説明

液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】液体噴射ヘッドの内部の液体による破壊を抑制する事ができると共に、液体噴射ヘッドの製造コストを低減することができる液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、液体噴射装置並びに液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体が噴射するノズル開口26が設けられたヘッド本体と、ヘッド本体のノズル開口26が開口する液体噴射面27aに固定されて液体噴射面27aのノズル開口26を露出する露出開口部71を有する固定板70と、を具備し、ヘッド本体には、液体噴射面27aに開口して、ノズル開口26に対して位置決めされた位置決め穴52が設けられていると共に、固定板70は、位置決め穴52を塞ぐように液体噴射面27aに固定され、固定板70は、液体噴射面27aから庇状に突出する庇部74を有すると共に、庇部74には少なくとも2つのヘッド位置決め穴75が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット、
液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電素子等の圧電アクチュエーター、あるいは発熱素子等の圧力発生手段に
よって液体に圧力を付与することで、ノズルから液滴を噴射する液体噴射ヘッドが知られ
ており、その代表例としては、インク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドが挙げら
れる。
【0003】
インクジェット式記録ヘッド(ユニット)としては、例えば、インク滴を噴射するノズ
ル開口が穿設されたノズルプレートと、ノズル開口に連通する圧力発生室や複数の圧力発
生室が連通するリザーバ(連通部)等の流路が形成された流路形成基板と、を有するヘッ
ド本体を複数備え、これら複数のヘッド本体が固定板に位置決め固定されて構成されたも
のがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−096419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヘッド本体を組み立てる際に用いた厚さ方向に貫通した位置決め穴が液
体吐出面に露出していると、位置決め穴からインクが侵入して、ヘッド本体の内部にイン
クが侵入し、インクによる破壊などが発生してしまう可能性が高くなるという問題がある

【0006】
また、ヘッド本体の位置決め穴の液体吐出面側の開口をカバーヘッド等の固定板で塞ぐ
ことで、ヘッド本体の内部へのインクの侵入を抑制することができるものの、このような
構成では、ノズル開口と固定板との位置決めを撮像手段などの高額なアライメント装置を
用いて行わなければならず高コストになってしまうという問題がある。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体
を噴射する液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体噴射ヘッドの内部の液体による破壊を抑制する事
ができると共に、液体噴射ヘッドの製造コストを低減することができる液体噴射ヘッド、
液体噴射ヘッドユニット、液体噴射装置並びに液体噴射ヘッドの製造方法を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体が噴射するノズル開口が設けられたヘッド本
体と、該ヘッド本体の前記ノズル開口が開口する液体噴射面に固定されて当該液体噴射面
の前記ノズル開口を露出する露出開口部を有する固定板と、を具備し、前記ヘッド本体に
は、前記液体噴射面に開口して、前記ノズル開口に対して位置決めされた位置決め穴が設
けられていると共に、前記固定板は、前記位置決め穴を塞ぐように前記液体噴射面に固定
され、前記固定板は、前記液体噴射面から庇状に突出する庇部を有すると共に、該庇部に
は少なくとも2つのヘッド位置決め穴が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド
にある。
かかる態様では、液体噴射面に開口する位置決め穴が固定板によって塞がれているため
、液体噴射面に付着した液体が位置決め穴を介してヘッド本体の内部に侵入するのを抑制
してヘッド本体の液体による破壊を抑制することができる。また、固定板に液体噴射面に
相対向しないヘッド位置決め穴を設けることで、液体噴射ヘッドを位置決め固定する際に
ヘッド位置決め穴を用いることができる。
【0010】
ここで、前記庇部が、前記ヘッド本体の短手方向の一側面側に設けられており、前記ヘ
ッド位置決め穴が、当該庇部に長手方向に沿って設けられていることが好ましい。これに
よれば、液体噴射ヘッドの長手方向が長尺化するのを抑制することができると共に、2つ
のヘッド位置決め穴を比較的離して配置することができ、ヘッド本体と固定板とを高精度
に位置決めすることができる。また、液体噴射ヘッドをヘッド位置決め穴を用いて高精度
に位置決めすることができる。
【0011】
また、前記ヘッド本体には、前記液体噴射面とは反対側に設けられたケース部材が設け
られていると共に、該ケース部材は、前記庇部の前記位置決め穴以外の領域に相対向する
突出部を有することが好ましい。これによれば、突出部によって庇部を補強して、庇部の
変形等の破壊を抑制することができる。
【0012】
また、前記庇部が、前記液体噴射ヘッドの長手方向の両端部に設けられていると共に、
前記ヘッド位置決め穴が、前記液体噴射ヘッドの長手方向の両端部に設けられた前記庇部
にそれぞれ設けられていることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドが短手方向に
幅広になるのを抑制することができる。また、液体噴射ヘッドを短手方向に並べた際に、
液体噴射ヘッドの向きを回転させなくても、互いに隣り合う液体噴射ヘッドのノズル開口
の間隔を狭めることができる。
【0013】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、複数の液体噴射ヘッドの
前記液体噴射面とは反対面側を共通して保持する保持部材と、を具備することを特徴とす
