説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】駆動回路の小型化及び低コスト化と耐久性の向上を図る。
【解決手段】液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子17及び該圧電素子17の基端部が固定される熱伝導部材35とからなる圧電素子ユニット18と、該圧電素子ユニット18が収容される収容部19を有するケースヘッド20と、前記圧電素子17に接続されて当該圧電素子17を駆動する駆動回路60が実装されたフレキシブルプリント基板50とを具備し、前記駆動回路60が、前記熱伝導部材35に接続されていると共に、前記ケースヘッド20の少なくとも前記熱伝導部材35が接合される領域には、当該ケースヘッド20の他の領域よりも熱伝導率の高い材料からなり、且つ前記圧力発生室に液体を供給する液体導入路21が設けられた液体導入部材30が設けられており、前記熱伝導部材35と前記液体導入部材30とが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特にインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、圧電素子の変位による圧力を利用してノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。具体的には、ノズル開口に連通する圧力発生室が設けられ流路形成板とその一方面側に設けられる振動板とを有する流路ユニットと、流路ユニットに接着剤を介して接着されたノズル開口を有するノズルプレートと、各圧力発生室に対応して設けられ支持基板に固定された圧電素子(圧電振動子)と、この圧電素子を収容する収容室を有するケースヘッド(基台)とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、圧電素子を駆動するための駆動信号を入力する駆動回路は、フレキシブルプリント基板に実装され、駆動回路からの駆動信号はフレキシブルプリント基板を介して圧電素子に印加される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−74740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フレキシブルプリント基板に実装される駆動回路は、当該駆動回路自体でしか放熱できないため、放熱能力が限られており、回路損失が放熱能力を超える場合には駆動回路が熱により破壊されてしまうと共に、放熱性を確保するには放熱面積が必要となるため、駆動回路の小型化を行うことができないという問題がある。
【0006】
特に、特許文献1のようなケースヘッド内に駆動回路が設けられている場合、駆動回路はケースヘッド内でしか放熱することができず、外気に放熱することができないため駆動回路の温度が高くなってしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の他の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、駆動回路の放熱を効率よく行って、駆動回路の小型化及び低コスト化を図ると共に、駆動回路の耐久性を向上して液体噴射特性を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子及び該圧電素子の基端部が固定される熱伝導部材とからなる圧電素子ユニットと、該圧電素子ユニットが収容される収容部を有するケースヘッドと、前記圧電素子に接続されて当該圧電素子を駆動する駆動回路が実装されたフレキシブルプリント基板とを具備し、前記駆動回路が、前記熱伝導部材に接続されていると共に、前記ケースヘッドの少なくとも前記熱伝導部材が接合される領域には、当該ケースヘッドの他の領域よりも熱伝導率の高い材料からなり、且つ前記圧力発生室に液体を供給する液体導入路が設けられた液体導入部材が設けられており、前記熱伝導部材と前記液体導入部材とが接続されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、駆動回路の熱を熱伝導部材及び液体導入部材を介して外装部材を構成するケースヘッドに熱伝導させることができるため、駆動回路の熱をケースヘッドによって大気中に放熱することができると共に、駆動回路の熱を液体導入部材の液体導入路を流れる液体によって冷却(放熱)することができる。したがって、駆動回路の熱による破壊を防止することができると共に、駆動回路を大型化する必要がなく、小型化してコストを低減することができる。また、駆動回路の発熱による低寿命化を防止して耐久性を向上することができると共に、液体噴射特性及び連続吐出性能を向上することができる。
【0010】
