説明

液体噴射ヘッド、及び液体噴射装置

【課題】インクをノズルから噴射させる圧力を加えるために各圧電素子を駆動するべく、駆動信号を圧電素子に印加するための配線部材を設置する必要がある。このとき、この配線部材によって液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくならないようにする。
【解決手段】隣り合う液体噴射ヘッド110と液体噴射ヘッド120との間において、各々の供給流路形成部材111間には、切り欠き部111sによって、上下方向に開いた穴部が形成されることになる。従って、ドライバー基板60から出力される駆動信号を、液体噴射ヘッド120の圧電素子117に駆動信号を印加するための回路基板70を、この形成された穴部に通すことによって、リザーバ113間に回路基板70を配置することができる。つまり、回路基板70を、供給流路形成部材111の正面側またはそれと反対側の外周を這わせて配置せずに済むので、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくならずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド、及びこの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば機能液やインクなどといった液体を紙やガラス基板などといった対象物に噴射し、所定の図柄や画像を形成する液体噴射装置が存在する。このような装置では、例えば液体としてのインクが流れる流路の途中に圧力室を設け、圧力室のインクに圧電素子の電歪性を利用して圧力を加えることによって、流路の最後端に位置するノズルからインクをインク滴として噴射する液体噴射ヘッドが用いられている。
【0003】
液体噴射ヘッドについては、例えば特許文献1に開示されている構造の如く、ノズルが形成されたノズル開口面と垂直な方向に、圧力室およびこの圧力室にインクを供給する供給流路(「リザーバ」とも称す)を重ねて配置する構造が古くから知られている。これは、ノズル開口面と平行方向における液体噴射ヘッドの平面積を小さくする構造として有効であるが、ノズル開口面に対して垂直方向となる液体噴射ヘッドの厚さが増加してしまう。従って液体噴射ヘッドの薄型化には不向きな構造であった。
【0004】
一方、例えば特許文献2に開示されている構造の如く、ノズルが形成されたノズル開口面と平行に圧力室を配置する構造が多く採用されている。これは、ノズル開口面と略平行な方向が長手方向となるように圧力室を形成することによって、加圧手段を構成する振動板の変形変位を大きくしつつ、ノズルが形成されたノズル開口面に対して垂直方向における液体噴射ヘッドの厚さを薄くするためである。そして、このような液体噴射ヘッドでは、リザーバは、圧力室と重ならないか一部のみが重なる状態で、ノズル開口面と略平行な面に形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−149159号公報
【特許文献2】特開平6−234218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、家庭内でデジタルカメラの撮影画像を印刷することが行われ、このために特に小型軽量のプリンタに対する要求が高まっている。この要求にこたえるためには、プリンタを構成する各要素部品の小型化が必要であり、液体噴射ヘッドについても小型化が要求されている。
【0007】
ところで、圧電素子の性能向上とともに、圧力室の長手方向の長さが従来よりも短く形成することができるようになってきた。そのため、液体噴射ヘッドの小型化の方法として、特許文献1に開示されているような構成を採用することが可能である。すなわち、圧力室およびリザーバが、ノズル開口面に対して垂直方向に配置されているため、特許文献2に開示されている構成よりも、平面サイズは小さくなる。一方、液体噴射ヘッドの厚さを、圧力室の長手方向の長さが短くなったことから従来よりも薄くできる。この結果、充分に実用に耐える液体噴射ヘッドが形成できるからである。
【0008】
しかしながら、周知のように、液体噴射ヘッドにおいては、インクをノズルから噴射させる圧力を加えるために各圧電素子を駆動するべく、駆動信号を圧電素子に印加するための配線部材を設置する必要がある。このとき、小型化した液体噴射ヘッドの平面サイズが、この配線部材によって大きくならないようにしなければならないという課題がある。
【0009】
本発明は、このような課題の少なくとも一部を解決するために行われたもので、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[適用例1]液体を加圧する加圧手段が形成された圧力室と当該圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルとが形成されたノズルブロックを、複数有する液体噴射ヘッドであって、前記ノズルブロック毎に、(1)前記圧力室に連通して当該圧力室に前記液体を供給する供給流路と、(2)前記液体を加圧する駆動信号を前記加圧手段に印加する回路基板と、を備え、前記供給流路が、前記圧力室に対して前記ノズルと反対側に位置するとき、前記ノズルブロック毎に備えた前記供給流路間を通過するように前記回路基板を配置したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、供給流路間に配線部材となる回路基板を配置するので、供給流路を形成する部材の外周に回路基板を這わせる必要がない。従って、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくなることを抑制することができる。また、回路基板の這いまわし長さを短くすることも可能である。
