液体噴射ヘッドの製造方法
【課題】製品歩留まりを向上させることのできる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体流路形成工程の後、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の一部を除去する第1保護シートの除去工程と、上記第1保護シートの除去工程の後、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する第2保護シートの貼付工程と、上記第2保護シートの貼付工程の後、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143aを用いて、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する洗浄工程と、を有するという手法を採用する。
【解決手段】液体流路形成工程の後、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の一部を除去する第1保護シートの除去工程と、上記第1保護シートの除去工程の後、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する第2保護シートの貼付工程と、上記第2保護シートの貼付工程の後、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143aを用いて、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する洗浄工程と、を有するという手法を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置としては、例えば、圧電素子や発熱素子によりインク滴吐出のための圧力を発生させる複数の圧力発生室と、各圧力発生室にインクを供給する共通のリザーバと、各圧力発生室に連通するノズル開口とを備えたインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置があり、このインクジェット式記録装置では、印字信号に対応するノズルと連通した圧力発生室内のインクに吐出エネルギーを印加してノズル開口からインクを吐出させる構成となっている。
【0003】
下記特許文献1には、インクジェット式記録ヘッドの製造方法が開示されている。この製造方法においては、流路形成基板の一方の面側に圧電素子の材料を複数成膜して圧電素子を形成した後、流路形成基板の一方の面側に配線部及びリザーバ部を有する保護基板を接合し、その後、流路形成基板を他方の面側から異方エッチング(ウェットエッチング)し、圧力発生室及び連通部を含む液体流路を形成する。
【0004】
液体流路を形成する前には、エッチング液から配線部を保護するため、当該一方の面側においてこの配線部を環状に囲うように接着層を形成し、保護シートを貼付する。この接着層及び保護シートは、耐エッチング性に優れる材料を選定して用いる。液体流路を形成した後は、当該一方の面側から保護シートを剥離するが、接着層によって強固に固着されており、物理的に除去することは難しいため、レーザーの照射により接着層及び保護シートを焼き切る等している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−167634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザー照射によっても、接着層及び保護シートを完全に除去することは難しく、また、焼き切った断片等が周囲に飛散するため、従来では、レーザー照射の後に当該一方の面を拭い取る作業が必要であった。また、当該拭い取り作業によっても、接着層の残渣等を除去しきれない場合があり、当該残渣が異物として、配線部や液体流路が形成されたチップ内に入り込むと、チップ不良を引き起こし、製品歩留まりを下げる原因となる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、製品歩留まりを向上させることのできる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ウェハに形成された配線部を環状に囲うように形成された第1接着層を介して第1保護シートを貼付する第1保護シート貼付工程と、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第1保護シートが貼付された面とは反対側の面に液体流路を形成する液体流路形成工程と、上記液体流路を形成した後に、上記第1接着層よりも内側の領域にある上記第1保護シートの少なくとも一部を除去する第1保護シート除去工程と、上記第1保護シートを除去した上記内側の領域において少なくとも上記配線部を覆うように、第2接着層を介して上記ウェハに第2保護シートを貼付する第2保護シート貼付工程と、少なくとも上記第1接着層を除去することができ、且つ上記第2接着層及び上記第2保護シートが耐液性を有する洗浄液を用いて、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第2保護シートが貼付された面を洗浄する洗浄工程と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第1接着層が形成される環状領域よりも内側の第1保護シートの一部を除去し、その除去した領域に第2接着層を介して第2保護シートを貼付し、配線部を保護する。その後、洗浄液によって一方の面側を洗浄すると、その洗浄液に対し耐液性を有する第2接着層及び第2保護シートは当該一方の面側に残り、第1接着層は除去されて第1保護シートと共に当該一方の面側から完全に剥離するため、第1接着層及び第1保護シートの残渣の発生を防止することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記第2保護シート貼付工程において、上記第1保護シート除去工程により除去されずに残り上記第1接着層の上に形成される上記第1保護シートの残部の上面をも覆うように上記第2保護シートを貼付し、上記第1保護シートの残部の上面および上記上面よりも外側に位置する上記第2保護シートを除去する第2保護シート除去工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートを第1接着層によって第1保護シートの除去残りがある環状領域を含めて貼付し、その後、環状領域よりも内側の領域から外側の第2保護シートを除去することで、第2保護シートの貼り付け作業の効率化を図る。
【0010】
また、本発明においては、上記第2保護シート除去工程において、上記第1保護シートの残部の上面および上記上面よりも外側に位置する上記第2保護シートの一部を残存させて柄部を形成するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートの除去工程の際に、第2保護シートに柄部を形成する。
【0011】
また、本発明においては、上記柄部を上記配線部側に折り曲げる柄部折曲工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、柄部を折り曲げ第1接着層及び第1保護シートが存在する環状領域から退避させることで、洗浄液による第1接着層の除去を好適に行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、上記柄部を介して上記第2保護シートを上記ウェハから剥離する第2保護シート剥離工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、洗浄工程の後、外側に展開した柄部を把持することで、第2保護シートの剥離を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明においては、上記ウェハは、上記配線部が形成された面側に配置されると共に上記液体流路と連通可能な第2の液体流路を有する第1のウェハと、上記反対側の面側に配置されると共に上記液体流路と上記第2の液体流路との間を閉塞する閉塞膜を有する第2のウェハと、が接合して形成され、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第2保護シートが貼付された面を洗浄した後に、上記開閉膜を貫通させる貫通工程を有しており、上記貫通工程のときには、上記第2保護シートを残存させているという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートを、後の開閉膜を貫通させる際に配線部を覆う保護シートとして兼用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における製造方法によって製造されたインクジェット式記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第1保護シートの貼付工程を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第1保護シートの除去工程、第2保護シートの貼付工程を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第2保護シートの除去工程及び柄部折り曲げ工程を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの洗浄工程を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの貫通工程を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの貫通工程を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第2保護シートの剥離工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法の実施形態について、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、インクジェット式記録ヘッドを例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における製造方法によって製造されたインクジェット式記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す平面図及び断面図である。
