説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】圧力発生室を区画する隔壁の端部近傍の破壊や端部近傍の振動板の破壊を防止し得る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口21に連通し隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12が並設された流路形成基板10と、この流路形成基板10に接合された振動板50と、圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100と、隔壁11のリザーバ100側の先端部11aに、流路形成基板10の厚さ方向に亘って設けられた溝部16と、溝部16から隔壁11の先端部11aと振動板50とが形成する角部18に亘って連続して設けられて振動板50に接着された接着剤17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる撓み振動モードの圧電素子を有するアクチュエータ装置を使用したものが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、ノズル開口に連通し、隔壁によって区画された複数の圧力発生室が並設された流路形成基板と、流路形成基板の圧力発生室に相対向する領域に振動板となる絶縁膜を介して下電極膜、圧電体層及び上電極膜を積層形成した圧電素子と、流路形成基板に接合されて圧力発生室の共通のインク室となるリザーバの一部を構成するリザーバ部が設けられたリザーバ形成基板とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、流路形成基板には、リザーバ部からのインクを各圧力発生室に供給するためのインク供給経路が圧力発生室毎に設けられている。これら各インク供給経路は、圧力発生室の幅方向両側の隔壁を延設することで圧力発生室毎に区画されている。さらに、各隔壁の上面が振動板を介してリザーバ形成基板に接合されると共に、各隔壁の下面がノズルプレートに接合されている。
【特許文献1】特開2007−261215号公報(第2図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構造のインクジェット式記録ヘッドにおいては、例えば、流路形成基板とノズルプレートとの線膨張係数の差から全体に反り応力が発生し、流路形成基板の強度が比較的弱い部分、具体的には、インク供給経路の幅方向両側の隔壁の端部近傍に応力が加わり、その隔壁の端部近傍が破壊されるという問題がある。
【0006】
そして、上述した接合体に反り応力、詳細には、ノズルプレートの表面が凹面となる反り応力が発生し、隔壁がノズルプレートに引っ張られると共に、この隔壁の上面が接合された振動板が引っ張られ、その結果、振動板がクラック(割れ)等で破壊されるという問題がある。
【0007】
このように、各圧力発生室を区画する隔壁の端部近傍で、反り応力に起因する破壊が生じる虞があり、インクジェット式記録ヘッドの品質及び性能が低下する虞があるという問題がある。なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、勿論、インク以外の液体を噴射する他の液体噴射ヘッドにおいても、同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、各圧力発生室を区画する隔壁の端部近傍の破壊や当該端部近傍の振動板の破壊を防止し得る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通し隔壁によって区画された複数の圧力発生室が並設された第1の基材と、前記第1の基材の一方面に設けられた第2の基材と、前記圧力発生室の共通の液体室となるリザーバと、前記隔壁の前記リザーバ側の先端部に、第2の基材の厚さ方向に亘って設けられた溝部と、前記溝部から前記隔壁の前記先端部と前記第2の基材とが形成する角部に亘って連続して設けられて前記第2の基材に接着された接着剤とを備えることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、接着剤が溝部から角部に延設されることで、角部に加わる応力が緩和され、応力破壊に弱い隔壁の先端部を接着剤で保護することができる。これにより、隔壁の先端部に応力が加わっても、当該応力を緩和して先端部の破壊を防止することができる。また、角部にまで設けられた接着剤により応力が緩和されるので、反りに伴い隔壁が引っ張られ、更に振動板が引っ張られても、振動板にクラックが生じることが抑止される。
【0010】
ここで、前記リザーバと前記圧力発生室との間に、隣り合う前記隔壁の間の幅が前記圧力発生室の幅よりも狭い液体供給路が設けられ、前記溝部は、前記隔壁の前記液体供給路よりも前記リザーバ側に設けられていることが好ましい。これによれば、隔壁の先端部に近い位置に溝部が設けられているので、接着剤を溝部から角部にまで確実に延設して当該角部を保護できる。
【0011】
また、前記隔壁は、前記圧力発生室の並設方向における当該隔壁の幅が前記リザーバ側に向かって漸減するように形成されていてもよい。これによれば、幅が漸減した先端部であっても、接着剤により角部が保護されるので、先端部や振動板にクラックが生じることを防止できる。
【0012】
また、前記第1の基材には、前記ノズル開口が設けられたノズルプレートが前記接着剤で接合され、前記接着剤は、前記溝部から前記角部にまで延設されていることが好ましい。これによれば、ノズルプレートを流路形成基板に接着すれば、接着剤が毛細管現象で溝部から角部にまで達するので、当該接着の工程と、溝部から角部に至る接着剤を設ける工程とを個別に行う必要が無く、合理的に液体噴射ヘッドが製造され、これによる低コスト化した液体噴射ヘッドが提供される。
【0013】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、耐久性に優れた液体噴射装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図、図2(a)は図1の平面図、図2(b)は図2(a)のA−A′線断面図、図3(a)は図2(a)のB−B′線断面図、図3(b)は図2(a)のC−C′線断面図である。
【0015】
図示するように、第1の基材の一例である流路形成基板10は、本実施形態では結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板からなり、その一方面には酸化膜からなる弾性膜51が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画され一方側の面が弾性膜51で構成される複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。
【0016】
流路形成基板10には、圧力発生室12の長手方向一端部側に、隔壁11によって区画され各圧力発生室12に連通するインク供給路13と連通路14とが設けられている。連通路14の外側には、各連通路14と連通する連通部15が設けられている。この連通部15は、後述するリザーバ形成基板30のリザーバ部32と連通して、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する。
【0017】