る液体噴射ヘッドユニットにある。
かかる態様では、液体噴射ヘッドを長尺化することなく、複数の液体噴射ヘッドによっ
て長尺化したノズル列を形成することができる。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドと、複数の液体噴射ヘッドの液
体噴射面とは反対面側を共通して保持する保持部材と、を具備し、前記保持部材には、前
記液体噴射ヘッドが短手方向に並設されていると共に、短手方向で互いに隣り合う液体噴
射ヘッドは、前記ヘッド位置決め穴が設けられた面とは反対側を相対向して配置されてい
ることが好ましい。これによれば、短手方向で互いに隣り合う液体噴射ヘッドのノズル開
口の間隔を狭めることができる。
【0015】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特
徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、破壊を抑制して信頼性の高い液体噴射装置を実現できる。
【0016】
また、本発明の他の態様は、液体を噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、該
ヘッド本体の前記ノズル開口が開口する液体噴射面に固定されて当該液体噴射面の前記ノ
ズル開口を露出する露出開口部を有する固定板と、を具備する液体噴射ヘッドの製造方法
であって、前記ヘッド本体に設けられた厚さ方向に貫通する位置決め穴と、前記固定板の
前記液体噴射面よりも庇状に突出する庇部に設けられたヘッド位置決め穴とのそれぞれに
位置決めピンを液体噴射面とは反対面側から挿入することで、前記ヘッド本体と前記固定
板との相対位置の位置決めを行うと共に、前記ヘッド本体の前記位置決め穴の前記液体噴
射面側の開口を前記固定板で塞ぎ、前記ヘッド本体と前記固定板とを固定することを特徴
とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる態様では、液体噴射面に開口する位置決め穴が固定板によって塞がれているため
、液体噴射面に付着した液体が位置決め穴を介してヘッド本体の内部に侵入するのを抑制
してヘッド本体の液体による破壊を抑制することができる。また、固定板に液体噴射面に
相対向しないヘッド位置決め穴を設けることで、液体噴射ヘッドを位置決め固定する際に
ヘッド位置決め穴を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係るヘッドユニットの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係るヘッドユニットの平面図である。
【図3】実施形態1に係るヘッドの分解斜視図である。
【図4】実施形態1に係るヘッドの平面図である。
【図5】実施形態1に係るヘッドの断面図である。
【図6】実施形態1に係るヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図7】実施形態1に係るヘッドユニットの製造方法を示す断面図である。
【図8】実施形態2に係るヘッドの平面図である。
【図9】実施形態2に係るヘッドユニットの平面図である。
【図10】実施形態3に係るヘッドの分解斜視図である。
【図11】実施形態3に係るヘッドの平面図である。
【図12】実施形態3に係るヘッドの断面図である。
【図13】実施形態3に係るヘッドの断面図である。
【図14】一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェッ
ト式記録ヘッドユニットを示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッド
ユニットの液体噴射面側からの平面図である。
【0019】
図示するように、インクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、単にヘッドユニット
1とも言う)は、液体噴射ヘッドの一例である複数(本実施例では、例として4個)のイ
ンクジェット式記録ヘッド10(以下、単にヘッド10とも言う)と、保持部材60とを
備える。
【0020】
保持部材60は、例えば、樹脂材料で形成され、その内部に回路基板やインク連通路が
形成された流路部材、ゴミや気泡を除去するフィルターなどを備えている。また、保持部
材60の上面(ヘッド10とは反対側の面)にはインク供給針61(本実施例では、例と
して8個)が固定されている。このインク供給針61は、各色のインクが貯留された貯留
手段(図示なし)が直接又はチューブを介して接続される。また、このインク供給針61
には、図示しないインク連通路の一端が連通している。さらに、インク連通路の他端はヘ
ッド本体20側(保持部材60の底面側)に開口している。即ち、インクカートリッジか
らインクは、インク供給針61を介してこのインク連通路に供給され、供給されたインク
は、詳しくは後述するインク導入路を介してヘッド本体20にそれぞれ供給される。
【0021】
このような保持部材60の底面には、所定間隔で位置決めされた複数のヘッド10が固
定される。各ヘッド10は各色のインクに対応してそれぞれ設けられている。
【0022】
保持部材に保持されたヘッド10は、ヘッドの長手方向である第1方向Yに向かって千
鳥状に配置されることで、第1方向Yに同一ピッチで長尺化したノズル列を形成すること
ができる。なお、ここで言うヘッド10が千鳥状に配置されているとは、複数のヘッド1
0が後述するノズル開口26(図2参照)の並設方向でもある第1方向Yに向かって並設
されており、第1方向Yに並設された複数(2つ)のヘッド10で構成される列は、ノズ
ル開口が並設された方向(第1方向Y)とは交差する第2方向Xに並んで2列設けられて
いる。これら第2方向Xに並設されたヘッド10の2列は、互いに第1方向Yに向かって
若干ずらした位置に配置されている。そして、2列のヘッド10の列において、隣り合う
ヘッド10は、一方の列のヘッド10のノズル列の端部側のノズル開口と、他方の列のヘ
ッド10のノズル列の端部側のノズル開口とが、ノズル開口の第1方向Yで同一位置とな
るように設けられている。これにより、複数のヘッド10(本実施形態では、4つのヘッ
ド10)によって、第1方向Yに沿って同一ピッチでノズル開口を4つのヘッド10の分
