡液の循環流路の構成を説明するための図であり、図4は発泡液の循環流路の全体斜視図、図5は液体吐出ヘッド内における発泡液の流動状態を示す一部切欠底面図である。また、図6は図4に示した循環流路を模式的に示す側面図、図7は前記循環流路を液体吐出装置のハウジングに組み込んだ状態を示す斜視図である。
【0019】
図4に示すように、第1の実施形態における発泡液の循環流路(供給流路)10は、発泡液を循環させるポンプ60と、ポンプ60の流出口60bに連結されるフィルタ4と、ポンプ60の流入口60aに連結される冷却部2と、これらを連結させるチューブ5とを備える。フィルタ4は液体吐出ヘッド30における第2流路CH2の供給口31aにチューブ5を介して連結され、冷却部2は第2流路CH2の流出口31bにチューブ5を介して連結されている。
【0020】
この循環流路10において、発泡液は、ポンプ60の駆動によって図中の矢印方向に送られ、循環する。すなわち、ポンプ60の流出口60bから送り出された発泡液L2は、フィルタで塵埃などを除去された後、図5に示すように、供給口31aから液体吐出ヘッド30の第2流路CH2の供給流路CH21を経て各発泡室R2内に流入する。この後、ヒータ36の熱によって発泡動作を終えた発泡液L2は、排出流路CH22を経て流出口31bから排出され、チューブ5を介して冷却部2へと送られ、ここで液温が下げられた後、チューブ5を介して流入口60aからポンプ60内に流入する。
【0021】
ここで、この第1の実施形態に使用するポンプ60の構成をより具体的に説明する。ポンプ60は、収納部66内に収納されたスクリュー61と、このスクリュー61を回転させるための駆動力を発生させる駆動源としてのモータ67と、このモータ67の駆動力(回転力)をスクリュー61に伝達する動力伝達手段65を備える。スクリュー61は、回転軸61aとその周囲に固定された螺旋状の羽根61bとを有し、回転軸61aの端部には円盤(第1の回転体)63が固定されている。この円盤63の一部または全体には、磁石もしくは磁力により影響を受ける鉄等の磁性体63aが設けられている。また、モータ67のモータシャフト67aの端部にも円盤(第2の回転体)64が固定されており、この円盤64も前述の円盤63と同様に磁石もしくは磁力により影響を受ける鉄等の磁性体64aが設けられている。モータシャフト67aは、その中心軸線が回転軸61aの中心と一致するように配置されている。なお、円盤63と64は、一方の円盤に磁石を、他方の円盤に磁石の影響を受ける磁性体を設けても良いが、両方の円盤に磁石を設けても良い。この第1の実施形態では、両磁性体63a,64aの一方が磁石によって形成され、他方が鉄によって形成されている。モータシャフト67aに固定された円盤64は、スクリュー61の回転軸61aに固定された円盤63と所定の間隔を介して対向している。
【0022】
以上のように構成された循環流路10、液体吐出ヘッド30及びモータ67は、図7に示すような液体吐出装置のハウジング7に組み付けられる。この際、モータシャフト67aに固定された円盤64aと回転軸61aに固定された円盤63との間にはハウジングの側壁7aが介在することとなる。
【0023】
次に、上記の構成に基づき作用を説明する。
モータ67を駆動し、円盤64を回転させると、円盤64aの磁石の磁力が円盤63の磁性体(鉄)63aに作用し、円盤64は磁性体63と共に回転する。これによってスクリュー61が回転する。このように、本実施形態では、回転軸61aは、モータ67のシャフトに直接接続されておらず、磁石63と磁性体64との間の磁力によってモータ67の回転力が伝達されるため、循環流路は密閉系を保つことが容易となる。つまり、スクリュー61を収納する収納部66などに、外部に設けた駆動源(モータ)67と接続するための貫通孔などを形成する必要がないため、循環流路10に高い密閉性を得ることが可能になる。
【0024】