ここで、前記液体導入部材が複数個設けられて、複数の前記液体導入路が設けられていることが好ましい。これによれば、液体導入部材の材料を液体の粘度に応じて変更することができるため、駆動回路から伝わった熱により液体導入路を流れる液体の加熱温度を液体導入部材の材料によって調整することができる。したがって、液体の粘度に応じて液体を所望の温度で加熱でき、液体吐出特性を均一化すると共に向上することができる。
【0011】
また、前記ケースヘッドが、樹脂材料からなると共に、前記液体導入部材が金属材料からなることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドの重量が大きくなるのを防止すると共に、駆動回路の熱を効率よく放熱させることができる。
【0012】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、信頼性を向上すると共に低コスト化した液体噴射装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図である。図2は、図1のA−A′断面図である。
【0014】
図示するように、インクジェット式記録ヘッド10は、複数の圧力発生室11を有する流路形成基板12と、各圧力発生室11に連通する複数のノズル開口13が穿設されたノズルプレート14と、流路形成基板12のノズルプレート14とは反対側の面に設けられる振動板15とを具備する流路ユニット16を有する。さらに、振動板15上の各圧力発生室11に対応する領域に設けられる圧電素子17を有する圧電素子ユニット18と、振動板15上に固定されて圧電素子ユニット18が収容される収容部19を有するケースヘッド20とを具備する。
【0015】
流路形成基板12には、その一方面側の表層部分に、圧力発生室11が隔壁によって区画されてその幅方向で複数並設されている。各圧力発生室11の列の外側には、ケースヘッド20の液体導入路であるインク導入路21を介してインクが供給されるリザーバ22が、流路形成基板12を厚さ方向に貫通して設けられている。そして、リザーバ22と各圧力発生室11とは、インク供給路23を介して連通し、各圧力発生室11には、インク導入路21、リザーバ22及びインク供給路23を介してインクが供給される。インク供給路23は、本実施形態では、圧力発生室11よりも狭い幅で形成されており、リザーバ22から圧力発生室11に流入するインクの流路抵抗を一定に保持する役割を果たしている。さらに、圧力発生室11のリザーバ22とは反対の端部側には、流路形成基板12を貫通するノズル連通孔24が形成されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板12に液体流路として、圧力発生室11、リザーバ22、インク供給路23、ノズル連通孔24が設けられている。このような流路形成基板12は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、流路形成基板12に設けられる上記圧力発生室11等は、流路形成基板12をエッチングすることによって形成されている。
【0016】
この流路形成基板12の一方面側にはノズル開口13が穿設されたノズルプレート14が接合され、各ノズル開口13は、流路形成基板12に設けられたノズル連通孔24を介して各圧力発生室11と連通している。
【0017】
また、流路形成基板12の他方面側、すなわち、圧力発生室11の開口面側には振動板15が接合されて、各圧力発生室11はこの振動板15によって封止されている。
【0018】
この振動板15は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材からなる弾性膜25と、この弾性膜25を支持する、例えば、金属材料等からなる支持板26との複合板で形成されており、弾性膜25側が流路形成基板12に接合されている。例えば、本実施形態では、弾性膜25は、厚さが数μm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルムからなり、支持板26は、厚さが数十μm程度のステンレス鋼板(SUS)からなる。また、振動板15の各圧力発生室11に対向する領域内には、圧電素子17の先端部が当接する島部27が設けられている。この圧電素子17の先端面は、接着剤によって島部27に接合されている。また、振動板15のリザーバ22に対向する領域には、支持板26を貫通することで形成されたインク導入口29が設けられており、ケースヘッド20及び液体導入部材30のインク導入路21から供給されたインクは、インク導入口29を介してリザーバ22に供給される。また、振動板15のリザーバ22に相対向する領域のうち、インク導入口29以外の領域、すなわち、インク導入口29の圧力発生室11の並設方向両側は、支持板26がエッチングにより除去されて実質的に弾性膜25のみで構成されるコンプライアンス部(図示なし)が設けられている。なお、このコンプライアンス部は、リザーバ22内に圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部の弾性膜25が変形することによって圧力変化を吸収し、リザーバ22内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
