液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
【課題】アクチュエータ基板2の端子電極10とフレキシブル基板3の配線電極11の接続点ピッチを緩和させて、接続工程の歩留まりを向上させる。
【解決手段】アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に、各吐出チャンネルCに対応する第一及び第二端子電極10a、10bを設置し、フレキシブル基板3に形成した共通配線電極11を上記各吐出チャンネルCに対応する第一端子電極10aに共通接続し、フレキシブル基板3に形成した個別配線電極11bを各吐出チャンネルCに対応する第二端子電極10bに電気的に独立して個々に接続したことにより、アクチュエータ基板2上の端子電極10の数に対しフレキシブル基板3上の配線電極11の数を低減させ、端子電極10と配線電極11の接続を容易にした。
【解決手段】アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に、各吐出チャンネルCに対応する第一及び第二端子電極10a、10bを設置し、フレキシブル基板3に形成した共通配線電極11を上記各吐出チャンネルCに対応する第一端子電極10aに共通接続し、フレキシブル基板3に形成した個別配線電極11bを各吐出チャンネルCに対応する第二端子電極10bに電気的に独立して個々に接続したことにより、アクチュエータ基板2上の端子電極10の数に対しフレキシブル基板3上の配線電極11の数を低減させ、端子電極10と配線電極11の接続を容易にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出し、文字、図形を描画する、あるいは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜のパターンを形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、液体噴射ヘッドに形成した微小空間にこのインクを充填し、駆動信号に応じて微小空間の容積を瞬間的に縮小し溝に連通するノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
図10はこの種のインクジェットヘッド51の分解斜視図を表す。インクジェットヘッド51は、表面に多数の溝56が形成された圧電体基板52と、液体供給室62とスリット63が形成されたカバープレート54と、液体を吐出するためのノズル64を備えたノズルプレート55と、駆動回路で生成され駆動信号を圧電体基板52に供給するためのフレキシブル基板53などから構成される。各溝56はカバープレート54により上部開口を塞がれてチャンネルを構成する。各溝56は隔壁57により仕切られ、隔壁57の壁面には隔壁57を駆動するための駆動電極59が形成されている。各駆動電極59は圧電体基板52の後方端REの表面に形成した端子電極60に接続されている。圧電体から成る隔壁57は垂直方向に分極処理が施されている。隔壁57の両壁面に形成した駆動電極に駆動信号を与えることにより、隔壁57は厚みすべり変形を生じる。予め溝56から成るチャンネルに液体を充填しておき、駆動時に隔壁57を変形させることにより、チャンネルの容積が変化してノズル64からインクが吐出される。
【0004】
図11は、圧電体基板52の後方端RE近傍の表面に接合したフレキシブル基板53を圧電体基板52から分離し、下方にずらした状態の圧電体基板52とフレキシブル基板53の上面模式図である。圧電体基板52の表面には溝56からなるチャンネルが形成され、各チャンネルはダミーチャンネルD1〜Dn+1と液滴を吐出する吐出チャンネルC1〜Cnが交互に配置されている。各チャンネルを区画する隔壁57の側面には隔壁57を変形駆動するための駆動電極59が形成されている。圧電体基板52の後方端RE近傍の表面には各チャンネルの駆動電極59に電気的に接続する端子電極60が形成されている。例えば、吐出チャンネルC1を構成する両隔壁57の吐出チャンネル側の両側面には駆動電極59c1が形成され、第一端子電極60c1に接続されている。ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d1が形成され、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d2が形成され、いずれも第二端子電極60d1に電気的に接続されている。他の吐出チャンネルC2〜Cnや、ダミーチャンネルD1〜Dn+1や第一及び第二端子電極60c、60dも同様の構成を備えている。
【0005】
フレキシブル基板53の圧電体基板52側の表面には駆動電極59に駆動信号を供給するための配線電極61が形成されている。フレキシブル基板53は矢印で示すように圧電体基板52の後方端RE側の表面に移動させて配線電極61d1が端子電極60d1に、配線電極61c1が端子電極60c1に、配線電極61d2が端子電極60d2にそれぞれ電気的に接続して圧電体基板52の表面に接合されている。その他の配線電極61も同様である。
【0006】
図12は、他のインクジェットヘッドを表す斜視図である(特許文献1の図1)。圧電セラミックス基板81の下面にチャンネルを構成する多数の溝が形成されている。圧電セラミックス基板81の前端部の表面84には図示しないノズルプレートが接合し、ノズルプレートのノズルに溝からなるインク室82が連通する。下面の各インク室82を区画する隔壁には駆動電極が形成され、各駆動電極は引出電極86により表面84を経由して表面85に引き出されている。表面84において電極は絶縁部83により分離され、表面85において引出電極86は絶縁部87により電気的に分離されている。引出電極86は後方端上面の電気接続端88において電気配線89と接続して図示しない駆動回路に接続している。この例においては、インク室82のピッチW1よりも電気接続端88のピッチW2を大きく形成して、外部接続回路との接続を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10及び図11に示す従来例において、フレキシブル基板53に形成した配線電極61の端子電極60との接続点のピッチPは、圧電体基板52に形成したチャンネルの配列ピッチPと同程度としなければならない。しかし、近年チャンネル数が増大するとともにその配列ピッチが狭くなってきている。そのために、フレキシブル基板53の配線電極61も狭ピッチ化しなければならず、位置合わせを行って実装する際の位置合わせ精度が厳しく、製造が困難となる、あるいは製造歩留まりが悪化する等の課題があった。
【0009】
また、図12に示すように圧電セラミックス基板81の裏面側に引出電極86を形成するためには、圧電セラミックス基板81の前方端の表面84及び上方の表面85に電極パターンを形成しなければならない。そのため、製造工程が複雑となって量産性が低下する課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡便な製造方法で構成することができ、小型化の容易な液体噴射ヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による液体噴射ヘッドは、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、前記隔壁の側面に設置した駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板の表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、前記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、前記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記電極端子は、前記吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、前記吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有することとした。
【0012】
また、前記各吐出チャンネルにおいて、前記第一電極端子と前記共通配線電極を電気的に接続する第一接続点は、前記第二電極端子と前記個別配線電極を電気的に接続する第二接続点よりも前方端側に位置することとした。
【0013】
また、前記第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向することとした。
【0014】
また、前記共通配線電極は、前記フレキシブル基板上において前記個別配線電極よりも外周側に位置することとした。
【0015】
また、前記共通配線電極と前記第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜が介在することとした。
【0016】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端側の前記電極端子が設置される手前の位置まで延在し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端に亘って延在することとした。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかの液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドは、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、その隔壁の側面に設置した駆動電極と、その駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、アクチュエータ基板の表面に接合し、複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、上記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備えている。更に、上記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、上記電極端子は、吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、当該吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、配線電極は、吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有している。この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対し、フレキシブル基板上の配線電極数を概ね1/2に低減できるので、フレキシブル基板上の配線電極を容易に形成することができるとともに、端子電極と配線電極の接続を容易にした。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの部分分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの縦断面及び回路構成を表す模式図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの電極配線を表す上面模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの変形例を表す上面模式図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図10】従来公知のインクジェットヘッドの部分分解斜視部である。