【0012】
[適用例2]上記液体噴射ヘッドであって、前記回路基板は、前記供給流路を形成する部材に設けられた貫通孔を通して配置されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、供給流路を構成する部材を貫通する貫通穴に回路基板を通して、加圧手段となる圧電素子に駆動信号を印加できるので、供給流路を形成する部材の外周に回路基板を這わせる必要がない。この結果、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくなることを抑制できる。
【0014】
[適用例3]上記液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【0015】
上記液体噴射ヘッドを用いれば、ノズルブロックが多くなってもリザーバの上面から加圧手段へ駆動信号を印加することができるので、液体噴射ヘッドが大きくなることを抑制できる。従って、平面サイズの小さい液体噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を具体化した一実施形態について説明する。図1は本発明の液体噴射ヘッドを具備した液体噴射装置の一例となるインクジェットプリンタ10について、その概略構造を示したものである。また、図中吹き出し部は、後述するキャリッジ20を矢印S方向から見たときの模式図(上側の図)と、矢印F方向から見たときの模式図(下側の図)を示している。なお、説明の便宜上、キャリッジ20は透視状態としている。なお、本実施形態では、キャリッジ20を基準として、矢印Fから見た方向を正面方向とする。また、矢印Sから見た方向を右側面方向、その反対側を左側面方向とする。また、印刷用紙25の方向を下方向、その反対方向を上方向として以降説明する。
【0017】
このインクジェットプリンタ10は、液体としてのY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクがそれぞれ収納されたインクカートリッジ11〜14がキャリッジ20に装着される。そして、各色インクに対応したそれぞれ4つの液体噴射ヘッド110,120,130,140がキャリッジ20の下方向に並置して設けられ、これらの液体噴射ヘッド110〜140からインク滴を噴射して、印刷用紙25に所定の画像等を印刷するものである。
【0018】
キャリッジ20は、キャリッジベルト41に固定され、キャリッジベルト41がキャリッジモータ40によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド21に沿って図面左右方向(主走査方向)に移動する。このとき、液体噴射ヘッド110〜140のそれぞれに形成され、主走査方向に対して直交する方向に直線状に穿設された複数のノズルからなるノズル列から、印刷画像に相応した所定量の各色インクがインク滴として噴射される。また印刷用紙25は、プラテン28によって裏面から支持されつつ、フレーム17に固定された駆動モータ26により駆動される図示しない紙送りローラーなどによって、図面上下方向に所定量ずつ移動する。この一連の動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメイン基板30と、フレキシブル基板45によって接続され、キャリッジ20に取り付けられたサブ基板50と、によって行われる。
【0019】
液体噴射ヘッド110〜140に設けられている複数のノズルのそれぞれには、インクを噴射するために圧力を発生させる加圧手段が形成されている。加圧手段は、電歪性を有する圧電素子と振動板によって構成され、圧電素子に所定の電圧をかけることで圧電素子を変形させ、ノズルからインク滴を噴射させる。圧電素子を変形させる電圧はドライバー基板60から圧電素子の駆動信号として出力され、後述するドライバー基板60と圧電素子を電気的に結線する回路基板を介して圧電素子に印加される。ドライバー基板60は、キャリッジ20内において、液体噴射ヘッド110〜140の上方向の位置にあって、各液体噴射ヘッド110〜140に対応して設けられ、サブ基板50と図示しない結線部材によって結線され、メイン基板30からの出力信号を受けて駆動信号を出力する。
【0020】
なお、キャリッジ20内には、図中吹き出し部において破線矢印で示したように、各インクカートリッジ11〜14から供給されたインクが、4つの液体噴射ヘッド110〜140に設けられたインク流入口まで流れるように流路(不図示)が形成されている。
【0021】
本実施形態の液体噴射ヘッド110〜140は、このようにキャリッジ20に並置された状態において、上述した回路基板を配置したとき、上方向から見たときの液体噴射ヘッドが占める平面サイズが大きくならないようにするものである。それでは、この液体噴射ヘッド110,120,130,140について図2〜図4を用いて説明する。なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド110,120,130,140は総て同じ構造を有している。従ってここでは、液体噴射ヘッド110について説明する。
【0022】
