説明

液体吐出装置

【課題】簡易な構成で保湿液をキャップ内へ供給することが可能で、かつ、キャップ内へ供給される保湿液の量を精度良く制御することが可能な液体吐出装置を提案する。
【解決手段】液体吐出装置は、媒体に向かって液滴を吐出するノズル面3aが形成される液体吐出ヘッド3と、液体吐出ヘッド3が媒体に向かって液滴を吐出しない所定の休止状態にあるときにノズル面3aを封止してノズル内の液体の水分の蒸発を防止するキャップ16と、キャップ16内を保湿するための保湿液が貯留される保湿液タンクを備える保湿液供給部18と、液体吐出ヘッド3が搭載され媒体の幅方向へ移動可能なキャリッジ4と、キャリッジ4の移動動作を利用して作動する作動部材25とを有している。キャリッジ4の移動動作によって作動した作動部材25は、保湿液供給部18に当接して保湿液タンク内の保湿液をキャップ16に向かって吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドのノズル面を封止するためのキャップを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルが配列される印刷ヘッドからインク滴を吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターでは、一般に、印刷待機時や電源オフ時に印字ヘッドのノズル内のインクの水分が蒸発してインクが増粘するのを防止して、印刷時におけるインク滴の吐出不良を防止するため、休止状態にある印刷ヘッドのノズル面はキャップによって封止されている。しかしながら、キャップ内にインクの増粘物が堆積している状態でキャップがノズル面を封止した場合には、堆積した増粘物中に高濃度で含まれるグリセリンやジエチレングリコール等の保湿剤が印字ヘッドのノズル内の水分を吸収してノズル内のインクの増粘を促進し、ノズルの目詰まりやインク滴の吐出不良を誘発してしまうことがある。そこで、従来、キャップ内の状態を適切に保つために、キャップ内に保湿液や洗浄液を供給するインクジェットプリンターが提案されている(たとえば、特許文献1から3参照)。
【0003】
特許文献1のインクジェットプリンターでは、キャリッジに搭載される保湿液タンクの吐出口に電磁弁が設けられており、制御部からの制御信号によって電磁弁が開閉して、キャップ内に保湿液が滴下される。特許文献2に記載のインクジェットプリンターは、キャリッジに搭載される洗浄ヘッドのノズルから洗浄液を噴射させる噴射手段を備えている。このプリンターでは、噴射手段は、制御回路等によって構成されており、所定のタイミングで洗浄ヘッドのノズルからキャップへ向かって洗浄液を噴射させる。特許文献3に記載のインクジェットプリンターでは、印刷ヘッドのノズルの詰まりを解消するための吸引ポンプがキャップに接続されている。このプリンターでは、洗浄液の供給口が形成される洗浄液供給手段の供給面をキャップが封止した状態で吸引ポンプが作動すると、キャップに洗浄液が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−18408号公報
【特許文献2】特開2001−253081号公報
【特許文献3】特開2009−226719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のプリンターや特許文献2に記載のプリンターでは、電磁弁や噴射手段を利用して、保湿液や洗浄液をキャップ内へ供給しているため、保湿液や洗浄液をキャップ内へ供給するための専用の駆動源が必要になり、装置が複雑化するとともに大型化して高価になる。また、これらのプリンターでは、電磁弁の制御や噴射手段の制御が必要となるため、装置の制御が複雑になる。一方、特許文献3に記載のプリンターでは、印刷ヘッドのノズルの詰まりを解消するための吸引ポンプを利用して洗浄液をキャップ内へ供給するため、洗浄液をキャップ内へ供給するための駆動源を別途、設ける必要がないが、吸引ポンプの機構上、キャップ内へ供給される洗浄液の量を精度良く制御することが困難である。したがって、このプリンターでは、キャップ内へ洗浄液を供給する際に必要以上の洗浄液が消費され、その結果、洗浄液カートリッジの交換頻度が高くなってユーザーの使い勝手が悪くなったり維持コストが増加する。洗浄液カートリッジの交換頻度を下げるためには、洗浄液カートリッジを大型化すれば良いが、この場合には、装置全体が大型化する。