【図11】従来公知のインクジェットヘッドの上面模式図である。
【図12】従来公知のインクジェットヘッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液体噴射ヘッドは、表面に複数の溝を形成したアクチュエータ基板と、アクチュエータ基板の表面に接合したカバープレートと、アクチュエータ基板に駆動信号を供給するためのフレキシブル基板を備えている。アクチュエータ基板は、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、その隔壁の側面に形成した駆動電極と、その駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子を備えている。カバープレートは、アクチュエータ基板の表面に形成した複数の溝の上部開口を塞いで複数の並列するチャンネルを構成する。フレキシブル基板は、アクチュエータ基板の後方端近傍の基板表面に接合し、上記アクチュエータ基板に形成した端子電極と電気的に接続する配線電極と備えている。
【0021】
並列する複数のチャンネルは、液体を吐出するため吐出チャンネルと、液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列している。アクチュエータ基板の後方端近傍に形成した電極端子は、第一電極端子と第二電極端子を有している。第一電極端子は、吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続している。第二電極端子は、当該吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と、他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続している。
【0022】
各隔壁は圧電体材料により構成している。この場合に、アクチュエータ基板の全体を圧電体材料により構成してもよいし、隔壁部分のみを圧電体材料により構成してもよい。隔壁は、例えばアクチュエータ基板表面の法線方向に分極処理を施しておけば、大きな電歪効果を得ることができる。この場合に、隔壁全体を法線方向に分極処理してもよいし、隔壁の高さの略1/2を境にして、分極方向を反転させてもよい。そして、第一電極端子と第二電極端子に駆動信号を与えて吐出チャンネルを構成する両隔壁を吐出チャンネルを中心に対称に変形させ、吐出チャンネルの容積を変化させて内部に充填した液体をこの吐出チャンネルに連通するノズルから吐出させる。通常、第一電極端子をGNDに接続し第二電極端子に駆動信号を与えてアクチュエータ基板を駆動する。
【0023】
ここで、フレキシブル基板に形成した配線電極は、共通配線電極と個別配線電極を有している。共通配線電極は、一の吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する第一電極端子とを電気的に共通に接続している。個別配線電極は、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに電気的に個別に接続している。
【0024】
従って、アクチュエータ基板上にn(nは正の整数)個の吐出チャンネルが存在する場合に、これらの吐出チャンネルを駆動するための電極端子はn個の第一電極端子とn個の第二電極端子の合計2n個の電極端子が存在する。これに対して、フレキシブル基板上の配線電極は、例えば1本の共通配線電極とn本の個別配線電極、つまりn+1本の配線電極を形成すればよい。つまり、本発明の液体噴射ヘッドにおいては、アクチュエータ基板側に形成した電極端子の数に対して、フレキシブル基板側に形成する配線電極の数を大幅に低減させ、フレキシブル基板側の配線密度を概ね1/2とすることができる。そのため、フレキシブル基板上に配線電極を容易に形成することができ、更に端子電極と配線電極の接続を容易にした。
【0025】
また、各吐出チャンネルにおいて、アクチュエータ基板側の第一端子電極とフレキシブル基板側の共通配線電極とを電気的に接続する接続点を第一接続点とし、アクチュエータ基板側の第二電極端子とフレキシブル基板側の個別配線電極とを電気的に接続する接続点を第二接続点とすると、第一接続点は第二接続点よりもアクチュエータ基板の前方端側に位置するようにした。これにより、各チャンネルが配列する配列方向の接続点ピッチを大きくすることができるので、接続工程が容易となるとともに接続不良を低減させることができる。
【0026】
また、第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向するように設置することができる。これにより隣接する吐出チャンネル間の配線電極や接続点の間隔を広くとることができ、配線電極の高密度化に適する。
【0027】
また、共通配線電極は、フレキシブル基板上において個別配線電極よりも外周側に位置するように形成することができる。これにより、個別配線電極の間に共通配線電極を形成する必要が無くなり、配線電極の最小ピッチを第一電極端子のピッチと同程度にすることができる。そのために、フレキシブル基板上に配線電極を容易に形成することができ、同時に接続工程の歩留まりも向上させることができる。更に、共通配線電極は個別配線電極よりも流れる電流量が大きくなるが、個別配線電極の電極幅や電極ピッチに影響を受けることなく共通配線電極の配線幅を太くして配線抵抗による電圧降下を低減することができる。
【0028】
また、共通配線電極と第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜を介在させて、短絡を防止することができる。絶縁膜は上記交差部の共通配線電極側に設置してもよいし第二電極端子側に設置してもよい。これにより、フレキシブル基板上の電極配線を片面のみとすることができるので、コスト低減に寄与することができる。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図1、図2及び図3は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するため図であり、図1は液体噴射ヘッド1の部分分解斜視図であり、図2はアクチュエータ基板2の部分XXの縦断面及び回路構成を表す模式図であり、図3はアクチュエータ基板2の後方端近傍の上面及びフレキシブル基板3の電極配線を表す模式図である。
【0030】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、圧電体材料から形成したアクチュエータ基板2と、その上面に接合したカバープレート4と、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に接合したフレキシブル基板3と、アクチュエータ基板2の前方端FEに接合したノズルプレート5を備えている。アクチュエータ基板2は、その基板の前方端FEから後方端RE近傍に亘る表面15に複数の並列する溝6と各溝6を離隔する複数の隔壁7を備え、その後方端RE側の表面15に各隔壁7の側面に形成した駆動電極9に電気的に接続する端子電極10を備えている。
【0031】
アクチュエータ基板2は次のようにして形成した。圧電体基板の表面をダイシングブレードにより切削し、複数の並列する溝6を形成した。次に圧電体基板の表面に感光性樹脂シートを貼り付け、露光現像してパターンを形成した。次に斜め蒸着法により圧電体基板の表面及び隔壁7の側面に導体膜を堆積し、次にリフトオフ法により感光性樹脂シートを除去することにより隔壁7の側面に駆動電極9を、表面15に端子電極10を形成した。
【0032】
カバープレート4は、液体を流入するための液体供給室12と、その液体供給室12の底面からカバープレート4の裏面に貫通するスリット13を備えている。カバープレート4は、アクチュエータ基板2の表面に、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面が露出し、スリット13が溝6の一本置きに溝6上部の開口部に連通するように、接着材により接合している。カバープレート4が溝6の上部開口を塞いでチャンネルを構成する。チャンネルは、スリット13を介して液体供給室12から液体の供給を可能に構成した吐出チャンネルCと、液体供給室12とは連通せず、液体が供給されないダミーチャンネルDとが交互に配列している。ノズルプレート5は、吐出チャンネルCに連通するノズル14を備え、アクチュエータ基板2及びカバープレート4の前方端FEに接合している。
【0033】
端子電極10は第一端子電極10aと第二端子電極10bを備えている。第一端子電極10aは吐出チャンネルCを構成する2つの隔壁7の吐出チャンネル側の側面に形成した2つの駆動電極9に接続する。第二端子電極10bは、吐出チャンネルCを構成する一方の隔壁7のダミーチャンネルD側の側面に形成した駆動電極9と、他方の隔壁7のダミーチャンネルD側の側面に形成した駆動電極9の両方の電極に接続する。即ち、各吐出チャンネルCに、第一端子電極10aは吐出チャンネルCの端部から後方端REの手前まで延在し、第二端子電極10bはその吐出チャンネルCの両隣りに位置するダミーチャンネルDの両端部から第一端子電極10aをコの字状に取り囲む形状を有している。そして、フレキシブル基板3が後方端RE近傍の表面15に接合している。
【0034】
図2を用いて回路構成を説明する。吐出チャンネルC1〜C4とダミーチャンネルD1〜D5は交互に配列している。例えば、吐出チャンネルC1は隣接するダミーチャンネルD1とD2から挟まれ、それらの間に隔壁71及び隔壁72が介在する。第一端子電極10aは、隔壁71と隔壁72により構成される吐出チャンネルC1の吐出チャンネルC1側の側面に形成した2つの駆動電極9に接続し、第二端子電極10bは、隔壁71のダミーチャンネルD1側の側面に形成した駆動電極9と隔壁72のダミーチャンネルD2側の側面に形成した駆動電極9に接続している。
【0035】
フレキシブル基板3は共通配線電極11aと複数の個別配線電極11bを備えている。共通配線電極11aは、第一接続点16aを介して吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aに電気的に接続し、GNDに接続する。他の吐出チャンネルC2〜C4に対応する他の第一端子電極10aも同様に他の第一接続点16aを介して配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、各吐出チャンネルC1〜C4に対応する第二接続点16bを介して第二端子電極10bに電気的に接続する。
