説明

液体吐出装置

【課題】記録媒体のサイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、画像の品質を維持する。
【解決手段】プリンタは、ヘッドと、ヘッドと対向する位置に用紙を搬送する搬送機構と、ヘッドの上流に用紙を再送する再送機構と、これらを制御する制御部とを含んでいる。制御部は、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、用紙サイズの大きい用紙P1を搬送機構で搬送するとともに、用紙P1と対向する吐出口から用紙P1の表面に向けて吐出フラッシングを行った後、用紙P1を再送機構でヘッドの上流側に再送し、再送された用紙P1を搬送機構で搬送するとともに当該用紙P1の裏面に向けて画像を形成するように、ヘッド、搬送機構、再送機構を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一の記録媒体をフラッシング媒体として採用し、複数の記録媒体に連続印刷する際に、フラッシング媒体を印刷用の記録媒体間に搬送して、当該フラッシング媒体上に記録ヘッドからのフラッシングを実行するインクジェット記録装置について記載されている。なお、フラッシング媒体は、使用限界に達すると、新しい記録媒体をフラッシング媒体として採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−125814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、一の記録媒体をフラッシング媒体として採用するため、印刷用の記録媒体とは別に記録媒体が必要になるという問題がある。
さらに、先に搬送した記録媒体よりも幅の大きい記録媒体を搬送し、これらの記録媒体に印刷を行う連続印刷においては、先に搬送した記録媒体をフラッシング媒体として採用している場合、小さな記録媒体とは対向せず大きな記録媒体と対向する吐出口からフラッシングができない。したがって、フラッシング媒体(小さい記録媒体)を排出して、大きな記録媒体をフラッシング媒体として新たに採用する必要がある。このため、用紙サイズが小→大に変化する連続印刷においては、記録媒体をフラッシング媒体として交換する必要が生じ、フラッシング媒体として採用する記録媒体の数が増えるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、連続印刷を行う際に、専用のフラッシング媒体を用いなくても、画像の品質を維持することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数の吐出口が一方向に関して等間隔に配置された液体吐出ヘッドと、前記吐出口と対向する位置を通過するように、前記一方向と直交する搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって搬送された記録媒体を反転させて、前記搬送方向に関して前記液体吐出ヘッドの上流側に再送する再送機構と、前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御する制御手段とを備えている。そして、前記制御手段は、前記一方向に関して最も外側にある2つの前記吐出口間の距離よりも幅の小さい第1の記録媒体に続けて、前記一方向に関して前記第1の記録媒体よりも幅の大きい第2の記録媒体を搬送し、当該第2の記録媒体に画像データに基づく画像を形成する連続印刷を行う際に、前記第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに少なくとも前記第2の記録媒体に対向し且つ前記第1の記録媒体に対向しない領域の前記吐出口から前記第2の記録媒体の表面に向けて液体を吐出させて前記画像データに基づかない非画像ドットを形成する吐出フラッシングを行った後、前記再送機構が前記第2の記録媒体を前記液体吐出ヘッドの上流側に再送し、再送された当該第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに前記第2の記録媒体の裏面に向けて液体を吐出させて前記画像データに基づく画像を構成する画像ドットを形成するように、前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御する。
【0007】
これによると、連続印刷を行う際に、第2の記録媒体の表面に吐出フラッシングを行うため、専用のフラッシング媒体を用いなくても、第2の記録媒体の裏面に形成される画像の品質を維持することが可能になる。加えて、メンテナンス動作(液体吐出ヘッドの吐出性能を回復させる)を行うために記録媒体の搬送を中断する必要がなくなり、スループットの向上に寄与する。
【0008】
本発明において、前記制御手段は、前記連続印刷において前記第2の記録媒体の両面に画像形成を行う際に、前記第2の記録媒体の裏面に画像が形成された後、前記再送機構が前記第2の記録媒体を前記液体吐出ヘッドの上流側に再送し、再送された前記第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに当該第2の記録媒体の表面に、前記画像データに基づく画像を構成する画像ドットを形成するように、前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御することが好ましい。これにより、連続印刷において第2の記録媒体の両面に画像形成を行う場合でも、第2の記録媒体に形成される画像品質を維持することが可能になる。
【0009】