図示するように、インクジェット式記録ヘッドは、流路形成基板(第2の基板)10を有する。流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0017】
流路形成基板10には、弾性膜50が形成される一方の面側と逆側の他方の面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向に並設されている。流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、圧力発生室12と共に液体流路を構成するインク供給路14と連通路15とが、隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。
【0018】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し、且つ、圧力発生室12より小さい断面積を有する。本実施形態のインク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、本実施形態のように、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成してもよいが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。
【0019】
連通路15は、圧力発生室12の幅方向両側の隔壁11を連通部13側に延設してインク供給路14と連通部13との間の空間を区画することで形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12の幅方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の幅方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが、複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0020】
流路形成基板10の圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を有する液体流路に臨む内壁表面(壁面部)には、耐インク性を有する材料、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)等の酸化タンタルからなる保護膜16が設けられている。なお、ここで言う耐インク性とは、アルカリ性のインクに対する耐エッチング性のことである。また、本実施形態では、流路形成基板10の圧力発生室12等が開口する側の表面、すなわち、ノズルプレート20が接合される接合面にも保護膜16が設けられている。勿論、このような領域には、インクが実質的に接触しないため、保護膜16は設けられていなくてもよい。
【0021】
なお、保護膜16の材料は、酸化タンタルに限定されず、使用するインクのpH値によっては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いてもよい。
流路形成基板10の他方の面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0022】
流路形成基板10の一方の面側には、上述したように二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなる絶縁体膜51が積層形成されている。また、絶縁体膜51上には、下電極膜60と圧電体層70と上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。
【0023】
ここで、圧電素子300とは、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を、各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
【0024】
また、各圧電素子300の上電極膜80には、密着層91及び金属層92からなる配線層190で構成されるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。また、詳しくは後述するが、連通部13の開口周縁部に対応する領域の振動板、すなわち、弾性膜50及び絶縁体膜51上にも、リード電極90とは不連続の配線層190が存在している。
【0025】
流路形成基板10の一方の面側には、リザーバ100の一部を構成するリザーバ部(第2の液体流路)31を有するリザーバ形成基板(第1の基板)30が接合されている。本実施形態では、このリザーバ形成基板30と流路形成基板10とは、接着剤35によって接合されている。リザーバ形成基板30のリザーバ部31は、弾性膜50及び絶縁体膜51に設けられた貫通部52を介して連通部13と連通され、これらリザーバ部31及び連通部13によってリザーバ100が形成されている。
【0026】
リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子300は、圧電素子保持部32内に形成されており、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部32は、密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。このようなリザーバ形成基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料であるシリコン単結晶基板を用いている。
【0027】
リザーバ形成基板30上には、所定パターンで形成された接続配線(配線部)200が設けられ、この接続配線200上には圧電素子300を駆動するための駆動回路210が実装されている。駆動回路210としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、各圧電素子300から圧電素子保持部32の外側まで引き出された各リード電極90の先端部と、駆動回路210とが駆動配線220を介して電気的に接続されている。
【0028】
リザーバ形成基板30上には、リザーバ部31に対向する領域に、例えば、PPSフィルム等の可撓性を有する材料からなる封止膜41及び、金属材料等の硬質材料からなる固定板42とで構成されるコンプライアンス基板40が接合されている。固定板42のリザーバ部31に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ部31の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0029】
上記構成のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路210からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力を高め、ノズル開口21からインクを吐出させることが可能となっている。
【0030】
以下、上記構成のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図12を参照して説明する。
【0031】
まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ(第2のウェハ)110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜53を形成する。
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜51を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜51を形成する。
【0032】
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶縁体膜51上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。
次に、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成し、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。また、圧電素子300を形成後に、絶縁体膜51及び弾性膜50をパターニングして、流路形成基板用ウェハ110の連通部(図示なし)が形成される領域に、これら絶縁体膜51及び弾性膜50を貫通して流路形成基板用ウェハ110の表面を露出させた貫通部52を形成する。
【0033】
なお、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/2Ta1/2)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成する。
【0034】
次に、図4(a)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、まず流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って密着層91を介して金属層92を形成し、密着層91と金属層92とからなる配線層190を形成する。そして、この配線層190上に、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を形成し、このマスクパターンを介して金属層92及び密着層91を圧電素子300毎にパターニングすることによりリード電極90を形成する。またこのとき、貫通部52に対向する領域に、リード電極90とは不連続の配線層(閉塞膜)190を残して、この配線層190によって貫通部52が封止されるようにする。
【0035】
