説明

液体噴射ヘッドユニット、および、その製造方法

【課題】製造誤差の少ない液体噴射ヘッドユニット、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】複数のノズル51を列設したノズル列56の前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド18と、該液体噴射ヘッドが位置決め手段58によって位置決めされた状態で取り付けられる取付枠材26とを備えた液体噴射ヘッドユニット17であって、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル列に沿った方向の両端部には、前記取付枠材に固定される固定部材32がそれぞれ設けられ、各固定部材において前記取付枠材とは反対側の第1の面32aに、前記位置決め手段に設けられた位置決めピン65に対応して、当該位置決めピンが嵌合可能な溝部66が、前記第1の面から前記取付枠材側の第2の面32bに向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、該溝部は、前記ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッドユニット、および、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをベース部などの取付枠材に複数並べて固定し、これを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある(例えば、特許文献1参照)。このような記録ヘッドユニットを製造するためには、例えば、図21(a)に示すように、まず取付枠材100をワークセット台101に載置し、この取付枠材100の内側に、記録ヘッド102のノズル開口面103とは反対側の一部が納まるように、最初の記録ヘッド102を枠内に挿入する。そして、この記録ヘッド102の両端側に位置する固定部材104を取付枠材100の取付面にそれぞれ当接し、記録ヘッド102の取付枠材100に対する鉛直方向の位置を決め、同様にして、各記録ヘッド102を順次取付枠材100に載置する。この状態で、上部に備えたカメラ105で記録ヘッド102のノズル開口面103を撮影することによりノズル開口面103に形成した位置合わせマークを認識し、この位置合わせマークが所定の位置になるように各記録ヘッド102の水平方向の位置補正を行う。記録ヘッド102が取付枠材100に対して所定の位置に保持されると、記録ヘッド102と取付枠材100を接着剤等で仮固定し、その後、ネジ等で本固定する。
【0004】
ここで、上記記録ヘッド102の位置補正は、例えば、図21(b)に示すような調整ピン106を用いて行われている。具体的には、まず、固定部材104に開設した調整穴107に上方から調整ピン106を挿入させる。この状態で調整ピン106を水平方向に移動させ、調整穴107の内壁に調整ピン106を当接させて固定部材104を水平方向に押圧する。これにより、固定部材104を所望の方向に移動させることができる。このような構成では、調整ピン106を調整穴107に対して円滑に挿入することができるように、調整ピン106の径を調整穴107の径よりも小さくして両者の間にクリアランスが設けられている。ところが、このクリアランスを設けることで、記録ヘッド102の位置補正精度が低下するという問題があった。即ち、このクリアランス分だけ調整ピン106を移動させても調整穴107の内壁に当接せず、固定部材104が移動しない。つまり、調整ピン106の移動に固定部材104が追従しない状態が生じる。その結果、調整ピン106の移動量と固定部材104の移動量との間に差が生じる。このため、図21(c)に示すように、断面において、調整穴107の径より小さい径の先端から調整穴107の径より大きくなるように拡径させたテーパー部を形成した調整ピン106を用いる方法が提案されている。この調整ピン106のテーパー部を調整穴107の縁に当接させて、調整ピン106を移動させることで、固定部材104を調整ピン106の移動に追従させつつ取付枠材100に対して平行に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−36346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような記録ヘッドの位置補正では、位置決めされた記録ヘッドの位置を保持する必要があるため、上方から固定部材を押圧する必要がある。この押圧により、図21(c)に示すように、固定部材および取付枠材が変形する虞があった。このように固定部材および取付枠材が変形した状態では、記録ヘッドの正確な位置決めを行うことができなかった。このため、記録ヘッドユニットの製造ばらつきが生じていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造誤差の少ない液体噴射ヘッドユニット、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射ヘッドユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、複数のノズルを列設したノズル列の前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドが位置決め手段によって位置決めされた状態で取り付けられる取付枠材とを備えた液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル列に沿った方向の両端部には、前記取付枠材に固定される固定部材がそれぞれ設けられ、
各固定部材において前記取付枠材とは反対側の第1の面に、前記位置決め手段に設けられた位置決めピンに対応して、当該位置決めピンが前記ノズル列方向の側方から嵌合可能な溝部が、前記第1の面から前記取付枠材側の第2の面に向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、
該溝部は、前記ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、液体噴射ヘッドのノズル列に沿った方向の両端部には、取付枠材に固定される固定部材がそれぞれ設けられ、各固定部材において取付枠材とは反対側の第1の面に、位置決め手段に設けられた位置決めピンに対応して、当該位置決めピンが嵌合可能な溝部が、第1の面から取付枠材側の第2の面に向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、該溝部は、ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成されたので、両側の溝部に位置決めピンを嵌合して液体噴射ヘッドを把持することができ、この状態で位置決めピンを移動させることで、液体噴射ヘッドの位置決めをすることができる。このため、位置決めピンの移動量と液体噴射ヘッドの移動量との間に差異が生じ難く、位置決めピンに液体噴射ヘッドを追従させることができ、正確に液体噴射ヘッドの位置決めをすることができる。また、位置決めピンが溝部の内壁に対して点接触する構成であり、また、固定部材を上方から押圧する必要が無いため、固定部材および取付枠材が変形し難い。その結果、液体噴射ヘッドユニットの製造誤差を抑えることができる。