また、本発明において、前記制御手段は、前記吐出フラッシングを行う際に、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量が、前記第1の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量よりも多くなるように、前記液体吐出ヘッドを制御することが好ましい。これにより、第1の記録媒体とは対向せず第2の記録媒体と対向する吐出口からの液体吐出性能を効果的に回復させることが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記連続印刷において、1以上の前記第1の記録媒体への印刷が開始されてから前記第2の記録媒体への印刷が開始されるまでの時間を計測する計測手段をさらに備えている。そして、前記制御手段は、前記計測手段によって計測された前記時間が長くなるに連れて、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量と前記第1の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量との差が大きくなるように、前記液体吐出ヘッドを制御することが好ましい。これにより、1以上の第1の記録媒体への印刷期間が長くなっても、第2の記録媒体に形成される画像の品質を維持することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記制御手段は、前記連続印刷において、1以上の前記第1の記録媒体への印刷が開始されてから前記第2の記録媒体への印刷が開始されるまでの間に、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口から液体を吐出させることなく当該吐出口に形成された液体メニスカスを振動させる不吐出フラッシングを行うように、前記液体吐出ヘッドを制御することが好ましい。これにより、第1の記録媒体とは対向せず第2の記録媒体と対向する吐出口からの液体吐出性能をより効果的に回復させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体吐出装置によると、連続印刷を行う際に、第2の記録媒体の表面に吐出フラッシングを行うため、専用のフラッシング媒体を用いなくても、第2の記録媒体の裏面に形成される画像の品質を維持することが可能になる。加えて、メンテナンス動作(液体吐出ヘッドの吐出性能を回復させる)を行うために記録媒体の搬送を中断する必要がなくなり、スループットの向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドのヘッド本体を示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図6】図1に示す制御部の機能ブロック図である。
【図7】図6に示す領域判定部の内容を説明するための図である。
【図8】図1のプリンタの制御部が実行する連続印刷に関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0016】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、第1給紙部23及び第2給紙部17から排紙部4に向かう用紙搬送経路と、当該用紙搬送経路を挟んで下流側から上流側に向かう用紙再送経路とが形成されている。用紙Pは、図1に示されるように、用紙搬送経路では黒太矢印に沿って搬送され、用紙再送経路では白抜き太矢印に沿って搬送される。空間Aでは、第2給紙部17から搬送経路への給紙、用紙Pへの画像形成、用紙Pの排紙部4への搬送、及び、用紙Pの再送が行われる。空間Bでは、第1給紙部23から搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド2に対するインク供給が行われる。
【0017】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド2(以下、ヘッド2と称する)、搬送機構40、用紙Pをガイドする2つのガイド部10a,10b、再送機構60、第2給紙部17、及び、制御部100等が配置されている。
【0018】
4つのヘッド2からは、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのいずれかのインク滴が吐出される。これら4つのヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。また、4つのヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ(不図示)を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダによって、ヘッド2の下面と搬送ベルト43(搬送機構40)との間には、記録に適した所定の間隙が形成される。
【0019】
各ヘッド2は、ヘッド本体3に加えて、アクチュエータユニット21、リザーバユニット、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。ヘッド本体3(流路ユニット9)の下面は、吐出口108が開口しており、吐出面2aである。制御基板で調整された信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、リザーバユニットから供給されたインクが、吐出口108から吐出されることになる。
【0020】
搬送機構40は、2つのベルトローラ41,42と、搬送ベルト43と、プラテン46と、ニップローラ47と、剥離プレート45とを有している。搬送ベルト43は、両ローラ41,42の間に巻回されたエンドレスのベルトである。ベルトローラ42は、駆動ローラであって、搬送ベルト43を走行させる。ベルトローラ42は、図示しないモータによって、図1中時計回りに回転される。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43の走行によって回転される。搬送ベルト43の外周面には、弱粘着性のシリコン層が形成されている。ニップローラ47は、第1給紙部23、第2給紙部17及び再送機構60から搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト43の外周面に押さえ付ける。押さえ付けられた用紙Pは、シリコン層によって搬送ベルト43に保持され、ヘッド2に向かって搬送される。剥離プレート45は、搬送されてきた用紙Pを、搬送ベルト43から剥離し、下流側の排紙部4へと導く。
【0021】
2つのガイド部10a,10bは、搬送機構40を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部10aは、2つのガイド31a,31bと送りローラ対32とを有し、第1給紙部23と搬送機構40とを繋ぐ。また、ガイド31bの途中部位には、ガイド18が接続されており、第2給紙部17と搬送機構40も繋ぐ。画像形成用の用紙Pが、搬送機構40に向けて搬送される。搬送方向下流側のガイド部10bは、2つのガイド33a,33bと2つの送りローラ対34,35とを有し、搬送機構40と排紙部4とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部4に向けて搬送される。また、ガイド部10bは、スイッチバック動作で搬送経路を切り替える。用紙Pの両面印刷やメンテナンス動作が行われる際に、ガイド部10bは、排紙部4に向けて搬送された用紙Pを再送機構60に向けて搬送する。