金属層92の主材料としては、比較的導電性の高い材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)が挙げられ、本実施形態では金(Au)を用いている。また、密着層91の材料としては、金属層92の密着性を確保できる材料であればよく、具体的には、チタン(Ti)、チタンタングステン化合物(TiW)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)またはニッケルクロム化合物(NiCr)等が挙げられ、本実施形態ではニッケルクロム化合物(NiCr)を用いている。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、リザーバ形成基板用ウェハ(第1のウェハ)130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤35によって接着する。ここで、このリザーバ形成基板用ウェハ130には、リザーバ部31、圧電素子保持部32等が予め形成されており、リザーバ形成基板用ウェハ130上には、上述した接続配線200が予め形成されている。
次いで、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研削・研磨した後、フッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにし、シリコン(Si)を露出させる。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜54を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図5(b)に示すように、このマスク膜54を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)して、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13からなる液体流路を形成する(液体流路形成工程)。具体的には、流路形成基板用ウェハ110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等のエッチング液によって弾性膜50及び密着層91が露出するまでエッチングすることより、圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を同時に形成する。
【0038】
次に、図5(c)に示すように、貫通部52内の配線層190の一部である密着層91を、連通部13側からウェットエッチング(ライトエッチング)することにより除去する。すなわち、連通部13側に露出されている密着層91と、この密着層91が拡散している金属層92の一部の領域とを、エッチングにより除去する。これにより、後の工程で、配線層190の金属層92と、その上に化学気相成長法(以下、CVD法と称する)よって形成される保護膜16との密着力が弱められ、金属層92上の保護膜16が剥離し易くなる。
【0039】
上記液体流路形成工程の前には、図6(a)及び図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110とリザーバ形成基板用ウェハ130とを接合した基板構造体(ウェハ)101のうち、リザーバ形成基板用ウェハ130側(一方の面側)における有効エリア(インクジェット式記録ヘッドのチップ102が形成されるエリア)に、第1保護シート103を貼付する(第1保護シートの貼付工程)。基板構造体101は、円周の一部を直線状に切り欠いたオリエンテーションフラット部(以下、オリフラ部101aと称する)を有する。また、リザーバ形成基板用ウェハ130側におけるチップ102のそれぞれには、接続配線200等が形成されている(図6において不図示)。
【0040】
第1保護シート103は、リザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200(チップ102)を一括で環状に囲う環状領域104に沿って形成された第1接着層105を介して貼付されている。第1保護シート103としては、耐アルカリ性を有する材料、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等を用いることができる。また、第1接着層105としては、同じく耐アルカリ性を有する材料、エポキシ系接着剤等を用いることができる。
これにより、液体流路形成工程において、リザーバ形成基板用ウェハ130に形成された接続配線200を、強アルカリのエッチング液(KOH)から保護することができる。
【0041】
上記液体流路形成工程の後は、基板構造体101をSC2洗浄し、次に、リン酸等でマスク膜54を除去する。
次いで、図7(a)に示すように、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の少なくとも一部を除去する(第1保護シート除去工程)。本実施形態の第1保護シートの除去工程では、例えば、環状領域104の内側に沿ってカッター等の刃先を入れて第1保護シート103を略円形に切除する。
【0042】
次に、図7(b)及び図7(c)に示すように、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する(第2保護シート貼付工程)。
先ず、図7(b)に示すように、第1接着層105及び第1保護シート103の残部が残存する環状領域104を含む領域、すなわちリザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200を含む領域に第2保護シート106を貼付する。このように、第1保護シート103の除去残りがある環状領域104を含めて第2保護シート106を貼付することで、シート位置決め等の煩わしさをなくし、第2保護シート106の貼り付け作業の効率化を図ることができる。
【0043】
第2保護シート106は、基材がポリエステルからなり、当該基材の一方の面に第2接着層107を有している。第2接着層107は、アクリル系接着剤から形成されている。本実施形態の第2保護シート106としては、180℃の耐熱性のポリエステルフィルムを基材とし、その一方の面にセパレーターを介してアクリル接着層を形成したテープ、より詳しくは、三井化学株式会社製のイクロステープ(商品名)を用いることができる。
【0044】
リザーバ形成基板用ウェハ130側には、不図示の凹凸(例えば、接続配線200等)が形成されており、当該凹凸に空気が入り込み易い。そこで、第2保護シートの貼付工程では、不図示のヒーター等で基板構造体101を加熱することで、リザーバ形成基板用ウェハ130側に触れている第2接着層107を間接加熱により溶融させる。これにより、第2接着層107及び第2保護シート106を当該凹凸に沿って密に溶着させ、空気の入り込みを抑制する。
【0045】
次に、図7(c)に示すように、第2保護シート106を貼付した後、環状領域104よりも内側の領域から外側の第2保護シート106を除去する(第2保護シート除去工程)。本実施形態の第2保護シートの除去工程では、例えば、環状領域104の内側に沿ってカッター等の刃先を入れて第2保護シート106を略円環状に切除する。環状領域104における第2保護シート106は、上記接着の際に、樹脂製で熱伝導性の低い第1接着層105及び第1保護シート103によって部分的に間接加熱され難くなっており、実質的に接着されてないため、容易に除去することができる。
【0046】
この第2保護シートの除去工程では、図8(a)に示すように、環状領域104よりも内側の領域から外側の第2保護シート106の一部を残存させて柄部108を形成する。これにより、後の工程において第2保護シート106の剥離を容易に行うことができる。なお、柄部108の形成位置は、第2保護シート106の剥離性の観点から、基板構造体101のオリフラ部101aに対応する位置を避けた位置に形成することが好ましい。
次いで、図8(b)に示すように、形成した柄部108を、環状領域104よりも内側に折り曲げる(柄部折曲工程)。すなわち、環状領域104に残存する第1接着層105及び第1保護シート103に柄部108が載らないようにする。
【0047】
次に、図9に示すように、洗浄装置140を用いて基板構造体101のリザーバ形成基板用ウェハ130側の洗浄を行うと共に、第1接着層105及び第1保護シート103の除去を行う(洗浄工程)。
洗浄装置140は、回転テーブル141上に基板構造体101を保持させ、この回転テーブル141を所定の回転数で回転させながら洗浄を行う、所謂スピン洗浄によって、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する構成となっている。洗浄装置140は、リザーバ形成基板用ウェハ130の中央に向けて配置されたノズル142,143を有する。
【0048】
ノズル142,143は、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143bを供給する。本実施形態では、洗浄液142aとしてオゾン水(O3)を、洗浄液143aとしてフッ酸溶液(HF)を、以上の条件を満たす洗浄液として用いることができる。なお、少なくとも第1接着層105を除去すれば、第1保護シート103も共に剥離するため、必ずしも第1保護シート103を除去する必要はない。
【0049】
ここで、第1接着層105を除去することができるとは、第1接着層105が洗浄液142a,143bに溶解する溶解性のこと、または、第1接着層105のウェハ界面における接着性が洗浄液142a,143bの液浸による劣化・膨潤により低下して剥離しやすくなること、等を意味する。
また、耐液性とは、洗浄液142a,143bに溶解し難く、実質的に溶解しない耐溶解性のこと、または、洗浄液142a,143bによって本来の機能(接着性やシール性)を発揮し得ない状態となることを阻止できる耐性のこと、等を意味する。
【0050】
洗浄液142a,143bは、リザーバ形成基板用ウェハ130の中央から回転テーブル141の回転による遠心力によって外縁まで広がり、リザーバ形成基板用ウェハ130側を全面に亘って洗浄する。洗浄液142a,143bによってリザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄すると、その洗浄液142a,143bに対し第1接着層105(エポキシ接着層)は除去され、第1保護シート103と共に当該リザーバ形成基板用ウェハ130側から剥離する。このように、第1接着層105及び第1保護シート103を化学的に除去することで、残渣の発生が確実に抑制される。また、前工程において、柄部108を折り曲げ、環状領域104から退避させることで、柄部108が第1接着層105及び第1保護シート103に被ることなく、洗浄液142a,143bによる第1接着層105の除去を好適に行うことができる。