図2は、液体噴射ヘッド110の概略構成を示した模式図で、(a)は、上方向から見た状態を、(b)は右側面方向から見た状態を、(c)は下方向から見た状態を、それぞれ示している。本実施形態の液体噴射ヘッド110について、インクの流路に沿ってその構成を説明する。
【0023】
まず、図2(a)に示したように、開口部となるインク流入口111aが設けられた供給流路形成部材111に、インクカートリッジ(11)から供給されたインクが流入する。そして、供給流路形成部材111に流入したインクは、内部に形成された供給流路(以降、「リザーバ」と称す)113に溜まる。リザーバ113は、図2(b)に示すように、供給流路形成部材111と薄膜材112と圧力室形成部材114とによって囲まれて形成されている。
【0024】
次いで、インクはリザーバ113から、図中二点鎖線の矢印で示したように、5つ設けられた連通孔114aへ流れる。連通孔114aは圧力室形成部材114に形成された半長円形状の開口部と振動板116とによって形成される。
【0025】
連通孔114aに流入したインクは、図2(b)に示すように、続いて圧力室形成部材114に形成された圧力室114bに流入する。圧力室114bは、圧力室形成部材114に形成された所定の断面形状(本実施形態では矩形形状)を有する凹部と振動板116とによって形成される。そして、圧力室114bに流入したインクは、圧電素子117の変形駆動によって変位する振動板116によって加圧され、ノズルプレート115に形成され圧力室114bと連通するノズル115aからインク滴として噴射する。
【0026】
供給流路形成部材111、圧力室形成部材114、ノズルプレート115は、それぞれ金属材料(本実施形態ではステンレス鋼)からなり、接着剤や溶着等によって互いに積層固着されて形成されている。薄膜材112は、インク滴の噴射動作等によってリザーバ113に生ずるインクの振動バランスをとるために、可撓性を有する樹脂製の薄板(本実施形態ではPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂))からなり、供給流路形成部材111の上面に、接着または溶着によって固定されている。
【0027】
また、振動板116はセラミック板(本実施形態ではジルコニア板)からなり、図2(b)に示したように、圧力室形成部材114、ノズルプレート115の右側面に接着固定されている。そして、振動板116の表面には、圧力室114bのインクを加圧するための圧電素子117が貼り付けられている。圧電素子117は、圧力室114bの幅(図面左右方向)よりも狭い幅で、圧力室114bの長手方向(図面上下方向)に長い形状を有するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の電歪特性を有する圧電材料の板からなり、電圧を印加すると幅方向において湾曲するように構成されている。そして、図示しない電極が圧電素子117に形成され、所定の駆動信号をこの電極に印加することによって圧電素子117を湾曲させ、もって振動板116を変形させて圧力室114bのインクを加圧するように形成されている。この振動板116と圧電素子117とが、請求項記載の加圧手段に相当する。
【0028】
供給流路形成部材111には、主走査方向に所定量の長さ切り欠いた切り欠き部111sが設けられている。この切り欠き部111sは、圧電素子117に駆動信号を印加するための図示しない結線部材を配置するためのものである。結線部材の配置については図3、及び図4を用いて後述する。
【0029】
本実施形態の液体噴射ヘッド110は、上述したように各部材が構成され、上述したようなインクの流路を形成している。その結果、図2(c)に示した如く、圧力室形成部材114に形成された圧力室114bに対応するように、略直線状に所定のピッチ間隔で並んだノズル115aのノズル列が形成される。なお、本実施形態の液体噴射ヘッド110は、5つのノズルによって1つのノズル列を形成するようにしているが、もとよりこれは説明を簡略化するためであって、実際には、数十から数百のノズルによって1つのノズル列が形成されている。また、各部材の寸法も、説明の都合上適宜誇張して図示している。従って、実際の寸法とは異なるものであることは勿論である。
【0030】
次に、液体噴射ヘッド110について、図3を用いて更に詳しく説明する。なお図3は、図2(c)におけるA−A断面を示した模式図である。
【0031】
図3に示すように、積層固着された圧力室形成部材114とノズルプレート115とは、少なくとも右側面方向において1つの面となる壁面を形成するように積層されている。そして、振動板116がこの壁面に固着されることによって、圧力室形成部材114には、連通孔114aと、この壁面に沿う方向を圧力室の長手方向とする圧力室114bとが形成される。従って、圧力室114bにおけるインク流路は、図中2点鎖線の矢印で示したように、壁面と略平行な方向となる。この結果、圧電素子117の変形駆動によって振動板116が図中白抜き矢印で示した方向に変形すると、圧力室114bのインクが加圧される。すると、加圧された圧力室114bのインクは、インク流路に従って流れ、前述するように圧力室114bと連通するノズル115aから噴射する。なお、本実施形態では、圧力室形成部材114とノズルプレート115、および加圧手段である振動板116と圧電素子117とを、ノズルブロックと総称する。
【0032】