【0036】
例えば吐出チャンネルC1を駆動する場合は、端子Taに駆動信号を与える。すると、隔壁71と隔壁72にはその上半分の厚さ方向に電界が印加されて厚み滑り歪みが発生し、隔壁71と隔壁72はその略1/2の高さを屈曲点とし“く”の字状に変形する。これにより、吐出チャンネルC1の容積が変化し、その内部に充填された液体がノズル14から吐出される。他の吐出チャンネルC2〜C4を駆動する場合も、端子Tb〜Tdを介し、駆動信号をダミーチャンネルD2〜D5側の駆動電極9に与える。吐出チャンネルC1〜C4側の駆動電極9をGNDレベルとしたので、導電性の液体を使用しても液体を介して駆動信号が漏れ出すことがない。
【0037】
図3を用いてアクチュエータ基板2上の第一及び第二端子電極10a、10bとフレキシブル基板3上の共通配線電極11a及び個別配線電極11bのレイアウトを説明する。図3において、アクチュエータ基板2上の端子電極10を破線で、フレキシブル基板3上の配線電極11を実線で表している。
【0038】
第一端子電極10aと第二端子電極10bをアクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に形成した。第一端子電極10aは吐出チャンネルC1の両側面に形成した駆動電極9に電気的に接続し、第二端子電極10bはその両側のダミーチャンネルD1、D2の吐出チャンネルC1側の側面に形成した2つの駆動電極9に電気的に接続する。表面15上において、第二端子電極10bは第一端子電極10aをコの字状に取り囲む形状を有している。
【0039】
共通配線電極11aと個別配線電極11bをフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に形成した。共通配線電極11aはフレキシブル基板3の外周に沿って個別配線電極11bを取り囲むように配置した。共通配線電極11aは、吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて電気的に接続する。他の吐出チャンネルに対応する第一端子電極も同様に他の第一接続点において共通配線電極11aに共通に接続する。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第二接続点16bにおいて電気的に接続した。他の吐出チャンネルに対応する第二端子電極も同様に他の第二接続点において電気的に接続している。第一接続点16aは第二接続点16bよりも前方端FE側に位置する。
【0040】
この電極構成により、アクチュエータ基板2上の端子電極数に対し、フレキシブル基板3上の配線電極数を概ね1/2に低減できるので、フレキシブル基板上の配線電極を容易に形成することができる。また、各チャンネルが配列する配列方向、即ち溝6と直交する方向の接続点16のピッチが拡大し、第一及び第二端子電極10a、11bと共通配線電極11a及び個別配線電極11bとを接続する接続工程が容易となる。また、共通配線電極11aをフレキシブル基板3の外周に個別配線電極11bを囲むように設置した。そのため吐出チャンネルCの数が増加し、個別配線電極11bの配線密度が高くなった場合であっても、共通配線電極11aの電極幅を個別配線電極11bの配線ピッチに影響を受けることなく自由に設定できる。そのために共通配線電極11aの抵抗による電圧降下を抑制することができる。
【0041】
第二接続点16bの設置位置は、第一接続点16aよりも後方端RE側であって第二端子電極10b上であればよい。ここで第二端子電極10bのチャンネル方向と直交する方向の長さは、1つの溝6の幅と2つの隔壁7の厚さの合計となる。従って、第二端子電極10bに対する個別配線電極11bの位置合わせ精度が緩和され、接続不良の発生も低減し接続工程も容易となる。また、図3に示すように、第一接続点16aと第二接続点16bとを吐出チャンネルCの長手方向に沿って対向設置すれば隣接する吐出チャンネル間の配線電極や接続点16の間隔が広がり、実装工程が容易となる。また、配線電極11の高密度化に好適である。
【0042】
なお、フレキシブル基板3上の共通配線電極11aをフレキシブル基板3の外周に沿って形成したがこれに限定されない。例えば共通配線電極11aを2つの個別配線電極11bの間に設置してもよいし、片方の外周側のみに形成してもよい。また、配線電極11をフレキシブル基板3上のアクチュエータ基板2側に形成したがこれに限定されない。例えば、共通配線電極11をフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側とは反対側の表面に形成し、第一接続点16aにおいてフレキシブル基板3を貫通する貫通電極を介して共通配線電極11aと第一端子電極10aと電気的に接続する。これにより、共通配線電極11aと第二端子電極10bとが交差する交差部にフレキシブル基板3が介在して短絡防止が容易となる。また、フレキシブル基板3を個別配線電極用と共通配線電極用に分割することができる。このようにすれば、共通配線電極を個別配線電極の周囲に設置する必要が無くなり、フレキシブル基板3の外形を小さく全体をコンパクトに形成することができる。
【0043】
また、アクチュエータ基板2としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックスを用い、隔壁7は基板表面の法線方向に分極処理を施した。隔壁7をシェブロンタイプの構造としても、或いは隔壁7の高さの略1/2の上半分又は下半分に電極を形成してもよい。カバープレート4はアクチュエータ基板2と同じ材料を使用し、ノズルプレート5はポリイミドフィルムを用いた。ただし本発明はこれらの材料に限定されず、他の材料を用いることができうることは言うまでもない。
【0044】
ここで言うシェブロンタイプとは、アクチュエータ基板に特徴があり、アクチュエータ基板の構成は図2に示す構成と異なり、その他の部分は図2に示す構成と同様である。即ち、アクチュエータ基板の素材にPZTセラミックスを用いる点は前述した構成と同様だが、各隔壁は基板表面の法線方向に対向するように分極処理を施した2層のPZTセラミックスから構成されている。具体的に、2層のPZTセラミックスは分極方向が相反する方向になるように積層されており、その隔壁の側面に上下にわたって駆動電極が形成されている。これにより、駆動電圧を印加することによって、側壁の上下にわたって駆動することができる。
【0045】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の上面模式図である。第一実施形態と異なる部分は、アクチュエータ基板2上に形成した第二端子電極10bとフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に形成した共通配線電極11aとの間に絶縁層を形成した点であり、その他の構成は第一実施形態と同様である。従って、以下、主に異なる部分について説明する。
【0046】
アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に第一及び第二端子電極10a、10bを形成し、第二端子電極10bは第一端子電極10aを囲むように配置している。フレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に共通配線電極11aと個別配線電極11bを形成し、共通配線電極11aは個別配線電極11bを囲むようにフレキシブル基板3の周辺に形成した。共通配線電極11aは吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。他の吐出チャンネルに対応する他の第一端子電極も同様に共通配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第一接続点16aよりも後方端RE側の第二接続点16bにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。
【0047】
この構成では、共通配線電極11aと第二端子電極10bとは平面視必ず交差する。そこで、共通配線電極11aと各吐出チャンネルに対応する第二端子電極10bとの交差部に絶縁層17を介在して、共通配線電極11aと第二端子電極10bとの短絡を防止した。
【0048】
絶縁層17として絶縁性フィルムを用い、各交差部のフレキシブル基板3側に貼り付けてもよいし、アクチュエータ基板2側に貼り付けてもよい。また、絶縁層17として、交差部の第二端子電極10bの表面を覆うように絶縁膜を形成してもよいし、交差部の共通配線電極11aを覆うように絶縁膜を形成してもよい。
【0049】
(第三実施形態)
図5は本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の上面模式図であり、図6は部分YYの断面模式図である。図7は、第三実施形態の変形例を表す断面模式図である。第二実施形態と異なる主な部分は、共通配線電極11aと第一端子電極10aとを接続する第一接続点16aよりも前方端FE側の共通配線電極11aに絶縁フィルムからなる絶縁層17aを覆うように形成して、第二端子電極10bと共通配線電極11aの間の短絡を防止した点である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0050】
図5及び図6を参照して液体噴射ヘッド1の構成を説明する。液体噴射ヘッド1は、圧電体材料から形成し、表面15に吐出チャンネルC1〜CnとダミーチャンネルD1〜Dn+1が交互に配列するアクチュエータ基板2と、その表面15に接合し、液体供給室12と吐出チャンネルC1〜Cnに液体を供給するためのスリット13を有するカバープレート4と、吐出チャンネルC1〜Cnに連通するノズル14を備え、アクチュエータ基板2及びカバープレート4の前方端FEに接合するノズルプレート5と、アクチュエータ基板2、フレキシブル基板3及びカバープレート4を固定するための枠体18と、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に接合し、アクチュエータ基板2に駆動信号を供給するためのフレキシブル基板3と、駆動IC20を搭載し、フレキシブル基板3に駆動信号を供給する回路基板19を備えている。
【0051】
回路基板19は、その表面に駆動IC20を搭載し、フレキシブル基板3のアクチュエータ基板2とは反対側の端部に接合している。回路基板19はその表面に図示しない配線を有し、各配線の一方端が駆動IC20に、他方端がフレキシブル基板3の共通配線電極11a及び個別配線電極11bに電気的に接続している。つまり、駆動IC20で生成した駆動信号は、フレキシブル基板3上の配線電極11を介してアクチュエータ基板2上の端子電極10に伝達し、各チャンネルの駆動電極9に供給される。なお、アクチュエータ基板2、カバープレート4及びノズルプレート5の構成や、端子電極10及び配線電極11のレイアウトは第一実施形態又は第二実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0052】