円盤64の磁石64aの磁力によって駆動力を得たスクリュー61は、回転するにつれて発泡液を矢印に示す方向に循環させるようになっている。すなわち、スクリュー61は、フィルタ4を介して液体吐出ヘッド30へと液体を送り、液体吐出ヘッド30に送られた液体は、冷却部2を経てポンプ60の流入口へと送られる。この際、スクリュー61から液体吐出ヘッド30に至る流路内部では流し込まれる発泡液により内圧が少しずつ上昇していく。但し、この第1の実施形態では、循環流路内における内圧が一定値に達すると、それ以降は、内圧の上昇は発生しない。これは、円盤64から円盤63への回転力の伝達が磁力のみで行われているためである。すなわち、内圧が円盤64の磁石64aと円盤63との間に生じる磁力以上になると、スクリュー61は回転不能状態になり停止する。その後も液体吐出ヘッド30における発泡室R2では、図5に示すような発泡液の循環が行われる。このため、スクリュー61から液体吐出ヘッド30における循環流路の内圧は少しずつ低下していく。この内圧の低下によって、円盤63と64との間の磁力が内圧を上回ってくると、スクリュー61はゆっくりと回転を再開する。このため内圧調整は、円盤64と円盤63との間に発生する磁力を調整することで行うことが可能になる。この磁力の調整は、円盤64の位置を矢印方向A2の方向に移動して磁石64aと円盤63との間の間隔を調整することによって行うことができる。また、円盤64に設ける磁石、あるいは磁石を備えた円盤64を選択することによって初期設定における円盤64と円盤63との間の磁力を調整することも可能である。このように、この第1の実施形態においては、循環流路4内に内圧検知センサを設けなくとも、内圧が過剰になるのを抑えつつ液体の循環を行うことができ、安価に構成することができる。
【0025】
一方、図10に示す本発明との関連技術においては、ポンプ3としてチューブポンプを用い、このチューブポンプ3からフィルタ4、ヘッド1及び冷却部2を経て再びポンプへと戻る経路に沿って液体を循環させるようになっている。チューブポンプは、周知のようにモータの駆動力をベルトなどの動力伝達部材を介して回転体に伝達して回転させ、回転体の周囲に沿って配設された複数個(図では3個)のコロで、チューブを順次押し潰しながら液体を移動させて行く構成を採る。このため、ポンプ3の駆動に伴って、ポンプ3から液体吐出ヘッド1に至る循環流路の内圧が上昇して行き、そのまま駆動を継続すると発泡室内の内圧上昇が過剰になり、発泡室の破損を招く虞がある。このため、関連技術では内圧センサ5を設け、ここで検出された内圧に基づきポンプの駆動、停止及び駆動速度の制御を行い、これにより流方向と流速、流圧の調整が可能になる。従って、内圧センサを設けることによるコスト上昇、制御の複雑化を招くという問題がある。これに対し、上記第1の実施形態では、前述のように内圧センサ、及びこれに伴う複雑な制御も不要であり、安価に構成することができる。また上記のチューブポンプ3は脈動が発生し易く、これが内圧を変動させて、液体の吐出量及び吐出速度などのバラツキを招いている。しかし、この第1の実施形態においては、このような関連技術に生じている課題を、確実に解消することが可能になる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8及び図9に基づき説明する。
この第2の実施形態では、モータ67のモータシャフト67aの先端に設けられた円盤64の磁石と、スクリュー61の回転軸61aに設けられた円盤63aとの間に発生する磁力を調整するための磁力調整手段として、磁力を遮断する遮蔽板70が設けられている。この遮蔽板70は、長孔70aに挿入された不図示の螺子によって液体吐出装置のハウジング7に固定されており、その固定位置は矢印A3方向に沿って調整可能である。この遮蔽板を円盤64と63との間に移動させ、両円盤の間に形成される磁力を調整することにより、スクリュー61の駆動力を調整することができる。
【0027】
以上説明したような本発明によれば、可動膜により吐出液と発泡液を完全に分離する構成の液体吐出ヘッドにおいて、容易な方法で発泡液を循環可能で発泡液循環経路内の発泡液室内圧を一定に保つことができる。このため、本発明によれば、高価なセンサや複雑なポンプ駆動シーケンスが不要となり、小型、低コストの液体吐出装置を提供することが可能になる。
【0028】
なお、上記第2の実施形態において上記第1の実施形態と同様に、両円盤63aの間隔を調整する調整手段を設けることも可能である。また、上記実施形態では、回転体として円盤を用いた場合を例に採り説明したが、回転体の形状は円形に限らず、その他の形状に構成することも可能である。
【0029】
さらに、上記実施形態では、液体吐出ヘッドの第2の流路に発泡液を供給するための供給流路として、ポンプからヘッドを介してポンプに戻る循環流路を設けた場合を例に採り説明した。しかし本発明は循環流路を構成する場合以外にも適用可能である。すなわち液体吐出ヘッドの流入口にのみポンプの流出口が連結され、液体吐出ヘッドの他端部にはポンプが接続されないような供給流路を構成する場合にも適用可能である。
【0030】