だけ並設してノズル列を連続させることができ、連続するノズル列の幅で広い面積に亘っ
て印刷を行うことができる。
【0023】
なお、保持部材60は、上面視した際に長方形状を基準として、一対の対角となる角部
を切り欠いた形状を有する。ちなみに、保持部材60が長方形状を有し、且つ一対の対角
となる角部が切り欠かれた形状を有するとは、具体的には、以下の構造を有することを言
う。保持部材60の長手方向の各端部のそれぞれに、上面視した際に矩形状となる凸部と
凹部とが短手方向に並んで設けられている。そして、保持部材60の長手方向の各端部に
おいて、凸部と凹部とは反対の配置となるように設けられている。この凹部が上述した一
対の対角となる角部を切り欠いた形状のことである。
【0024】
そして、このような保持部材60の長手方向両側に突出した凸部にヘッド10が配置さ
れるように、第2方向Xに並設されたヘッド10の2列は、互いに第1方向Yに向かって
凸部側に若干ずらした位置に配置されている。
【0025】
また、保持部材60には、長辺の一部が短辺の面方向両側に延設された延設部62を有
する。すなわち、短手方向の両側に延設された延設部62を有する。この延設部62には
、特に図示しないが、内部に設けられた回路基板のコネクターが配置され、外部配線は、
延設部の上面に設けられたスリット63を挿通して配線基板のコネクターに接続される。
なお、回路基板は、後述する複数のヘッド10の駆動配線35が共通して接続される。
【0026】
ここで、このような保持部材60に保持されるヘッド10の構成の一例について、図3
〜図5を参照して説明する。なお、図3は、本発明の実施形態1に係るヘッドの分解斜視
図であり、図4は、ヘッドの液体噴射面側からの平面図であり、図5は、ヘッドの圧力発
生室の長手方向における断面図である。
【0027】
図示するように、ヘッド10を構成する流路形成基板21には、複数の圧力発生室22
がその幅方向に並設された列が2列設けられている。また、各列の圧力発生室22の長手
方向外側の領域には連通部23が形成され、連通部23と各圧力発生室22とが、圧力発
生室22毎に設けられたインク供給路24及び連通路25を介して連通されている。
【0028】
流路形成基板21の一方の面には、各圧力発生室22のインク供給路24とは反対側の
端部近傍に連通するノズル開口26が穿設されたノズルプレート27が接合されている。
【0029】
一方、流路形成基板21のノズルプレート27とは反対側の面には、弾性膜28及び絶
縁体膜29を介して圧電アクチュエーター30が形成されている。圧電アクチュエーター
30は、第1電極31と、圧電体層32と、第2電極33とで構成されている。各圧電ア
クチュエーター30を構成する第2電極33には、絶縁体膜29上まで延設されたリード
電極34が接続されている。リード電極34は、一端部が第2電極33に接続されている
と共に、他端部側が、フレキシブル配線部材(COF基板)であり圧電アクチュエーター
30を駆動するための駆動IC35aが実装された駆動配線35と接続されている。
【0030】
このような圧電アクチュエーター30が形成された流路形成基板21上には、圧電アク
チュエーター30に対向する領域に、圧電アクチュエーター30を保護するための空間で
ある圧電アクチュエーター保持部36を備えた保護基板37が接着剤38によって接合さ
れている。また、保護基板37には、マニホールド部39が設けられている。このマニホ
ールド部39は、本実施形態では、流路形成基板21の連通部23と連通されて各圧力発
生室22の共通のインク室となるマニホールド40を構成している。
【0031】
また、保護基板37には、保護基板37を厚さ方向に貫通する貫通孔41が設けられて
いる。貫通孔41は、本実施形態では、2つの圧電アクチュエーター保持部36の間に設
けられている。そして、各圧電アクチュエーター30から引き出されたリード電極34の
端部近傍は、貫通孔41内に露出するように設けられている。
【0032】
さらに保護基板37上には、封止膜44及び固定板45とからなるコンプライアンス基
板46が接合されている。ここで、封止膜44は、剛性が低く可撓性を有する材料からな
り、この封止膜44によってマニホールド部39の一方面が封止されている。また、固定
板45は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板45のマニホールド40に対向
する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部47となっているため、マニホールド4
0の一方面は可撓性を有する封止膜44のみで封止されている。この封止膜44のみで封
止された領域でマニホールド40内にコンプライアンスを与えている。さらにコンプライ
アンス基板46には、マニホールド40内にインクを導入するためのインク導入口48が
設けられている。
【0033】
コンプライアンス基板46上には、ケース部材であるヘッドケース49が固定されてい
る。ヘッドケース49には、インク導入口48に連通してカートリッジ等の貯留手段から
のインクをマニホールド40に供給するインク導入路50が設けられている。さらに、ヘ
ッドケース49には、保護基板37に設けられた貫通孔41と連通する配線部材保持孔5
1が設けられており、駆動配線35は配線部材保持孔51内に挿通された状態でその一端
側がリード電極34と接続されている。
【0034】
このような本実施形態のヘッド本体20では、貯留手段(図示なし)からのインクを保
持部材60を介してインク導入口48から取り込み、マニホールド40からノズル開口2
6に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC35aからの記録信号に従い、圧力発
生室22に対応するそれぞれの圧電アクチュエーター30に電圧を印加し、弾性膜28、
絶縁体膜29及び圧電アクチュエーター30をたわみ変形させることにより、各圧力発生
室22内の圧力が高まりノズル開口26からインク滴が吐出する。
【0035】
また、このようなヘッド本体20を構成する各部材には、組立時に各部材を位置決めす
るためのピンが挿入される位置決め穴52が長手方向の両側の角部の2箇所に設けられて
いる。そして、位置決め穴52にピンを挿入して各部材の相対的な位置決めを行いながら
部材同士を接合することで、ヘッド本体20が一体的に形成される。
【0036】