共通配線電極11aは、吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続し、他の吐出チャンネルに対応する第一端子電極も同様に共通配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第二接続点16bにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続し、他の吐出チャンネルに対応する第二端子電極も同様の構成を有する。各個別配線電極11bは互いに電気的に独立している。
【0053】
第一接続点16aは、第二接続点16bよりも前方端FE側に位置する。そして、この第一接続点16aよりも前方端FE側の共通配線電極11aにその表面を覆うようにカバー層からなる絶縁層17aを設置した。また、アクチュエータ基板2と回路基板19の間のフレキシブル基板3の表面に絶縁層17bを形成して配線電極11の表面を保護するようにした。第二端子電極10bと共通配線電極11aとの間にカバー層からなる絶縁層17aを設置したので、フレキシブル基板3の前方端FE側端部が上方から押圧された場合でも、第二端子電極10bと共通配線電極11aの短絡を防止することができる。
【0054】
図7は、上記第三実施形態における回路基板19を除去し、フレキシブル基板3上に駆動IC20を設置した。このように構成すれば、部品点数を減らし、組立工程も短くすることができる。その他の構成は第三実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0055】
(第四実施形態)
図8は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1のアクチュエータ基板2及びフレキシブル基板3の上面模式図を表す。第一実施形態と異なる部分は、ダミーチャンネルDを構成する溝6をアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘って形成した点である。従って、以下主に異なる部分について説明する。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0056】
図8に示すように、ダミーチャンネルD1〜Dn+1を構成する溝6はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまで形成し、吐出チャンネルC1〜Cnを構成する溝6は前方端FEから後方端RE近傍の手前の領域まで形成している。そして、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に、第一及び第二端子電極10a、10bを形成した。第一端子電極10aは吐出チャンネルC1の両側面に形成した駆動電極9に接続し、後方端REの近傍まで延在する。第二端子電極10bは、ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面に形成した駆動電極9と、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面に形成した駆動電極9と電気的に接続し、第一端子電極10aと後方端REとの間に形成した。
【0057】
そして、フレキシブル基板3の共通配線電極11aとアクチュエータ基板2の第一端子電極10aとは第一接続点16aにおいて電気的に接続している。他の吐出チャンネルの第一端子電極10aも同様に共通配線電極11aに電気的に接続する。フレキシブル基板3の個別配線電極11bとアクチュエータ基板2の第二端子電極10bとは第二接続点16bにおいて電気的に接続し、他の吐出チャンネルCにおいても同様の配線構造を有している。
【0058】
また、共通配線電極11aとダミーチャンネルDの側面に形成した駆動電極9との間に絶縁層17を介在させた。これにより、共通配線電極11aとダミーチャンネルDの側面に形成した駆動電極9とが短絡することを防止する。なお、短絡防止用の絶縁層17は共通配線電極11aの上面に設置してもよいし、電極交差部のアクチュエータ基板2側に設置してもよい。また、交差部分のみではなく、第三実施形態で説明したように、第一接続点16aより前方端FE側の共通配線電極11aの全表面を覆うように設置してもよい。
【0059】
(第五実施形態)
図9は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。
液体噴射装置30は、上記本発明に係る液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構43と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する液体供給管33、33’と、液体供給管33、33’に液体を供給する液体タンク31、31’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は本発明に係る液体噴射ヘッド1から構成される。即ち、表面に並列する複数の溝と、隣接する溝を離隔する隔壁を有するアクチュエータ基板と、溝を覆い、アクチュエータ基板の表面に接合するカバープレートと、溝に連通するノズルを有し、アクチュエータ基板の端面に接合するノズルプレートと、を備えている。このアクチュエータ基板は、液滴吐出用の吐出チャンネルと液滴を吐出しないダミーチャンネルが交互に配列している。そして、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面には、吐出チャンネルの側面に形成した駆動電極に接続する第一端子電極とダミーチャンネルの当該吐出チャンネル側の側面に形成した駆動電極に接続する第二端子電極が設置されている。第一端子電極は第二端子電極よりも前方端側に位置している。フレキシブル基板には、第一接続点を介して第一端子電極に電気的に接続する共通配線電極と、第二接続点を介して第二端子電極に電気的に接続する個別配線電極が設置されている。
【0060】
具体的に説明する。液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体34を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体34に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体タンク31、31’に貯留した液体を液体供給管33、33’に押圧して供給するポンプ32、32’と、液体噴射ヘッド1を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構43等を備えている。
【0061】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体34を主走査方向に搬送する。移動機構43は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット38と、キャリッジユニット38を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト39と、この無端ベルト39を図示しないプーリを介して周回させるモータ40を備えている。
【0062】
キャリッジユニット38は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク31、31’は対応する色の液体を貯留し、ポンプ32、32’、液体供給管33、33’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット38を駆動するモータ40の回転及び被記録媒体34の搬送速度を制御することにより、被記録媒体34上に任意のパターンを記録することできる。
【0063】
この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対しフレキシブル基板上の配線電極数が低減し、配線密度を概ね1/2とすることができるので、フレキシブル基板の配線を容易に形成することができ、同時に接続歩留まりも向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 液体噴射ヘッド
2 アクチュエータ基板
3 フレキシブル基板
4 カバープレート
5 ノズルプレート
6 溝
7 隔壁
9 駆動電極
10 端子電極
11 配線電極
12 液体供給室
13 スリット
14 ノズル
16 接続点
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出し、文字、図形を描画する、あるいは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜のパターンを形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、液体噴射ヘッドに形成した微小空間にこのインクを充填し、駆動信号に応じて微小空間の容積を瞬間的に縮小し溝に連通するノズルから液滴を吐出させる。
【0003】
図10はこの種のインクジェットヘッド51の分解斜視図を表す。インクジェットヘッド51は、表面に多数の溝56が形成された圧電体基板52と、液体供給室62とスリット63が形成されたカバープレート54と、液体を吐出するためのノズル64を備えたノズルプレート55と、駆動回路で生成され駆動信号を圧電体基板52に供給するためのフレキシブル基板53などから構成される。各溝56はカバープレート54により上部開口を塞がれてチャンネルを構成する。各溝56は隔壁57により仕切られ、隔壁57の壁面には隔壁57を駆動するための駆動電極59が形成されている。各駆動電極59は圧電体基板52の後方端REの表面に形成した端子電極60に接続されている。圧電体から成る隔壁57は垂直方向に分極処理が施されている。隔壁57の両壁面に形成した駆動電極に駆動信号を与えることにより、隔壁57は厚みすべり変形を生じる。予め溝56から成るチャンネルに液体を充填しておき、駆動時に隔壁57を変形させることにより、チャンネルの容積が変化してノズル64からインクが吐出される。
【0004】
