説明

液体吐出装置

【課題】加湿メンテナンス開始に係る時間の短縮及び装置の小型化を共に実現する。
【解決手段】ヘッド10を保持するヘッドホルダ3に、吐出面10aを覆うキャップ40が環状に設けられている。キャップ40の突出部41aは、上下動可能であり、搬送ベルトの支持面8aに先端が当接することによって、吐出面10aと支持面8aとの間に形成される吐出空間S1を外部空間S2から隔離する位置を取り得る当接位置を取り得る。加湿メンテナンスを行う場合、ポンプ53を駆動し、一方のジョイント51の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収し、タンク54により加湿された空気を他方のジョイント51の開口51bから吐出空間S1内に供給する。開口51a,51bは共にヘッドホルダ3に形成され、吐出空間S1に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット式プリンタは、インクを吐出する吐出口が多数開口した吐出面を有するヘッドを含む。吐出口からインクが吐出されない状況が長時間続くと、吐出口近傍のインクが蒸発して粘性が増加し、吐出口の目詰まりが生じ得る。そこで、吐出口の目詰まりを防止するため、特許文献1に記載のように、キャップ(キャッピング部)によって吐出面を覆うと共に空調装置によってキャップ内の空気を加湿する動作(加湿メンテナンス)が行われることがある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−212138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、以下のような問題がある。即ち、キャップに加湿機構を設ける必要があるため、キャップが大型化し、ひいてはプリンタが大型化してしまう。また、上記加湿メンテナンスを行うにあたり、ヘッドの吐出面の所定位置(吐出口群を囲む位置)にキャップを当接させるために、ヘッドとキャップとの位置決めの精度を高くする必要がある。そのため、ヘッドとキャップとの位置決めに時間がかかり、加湿メンテナンスを迅速に開始することができない。
【0005】
本発明の目的は、加湿メンテナンス開始に係る時間の短縮及び装置の小型化を共に実現することが可能な液体吐装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、記録媒体に対して液体を吐出する吐出口が開口した吐出面を有するヘッドと、前記ヘッドを保持するヘッドホルダと、前記吐出面に対向する対向面を有する対向部材、及び、前記対向面に先端が当接することによって前記吐出面と前記対向面との間に形成される吐出空間を外部空間から隔離する位置を取り得る前記ヘッドホルダに設けられた突出部を含む、前記吐出面を封止する封止手段と、一端及び他端が前記吐出空間に開口する循環流路、及び、前記循環流路内の空気を加湿する加湿手段を有する加湿機構であって、前記循環流路の一端及び他端の開口は、前記ヘッド又は前記ヘッドホルダに形成され、前記一端の開口から前記吐出空間内の空気を回収し、前記加湿手段により加湿された空気を前記他端の開口から前記吐出空間内に供給する加湿機構とを備えたことを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【0007】
上記観点によれば、ヘッドホルダに突出部を設けたことで、加湿メンテナンス開始前のヘッドとキャップとの位置決めが不要となり、加湿メンテナンス開始に係る時間が短縮される。また、循環流路の一端及び他端の各開口がヘッド又はヘッドホルダに形成されているため、加湿機構が設けられた大型のキャップは不要であり、装置の小型化を実現することができる。そして、加湿機構が一端の開口から吐出空間内の空気を回収し、加湿手段により加湿された空気を他端の開口から吐出空間内に供給することにより、吐出空間内の空気を加湿した空気に迅速に置換することができる。
【0008】
本発明に係る液体吐出装置は、前記対向部材が、記録媒体を支持する媒体支持部であり、前記対向面が、記録媒体を支持する支持面であってよい。この場合、ヘッドを記録位置(吐出面が支持面に対向する位置)とキャップの配置空間との間で移動させる必要がないため、加湿メンテナンスの開始及び加湿メンテナンス後の記録再開を迅速に行うことができる。つまり、加湿メンテナンスに係る時間(メンテナンス前後の時間)が短縮される。また、キャップの配置空間や移動経路(記録位置からキャップの配置空間までの経路)の確保が不要であるため、装置の小型化をより確実に実現することができる。しかも、循環流路の一端及び他端の各開口がヘッド又はヘッドホルダに形成されているため、媒体支持部の支持面に開口を形成する必要がなく、記録時における記録媒体の支持に支障を来たすことがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、加湿メンテナンス開始に係る時間の短縮及び装置の小型化を共に実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1のプリンタに含まれるヘッドホルダ及び加湿機構を示す概略図である。
【図6】図5の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図7】図1のプリンタに含まれる全ヘッドと加湿機構との接続形態を示す概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタの、図2に対応する平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタの、図6に対応する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0013】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10に対するインク供給源としてのインクカートリッジ39が収容されている。
【0014】
空間Aには、4つのヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット、加湿メンテナンスに用いられる加湿機構50(図5参照)等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司るコントローラ1pが配置されている。
【0015】