【0051】
一方、洗浄液142a,143bは、リザーバ形成基板用ウェハ130側に形成されている不図示の接続配線200にダメージを与える虞がある。しかし、洗浄液142a,143bに対し耐液性を有する第2接着層(アクリル接着層)及び第2保護シート(ポリエステルフィルム)は、当該洗浄によってもリザーバ形成基板用ウェハ130側に残り、環状領域104よりも内側の領域は、第2保護シート106によって覆われることとなり、結果、洗浄液142a,143bから接続配線200を保護することができる。このため、接続配線200にダメージを与えることなく、外縁部に残存する第1接着層105及び第1保護シート103のみの除去を行うことができる。
【0052】
次に、図10(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の液体流路、すなわち、圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13の内壁面に保護膜16を形成する。
保護膜16は、上述したように、例えば、酸化物又は窒化物等の耐液体性(耐インク性)を有する材料からなり、本実施形態では、五酸化タンタルからなる。また、保護膜16は、例えばCVD法によって形成する。
【0053】
なお、貫通部52は配線層190によって封止されているため、貫通部52を介してリザーバ形成基板用ウェハ130の外面等に保護膜16が形成されることはない。このため、接続配線200等が形成されたリザーバ形成基板用ウェハ130の表面に保護膜16が形成されて駆動回路210などの接続不良等が発生するのを防止することができる。
【0054】
次に、図10(b)に示すように、保護膜16上に、保護膜16とはエッチングの選択性を有する材料からなる剥離層17を、例えばスパッタ法によって形成する。ここで、保護膜16とはエッチングの選択性を有する材料とは、その材料をウェットエッチングするためのエッチング液によって保護膜16がエッチングされ難く、実質的にエッチングされない材料のことをいう。また、剥離層17は、その内部応力が圧縮応力であることが好ましく、保護膜16との密着力が、保護膜16と配線層190との密着力よりも大きな材料を用いるのが好ましい。本実施形態では、剥離層17の材料として、以上の条件を満たすチタンタングステン化合物(TiW)を用いている。
【0055】
次に、図11(a)に示すように、この剥離層17をウェットエッチングによって完全に除去すると同時に、配線層190上の保護膜16を選択的に除去する。ここで、保護膜16の金(Au)からなる金属層92との密着力は、保護膜16の二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜50との密着力よりも弱く、剥離層17の内部応力が圧縮応力であるため、保護膜16上に剥離層17を形成することで、剥離層17の内部応力によって保護膜16は配線層190からある程度剥離された状態となる。この状態で、剥離層17をウェットエッチングによって除去することで、配線層190上の保護膜16も同時に選択的に除去される。
【0056】
このように配線層190上の保護膜16を除去した後は、図11(b)に示すように、配線層190(金属層92)を連通部13側からウェットエッチングすることによって除去して貫通部52を開口させる。このとき配線層190上には保護膜16が形成されていないため、保護膜16が配線層190のウェットエッチングを邪魔することはない。したがって、配線層190を容易且つ確実にウェットエッチングにより除去して貫通部52を開口させることができる。以上により、配線層190を貫通させる貫通工程が終了する。
【0057】
第2保護シート106は、当該貫通工程の後に剥離させ、当該貫通工程のときには、第2保護シート106を残存させる。これにより、第2保護シート106を、保護膜16を形成する際の原料ガスから接続配線200を保護する保護シートとしてだけでなく、剥離層17を形成する際のスパッタから接続配線200を保護し、さらに、剥離層17及び配線層190をウェットエッチングするエッチング液から接続配線200を保護する保護シートとして兼用させることができる。
【0058】
第2保護シートの剥離工程では、先ず、図12(a)に示すように、折り曲げられた柄部108を、環状領域104よりも内側の領域から外側に展開させる。その後、図12(b)に示すように、当該展開させた柄部108を吸着パッド109で把持し、第2保護シート106を第2接着層107と共にリザーバ形成基板用ウェハ130側から剥離する。このように、前工程において予め柄部108を形成することで、第2保護シート106の剥離を容易に行うことができる。
【0059】
その後は、リザーバ形成基板用ウェハ130に形成されている接続配線200上に駆動回路210を実装すると共に、駆動回路210とリード電極90とを駆動配線220によって接続する。次いで、流路形成基板用ウェハ110及びリザーバ形成基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110のリザーバ形成基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、リザーバ形成基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を、図1に示すような一つのチップサイズに分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
【0060】
したがって、上述した本実施形態によれば、リザーバ形成基板用ウェハ130側に接続配線200が形成されている基板構造体101の流路形成基板用ウェハ110側にウェットエッチング法によって液体流路を形成する液体流路形成工程と、上記液体流路形成工程の前に、リザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200を環状に囲う環状領域104に沿って形成した第1接着層105を介して第1保護シート103を貼付する第1保護シートの貼付工程と、を有するインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、上記液体流路形成工程の後、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の一部を除去する第1保護シートの除去工程と、上記第1保護シートの除去工程の後、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する第2保護シートの貼付工程と、上記第2保護シートの貼付工程の後、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143aを用いて、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する洗浄工程と、を有するという手法を採用することによって、第1接着層105及び第1保護シート103を完全に除去可能であるため、チップ不良の原因となった第1接着層105等の残渣は発生せず、製品歩留まりが向上する。また、従来のCO2レーザー照射工程及び、ウェハ外周拭い取り工程が無くなり、工数低減が可能となる。また、第2保護シート106を貼り付けたままでの貫通工程(チタタンエッチング及び金エッチング等)を実施することによって、さらなる工数削減と歩留まり向上を図ることができる。
【0061】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
10…流路形成基板(第2の基板)、30…リザーバ形成基板(第1の基板)、31…リザーバ部(第2の流路)、101…基板構造体(ウェハ)、103…第1保護シート、104…環状領域、105…第1接着層、106…第2保護シート、107…第2接着層、108…柄部、110…流路形成基板用ウェハ(第2のウェハ、他方の面側)、130…リザーバ形成基板用ウェハ(第1のウェハ、一方の面側)、142a,143a…洗浄液、190…配線層(閉塞膜)、200…接続配線(配線部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置としては、例えば、圧電素子や発熱素子によりインク滴吐出のための圧力を発生させる複数の圧力発生室と、各圧力発生室にインクを供給する共通のリザーバと、各圧力発生室に連通するノズル開口とを備えたインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置があり、このインクジェット式記録装置では、印字信号に対応するノズルと連通した圧力発生室内のインクに吐出エネルギーを印加してノズル開口からインクを吐出させる構成となっている。
【0003】
下記特許文献1には、インクジェット式記録ヘッドの製造方法が開示されている。この製造方法においては、流路形成基板の一方の面側に圧電素子の材料を複数成膜して圧電素子を形成した後、流路形成基板の一方の面側に配線部及びリザーバ部を有する保護基板を接合し、その後、流路形成基板を他方の面側から異方エッチング(ウェットエッチング)し、圧力発生室及び連通部を含む液体流路を形成する。
【0004】
