説明

液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】液体の噴射特性のばらつきや低下を抑制して、ノズルプレートの剥離及び液体の漏出を抑制することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体が噴射されるノズル開口21を有するノズルプレート20と、前記ノズル開口21に連通する流路が形成された流路形成基板10と、が接着剤25を介して接合された液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズル開口21が形成されたシリコン基板の少なくとも前記ノズル開口21の内面にレジストを形成する工程と、前記レジストが形成された前記シリコン基板の前記流路形成基板10に接合される接合面20bをドライエッチングする工程と、ドライエッチングした前記シリコン基板の前記レジストを除去して前記ノズルプレート20を形成する工程と、前記ノズルプレート20の前記接合面20bを前記流路形成基板10に接着剤25を介して接合する工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射するノズル開口が設けられたノズルプレートを有する液体噴射ヘ
ッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット
式記録ヘッドが挙げられる。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、複数の部材を接着剤を介して組み立てる
のが一般的である。また、シリコン基板からなるノズルプレートにノズル開口を形成し、
このノズルプレートを流路が設けられた流路形成基板に接着剤を介して接合した構成が開
示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−240854号公報
【特許文献2】特開2009−208383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコン基板からなるノズルプレートを流路形成基板に接着剤を介して
接着すると、接合強度不足によってノズルプレートの剥離や、液体の漏出などが発生する
虞があるという問題がある。
【0006】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体
を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法においても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、液体の噴射特性のばらつきや低下を抑制して、ノズル
プレートの剥離及び液体の漏出を抑制することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体が噴射されるノズル開口を有するノズルプレ
ートと、前記ノズル開口に連通する流路が形成された流路形成基板と、が接着剤を介して
接合された液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズル開口が形成されたシリコン基
板の少なくとも前記ノズル開口の内面にレジストを形成する工程と、前記レジストが形成
された前記シリコン基板の前記流路形成基板に接合される接合面をドライエッチングする
工程と、ドライエッチングした前記シリコン基板の前記レジストを除去して前記ノズルプ
レートを形成する工程と、前記ノズルプレートの前記接合面を前記流路形成基板に接着剤
を介して接合する工程と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある

かかる態様では、ノズルプレートの流路形成基板との接合面をドライエッチングするこ
とで粗面を形成することができ、ノズルプレートと接着剤との接合強度を向上することが
できる。また、ノズル開口をドライエッチングしないように保護することで、液体の噴射
特性にばらつきが生じるのを抑制して、安定した液体噴射特性を得ることができる。
【0009】
ここで、前記シリコン基板の少なくとも接合面には、酸化膜が形成されていると共に、
前記シリコン基板の前記接合面をドライエッチングする工程では、当該接合面に前記酸化
膜を残留させるように行うことが好ましい。これによれば、ノズルプレートと接着剤との
界面に液体が侵入したとしても酸化膜によってノズルプレートが液体に浸食されるのを抑
制することができる。
【0010】
また、前記シリコン基板の前記接合面をドライエッチングする工程の後、少なくとも前
記接合面に酸化膜を形成する工程をさらに有することが好ましい。これによれば、ノズル
プレートと接着剤との界面に液体が侵入したとしても酸化膜によってノズルプレートが液
体に浸食されるのを抑制することができる。
【0011】
また、前記シリコン基板に前記レジストを形成する工程では、前記流路形成基板の前記
流路に連通する面に亘って形成することが好ましい。これによれば、ノズルプレートの液
体に対する耐久性が低下するのを抑制することができる。
【0012】
また、前記シリコン基板に前記レジストを形成する工程の前に、当該シリコン基板をド
ライエッチングすることにより前記ノズル開口を形成する工程をさらに有することが好ま
しい。これによれば、ドライエッチングによってノズル開口を容易に且つ高精度に形成す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図で
ある。
【0015】
図示するように、インクジェット式記録ヘッドIを構成する流路形成基板10は、本実
施形態では、シリコン基板(シリコン単結晶基板)からなり、その一方面には酸化シリコ
ンを主成分とする弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、一方面とは
反対側の面となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成
されている。そして、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを
吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方
向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向と称し、第1の方向に直交する方向を第
2の方向と称する。
【0016】
また、各列の圧力発生室12の第2の方向外側には、後述する保護基板30に設けられ
るマニホールド部31と連通し、各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド
100を構成する連通部13が形成されている。また、連通部13は、インク供給路14
及び連通路15を介して各圧力発生室12の第2方向の一端部とそれぞれ連通されている
。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及
び連通路15で構成される流路が形成されている。
【0017】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反
対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤25を介して接