コントローラ1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作等を制御する。メンテナンス動作は、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10の全アクチュエータを駆動することにより全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、パージ(ポンプ等によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、ワイピング(フラッシング又はパージの後にワイパーにより吐出面10a上の異物を払拭する動作)、加湿メンテナンス(キャップ40により画定された吐出空間S1(図5参照)内に加湿空気を供給する動作)等を含む。このうち、加湿メンテナンスについては後に詳述する。
【0016】
搬送ユニット21は、ベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ(図示せず)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、搬送方向上流側から供給されてきた用紙Pを搬送ベルト8の外周面である支持面8aに押さえ付ける。その後用紙Pは、搬送ベルト8の走行に伴い、支持面8a上に支持されつつ、ベルトローラ7に向けて搬送される。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを支持面8aから剥離し、さらに搬送方向下流側へと導く。プラテン9は、4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。
【0017】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図3及び図4参照)が開口した吐出面10aである。記録(画像形成)に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。4つのヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aが搬送ベルト8の上側ループの支持面8aに対向し、且つ、吐出面10aと支持面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。また、ヘッドホルダ3には、ヘッド10毎に、吐出面10aの外周を覆う環状のキャップ40が設けられている。ヘッド10及びヘッドホルダ3のより具体的な構成については後に詳述する。
【0018】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0019】
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ23は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0020】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した記録指令に基づいて、コントローラ1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ(図示せず)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ(図示せず)、搬送モータ等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が形成される。インクの吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0021】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0022】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39を有する。各カートリッジ39は、インクチューブ(図示せず)を介して、対応するヘッド10にインクを供給する。
【0023】
次に、図2〜図4及び図7を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0024】
ヘッド10は、上下に積層されたリザーバユニット11及び流路ユニット12(図7参照)、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC(平型柔軟基板)19(図4参照)等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジ39(図1参照)から供給されたインクを一時的に貯留するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12y(図2参照)から下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0025】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別インク流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0026】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4参照)を互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、図2、図3、及び図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0027】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、多数の圧力室16に跨るように延在した複数の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極を含む。電極には、圧力室16毎に設けられた個別電極、及び、圧力室16に共通の共通電極が含まれる。個別電極は、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0028】