【0006】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成で保湿液をキャップ内へ供給することが可能で、かつ、キャップ内へ供給される保湿液の量を精度良く制御することが可能な液体吐出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の液体吐出装置は、液滴吐出用の複数のノズルが配列されるノズル面を備え、媒体に向かって液滴を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドが前記媒体に向かって液滴を吐出しない所定の休止状態にあるときに、前記ノズル面を封止して前記ノズル内の液体の水分の蒸発を防止するキャップと、前記キャップ内を保湿するための保湿液が貯留される保湿液タンクを備える保湿液供給部と、前記液体吐出ヘッドが搭載され、前記媒体の幅方向へ移動可能なキャリッジと、前記キャリッジの移動動作を利用して作動する作動部材と、を有し、前記キャリッジの移動動作によって作動した前記作動部材は、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体吐出装置は、キャリッジの移動動作を利用して作動する作動部材を有しており、キャリッジの移動動作によって作動した作動部材は、保湿液供給部に当接して保湿液タンク内の保湿液をキャップに向かって吐出させている。すなわち、本発明では、キャリッジの動作を利用して作動部材を作動させて、保湿液をキャップ内へ供給している。そのため、保湿液をキャップ内へ供給するための専用の駆動源が不要となる。したがって、本発明では、簡易な構成で、保湿液をキャップ内へ供給することが可能になる。また、本発明では、キャップに向かって保湿液を吐出させることでキャップ内へ保湿液を供給しているため、保湿液を吸引することでキャップ内へ保湿液を供給する場合と比較して、キャップ内へ供給される保湿液の量を精度良く制御することが可能になる。
【0009】
本発明において、前記作動部材は、前記キャップが前記ノズル面を封止する封止状態から前記キャップと前記ノズル面とが離れて前記液体吐出ヘッドが前記媒体へ液滴を吐出する液滴吐出状態へ移行する際の前記キャリッジの移動動作に伴って、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることが好ましい。あるいは、本発明において、前記作動部材は、前記キャップと前記ノズル面とが離れて前記液体吐出ヘッドが前記媒体へ液滴を吐出する液滴吐出状態から前記キャップが前記ノズル面を封止する封止状態へ移行する際の前記キャリッジの移動動作に伴って、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることが好ましい。すなわち、キャリッジの通常動作を利用して保湿液をキャップ内へ供給することが好ましい。このように構成すると、保湿液をキャップ内へ供給するための専用の動作をキャリッジに行わせる必要がなくなる。したがって、キャリッジの制御が容易になる。また、キャリッジが通常動作を行えば、保湿液がキャップ内へ供給されるため、保湿液をキャップ内へ供給するためのメンテナンス時間を短縮することができ、その結果、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記キャリッジには、前記作動部材に当接する当接部材が形成または固定され、前記作動部材は、前記保湿液供給部に当接する第1当接部と、前記当接部材が当接する第2当接部と、を有するとともに、前記保湿液供給部から前記第1当接部が離れる方向へ付勢され、前記キャリッジとともに移動する前記当接部材が前記第2当接部に当接すると、前記第1当接部が前記保湿液供給部に当接して、前記保湿液が前記キャップに向かって吐出されることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記保湿液供給部は、前記キャリッジに搭載されていることが好ましい。このように構成すると、保湿液供給部がキャリッジとともに移動するため、キャリッジと保湿液供給部との干渉を確実に防止することができる。
【0012】
本発明において、前記保湿液供給部は、前記作動部材が当接するダイヤフラムを有し、前記作動部材は、前記ダイヤフラムを作動させて前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることが好ましい。この場合には、ダイヤフラムを用いた比較的簡易な構成で、キャップに向かって保湿液を吐出させることができる。
【0013】
本発明において、前記保湿液供給部は、前記キャップに向かって前記保湿液を吐出する保湿液吐出ノズルと、前記保湿液タンクと前記保湿液吐出ノズルとの間に配置される逆止弁と、を有することが好ましい。このように構成すると、保湿液吐出ノズルからの保湿液の垂れを防止することができる。また、このように構成すると、保湿液タンク内の保湿液が保湿液吐出ノズルを介して蒸発するのを防止することができる。
【0014】
本発明において、液体吐出装置は、前記保湿液タンクに供給される前記保湿液が貯留される保湿液供給タンクと、前記保湿液タンクと前記保湿液供給タンクとの間に配置される逆止弁と、を有することが好ましい。このように構成すると、保湿液供給タンクへの保湿液の逆流を防止して、保湿液タンクからキャップへ確実に保湿液を供給することが可能になる。