【0010】
上記構成において、前記固定部材は、液体噴射ヘッドに対して着脱可能に固定された構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、固定部材を取付枠材に接着する構成においても、固定部材から液体噴射ヘッドを取り外すことができるので、液体噴射ヘッドの交換や修理等が容易となる。
【0011】
上記各構成において、前記溝部の最大幅が、前記位置決めピンの直径よりも大きいことが望ましい。
この構成によれば、安定して溝部に位置決めピンを嵌合することができ、より正確に液体噴射ヘッドの位置決めをすることができる。
【0012】
そして、複数のノズルを列設したノズル列の前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドが取り付けられる取付枠材とを備え、該取付枠材に対し前記液体噴射ヘッドを位置決め手段を用いて位置決めして取り付ける液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル列に沿った方向の両端部には、前記取付枠材に固定される固定部材が設けられ、
各固定部材において前記取付枠材とは反対側の第1の面に、前記位置決め手段に設けられた位置決めピンに対応して、当該位置決めピンが前記ノズル列方向の側方から嵌合可能な溝部が、前記第1の面から前記取付枠材側の第2の面に向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、
該溝部は、前記ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成され、
位置決め手段の位置決めピンを各溝部にそれぞれ嵌合させ、各位置決めピンによって両側から内側に付勢することで前記液体噴射ヘッドを把持すると共に、当該溝部の底部を位置決めピンによって前記取付枠材側に押圧した状態で、当該液体噴射ヘッドが前記取付枠材の取り付け面内において位置決めされることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの正面図である。
【図3】プリンターの平面図である。
【図4】プリンターの右側面図である。
【図5】キャリッジアセンブリーの平面図である。
【図6】キャリッジアセンブリーの正面図である。
【図7】キャリッジアセンブリーの右側面図である。
【図8】キャリッジアセンブリーの底面図である。
【図9】図5におけるA−A線断面図である。
【図10】(a)記録ヘッドユニットの斜視図、(b)記録ヘッドユニットに流路部材を取り付けた状態の斜視図である。
【図11】記録ヘッドユニットに流路部材を取り付けた状態の平面図である。
【図12】記録ヘッドユニットに流路部材を取り付けた状態の正面図である。
【図13】記録ヘッドユニットに流路部材を取り付けた状態の下面図である。
【図14】記録ヘッドユニットに流路部材を取り付けた状態の右側面図である。
【図15】サブキャリッジを模式的に表した図であり、(a)裏面図、(b)平面図、(c)正面図である。
【図16】(a)記録ヘッドの底面図、(b)記録ヘッドの側面図、(c)記録ヘッドの正面図である。
【図17】アライメント装置に記録ヘッドユニットをセットした状態の正面図である。
【図18】アライメント装置に記録ヘッドユニットをセットした状態の右側面図である。
【図19】基準ピンを接触させた記録ヘッドユニットの平面図である。
【図20】記録ヘッドの位置合わせを説明するカメラの撮影図である。
【図21】従来の方法による記録ヘッドユニットの製造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンターと略記する)に適用した場合を例示する。
【0015】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の正面図、図3はプリンター1の平面図、図4はプリンター1の右側面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム(何れも図示せず)等の記録媒体(着弾対象の一種)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジアセンブリー3(記録ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向(図1中に符号Xで示す)に往復移動可能に搭載している。そして、プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジアセンブリー3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図7参照)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0016】
フレーム2の背面側であって主走査方向Xの一端側(図3における右端部)には、キャリッジアセンブリー3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向Xにおける反対側(図3における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジアセンブリー3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジアセンブリー3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向Xに移動する。
【0017】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向Xに沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジアセンブリー3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず)。リニアエンコーダーは、例えば、互いに対向配置された一対の発光素子と受光素子とによって構成され、リニアスケール10の透明部分での受光状態とストライプ部分での受光状態の差異に応じてエンコーダーパルスを出力するようになっている。即ち、リニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジアセンブリー3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向Xにおける位置情報として出力する。これにより、プリンター1の制御部(図示せず)は、このリニアエンコーダーからのエンコーダーパルスに基づいてキャリッジアセンブリー3の走査位置を認識しながら、記録ヘッドユニット17による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向Xの一端側のホームポジション(キャリッジアセンブリー3が駆動していないときの待機位置)から反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジアセンブリー3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジアセンブリー3が戻る復動時との双方向で記録媒体上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0018】