FPC19は、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有し、その途中部にドライバIC(図示せず)が実装されている。FPC19は、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10の制御基板(リザーバユニット11上方に配置。図示せず)にそれぞれ固定されている。FPC19は、コントローラ1p(図1参照)による制御の下、制御基板から出力された各種駆動信号をドライバICに伝達し、ドライバICが生成した信号をアクチュエータユニット17に伝達する。
【0029】
次に、図2、図5、及び図6を参照し、ヘッドホルダ3の構成について説明する。
【0030】
ヘッドホルダ3は、金属等からなるフレームであり、それぞれヘッド10毎に設けられたキャップ40と一対のジョイント51とが取り付けられている。
【0031】
一対のジョイント51は、図5に示すように、加湿機構50の循環流路の一端及び他端をそれぞれ構成するものであり、対応するヘッド10の長手方向一端及び他端にそれぞれ近接配置されている。加湿メンテナンスにおいて、一対のジョイント51のうち、一方(図5の左側)のジョイント51の下面の開口51aから空気が回収され、他方(図5の右側)のジョイント51の下面の開口51bから加湿空気が供給される。
【0032】
ジョイント51は、図6に示すように、略円筒状であり、基端51x、及び、基端51xから延出した先端51yを含む。基端51xから先端51yに亘って、鉛直方向に沿った円柱状の中空空間51zが貫通している。基端51x及び先端51yの外径は異なり、基端51xの方が先端51yより外径が大きいが、中空空間51zは鉛直方向に沿って一定の径を有する。先端51yは、その上端面の外周に切欠を有し、先細り形状となっている。これにより、先端51yへのチューブ55,57一端の接続が容易である。
【0033】
ジョイント51は、先端51yがヘッドホルダ3の貫通孔3aに貫挿された状態で、ヘッドホルダ3に対して固定されている。貫通孔3aは、ヘッドホルダ3におけるジョイント51の配置位置、即ち、ヘッド10の長手方向一端及び他端の近傍にそれぞれ形成されている。先端51yの外径は貫通孔3aの直径より一回り小さく、先端51yの外周面とヘッドホルダ3の貫通孔3aを画定する壁面との間に若干の隙間がある。この隙間は、ジョイント51をヘッドホルダ3に固定する際にシール材等が充填されることにより、封止される。
【0034】
キャップ40は、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されており、固定部41cを介してヘッドホルダ3に支持された弾性体41、及び、上下動可能な可動体42を含む。
【0035】
弾性体41は、ゴム等の弾性材料からなり、基部41x、基部41xの下面から下方に突出した断面視逆三角形状の突出部41a、ヘッドホルダ3に固定された断面視T字状の固定部41c、及び、基部41xと固定部41cとを接続する接続部41dを含む。弾性体41は、上記各部を有しつつ、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。固定部41cの上端部分は、接着剤等を介して、ヘッドホルダ3に固定されている。固定部41cはまた、各貫通孔3aの近傍において、ヘッドホルダ3と各ジョイント51の基端51xとの間に挟持されている。接続部41dは、固定部41cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部41xの下端に接続している。接続部41dは、可動体42の上下動に伴って変形可能な程度の撓みを有する。基部41xの上面には、可動体42の下端に嵌合する凹部41bが形成されている。
【0036】
可動体42は、剛材料からなり、また、弾性体41と同様、平面視でヘッド10の吐出面10aの外周を囲む環状に形成されている。可動体42は、弾性体41を介してヘッドホルダ3に支持されつつ、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に移動可能である。具体的には、可動体42は、複数のギア43と接続されており、コントローラ1pによる制御の下、モータの駆動に伴いギア43が回転することにより、上下動する。このとき、可動体42の下端に弾性体41の凹部41bが嵌合しているため、基部41xも可動体42と共に上下動する。弾性体41は、可動体42が上下動するとき、固定部41cがヘッドホルダ3に固定された状態で、突出部41aを含む基部41xが可動体42と共に上下動する。これにより、突出部41aの先端41a1の吐出面10aに対する鉛直方向の相対位置が変化する。
【0037】
突出部41aは、可動体42の上下動により、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aに当接する当接位置(図5参照)と、先端41a1が搬送ベルト8の支持面8aから離隔した離隔位置(図6参照)とを選択的に取る。図5に示すように、突出部41aが当接位置にあるとき、吐出面10aと支持面8aとの間に形成される吐出空間S1が外部空間S2から隔離されている。図6に示すように、突出部41aが離隔位置にあるとき、先端41a1は吐出面10aと支持面8aとの間、即ち吐出面10aよりも支持面8aに近接した位置にある。
【0038】
突出部41aは、平面視で、吐出面10a(図2に示すヘッド10の下面)の全周に亘って吐出面10aから離隔している。また、突出部41aは、平面視で、ヘッド10の長手方向一端(図2における下端)近傍を上底、ヘッド10の長手方向他端(図2における上端)近傍を下底とした、台形を描くように延在している。
【0039】
平面視における吐出面10a(図2に示すヘッド10の下面)と先端41a1との離隔距離は、開口51b上の主走査方向に関する上記離隔距離D1よりも、副走査方向に関する上記離隔距離D2の方が小さい。また、主走査方向に関する上記離隔距離D1は、吐出面10aの主走査方向両端で互いに同じであり、且つ、副走査方向に沿って一定である。一方、副走査方向に関する上記離隔距離D2は、吐出面10aの副走査方向両端で互いに同じであるが、主走査方向に沿って一定でなく、主走査方向に沿って開口51bから開口51aに近づくにつれて漸進的に小さくなっている。
【0040】
ヘッド10の長手方向他端(図2における上端)には、一対の規制板60が設けられている。規制板60は、流路ユニット12における長手方向他端の各側面上に固定されており、各側面から副走査方向に沿って先端41a1近傍まで延出している。これにより、平面視において、ヘッド10の長手方向他端を構成する吐出面10aの端部と、一対の規制板60と、突出部41aの先端41a1との協同で、開口51bを囲む領域が画定されている。規制板60の下端は、吐出面10aと同じレベルにある。