供給流路形成部材111に設けられた切り欠き部111sの長さ(厚さ)の範囲内に、図中2点鎖線で示したように結線部材となる回路基板70が配置され、圧電素子117の電極(不図示)と結線されることによって駆動信号を印加する。
【0033】
圧力室114bには、噴射されたインクを補充するべく、連通孔114aを通してリザーバ113からインクが供給される。従って、液体噴射ヘッド110は、圧力室114bに対してノズルと反対側に位置するリザーバ113から、形成された総ての圧力室114b(本実施形態では5個)にインクが供給される。
【0034】
連通孔114aおよび圧力室114bは、略直方体形状を有する金属製部材の1つの壁面に、機械切削加工や化学研磨加工などによって凹部を形成したものである。ノズル115aは、ノズルプレート115にプレスやドリル等による機械加工や、エッチング等による化学研磨加工によって加工形成されている。
【0035】
上述した構成によって、本実施形態の液体噴射ヘッド110〜140は、リザーバ113と圧力室114bとノズル115aとが上下方向に重なる配置状態となる。この結果、ノズル列が形成されたノズル開口面に対して垂直方向にインク流路が形成されることになり、平面サイズが小さい液体噴射ヘッドとなる。そして、圧電素子117に駆動信号を印加するための回路基板を、供給流路形成部材111に設けた切り欠き部111sの厚さ内に配置するので、回路基板の配置に起因して液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくなることはない。この結果、図1に示したように、これらの液体噴射ヘッド110〜140を主走査方向に並べて複数のノズルブロックを形成しても、総ての液体噴射ヘッドが占有する平面サイズが大きくなることを抑制することが可能となる。
【0036】
液体噴射ヘッド110,120,130,140を並べた状態を図4に示す。図示するように、各液体噴射ヘッド110〜140を隣接並置した場合、例えば隣り合う液体噴射ヘッド110と液体噴射ヘッド120との間において、各々の供給流路形成部材111間には、切り欠き部111sによって、上下方向に開いた穴部が形成されることになる。従って、ドライバー基板60から出力される駆動信号を、液体噴射ヘッド120のノズルブロックの圧電素子117に印加するための回路基板70を、この形成された穴部に通すことによって、リザーバ113間に回路基板70を配置することができる。つまり、回路基板70を、供給流路形成部材111の正面側またはそれと反対側の外周を這わせて配置せずに済むので、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくならずに済む。
【0037】
図5は、回路基板70を配置した状態を、右側面方向から見た模式図である。ここで、回路基板70については、基板を透視状態(図中2点鎖線)で示している。図示するように、回路基板70に設けられた配線71aと配線71bが一組となってそれぞれの圧電素子117に形成された電極(不図示)と電気的に結線し、ドライバー基板60から出力される駆動信号を、それぞれの圧電素子117に印加する。このように回路基板70を配置することによって、供給流路形成部材111の正面側やその反対側の外周を這わせて配置せずに済むので、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくならずに済む。また、回路基板70は、ドライバー基板60と圧電素子117とを略最短距離で結線することができることから、回路基板70が長くならずに済むため、回路基板70のコストダウンも可能となる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドによれば、配線部材となる回路基板を、供給流路であるリザーバを迂回せずリザーバ間に配置するので、リザーバを形成する部材の外周に回路基板を這わせる必要がなく、液体噴射ヘッドの平面サイズが大きくなることを抑制できる。また、回路基板の這いまわし長さを短くできるとともに、ノズルブロックが複数あっても配線が容易となる。
【0039】
以上、本発明について、一実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0040】
(変形例)
上記実施形態のインクジェットプリンタ10は、図1に示したように、液体噴射ヘッドつまりノズルブロックを4つ並べて、それぞれY、M、C、Kの各インクを噴射する液体噴射ヘッドを形成するものであった。従って、各液体噴射ヘッドを隣接並置する場合、各供給流路形成部材111を互いに接着するなどの工程が必要となる。そこで、変形例として、各液体噴射ヘッドの供給流路形成部材111を一体化して1つの部材で形成してもよい。こうすれば、各供給流路形成部材111を接着することなく、4つのノズルブロックを有する液体噴射ヘッドを形成することが可能となる。
【0041】
本変形例を、図6を用いて説明する。図6は、4つのノズルブロックを形成する供給流路形成部材111Gを示したもので、上方向から見た平面図である。図示するように、供給流路形成部材111Gには、各ノズルブロックに対応するリザーバを形成する開口部113Kが4つ形成されている。そして、形成された開口部113Kのそれぞれに対応して、供給流路形成部材111Gの下方向(図面裏側)の所定の位置に、図示しないノズルブロックが固着されることによって、4つの液体噴射ヘッド110〜140が形成されるのである。
【0042】