図3に示すように、キャリッジアセンブリー3には、記録ヘッドユニット17側にインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録媒体を搬送する搬送部等が設けられている。
【0019】
図5はキャリッジアセンブリー3の平面(上面)図、図6はキャリッジアセンブリー3の正面図、図7はキャリッジアセンブリー3の右側面図、図8はキャリッジアセンブリー3の底面図である。また、図9は図5におけるA−A線断面図である。なお、図5は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジアセンブリー3は、後述する記録ヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種)および記録ヘッドユニット17の上部に接続される流路部材24を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内に記録ヘッドユニット17および流路部材24を収容する。図8に示すように、底板部12aには、収容された記録ヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面53(図16参照)を露出させるための底部開口19が開設されている。そして、記録ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0020】
キャリッジ本体12と記録ヘッドユニット17および流路部材24との間には、当該キャリッジ本体12に収容された記録ヘッドユニット17および流路部材24の姿勢を調整するための偏心カム21(図9参照)が複数設けられている。そして、キャリッジ本体12には、これらの偏心カム21を回転させるための調整レバー20が複数設けられている。これらの調整レバー20の操作により、偏心カム21が回転してその回転中心から外周面までのカム径が増減し、このカム径の増減によって、キャリッジ本体12に収容された記録ヘッドユニット17および流路部材24のキャリッジ本体12に対する位置や傾きなどの姿勢を調整することができるように構成されている。
【0021】
流路部材24は、合成樹脂等により作製される上下方向が薄い箱体状の部材であり、記録ヘッドユニット17の上部に接続されている(図10(b)、図11等参照)。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。また、流路部材24の上面には、チューブ接続部34が設けられている。このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている(図11参照)。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。なお、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33(図10(a)参照)に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路部材止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。
【0022】
また、流路部材24の下面において、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には、下方に向けて延出した接続流路40が設けられている(図12参照)。この接続流路40は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通する導出路(図示せず)が内部に形成された中空筒状の部材であり、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路40と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。つまり、インク供給チューブ14とサブタンク37とは、流路部材24を介在させて相互に接続されている。
【0023】
次に記録ヘッドユニット17について説明する。図10(a)は記録ヘッドユニット17の斜視図であり、図10(b)は記録ヘッドユニット17に流路部材24を取り付けた状態の斜視図である。また、図11〜14は記録ヘッドユニット17に流路部材24を取り付けた状態の図であり、図11は平面図、図12は正面図、図13は下面図、図14は右側面図である。そして、図15は、説明を容易にするため、記録ヘッドユニット17のベースとなるサブキャリッジ26(本発明における取付枠材の一種)の構成をより簡略化して示した図であり、図15(a)は裏面図、図15(b)は平面図、図15(c)は正面図である。なお、図15はサブキャリッジ26を模式的に示したものであるため、各部分の形状、位置関係、大きさ等が実際とは異なる場合がある。
【0024】
記録ヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、複数の記録ヘッド18と、これらの記録ヘッド18が後述するアライメント装置58(本発明における位置決め手段の一種)によって位置決めされた状態で複数並列に取り付けられるサブキャリッジ26と、から構成されている。サブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより枠体状に形成され、内側の収容部35(図15参照)に記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)が収容可能に形成されている。この収容部35の四方の外周を形成する外枠部26aの裏面側(記録媒体に対向する側)には、記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32(本発明における固定部材に相当。後述)が固定されるヘッド装着部59(図15(a)の斜線で示す領域)を備えている。本実施形態の記録ヘッドユニット17は5つの記録ヘッド18を備えているため、これに対応して、収容部35を挟んだ両側2辺の外枠部26aにヘッド装着部59をそれぞれ5箇所形成している。これらのヘッド装着部59は、同一平面上に位置するように形成されている。なお、ヘッド装着部59には、各記録ヘッド18に固定されたスペーサー32のスペーサー挿通穴29(雌ネジ部)に対応した、止着穴(同じく雌ネジ部。図示せず)が開設されている。この止着穴とスペーサー挿通穴29の位置を揃えてネジを止着(螺合)し、スペーサー32を介して記録ヘッド18をサブキャリッジ26に固定している。