このようなヘッド本体20のノズルプレート27のノズル開口26が開口する液体噴射
面27a側には、固定板であるカバーヘッド70が固定されている。
【0037】
カバーヘッド70は、矩形状の板状部材の縁部をヘッド本体20の側面側に屈曲して立
ち上げた箱形状を有し、その底面が液体噴射面27aであるノズルプレート27の表面に
接着剤80を介して接合されている。
【0038】
具体的には、カバーヘッド70は、ノズル開口26を露出する矩形状に開口する露出開
口部71と、露出開口部71を画成すると共に液体噴射面であるノズルプレート27の周
縁部に沿って設けられた矩形状の枠部72と、を具備する。また、カバーヘッド70には
、ヘッド本体20の液体噴射面27aの側面側に、液体噴射面27aの外周縁部に亘って
屈曲するように延設された側壁部73が設けられている。
【0039】
枠部72は、その外周が液体噴射面27aであるノズルプレート27の外周よりも大き
く、内周、すなわち、枠部72によって画成された露出開口部71がノズルプレート27
の外周よりも小さい大きさを有する。これにより、枠部72は、ノズルプレート27の外
周縁部に相対向して、ノズルプレート27の周縁部と接着剤80を介して接着される。ま
た、枠部72は、ヘッド本体20の位置決め穴52を塞ぐ大きさで、位置決め穴52を塞
ぐ位置に設けられている。すなわち、ノズルプレート27の表面(液体噴射面27a)に
は、長手方向の両端部の一対の角部に2つの位置決め穴52が開口しているため、枠部7
2は、この位置決め穴52を塞ぐ幅で設けられている。
【0040】
このような枠部72は、液体噴射面27aから庇状に突出する庇部74を有する。本実
施形態では、液体噴射面の短手方向の一側面(長辺の1つ)の枠部72をヘッド本体20
とは反対側に延設することで、庇部74を形成した。なお、枠部72は、実際には、液体
噴射面の2つの長辺及び2つの短辺の計4辺において、全て液体噴射面27aから庇状に
突出して設けられている。しかしながら、庇部74以外の3辺では、枠部72の突出量は
できるだけ小さくするのが好ましい。これは、枠部72の液体噴射面27aからの突出量
が大きいと、突出した領域で枠部72の剛性が低下して、紙ジャムなどによって変形した
り、カバーヘッド70が変形によって剥離してしまうなどの不具合が発生する虞があるか
らである。また、ヘッド10自体の表面積も大きくなり、互いに隣り合うヘッド10の間
でのノズル開口26の間隔が広くなってしまう。このため、庇部74以外の枠部72は、
液体噴射面27aからの突出量を小さくし、庇部74は、その他の枠部72に比べて液体
噴射面27aからの突出量を大きくしている。ちなみに、庇部74の突出量は、後述する
ヘッド本体20の側面に設けられる接着剤81がヘッド位置決め穴75にかからないよう
に、ヘッド位置決め穴75が設けられる大きさである必要がある。
【0041】
そして、この庇部74には、長手方向に沿って2つのヘッド位置決め穴75が設けられ
ている。すなわち、ヘッド位置決め穴75は、ヘッド本体20の液体噴射面27aに相対
向しない領域に設けられている。つまり、本実施形態では、カバーヘッド70に、液体噴
射面27aに相対向しない位置にヘッド位置決め穴75を設けるために、枠部72を拡幅
した庇部74を設けている。このようなヘッド位置決め穴75は、詳しくは後述するが、
ヘッド10を保持部材60に保持させる際に位置決めに用いられるものである。このため
、2つのヘッド位置決め穴75は、なるべく距離を離した方が位置決め精度が高くなるた
め、庇部74を液体噴射面27aの長辺側に設け、庇部74の液体噴射面27aにおける
長手方向(第1方向Y)に離れた位置に2つのヘッド位置決め穴75を設けた。ちなみに
、庇部74を長手方向の一端部側(短辺)に設けると、2つのヘッド位置決め穴75を短
手方向にしか離せなくなり、2つの位置決め穴75の距離が狭くなるため、位置決め精度
は低下してしまう。
【0042】
なお、本実施形態では、2つのヘッド位置決め穴75を単穴で形成したが、特にこれに
限定されず、例えば、単穴と、長穴(液体噴射面27aの長手方向に長軸となる長穴)と
、を設けるようにしてもよい。これにより、ヘッド10の位置決めを2つのピン(後述す
る第1位置決めピン102やヘッド位置決めピン64)によって位置決めする際に、誤差
があったとしても容易に位置決めすることができる。
【0043】
このようなカバーヘッド70は、上述のように枠部72が液体噴射面27aに接着剤8
0を介して接着される。また、本実施形態では、カバーヘッド70とヘッド本体20の側
面とで画成される角部に亘って接着剤81を設けるようにした。この接着剤81は、液体
噴射面27aに付着したインクが、接着剤80の界面等を通過してヘッド本体20の側面
側に回りこむのを確実に抑制して、ヘッド本体20のインクによる破壊を抑制するための
ものである。なお、上述したヘッド位置決め穴75は、接着剤81が設けられる領域の外
側に配置する必要がある。ヘッド位置決め穴75から接着剤81が液体噴射面27a側に
流出すると、流出した接着剤81が異物となって、ゴムブレードによるワイピング時や印
刷中などの予期せぬタイミングで落下して、被記録媒体を汚してしまうなどの不具合が発
生する。また、ヘッド位置決め穴75が接着剤81によって埋まると、保持部材60にヘ
ッド10を位置決めする際の位置決めを行えない。
【0044】
このようなヘッド本体20とカバーヘッド70とで構成されるヘッド10では、ヘッド
本体20の各部材を位置決めする際に用いた位置決め穴52の液体噴射面27a側の開口
が、カバーヘッド70によって塞がれる。このため、液体噴射面27aに付着したインク
が、位置決め穴52を介してヘッド本体20の内部に侵入するのを抑制して、侵入したイ
ンクによってヘッド本体20が破壊されるのを抑制することができる。また、このような
ヘッド10では、カバーヘッド70がヘッド本体20の位置決め穴52を塞いでも、カバ
ーヘッド70にヘッド位置決め穴75が設けられているため、ヘッド10を保持部材60
に位置決めする際に、高額なアライメント装置を用いることなく、ヘッド位置決め穴75
を用いて位置決めすることができる。このため、ヘッドユニット1の製造コストを低減す
ることができる。
【0045】
ここで、このようなヘッド10の製造方法、特にヘッド本体20とカバーヘッド70と
の組み立て方法について説明する。なお、図6は、インクジェット式記録ヘッドの製造方