【0015】
本発明において、液体吐出装置は、前記ノズル面に当接して前記ノズル面を拭くワイパー部材と、前記キャリッジの移動動作を利用して作動する第2の作動部材と、を有し、前記保湿液供給部は、前記キャリッジに搭載され、前記キャリッジの移動動作によって作動した前記第2の作動部材は、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記ワイパー部材に向かって吐出させることが好ましい。このように構成すると、キャリッジの動作を利用して、ワイパー部材に付着したインクや異物の乾燥を防止することが可能になる。したがって、ワイパー部材でノズル面を拭く際に、ワイパー部材に乾燥して固着したインクや異物がノズル面を汚してしまったり、ノズルを塞いでしまうといった現象を防止して、ノズル面に付着したインクや異物をワイパー部材によって適切に除去することが可能になる。また、このように構成すると、共通の保湿液供給部を用いて、ワイパー部材およびキャップ内へ保湿液を供給することが可能になるため、液体吐出装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0016】
本発明において、前記液体吐出ヘッドは、たとえば、前記ノズル面からインク滴を吐出する印刷ヘッドである。すなわち、液体吐出装置は、たとえば、インクジェットプリンターである。このインクジェットプリンターでは、簡易な構成で、保湿液をキャップ内へ供給することが可能になり、また、キャップ内へ供給される保湿液の量を精度良く制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかるプリンターの主要部の概略斜視図。
【図2】キャップ内への保湿液の吐出動作を説明するための図。
【図3】保湿液供給部の断面図。
【図4】本発明の他の実施の形態にかかる保湿液の吐出動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の液体吐出装置の実施形態であるインクジェットプリンター(プリンター)1を説明する。
【0019】
(プリンターの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるプリンター1の主要部の概略斜視図である。
【0020】
プリンター1は、印刷用紙(媒体)2に向かってインク滴を吐出して印刷を行うインクジェットプリンターであり、インク滴を吐出する印刷ヘッド(液体吐出ヘッド)3を備えている。印刷ヘッド3には、インク滴吐出用の複数のノズルが配列されるノズル面3aが形成されている(図2参照)。ノズル面3aは、水平方向と平行に配置されている。印刷ヘッド3は、ノズル面3aが下側を向くように、キャリッジ4に搭載されており、下側へ向かってインク滴を吐出する。
【0021】
キャリッジ4は、支持フレーム6に固定されたガイドシャフト7に支持されている。キャリッジ4には、タイミングベルト8の一部が固定されている。タイミングベルト8は、モーター9の出力軸に取り付けられたプーリー10と支持フレーム6に回転可能に取り付けられたプーリー11とに架け渡されている。モーター9が駆動すると、キャリッジ4は、ガイドシャフト7に案内されて、印刷用紙2の幅方向となる主走査方向MSへ移動する。すなわち、キャリッジ4は、主走査方向MSへ移動可能となっている。
【0022】
印刷用紙2は、モーター12に連結される給紙ローラー(図示省略)によって、主走査方向MSに直交する副走査方向SSへ搬送される。プリンター1では、副走査方向SSへ印刷用紙2を搬送しながら、主走査方向MSへキャリッジ4が移動して、印刷用紙2に印刷が行われる。
【0023】
(メンテナンスユニット、保湿液供給部および作動部材の構成)
図2は、キャップ16内への保湿液の吐出動作を説明するための図であり、(A)はキャップ16が印刷ヘッド3のノズル面3aを封止している状態を示す図、(B)はキャップ16内へ保湿液が吐出されている状態を示す図、(C)はキャップ16内への保湿液の吐出が終了した後の状態を示す図である。図3は、保湿液供給部18の断面図である。
【0024】
キャリッジ4のホームポジション(図1の右端側)には、印刷ヘッド3をメンテナンスするためのメンテナンスユニット14が配置されている。メンテナンスユニット14は、ホームポジションにあるときのキャリッジ4の下側に配置されている。また、メンテナンスユニット14は、図示を省略する昇降機構に連結されており、上下動可能となっている。
【0025】