【0019】
ここで、圧力発生室11内にインク滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段である圧電素子17について説明する。本実施形態では、圧電素子17は、一つの圧電素子ユニット18において一体的に形成されている。すなわち、圧電材料31と電極形成材料32,33とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層した圧電素子形成部材34を形成し、この圧電素子形成部材34を各圧力発生室11に対応して櫛歯状に切り分けることによって各圧電素子17が形成されている。すなわち、本実施形態では、複数の圧電素子17が一体的に形成されている。そして、この圧電素子17(圧電素子形成部材34)の振動に寄与しない不活性領域、すなわち、圧電素子17の基端部側が熱伝導部材35に固着され、圧電素子17は熱伝導部材35を介してケースヘッド20に固定されている。そして、圧電素子17の基端部近傍には、熱伝導部材35とは反対側の面に、各圧電素子17を駆動するための信号を供給する配線層51を有するフレキシブルプリント基板50が接続され、本実施形態では、これら圧電素子17(圧電素子形成部材34)と熱伝導部材35とフレキシブルプリント基板50とで圧電素子ユニット18が構成されている。
【0020】
このような圧電素子ユニット18は、圧電素子17の先端部が上述したように振動板15の島部27に当接された状態で固定されている。例えば、本実施形態では、上述したように振動板15上にケースヘッド20が固定されており、圧電素子ユニット18は、このケースヘッド20の収容部19内に収容されて、圧電素子17が固定された熱伝導部材35が、圧電素子17とは反対面側でケースヘッド20に固定されている。
【0021】
具体的には、ケースヘッド20は、振動板15上に接合される樹脂材料からなり、ケースヘッド20の島部27に相対向する領域には、厚さ方向に貫通した収容部19が設けられている。また、ケースヘッド20の収容部19のリザーバ22側には、段差部38が設けられており、ケースヘッド20のリザーバ22に相対向する領域には、液体導入部材30が挿入される厚さ方向に貫通した保持孔39が設けられている。
【0022】
このようなケースヘッド20の保持孔39内には、インク導入口29に連通してリザーバ22にインクを供給する液体導入路であるインク導入路21が設けられた液体導入部材30が保持されている。ケースヘッド20の保持孔39は、液体導入部材30の側面が段差部38の側面に露出するように設けられており、保持孔39に固定された液体導入部材30と段差部38に固定された圧電素子ユニット18の熱伝導部材35とは、接続されることで、熱伝導部材35の熱が液体導入部材30に熱伝導可能となっている。すなわち、熱伝導部材35と液体導入部材30とは熱伝導可能に接続(熱結合)されている。ここで、熱伝導部材35と液体導入部材とが熱伝導可能に接続(熱結合)された状態とは、両者が互いに接触した状態又は両者が互いに接着剤等を介して接合された状態のことを言う。すなわち、熱伝導部材35と液体導入部材とが互いに接触していても、また、接着剤等で接合されていてもよい。
【0023】
なお、熱伝導部材35と液体導入部材30とを熱伝導可能に接触させる際には、例えば、熱伝導部材35をケースヘッド20の段差部38に接着剤等で固定することで、熱伝導部材35と液体導入部材30とを当接した状態(接触した状態)で固定することができる。また、熱伝導部材35と液体導入部材30とを接着剤を介して接合する際には、接着剤として比較的に熱伝導率の高い材料を用いて接着するのが好ましい。熱伝導率の高い接着剤としては、例えば、シリコーン材料からなる電熱フィラーが混練された接着剤等が挙げられる。本実施形態では、段差部38に複数のリブ38aを設け、リブ38aの先端面を熱伝導部材35に当接させると共に、リブ38aと熱伝導部材35との隙間を接着剤70で接着し、熱伝導部材35と液体導入部材30とを熱伝導率の高い、電熱フィラーが混練された接着剤71で接着するようにした。また、ケースヘッド20と液体導入部材30とは、例えば、液体導入部材30を保持孔39に圧入してもよく、また接着剤等で接着するようにしてもよい。
【0024】
また、ケースヘッド20の収容部19内には、圧電素子17に電気的に接続されて圧電素子17を駆動するための駆動回路が実装されたフレキシブルプリント基板50が設けられている。
【0025】