【0041】
次に、図5及び図7を参照し、加湿機構50の構成について説明する。
【0042】
加湿機構50は、図5に示すように、ジョイント51、チューブ55,56,57、ポンプ53、及びタンク54を含む。ジョイント51は1のヘッド10に対して一対(2つずつ)設けられているが、ポンプ53及びタンク54は、図7に示すように、プリンタ1内に1つずつ、即ち4つのヘッド10に対して1つずつ設けられている(図7参照)。チューブ55,57はそれぞれ、4つのヘッド10に共通の主部55a,57a、及び、主部55a,57aから分岐してジョイント51まで延在した4つの分岐部55b,57bを含む。
【0043】
チューブ55の一端(各分岐部55bの先端)は各ヘッド10に設けられた一方(図5の左側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部55aの分岐部55bと反対側の端部)はポンプ53に接続されている。即ち、チューブ55は、各ヘッド10に設けられた一方のジョイント51の中空空間51zとポンプ53とを連通可能に接続している。チューブ56は、ポンプ53とタンク54とを連通可能に接続している。チューブ57の一端(各分岐部57bの先端)は各ヘッド10に設けられた他方(図5の右側)のジョイント51の先端51yに嵌合し、他端(主部57aの分岐部57bと反対側の端部)はタンク54に接続されている。即ち、チューブ57は、各ヘッド10に設けられた他方のジョイント51の中空空間51zとタンク54とを連通可能に接続している。
【0044】
タンク54は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。チューブ56は、タンク54内の水面よりも下方に接続し、即ちタンク54の下部空間と連通している。チューブ57は、タンク54内の水面よりも上方に接続し、即ちタンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の水がポンプ53に流れ込まないよう、チューブ56には図示しない逆止弁が取り付けられており、図5の矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。
【0045】
次に、図5〜図7を参照し、加湿メンテナンス時のプリンタ1各部の動作について、説明する。加湿メンテナンスは、所定時間インク吐出動作が行われなかったとき等に行われる。
【0046】
なお、加湿メンテナンス時における下記一連の動作の間、ヘッド10、ヘッドホルダ3、及び搬送ベルト8は、所定位置に固定されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aと支持面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるようにヘッド10を保持した状態で固定されている。
【0047】
加湿メンテナンスを行う際、コントローラ1pは、先ず、ギア43の回転により可動体42を下方に移動させる。加湿メンテナンス時以外のとき(記録時等)、突出部41aは離隔位置(図6参照)にあるが、当該可動体42の下方への移動に伴い、当接位置(図5参照)に移動する。これにより、外部空間S2から隔離された吐出空間S1が形成される。
【0048】
その後、コントローラ1pは、ポンプ53を駆動し、一方のジョイント51の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収する。このとき、開口51aから回収された空気は、ジョイント51の中空空間51z及びチューブ55内の空間を通ってポンプ53に至り、さらにチューブ56内の空間を通ってタンク54に至る。当該空気は、タンク54の下部空間(即ち水面下)に供給される。そして、タンク54内の水により加湿された空気は、タンク54の上部空間から排出され、チューブ57内の空間を通って、他方のジョイント51の開口51bから吐出空間S1内に供給される。図5中、黒塗りの矢印は加湿前の空気の流れを示し、白抜きの矢印は加湿後の空気の流れを示す。このようにして吐出空間S1内に加湿空気が供給されることにより、吐出口14a近傍のインクの増粘が抑制され、吐出口14aの目詰まりを防止することができる。さらに、吐出口14a近傍のインクが増粘していても、加湿空気より水分が供給されることによりインクの増粘が解消(回復)する。
【0049】
コントローラ1pは、上記のポンプ53の駆動と共に、図7に示す各分岐部55b,57bに設けられた切換弁等を制御することにより、分岐部55b,57bにおける空気の流れを選択的に調節する。
【0050】
コントローラ1pは、ポンプ53を所定時間駆動した後、ポンプ53の駆動を停止することにより、加湿メンテナンスを終了する。そしてコントローラ1pは、ギア43の回転により可動体42を上方に移動させ、突出部41aを当接位置(図5参照)から離隔位置(図6参照)へと移動させる。これにより、記録再開が可能な状態となる。
【0051】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、ヘッドホルダ3にキャップ40を設けたことで、加湿メンテナンス開始前のヘッド10とキャップとの位置決めが不要となり、加湿メンテナンス開始前に係る時間が短縮される。また、加湿機構50の循環流路の一端及び他端の各開口51a,51bがヘッドホルダ3に形成されているため、加湿機構50が設けられた大型のキャップは不要であり、プリンタ1の小型化を実現することができる。そして、加湿機構50が一端の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収し、タンク54等により加湿された空気を他端の開口51bから吐出空間S1内に供給することにより、吐出空間S1内の空気を加湿した空気に迅速に置換することができる。
【0052】
搬送ベルト8の支持面8aに突出部41aの先端41a1を当接させることで、吐出空間S1が外部空間S2から離隔され、吐出面10aが封止される。そのため、ヘッド10を記録位置(吐出面10aが支持面8aに対向する位置)とキャップ40の配置空間との間で移動させる必要がなく、加湿メンテナンスの開始及び加湿メンテナンス後の記録再開を迅速に行うことができる。つまり、加湿メンテナンスに係る時間(メンテナンス前後の時間)が短縮される。また、キャップ40の配置空間や移動経路(記録位置からキャップ40の配置空間までの経路)の確保が不要であるため、プリンタ1の小型化をより確実に実現することができる。しかも、ジョイント51の開口51a,51bがヘッドホルダ3に形成されているため、搬送ベルト8やプラテン9に開口を形成する必要がなく、記録時における用紙Pの支持・搬送に支障を来たすことがない。