【0025】
そして、サブキャリッジ26のヘッド装着部59側の面には、アライメント装置58の基準ピン61(後述)が当接する位置決め基準部62を備えている。本実施形態の位置決め基準部62は、サブキャリッジ26の外枠部26aに合計3個設けられている。具体的には、ヘッド装着部59が形成された一側(ヘッド並設方向に直交する方向の一側であって、図15(a)の左側)の外枠部26aにおいて、ヘッド装着部59より外側であって、外枠部26aの長手方向中央部に位置決め基準部62が1個形成され、ヘッド装着部59が形成された他側(ヘッド並設方向に直交する方向の他側であって、図15(a)の右側)の外枠部26aにおいて、ヘッド装着部59より外側であって、外枠部26aの長手方向両端部に位置決め基準部62が2個形成されている。このため、裏面側からの平面視において、3個の位置決め基準部62を頂点とする多角形(本実施形態では、三角形)の仮想平面S(図19における二点鎖線で示す平面)内に、記録ヘッドユニット17の重心G(図19における黒丸)が位置する。そして、これらの位置決め基準部62は、前述のヘッド装着部59と同一平面上に揃えられている。なお、本実施形態のヘッド装着部59および位置決め基準部62は、周辺部(サブキャリッジ26の下面側の他の部分)よりも記録媒体側に向けて突出させて段差をつけた状態に形成(図15(c)、図18等参照)されているが、段差をつけずに平面に形成することもできる。いずれにしても、各位置決め基準部62および各ヘッド装着部59は、例えば同一ステージでの研磨工程を経ることで、同一面上に揃えられている。
【0026】
また、サブキャリッジ26の上面(位置決め基準部62とは反対側の面であって、外枠部26aの上端面。本発明における第2の面に相当)側には、各位置決め基準部62に対応する位置に、サブキャリッジ26をアライメント装置58の基準ピン61側に付勢する押し上げプローブ63(後述)が当接される当接面64がそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では、当接面64は、周辺部(外サブキャリッジ26の上面側の他の部分)よりも位置決め基準部62とは反対側に向けて僅かに突出させて段差をつけた状態に形成(図15(c)等参照)されている。
【0027】
さらに、図10(a)に示すように、サブキャリッジ26の外枠部26aには、流路部材24の流路挿通穴に対応する位置に固定ネジ穴33が開口している。上述したように、固定ネジ穴33は、流路部材24の流路挿通穴を通じて流路部材止着ネジ45が止着(螺合)される。これにより、サブキャリッジ26の上部に流路部材24が取り付けられる。また、図10〜図13に示すように、サブキャリッジ26の四方の外枠部26aのうちの3つには、側方に向けて耳片状のフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aに開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着(螺合)することで、キャリッジ本体12内部に記録ヘッドユニット17が収容・固定される。なお、上述したように、記録ヘッドユニット17および流路部材24をキャリッジ本体12に対して本固定する前の段階で、上記の調整レバー20の操作により、キャリッジ本体12に対する記録ヘッドユニット17の位置や傾きなどの姿勢が調整される。また、図15以降の図では、説明を容易にするためフランジ部30、固定ネジ穴33等を省略してある。
【0028】
次に記録ヘッド18について説明する。図16(a)は記録ヘッド18の底面図、図16(b)記録ヘッド18の側面図、図16(c)は記録ヘッド18の正面図である。なお、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。
【0029】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)をヘッドケース52に備えている。この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。記録ヘッド18のノズル形成面53には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列56(ノズル群の一種)を構成し、このノズル列56がノズル列56に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列56は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズル開口から成る。なお、図16(a)および図19では、2列のノズル列56を構成するノズル51のうち、一方(図16(a)における上側)のノズル列56の両端に位置するノズル51のみを強調して図示しており、残りのノズル51については省略してある。
【0030】
ヘッドケース52は、中空箱体状部材であり、その先端側には、ノズル形成面53を露出させた状態で流路ユニットを固定している。また、ヘッドケース52の内部に形成された収容空部内には圧力発生手段などを収容し、ノズル形成面53とは反対側の基端面側(即ち、上面側であり、記録媒体とは反対側)には、流路ユニット側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。また、ヘッドケース52の上面側におけるノズル列56に沿った方向の両端部には、側方に向けて突出したフランジ部52aがそれぞれ形成されている。このフランジ部52aには、スペーサー32がネジ等により着脱可能に固定されている。
【0031】