フレキシブルプリント基板50は、フレキシブルプリンティングサーキット(FPC)や、テープキャリアパッケージ(TCP)などからなる。詳しくは、フレキシブルプリント基板50は、例えば、ポリイミド等のベースフィルム52の表面に銅薄等で所定のパターンの配線層51を形成し、配線層51の圧電素子17と接続される端子部などの他の配線と接続される領域以外の領域をレジスト等の絶縁材料53で覆ったものである。
【0026】
このような、フレキシブルプリント基板50の配線層51は、その基端部側で、例えば、半田、異方性導電材等によって圧電素子17を構成する電極形成材料32,33に接続されている。一方、先端部側では、各配線層36は詳しくは後述するケースヘッド20上に設けられた配線基板40の導電パッド41と電気的に接続されている。
【0027】
さらにフレキシブルプリント基板50の配線層51には、圧電素子17を駆動するための駆動回路60が実装されている。駆動回路60は、フレキシブルプリント基板50の熱伝導部材35に相対向する領域に実装されており、駆動回路60と熱伝導部材35とは、接続されることで、駆動回路60の熱が熱伝導部材35に熱伝導可能となっている。すなわち、駆動回路60と熱伝導部材35とは熱伝導可能に接続(熱結合)されている。なお、駆動回路60と熱伝導部材35とが熱伝導可能に接続されているとは、熱伝導部材35と液体導入部材30との接続と同様に、両者が互いに接触していても、接着剤等で接合されていてもよい。本実施形態では、駆動回路60と熱伝導部材35とを電熱フィラーが混練された接着剤61を介して接合するようにした。
【0028】
また、駆動回路60としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)などが挙げられる。また、駆動回路60は、フレキシブルプリント基板50の配線層51に、例えば、フリップ実装で搭載されている。なお、駆動回路60のフレキシブルプリント基板50上への実装は、例えば、金(Au)−金(Au)接続、金(Au)−錫(Sn)接続などの金属接続や、ACF(異方性導電ペースト)、ACP(異方性導電膜)、半田バンプ接続などを用いることができる。
【0029】
このような駆動回路60が熱伝達可能に接続された熱伝導部材35及び液体導入部材30としては、比較的熱伝導率が高い材料、すなわち、放熱性が高い材料が好ましく、アルミニウム、銅、鉄及びステンレス鋼などが好適である。これにより、駆動回路60の熱を熱伝導部材35、液体導入部材30及びケースヘッド20に効率よく熱伝導させることができる。なお、液体導入部材30は、比較的熱伝導率が高い材料を用いるのが好ましいが、インク導入路21を通るインクの種類により、インクを加熱したい温度によってその材料を適宜決定すればよい。
【0030】
また、ケースヘッド20も熱伝導率が高く放熱性の高い材料を用いるのが好ましいが、金属材料を用いるとインクジェット式記録ヘッド10が重くなってしまうと共に製造コストが高コストになってしまうため、樹脂材料で形成するのが好ましい。したがって、液体導入部材30は、ケースヘッド20よりも熱伝導率の高い材料で形成されていることになる。
【0031】
さらにケースヘッド20上には、フレキシブルプリント基板50の各配線層51がそれぞれ接続される複数の導電パッド41が設けられた配線基板40が固定されており、ケースヘッド20の収容部19は、この配線基板40によって実質的に塞がれている。配線基板40には、ケースヘッド20の収容部19に対向する領域にスリット状の開口部42が形成されており、フレキシブルプリント基板50はこの配線基板40の開口部42から収容部19の外側に引き出されて、引き出された領域が屈曲されて導電パッド41と接続されている。
【0032】
このようなインクジェット式記録ヘッド10では、インク滴を吐出する際に、圧電素子17及び振動板15の変形によって各圧力発生室11の容積を変化させて所定のノズル開口13からインク滴を吐出させるようになっている。具体的には、図示しない液体貯留手段から液体導入路であるインク導入路を介してリザーバ22にインクが供給されると、インク供給路23を介して各圧力発生室11にインクが分配される。そして、駆動回路60からの駆動信号によって所定の圧電素子17に電圧を印加及び解除することによって、圧電素子17を収縮及び伸張させて圧力発生室11に圧力変化を生じさせて、ノズル開口13からインクを吐出させる。
【0033】
そして、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10では、駆動回路60が接続(熱伝導可能に接続)された熱伝導部材35が、ケースヘッド20に保持された液体導入部材30に接続(熱伝導可能に接続)されているため、駆動回路60の熱を駆動回路60の表面からだけではなく、熱伝導部材35及び液体導入部材30を介してケースヘッド20に熱伝導させて放熱することができる。すなわち、ケースヘッド20は、外部に露出された外装部材であるため、駆動回路60の熱を熱伝導部材35及び液体導入部材30を介してケースヘッド20で外気に放熱することができる。また、熱伝導部材35をインク導入路21が設けられた液体導入部材30に接続(熱伝導可能に接続)することで、熱伝導部材35及び液体導入部材30をインク導入路21を流れるインクによっても冷却(放熱)することができる。