【0053】
チューブ55〜57等によって吐出空間S1内の空気を循環させることで、水の消費量を低減しつつ加湿を行うことができる。
【0054】
搬送ベルト8やプラテン9に循環流路の一端及び他端の開口を形成した場合、フラッシングやパージ時に搬送ベルト8やプラテン9上に吐出されたインクによって、開口が閉塞し得る。本実施形態によれば、このような問題を抑制することもできる。
【0055】
ジョイント51の開口51a,51bが、図2に示すように、平面視で、吐出面10aを挟む位置に配置されている。これにより、加湿空気が迅速に吐出口14a周辺に供給され、全吐出口14aに対する効果的な加湿が実現される。
【0056】
ジョイント51の開口51a,51bが、図2に示すように、平面視で、吐出面10aの長尺方向(主走査方向)に関して吐出面10aを挟む位置に配置されている。これにより、加湿空気が迅速に吐出口14a周辺に供給され、吐出面10aが一方向(主走査方向)に長尺である場合でも、全吐出口14aに対して効果的な加湿を行うことができる。
【0057】
平面視における吐出面10aと先端41a1との離隔距離は、図2に示すように、開口51b上の主走査方向に関する上記離隔距離D1よりも、副走査方向に関する上記離隔距離D2の方が小さい。これにより、吐出空間S1内において、開口51bから供給された加湿空気が、平面視で、吐出面10aの幅方向外側(図2に示す領域S1a,S1b)に流れにくく、吐出面10aに対向する領域に流れ易くなる。これにより、全吐出口14aに対してより一層効果的な加湿を行うことができる。
【0058】
しかも本実施形態では、平面視における吐出面10aと先端41a1との副走査方向に関する離隔距離D2が、主走査方向に沿って開口51bから開口51aに近づくにつれて小さくなっている。このように、吐出空間S1内における加湿空気の流れに沿って、上記離隔距離D2を小さくしたことにより、当該流れの下流側に位置する(図2の下方の)吐出口14aにも、効果的に加湿空気を供給することができる。
【0059】
なお、図2は突出部41aの先端41a1とヘッド10の流路ユニット12との位置関係を示しているが、上述した離隔距離による各効果は、鉛直方向の平均値において上記離隔距離に関する条件が成立した場合に、最も発揮される。これは、吐出空間S1内における加湿空気の流れが、鉛直方向を含む3次元的なものであり、当該空気の流れる空間の鉛直方向に沿った断面積の大きさに依存するからである。
【0060】
規制板60によって、開口51bから吐出空間S1内に供給された加湿空気の流れが規制される。即ち、平面視において、開口51bから供給された加湿空気は、吐出面10aの幅方向外側(図2に示す領域S1a,S1b)に流れ込むのが抑制され、吐出面10aに対向する領域により一層流れ込み易くなる。これにより、全吐出口14aに対してより一層効果的な加湿を行うことができる。
【0061】
キャップ40及びジョイント51を含めたヘッドホルダ3全体として見たとき、図6に示すように、ヘッドホルダ3の表面には凹部3xが設けられており、当該凹部3xの底部にジョイント51の開口51a,51bが形成されている。凹部3xは、平面視で、吐出面10aと突出部41aの先端41a1との間で、吐出面10aを囲む環状に形成されている。凹部3xにおける開口51a,51bが形成された底部は吐出面10aよりも上方にあることから、ワイピング時にワイパーの先端に保持されたインク等の異物が開口51a,51bに付着するのが防止される。したがって、開口51a,51bへの異物付着に起因した加湿メンテナンスの動作不良を防止することができる。
【0062】
加湿機構50の循環流路の一端及び他端をそれぞれ構成するジョイント51の開口51a,51bが、ヘッドホルダ3に形成されている。これにより、開口51a,51bがヘッド10に形成されている場合に比べ、上述したワイピング時における開口51a,51bへの異物付着の抑制を、より容易に実現可能である。
【0063】
突出部41aが可動体42と共に上下動する。そのため、ヘッド10及び搬送ベルト8を固定したまま、突出部41aのみを上下動させ、キャッピング(吐出空間S1を外部空間S2から隔離すること)を行うことができる。ヘッド10や搬送ベルト8を移動させる場合、比較的大掛かりな移動機構が必要であると共に、移動に時間を要するが、本実施形態によれば、移動機構が簡素化可能であると共に、比較的短時間で上記移動を行うことができる。したがって、加湿メンテナンスの開始及び加湿メンテナンス後の記録再開をより一層迅速に行うことが可能である。
【0064】
突出部41aが、図2に示すように、平面視で、吐出面10aの全周を囲む環状に形成され、当該全周に亘って吐出面10aから離隔している。これにより、ワイピング時にワイパーが突出部41aに当接するのが防止される。
【0065】
例えば、ポンプ53及びタンク54をヘッド10毎に、4つずつ設け、且つ、ヘッド10毎に1本ずつチューブ55,57を設けた場合、加湿機構50が大型化してしまう。これに対し、本実施形態では、図7に示すように、ポンプ53及びタンク54が4つのヘッド10に対して1つずつ設けられており、且つ、チューブ55,57がそれぞれ主部55a,57aと4つの分岐部55b,57bとを含む。これにより、複数のヘッド10を有する場合でも、加湿機構50の小型化が可能である。
【0066】
コントローラ1pは、図7に示す各分岐部55b,57bに設けられた切換弁等を制御することにより、分岐部55b,57bにおける空気の流れを選択的に調節する。このような制御により、一部の分岐部55b,57bのみの空気の流れを許容すること等が可能となる。つまり、所望のヘッド10の吐出空間S1にのみ加湿空気を供給すること等が可能となり、様々な状況に応じた適切な加湿メンテナンスを行うことができる。
【0067】
コントローラ1pは、吐出空間S1の容積以上の加湿空気が開口51bから吐出空間S1内に供給されるよう、ポンプ53の駆動を制御する。これにより、吐出空間S1全体の空気が置換され、吐出空間S1への加湿空気の供給を適切に行うことができる。
【0068】