【0022】
再送機構60は、上述のガイド部10bに加えて、3つの送りローラ対61〜63と、4つのガイド64〜67とを有している。図1に示すように、4つのガイド64〜67が、この順に並んで用紙再送経路が構成される。用紙再送経路は、搬送方向下流側では、送りローラ対34の上流側近傍と繋がり、ガイド33aの下流側端部に合流する。用紙再送経路は、搬送方向上流側では、送りローラ対32の上流側近傍と繋がり、ガイド31aの下流側端部に合流する。3つの送りローラ対61〜63は、隣接する2つのガイド64〜67間にこの順で配置されている。このような再送機構60は、排紙部4へと搬送される用紙Pを逆方向に搬送して、搬送方向に関して、ヘッド2の上流側、すなわち、搬送機構40の搬送方向上流に再送する。このとき、再送される用紙Pは、直前の搬送時とはその表裏が反転した状態で搬送機構40に再び供給される。
【0023】
第2給紙部17は、手差しトレイ15及び給紙ローラ16を有し、ガイド18を介してガイド31bの途中部位に合流している。手差しトレイ15は、筐体1aの回動可能に支持された板状部材であり、所定サイズ(例えば、B5サイズ)の用紙P2が載置される。給紙ローラ16は、制御部100の制御により、トレイ15上で最も上方の用紙P2を用紙搬送経路に送り出す。ここで、トレイ15は、筐体1aに形成された開口に収容可能で、開口に収容されて、筐体1aの側壁を構成する。
【0024】
空間Bには、第1給紙部23が配置されている。第1給紙部23は、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。このうち、給紙トレイ24が、筐体1aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ24は、上方に開口する箱であり、複数の用紙P1を収納可能である。本実施形態においては、A4サイズの用紙P1を収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙P1を送り出す。
【0025】
ここで、副走査方向とは、搬送機構40によって搬送される用紙搬送方向Dと平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0026】
空間Cには、インクを貯留する4つのカートリッジ22が筐体1aに着脱可能に配置されている。4つのカートリッジ22には、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックのインクが貯留されており、対応するヘッド2にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。なお、各ポンプは、ヘッド2にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ動作や液体の初期導入が行われるとき)に制御部100によって駆動される。これ以外は、停止状態にあり、ヘッド2へのインク供給を妨げない。
【0027】
次に、制御部100について説明する。制御部100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された印刷信号に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、連続印刷時におけるヘッド2のメンテナンス動作(例えば、フラッシング動作)等を制御する。フラッシング動作のより詳細については、後述する。
【0028】
制御部100は、例えば、A4サイズの用紙P1に片面印刷を行う印刷信号を外部装置から受信した場合、当該印刷信号に基づいて、第1給紙部23、搬送機構40、及び、各送りローラ対32,34,35を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙P1は、上流側ガイド部10aによりガイドされ、搬送機構40に送られる。搬送機構40によって搬送される用紙P1は、ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、制御部100によってヘッド2が制御され、各ヘッド2からインク滴が順に吐出される。これにより、用紙P1の表面に所望のカラー画像が形成される。インクの吐出動作(インクの吐出タイミング)は、用紙センサ26からの検知信号に基づく。なお、用紙センサ26は、ヘッド2よりも搬送方向の上流に配置されて、用紙P1の先端を検知する。そして、画像が形成された用紙P1は、剥離プレート45によって搬送ベルト43から剥離された後、下流側ガイド部10bによりガイドされて、筐体1a上部から排紙部4に排出される。
【0029】
また、制御部100は、例えば、A4サイズの用紙P1に両面印刷を行う印刷信号を外部装置から受信した場合、当該印刷信号に基づいて、第1給紙部23、搬送機構40、及び、各送りローラ対32,34,35を駆動する。まず、片面印刷時と同様に、用紙P1は、表面に画像が形成され、排紙部4に向けて搬送される。図1に示すように、搬送途中のガイド部10bには、送りローラ対34の上流側近傍に、用紙センサ27が配置されている。用紙センサ27が用紙P1の後端を検出すると、制御部100の制御の下、2つの送りローラ対34、35が逆回転され、用紙P1の搬送の方向が反転される。送りローラ対61〜63も、駆動される。これにより、用紙P1は、その経路が切り替えられ、用紙再送経路(白抜き矢印の示す経路)に沿って搬送される。さらに、用紙P1は、搬送機構40に対して裏返しで再供給され、裏面に画像が形成される。なお、裏面への画像形成に先立って、用紙P1の先端が用紙センサ26に検出されると、送りローラ対34、35が正回転に戻される。両面印刷された用紙P1は、ガイド部10bを介して、排紙部4に排出されることになる。なお、第2給紙部17にセットされた用紙P2に片面、又は両面印刷を行う場合は、第1給紙部23に代えて第2給紙部17から用紙P2が繰り出され、これ以外は上述と同様な制御が行われる。
【0030】
次に、図2〜図5を参照しつつヘッド2のヘッド本体3について詳細に説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0031】