ここで、インク供給路13は、圧力発生室12よりも狭い断面積となるように形成されており、連通部15から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。例えば、インク供給路13は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路13を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、各連通路14は、圧力発生室12の幅方向両側の隔壁11を連通部15側に延設してインク供給路13と連通部15との間の空間を区画することで形成されている。
【0018】
なお、流路形成基板10の材料として、本実施形態ではシリコン単結晶基板を用いているが、勿論これに限定されず、例えば、ガラスセラミックス、ステンレス鋼等を用いてもよい。
【0019】
流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路13とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤17によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼などからなる。
【0020】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、振動板50を介して圧電素子300が形成されている。そして、ここでは、この圧電素子300と圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板50とを合わせてアクチュエータと称する。本実施形態では、流路形成基板10上に、上述したように弾性膜51が形成され、この弾性膜51上には、弾性膜51とは異なる材料の酸化膜からなる絶縁体膜52が形成され、これら弾性膜51と絶縁体膜52とで振動板50が構成されている。
【0021】
隔壁11のリザーバ100側の先端部11aには、流路形成基板10の厚さ方向に亘り、流路形成基板10の開口面からその反対側の面に達する溝部16が延設されている。本実施形態では、ウェットエッチングにより、断面形状がくさび状の溝部16が形成されている。なお、隔壁11の先端部11aとは、本実施形態では、インク供給路13よりもリザーバ100側、すなわち隔壁11の連通路14を区画している部分をいう。
【0022】
流路形成基板10とノズルプレート20とを接合する接着剤17は、この溝部16から振動板50と先端部11aとが形成する角部18(振動板50と先端部11aとの境界部)にまで延設され、接着剤17は振動板50に接着されている。
【0023】
接着剤17は、例えばエポキシ樹脂などからなり、ノズルプレート20の一方面に塗布され、そのノズルプレート20が流路形成基板10に接合されたときに、毛細管現象により溝部16を経由し、反対側の振動板50に達し、更に先端部11aと振動板50との角部18にまで至り硬化したものである。本実施形態では、インク供給路13よりもリザーバ100側、すなわち、隔壁11の連通路14を区画する部分と振動板50とが形成する角部18に接着剤17が設けられている。
【0024】
接着剤17が溝部16から角部18に延設されることで、角部18に接着剤17でフィレットを形成したことと同等の効果が得られ、角部18に加わる応力が緩和される。これにより、応力破壊に弱い隔壁11の先端部11aを接着剤17で保護することができる。したがって、ノズルプレート20に反り応力が生じたこと等により隔壁11の先端部11aに応力が加わっても、当該応力を緩和して先端部11aの破壊を防止することができる。また、角部18にまで設けられた接着剤17により応力が緩和されるので、ノズルプレート20の反りに伴い隔壁11が引っ張られ、更に振動板50が引っ張られても、振動板50にクラックが生じることが抑止される。
【0025】
また、仮に振動板50の角部18近傍でクラックが生じても、接着剤17で角部18が覆われているので、リザーバ100等のインクが振動板50のクラックに侵入してしまうことを防止できる。
【0026】
このように、隔壁11の先端部11aやその近傍の振動板50にクラックが生じることが防止されるため、耐久性の高いインクジェット式記録ヘッドが提供される。
【0027】
なお、接着剤17は、溝部16から角部18に連続して設けられているので、角部18にのみ接着剤17を設けた場合よりも振動板50から剥がれにくくなっている。このため、角部18を接着剤17で確実に保護できるようになっている。更に、ノズルプレート20を流路形成基板10に接着すれば、接着剤17が毛細管現象で溝部16から角部18にまで達するので、当該接着の工程と、溝部16から角部18に至る接着剤17を設ける工程とを個別に行う必要が無く、合理的に液体噴射ヘッドが製造され、これにより低コスト化した液体噴射ヘッドが提供される。
【0028】
振動板50(第2の基材)上には、下電極膜60と圧電体層70と上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を有する部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極を圧電体層70と共に圧力発生室12毎にパターニングして個別電極とする。
【0029】
本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板50とを合わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜51、絶縁体膜52が振動板50として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよいし、弾性膜51、絶縁体膜52及び下電極膜60が振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0030】
圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でもペロブスカイト構造の強誘電体材料からなる。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等を用いることができる。
【0031】
また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路13側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜52上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
【0032】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60、絶縁体膜52及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32を有するリザーバ形成基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部32は、本実施形態では、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部15と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
【0033】
また、リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31が設けられている。圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0034】
このようなリザーバ形成基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0035】