メンテナンスユニット14は、ノズル面3aに当接してノズル面3aを拭くワイパーブレード(ワイパー部材)15を備えている。ワイパーブレード15は、ゴム等の可撓性材料によって形成されている。主走査方向MSにおけるキャリッジ4のホームポジション側(図1の右側)を「ホームポジション側」、キャリッジ4の反ホームポジション側(図1の左側)を「反ホームポジション側」とすると、ワイパーブレード15は、メンテナンスユニット14の反ホームポジション側に配置されている。印刷ヘッド3のメンテナンス時には、ワイパーブレード15がノズル面3aに当接可能な位置まで、メンテナンスユニット14が上昇した状態で、キャリッジ4が主走査方向MSへ移動する。キャリッジ4が主走査方向MSへ移動すると、ワイパーブレード15がノズル面3aに当接してノズル面3aに付着したインクや異物を拭き取る。
【0026】
また、メンテナンスユニット14は、印刷ヘッド3のノズル面3aを封止してノズル内のインクの水分の蒸発を防止するキャップ16を備えている。キャップ16は、印刷ヘッド3がホームポジションに配置されているときにノズル面3aを封止する。すなわち、印刷ヘッド3が印刷用紙2に向かってインク滴を吐出しない所定の休止状態にあるときに、キャップ16はノズル面3aを封止する。具体的には、印刷待機時や電源オフ時等にキャップ16はノズル面3aを封止する。
【0027】
キャップ16は、上面が開口する直方体の箱状に形成されたキャップケースを備えている。このキャップケースの中には、ゴム等の可撓性材料によって形成されるとともに上面が開口する直方体の箱状に形成されたキャップ部材が配置されており、弾性変形したキャップ部材がノズル面3aに当接することで、ノズル面3aが封止される。キャップ16の内部には、スポンジ等の多孔質材料で形成されるインク吸収部材17が配置されている。キャップ16の底面には、円筒部16aがキャップ16の内部に通じるように形成されており、円筒部16aには、チューブを介して吸引ポンプ(図示省略)が接続されている。
【0028】
キャリッジ4には、キャップ16内を保湿するための(具体的には、インク吸収部材17を保湿するための)保湿液をキャップ16内へ供給する保湿液供給部18が搭載されている。保湿液供給部18は、キャリッジ4のホームポジション側に搭載されている。図3に示すように、保湿液供給部18の内部には、保湿液が貯留される保湿液タンク18aが形成されている。保湿液タンク18aの上面には、保湿液供給部18の上面まで貫通する開口部18bが形成されている。開口部18bは、ダイヤフラム19によって覆われている。ダイヤフラム19は、ゴム等の可撓性材料によって膜状に形成されている。ダイヤフラム19の外周側部分は、開口部18bを囲む保湿液供給部18の上面に固定されている。
【0029】
保湿液供給部18の底面には、保湿液タンク18a内の保湿液を下側へ向かって吐出するノズル(保湿液吐出ノズル)18cが形成されている。保湿液タンク18aとノズル18cとの境界部には、保湿液タンク18aからノズル18cへの保湿液の流れのみを許容する逆止弁20が配置されている。保湿液供給部18の側面には、保湿液タンク18aに保湿液を供給するための供給口18dが形成されており、供給口18dには、継ぎ手21が固定されている。継ぎ手21には、保湿液タンク18aに供給される保湿液が貯留されるサブタンク(保湿液供給タンク)がチューブ22を介して接続されている。供給口18dの入口端には、サブタンクから保湿液タンク18aへの保湿液の流れのみを許容する逆止弁23が配置されている。
【0030】
保湿液供給部18では、ダイヤフラム19が押し下げられて、保湿液タンク18aの内部に向かってダイヤフラム19が弾性変形すると、保湿液タンク18a内の保湿液がノズル18cから吐出される。このときには、逆止弁23の作用で、保湿液タンク18aからサブタンクへの保湿液の逆流が阻止される。また、保湿液タンク18aの内部に向かって弾性変形したダイヤフラム19が保湿液タンク18aの外部に向かって復元すると、サブタンクから保湿液タンク18aに保湿液が供給される。
【0031】
支持フレーム6のホームポジション側には、主走査方向MSへのキャリッジ4の移動動作によって作動する作動部材25が取り付けられている。作動部材25は、細長い四角柱状に形成される第1角柱部25aと第2角柱部25bとを備えている。第1角柱部25aと第2角柱部25bとは、互いに略直交するように、かつ、第1角柱部25aの一端と第2角柱部25bの一端とが繋がるように一体で形成されており、第1角柱部25aと第2角柱部25bとによって略L形状の部材が構成されている。作動部材25は、第1角柱部25aと第2角柱部25bとの接続部分から略ホームポジション側へ第1角柱部25aが延びるように、かつ、第1角柱部25aと第2角柱部25bとの接続部分から略下側へ第2角柱部25bが延びるように、支持フレーム6に回動可能に取り付けられている。
【0032】
第1角柱部25aと第2角柱部25bとの接続部分には、装置前後方向を軸方向として支持フレーム6に回動可能に支持される円柱状の軸部25cが形成または固定されている。軸部25cは、第1角柱部25aと第2角柱部25bとの接続部分から装置後ろ側へ延びている。第1角柱部25aの他端側には、装置前側へ延びる円柱状の軸部25dが形成または固定されている。軸部25dには、引張りコイルバネ26の下端が取り付けられている。引張りコイルバネ26の上端は、支持フレーム6に取り付けられており、作動部材25は、軸部25cを中心にして、図2の反時計方向に付勢されている。