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット9の上面に4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9の下面が、吐出面2aである。流路ユニット9の内部にはインク流路が形成され、アクチュエータユニット21はこの流路内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0032】
流路ユニット9は、図4に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図2に示すように、リザーバユニットに連通する計10個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図2〜図4に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面2aに形成された多数の吐出口108は、マトリクス状に配置されており、主走査方向(一方向)に関してこの方向の解像度である600dpiの間隔で配列されている。
【0033】
図2〜図4に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。
【0034】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0035】
図5に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックス製の3枚の圧電層161〜163から構成されたピエゾ式アクチュエータである。最上層の圧電層161は、厚み方向に分極されている。また、圧電層161の上面には、複数の個別電極135が形成されている。個別電極135は、圧力室110と対向している。個別電極135の先端には、個別ランド136が設けられている。圧電層161とその下側の圧電層162との間には、界面全体に形成された共通電極134が介在している。なお、共通電極134には、すべての圧力室110に対応する領域において、等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135には、個別ランド136を介して駆動信号が選択的に供給される。
【0036】
個別電極135を共通電極134と異なる電位にすると、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、圧力室110に対して変形する。このように個別電極135に対応した部分が、個別のアクチュエータとして働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110に対応した数のアクチュエータが作り込まれており、それぞれ圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを与える。
【0037】
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電層161を駆動活性部(両電極134,135に挟まれた部分)が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電層162、163を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、駆動活性部は、分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、下方の圧電層162、163に対して平面方向への歪みに差が生じるので、圧電層161〜163全体(個別のアクチュエータ)が、圧力室110側へ凸に変形(ユニモルフ変形)する。これにより圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0038】
なお、本実施形態においては、個別電極135の電位が、予め所定の電位が付与されているところ、駆動信号が供給されて、一旦グランド電位となり、その後の所定のタイミングで再び所定電位に復帰する。個別電極135がグランド電位となるタイミングでは、圧電層161〜163が元の状態に戻り、圧力室110の容積が増加するので、副マニホールド流路105aから個別インク流路132へとインクが吸い込まれる。また、再び個別電極135に所定の電位が付与されたタイミングでは、圧電層161〜163において個別のアクチュエータ部分が圧力室110側に凸となるように変形し、圧力室110の容積が低下(インクの圧力が上昇)するので、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0039】
次に、図6を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図6に示すように、制御部100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、データ書込部143と、ヘッド制御部144と、フラッシングデータ作成部150と、時間計測部154とを有している。
【0040】
搬送制御部141は、外部装置から受信した印刷信号に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、第1給紙部23、第2給紙部17、ガイド部10a,10b、搬送機構40及び再送機構60の各動作を制御する。搬送制御部141による再送機構60の制御は、両面印刷時に加えて、用紙サイズの変更時にも行われる。用紙サイズが小から大に変化する連続印刷時には、初めの大サイズの用紙(A4サイズの用紙P1)が再送される。本実施形態では、連続印刷においては、ユーザによって第2給紙部17に小サイズの用紙P2がセットされる。そして、第2給紙部17から用紙P2が搬送され、その後、第1給紙部23から用紙P1が搬送される。なお、用紙P1のサイズが用紙P2よりも大きければ、用紙P1はA4サイズに限らないし、用紙P2もB5サイズに限らない。
【0041】
ヘッド制御部144は、アクチュエータユニット21に含まれる各アクチュエータの駆動を制御する。ヘッド制御部144は、各アクチュエータの駆動データが記憶される駆動データ記憶部145と、アクチュエータを駆動する駆動信号を各アクチュエータに出力する駆動部146とを有している。駆動データは、後述の画像データ及びフラッシングデータにより構成される。駆動部146には、駆動データに基づいて増幅された駆動信号を生成するドライバICが含まれる。ヘッド制御部144は、用紙センサ26の出力に基づいて、用紙Pの搬送と同期したタイミングで駆動信号を出力する。
【0042】