液体流路を形成する前には、エッチング液から配線部を保護するため、当該一方の面側においてこの配線部を環状に囲うように接着層を形成し、保護シートを貼付する。この接着層及び保護シートは、耐エッチング性に優れる材料を選定して用いる。液体流路を形成した後は、当該一方の面側から保護シートを剥離するが、接着層によって強固に固着されており、物理的に除去することは難しいため、レーザーの照射により接着層及び保護シートを焼き切る等している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−167634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザー照射によっても、接着層及び保護シートを完全に除去することは難しく、また、焼き切った断片等が周囲に飛散するため、従来では、レーザー照射の後に当該一方の面を拭い取る作業が必要であった。また、当該拭い取り作業によっても、接着層の残渣等を除去しきれない場合があり、当該残渣が異物として、配線部や液体流路が形成されたチップ内に入り込むと、チップ不良を引き起こし、製品歩留まりを下げる原因となる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、製品歩留まりを向上させることのできる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、ウェハに形成された配線部を環状に囲うように形成された第1接着層を介して第1保護シートを貼付する第1保護シート貼付工程と、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第1保護シートが貼付された面とは反対側の面に液体流路を形成する液体流路形成工程と、上記液体流路を形成した後に、上記第1接着層よりも内側の領域にある上記第1保護シートの少なくとも一部を除去する第1保護シート除去工程と、上記第1保護シートを除去した上記内側の領域において少なくとも上記配線部を覆うように、第2接着層を介して上記ウェハに第2保護シートを貼付する第2保護シート貼付工程と、少なくとも上記第1接着層を除去することができ、且つ上記第2接着層及び上記第2保護シートが耐液性を有する洗浄液を用いて、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第2保護シートが貼付された面を洗浄する洗浄工程と、を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第1接着層が形成される環状領域よりも内側の第1保護シートの一部を除去し、その除去した領域に第2接着層を介して第2保護シートを貼付し、配線部を保護する。その後、洗浄液によって一方の面側を洗浄すると、その洗浄液に対し耐液性を有する第2接着層及び第2保護シートは当該一方の面側に残り、第1接着層は除去されて第1保護シートと共に当該一方の面側から完全に剥離するため、第1接着層及び第1保護シートの残渣の発生を防止することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記第2保護シート貼付工程において、上記第1保護シート除去工程により除去されずに残り上記第1接着層の上に形成される上記第1保護シートの残部の上面をも覆うように上記第2保護シートを貼付し、上記第1保護シートの残部の上面および上記上面よりも外側に位置する上記第2保護シートを除去する第2保護シート除去工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートを第1接着層によって第1保護シートの除去残りがある環状領域を含めて貼付し、その後、環状領域よりも内側の領域から外側の第2保護シートを除去することで、第2保護シートの貼り付け作業の効率化を図る。
【0010】
また、本発明においては、上記第2保護シート除去工程において、上記第1保護シートの残部の上面および上記上面よりも外側に位置する上記第2保護シートの一部を残存させて柄部を形成するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートの除去工程の際に、第2保護シートに柄部を形成する。
【0011】
また、本発明においては、上記柄部を上記配線部側に折り曲げる柄部折曲工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、柄部を折り曲げ第1接着層及び第1保護シートが存在する環状領域から退避させることで、洗浄液による第1接着層の除去を好適に行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、上記柄部を介して上記第2保護シートを上記ウェハから剥離する第2保護シート剥離工程を有するという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、洗浄工程の後、外側に展開した柄部を把持することで、第2保護シートの剥離を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明においては、上記ウェハは、上記配線部が形成された面側に配置されると共に上記液体流路と連通可能な第2の液体流路を有する第1のウェハと、上記反対側の面側に配置されると共に上記液体流路と上記第2の液体流路との間を閉塞する閉塞膜を有する第2のウェハと、が接合して形成され、上記ウェハの上記配線部が形成され上記第2保護シートが貼付された面を洗浄した後に、上記開閉膜を貫通させる貫通工程を有しており、上記貫通工程のときには、上記第2保護シートを残存させているという手法を採用する。
このような手法を採用することによって、本発明では、第2保護シートを、後の開閉膜を貫通させる際に配線部を覆う保護シートとして兼用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における製造方法によって製造されたインクジェット式記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第1保護シートの貼付工程を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第1保護シートの除去工程、第2保護シートの貼付工程を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第2保護シートの除去工程及び柄部折り曲げ工程を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの洗浄工程を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの貫通工程を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの貫通工程を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの製造工程のうちの第2保護シートの剥離工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法の実施形態について、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る液体噴射ヘッドとして、インクジェット式記録ヘッドを例示する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における製造方法によって製造されたインクジェット式記録ヘッドの構成を示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態におけるインクジェット式記録ヘッドの構成を示す平面図及び断面図である。
図示するように、インクジェット式記録ヘッドは、流路形成基板(第2の基板)10を有する。流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0017】
流路形成基板10には、弾性膜50が形成される一方の面側と逆側の他方の面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12がその幅方向に並設されている。流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、圧力発生室12と共に液体流路を構成するインク供給路14と連通路15とが、隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。
【0018】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し、且つ、圧力発生室12より小さい断面積を有する。本実施形態のインク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、本実施形態のように、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成してもよいが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路14を形成してもよい。
【0019】
連通路15は、圧力発生室12の幅方向両側の隔壁11を連通部13側に延設してインク供給路14と連通部13との間の空間を区画することで形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12の幅方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の幅方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とが、複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0020】
流路形成基板10の圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を有する液体流路に臨む内壁表面(壁面部)には、耐インク性を有する材料、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)等の酸化タンタルからなる保護膜16が設けられている。なお、ここで言う耐インク性とは、アルカリ性のインクに対する耐エッチング性のことである。また、本実施形態では、流路形成基板10の圧力発生室12等が開口する側の表面、すなわち、ノズルプレート20が接合される接合面にも保護膜16が設けられている。勿論、このような領域には、インクが実質的に接触しないため、保護膜16は設けられていなくてもよい。
【0021】
なお、保護膜16の材料は、酸化タンタルに限定されず、使用するインクのpH値によっては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いてもよい。
流路形成基板10の他方の面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0022】
流路形成基板10の一方の面側には、上述したように二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなる絶縁体膜51が積層形成されている。また、絶縁体膜51上には、下電極膜60と圧電体層70と上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。