スペーサー32は、ヘッド装着部59に接続される直方体状に形成された合成樹脂等の部材であり、1つの記録ヘッド18に対して、両側のフランジ部52a(図16参照)の上面(サブタンク37側の面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる。このスペーサー32のヘッド装着部59に固定する側の面は、ヘッド装着部59と略同じ面積に形成されている。また、各スペーサー32においてサブキャリッジ26とは反対側の第1の面32aには、アライメント装置58のアライメント調整ピン65(本発明における位置決めピンに相当。後述)に対応して、当該アライメント調整ピン65が、ノズル列方向の側方から嵌合可能な溝部66が設けられている。これらの溝部66は、サブキャリッジ26とは反対側の面からサブキャリッジ26側の第2の面32bに向けて窪んだ状態(或いは、貫通した状態)でそれぞれ設けられ、ノズル列56に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成されている。本実施形態では、溝部66はノズル形成面53側から見て、内側から外側に広がったV字状に形成されている。また、溝部66の最大幅(スペーサー32の側面におけるV字状の溝部66の開口幅)は、アライメント調整ピン65の直径よりも大きくなるように形成されている。このため、アライメント調整ピン65を溝部66にそれぞれ挿通して、このアライメント調整ピン65によって両側から記録ヘッド18を挟持させた際に、溝部66を区画する内壁の一部にアライメント調整ピン65が点接触する。この状態で、記録ヘッド18のサブキャリッジ26に対する位置調整が行われる。また、スペーサー32の溝部66を挟んで両側には、ネジが螺合可能なスペーサー挿通穴29が上下に貫通して2つ開口している。このスペーサー挿通穴29を介してサブキャリッジ26の止着穴にネジを螺合することで、サブキャリッジ26にスペーサー32を固定することができる。
【0032】
サブタンク37は、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室側に導入する部材である。また、サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、流路部材24の接続流路40が接続される流路接続部38が設けられている(図10(a)参照)。この流路接続部38には図示しないリング状のパッキンが嵌め込まれており、このパッキンにより接続流路40との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板(図示せず)が設けられており、各駆動基板に電気的に接続された配線部材(図示せず)がサブタンク37の後端面側にそれぞれ引き出されている。この配線部材が上記の信号ケーブル15と接続されることで、当該信号ケーブル15を通じてプリンター1の制御部から送られてくる駆動信号等を、駆動基板を介して圧力発生手段側に供給することができる。
【0033】
次に、記録ヘッド18を位置決めしてサブキャリッジ26に取り付ける際に用いるアライメント装置58について、図を用いて説明する。図17はアライメント装置58に記録ヘッドユニット17をセットした状態の正面図、図18はアライメント装置58に記録ヘッドユニット17をセットした状態の右側面図、図19は基準ピン61を接触させた記録ヘッドユニット17の平面図である。
【0034】
本実施形態のアライメント装置58は、図17、図18に示すように、底板69(定盤)と、サブキャリッジ26を固定するサブキャリッジ把持機構72と、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の位置決めを行うヘッド位置決め機構71と、該ヘッド位置決め機構71を支持する支持フレーム70とから概略構成される。底板69は、アライメント装置58の底部を成す板部材であり、サブキャリッジ把持機構72および支持フレーム70が上面に配置されている。支持フレーム70は、ヘッド位置決め機構71を支持するための剛性のある支持部材であり、サブキャリッジ把持機構72を挟んで両側に位置する柱状の側部支持フレーム70bと、これら側部支持フレーム70bの上端において両側の側部支持フレーム70bの間に架設した上部支持フレーム70aとから構成される。また、上部支持フレーム70aは、側部支持フレーム70bの上端部から前方に延出した庇状に形成されており、この庇部(オーバーハング部)にヘッド位置決め機構71を配置している。また、側部支持フレーム70bの下端には、車輪等を備えた前後移動駆動部(図示せず)が設けられており、支持フレーム70の前後方向の移動を可能にしている。これにより、ヘッド位置決め機構71も支持フレーム70に伴って前後方向に移動可能となっている。
【0035】
サブキャリッジ把持機構72は、複数のサブキャリッジ支持部79と、該複数のサブキャリッジ支持部79の先端部分にそれぞれ配設される複数の基準ピン61と、該複数の基準ピン61の下方に位置する複数の押し上げプローブ63とから構成される。サブキャリッジ支持部79は、底板69に対して立設された脚部と、当該脚部の上端部から内側(サブキャリッジ26側)に向けて直角に延出した先端部とから成る部材であり、後述するように押し上げプローブ63によってサブキャリッジ26が付勢された状態においても変形しない程度の剛性のある部材である。このサブキャリッジ支持部79の先端部の下面に、基準ピン61が下方に向けて形成されている。基準ピン61は、サブキャリッジ26の位置決め基準部62に当接する突起であり、サブキャリッジ26が付勢された状態においても変形しない程度の剛性のある部材で形成されている。そして、本実施形態では、サブキャリッジ26の3個の位置決め基準部62に対応して、3個の基準ピン61およびサブキャリッジ支持部79を配置している。なお、これら3個の基準ピン61の突起の先端位置は、同一面上に揃えられている。そして、これらの基準ピン61によって、ヘッド位置決め機構71に対するアライメント時のサブキャリッジ26の姿勢が規定される。
【0036】
基準ピン61の直下(底板69側)であって、アライメント時のサブキャリッジ26を挟んだ反対側には、押し上げプローブ63が配置されている。押し上げプローブ63は、サブキャリッジ26の当接面64に対応する位置に先端部63aを当接して、サブキャリッジ26を上方に付勢する部材である。詳しくは、押し上げプローブ63は当接面64に当接する先端部63aと、該先端部63aが形成される円盤状の上基部63bと、該上基部63bから下方に延在した軸部63cと、該軸部63cが挿通される下基部63dと、上基部63bと下基部63dの間に配置されるバネ部材63eとから構成されている。先端部63aは、ゴム等の弾性部材により形成され、上基部63bから上方に延設した突起の先端部に形成されている。下基部63dは、軸部63cが挿通可能な穴が内部に形成されたドーナツ状の部材であり、底板69に固定されている。そして、バネ部材63eは、軸部63cに巻装されており、一端が上基部63bの下面に当接すると共に、他端が下基部63dの上面に当接する状態でされている。このバネ部材63eの付勢力によって上基部63bを上方に押圧することで、上基部63bに形成された先端部63aがサブキャリッジ26を押圧可能になる。なお、本実施形態では、3個の基準ピン61に対応した位置に3個の押し上げプローブ63を備えている。また、各押し上げプローブ63に対応して、上基部63bをバネ部材63eの付勢力に抗して下側に押し下げるプローブ押し下げ機構(図示せず)を備えている。このプローブ押し下げ機構は、サブキャリッジ26を把持しないときは、上基部63bを押圧して下方に押し下げ、サブキャリッジ26を把持するときは、上基部63bの押圧を解除する機構である。
【0037】