図11は、圧電体基板52の後方端RE近傍の表面に接合したフレキシブル基板53を圧電体基板52から分離し、下方にずらした状態の圧電体基板52とフレキシブル基板53の上面模式図である。圧電体基板52の表面には溝56からなるチャンネルが形成され、各チャンネルはダミーチャンネルD1〜Dn+1と液滴を吐出する吐出チャンネルC1〜Cnが交互に配置されている。各チャンネルを区画する隔壁57の側面には隔壁57を変形駆動するための駆動電極59が形成されている。圧電体基板52の後方端RE近傍の表面には各チャンネルの駆動電極59に電気的に接続する端子電極60が形成されている。例えば、吐出チャンネルC1を構成する両隔壁57の吐出チャンネル側の両側面には駆動電極59c1が形成され、第一端子電極60c1に接続されている。ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d1が形成され、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面には駆動電極59d2が形成され、いずれも第二端子電極60d1に電気的に接続されている。他の吐出チャンネルC2〜Cnや、ダミーチャンネルD1〜Dn+1や第一及び第二端子電極60c、60dも同様の構成を備えている。
【0005】
フレキシブル基板53の圧電体基板52側の表面には駆動電極59に駆動信号を供給するための配線電極61が形成されている。フレキシブル基板53は矢印で示すように圧電体基板52の後方端RE側の表面に移動させて配線電極61d1が端子電極60d1に、配線電極61c1が端子電極60c1に、配線電極61d2が端子電極60d2にそれぞれ電気的に接続して圧電体基板52の表面に接合されている。その他の配線電極61も同様である。
【0006】
図12は、他のインクジェットヘッドを表す斜視図である(特許文献1の図1)。圧電セラミックス基板81の下面にチャンネルを構成する多数の溝が形成されている。圧電セラミックス基板81の前端部の表面84には図示しないノズルプレートが接合し、ノズルプレートのノズルに溝からなるインク室82が連通する。下面の各インク室82を区画する隔壁には駆動電極が形成され、各駆動電極は引出電極86により表面84を経由して表面85に引き出されている。表面84において電極は絶縁部83により分離され、表面85において引出電極86は絶縁部87により電気的に分離されている。引出電極86は後方端上面の電気接続端88において電気配線89と接続して図示しない駆動回路に接続している。この例においては、インク室82のピッチW1よりも電気接続端88のピッチW2を大きく形成して、外部接続回路との接続を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−29977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10及び図11に示す従来例において、フレキシブル基板53に形成した配線電極61の端子電極60との接続点のピッチPは、圧電体基板52に形成したチャンネルの配列ピッチPと同程度としなければならない。しかし、近年チャンネル数が増大するとともにその配列ピッチが狭くなってきている。そのために、フレキシブル基板53の配線電極61も狭ピッチ化しなければならず、位置合わせを行って実装する際の位置合わせ精度が厳しく、製造が困難となる、あるいは製造歩留まりが悪化する等の課題があった。
【0009】
また、図12に示すように圧電セラミックス基板81の裏面側に引出電極86を形成するためには、圧電セラミックス基板81の前方端の表面84及び上方の表面85に電極パターンを形成しなければならない。そのため、製造工程が複雑となって量産性が低下する課題があった。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡便な製造方法で構成することができ、小型化の容易な液体噴射ヘッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による液体噴射ヘッドは、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、前記隔壁の側面に設置した駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板の表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、前記アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、前記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、前記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、前記電極端子は、前記吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、前記吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有することとした。
【0012】
また、前記各吐出チャンネルにおいて、前記第一電極端子と前記共通配線電極を電気的に接続する第一接続点は、前記第二電極端子と前記個別配線電極を電気的に接続する第二接続点よりも前方端側に位置することとした。
【0013】
また、前記第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向することとした。
【0014】
また、前記共通配線電極は、前記フレキシブル基板上において前記個別配線電極よりも外周側に位置することとした。
【0015】
また、前記共通配線電極と前記第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜が介在することとした。
【0016】
また、前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端側の前記電極端子が設置される手前の位置まで延在し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端に亘って延在することとした。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかの液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドは、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、その隔壁の側面に設置した駆動電極と、その駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、アクチュエータ基板の表面に接合し、複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、上記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備えている。更に、上記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、上記電極端子は、吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、当該吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、配線電極は、吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有している。この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対し、フレキシブル基板上の配線電極数を概ね1/2に低減できるので、フレキシブル基板上の配線電極を容易に形成することができるとともに、端子電極と配線電極の接続を容易にした。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの部分分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの縦断面及び回路構成を表す模式図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの電極配線を表す上面模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの変形例を表す上面模式図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの上面模式図である。
【図9】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図10】従来公知のインクジェットヘッドの部分分解斜視部である。
【図11】従来公知のインクジェットヘッドの上面模式図である。
【図12】従来公知のインクジェットヘッドの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液体噴射ヘッドは、表面に複数の溝を形成したアクチュエータ基板と、アクチュエータ基板の表面に接合したカバープレートと、アクチュエータ基板に駆動信号を供給するためのフレキシブル基板を備えている。アクチュエータ基板は、基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、その隔壁の側面に形成した駆動電極と、その駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子を備えている。カバープレートは、アクチュエータ基板の表面に形成した複数の溝の上部開口を塞いで複数の並列するチャンネルを構成する。フレキシブル基板は、アクチュエータ基板の後方端近傍の基板表面に接合し、上記アクチュエータ基板に形成した端子電極と電気的に接続する配線電極と備えている。
【0021】
並列する複数のチャンネルは、液体を吐出するため吐出チャンネルと、液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列している。アクチュエータ基板の後方端近傍に形成した電極端子は、第一電極端子と第二電極端子を有している。第一電極端子は、吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続している。第二電極端子は、当該吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と、他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続している。
【0022】
各隔壁は圧電体材料により構成している。この場合に、アクチュエータ基板の全体を圧電体材料により構成してもよいし、隔壁部分のみを圧電体材料により構成してもよい。隔壁は、例えばアクチュエータ基板表面の法線方向に分極処理を施しておけば、大きな電歪効果を得ることができる。この場合に、隔壁全体を法線方向に分極処理してもよいし、隔壁の高さの略1/2を境にして、分極方向を反転させてもよい。そして、第一電極端子と第二電極端子に駆動信号を与えて吐出チャンネルを構成する両隔壁を吐出チャンネルを中心に対称に変形させ、吐出チャンネルの容積を変化させて内部に充填した液体をこの吐出チャンネルに連通するノズルから吐出させる。通常、第一電極端子をGNDに接続し第二電極端子に駆動信号を与えてアクチュエータ基板を駆動する。