【0023】
ここで、圧電素子300とは、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を、各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
【0024】
また、各圧電素子300の上電極膜80には、密着層91及び金属層92からなる配線層190で構成されるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。また、詳しくは後述するが、連通部13の開口周縁部に対応する領域の振動板、すなわち、弾性膜50及び絶縁体膜51上にも、リード電極90とは不連続の配線層190が存在している。
【0025】
流路形成基板10の一方の面側には、リザーバ100の一部を構成するリザーバ部(第2の液体流路)31を有するリザーバ形成基板(第1の基板)30が接合されている。本実施形態では、このリザーバ形成基板30と流路形成基板10とは、接着剤35によって接合されている。リザーバ形成基板30のリザーバ部31は、弾性膜50及び絶縁体膜51に設けられた貫通部52を介して連通部13と連通され、これらリザーバ部31及び連通部13によってリザーバ100が形成されている。
【0026】
リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子300は、圧電素子保持部32内に形成されており、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部32は、密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。このようなリザーバ形成基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料であるシリコン単結晶基板を用いている。
【0027】
リザーバ形成基板30上には、所定パターンで形成された接続配線(配線部)200が設けられ、この接続配線200上には圧電素子300を駆動するための駆動回路210が実装されている。駆動回路210としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、各圧電素子300から圧電素子保持部32の外側まで引き出された各リード電極90の先端部と、駆動回路210とが駆動配線220を介して電気的に接続されている。
【0028】
リザーバ形成基板30上には、リザーバ部31に対向する領域に、例えば、PPSフィルム等の可撓性を有する材料からなる封止膜41及び、金属材料等の硬質材料からなる固定板42とで構成されるコンプライアンス基板40が接合されている。固定板42のリザーバ部31に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ部31の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0029】
上記構成のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路210からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力を高め、ノズル開口21からインクを吐出させることが可能となっている。
【0030】
以下、上記構成のインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図12を参照して説明する。
【0031】
まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ(第2のウェハ)110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜53を形成する。
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜51を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜53)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜51を形成する。
【0032】
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶縁体膜51上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。
次に、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成し、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。また、圧電素子300を形成後に、絶縁体膜51及び弾性膜50をパターニングして、流路形成基板用ウェハ110の連通部(図示なし)が形成される領域に、これら絶縁体膜51及び弾性膜50を貫通して流路形成基板用ウェハ110の表面を露出させた貫通部52を形成する。
【0033】
なお、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/2Ta1/2)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成する。
【0034】
次に、図4(a)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、まず流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って密着層91を介して金属層92を形成し、密着層91と金属層92とからなる配線層190を形成する。そして、この配線層190上に、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を形成し、このマスクパターンを介して金属層92及び密着層91を圧電素子300毎にパターニングすることによりリード電極90を形成する。またこのとき、貫通部52に対向する領域に、リード電極90とは不連続の配線層(閉塞膜)190を残して、この配線層190によって貫通部52が封止されるようにする。
【0035】
金属層92の主材料としては、比較的導電性の高い材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)が挙げられ、本実施形態では金(Au)を用いている。また、密着層91の材料としては、金属層92の密着性を確保できる材料であればよく、具体的には、チタン(Ti)、チタンタングステン化合物(TiW)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)またはニッケルクロム化合物(NiCr)等が挙げられ、本実施形態ではニッケルクロム化合物(NiCr)を用いている。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、リザーバ形成基板用ウェハ(第1のウェハ)130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤35によって接着する。ここで、このリザーバ形成基板用ウェハ130には、リザーバ部31、圧電素子保持部32等が予め形成されており、リザーバ形成基板用ウェハ130上には、上述した接続配線200が予め形成されている。
次いで、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研削・研磨した後、フッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにし、シリコン(Si)を露出させる。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜54を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図5(b)に示すように、このマスク膜54を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)して、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13からなる液体流路を形成する(液体流路形成工程)。具体的には、流路形成基板用ウェハ110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等のエッチング液によって弾性膜50及び密着層91が露出するまでエッチングすることより、圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13を同時に形成する。
【0038】
次に、図5(c)に示すように、貫通部52内の配線層190の一部である密着層91を、連通部13側からウェットエッチング(ライトエッチング)することにより除去する。すなわち、連通部13側に露出されている密着層91と、この密着層91が拡散している金属層92の一部の領域とを、エッチングにより除去する。これにより、後の工程で、配線層190の金属層92と、その上に化学気相成長法(以下、CVD法と称する)よって形成される保護膜16との密着力が弱められ、金属層92上の保護膜16が剥離し易くなる。
【0039】
上記液体流路形成工程の前には、図6(a)及び図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110とリザーバ形成基板用ウェハ130とを接合した基板構造体(ウェハ)101のうち、リザーバ形成基板用ウェハ130側(一方の面側)における有効エリア(インクジェット式記録ヘッドのチップ102が形成されるエリア)に、第1保護シート103を貼付する(第1保護シートの貼付工程)。基板構造体101は、円周の一部を直線状に切り欠いたオリエンテーションフラット部(以下、オリフラ部101aと称する)を有する。また、リザーバ形成基板用ウェハ130側におけるチップ102のそれぞれには、接続配線200等が形成されている(図6において不図示)。
【0040】