画像データ記憶部142は、外部装置からの印刷信号に含まれる画像データを記憶する。画像データは、各吐出口108について、色毎のドットサイズ(ゼロ、小、中、大の4段階のいずれか)やドット形成位置等を複数の印字周期にわたって示すものである。なお、1印字周期は、ヘッド2と用紙Pとが用紙の搬送方向における印刷の解像度に対応した単位距離だけ相対移動するのに要する時間である。また、本実施形態では、ドットサイズの大、中、小は、吐出総量15pl、10pl、5plのインクでそれぞれ形成される。
【0043】
データ書込部143は、画像データ記憶部142に記憶された画像データを、ヘッド制御部144の駆動データ記憶部145に書き込む。これにより、ヘッド制御部144は、画像データに基づいて、各アクチュエータの駆動を選択的に制御可能となる。
【0044】
時間計測部(計測手段)154は、搬送する用紙サイズが小から大に変化する連続印刷において、小サイズの用紙P2の印刷が開始されてから大サイズの用紙P1の印刷が開始されるまでの時間を計測する。なお、時間計測部154は、用紙P1の印刷が開始されると、計測した時間をリセットする。
【0045】
フラッシングデータ作成部150は、領域決定部151と、乱数発生部152と、フラッシング割付部153とを有し、各部の協働によりフラッシングデータを生成する。フラッシングデータは、吐出口108毎のフラッシング動作を指示する。フラッシングデータには、不吐出フラッシングデータと、吐出フラッシングデータとがある。不吐出フラッシングデータに基づいて、ヘッド制御部144がアクチュエータを駆動し、対応する吐出口108のメニスカスを振動(不吐出フラッシング)させる。メニスカス振動時には、インク滴は吐出されない。一方、吐出フラッシングデータに基づいて、ヘッド制御部144がアクチュエータを駆動し、対応する吐出口108のインク滴を吐出(吐出フラッシング)する。1回の吐出フラッシングで、約3plのインクが用紙Pに向けて吐出される。なお、ここでいう1回の吐出フラッシングとは、1印字周期中に行われる予備吐出(1つの非画像ドットの形成)をいい、例えば、1印字周期中に複数滴のインクが連続して吐出口108から吐出されるものも含む。また、吐出フラッシングによって形成された非画像ドットは、画像ドットのサイズよりも非常に小さく目立たない。
【0046】
フラッシングデータ作成部150は、作成したフラッシングデータを駆動データ記憶部145に出力する。これにより、ヘッド制御部144は、フラッシングデータに基づいて、各アクチュエータの駆動を制御可能となる。ここで、駆動データ記憶部145には、画像データ及びフラッシングデータが記憶される。本実施形態では、フラッシングデータが書き込まれる段階で、フラッシングデータ作成部150によって、両データの合成データとして書き込まれる。この合成データが、駆動データである。
【0047】
領域決定部151は、図7に示すように、ヘッド2の吐出面2aについて、用紙P2(B5サイズ)と対向する領域91と、対向しない領域92とを決定する。領域91内では、主走査方向に関して両端の吐出口108が、用紙P2の両端縁と対向することになる。領域決定部151による領域決定処理は、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷時に行われ、この連続印刷を指示する印刷信号に基づく。本実施形態においては、吐出面2aで両端の吐出口108の離隔距離は、用紙P1の幅と同じである。つまり、ヘッド2は、縁なし全面印刷可能な最大用紙サイズが、A4サイズとなっている。
【0048】
乱数生成部152は、各領域91,92に対応して乱数を生成する。生成された乱数の情報は、フラッシング割付部153による非画像ドットの配置位置の設定に用いられる。
【0049】
フラッシング割付部153は、領域決定部151が決定した領域に対して、行われるべきフラッシング動作の種類とタイミングを割り付ける。割付は、吐出口108毎に行われ、画像データに基づく。連続印刷に際しては、用紙サイズの切り替わりを挟んで、領域91では継続的な吐出フラッシングが割り付けられ、領域92では不吐出フラッシングに続く吐出フラッシングが割り付けられる。
画像データに基づいて画像ドットが用紙P1、P2上に形成される際、非吐出状態(画像ドット間の経過時間)が所定時間以上続く吐出口108に対して、その間の吐出フラッシングが割り付けられる。吐出フラッシングのタイミング(非画像ドットの配置位置)は、先の画像ドット形成時点を起点とし、乱数生成部152が生成する乱数に基づいて設定される。この設定は、全ての用紙P1、P2に対応して行われる。
一方、領域92内の吐出口108は、用紙P2への印刷が開始されてから、定期的な不吐出フラッシングが設定される。この不吐出フラッシングは、全ての用紙P2に対応して設定される。用紙が用紙P1に切り替わってからは、領域92内の吐出口108は、領域91内の吐出口108と同様に、画像データに基づいて吐出フラッシングが割り付けられる。
【0050】
本実施形態では、用紙の切り替わりばな(直後)でのフラッシング処理に特徴がある。最初の用紙P1に対して、例えば片面印刷では、両領域91、92の吐出口108は、表面の吐出フラッシング及び表裏反転の指示が割り付けられる。表裏反転の指示により、最初の用紙P1に対する画像形成は、裏面に行われる。両面印刷でも、全吐出口108に対して、表面の吐出フラッシング及び表裏反転の指示が割り付けられる。表裏反転の指示により、画像形成の対象面が、表裏反転することになる。例えば、本来表面に形成されるべき画像が、裏面に形成されることになる。このとき、フラッシング割付部153は、吐出フラッシングの回数を、領域91の吐出口108よりも領域92の吐出口108の方が多く設定する。用紙P1へのインクの排出量は、領域92の吐出口108がより多くなる。
【0051】
また、フラッシング割付部153は、時間計測部154の計測結果に基づいて、領域92の吐出口108に関する吐出フラッシングの回数を変更する。計測時間が長くなるにつれて、フラッシング割付部153は、回数を増やす。例えば、所定時間よりも1秒長くなる毎に、吐出回数を1回増やす。フラッシング割付部153による吐出回数の変更処理は、メニスカス部の増粘が進む環境下でも行われて良い。例えば、ヘッド2を取り巻く温度が、所定温度の上昇をする毎に、上述の吐出回数の増加割合を増やす。さらに、ヘッド2を取り巻く湿度が、所定湿度の下降をする毎に、上述の吐出回数の増加割合を増やす。
【0052】