また、リザーバ形成基板30には、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0036】
また、リザーバ形成基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路200が固定されている。この駆動回路200としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路200とリード電極90とは、ボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線210を介して電気的に接続されている。
【0037】
また、このようなリザーバ形成基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、ステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0038】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路200からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜51、絶縁体膜52、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0039】
〈実施形態2〉
上述した実施形態においては、溝部16は、断面形状がくさび状であったがこのような形状に限定されず、また、溝部16は、リザーバ100に臨むよう設けられていたが、このような位置に設けられる場合に限定されない。
【0040】
図4は、本発明の実施形態2に係る溝部を説明するための流路形成基板の平面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図示するように、隔壁11Aは、圧力発生室12の並設方向における隔壁11Aの幅が、リザーバ100の一部を構成する連通部15に向かって漸減している。この隔壁11Aの幅が漸減している領域近傍の先端部11bであっても、接着剤17により角部18が保護されるので、先端部11bや振動板50にクラックが生じることが防止される。
【0041】
また、隔壁11Aには、流路形成基板10の厚さ方向に亘って複数の溝部16Aがドライエッチングにより形成され、これらの断面形状は半球状になっている。もちろん、このように複数設ける必要はなく、一つでもよい。
【0042】
これらの複数の溝部16Aはいずれも、隔壁11Aのインク供給路13よりも連通部15(リザーバ100)側に設けられている。すなわち、いずれの溝部16Aも、隔壁11Aの先端に近い位置に設けられているので、ノズルプレート20からの接着剤17を先端部11bと振動板50との角部18にまで確実に延設することができる。なお、隔壁11、11Aにインク供給路13が設けられていない場合は、隔壁11、11Aの先端近傍の領域に溝部を設ければよい。この場合でも、隔壁11、11Aの先端部と振動板50との角部18を接着剤17で保護することができる。
【0043】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0044】
実施形態1では、溝部16から角部18にまで延設された接着剤17は、ノズルプレート20と流路形成基板10とを接着する接着剤17が延設されたものであったが、別であってもよい。すなわち、溝部16から角部18にまで接着剤17を設け、その後、ノズルプレート20を流路形成基板10に接合してもよい。この場合でも、隔壁11の先端部11aと振動板50との角部18に接着剤17が設けられていることで、先端部11aにかかる応力を緩和し、クラックの発生を防止できる。
【0045】
また上述した実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図5は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図示するように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0046】
もちろん、上述したインクジェット式記録装置では、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッドユニット1A及び1Bが固定されて、紙等の被記録媒体Sを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、本発明の液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを説明したが、液体噴射ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射するものにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
【図4】実施形態2に係る溝部を説明するための流路形成基板の平面図である。
【図5】他の実施形態に係る記録装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
10 流路形成基板、 11、11A 隔壁、 11a、11b 先端部、 12 圧力発生室、 13 インク供給路、 14 連通路、 15 連通部、 16、16A 溝部、 17 接着剤、 18 角部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 リザーバ形成基板、 31 圧電素子保持部、 32 リザーバ部、 33 貫通孔、 40 コンプライアンス基板、 50 振動板、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 200 駆動回路、 210 接続配線、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通し隔壁によって区画された複数の圧力発生室が並設された第1の基材と、
前記第1の基材の一方面に設けられた第2の基材と、
前記圧力発生室の共通の液体室となるリザーバと、
前記隔壁の前記リザーバ側の先端部に、第2の基材の厚さ方向に亘って設けられた溝部と、
前記溝部から前記隔壁の前記先端部と前記第2の基材とが形成する角部に亘って連続して設けられて前記第2の基材に接着された接着剤とを備える
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記リザーバと前記圧力発生室との間に、隣り合う前記隔壁の間の幅が前記圧力発生室の幅よりも狭い液体供給路が設けられ、
前記溝部は、前記隔壁の前記液体供給路よりも前記リザーバ側に設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記隔壁は、前記圧力発生室の並設方向における当該隔壁の幅が前記リザーバ側に向かって漸減するように形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1の基材には、前記ノズル開口が設けられたノズルプレートが前記接着剤で接合され、
前記接着剤は、前記溝部から前記角部にまで延設されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−131821(P2010−131821A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308810(P2008−308810)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】