法を示す断面図である。
【0046】
本実施形態のヘッド10の組み立てには、図6(a)に示す位置決め治具100が用い
られる。ここで、位置決め治具100は、ベース部材101と、ベース部材101に設け
られた第1位置決めピン102と、ベース部材101に設けられた第2位置決めピン10
3と、を具備する。
【0047】
ベース部材101は、例えば、ステンレス等の金属からなる板状部材からなり、少なく
とも一方面は高精度な平坦面で形成されている。
【0048】
第1位置決めピン102は、基端部がベース部材101の平坦面に固定されて平坦面に
対して垂直に保持された棒状部材からなる。このような第1位置決めピン102は、ヘッ
ド本体20の位置決め穴52に挿入される外径を有するものであり、位置決め穴52の数
に合わせて2本設けられている。
【0049】
また、第1位置決めピン102は、ベース部材101の平坦面からヘッド本体20の位
置決め穴52の長さよりも短く突出して設けられている。これにより、第1位置決めピン
102をヘッド本体20の位置決め穴52に挿通させて、ヘッド本体20をベース部材1
01の平坦面上に載置させた状態では、ヘッド本体20の上面(液体噴射面27a)から
第1位置決めピン102が突出することがない。なお、2本の第1位置決めピン102は
、その間隔が位置決め穴52と同じ間隔となるように配置されている。また、第1位置決
めピン102には、ヘッド本体20のヘッドケース49側から挿入される。したがって、
第1位置決めピン102は、ノズルプレート27の表面である液体噴射面27aから突出
しない長さで設けられている。
【0050】
第2位置決めピン103は、基端部がベース部材101の平坦面に固定されて平坦面に
対して垂直に保持された棒状部材からなる。このような第2位置決めピン103は、カバ
ーヘッド70のヘッド位置決め穴75に挿入される外径を有し、ヘッド位置決め穴75の
数に合わせて2本設けられている。
【0051】
また、第2位置決めピン103は、ベース部材101の平坦面からヘッド本体20の厚
さ(位置決め穴52の長さ)よりも長く突出して設けられている。これにより、ヘッド本
体20の液体噴射面27aに載置したカバーヘッド70の位置決め穴75に第2位置決め
ピン103の先端を挿通させることができる。
【0052】
そして、これら第1位置決めピン102と第2位置決めピン103とは、所定の位置で
位置決めされて設けられている。ここで、ヘッド本体20の位置決め穴52は、ノズル開
口26の位置に対して所定の位置に位置決めされたものである。このため、ノズル開口2
6の位置と、カバーヘッド70のヘッド位置決め穴75とが、所定位置となるように、位
置決め穴52に挿入される第1位置決めピン102と、ヘッド位置決め穴75に挿入され
る第2位置決めピン103とを配置しておけばよい。このような位置決め治具100を用
いることで、カバーヘッド70の2つのヘッド位置決め穴75をノズル開口26に対して
所定位置となるように位置決めすることができる。
【0053】
このような位置決め治具100を用いてヘッド本体20とカバーヘッド70とを組み立
てるには、まず、図6(a)に示すように、位置決め治具100の第1位置決めピン10
2をヘッド本体20のヘッドケース49側から位置決め穴52に挿通させることで、ベー
ス部材101上にヘッド本体20を載置する。このとき用いるヘッド本体20は、当該ヘ
ッド本体20を構成する各部材(ノズルプレート27、流路形成基板21、保護基板37
、コンプライアンス基板46、ヘッドケース49等)を位置決め穴52に挿通したピンに
よって位置決めした状態で組み立てたものである。
【0054】
次に、図6(b)に示すように、位置決め治具100の第2位置決めピン103をカバ
ーヘッド70のヘッド位置決め穴75に挿通すると共に、カバーヘッド70をヘッド本体
20の液体噴射面27aに載置する。これにより、カバーヘッド70とヘッド本体20と
の相対位置を位置決めすることができる。このとき、予めカバーヘッド70の液体噴射面
27aに当接する面に接着剤80を塗布しておくことで、カバーヘッド70とヘッド本体
20との相対的な位置決めと、カバーヘッド70とヘッド本体20との接合とを同時に行
うことができる。
【0055】
このように、ヘッド本体20とカバーヘッド70とを位置決めして固定することで、ヘ
ッド本体20の位置決め穴52の液体噴射面27a側の開口は、カバーヘッド70によっ
て覆われる。すなわち、カバーヘッド70によってヘッド本体20の位置決め穴52を塞
いだ状態で、両者の位置決めを行うには、従来では、撮像手段を有する高額なアライメン
ト装置を用いて行われていた。これに対して、本実施形態では、高額なアライメント装置
を用いることなく、比較的安価な位置決め治具100を用いて、カバーヘッド70がヘッ
ド本体20の位置決め穴52を塞いだ状態でカバーヘッド70とヘッド本体20との位置
決め及び接合を容易に行うことができる。
【0056】
その後は、ヘッド本体20の側面とカバーヘッド70とで画成された角部に亘って接着
剤81を設けることで、図5に示すヘッド10が形成される。このとき、ヘッド位置決め
穴75は、カバーヘッド70の庇部74に設けられているため、接着剤81によってヘッ
ド位置決め穴75が塞がれることがない。また、カバーヘッド70の裏面(ヘッドケース
49側)からの接着剤81がヘッド位置決め穴75を介して表面に流出することがない。
これにより、無駄な接着剤が液体噴射面側で異物となることがなく、ゴムブレードによる
ワイピングや印刷中などの予期せぬタイミングで異物が落下して印刷を汚すことがなく、
さらに、保持部材60にヘッド10をヘッド位置決め穴75を用いて位置決めすることが
できる。
【0057】
そして、このように形成したヘッド10は、ヘッド位置決め穴75を用いて保持部材6
0に位置決めされて固定されることで、ヘッドユニット1が形成される。本実施形態では
、図2に示すように、保持部材60の底面に、各ヘッド10のヘッド位置決め穴75に挿
入されるヘッド位置決めピン64を設け、ヘッド位置決めピン64にヘッド10のヘッド
位置決め穴75を挿入することで、保持部材60とヘッド10との位置決めを行うと共に
、複数のヘッド10の相対的な位置決めを行うようになっている。すなわち、ヘッド位置
決めピン64は、ヘッド10のヘッド位置決め穴75を介して各ヘッド10のノズル開口