【0023】
ここで、フレキシブル基板に形成した配線電極は、共通配線電極と個別配線電極を有している。共通配線電極は、一の吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する第一電極端子とを電気的に共通に接続している。個別配線電極は、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに電気的に個別に接続している。
【0024】
従って、アクチュエータ基板上にn(nは正の整数)個の吐出チャンネルが存在する場合に、これらの吐出チャンネルを駆動するための電極端子はn個の第一電極端子とn個の第二電極端子の合計2n個の電極端子が存在する。これに対して、フレキシブル基板上の配線電極は、例えば1本の共通配線電極とn本の個別配線電極、つまりn+1本の配線電極を形成すればよい。つまり、本発明の液体噴射ヘッドにおいては、アクチュエータ基板側に形成した電極端子の数に対して、フレキシブル基板側に形成する配線電極の数を大幅に低減させ、フレキシブル基板側の配線密度を概ね1/2とすることができる。そのため、フレキシブル基板上に配線電極を容易に形成することができ、更に端子電極と配線電極の接続を容易にした。
【0025】
また、各吐出チャンネルにおいて、アクチュエータ基板側の第一端子電極とフレキシブル基板側の共通配線電極とを電気的に接続する接続点を第一接続点とし、アクチュエータ基板側の第二電極端子とフレキシブル基板側の個別配線電極とを電気的に接続する接続点を第二接続点とすると、第一接続点は第二接続点よりもアクチュエータ基板の前方端側に位置するようにした。これにより、各チャンネルが配列する配列方向の接続点ピッチを大きくすることができるので、接続工程が容易となるとともに接続不良を低減させることができる。
【0026】
また、第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向するように設置することができる。これにより隣接する吐出チャンネル間の配線電極や接続点の間隔を広くとることができ、配線電極の高密度化に適する。
【0027】
また、共通配線電極は、フレキシブル基板上において個別配線電極よりも外周側に位置するように形成することができる。これにより、個別配線電極の間に共通配線電極を形成する必要が無くなり、配線電極の最小ピッチを第一電極端子のピッチと同程度にすることができる。そのために、フレキシブル基板上に配線電極を容易に形成することができ、同時に接続工程の歩留まりも向上させることができる。更に、共通配線電極は個別配線電極よりも流れる電流量が大きくなるが、個別配線電極の電極幅や電極ピッチに影響を受けることなく共通配線電極の配線幅を太くして配線抵抗による電圧降下を低減することができる。
【0028】
また、共通配線電極と第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜を介在させて、短絡を防止することができる。絶縁膜は上記交差部の共通配線電極側に設置してもよいし第二電極端子側に設置してもよい。これにより、フレキシブル基板上の電極配線を片面のみとすることができるので、コスト低減に寄与することができる。以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図1、図2及び図3は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するため図であり、図1は液体噴射ヘッド1の部分分解斜視図であり、図2はアクチュエータ基板2の部分XXの縦断面及び回路構成を表す模式図であり、図3はアクチュエータ基板2の後方端近傍の上面及びフレキシブル基板3の電極配線を表す模式図である。
【0030】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、圧電体材料から形成したアクチュエータ基板2と、その上面に接合したカバープレート4と、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に接合したフレキシブル基板3と、アクチュエータ基板2の前方端FEに接合したノズルプレート5を備えている。アクチュエータ基板2は、その基板の前方端FEから後方端RE近傍に亘る表面15に複数の並列する溝6と各溝6を離隔する複数の隔壁7を備え、その後方端RE側の表面15に各隔壁7の側面に形成した駆動電極9に電気的に接続する端子電極10を備えている。
【0031】
アクチュエータ基板2は次のようにして形成した。圧電体基板の表面をダイシングブレードにより切削し、複数の並列する溝6を形成した。次に圧電体基板の表面に感光性樹脂シートを貼り付け、露光現像してパターンを形成した。次に斜め蒸着法により圧電体基板の表面及び隔壁7の側面に導体膜を堆積し、次にリフトオフ法により感光性樹脂シートを除去することにより隔壁7の側面に駆動電極9を、表面15に端子電極10を形成した。
【0032】
カバープレート4は、液体を流入するための液体供給室12と、その液体供給室12の底面からカバープレート4の裏面に貫通するスリット13を備えている。カバープレート4は、アクチュエータ基板2の表面に、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面が露出し、スリット13が溝6の一本置きに溝6上部の開口部に連通するように、接着材により接合している。カバープレート4が溝6の上部開口を塞いでチャンネルを構成する。チャンネルは、スリット13を介して液体供給室12から液体の供給を可能に構成した吐出チャンネルCと、液体供給室12とは連通せず、液体が供給されないダミーチャンネルDとが交互に配列している。ノズルプレート5は、吐出チャンネルCに連通するノズル14を備え、アクチュエータ基板2及びカバープレート4の前方端FEに接合している。
【0033】
端子電極10は第一端子電極10aと第二端子電極10bを備えている。第一端子電極10aは吐出チャンネルCを構成する2つの隔壁7の吐出チャンネル側の側面に形成した2つの駆動電極9に接続する。第二端子電極10bは、吐出チャンネルCを構成する一方の隔壁7のダミーチャンネルD側の側面に形成した駆動電極9と、他方の隔壁7のダミーチャンネルD側の側面に形成した駆動電極9の両方の電極に接続する。即ち、各吐出チャンネルCに、第一端子電極10aは吐出チャンネルCの端部から後方端REの手前まで延在し、第二端子電極10bはその吐出チャンネルCの両隣りに位置するダミーチャンネルDの両端部から第一端子電極10aをコの字状に取り囲む形状を有している。そして、フレキシブル基板3が後方端RE近傍の表面15に接合している。
【0034】
図2を用いて回路構成を説明する。吐出チャンネルC1〜C4とダミーチャンネルD1〜D5は交互に配列している。例えば、吐出チャンネルC1は隣接するダミーチャンネルD1とD2から挟まれ、それらの間に隔壁71及び隔壁72が介在する。第一端子電極10aは、隔壁71と隔壁72により構成される吐出チャンネルC1の吐出チャンネルC1側の側面に形成した2つの駆動電極9に接続し、第二端子電極10bは、隔壁71のダミーチャンネルD1側の側面に形成した駆動電極9と隔壁72のダミーチャンネルD2側の側面に形成した駆動電極9に接続している。
【0035】
フレキシブル基板3は共通配線電極11aと複数の個別配線電極11bを備えている。共通配線電極11aは、第一接続点16aを介して吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aに電気的に接続し、GNDに接続する。他の吐出チャンネルC2〜C4に対応する他の第一端子電極10aも同様に他の第一接続点16aを介して配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、各吐出チャンネルC1〜C4に対応する第二接続点16bを介して第二端子電極10bに電気的に接続する。
【0036】
例えば吐出チャンネルC1を駆動する場合は、端子Taに駆動信号を与える。すると、隔壁71と隔壁72にはその上半分の厚さ方向に電界が印加されて厚み滑り歪みが発生し、隔壁71と隔壁72はその略1/2の高さを屈曲点とし“く”の字状に変形する。これにより、吐出チャンネルC1の容積が変化し、その内部に充填された液体がノズル14から吐出される。他の吐出チャンネルC2〜C4を駆動する場合も、端子Tb〜Tdを介し、駆動信号をダミーチャンネルD2〜D5側の駆動電極9に与える。吐出チャンネルC1〜C4側の駆動電極9をGNDレベルとしたので、導電性の液体を使用しても液体を介して駆動信号が漏れ出すことがない。
【0037】
図3を用いてアクチュエータ基板2上の第一及び第二端子電極10a、10bとフレキシブル基板3上の共通配線電極11a及び個別配線電極11bのレイアウトを説明する。図3において、アクチュエータ基板2上の端子電極10を破線で、フレキシブル基板3上の配線電極11を実線で表している。
【0038】
第一端子電極10aと第二端子電極10bをアクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に形成した。第一端子電極10aは吐出チャンネルC1の両側面に形成した駆動電極9に電気的に接続し、第二端子電極10bはその両側のダミーチャンネルD1、D2の吐出チャンネルC1側の側面に形成した2つの駆動電極9に電気的に接続する。表面15上において、第二端子電極10bは第一端子電極10aをコの字状に取り囲む形状を有している。
【0039】
共通配線電極11aと個別配線電極11bをフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に形成した。共通配線電極11aはフレキシブル基板3の外周に沿って個別配線電極11bを取り囲むように配置した。共通配線電極11aは、吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて電気的に接続する。他の吐出チャンネルに対応する第一端子電極も同様に他の第一接続点において共通配線電極11aに共通に接続する。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第二接続点16bにおいて電気的に接続した。他の吐出チャンネルに対応する第二端子電極も同様に他の第二接続点において電気的に接続している。第一接続点16aは第二接続点16bよりも前方端FE側に位置する。
【0040】
この電極構成により、アクチュエータ基板2上の端子電極数に対し、フレキシブル基板3上の配線電極数を概ね1/2に低減できるので、フレキシブル基板上の配線電極を容易に形成することができる。また、各チャンネルが配列する配列方向、即ち溝6と直交する方向の接続点16のピッチが拡大し、第一及び第二端子電極10a、11bと共通配線電極11a及び個別配線電極11bとを接続する接続工程が容易となる。また、共通配線電極11aをフレキシブル基板3の外周に個別配線電極11bを囲むように設置した。そのため吐出チャンネルCの数が増加し、個別配線電極11bの配線密度が高くなった場合であっても、共通配線電極11aの電極幅を個別配線電極11bの配線ピッチに影響を受けることなく自由に設定できる。そのために共通配線電極11aの抵抗による電圧降下を抑制することができる。