合されている。
【0018】
ノズルプレート20は、シリコン基板、本実施形態では、シリコン単結晶基板で形成さ
れている。また、ノズル開口21は、インク滴が吐出される液体噴射面20a側に設けら
れた第1ノズル開口21aと、流路形成基板10との接合面20b側に設けられて第1ノ
ズル開口21aよりも大きな内径を有する第2ノズル開口21bと、を具備する。
【0019】
また、本実施形態では、ノズルプレート20の接合面20b側の表面及びノズル開口2
1の内面に亘って酸化膜22が設けられている。本実施形態では、酸化膜22として、酸
化シリコン(SiO)を設けた。
【0020】
なお、特に図示していないが、ノズルプレート20の液体噴射面20a側の表面には、
撥液膜(撥インク膜)が設けられている。撥液膜としては、特に限定されないが、例えば
、フッ素系高分子を含む金属膜やシロキサン等をプラズマ重合したプラズマ重合膜などを
用いることができる。
【0021】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、弾性膜50上に、例えば、酸化ジル
コニウムを主成分とする絶縁体膜55が形成されている。また、絶縁体膜55上には、第
1電極60と、圧電体層70と、第2電極80と、が積層された圧電アクチュエーター3
00(本実施形態の圧力発生手段)が形成されている。ここで、圧電アクチュエーター3
00は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、
圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体
層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニン
グされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により
圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電アク
チュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別
電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述し
た例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論
これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1
電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター3
00自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0022】
圧電アクチュエーター300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14
側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等
からなるリード電極90が接続されている。
【0023】
このような圧電アクチュエーター300が形成された流路形成基板10上、すなわち、
第1電極60、絶縁体膜55及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくと
も一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合さ
れている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通
して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の
連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を
構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割し
て、マニホールド部31のみをマニホールド100としてもよい。さらに、例えば、流路
形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介
在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にマニホールドと各圧力発生室12
とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
【0024】
また、保護基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュ
エーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部32
が設けられている。圧電アクチュエーター保持部32は、圧電アクチュエーター300の
運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封さ
れていなくてもよい。
【0025】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例え
ば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板
10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0026】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられて
いる。そして、各圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90の端部近
傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0027】
また、保護基板30上には、並設された圧電アクチュエーター300を駆動するための
駆動回路110が固定されている。この駆動回路110としては、例えば、回路基板や半
導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路110とリード電極9
0とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線111を介して電気
的に接続されている。
【0028】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプラ
イアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する
材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。
また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホール
ド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、
マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0029】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しないインク導入口
からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインク
で満たした後、駆動回路110からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞ
れの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第
1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力
が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0030】
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法、特にノズルプレートの製
造方法について詳細に説明する。なお、図3〜図6は、インクジェット式記録ヘッドの製
造方法を示す断面図である。
【0031】
まず、図3(a)に示すように、ノズルプレート20となるシリコン基板120を熱酸
化することによってシリコン基板120の表面に酸化シリコン(SiO)からなるマス
ク膜121を形成する。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、シリコン基板120の接合面20b側のマスク膜12
1をエッチングすることによってパターニングする。ここで、マスク膜121のパターニ
ングは、ノズル開口21の形状に合わせて行われる。本実施形態では、ノズル開口21が
第1ノズル開口21aと第2ノズル開口21bとを有するため、第1ノズル開口21aと
第2ノズル開口21bとに合わせた形状で開口部122を形成する。具体的には、開口部
122は、ノズル開口21の第1ノズル開口21aとなる部分を貫通させて、第2ノズル
開口21bとなる部分をハーフエッチングすることにより形成する。このような開口面積
の異なるパターニングは、開口形状の異なるレジストを2回用いることで形成することが
できる。また、マスク膜121のエッチングは、フッ酸水溶液等を用いたウェットエッチ
ングにより行うことができる。
【0033】
次に、図3(c)に示すように、シリコン基板120をマスク膜121を介して異方性
エッチング(ドライエッチング)することで、第1ノズル開口21aを形成する。
【0034】
次に、図3(d)に示すように、マスク膜121の第2ノズル開口21bとなる部分の
みを除去する。本実施形態では、フッ酸水溶液等を用いたウェットエッチング(ハーフエ
ッチング)によって除去した。これにより、開口部122は、第2ノズル開口21bと同
じ開口面積で開口する。
【0035】
次に、図4(a)に示すように、シリコン基板120をマスク膜121を介して異方性
エッチング(ドライエッチング)することで、第1ノズル開口21aと第2ノズル開口2
1bとで構成されるノズル開口21を形成する。
【0036】
次に、図4(b)に示すように、シリコン基板120のマスク膜121を除去した後、
シリコン基板120の表面に亘って酸化シリコンからなる酸化膜22を形成する。本実施
形態では、酸化膜は、シリコン基板120のノズル開口21が開口する面及び反対面の両
面と、ノズル開口21の内面とに亘って形成される。なお、マスク膜121は、フッ酸水
溶液を用いて除去することができる。また、酸化膜22は、シリコン基板120を加熱す
ることで、その表面に亘って熱酸化した酸化シリコンからなる酸化膜22を形成すること
ができる。もちろん、酸化膜22は、スパッタリング法やMOD法等によって形成しても
よい。
【0037】
次に、図4(c)に示すように、シリコン基板120の第2ノズル開口21b側の接合
面20bに支持基板130を接合する。支持基板130としては、ガラスやシリコン単結
晶基板等を用いることができる。また、支持基板130の接合方法としては、例えば、紫
外線又は熱などの刺激で接着力が低下する自己剥離層を有する両面テープ131などを用
いることができる。
【0038】
次に、図5(a)に示すように、シリコン基板120を支持基板130に接合された面
(接合面20b)とは反対側の面側から所定の厚さに薄くして、第1ノズル開口21aの
先端を開口させる。本実施形態では、シリコン基板120の支持基板130に接合された
面とは反対側の面を研削することで薄くした。また、シリコン基板120を研削した後、
研削面をポリッシャー又はCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)装置によって研磨
する。このようにシリコン基板120を研磨した面がインク滴が吐出される液体噴射面2
0aとなる。このため、特に図示していないが、研磨面(液体噴射面)に撥液膜(撥イン
ク膜)を形成する。
【0039】
次に、図5(b)に示すように、ノズル開口21の内面をレジスト140で覆う。本実
施形態では、シリコン基板120がノズルプレート20として流路形成基板10に接合さ
れた際に、圧力発生室12に連通する内面にレジスト140を設けるようにした。すなわ
ち、レジスト140は、ノズル開口21に充填され、且つシリコン基板120(ノズルプ
レート20)の圧力発生室12に相対向する領域に設けられている。
【0040】
次に、図5(c)に示すように、シリコン基板120の接合面20b側をドライエッチ
ングする。これにより、シリコン基板120のレジスト140に覆われていない接合面2
0bを粗面20cとすることができる。すなわち、このシリコン基板120のドライエッ
チングでは、シリコン基板120の表面(接合面20b)が粗面20cとなる条件で適宜
行う。
【0041】
また、接合面20bには、酸化膜22が設けられているが、本実施形態のシリコン基板
120のドライエッチングでは、酸化膜22が完全に除去されずに残留するように行う。
【0042】
次に、図6(a)に示すように、シリコン基板120のレジスト140を除去する。こ
れによりノズル開口21が設けられたノズルプレート20が製造される。
【0043】
そして、図6(b)に示すように、このように製造されたノズルプレート20の接合面
20bを流路形成基板10の圧力発生室12が開口する面に接着剤25を介して接着する

【0044】
このとき、ノズルプレート20の接合面20bの流路形成基板10に接合される領域は
、ドライエッチングによって粗面20cとなっているため、アンカー効果によってノズル
プレート20と接着剤25との接合強度を向上することができる。このように、流路形成
基板10と接合する接着剤25とノズルプレート20との接合強度を向上することで、流
路形成基板10からのノズルプレート20の剥離等の破壊や接合部分からのインクの漏出
などを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ノズルプレート20の流路形成基板10との接合面20bのみ
をドライエッチングして粗面20cとし、少なくともノズル開口21の内面は粗面としな
いようにした。このため、ノズル開口21のインクに対する耐性が低下するのを抑制して
、接合面20bをドライエッチングした場合とドライエッチングしない場合とで、インク
滴の吐出特性が変化するのを抑制することができる。ちなみに、ノズル開口21の内面を
ドライエッチングにより粗面にしてしまうと、ノズル開口21の内面のインクに対する耐