26の相対的な位置決めを行うことができるように予め配置されている。
【0058】
また、保持部材60に保持された複数のヘッド10は、図2に示すように、第1方向Y
に並設された複数(2つ)のヘッド10で構成される列は、ノズル開口26が並設された
方向(第1方向Y)とは交差する第2方向Xに並んで2列設けられている。このとき、第
2方向X(短手方向)で互いに隣り合うヘッド10は、ヘッド位置決め穴75が設けられ
た面(長辺)とは反対側の面(長辺)が相対向するように配置されている。これにより、
一方の列のヘッド10のノズル開口26と、他方の列のヘッド10のノズル開口26との
間隔を狭くすることができる。これにより、ヘッドユニット1が第2方向Xに大型化する
のを抑制して、ヘッドユニット1を小型化することができる。また、短手方向(第2方向
X)で互いに隣り合う2つのヘッド10のノズル開口26の間隔を狭くすることで、2つ
のヘッド10から吐出されるインク滴が被記録媒体に着弾するタイミングにずれが生じる
のを低減して、インク滴の被記録媒体への滲み量の違いによる色差やスジの発生を抑制し
て、印刷品質を向上することができる。
【0059】
なお、ヘッド10の保持部材60への位置決め方法は、保持部材60に設けたヘッド位
置決めピン64によるものに限定されるものではなく、例えば、上述した位置決め治具1
00と同様の治具を用いて行うこともできる。
【0060】
ここで、ヘッド位置決め治具を用いたヘッドユニット1の組み立て方法について説明す
る。なお、図7は、ヘッドユニットの製造方法を示す断面図である。
【0061】
図7(a)に示すように、ヘッド位置決め治具110は、ベース部材111と、ベース
部材111に設けられた複数の第3位置決めピン112と、を具備する。
【0062】
第3位置決めピン112は、複数のヘッド10のヘッド位置決め穴75に挿入されてヘ
ッド10の相対位置を位置決めするものである。また、第3位置決めピン112は、ヘッ
ド10の厚さよりも短い長さを有する。これにより、第3位置決めピン112は、ヘッド
10のヘッド位置決め穴75に挿入された際に、ヘッドケース49の保持部材60に接合
される面を第3位置決めピン112よりも保持部材60側に突出させて、ヘッドケース4
9を保持部材60に先に当接させることができる。
【0063】
そして、このようなヘッド位置決め治具110を用いて、ヘッドユニット1を組み立て
る際には、まず、図7(a)に示すように、ヘッド位置決め治具110の第3位置決めピ
ン112をヘッド10のヘッド位置決め穴75に挿通させて、複数のヘッド10をヘッド
位置決め治具110に保持させる。このとき、ヘッド10の液体噴射面27a側から第3
位置決めピン112をヘッド位置決め穴75に挿入する。これにより、複数のヘッド10
の相対的な位置決めが行われる。
【0064】
次に、図7(b)に示すように、保持部材60を複数のヘッド10のヘッドケース49
側に当接させて接合する。このとき、ベース部材111と保持部材60との位置決めを、
図示しない他の位置決めピン等によって行うようにしてもよい。これにより、ヘッドユニ
ット1が形成される。このように、ヘッド位置決め治具110を用いて、ヘッド10の液
体噴射面27a側をベース部材111に載置してヘッド10の相対的な位置決めを行うこ
とで、保持部材60に保持された複数のヘッド10の液体噴射面27aの高さを揃えるこ
とができ、印刷品質を向上することができる。
【0065】
もちろん、保持部材60とヘッド10との位置決め及びヘッド10の相対的な位置決め
は、従来のように、アライメントマークが設けられたガラスマスクを用いた方法や、撮像
手段を有するアライメント装置による画像処理などによって行うようにしてもよい。しか
しながら、本実施形態のように、ヘッド位置決めピン64を用いた方法や、ヘッド位置決
め治具110を用いた方法によってヘッドユニット1の組み立てを行うことで、高額なア
ライメント装置等が不要となって製造コストを低減することができる。
【0066】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの液体噴射面側の平面図であり、図9は、ヘッドユニットの平面図である。なお、
上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図8に示すように、本実施形態のカバーヘッド70Aは、液体噴射面の長手方向の両側
に庇部74Aを設け、各庇部74Aのそれぞれに1つずつヘッド位置決め穴75Aを設け
るようにした。
【0068】
このようなカバーヘッド70Aを有するヘッド10Aは、図9に示すように、保持部材
60に保持されてヘッドユニット1Aを構成する。
【0069】
このとき、上述した実施形態1のように、短手方向(第2方向X)で互いに隣り合うヘ
ッド10Aを反転させることなく、同じ向きでヘッド10Aを保持部材60に保持しても
、第2方向Xで隣り合うヘッド10Aのノズル開口26の間隔が広くなることがない。
【0070】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記
録ヘッドの分解斜視図であり、図11は、インクジェット式記録ヘッドの平面図であり、
図12は、図11のA−A′線断面図であり、図13は、図11のB−B′線断面図であ
る。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略す
る。
【0071】
図示するように、ヘッド10Bは、ヘッド本体20Aと、カバーヘッド70と、を具備
する。
【0072】
ヘッド本体20Aは、突出部49aを有するケースヘッド49Aを有する以外は、上述
した実施形態1と同様である。
【0073】
ここで、ケースヘッド49Aは、カバーヘッド70の庇部74に相対向する位置まで突
出して延設された突出部49aを有する。突出部49aは、カバーヘッド70のヘッド位
置決め穴75を避けて、ヘッド位置決め穴75以外の領域が突出して設けられている。
【0074】
このような突出部49aを設けることにより、図12に示すように、カバーヘッド70
の庇部74と、ケースヘッド49Aの突出部49aとの間に接着剤81を設けることで、
ケースヘッド49Aの突出部49aが庇部74を補強する補強部として機能する。これに
より、庇部74の変形等を抑制することができる。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに
限定されるものではない。
【0076】
例えば、上述した各実施形態のヘッド10、10A、10Bでは、1つのカバーヘッド
70、70Aに対して1つのヘッド本体20、20Aを設けるようにしたが、特にこれに
限定されず、1つのカバーヘッド70、70Aに対して2以上の複数のヘッド本体20、
20Aを設けるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態では、圧力発生室22に圧力変化を生じさせる圧力発生手段
として、薄膜型の圧電アクチュエーター30を用いて説明したが、特にこれに限定されず
、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエ
ーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の
圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発
生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から
液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振
動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなど
を使用することができる。
【0078】
また、上述した各実施形態のヘッド10、10A、10Bを有するヘッドユニット1、
1Aは、図14に示すように、複数個が固定部材に固定されて(本実施形態では例として
4個)液体噴射ヘッドモジュールの一例であるインクジェット式記録ヘッドモジュール2
00を構成する。このようなヘッドモジュール200は、液体噴射装置の一例であるイン
クジェット式記録装置に搭載される。ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置に
ついて説明する。なお、図14は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例である
インクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【0079】
図14に示すように、本実施形態のインクジェット式記録装置は、ヘッドモジュール2
00が固定されて、被噴射媒体である紙などの記録シートSを搬送することで印刷を行う
、所謂ライン式記録装置である。
【0080】
具体的には、インクジェット式記録装置Iは、装置本体2と、装置本体2に固定された
ヘッドモジュール200と、被記録媒体である記録シートSを搬送する搬送手段3と、記
録シートSのヘッドモジュール200に相対向する印刷面とは反対の裏面側を支持するプ
ラテン4とを具備する。
【0081】
ヘッドモジュール200は、ヘッド10のノズル開口26の並設方向である第1方向Y
が記録シートSの搬送方向と交差する方向となるように装置本体2に固定されている。
【0082】
搬送手段3は、ヘッドモジュール200に対して記録シートSの搬送方向の両側に設け
られた第1の搬送手段5と、第2の搬送手段6とを具備する。
【0083】
第1の搬送手段5は、駆動ローラー5aと、従動ローラー5bと、これら駆動ローラー
5a及び従動ローラー5bに巻回された搬送ベルト5cとで構成されている。また、第2
の搬送手段6は、第1の搬送手段5と同様に駆動ローラー6a、従動ローラー6b及び搬
送ベルト6cで構成されている。
【0084】
これらの第1の搬送手段5及び第2の搬送手段6のそれぞれの駆動ローラー5a、6a
には、図示しない駆動モーター等の駆動手段が接続されており、駆動手段の駆動力によっ
て搬送ベルト5c、6cが回転駆動することで、記録シートSをヘッドモジュール200
の上流及び下流側で搬送する。
【0085】
なお、本実施形態では、駆動ローラー5a、6a、従動ローラー5b、6b及び搬送ベ
ルト5c、6cで構成される第1の搬送手段5及び第2の搬送手段6を例示したが、記録
シートSを搬送ベルト5c、6c上に保持させる保持手段をさらに設けてもよい。保持手
段としては、例えば、記録シートSの外周面を帯電させる帯電手段を設け、この帯電手段
によって帯電した記録シートSを誘電分極の作用により搬送ベルト5c、6c上に吸着さ
せるようにしてもよい。また、保持手段として、搬送ベルト5c、6c上に押えローラー
を設け、押えローラーと搬送ベルト5c、6cとの間で記録シートSを挟持させるように
してもよい。
【0086】
プラテン4は、第1の搬送手段5と第2の搬送手段6との間に、ヘッドモジュール20
0に相対向して設けられた断面が矩形状を有する金属又は樹脂等からなる。プラテン4は
、第1の搬送手段5及び第2の搬送手段6によって搬送された記録シートSを、ヘッドモ
ジュール200に相対向する位置で支持する。
【0087】
なお、プラテン4には、搬送された記録シートSをプラテン4上で吸着する吸着手段が
設けられていてもよい。吸着手段としては、例えば、記録シートSを吸引することで吸引
吸着するものや、静電気力で記録シートSを静電吸着するもの等が挙げられる。
【0088】
また、ヘッドモジュール200には、図示していないが、インクが貯留されたインクタ
ンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段がインクを供給可能に接続されている。
インク貯留手段は、例えば、ヘッドモジュール200上に保持されていても、また、装置
本体2内のヘッドモジュール200とは異なる位置に保持されてチューブ等を介して各ヘ
ッドユニット1のインク供給針61に接続されていてもよい。さらに、ヘッドモジュール
200の各ヘッドユニット1には、図示しない外部配線が接続されている。
【0089】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、搬送手段5によって記録シートSが搬送
され、ヘッドモジュール200によってプラテン4上で支持された記録シートSに印刷が
実行される。印刷された記録シートSは、搬送手段3によって搬送される。
【0090】
なお、図14に示す例では、ヘッドユニット1(ヘッドモジュール200)が装置本体
2に固定されて、記録シートSを搬送するだけで印刷を行う、所謂ライン式のインクジェ