タンク54の上部空間(水面よりも上方の空間)は、4つのヘッド10の吐出空間S1の合計容積以上の容積を有する。これにより、全ヘッド10の吐出空間S1の空気の置換を迅速に行うことができる。即ち、全ヘッド10の吐出空間S1に対する加湿空気の供給を迅速且つ効率よく行うことができる。
【0069】
搬送ベルト8の支持面8aは、突出部41aの先端41a1との当接部分全体において、平滑である。これにより、適切なキャッピングが実現される。
【0070】
次いで、図8を参照し、本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。第2実施形態に係るプリンタは、キャップの突出部が描く平面形状が第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態に係るキャップの突出部241aは、平面視で、吐出面10a(図8に示すヘッド10の下面)の外形と同様の矩形を描くように延在している。平面視における吐出面10aと先端241a1との離隔距離は、第1実施形態と同様、開口51b上の主走査方向に関する上記離隔距離D1よりも、副走査方向に関する上記離隔距離D2の方が小さい。また、主走査方向に関する上記離隔距離D1は、吐出面10aの主走査方向両端で互いに同じであり、且つ、副走査方向に沿って一定である。副走査方向に関する上記離隔距離D2も、吐出面10aの副走査方向両端で互いに同じであり、且つ、主走査方向に沿って一定である。
【0072】
本実施形態によれば、第1実施形態による効果のうち、上記離隔距離D2を主走査方向に沿って開口51bから開口51aに近づくにつれて小さくしたことによる効果以外の効果を得ることができる。
【0073】
次いで、図9を参照し、本発明の第3実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。第3実施形態に係るプリンタは、循環流路の開口がヘッドホルダ3ではなくヘッド10に形成されている点が第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0074】
本実施形態では、ジョイント51の代わりに、ヘッド10に鉛直方向に沿った貫通孔351が設けられている。貫通孔351は、ヘッド10毎に2つ、ジョイント51と同じ位置に設けられている。貫通孔351は、リザーバユニット11に形成された円柱状の貫通孔352と、流路ユニット12に形成された円柱状の貫通孔353とからなる。貫通孔352,353は、中心軸は同じであるが、径が異なり、貫通孔353の方が貫通孔352より径が大きい。
【0075】
ヘッド10の表面(吐出面10a)には、貫通孔353による凹部310xが設けられており、当該凹部310xの底部に循環流路の開口351a(図9は一方の開口351aのみ示すが、他方の開口も同様)が形成されている。凹部310xにおける開口351aが形成された底部は吐出面10aよりも上方にあることから、ワイピング時にワイパーの先端に保持されたインク等の異物が開口351aに付着するのが防止される。したがって、開口351aへの異物付着に起因した加湿メンテナンスの動作不良を防止することができる。
【0076】
本実施形態によると、第1実施形態と同様、記録時における用紙Pの支持・搬送に支障を来たすことがなく、且つ、プリンタの小型化を実現しつつ、加湿メンテナンスの開始及び加湿メンテナンス後の記録再開を迅速に行うことが可能である。具体的には、ヘッド10にキャップ40を設けたことで、ヘッド10をキャップ40の配置空間に移動させる必要がなくなり、加湿メンテナンスの開始及び加湿メンテナンス後の記録再開を迅速に行うことが可能である。また、キャップ40の配置空間や移動経路の確保が不要であるため、プリンタの小型化を実現することができる。さらに、循環流路の開口がヘッド10に形成されているため、搬送ベルト8やプラテン9に開口を形成する必要がなく、記録時における用紙Pの支持・搬送に支障を来たすことがない。
【0077】
しかも本実施形態によれば、循環流路の開口(特に、加湿空気を供給する他方の開口)がヘッド10に形成されているため、吐出口14aのより近傍に開口を配置することができ、吐出口14aに効果的に加湿空気を供給することができる。
【0078】
本実施形態では、循環流路の開口が、平面視で、吐出面10aに形成された全ての吐出口14aからなる吐出口群を挟む位置(図2に示す主走査方向に関して両端に位置する各アクチュエータユニット17の外側)に配置されている。これにより、全吐出口14aに対する効果的な加湿が実現される。
【0079】
本実施形態では、平面視における吐出口群(8つのアクチュエータユニット17に対応)と先端41a1との離隔距離が、他方の開口上の主走査方向に関する上記離隔距離よりも、副走査方向に関する上記離隔距離の方が小さい。これにより、吐出空間S1内において、開口から供給された加湿空気が、平面視で、吐出口群の領域の幅方向外側に流れにくく、吐出口群の領域(アクチュエータユニット17)に対向する領域に流れ易くなる。これにより、全吐出口14aに対してより一層効果的な加湿を行うことができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、平面視における吐出口群(8つのアクチュエータユニット17に対応)と先端41a1との副走査方向に関する離隔距離が、主走査方向に沿って開口51bから開口51aに近づくにつれて小さくなっている。このように、吐出空間S1内における加湿空気の流れに沿って、上記離隔距離を小さくしたことにより、当該流れの下流側に位置する(図2の下方の)吐出口14aにも、効果的に加湿空気を供給することができる。
【0081】
その他、本実施形態においても、第1実施形態と同様の構成によって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
なお、本実施形態の弾性体41は、固定部41cがヘッドホルダ3の凹部3bと嵌合することで、ヘッドホルダ3に支持されている。また、チューブ55,57の一端は、リザーバユニット11における貫通孔352の上端の開口が形成された表面に、貫通孔352を覆うように固定されている。
【0083】