【0041】
第二接続点16bの設置位置は、第一接続点16aよりも後方端RE側であって第二端子電極10b上であればよい。ここで第二端子電極10bのチャンネル方向と直交する方向の長さは、1つの溝6の幅と2つの隔壁7の厚さの合計となる。従って、第二端子電極10bに対する個別配線電極11bの位置合わせ精度が緩和され、接続不良の発生も低減し接続工程も容易となる。また、図3に示すように、第一接続点16aと第二接続点16bとを吐出チャンネルCの長手方向に沿って対向設置すれば隣接する吐出チャンネル間の配線電極や接続点16の間隔が広がり、実装工程が容易となる。また、配線電極11の高密度化に好適である。
【0042】
なお、フレキシブル基板3上の共通配線電極11aをフレキシブル基板3の外周に沿って形成したがこれに限定されない。例えば共通配線電極11aを2つの個別配線電極11bの間に設置してもよいし、片方の外周側のみに形成してもよい。また、配線電極11をフレキシブル基板3上のアクチュエータ基板2側に形成したがこれに限定されない。例えば、共通配線電極11をフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側とは反対側の表面に形成し、第一接続点16aにおいてフレキシブル基板3を貫通する貫通電極を介して共通配線電極11aと第一端子電極10aと電気的に接続する。これにより、共通配線電極11aと第二端子電極10bとが交差する交差部にフレキシブル基板3が介在して短絡防止が容易となる。また、フレキシブル基板3を個別配線電極用と共通配線電極用に分割することができる。このようにすれば、共通配線電極を個別配線電極の周囲に設置する必要が無くなり、フレキシブル基板3の外形を小さく全体をコンパクトに形成することができる。
【0043】
また、アクチュエータ基板2としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックスを用い、隔壁7は基板表面の法線方向に分極処理を施した。隔壁7をシェブロンタイプの構造としても、或いは隔壁7の高さの略1/2の上半分又は下半分に電極を形成してもよい。カバープレート4はアクチュエータ基板2と同じ材料を使用し、ノズルプレート5はポリイミドフィルムを用いた。ただし本発明はこれらの材料に限定されず、他の材料を用いることができうることは言うまでもない。
【0044】
ここで言うシェブロンタイプとは、アクチュエータ基板に特徴があり、アクチュエータ基板の構成は図2に示す構成と異なり、その他の部分は図2に示す構成と同様である。即ち、アクチュエータ基板の素材にPZTセラミックスを用いる点は前述した構成と同様だが、各隔壁は基板表面の法線方向に対向するように分極処理を施した2層のPZTセラミックスから構成されている。具体的に、2層のPZTセラミックスは分極方向が相反する方向になるように積層されており、その隔壁の側面に上下にわたって駆動電極が形成されている。これにより、駆動電圧を印加することによって、側壁の上下にわたって駆動することができる。
【0045】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の上面模式図である。第一実施形態と異なる部分は、アクチュエータ基板2上に形成した第二端子電極10bとフレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に形成した共通配線電極11aとの間に絶縁層を形成した点であり、その他の構成は第一実施形態と同様である。従って、以下、主に異なる部分について説明する。
【0046】
アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に第一及び第二端子電極10a、10bを形成し、第二端子電極10bは第一端子電極10aを囲むように配置している。フレキシブル基板3のアクチュエータ基板2側の表面に共通配線電極11aと個別配線電極11bを形成し、共通配線電極11aは個別配線電極11bを囲むようにフレキシブル基板3の周辺に形成した。共通配線電極11aは吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。他の吐出チャンネルに対応する他の第一端子電極も同様に共通配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第一接続点16aよりも後方端RE側の第二接続点16bにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続している。
【0047】
この構成では、共通配線電極11aと第二端子電極10bとは平面視必ず交差する。そこで、共通配線電極11aと各吐出チャンネルに対応する第二端子電極10bとの交差部に絶縁層17を介在して、共通配線電極11aと第二端子電極10bとの短絡を防止した。
【0048】
絶縁層17として絶縁性フィルムを用い、各交差部のフレキシブル基板3側に貼り付けてもよいし、アクチュエータ基板2側に貼り付けてもよい。また、絶縁層17として、交差部の第二端子電極10bの表面を覆うように絶縁膜を形成してもよいし、交差部の共通配線電極11aを覆うように絶縁膜を形成してもよい。
【0049】
(第三実施形態)
図5は本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の上面模式図であり、図6は部分YYの断面模式図である。図7は、第三実施形態の変形例を表す断面模式図である。第二実施形態と異なる主な部分は、共通配線電極11aと第一端子電極10aとを接続する第一接続点16aよりも前方端FE側の共通配線電極11aに絶縁フィルムからなる絶縁層17aを覆うように形成して、第二端子電極10bと共通配線電極11aの間の短絡を防止した点である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0050】
図5及び図6を参照して液体噴射ヘッド1の構成を説明する。液体噴射ヘッド1は、圧電体材料から形成し、表面15に吐出チャンネルC1〜CnとダミーチャンネルD1〜Dn+1が交互に配列するアクチュエータ基板2と、その表面15に接合し、液体供給室12と吐出チャンネルC1〜Cnに液体を供給するためのスリット13を有するカバープレート4と、吐出チャンネルC1〜Cnに連通するノズル14を備え、アクチュエータ基板2及びカバープレート4の前方端FEに接合するノズルプレート5と、アクチュエータ基板2、フレキシブル基板3及びカバープレート4を固定するための枠体18と、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に接合し、アクチュエータ基板2に駆動信号を供給するためのフレキシブル基板3と、駆動IC20を搭載し、フレキシブル基板3に駆動信号を供給する回路基板19を備えている。
【0051】
回路基板19は、その表面に駆動IC20を搭載し、フレキシブル基板3のアクチュエータ基板2とは反対側の端部に接合している。回路基板19はその表面に図示しない配線を有し、各配線の一方端が駆動IC20に、他方端がフレキシブル基板3の共通配線電極11a及び個別配線電極11bに電気的に接続している。つまり、駆動IC20で生成した駆動信号は、フレキシブル基板3上の配線電極11を介してアクチュエータ基板2上の端子電極10に伝達し、各チャンネルの駆動電極9に供給される。なお、アクチュエータ基板2、カバープレート4及びノズルプレート5の構成や、端子電極10及び配線電極11のレイアウトは第一実施形態又は第二実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0052】
共通配線電極11aは、吐出チャンネルC1に対応する第一端子電極10aと第一接続点16aにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続し、他の吐出チャンネルに対応する第一端子電極も同様に共通配線電極11aに接続している。個別配線電極11bは、吐出チャンネルC1に対応する第二端子電極10bと第二接続点16bにおいて図示しない異方性導電膜を介して電気的に接続し、他の吐出チャンネルに対応する第二端子電極も同様の構成を有する。各個別配線電極11bは互いに電気的に独立している。
【0053】
第一接続点16aは、第二接続点16bよりも前方端FE側に位置する。そして、この第一接続点16aよりも前方端FE側の共通配線電極11aにその表面を覆うようにカバー層からなる絶縁層17aを設置した。また、アクチュエータ基板2と回路基板19の間のフレキシブル基板3の表面に絶縁層17bを形成して配線電極11の表面を保護するようにした。第二端子電極10bと共通配線電極11aとの間にカバー層からなる絶縁層17aを設置したので、フレキシブル基板3の前方端FE側端部が上方から押圧された場合でも、第二端子電極10bと共通配線電極11aの短絡を防止することができる。
【0054】
図7は、上記第三実施形態における回路基板19を除去し、フレキシブル基板3上に駆動IC20を設置した。このように構成すれば、部品点数を減らし、組立工程も短くすることができる。その他の構成は第三実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0055】
(第四実施形態)
図8は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1のアクチュエータ基板2及びフレキシブル基板3の上面模式図を表す。第一実施形態と異なる部分は、ダミーチャンネルDを構成する溝6をアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REに亘って形成した点である。従って、以下主に異なる部分について説明する。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0056】
図8に示すように、ダミーチャンネルD1〜Dn+1を構成する溝6はアクチュエータ基板2の前方端FEから後方端REまで形成し、吐出チャンネルC1〜Cnを構成する溝6は前方端FEから後方端RE近傍の手前の領域まで形成している。そして、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面15に、第一及び第二端子電極10a、10bを形成した。第一端子電極10aは吐出チャンネルC1の両側面に形成した駆動電極9に接続し、後方端REの近傍まで延在する。第二端子電極10bは、ダミーチャンネルD1の吐出チャンネルC1側の側面に形成した駆動電極9と、ダミーチャンネルD2の吐出チャンネルC1側の側面に形成した駆動電極9と電気的に接続し、第一端子電極10aと後方端REとの間に形成した。
【0057】