第1保護シート103は、リザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200(チップ102)を一括で環状に囲う環状領域104に沿って形成された第1接着層105を介して貼付されている。第1保護シート103としては、耐アルカリ性を有する材料、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等を用いることができる。また、第1接着層105としては、同じく耐アルカリ性を有する材料、エポキシ系接着剤等を用いることができる。
これにより、液体流路形成工程において、リザーバ形成基板用ウェハ130に形成された接続配線200を、強アルカリのエッチング液(KOH)から保護することができる。
【0041】
上記液体流路形成工程の後は、基板構造体101をSC2洗浄し、次に、リン酸等でマスク膜54を除去する。
次いで、図7(a)に示すように、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の少なくとも一部を除去する(第1保護シート除去工程)。本実施形態の第1保護シートの除去工程では、例えば、環状領域104の内側に沿ってカッター等の刃先を入れて第1保護シート103を略円形に切除する。
【0042】
次に、図7(b)及び図7(c)に示すように、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する(第2保護シート貼付工程)。
先ず、図7(b)に示すように、第1接着層105及び第1保護シート103の残部が残存する環状領域104を含む領域、すなわちリザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200を含む領域に第2保護シート106を貼付する。このように、第1保護シート103の除去残りがある環状領域104を含めて第2保護シート106を貼付することで、シート位置決め等の煩わしさをなくし、第2保護シート106の貼り付け作業の効率化を図ることができる。
【0043】
第2保護シート106は、基材がポリエステルからなり、当該基材の一方の面に第2接着層107を有している。第2接着層107は、アクリル系接着剤から形成されている。本実施形態の第2保護シート106としては、180℃の耐熱性のポリエステルフィルムを基材とし、その一方の面にセパレーターを介してアクリル接着層を形成したテープ、より詳しくは、三井化学株式会社製のイクロステープ(商品名)を用いることができる。
【0044】
リザーバ形成基板用ウェハ130側には、不図示の凹凸(例えば、接続配線200等)が形成されており、当該凹凸に空気が入り込み易い。そこで、第2保護シートの貼付工程では、不図示のヒーター等で基板構造体101を加熱することで、リザーバ形成基板用ウェハ130側に触れている第2接着層107を間接加熱により溶融させる。これにより、第2接着層107及び第2保護シート106を当該凹凸に沿って密に溶着させ、空気の入り込みを抑制する。
【0045】
次に、図7(c)に示すように、第2保護シート106を貼付した後、環状領域104よりも内側の領域から外側の第2保護シート106を除去する(第2保護シート除去工程)。本実施形態の第2保護シートの除去工程では、例えば、環状領域104の内側に沿ってカッター等の刃先を入れて第2保護シート106を略円環状に切除する。環状領域104における第2保護シート106は、上記接着の際に、樹脂製で熱伝導性の低い第1接着層105及び第1保護シート103によって部分的に間接加熱され難くなっており、実質的に接着されてないため、容易に除去することができる。
【0046】
この第2保護シートの除去工程では、図8(a)に示すように、環状領域104よりも内側の領域から外側の第2保護シート106の一部を残存させて柄部108を形成する。これにより、後の工程において第2保護シート106の剥離を容易に行うことができる。なお、柄部108の形成位置は、第2保護シート106の剥離性の観点から、基板構造体101のオリフラ部101aに対応する位置を避けた位置に形成することが好ましい。
次いで、図8(b)に示すように、形成した柄部108を、環状領域104よりも内側に折り曲げる(柄部折曲工程)。すなわち、環状領域104に残存する第1接着層105及び第1保護シート103に柄部108が載らないようにする。
【0047】
次に、図9に示すように、洗浄装置140を用いて基板構造体101のリザーバ形成基板用ウェハ130側の洗浄を行うと共に、第1接着層105及び第1保護シート103の除去を行う(洗浄工程)。
洗浄装置140は、回転テーブル141上に基板構造体101を保持させ、この回転テーブル141を所定の回転数で回転させながら洗浄を行う、所謂スピン洗浄によって、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する構成となっている。洗浄装置140は、リザーバ形成基板用ウェハ130の中央に向けて配置されたノズル142,143を有する。
【0048】
ノズル142,143は、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143bを供給する。本実施形態では、洗浄液142aとしてオゾン水(O3)を、洗浄液143aとしてフッ酸溶液(HF)を、以上の条件を満たす洗浄液として用いることができる。なお、少なくとも第1接着層105を除去すれば、第1保護シート103も共に剥離するため、必ずしも第1保護シート103を除去する必要はない。
【0049】
ここで、第1接着層105を除去することができるとは、第1接着層105が洗浄液142a,143bに溶解する溶解性のこと、または、第1接着層105のウェハ界面における接着性が洗浄液142a,143bの液浸による劣化・膨潤により低下して剥離しやすくなること、等を意味する。
また、耐液性とは、洗浄液142a,143bに溶解し難く、実質的に溶解しない耐溶解性のこと、または、洗浄液142a,143bによって本来の機能(接着性やシール性)を発揮し得ない状態となることを阻止できる耐性のこと、等を意味する。
【0050】
洗浄液142a,143bは、リザーバ形成基板用ウェハ130の中央から回転テーブル141の回転による遠心力によって外縁まで広がり、リザーバ形成基板用ウェハ130側を全面に亘って洗浄する。洗浄液142a,143bによってリザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄すると、その洗浄液142a,143bに対し第1接着層105(エポキシ接着層)は除去され、第1保護シート103と共に当該リザーバ形成基板用ウェハ130側から剥離する。このように、第1接着層105及び第1保護シート103を化学的に除去することで、残渣の発生が確実に抑制される。また、前工程において、柄部108を折り曲げ、環状領域104から退避させることで、柄部108が第1接着層105及び第1保護シート103に被ることなく、洗浄液142a,143bによる第1接着層105の除去を好適に行うことができる。
【0051】
一方、洗浄液142a,143bは、リザーバ形成基板用ウェハ130側に形成されている不図示の接続配線200にダメージを与える虞がある。しかし、洗浄液142a,143bに対し耐液性を有する第2接着層(アクリル接着層)及び第2保護シート(ポリエステルフィルム)は、当該洗浄によってもリザーバ形成基板用ウェハ130側に残り、環状領域104よりも内側の領域は、第2保護シート106によって覆われることとなり、結果、洗浄液142a,143bから接続配線200を保護することができる。このため、接続配線200にダメージを与えることなく、外縁部に残存する第1接着層105及び第1保護シート103のみの除去を行うことができる。
【0052】
次に、図10(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の液体流路、すなわち、圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13の内壁面に保護膜16を形成する。
保護膜16は、上述したように、例えば、酸化物又は窒化物等の耐液体性(耐インク性)を有する材料からなり、本実施形態では、五酸化タンタルからなる。また、保護膜16は、例えばCVD法によって形成する。
【0053】
なお、貫通部52は配線層190によって封止されているため、貫通部52を介してリザーバ形成基板用ウェハ130の外面等に保護膜16が形成されることはない。このため、接続配線200等が形成されたリザーバ形成基板用ウェハ130の表面に保護膜16が形成されて駆動回路210などの接続不良等が発生するのを防止することができる。
【0054】
次に、図10(b)に示すように、保護膜16上に、保護膜16とはエッチングの選択性を有する材料からなる剥離層17を、例えばスパッタ法によって形成する。ここで、保護膜16とはエッチングの選択性を有する材料とは、その材料をウェットエッチングするためのエッチング液によって保護膜16がエッチングされ難く、実質的にエッチングされない材料のことをいう。また、剥離層17は、その内部応力が圧縮応力であることが好ましく、保護膜16との密着力が、保護膜16と配線層190との密着力よりも大きな材料を用いるのが好ましい。本実施形態では、剥離層17の材料として、以上の条件を満たすチタンタングステン化合物(TiW)を用いている。
【0055】
次に、図11(a)に示すように、この剥離層17をウェットエッチングによって完全に除去すると同時に、配線層190上の保護膜16を選択的に除去する。ここで、保護膜16の金(Au)からなる金属層92との密着力は、保護膜16の二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜50との密着力よりも弱く、剥離層17の内部応力が圧縮応力であるため、保護膜16上に剥離層17を形成することで、剥離層17の内部応力によって保護膜16は配線層190からある程度剥離された状態となる。この状態で、剥離層17をウェットエッチングによって除去することで、配線層190上の保護膜16も同時に選択的に除去される。
【0056】
このように配線層190上の保護膜16を除去した後は、図11(b)に示すように、配線層190(金属層92)を連通部13側からウェットエッチングすることによって除去して貫通部52を開口させる。このとき配線層190上には保護膜16が形成されていないため、保護膜16が配線層190のウェットエッチングを邪魔することはない。したがって、配線層190を容易且つ確実にウェットエッチングにより除去して貫通部52を開口させることができる。以上により、配線層190を貫通させる貫通工程が終了する。