【0033】
キャリッジ4には、第2角柱部25bの下端側に当接する円柱状の当接部材27が装置後ろ側へ延びるように固定または形成されている。キャリッジ4がホームポジションにあるときには、図2(A)に示すように、第2角柱部25bは、当接部材27よりも反ホームポジション側に配置されている。ホームポジションにあるキャリッジ4が反ホームポジション側へ移動して、図2(B)に示すように、当接部材27が第2角柱部25bの下端側に当接すると、作動部材25は、引張りコイルバネ26の付勢力に抗して時計方向へ回動する。
【0034】
本形態では、キャリッジ4の移動に伴って作動部材25が時計方向へ回動したときに、軸部25dがダイヤフラム19の上面に当接してダイヤフラム19を押し下げるように、作動部材25および保湿液供給部18が構成され、配置されている。また、ダイヤフラム19が押し下げられると、保湿液供給部18からキャップ16内へ保湿液が吐出されるように、キャップ16および保湿液供給部18が構成され、配置されている。本形態の軸部25dは、保湿液供給部18に当接する第1当接部であり、第2角柱部25bは、当接部材27が当接する第2当接部である。
【0035】
(保湿液の吐出動作)
プリンター1が休止状態であって、印刷ヘッド3がホームポジションに配置されているときには、図2(A)に示すように、メンテナンスユニット14が上昇しており、キャップ16は、ノズル面3aを封止している。この封止状態から、印刷用紙2へインク滴を吐出する印刷状態(液滴吐出状態)へ移行する際には、メンテナンスユニット14が下降して、キャップ16がノズル面3aから離れる。また、キャリッジ4が反ホームポジション側へ移動する。
【0036】
キャリッジ4が反ホームポジション側へ移動すると、図2(B)に示すように、当接部材27が第2角柱部25bの下端側に当接して、作動部材25が時計方向へ回動する。作動部材25が時計方向へ回動すると、軸部25dがダイヤフラム19の上面に当接してダイヤフラム19を押し下げる。ダイヤフラム19が押し下げられると、保湿液供給部18の下方に配置されるキャップ16内へ保湿液タンク18a内の保湿液が吐出される。キャップ16内に吐出された保湿液は、キャップ16内のインク吸収部材17に吸収される。
【0037】
図2(B)に示す状態からキャリッジ4が反ホームポジション側へさらに移動すると、図2(C)に示すように、当接部材27から第2角柱部25bが外れて、引張りコイルバネ26の付勢力で作動部材25が反時計方向へ回動する。また、軸部25dがダイヤフラム19から離れるため、弾性変形していたダイヤフラム19は復元する。
【0038】
(本実施の形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、キャリッジ4の反ホームポジション側への移動動作によって、作動部材25が回動する。また、作動部材25が回動すると、作動部材25がダイヤフラム19に当接して、保湿液タンク18a内の保湿液がキャップ16に向かって吐出される。すなわち、本形態では、キャリッジ4の動作を利用して作動部材25を回動させて、保湿液をキャップ16内へ供給している。そのため、本形態では、保湿液をキャップ16内へ供給するための専用の駆動源が不要となり、簡易な構成で、保湿液をキャップ16内へ供給することができる。また、本形態では、ダイヤフラム19の動作を利用してノズル18cから保湿液を吐出させているため、保湿液を吸引することでキャップ16内へ保湿液を供給する場合と比較して、キャップ16内へ供給される保湿液の量を精度良く制御することが可能になる。
【0039】
本形態では、ホームポジションに配置されている印刷ヘッド3のノズル面3aをキャップ16が封止している封止状態から、印刷用紙2へインク滴を吐出する印刷状態へ移行する際のキャリッジ4の動作を利用して、保湿液をキャップ16内へ供給している。すなわち、キャリッジ4の通常動作を利用して保湿液をキャップ16内へ供給している。そのため、保湿液をキャップ16内へ供給するための専用の動作をキャリッジ4に行わせる必要がなくなる。したがって、キャリッジ4の制御が容易になる。また、キャリッジ4が通常動作を行えば、保湿液がキャップ16内へ供給されるため、保湿液をキャップ16内へ供給するためのメンテナンス時間を短縮することができ、その結果、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【0040】
本形態では、保湿液供給部18は、キャリッジ4に搭載されており、キャリッジ4とともに移動する。そのため、キャリッジ4と保湿液供給部18との干渉を確実に防止することができる。
【0041】