次いで、本発明の第4実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。第4実施形態に係るプリンタは、突出部41aの先端41a1が当接する面が搬送ベルト8の支持面8aでない点が第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態では、金属やプラスチック等からなる板状部材を、ヘッド10の吐出面10aに対向する対向部材として用いる。そして、当該板状部材の表面に突出部41aを当接させることで、吐出空間S1を外部空間S2から隔離し、吐出面10aを封止する。ここで、ヘッド10の吐出面10aに板状部材の表面を対向させるにあたっては、ヘッド10及び搬送ユニット21を固定した状態で、平面視においてヘッド10及び搬送ユニット21と重ならない位置に配置されている板状部材を、水平方向に移動させ、吐出面10aと支持面8aとの間に挿入してよい。或いは、板状部材を平面視においてヘッド10及び搬送ユニット21と重ならない位置で固定し、且つ、搬送ユニット21を固定した状態で、ヘッド10を水平方向に移動させ、ヘッド10の吐出面10aに板状部材の表面を対向させてもよい。また、板状部材を搬送ベルト8の下方の位置で固定し、且つ、ヘッド10を固定した状態で、搬送ユニット21を水平方向に移動させ、ヘッド10の吐出面10aに板状部材の表面を対向させてもよい。
【0085】
本実施形態においても、ヘッドホルダ3にキャップ40が設けられているので、加湿メンテナンス開始前のヘッド10とキャップとの位置決めが不要となり、加湿メンテナンス開始前に係る時間が短縮される。また、加湿機構50の循環流路の一端及び他端の各開口51a,51bがヘッドホルダ3に形成されているため、加湿機構50が設けられた大型のキャップは不要であり、プリンタ1の小型化を実現することができる。そして、加湿機構50が一端の開口51aから吐出空間S1内の空気を回収し、タンク54等により加湿された空気を他端の開口51bから吐出空間S1内に供給することにより、吐出空間S1内の空気を加湿した空気に迅速に置換することができる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0087】
規制部の材料、形状、位置等は特に限定されない。例えば、規制部は、副走査方向以外の任意の方向に延在してよい。規制部は、ヘッド10ではなく、ヘッドホルダ3やキャップ40に固定されてよい。規制部は、板状に限定されず、様々な形状であってよい。
【0088】
規制部を省略してもよい。
【0089】
突出部を移動させる移動機構として、上述の実施形態ではギア43等を例示したが、ソレノイドやリンクを用いたカム機構等、その他様々な部材を用いてよい。
【0090】
上述の実施形態において、突出部41aは、図6に示すように、離隔位置にあるとき、先端41a1が吐出面10aと支持面8aとの間に位置しているが、これに限定されない。例えば、紙詰まり防止のためには、突出部41aが離隔位置にあるとき、先端41a1が吐出面10aよりも上方(支持面8aから吐出面10aよりも離隔した位置)にあることが好ましい。
【0091】
突出部は、上述の実施形態のように移動可能であることに限定されない。例えば、突出部が移動不能にヘッドホルダに固定され、突出部の先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、ヘッドホルダ又は媒体支持部の支持面を上下動させることにより、突出部の先端の吐出面に対する相対位置を変化させ、突出部が当接位置と離隔位置とを選択的に取ることができる。
【0092】
突出部の材料、形状等は、特に限定されない。例えば突出部の材料は弾性材料でなく剛材料であってもよい。突出部は、鉛直方向に対して傾斜した方向に突出してもよい。突出部の断面形状は、逆三角形状でなく矩形状であってもよい。つまり、突出部は先細り状でなくてもよい。突出部は、平面視で、吐出面の全周に亘って吐出面から離隔せず、例えば部分的に吐出面と接触してもよいし、或いは、吐出面の全周に亘って吐出面と接触してもよい。突出部は、平面視で、台形や矩形以外の様々な形状を描くよう延在してよい。平面視における吐出面10a(又は、ヘッドに開口を形成する場合は吐出口群)と突出部の先端との離隔距離は、特に限定されず、例えば副走査方向に関する上記離隔距離D2がゼロであってもよい。突出部のヘッドホルダに対する支持態様は様々に変更可能である。
【0093】
ヘッド又はヘッドホルダの表面に形成された凹部3x;310xは、平面視で吐出面10aの外周に沿った環状に形成されることに限定されず、循環流路の一端及び/又は他端の開口が形成された部分のみに形成されてよい。
【0094】
循環流路の一端及び他端の開口は、ヘッド又は前記ヘッドホルダに形成され且つ吐出空間に開口する限り、形状や位置は特に限定されない。例えば、一方の開口がヘッド、他方の開口がヘッドホルダに形成されてもよい。開口が突出部に形成されてもよい。ヘッド又はヘッドホルダの表面に凹部3x;310xを形成せず、吐出面10aと同じレベルに循環流路の一端及び/又は他端の開口を配置してもよい。開口は、平面視で、副走査方向に関して吐出面10a(又は、ヘッドに開口を形成する場合は吐出口群。以下同じ。)を挟む位置に配置されてよい。或いは、開口は、平面視で吐出面10aを挟まない位置(即ち、吐出面10aに対して一方向に関して同じ側)に配置されてよい。
【0095】
ポンプ53及びタンク54をヘッド10毎に、4つずつ設け、且つ、ヘッド10毎に1本ずつチューブ55,57を設けてもよい。
【0096】
加湿手段として、上述の実施形態ではポンプ53及びタンク54を例示したが、循環流路内の空気を加湿することができる限りは、その他様々な手段を用いてよい。例えば、ポンプ53を省略し、タンク54のみを用いて加湿を行ってもよい。また、ヒータ等の加熱手段をさらに用いたり、超音波式加湿手段を用いたり、循環流路内に、水を含ませたスポンジ等の多孔質部材や布を配置したりすることで、加湿を行ってもよい。
【0097】
加湿機構の各要素の位置は特に限定されず、一部(ジョイント51等)がヘッド又はヘッドホルダ、残り(チューブ55〜57、ポンプ53、タンク54等)が装置内の任意の位置にあってよい。
【0098】
媒体支持部は、記録媒体を支持する限りは、上述の実施形態のような搬送ベルトに限定されず、プラテンローラ、ドラム等であってもよい。また、媒体支持部は、搬送ベルトのように走行して記録媒体を搬送することに限定されず、静止状態の媒体支持部によって支持された記録媒体に対してヘッドが移動しながら記録を行ってもよい。
【0099】
対向部材としては、吐出面に対向する対向面を有する限りは、上述の実施形態のような搬送ベルトや板状部材に限定されず、任意の部材を適用可能である。
【0100】