【0057】
第2保護シート106は、当該貫通工程の後に剥離させ、当該貫通工程のときには、第2保護シート106を残存させる。これにより、第2保護シート106を、保護膜16を形成する際の原料ガスから接続配線200を保護する保護シートとしてだけでなく、剥離層17を形成する際のスパッタから接続配線200を保護し、さらに、剥離層17及び配線層190をウェットエッチングするエッチング液から接続配線200を保護する保護シートとして兼用させることができる。
【0058】
第2保護シートの剥離工程では、先ず、図12(a)に示すように、折り曲げられた柄部108を、環状領域104よりも内側の領域から外側に展開させる。その後、図12(b)に示すように、当該展開させた柄部108を吸着パッド109で把持し、第2保護シート106を第2接着層107と共にリザーバ形成基板用ウェハ130側から剥離する。このように、前工程において予め柄部108を形成することで、第2保護シート106の剥離を容易に行うことができる。
【0059】
その後は、リザーバ形成基板用ウェハ130に形成されている接続配線200上に駆動回路210を実装すると共に、駆動回路210とリード電極90とを駆動配線220によって接続する。次いで、流路形成基板用ウェハ110及びリザーバ形成基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110のリザーバ形成基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、リザーバ形成基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を、図1に示すような一つのチップサイズに分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
【0060】
したがって、上述した本実施形態によれば、リザーバ形成基板用ウェハ130側に接続配線200が形成されている基板構造体101の流路形成基板用ウェハ110側にウェットエッチング法によって液体流路を形成する液体流路形成工程と、上記液体流路形成工程の前に、リザーバ形成基板用ウェハ130側における接続配線200を環状に囲う環状領域104に沿って形成した第1接着層105を介して第1保護シート103を貼付する第1保護シートの貼付工程と、を有するインクジェット式記録ヘッドの製造方法であって、上記液体流路形成工程の後、環状領域104よりも内側の第1保護シート103の一部を除去する第1保護シートの除去工程と、上記第1保護シートの除去工程の後、環状領域104よりも内側の領域に、第2接着層107を介して第2保護シート106を貼付する第2保護シートの貼付工程と、上記第2保護シートの貼付工程の後、少なくとも第1接着層105を除去することができ、且つ、第2接着層107及び第2保護シート106が耐液性を有する洗浄液142a,143aを用いて、リザーバ形成基板用ウェハ130側を洗浄する洗浄工程と、を有するという手法を採用することによって、第1接着層105及び第1保護シート103を完全に除去可能であるため、チップ不良の原因となった第1接着層105等の残渣は発生せず、製品歩留まりが向上する。また、従来のCO2レーザー照射工程及び、ウェハ外周拭い取り工程が無くなり、工数低減が可能となる。また、第2保護シート106を貼り付けたままでの貫通工程(チタタンエッチング及び金エッチング等)を実施することによって、さらなる工数削減と歩留まり向上を図ることができる。
【0061】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0063】
10…流路形成基板(第2の基板)、30…リザーバ形成基板(第1の基板)、31…リザーバ部(第2の流路)、101…基板構造体(ウェハ)、103…第1保護シート、104…環状領域、105…第1接着層、106…第2保護シート、107…第2接着層、108…柄部、110…流路形成基板用ウェハ(第2のウェハ、他方の面側)、130…リザーバ形成基板用ウェハ(第1のウェハ、一方の面側)、142a,143a…洗浄液、190…配線層(閉塞膜)、200…接続配線(配線部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハに形成された配線部を環状に囲うように形成された第1接着層を介して第1保護シートを貼付する第1保護シート貼付工程と、
前記ウェハの前記配線部が形成され前記第1保護シートが貼付された面とは反対側の面に液体流路を形成する液体流路形成工程と、
前記液体流路を形成した後に、前記第1接着層よりも内側の領域にある前記第1保護シートの少なくとも一部を除去する第1保護シート除去工程と、
前記第1保護シートを除去した前記内側の領域において少なくとも前記配線部を覆うように、第2接着層を介して前記ウェハに第2保護シートを貼付する第2保護シート貼付工程と、
少なくとも前記第1接着層を除去することができ、且つ前記第2接着層及び前記第2保護シートが耐液性を有する洗浄液を用いて、前記ウェハの前記配線部が形成され前記第2保護シートが貼付された面を洗浄する洗浄工程と、
を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第2保護シート貼付工程において、前記第1保護シート除去工程により除去されずに残り前記第1接着層の上に形成される前記第1保護シートの残部の上面をも覆うように前記第2保護シートを貼付し、
前記第1保護シートの残部の上面および前記上面よりも外側に位置する前記第2保護シートを除去する第2保護シート除去工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第2保護シート除去工程において、前記第1保護シートの残部の上面および前記上面よりも外側に位置する前記第2保護シートの一部を残存させて柄部を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記柄部を前記配線部側に折り曲げる柄部折曲工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記柄部を介して前記第2保護シートを前記ウェハから剥離する第2保護シート剥離工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記ウェハは、前記配線部が形成された面側に配置されると共に前記液体流路と連通可能な第2の液体流路を有する第1のウェハと、前記反対側の面側に配置されると共に前記液体流路と前記第2の液体流路との間を閉塞する閉塞膜を有する第2のウェハと、が接合して形成され、
前記ウェハの前記配線部が形成され前記第2保護シートが貼付された面を洗浄した後に、前記開閉膜を貫通させる貫通工程を有しており、
前記貫通工程のときには、前記第2保護シートを残存させていることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項1】
ウェハに形成された配線部を環状に囲うように形成された第1接着層を介して第1保護シートを貼付する第1保護シート貼付工程と、
前記ウェハの前記配線部が形成され前記第1保護シートが貼付された面とは反対側の面に液体流路を形成する液体流路形成工程と、
前記液体流路を形成した後に、前記第1接着層よりも内側の領域にある前記第1保護シートの少なくとも一部を除去する第1保護シート除去工程と、
前記第1保護シートを除去した前記内側の領域において少なくとも前記配線部を覆うように、第2接着層を介して前記ウェハに第2保護シートを貼付する第2保護シート貼付工程と、
少なくとも前記第1接着層を除去することができ、且つ前記第2接着層及び前記第2保護シートが耐液性を有する洗浄液を用いて、前記ウェハの前記配線部が形成され前記第2保護シートが貼付された面を洗浄する洗浄工程と、
を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第2保護シート貼付工程において、前記第1保護シート除去工程により除去されずに残り前記第1接着層の上に形成される前記第1保護シートの残部の上面をも覆うように前記第2保護シートを貼付し、
前記第1保護シートの残部の上面および前記上面よりも外側に位置する前記第2保護シートを除去する第2保護シート除去工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第2保護シート除去工程において、前記第1保護シートの残部の上面および前記上面よりも外側に位置する前記第2保護シートの一部を残存させて柄部を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記柄部を前記配線部側に折り曲げる柄部折曲工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記柄部を介して前記第2保護シートを前記ウェハから剥離する第2保護シート剥離工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記ウェハは、前記配線部が形成された面側に配置されると共に前記液体流路と連通可能な第2の液体流路を有する第1のウェハと、前記反対側の面側に配置されると共に前記液体流路と前記第2の液体流路との間を閉塞する閉塞膜を有する第2のウェハと、が接合して形成され、
前記ウェハの前記配線部が形成され前記第2保護シートが貼付された面を洗浄した後に、前記開閉膜を貫通させる貫通工程を有しており、
前記貫通工程のときには、前記第2保護シートを残存させていることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−223896(P2012−223896A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90756(P2011−90756)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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