ヘッド位置決め機構71は、上部支持フレーム70aの下部に固定されたアライメント調整機構75と、該アライメント調整機構75の下部に位置する調整ステージ76と、該調整ステージ76の下部に固定された2つのヘッド把持駆動部77と、該2つのヘッド把持駆動部77からそれぞれ下方に延出した2つのアライメント調整ピン65と、前記調整ステージ76より上方に位置する2つのカメラ74とから構成される。アライメント調整機構75は、移動可能に配設した調整ステージ76を水平面(底板69に対して平行な面)内においてXおよびY方向に移動させるための機構であり、図示しないX方向調整レバーおよびY方向調整レバーを備えている。このX方向調整レバーおよびY方向調整レバーを操作することによって、基準ピン61により位置決めされた状態のサブキャリッジ26に対して調整ステージ76を平行に移動することができる。
【0038】
調整ステージ76は、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の列設方向において、サブキャリッジ26の長さの略半分の長さであって、当該方向に垂直な方向(記録ヘッド18のノズル列56に沿った方向)において記録ヘッド18の長さと略同じ長さに形成された板材である。また、調整ステージ76の前端部における両端側には、それぞれヘッド把持駆動部77が固定されている。
【0039】
ヘッド把持駆動部77は、アライメント調整ピン65による記録ヘッド18およびスペーサー32の把持を制御するための部材である。このヘッド把持駆動部77は、アライメント調整ピン65が固定されるピン固定部77aと、該ピン固定部77aの移動を制御する駆動機構部77bとから構成される。駆動機構部77bは、上部を調整ステージ76の下面に固定している。また、ピン固定部77aは、駆動機構部77bの下部に記録ヘッド18のノズル列56に沿った方向に摺動可能な状態で接続されている。そして、このピン固定部77aは、駆動機構部77bの駆動によってノズル列56に沿った方向(図17において矢印で示す方向)に摺動する。
【0040】
アライメント調整ピン65は、2つのヘッド把持駆動部77のピン固定部77aの下面に、底板69に対して垂直な姿勢で固定された棒状の部材である。このアライメント調整ピン65の下端部は、ゴム等の弾性部材で覆われている。そして、各アライメント調整ピン65は、サブキャリッジ26に配置された記録ヘッド18側に移動して、両側からそれぞれ対応するスペーサー32の溝部66に嵌入して記録ヘッド18を挟持すると共に、スペーサー32を区画する内壁に当接して、記録ヘッド18およびスペーサー32を把持することができる。具体的には、記録ヘッド18およびスペーサー32を把持するときは、アライメント調整ピン同士の間隔を記録ヘッド18の両側のスペーサー32の溝部66の間隔よりも少し広い状態にしておき、ヘッド把持駆動部77を駆動させて、一方のアライメント調整ピン65を記録ヘッド18側に移動させると共に、他方のアライメント調整ピン65も同様に記録ヘッド18側に移動させる。これにより、それぞれのアライメント調整ピン65が、スペーサー32の溝部66の内側に側方から進入して、記録ヘッド18およびスペーサー32を把持する。また、ヘッド把持駆動部77を上述した動作と逆の動作をさせれば、各アライメント調整ピン65を記録ヘッド18とは反対側に移動させることができ、これにより各アライメント調整ピン65を溝部66の外側まで移動させて、記録ヘッド18およびスペーサー32の把持を解除することができる。
【0041】
また、調整ステージ76より上方に位置するカメラ74は、上部支持フレーム70aの上面に固定され、上部支持フレーム70aの前方に延在させた支持部材の前端面に固定されている。このカメラ74は、記録ヘッド18のノズル形成面53に形成された位置決めマークを撮影し、カメラ74の撮影した画像内にノズル形成面53に重畳する状態で表示される基準マーク81とのズレ量を観るための装置である。本実施形態のノズル形成面53に形成されたマークは、2列に形成されたノズル列56のうち、一方のノズル列56の両端部に位置するノズル51で代用している。なお、本実施形態の基準マーク81は十字で示され(図20参照)、この十字の中心が位置決めマークであるノズル51の基準位置となる。また、調整ステージ76は、カメラ74の撮影の邪魔にならないように、前端面の一部が欠截されている。
【0042】
次に、上記したアライメント装置58を用いて、サブキャリッジ26に対して記録ヘッド18等を位置決めして取り付ける記録ヘッドユニット17の製造方法を説明する。この記録ヘッドユニット17の製造方法は、サブキャリッジ26の複数の位置決め基準部62を基準として、アライメント装置58に対するサブキャリッジ26のヘッド装着部59の位置を規定するサブキャリッジ位置決め工程(本発明における取付枠材位置決め工程に相当)と、該サブキャリッジ位置決め工程によってアライメント装置58に対して位置決めされたサブキャリッジ26に対し、記録ヘッド18等を位置決めするヘッド位置決め工程と、サブキャリッジ26に対して位置決された状態で記録ヘッド18を固定するヘッド固定工程と、から概略構成される。
【0043】
詳しく説明すると、まず、サブキャリッジ26を、受け渡し装置(図示せず)を用いてアライメント装置58の押し上げプローブ63の先端部63aと基準ピン61の間に位置するように、正面側から底板69に対して平行な姿勢で導入する。このとき、各押し上げプローブ63の先端部63aは、プローブ押し下げ機構によって、下方に押し下げられている。そして、サブキャリッジ26の各位置決め基準部62がそれぞれ基準ピン61に対向する位置に保持されると、各プローブ押し下げ機構による押し上げプローブ63の押し下げ状態を解除して、各先端部63aがそれぞれサブキャリッジ26の当接面64に当接して上方(ヘッド位置決め機構71側)に付勢する。これにより、サブキャリッジ26は、位置決め基準部62に基準ピン61が当接して、ヘッド位置決め機構71に対し高さ方向(位置決め基準部62および各ヘッド装着部59で形成される面に対して垂直な方向)の位置決めがされると共に、基準ピン61と押し上げプローブ63の先端部63aとの間に把持される(サブキャリッジ位置決め工程)。このため、製造誤差等に起因してサブキャリッジ26の厚みがばらついたとしても、アライメント装置58に対する位置決め基準部62の高さ位置は同じになり、この位置がヘッド装着部59の位置を規定する基準位置となる。
【0044】