吐出面又は吐出口群は、一方向に長尺であることに限定されない。
【0101】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、インク以外の液体を吐出するものであってもよい。
【0102】
記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
1p コントローラ(加湿手段,移動制御部,調節部)
3 ヘッドホルダ
3x;310x 凹部
8 搬送ベルト(対向部材,媒体支持部)
8a 支持面(対向面)
10 インクジェットヘッド(ヘッド)
10a 吐出面
14a 吐出口
40 キャップ
41a;241a 突出部
41a1;241a1 先端
42 可動体(移動機構)
43 ギア(移動機構)
50 加湿機構
51 ジョイント
51a;351a 開口(循環流路の一端)
51b 開口(循環流路の他端)
53 ポンプ(加湿手段)
54 タンク(加湿手段)
55,57 チューブ(循環流路)
56 チューブ(循環流路,主部)
55a,57a 主部
55b 分岐部(分岐回収路)
57b 分岐部(分岐供給路)
60 規制板(規制部)
D1,D2 離隔距離
P 用紙(記録媒体)
S1 吐出空間
S2 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出する吐出口が開口した吐出面を有するヘッドと、
前記ヘッドを保持するヘッドホルダと、
前記吐出面に対向する対向面を有する対向部材、及び、前記対向面に先端が当接することによって前記吐出面と前記対向面との間に形成される吐出空間を外部空間から隔離する位置を取り得る前記ヘッドホルダに設けられた突出部を含む、前記吐出面を封止する封止手段と、
一端及び他端が前記吐出空間に開口する循環流路、及び、前記循環流路内の空気を加湿する加湿手段を有する加湿機構であって、前記循環流路の一端及び他端の開口は、前記ヘッド又は前記ヘッドホルダに形成され、前記一端の開口から前記吐出空間内の空気を回収し、前記加湿手段により加湿された空気を前記他端の開口から前記吐出空間内に供給する加湿機構と
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記対向部材が、記録媒体を支持する媒体支持部であり、
前記対向面が、記録媒体を支持する支持面であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出面には複数の前記吐出口が開口されており、
前記循環流路の一端及び他端の開口が、前記吐出面に直交する方向から見て、前記吐出面に形成された全ての吐出口からなる吐出口群を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記吐出口群が一方向に長尺な領域に形成されており、
前記循環流路の一端及び他端の開口が、前記吐出面に直交する方向から見て、前記一方向に関して前記吐出口群を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出面に直交する方向から見て、前記吐出口群の領域と前記突出部の先端との離隔距離は、前記他端の開口上の前記一方向に関する前記離隔距離よりも、前記一方向と直交する方向に関する前記離隔距離の方が小さいことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出面に直交する方向から見て、前記吐出口群の領域と前記突出部の先端との前記一方向と直交する方向に関する離隔距離が、前記一方向に沿って前記他端から前記一端に近づくにつれて、小さくなっていることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記突出部によって前記吐出空間が画定されたときに、前記吐出面に直交する方向から見て、前記一方向に関して前記他端を挟んで配置された前記吐出面の端部及び前記突出部の先端と協同して前記他端を囲む領域を画定するよう配置された、前記他端から前記吐出空間内に供給された空気の流れを規制する規制部をさらに備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッド又は前記ヘッドホルダの表面に、前記吐出面よりも前記対向面から離隔した位置に底部を有する凹部が設けられており、
前記循環流路の一端及び他端の少なくとも一方の開口が、前記底部に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記循環流路の一端及び他端の少なくとも一方の開口が、前記ヘッドホルダに形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記循環流路の他端の開口が、前記ヘッドに形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記突出部の先端の前記吐出面に対する相対位置が変化するよう、前記突出部を移動させる移動機構と、
前記突出部が、先端が前記対向面に当接する当接位置と先端が前記対向面から離隔した離隔位置とを選択的に取るように、前記移動機構を制御する移動制御部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記突出部が、前記吐出面に直交する方向から見て、前記吐出面の全周を囲む環状に形成され、前記全周に亘って前記吐出面から離隔していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
複数の前記ヘッドを有し、
前記循環流路が、前記複数のヘッドに共通の主部と、前記複数のヘッドのそれぞれに対して設けられた、前記主部から分岐して前記一端まで延在した複数の分岐回収路及び前記主部から分岐して前記他端まで延在した複数の分岐供給路とを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記複数の分岐回収路及び分岐供給路における空気の流れを選択的に調節する調節部をさらに備えたことを特徴とする請求項13に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207091(P2011−207091A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77747(P2010−77747)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】