こうして、フラッシングデータが生成され、フラッシングデータ作成部150から駆動データ記憶部145に出力される。なお、フラッシング割付部153は、時間計測部154によって計測された時間が所定時間以下の場合は、吐出フラッシングによるインク排出量が所定量(すなわち、液体吐出回数が所定数)となるように、そのタイミングを決定する。変形例として、所定時間はゼロであってもよい。こうすれば、時間が経過する度に、吐出フラッシングの回数が増加する。
【0053】
次に、図8を参照しつつ、制御部100で行われる連続印刷の処理手順の一例について説明する。なお、この図8の動作フローの開始時における状態は、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を示す印刷信号を受信した状態である。画像データ記憶部142には、画像データが記憶されている。このため、サイズの小さい用紙P2の印刷中に不吐出フラッシングを行い、サイズの大きい最初の用紙P1には吐出フラッシングを行うと、制御部100により判定された状態である。
【0054】
まず、データ書込部143により、画像データ記憶部142の画像デ−タが、駆動データ記憶部145に書き込まれる。フラッシングデータ作成部150により、画像データに基づくフラッシングデータが生成され、駆動データ記憶部145に書き込まれる(ステップF1)。フラッシングデータは、用紙P2の印刷中における領域91内の吐出口108に対応した吐出フラッシングデータ、及び領域92内の吐出口108に対応した不吐出フラッシングデータに加え、用紙P1の印刷中における全吐出口108に対応した吐出フラッシングデータから構成されている。また、データの書き込み段階で、フラッシングデータ作成部150によって、フラッシングデータが画像データと合成される。この合成データは、駆動データである。なお、最初の用紙P1に対する吐出フラッシングの回数は、所定の初期回数に設定されている。この初期設定回数は、領域91よりも領域92にある吐出口108の方が大きい。
【0055】
次に、ステップF2において、制御部100が、両面印刷であるか否かを判定し、片面印刷の場合、ステップF3に進む。ステップF3においては、搬送制御部141が、第2給紙部17、搬送機構40を駆動する。これにより、用紙P2が、手差しトレイ15から送り出されて、搬送機構40によって搬送される。
【0056】
次に、ステップF4において、用紙P2に対する印刷処理が行われる。駆動データ記憶部145に記憶された駆動データに基づいて、駆動部146が、各ヘッド2のアクチュエータの駆動を制御する。領域91に対応するアクチュエータは、画像データに基づいて駆動され、用紙P2の表面に画像が形成される。領域92に対応するアクチュエータは、不吐出フラッシングデータに基づいて駆動され、各吐出口108のメニスカスが振動される。メニスカス振動は、吐出口108近傍のインクの増粘を抑制する。なお、領域91にある吐出口108では、印刷動作中であっても、その不吐出期間に応じた吐出フラッシングが行われ、インク吐出特性が全体に維持される。画像形成が完了すると、搬送制御部141が送りローラ対34、35を駆動し、用紙P2は排紙部4に排出される。
【0057】
変形例として、用紙P2への印刷時において、領域91にある吐出口108が、吐出フラッシングの代わりに不吐出フラッシングを行っても良い。無駄なインクの排出が抑制される。さらに、環境条件に応じて、フラッシング動作の内容を切り替えても良い。例えば、高温低湿の増粘しやすい環境下では、領域91にある吐出口108は、吐出フラッシングを行い、逆に低温高湿の増粘し難い環境下では、不吐出フラッシングを行う。環境条件の変化に対しても、単に不吐出フラッシングから吐出フラッシングへの切替ではなく、それぞれの駆動回数を変更しても良い。増粘しやすい環境に近づく毎に、回数を増やせばよい。吐出特性の維持を図りつつ、無駄なインクの排出が抑えられる。
【0058】
ステップF5において、新たな用紙P2への印刷がある場合は、ステップF3に戻り、ない場合はステップF6に進む。ステップF6において、制御部100が、時間計測部154によって計測された時間が所定時間を超えているか否かを判定し、超えている場合はステップF7に進み、超えていない場合はステップF8に進む。ステップF7において、フラッシングデータ作成部150は、領域92の吐出口108に対応する吐出フラッシングの回数を設定し直す。この回数は、所定時間に対する計測時間の長さに応じて変更され、計測時間が長いほど大きく設定される。フラッシングデータ作成部150は、このとき新たな吐出フラッシングデータを生成し、駆動データ記憶部145のフラッシングデータ(駆動データ)を更新する。そして、ステップF8に進む。
【0059】
ステップF8においては、搬送制御部141が、第1給紙部23、送りローラ対32、搬送機構40を駆動する。これにより、最初の用紙P1が給紙トレイ24から送り出されて、搬送機構40によって搬送される。
【0060】
次に、ステップF9において、駆動データ記憶部145に記憶された吐出フラッシングデータに基づいて、駆動部146が各ヘッド2のアクチュエータの駆動を制御する。搬送された用紙P1の表面には、すべての吐出口108からインク滴が吐出され、非画像ドットが形成される。このとき、領域91よりも領域92にある吐出口108の方が、多くの非画像ドットを形成する。このため、すべての吐出口108から増粘インクを効果的に排出することができる。
【0061】
次に、ステップF10において、搬送制御部141が各送りローラ対34,35を駆動し、一旦、用紙P1を排紙部4側に搬送する。そして、用紙P1の後端が用紙センサ27によって検出されたときに、搬送制御部141は、各送りローラ34,35を逆転させるとともに、送りローラ対61〜63を駆動する。こうして、最初の用紙P1は、ヘッド2の上流側に再送される。
【0062】
次に、ステップF11において、駆動データ記憶部145に記憶された駆動データに基づいて、駆動部146が、各ヘッド2のアクチュエータの駆動を制御する。これにより、再送された用紙P1の裏面に、画像データに基づく画像ドットが形成される。こうして、用紙P1の片面だけに、画像が形成される。この後、搬送制御部141が各送りローラ対34,35の駆動を正転させ、用紙P1を排紙部4に排出する。続いて、ステップF12に進む。
【0063】
次に、ステップF12において、新たな用紙P1への印刷の有無が判定される。有る場合は、ステップF13に進む。ステップF13では、ステップF8と同様に、搬送制御部141による制御の下、次の用紙P1が送り出される。ステップF14に進んで、駆動部146によって、アクチュエータの駆動が制御される。制御は、駆動データに基づいて行われ、各吐出口108による画像ドット及び非画像ドットが形成される。