次に、上記サブキャリッジ位置決め工程によってアライメント装置58に対して位置決めされたサブキャリッジ26に対し、両端にスペーサー32が取り付けられた記録ヘッド18を載置する。なお、記録ヘッド18は従前の方法で作成される。ここで、記録ヘッド18は、ノズル形成面53(スペーサー32における第1の面32a)を上にして、記録ヘッド18の一部(主にサブタンク37)がサブキャリッジ26の収容部35に収まる状態で両側のスペーサー32をそれぞれヘッド装着部59に載置することで、スペーサー32を介してサブキャリッジ26に載置される。本実施形態では、5個の記録ヘッド18がスペーサー32を介してサブキャリッジ26に載置されている。次に、支持フレーム70を移動させることでヘッド位置決め機構71を前後に移動させて、5個並列した記録ヘッド18のうち並列方向の一方の端部に位置する記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32の溝部66に、アライメント調整ピン65を対向させる。その後、ヘッド把持駆動部77を駆動することによって、アライメント調整ピン65を各溝部66にそれぞれ嵌合させ、各アライメント調整ピン65によって両側から内側に付勢することで記録ヘッド18を把持する。そして、記録ヘッド18のノズル形成面53をカメラ74で撮影した画像を基に、溝部66の底部(溝部66がスペーサー32を貫通した状態で形成されている場合には、フランジ部52a)をアライメント調整ピン65によってサブキャリッジ26側に押圧した状態で、記録ヘッド18がサブキャリッジ26の取り付け面内において位置決めされる(ヘッド位置決め工程)。より詳しくは、カメラ74で撮影した画像を基に、アライメント調整機構75のX方向調整レバーおよびY方向調整レバーを操作することによって、調整ステージ76をX方向およびY方向に移動させる。これに連動して両側のアライメント調整ピン65も移動するため、移動方向に応じたどちらか一方の溝部66がアライメント調整ピン65の移動方向に押圧され、記録ヘッド18がその方向に移動する。
【0045】
例えば、記録ヘッド18が所定位置からX方向に−b、Y方向に−aずれていた場合、図20に示すように、一方のカメラ74で撮影した画像は、位置決めマークとして使用するノズル51の中心が、基準マーク81の中心からX方向に−b、Y方向に−aだけずれた画像となる。この場合、アライメント調整機構75のX方向調整レバーを操作し、記録ヘッド18をX方向にbだけ移動させる。また、アライメント調整機構75のY方向調整レバーを操作し、記録ヘッド18をY方向にaだけ移動させる。これにより、位置決めマークとして使用するノズル51の中心と基準マーク81の中心とを重ねることができ、記録ヘッド18は所定の位置に位置決めされる。なお、他方のカメラ74で撮影した画像についても略同じである。
【0046】
このように、アライメント調整機構75を操作することで、1つの記録ヘッド18を所定の位置に移動させて位置決めすることができる。なお、溝部66はV字状に形成されており、溝部66の底部がX方向およびY方向に対して斜めに形成されているため、アライメント調整ピン65をX方向およびY方向のどちらか一方に移動させれば、溝部66の底部を必ず押圧することができる。
【0047】
上記のようにアライメント調整ピン65によって把持された状態で、サブキャリッジ26に対して位置決された記録ヘッド18は、サブキャリッジ26と記録ヘッド18の間に形成される僅かな隙間に注入針等によって接着剤が導入され、仮固定される。その後、この仮固定された記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32の溝部66に嵌合しているアライメント調整ピン65を、ヘッド把持駆動部77を再度駆動することによって溝部66から外し、両端のスペーサー32よりも外側に移動させる。この状態で、支持フレーム70を隣に位置する記録ヘッド18側に向けて記録ヘッド18の並列ピッチ分だけ移動させることで、ヘッド位置決め機構71を同様に移動させ、仮固定した記録ヘッド18の隣に位置する記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32の溝部66に、アライメント調整ピン65を対向させる。そして、上記と同様にヘッド位置決め工程後、記録ヘッド18の仮固定を行い、アライメント調整ピン65を溝部66から外す。このように、ヘッド位置決め機構71の移動、ヘッド位置決め工程および仮固定を繰り返すことで、全ての記録ヘッド18をサブキャリッジ26に仮固定することができる。全ての記録ヘッド18の仮固定が終了すると、アライメント調整ピン65を溝部66から外すと共に、各押し上げプローブ63の先端部63aをプローブ押し下げ機構によって押し下げて、記録ヘッド18が仮固定されたサブキャリッジ26をアライメント装置58から取り外す。そして、各記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32に開設したスペーサー挿通穴29に、ネジを締結することで、スペーサー32がサブキャリッジ26に強固に固定される(ヘッド固定工程)。このようにして、本実施形態の記録ヘッドユニット17を製造することができる。
【0048】
なお、本実施形態のスペーサー32は、記録ヘッド18とは別体としたが、記録ヘッド18の一部としてヘッドケース52に一体的に形成してもよい。また、記録ヘッドユニット17は、サブキャリッジ26に複数の記録ヘッド18のみを取り付けた構成を説明したが、図9等に示すように、ヘッド保護部材83を取り付けた構成を採用することもできる。ヘッド保護部材83は、複数の記録ヘッド18の並列方向に沿って、この並列方向の端に位置する記録ヘッド18の外側に取り付けられ、この記録ヘッド18の側面を保護するための部材である。また、ヘッド保護部材83の下面は、記録ヘッド18側とは反対側の側面に向けて上り傾斜した傾斜面となっており、送られてくる記録媒体を下方に逸らして直接記録ヘッド18に接触しないようにしている。なお、このようなヘッド保護部材83をサブキャリッジ26に取り付けるには、ヘッド固定工程後にサブキャリッジ26にネジ等で固定すればよい。
【0049】
このように、記録ヘッド18のノズル列56に沿った方向の両端部には、サブキャリッジ26に固定されるスペーサー32がそれぞれ設けられ、各スペーサー32においてサブキャリッジ26とは反対側の第1の面32aに、アライメント装置58に設けられたアライメント調整ピン65に対応して、当該アライメント調整ピン65が嵌合可能な溝部66が、第1の面32aからサブキャリッジ26側の第2の面32bに向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、該溝部66は、ノズル列56に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成されたので、両側の溝部66にアライメント調整ピン65を嵌合させて記録ヘッド18をがたつき無く把持することができ、この状態でアライメント調整ピン65を移動させることで、記録ヘッド18を追従させて当該記録ヘッド18の位置決めをすることができる。このため、アライメント調整ピン65の移動量と記録ヘッド18の移動量との間に乖離がおきることがなく、正確に記録ヘッド18の位置決めをすることができる。また、アライメント調整ピン65が溝部66の内壁に対して点接触する構成であり、また、スペーサー32を上方から押圧する必要が無いため、スペーサー32およびサブキャリッジ26が変形し難い。その結果、記録ヘッドユニット17の製造ばらつきを抑えることができる。また、スペーサー32は、記録ヘッド18に対して着脱可能に固定したので、スペーサー32をサブキャリッジ26に接着する構成においても、スペーサー32から記録ヘッド18を取り外すことができるので、記録ヘッド18の交換や修理等が容易となる。さらに、溝部66の最大幅を、アライメント調整ピン65の直径よりも大きくしたので、安定して溝部66にアライメント調整ピン65を嵌合することができ、より正確に記録ヘッド18の位置決めをすることができる。