【0034】
これにより、駆動回路60の熱による破壊を防止することができると共に、駆動回路60の放熱性を高めるために大型化する必要がなく、小型化することができる。ちなみに、駆動回路60の発熱を抑制するためには、駆動回路60の内部抵抗を低減する必要があるため、駆動回路60内のトランジスタの大きさを確保する必要があったが、駆動回路60を熱伝導部材35に熱伝導可能に接続し、この熱伝導部材35をインク導入路21が設けられた液体導入部材30に熱伝導可能に接続することで、熱伝導部材35、液体導入部材30及びケースヘッド20によって駆動回路60の熱を放熱することができるため、トランジスタの大きさを確保する必要がない。したがって、駆動回路60の内部抵抗を低減する必要がなく、駆動回路60を小型化することができると共にコストを低減することができる。
【0035】
また、駆動回路60の発熱を抑制することができるため、駆動回路60に与える電流を大きくしてインク吐出特性を向上することができると共に、インクの連続吐出性能を向上することができる。すなわち、駆動回路60は、電流を大きくすることで発熱が大きくなると共に、連続吐出させることで放熱時間が短くなるため、駆動回路60を流れる電流やインクの連続吐出性能が制限されてしまうが、ケースヘッド20及び熱伝導部材35によって駆動回路60の熱を放熱することにより、駆動回路60を流れる電流を大きくすることができると共にインクの連続吐出を短い間隔で長時間行わせることができる。
【0036】
また、駆動回路60をインク導入路21が設けられた液体導入部材30に熱伝導部材35を介して熱伝導可能に接続することによって、液体導入部材30のインク導入路21を流れるインクを加熱することができる。このように、インクを加熱することによってインクの粘度を下げることができるため、インクジェット式記録ヘッド10から高粘度インクを吐出させることができる。すなわち、駆動回路60の熱で液体導入部材30を介して高粘度インクを加熱することで、高粘度インクの粘度を低くすることができ、通常の粘度と同様の吐出特性で吐出させることができる。また、圧電素子17のインク粘度に伴う駆動条件として設定する温度範囲において、低温側の設定、例えば、0℃〜40℃の温度範囲の場合には、0℃側の温度を高くすることができる。これにより、駆動条件の制限を広げて、所望の吐出特性でインクを吐出することができ、高品質の印刷を実現できる。
【0037】
さらに、熱伝導部材35とは別部材として液体導入部材30を設けることで、インクの粘度に応じてインクを加熱したい温度となるように液体導入部材30を変更することができる。すなわち、熱伝導部材35と圧電素子17とは一体的に形成されてケースヘッド20に固定されるため、この熱伝導部材35の材料を変更することなく、液体導入部材30のみをインクを加熱したい温度に応じて適宜変更することができるため、製造コストを低減することができる。
【0038】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0039】
図3に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Aは、流路ユニット16と、圧電素子ユニット18と、ケースヘッド20Aとを具備する。
【0040】
流路ユニット16には、図示していないが、複数の圧力発生室11毎に共通するリザーバ22が2つ設けられている。
【0041】
また、ケースヘッド20Aには、各リザーバ22に連通するインク導入路21が設けられた液体導入部材30A、30Bがそれぞれ設けられている。本実施形態では、ケースヘッド20Aに2つの液体導入部材30A、30Bがそれぞれ保持される2つの保持孔39A、39Bを設け、各保持孔39A、39Bに液体導入部材30A、30Bが保持されている。なお、流路ユニット16のインク導入口29は、特に図示していないが、各液体導入部材30A、30Bに連通して2つ設けられている。
【0042】
また、熱伝導部材35は、ケースヘッド20Aの段差部38に固定されると共に、2つの液体導入部材30A、30Bにそれぞれ接着剤71A、71Bによって熱伝導可能に接続されている。
【0043】