【0064】
新たな用紙P1への印刷が無い場合は、一連の印刷動作を終了する。印刷動作の終了に際して、所定時間内に次の印刷指令があれば、ステップF1に戻る。一方、新たな指令がなければ、搬送制御部141は、全ての搬送動作を停止し、制御部100は、全ての吐出面2aをキャップ(不図示)で覆い待機状態に移る。キャッピングにより、各吐出口108の乾燥による増粘が抑制される。
【0065】
ステップF2において、制御部100が両面印刷と判定した場合、ステップF15に進む。ステップF15においては、ステップF3と同様に、搬送制御部141が、第2給紙部17、搬送機構40を駆動し、用紙P2が搬送機構40によって搬送される。そして、ステップF16に進む。
【0066】
ステップF16では、用紙P2に対する両面印刷が行われる。まず、片面印刷時(ステップF4)と同様に、領域91に対応するアクチュエータは、画像データに基づく表面への画像形成と、吐出フラッシングデータに基づく適宜の非画像ドットの形成を行う。領域92に対応するアクチュエータは、不吐出フラッシングデータに基づいて駆動され、各吐出口108のメニスカスが振動される。表面への画像形成が完了すると、搬送制御部141は、用紙P2を一旦排紙部4に向けて搬送する。用紙センサ27により用紙P2の後端が検出されると、搬送制御部141は、送りローラ対34、35の逆転および送りローラ対61〜63の駆動により、用紙P2をヘッド2の上流側に再送する。この後、表面への処理と同様に、裏面への画像形成処理が行われる。両面印刷済みの用紙P2は、正転する送りローラ対34、35により、排紙部4に排出される。
【0067】
ステップF17において、新たな用紙P2への印刷があれば、ステップF15に戻り、無ければステップF18に進む。ステップF18において、ステップF6と同様に、制御部100が、時間計測部154によって計測された時間が所定時間を超えているか否かを判定し、超えている場合はステップF19に進み、ステップF7と同様な制御が行われる。一方、超えていない場合はステップF20に進み、ステップF8と同様な制御が行われる。
【0068】
次に、ステップF20〜ステップF23において、ステップF8〜ステップF11と同様な制御を行う。つまり、用紙P1の表面への非画像ドットの形成、用紙P1の反転再送、裏面への画像ドットの形成が順に行われる。非画像ドットは、この場合も、領域92に対応する用紙P1の記録領域の方が、領域91に対応する記録領域よりも多い。この段階では、非画像ドットは用紙P1の表面に形成され、画像ドットは裏面(非フラッシング面)に形成されている。
【0069】
次に、ステップF24において、搬送制御部141が各送りローラ対34,35の駆動を正転させ、一旦、用紙P1を排紙部4側に搬送する。そして、用紙P1の後端が用紙センサ27によって検出されたときに、搬送制御部141が各送りローラ34,35を逆転させるとともに、送りローラ対61〜63を駆動する。こうして、裏面に画像ドットが形成された用紙P1が再送される。このとき、非画像ドットの形成面が、吐出面2aと対向することになる。
【0070】
次に、ステップF25において、駆動データに基づいて、駆動部146が各ヘッド2のアクチュエータの駆動を制御する。これにより、非画像ドットが形成された表面に、画像データに基づく、画像ドットが形成される。こうして、用紙P1の両面に画像が形成され、用紙P1が排紙部4に排出される。
【0071】
次に、ステップF26において、新たな用紙P1への印刷の有無が判定される。有る場合は、ステップF27に進む。ステップF27では、ステップF20と同様に、搬送制御部141による制御の下、次の用紙P1が送り出される。ステップF28に進んで、駆動部146によって、アクチュエータの駆動が制御される。制御は、駆動データに基づいて行われ、各吐出口108による画像ドット及び非画像ドットが形成される。この後、用紙P1の反転再送、裏面への画像形成、排紙部4への排紙が順に行われる。個々の動作は、上述したとおりである。
新たな用紙P1への印刷が無い場合は、一連の印刷動作を終了する。印刷動作の終了時の処理は、片面印刷の場合と同様である。
【0072】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、用紙P1の表面に吐出フラッシング(吐出口108近傍の増粘インクを排出する)を行うため、専用のフラッシング媒体を用いなくても、サイズの切り替わりばなの用紙P1に形成される画像の品質を維持することが可能になる。加えて、ヘッド2の回復動作(例えば、ヘッド2にインクを強制的に送り、すべての吐出口108からインクを強制排出させるパージ動作など)を行うために、用紙P1の搬送を中断する必要がなくなり、スループットの向上に寄与する。これは、連続印刷において、用紙P1の両面に印刷を行う場合でも、同様の効果が得られる。
【0073】
また、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、吐出フラッシングの回数が、領域91よりも領域92にある吐出口108からの方が多い。つまり、はじめの用紙P1に対して、領域91よりも領域92にある吐出口108からのインク排出量が多くなる。これにより、吐出口108の配置位置にかかわらず、インク吐出性能を効果的に回復させることが可能となる。
【0074】
加えて、時間計測部154によって計測された時間が所定時間よりも長くなるに連れて、領域92にある吐出口108から行われる吐出フラッシングの回数が増加する。つまり、用紙P1に対して、領域91よりも領域92にある吐出口108からのインク排出量がさらに多くなる。これにより、用紙P2への印刷期間が長くなっても、用紙P1に形成される画像の品質を維持することが可能となる。
【0075】
また、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、用紙P2への印刷が開始されてから用紙P1への印刷が開始されるまでの間に、領域92にある各吐出口108において、不吐出フラッシングが行われる。これにより、領域92にある吐出口108におけるインク吐出性能をより効果的に回復させることが可能となる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、用紙P1と対向するすべての吐出口108から吐出フラッシングが行われているが、少なくとも領域92にある吐出口108(小サイズの用紙とは対向せず大サイズの用紙と対向する吐出口)から吐出フラッシングが行われればよい。つまり、領域91にある吐出口108から吐出フラッシングが行われていなくてもよい。これにおいても、用紙P2(小サイズの用紙)に対する印刷時においてインク滴を吐出できずに、吐出口108近傍の増粘したインクを、用紙P1(大サイズの用紙)に吐出フラッシングで排出することが可能となるため、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0077】