ット式記録装置Iを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、ヘッドユニット1(ヘ
ッドモジュール200)を記録シートSの搬送方向と交差する主走査方向に移動するキャ
リッジに搭載して、ヘッドユニット1(ヘッドモジュール200)を主走査方向に移動し
ながら印刷を行う、所謂シリアル型記録装置にも本発明を適用することができる。
【0091】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録
ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッドを対象としたものであり、イ
ンク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体
噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッ
ド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機E
Lディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴
射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0092】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1、1A インクジェット式記録
ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 10、10A、10B インクジェット
式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20、20A ヘッド本体、 21 流路形成基板
、 22 圧力発生室、 26 ノズル開口、 27 ノズルプレート、 27a 液体
噴射面、 30 圧電アクチュエーター、 39 マニホールド部、 40 マニホール
ド、 41 貫通孔、 44 封止膜、 45 固定板、 46 コンプライアンス基板
、 47 開口部、 48 インク導入口、 49 ヘッドケース、 50 インク導入
路、 52 位置決め穴、 60 保持部材、 70、70A カバーヘッド(固定板)
、 71 露出開口部、 72 枠部、 73 側壁部、 74、74A 庇部、 75
、75A ヘッド位置決め穴、 80、81 接着剤、 100 位置決め治具、 11
0 ヘッド位置決め治具、 200 ヘッドモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、該ヘッド本体の前記ノズル開口
が開口する液体噴射面に固定されて当該液体噴射面の前記ノズル開口を露出する露出開口
部を有する固定板と、を具備し、
前記ヘッド本体には、前記液体噴射面に開口して、前記ノズル開口に対して位置決めさ
れた位置決め穴が設けられていると共に、前記固定板は、前記位置決め穴を塞ぐように前
記液体噴射面に固定され、
前記固定板は、前記液体噴射面から庇状に突出する庇部を有すると共に、該庇部には少
なくとも2つのヘッド位置決め穴が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記庇部が、前記ヘッド本体の短手方向の一側面側に設けられており、前記ヘッド位置
決め穴が、当該庇部に長手方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載の
液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ヘッド本体には、前記液体噴射面とは反対側に設けられたケース部材が設けられて
いると共に、該ケース部材は、前記庇部の前記位置決め穴以外の領域に相対向する突出部
を有することを特徴とする請求項2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記庇部が、前記液体噴射ヘッドの長手方向の両端部に設けられていると共に、前記ヘ
ッド位置決め穴が、前記液体噴射ヘッドの長手方向の両端部に設けられた前記庇部にそれ
ぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、複数の液体噴射ヘッドの前記液
体噴射面とは反対面側を共通して保持する保持部材と、を具備することを特徴とする液体
噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の液体噴射ヘッドと、複数の液体噴射ヘッドの液体噴射面とは反
対面側を共通して保持する保持部材と、を具備し、
前記保持部材には、前記液体噴射ヘッドが短手方向に並設されていると共に、短手方向
で互いに隣り合う液体噴射ヘッドは、前記ヘッド位置決め穴が設けられた面とは反対側を
相対向して配置されていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項5又は6記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装
置。
【請求項8】
液体を噴射するノズル開口が設けられたヘッド本体と、
該ヘッド本体の前記ノズル開口が開口する液体噴射面に固定されて当該液体噴射面の前
記ノズル開口を露出する露出開口部を有する固定板と、を具備する液体噴射ヘッドの製造
方法であって、
前記ヘッド本体に設けられた厚さ方向に貫通する位置決め穴と、前記固定板の前記液体
噴射面よりも庇状に突出する庇部に設けられたヘッド位置決め穴とのそれぞれに位置決め
ピンを液体噴射面とは反対面側から挿入することで、前記ヘッド本体と前記固定板との相
対位置の位置決めを行うと共に、前記ヘッド本体の前記位置決め穴の前記液体噴射面側の
開口を前記固定板で塞ぎ、前記ヘッド本体と前記固定板とを固定することを特徴とする液
体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−96479(P2012−96479A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247147(P2010−247147)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】