本形態では、保湿液タンク18aとノズル18cとの境界部に逆止弁20が配置されている。そのため、ノズル18cからの保湿液の垂れを防止することができる。また、保湿液タンク18a内の保湿液がノズル18cを介して蒸発するのを防止することができる。
【0042】
(他の実施の形態)
上述した形態では、キャリッジ4の移動動作を利用して保湿液をキャップ16内へ供給しているが、図4に示すように、キャリッジ4の移動動作を利用してキャップ16内およびワイパーブレード15に保湿液を供給しても良い。この場合には、図4に示すように、作動部材25と同様に構成される作動部材(第2の作動部材)35が、反ホームポジション側で作動部材25と隣り合うように、支持フレーム6に回動可能に取り付けられる。作動部材35は、作動部材25の第1角柱部25a、第2角柱部25b、軸部25cおよび軸部25dのそれぞれに相当する第1角柱部35a、第2角柱部35b、軸部35cおよび軸部35dを備えており、引張りコイルバネ26によって反時計方向へ付勢されている。
【0043】
また、この場合には、反ホームポジション側へのキャリッジ4の移動に伴って当接部材27が第2角柱部35bの下端側に当接して作動部材35が時計方向へ回動したときに、図4(C)に示すように、軸部35dがダイヤフラム19の上面に当接してダイヤフラム19を押し下げるように、作動部材35が構成され、配置されている。また、軸部35dによってダイヤフラム19が押し下げられると、保湿液供給部18からワイパーブレード15へ保湿液が吐出されるように、ワイパーブレード15が構成され、配置されている。
【0044】
この場合には、反ホームポジション側へのキャリッジ4の移動に伴って、図4(B)に示すように、まず、当接部材27が第2角柱部25bの下端側に当接して、キャップ16内へ保湿液が供給される。その後、反ホームポジション側へキャリッジ4がさらに移動すると、第2角柱部25bから当接部材27が外れて、引張りコイルバネ26の付勢力で作動部材25が反時計方向へ回動し、また、弾性変形していたダイヤフラム19は復元する。その後、反ホームポジション側へキャリッジ4がさらに移動すると、図4(C)に示すように、当接部材27が第2角柱部35bの下端側に当接して、ワイパーブレード15へ保湿液が供給される。
【0045】
このように、キャリッジ4の移動動作を利用してキャップ16内およびワイパーブレード15へ保湿液を供給する場合には、キャリッジ4の動作を利用してワイパーブレード15へ保湿液を供給することで、ワイパーブレード15に付着したインクや異物の乾燥を防止することが可能になる。したがって、印刷ヘッド3のメンテナンス時に、ワイパーブレード15に乾燥して固着したインクや異物がノズル面3aを汚してしまったり、ノズルを塞いでしまうといった現象を防止して、ノズル面3aに付着したインクや異物をワイパーブレード15によって適切に除去することが可能になる。また、この場合には、共通の保湿液供給部18を用いて、ワイパーブレード15およびキャップ16内へ保湿液を供給することができるため、プリンター1の構成を簡素化することができる。
【0046】
上述した形態では、ホームポジションにあるキャリッジ4が印刷を行うために、反ホームポジション側へ移動すると、作動部材25が回動して、保湿液タンク18a内の保湿液がキャップ16に向かって吐出されているが、印刷を終えたキャリッジ4がホームポジションへ移動する際に、作動部材25が回動して、保湿液タンク18a内の保湿液がキャップ16に向かって吐出されるように、キャップ16、保湿液供給部18および作動部材25等が構成され、配置されても良い。また、保湿液をキャップ16内へ供給するための専用の動作をキャリッジ4が行ったときに、作動部材25が回動して、保湿液タンク18a内の保湿液がキャップ16に向かって吐出されるように、キャップ16、保湿液供給部18および作動部材25等が構成され、配置されても良い。
【0047】
上述した形態では、保湿液供給部18は、キャリッジ4に搭載されているが、保湿液供給部18は、支持フレーム6に取り付けられても良い。また、上述した形態では、プリンター1を例に本発明の液体吐出装置の実施の形態を説明したが、本発明の構成が適用される液体吐出装置は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(面発ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材や色材等の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、バイオチップ製造に用いられる生体有機物をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置や、精密ピペットとして試料をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置などであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 