また、上述の実施形態において、上記の連続印刷を行う際に、領域92に対応する吐出口108に対しては、吐出フラッシングを行う。しかし、領域91に対応する吐出口108に対しては、不吐出フラッシングを行うとしても良い。このとき、環境条件に応じて、フラッシング動作の内容を切り替えても良い。例えば、高温低湿の増粘しやすい環境下では、吐出フラッシングを行い、低温高湿の増粘し難い環境下では、不吐出フラッシングを行う。環境条件に変化に対しても、単に不吐出フラッシングから吐出フラッシングへの切替ではなく、それぞれの駆動回数を変更しても良い。増粘しやすい環境に近づく毎に、回数を増やす。吐出特性の維持を図りつつ、無駄なインクの排出が抑えられる。
また、上述の実施形態において、上記の連続印刷を行う際に、領域92に対応する吐出口108に対して、不吐出フラッシングと吐出フラッシングを交互に行うとしても良い。
【0078】
また、不吐出フラッシングを実行しなくてもよい。低温高湿で増粘が進みにくい場合や、用紙P2への印刷が短時間で完了する場合(例えば、片面印刷を1枚のみ行う場合や、加えてより小サイズの用紙に行う場合)、適用可能である。また、用紙サイズが小から大に変化する連続印刷を行う際に、領域91,92にある吐出口108からの吐出フラッシングによるインク排出量を同じにしてもよい。これにより、制御が簡単になる。
【0079】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
2 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
2a 吐出面
40 搬送機構
60 再送機構
100 制御部(制御手段)
108 吐出口
154 時間計測部(計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の吐出口が一方向に関して等間隔に配置された液体吐出ヘッドと、
前記吐出口と対向する位置を通過するように、前記一方向と直交する搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送された記録媒体を反転させて、前記搬送方向に関して前記液体吐出ヘッドの上流側に再送する再送機構と、
前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、前記一方向に関して最も外側にある2つの前記吐出口間の距離よりも幅の小さい第1の記録媒体に続けて、前記一方向に関して前記第1の記録媒体よりも幅の大きい第2の記録媒体を搬送し、当該第2の記録媒体に画像データに基づく画像を形成する連続印刷を行う際に、前記第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに少なくとも前記第2の記録媒体に対向し且つ前記第1の記録媒体に対向しない領域の前記吐出口から前記第2の記録媒体の表面に向けて液体を吐出させて前記画像データに基づかない非画像ドットを形成する吐出フラッシングを行った後、前記再送機構が前記第2の記録媒体を前記液体吐出ヘッドの上流側に再送し、再送された当該第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに前記第2の記録媒体の裏面に向けて液体を吐出させて前記画像データに基づく画像を構成する画像ドットを形成するように、前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記連続印刷において前記第2の記録媒体の両面に画像形成を行う際に、前記第2の記録媒体の裏面に画像が形成された後、前記再送機構が前記第2の記録媒体を前記液体吐出ヘッドの上流側に再送し、再送された前記第2の記録媒体を前記搬送機構で搬送するとともに当該第2の記録媒体の表面に、前記画像データに基づく画像を構成する画像ドットを形成するように、前記液体吐出ヘッド、前記搬送機構、及び、前記再送機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記吐出フラッシングを行う際に、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量が、前記第1の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量よりも多くなるように、前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記連続印刷において、1以上の前記第1の記録媒体への印刷が開始されてから前記第2の記録媒体への印刷が開始されるまでの時間を計測する計測手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記計測手段によって計測された前記時間が長くなるに連れて、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量と前記第1の記録媒体と対向する前記吐出口からの液体排出量との差が大きくなるように、前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記連続印刷において、1以上の前記第1の記録媒体への印刷が開始されてから前記第2の記録媒体への印刷が開始されるまでの間に、前記第1の記録媒体とは対向せず前記第2の記録媒体と対向する前記吐出口から液体を吐出させることなく当該吐出口に形成された液体メニスカスを振動させる不吐出フラッシングを行うように、前記液体吐出ヘッドを制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39760(P2013−39760A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178802(P2011−178802)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】