そして、フレキシブル基板3の共通配線電極11aとアクチュエータ基板2の第一端子電極10aとは第一接続点16aにおいて電気的に接続している。他の吐出チャンネルの第一端子電極10aも同様に共通配線電極11aに電気的に接続する。フレキシブル基板3の個別配線電極11bとアクチュエータ基板2の第二端子電極10bとは第二接続点16bにおいて電気的に接続し、他の吐出チャンネルCにおいても同様の配線構造を有している。
【0058】
また、共通配線電極11aとダミーチャンネルDの側面に形成した駆動電極9との間に絶縁層17を介在させた。これにより、共通配線電極11aとダミーチャンネルDの側面に形成した駆動電極9とが短絡することを防止する。なお、短絡防止用の絶縁層17は共通配線電極11aの上面に設置してもよいし、電極交差部のアクチュエータ基板2側に設置してもよい。また、交差部分のみではなく、第三実施形態で説明したように、第一接続点16aより前方端FE側の共通配線電極11aの全表面を覆うように設置してもよい。
【0059】
(第五実施形態)
図9は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。
液体噴射装置30は、上記本発明に係る液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構43と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する液体供給管33、33’と、液体供給管33、33’に液体を供給する液体タンク31、31’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は本発明に係る液体噴射ヘッド1から構成される。即ち、表面に並列する複数の溝と、隣接する溝を離隔する隔壁を有するアクチュエータ基板と、溝を覆い、アクチュエータ基板の表面に接合するカバープレートと、溝に連通するノズルを有し、アクチュエータ基板の端面に接合するノズルプレートと、を備えている。このアクチュエータ基板は、液滴吐出用の吐出チャンネルと液滴を吐出しないダミーチャンネルが交互に配列している。そして、アクチュエータ基板2の後方端RE近傍の表面には、吐出チャンネルの側面に形成した駆動電極に接続する第一端子電極とダミーチャンネルの当該吐出チャンネル側の側面に形成した駆動電極に接続する第二端子電極が設置されている。第一端子電極は第二端子電極よりも前方端側に位置している。フレキシブル基板には、第一接続点を介して第一端子電極に電気的に接続する共通配線電極と、第二接続点を介して第二端子電極に電気的に接続する個別配線電極が設置されている。
【0060】
具体的に説明する。液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体34を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体34に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体タンク31、31’に貯留した液体を液体供給管33、33’に押圧して供給するポンプ32、32’と、液体噴射ヘッド1を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構43等を備えている。
【0061】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体34を主走査方向に搬送する。移動機構43は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット38と、キャリッジユニット38を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト39と、この無端ベルト39を図示しないプーリを介して周回させるモータ40を備えている。
【0062】
キャリッジユニット38は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク31、31’は対応する色の液体を貯留し、ポンプ32、32’、液体供給管33、33’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット38を駆動するモータ40の回転及び被記録媒体34の搬送速度を制御することにより、被記録媒体34上に任意のパターンを記録することできる。
【0063】
この構成により、アクチュエータ基板上の端子電極数に対しフレキシブル基板上の配線電極数が低減し、配線密度を概ね1/2とすることができるので、フレキシブル基板の配線を容易に形成することができ、同時に接続歩留まりも向上させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 液体噴射ヘッド
2 アクチュエータ基板
3 フレキシブル基板
4 カバープレート
5 ノズルプレート
6 溝
7 隔壁
9 駆動電極
10 端子電極
11 配線電極
12 液体供給室
13 スリット
14 ノズル
16 接続点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、前記隔壁の側面に設置した駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、
前記アクチュエータ基板の表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、
前記アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、前記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、
前記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、
前記電極端子は、前記吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、前記吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、
前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有する液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記各吐出チャンネルにおいて、前記第一電極端子と前記共通配線電極を電気的に接続する第一接続点は、前記第二電極端子と前記個別配線電極を電気的に接続する第二接続点よりも前方端側に位置する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向している請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記共通配線電極は、前記フレキシブル基板上において前記個別配線電極よりも外周側に位置する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記共通配線電極と前記第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜が介在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端側の前記電極端子が設置される手前の位置まで延在し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端に亘って延在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【請求項1】
基板の前方端から後方端近傍の表面に互いに隔壁により離隔して並列する複数の溝と、前記隔壁の側面に設置した駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し、後方端近傍の表面に設置した電極端子とを有するアクチュエータ基板と、
前記アクチュエータ基板の表面に接合し、前記複数の溝の上部開口を塞いで複数のチャンネルを構成するカバープレートと、
前記アクチュエータ基板の後方端近傍の表面に接合し、前記電極端子に電気的に接続する配線電極を有するフレキシブル基板と、を備え、
前記複数のチャンネルは、液体を吐出するための吐出チャンネルと液体を吐出しないダミーチャンネルとが交互に配列し、
前記電極端子は、前記吐出チャンネルを構成する2つの隔壁の側面のうち、当該吐出チャンネル側の側面に設置した2つの駆動電極に電気的に接続する第一電極端子と、前記吐出チャンネルの一方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極と他方の隔壁のダミーチャンネル側の側面に設置した駆動電極に電気的に接続する第二電極端子を含み、
前記配線電極は、前記吐出チャンネルに対応する第一電極端子と他の吐出チャンネルに対応する他の第一電極端子を電気的に接続する共通配線電極と、各吐出チャンネルに対応する第二電極端子のそれぞれに個別に電気的に接続する複数の個別配線電極を有する液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記各吐出チャンネルにおいて、前記第一電極端子と前記共通配線電極を電気的に接続する第一接続点は、前記第二電極端子と前記個別配線電極を電気的に接続する第二接続点よりも前方端側に位置する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第一接続点と第二接続点は吐出チャンネルの長手方向に沿って対向している請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記共通配線電極は、前記フレキシブル基板上において前記個別配線電極よりも外周側に位置する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記共通配線電極と前記第二電極端子とが交差する交差部に、短絡防止用の絶縁膜が介在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記吐出チャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端側の前記電極端子が設置される手前の位置まで延在し、前記ダミーチャンネルを構成する溝は、前記アクチュエータ基板の前方端から後方端に亘って延在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−245833(P2011−245833A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124353(P2010−124353)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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