また、本発明の液体吐出装置は、主として紙などの記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置に適用可能であるが、これに限定されるものではなく、その他、産業用機器などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの概略構成を示す一部切欠底面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第1の実施形態における液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドの吐出原理を説明する断面図であり、図1のB−B線断面図である。
【図4】発泡液の循環流路の全体斜視図である。
【図5】液体吐出ヘッド内における発泡液の流動状態を示す一部切欠底面図である。
【図6】図4に示した循環流路を模式的に示す側面図である。
【図7】図4に示した循環流路を液体吐出装置のハウジングに組み込んだ状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における発泡液の循環流路の全体斜視図である。
【図9】図8に示した循環流路の側面図である。
【図10】本発明の関連技術における発泡液の循環流路の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
2 冷却部
4 フィルタ
5 チューブ
10 循環流路
30 液体吐出ヘッド
31 基板
31a 供給口
31b 流出口
33 可動分離膜
35 ノズルプレート
35a 吐出口
36 ヒータ
60 ポンプ
61 スクリュー
61a 回転軸
61b 羽根
63 円盤
63a 磁性体
64 円盤
64a 磁石
65 動力伝達手段
R1 吐出液室
R2 発泡液室
CH1 第1流路
CH2 第2流路
B 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するためのノズルに吐出用の液体を供給する第1の流路と、前記第1の流路に発泡用の液体を供給する第2の流路と、前記第1の流路と前記第2の流路とを液体流通不能に分離する可動分離膜と、前記第2の流路内に設けられた発熱素子と、前記第2の流路内に発泡用の液体を供給する供給流路と、を備え、前記発熱素子に熱を発生させて前記気泡により前記分離膜を変位させ、前記ノズルから液滴を吐出させる液体吐出装置において、
前記第2の流路における前記発泡用の液体を流動させるスクリューポンプを備え、
前記スクリューポンプは、前記供給流路内に収納されたスクリューと、前記供給流路外に設けられた駆動手段と、前記駆動手段の駆動力を磁力によってスクリューに伝達する非接触型の動力伝達手段と、を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記動力伝達手段は、前記駆動手段によって回転される第1の回転体と、前記スクリューに第1の回転体と所定の間隔を介して対向するように固定した第2の回転体と、前記第1、第2の回転体の少なくとも一方に磁力発生部を設け、前記両回転体を磁気的に連結したことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記動力伝達手段は、前記両回転体を連結する磁力を調整する磁力調整手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記磁力調整手段は、前記両回転体の間の空間に対して進退可能に設けられ、前記両回転体の間に発生する磁力を減少させる遮蔽版を備えることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記磁力調整手段は、前記両回転体の間隔を調整する調整手段によって構成されることを特徴とする請求項3または4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記磁力発生部またはこれを備えた前記回転体を交換可能とし、前記両回転体の間に発生する磁力を調整可能としたことを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−23342(P2010−23342A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187160(P2008−187160)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】