【0050】
ところで、上記実施形態のサブキャリッジ26では、位置決め基準部62を3個設けたが、これには限られない。例えば、4個の位置決め基準部62をサブキャリッジ26に設ける構成としてもよい。要は、3個以上の位置決め基準部62をサブキャリッジ26に設け、そこにアライメント装置58の基準ピン61を当接することで、サブキャリッジ26の位置を規定できればよい。また、上記実施形態では、3個の位置決め基準部62をサブキャリッジ26の4つの外枠部26aのうち2つの外枠部26aに設けたが、これには限られない。例えば、3個の位置決め基準部62を3つの外枠部26aに分けて設けてもよい。あるいは、複数の位置決め基準部62を4つの外枠部26aに分けて設けてもよい。要は、複数の位置決め基準部62をサブキャリッジ26の4つの外枠部26aのうちの少なくとも2つの外枠部26aに、互いに間隔を空けて、設ければよい。さらに、上記実施形態では、溝部66をV字状に形成したが、これには限られない。例えば、溝部をU字状に形成しても良い。要は、溝部の最大幅を、アライメント調整ピンの直径よりも大きくなるように形成すればよい。
【0051】
また、上記アライメント装置58では、支持フレーム70を移動させることで、サブキャリッジ26に対してヘッド位置決め機構71を移動させたが、これには限られない。例えば、支持フレームは移動させずに、サブキャリッジ把持機構を移動させる構成にしてもよい。この場合も同様に、サブキャリッジ26に対してヘッド位置決め機構71を移動させることができ、複数の記録ヘッド18の位置決めを行うことができる。さらに、上記アライメント調整機構75では、アライメント調整ピン78を水平面(底板69に対して平行な面)内においてXおよびY方向に移動できるように構成したが、これには限られない。例えば、水平面内においてXおよびY方向の移動に加えて、θ方向(水平面内において記録ヘッド18の中心を軸とする回転方向)の移動も可能なように構成することもできる。また、上記ヘッド固定工程では、サブキャリッジ26に対して全部の記録ヘッド18の仮固定を行った後にアライメント装置58から取り外して、各記録ヘッド18を固定したが、これには限られない。例えば、サブキャリッジ26をアライメント装置58から取り外さずに、ネジを締結して各記録ヘッド18を固定してもよい。さらに、上記各実施形態では、記録媒体に対して記録ヘッド18を往復移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド18の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド18に対して記録媒体を移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。
【0052】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…プリンター、17…記録ヘッドユニット、18…記録ヘッド、26…サブキャリッジ、32…スペーサー、58…アライメント装置、59…ヘッド装着部、61…基準ピン、62…位置決め基準部、63…押し上げプローブ、64…当接面、65…アライメント調整ピン、66…溝部、71…ヘッド位置決め機構、72…サブキャリッジ把持機構、74…カメラ、X…並列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを列設したノズル列の前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドが位置決め手段によって位置決めされた状態で取り付けられる取付枠材とを備えた液体噴射ヘッドユニットであって、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル列に沿った方向の両端部には、前記取付枠材に固定される固定部材がそれぞれ設けられ、
各固定部材において前記取付枠材とは反対側の第1の面に、前記位置決め手段に設けられた位置決めピンに対応して、当該位置決めピンが前記ノズル列方向の側方から嵌合可能な溝部が、前記第1の面から前記取付枠材側の第2の面に向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、
該溝部は、前記ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成されたことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記固定部材は、液体噴射ヘッドに対して着脱可能に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記溝部の最大幅が、前記位置決めピンの直径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
複数のノズルを列設したノズル列の前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドが取り付けられる取付枠材とを備え、該取付枠材に対し前記液体噴射ヘッドを位置決め手段を用いて位置決めして取り付ける液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル列に沿った方向の両端部には、前記取付枠材に固定される固定部材が設けられ、
各固定部材において前記取付枠材とは反対側の第1の面に、前記位置決め手段に設けられた位置決めピンに対応して、当該位置決めピンが前記ノズル列方向の側方から嵌合可能な溝部が、前記第1の面から前記取付枠材側の第2の面に向けて窪んだ状態でそれぞれ設けられ、
該溝部は、前記ノズル列に沿った方向において内側から側方に向かって幅が次第に広がる状態に形成され、
位置決め手段の位置決めピンを各溝部にそれぞれ嵌合させ、各位置決めピンによって両側から内側に付勢することで前記液体噴射ヘッドを把持すると共に、当該溝部の底部を位置決めピンによって前記取付枠材側に押圧した状態で、当該液体噴射ヘッドが前記取付枠材の取り付け面内において位置決めされることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−111098(P2012−111098A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260952(P2010−260952)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】