また、それぞれの開口部113Kの間に、回路基板70を通過させるための貫通穴111Kが3つ形成されている。また、供給流路形成部材111Gの右側面(図面下側)には、回路基板70を配設させるための切り欠き部111sが1つ形成されている。
【0043】
このように、3つの貫通穴111Kと1つの切り欠き部111sに、ノズルブロックの圧電素子117へ駆動信号を印加する回路基板70を通すことによって、リザーバ113間に回路基板70を配置することができる。
【0044】
なお、本変形例では、液体噴射ヘッド110に対応する切り欠き部111sを、他と同様に貫通穴としても差し支えない。この場合、供給流路形成部材111Gに対して、部材111pの部分大きくして、切り欠き部111sを貫通穴とすればよい。
【0045】
(その他の変形例)
上記実施形態では、キャリッジ20にノズルブロックが4つ搭載されていることとして説明したが、これに限らず、更にノズルブロックの数を増加したり、逆に減少したりしてもよい。ノズルブロックの数に依存することなく、リザーバ113間を通過する回路基板70によって加圧手段へ駆動信号を印加することができるので、液体噴射ヘッドが大きくなることを抑制できる。従って、平面サイズの小さい液体噴射ヘッドを提供することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、インクを噴射する液体噴射ヘッドが設けられたキャリッジを、印刷用紙の搬送方向と直交する主走査方向に往復移動して、印刷用紙に所定の画像を印刷する方式のインクジェットプリンタとして説明したが、本発明はこれに限るものではないことは勿論である。例えば、印刷用紙の幅方向全体にノズルが形成されたラインヘッドを備えたインクジェットプリンタによって印刷用紙にインク滴を噴射する装置を、本発明の液体噴射装置の一つの実施形態として採用することが可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置として、液体としてのインクを噴射するインクジェットプリンタ10として説明したが、これに限るものでないことは勿論である。例えば、ガラス基板や樹脂基板に機能液を噴射して、配線パターンの形成を行う製造装置やカラーフィルタの製造装置など、液体を噴射できる方式を用いて機能液を噴射することによって、画像や図形、文字などを被噴射対象物に記録する装置でも同様に実施できるものである。
【0048】
また、上記実施形態では、インク滴を噴射させる方法として圧電素子117を用いる方式として説明したが、これ以外に発熱体を用いてインク滴を噴射させる所謂サーマル方式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態となるインクジェットプリンタの概略構造図。
【図2】本実施形態での液体噴射ヘッドの概略構成を示した模式図で、(a)は、上方向から見た状態を、(b)は右側面方向から見た状態を、(c)は下方向から見た状態を示す模式図。
【図3】本実施形態の液体噴射ヘッドの断面を示した模式図。
【図4】本実施形態の液体噴射ヘッドを4つ並べた状態を示す模式図。
【図5】本実施形態において回路基板を配置した状態を示す模式図。
【図6】変形例での供給流路形成部材を示す模式図。
【符号の説明】
【0050】
10…インクジェットプリンタ、11〜14…インクカートリッジ、17…フレーム、20…キャリッジ、21…ガイド、25…印刷用紙、26…駆動モータ、28…プラテン、30…メイン基板、40…キャリッジモータ、41…キャリッジベルト、45…フレキシブル基板、50…サブ基板、60…ドライバー基板、70…回路基板、71a…配線、71b…配線、110…液体噴射ヘッド、111…供給流路形成部材、111G…供給流路形成部材、111K…貫通穴、111a…インク流入口、111p…部材、111s…切り欠き部、112…薄膜材、113…リザーバ、113K…開口部、114…圧力室形成部材、114a…連通孔、114b…圧力室、115…ノズルプレート、115a…ノズル、116…振動板、117…圧電素子、120,130,140…液体噴射ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を加圧する加圧手段が形成された圧力室と当該圧力室に連通して前記液体を噴射するノズルとが形成されたノズルブロックを、複数有する液体噴射ヘッドであって、
前記ノズルブロック毎に、
(1)前記圧力室に連通して当該圧力室に前記液体を供給する供給流路と、
(2)前記液体を加圧する駆動信号を前記加圧手段に印加する回路基板と、を備え、
前記供給流路が、前記圧力室に対して前記ノズルと反対側に位置するとき、前記ノズルブロック毎に備えた前記供給流路間を通過するように前記回路基板を配置したことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドであって、
前記回路基板は、前記供給流路を形成する部材に設けられた貫通孔を通して配置されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴射ヘッドを具備した液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−126076(P2009−126076A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304045(P2007−304045)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】