プリンター(液体吐出装置)、2 印刷用紙(媒体)、3 印刷ヘッド(液体吐出ヘッド)、3a ノズル面、4 キャリッジ、15 ワイパーブレード(ワイパー部材)、16 キャップ、18 保湿液供給部、18a 保湿液タンク、18c ノズル(保湿液吐出ノズル)、19 ダイヤフラム、20 逆止弁、23 逆止弁、25 作動部材、25b 第2角柱部(第2当接部)、25d 軸部(第1当接部)、27 当接部材、35 作動部材(第2の作動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出用の複数のノズルが配列されるノズル面を備え、媒体に向かって液滴を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドが前記媒体に向かって液滴を吐出しない所定の休止状態にあるときに、前記ノズル面を封止して前記ノズル内の液体の水分の蒸発を防止するキャップと、
前記キャップ内を保湿するための保湿液が貯留される保湿液タンクを備える保湿液供給部と、
前記液体吐出ヘッドが搭載され、前記媒体の幅方向へ移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジの移動動作を利用して作動する作動部材と、を有し、
前記キャリッジの移動動作によって作動した前記作動部材は、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記作動部材は、前記キャップが前記ノズル面を封止する封止状態から前記キャップと前記ノズル面とが離れて前記液体吐出ヘッドが前記媒体へ液滴を吐出する液滴吐出状態へ移行する際の前記キャリッジの移動動作に伴って、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記作動部材は、前記キャップと前記ノズル面とが離れて前記液体吐出ヘッドが前記媒体へ液滴を吐出する液滴吐出状態から前記キャップが前記ノズル面を封止する封止状態へ移行する際の前記キャリッジの移動動作に伴って、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記キャリッジには、前記作動部材に当接する当接部材が形成または固定され、
前記作動部材は、前記保湿液供給部に当接する第1当接部と、前記当接部材が当接する第2当接部と、を有するとともに、前記保湿液供給部から前記第1当接部が離れる方向へ付勢され、
前記キャリッジとともに移動する前記当接部材が前記第2当接部に当接すると、前記第1当接部が前記保湿液供給部に当接して、前記保湿液が前記キャップに向かって吐出されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記保湿液供給部は、前記キャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記保湿液供給部は、前記作動部材が当接するダイヤフラムを有し、
前記作動部材は、前記ダイヤフラムを作動させて前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記キャップに向かって吐出させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記保湿液供給部は、前記キャップに向かって前記保湿液を吐出する保湿液吐出ノズルと、前記保湿液タンクと前記保湿液吐出ノズルとの間に配置される逆止弁と、を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記保湿液タンクに供給される前記保湿液が貯留される保湿液供給タンクと、前記保湿液タンクと前記保湿液供給タンクとの間に配置される逆止弁と、を有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記ノズル面に当接して前記ノズル面を拭くワイパー部材と、前記キャリッジの移動動作を利用して作動する第2の作動部材と、を有し、
前記保湿液供給部は、前記キャリッジに搭載され、
前記キャリッジの移動動作によって作動した前記第2の作動部材は、前記保湿液供給部に当接して前記保湿液タンク内の前記保湿液を前記ワイパー部材に向かって吐出させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル面からインク滴を吐出する印刷ヘッドであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−106427(P2012−106427A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257569(P2010−257569)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】