このようなインクジェット式記録ヘッド10Aでは、2つのリザーバ22にそれぞれ異なるインクを供給することができ、1つのインクジェット式記録ヘッド10Aから2種類のインクを吐出させることができる。そして、種類の異なるインクに応じて、液体導入部材30A、30Bとして異なる材料を用いることができる。すなわち、インクの種類や粘度に応じて、液体導入部材30A、30Bとして熱伝導率の異なる材料を用いることができ、駆動回路60の熱を熱伝導部材35を介して液体導入部材30A、30Bに伝わらせてインクを加熱した際に、インクを加熱する温度をそれぞれ調整することができる。これにより、異なる粘度のインクを同じ吐出特性で吐出することや、インクに応じた吐出特性に調整して吐出させることができる。
【0044】
勿論、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10Aであっても、上述した実施形態1と同様に駆動回路60の熱を放熱して駆動回路60を小型化することができると共にコストを低減することができる。
【0045】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態2では、2つの液体導入部材30A、30Bを設けるようにしたが、液体導入部材30A、30Bの数及び位置は特にこれに限定されるものではなく、例えば、ケースヘッド20に1つの保持孔39を設け、2つの液体導入部材30A、30Bが互いに当接した状態で1つの保持孔39に保持されるようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態1及び2では、液体導入部材30、30A、30Bをケースヘッド20の厚さ方向に亘って設けるようにしたが、液体導入部材30、30A、30Bは、少なくとも熱伝導部材35が接続される領域のみに設けられていればよい。すなわち、熱伝導部材35が熱伝導可能に接続される領域、すなわちケースヘッド20の配線基板40側のみに液体導入部材を設け、ケースヘッドの流路ユニット16側に液体導入部材のインク導入路に連通する連通路を設けて、これらでインク導入路を構成してもよい。
【0047】
また、上述した実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図4は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0048】
図4に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0049】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0050】
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドとしてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10、10A インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 圧力発生室、 12 流路形成基板、 13 ノズル開口、 14 ノズルプレート、 15 振動板、 16 流路ユニット、 17 圧電素子、 18 圧電素子ユニット、 19 収容部、 20 ケースヘッド、 21 インク導入路(液体導入路)、 30、30A、30B 液体導入部材、 35 熱伝導部材、 40 配線基板、 50 フレキシブルプリント基板、 60 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室と、該圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧電素子及び該圧電素子の基端部が固定される熱伝導部材とからなる圧電素子ユニットと、
該圧電素子ユニットが収容される収容部を有するケースヘッドと、
前記圧電素子に接続されて当該圧電素子を駆動する駆動回路が実装されたフレキシブルプリント基板とを具備し、
前記駆動回路が、前記熱伝導部材に接続されていると共に、前記ケースヘッドの少なくとも前記熱伝導部材が接合される領域には、当該ケースヘッドの他の領域よりも熱伝導率の高い材料からなり、且つ前記圧力発生室に液体を供給する液体導入路が設けられた液体導入部材が設けられており、前記熱伝導部材と前記液体導入部材とが接続されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記液体導入部材が複数個設けられて、複数の前記液体導入路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記ケースヘッドが、樹脂材料からなると共に、前記液体導入部材が金属材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−166346(P2009−166346A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6516(P2008−6516)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】