性が低下してしまうと共に、ノズル開口21に形成されるインクのメニスカスの挙動が変
化し、インク滴の吐出特性に変化が生じてしまう。なお、本実施形態では、ノズル開口2
1はドライエッチングによって形成しているため、ノズル開口21の内面はドライエッチ
ングされた面となるが、ノズル開口21を形成するドライエッチングは、上述した接合面
20bに粗面20cを形成するドライエッチングよりも加工面が粗くなるものではない。
【0046】
また、本実施形態では、接合面20bに酸化膜22が残留するようにした。このため、
ノズルプレート20と接着剤25との界面にインクが侵入したとしても、酸化膜22によ
ってノズルプレート20のインクによる浸食を抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、流路形成基板10側について特に説明していないが、流路形成
基板10のノズルプレート20が接合される接合面をドライエッチングすることで粗面と
すれば、流路形成基板10と接着剤25とノズルプレート20との接合強度を向上して、
剥離等の破壊やインクの漏出などをさらに確実に抑制することができる。
【0048】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したもの
に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、シリコン基板120に酸
化膜22を設け、接合面20bをドライエッチングする際に酸化膜22が残留するように
したが、特にこれに限定されず、例えば、接合面20bをドライエッチングした後に接合
面20bに酸化膜22が無い状態であってもよい。この場合には、接合面20bをドライ
エッチングした後に接合面20bに酸化膜22を形成する工程を追加すればよい。なお、
接合面20bをドライエッチングした後に接合面20bに酸化膜22が無い状態とは、接
合面20bをドライエッチングすることによって酸化膜22を完全に除去してしまった場
合や、接合面20bをドライエッチングする前に酸化膜22を除去する工程を行っていた
場合などを含むものである。
【0049】
また、勿論、接合面20bをドライエッチングした後、接合面20bに酸化膜22が形
成されていなくても、接合面20bをドライエッチングして粗面20cとすることで、ノ
ズルプレート20と接着剤25との接合強度を向上することができる。
【0050】
さらに、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手
段として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定さ
れず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチ
ュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動
型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧
力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから
液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振
動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使
用することができる。
【0051】
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンタ
ー等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液
晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディ
スプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッ
ド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる

【符号の説明】
【0052】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12
圧力発生室、 20 ノズルプレート、 20a 液体噴射面、 20b 接合面、
20c 粗面、 21 ノズル開口、 21a 第1ノズル開口、 21b 第2ノズル
開口、 22 酸化膜、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾
性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、
90 リード電極、 100 マニホールド、 110 駆動回路、 120 シリコン
基板、 300 圧電アクチュエーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が噴射されるノズル開口を有するノズルプレートと、
前記ノズル開口に連通する流路が形成された流路形成基板と、が接着剤を介して接合さ
れた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記ノズル開口が形成されたシリコン基板の少なくとも前記ノズル開口の内面にレジス
トを形成する工程と、
前記レジストが形成された前記シリコン基板の前記流路形成基板に接合される接合面を
ドライエッチングする工程と、
ドライエッチングした前記シリコン基板の前記レジストを除去して前記ノズルプレート
を形成する工程と、
前記ノズルプレートの前記接合面を前記流路形成基板に接着剤を介して接合する工程と
、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板の少なくとも接合面には、酸化膜が形成されていると共に、前記シリ
コン基板の前記接合面をドライエッチングする工程では、当該接合面に前記酸化膜を残留
させるように行うことを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記シリコン基板の前記接合面をドライエッチングする工程の後、少なくとも前記接合
面に酸化膜を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッ
ドの製造方法。
【請求項4】
前記シリコン基板に前記レジストを形成する工程では、前記流路形成基板の前記流路に
連通する面に亘って形成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴
射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記シリコン基板に前記レジストを形成する工程の前に、当該シリコン基板をドライエ
ッチングすることにより前記ノズル開口を形成する工程をさらに有することを特徴とする
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−911(P2013−911A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130990(P2011−130990)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】