説明

液体噴射装置およびその駆動方法

【課題】特性の異なるインクを適切に噴射する。
【解決手段】液体噴射装置100が、第1液体が充填される第1圧力室50と、第1圧力室50に連通する第1ノズル56と、第1圧力室50内の圧力を変動させて第1圧力室50内の第1液体を第1ノズル56から噴射させる第1圧力発生素子422と、第2液体が充填される第2圧力室50と、第2圧力室50に連通する第2ノズル56と、第2圧力室50内の圧力を変動させて第2圧力室50内の第2液体を第2ノズル56から噴射させる第2圧力発生素子422と、を備える記録ヘッド22と、第1圧力発生素子422に、第1周波数Fで噴射パルスPDを供給して第1ノズル56から第1液体を噴射させ、第2圧力発生素子422に、第1周波数Fを下回る第2周波数で噴射パルスPDを供給して第2ノズル56から第2液体を噴射させる制御部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子や発熱素子等の圧力発生素子により圧力室内を振動させることで圧力室内の液体(例えばインク)をノズルから噴射する液体噴射技術が従来から提案されている。染料インクや顔料インクの他、印字画像に金属光沢を付与可能な光輝性インク(メタリックインク)等が液体噴射技術に用いられている。
【0003】
インクの特性はインクの種類毎に異なるため、インクの種類に応じて噴射を制御すると好適である。例えば、特許文献1では、同サイズのドット形成に必要なインクの噴射量が染料インクと顔料インクとで異なることを考慮して、噴射するインクの種類に応じて駆動波形(噴射パルス)の供給個数を異ならせることにより、噴射量をインクの種類毎に異ならせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−315324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最適な駆動周波数は、インクの特性(粘度等)に応じて異なる。例えば、光輝性インクは金属粒子等の光輝性顔料を含有しており、通常の顔料インクよりも低い周波数の駆動信号を用いてインクを噴射させる必要がある。しかしながら、同じ周波数の駆動信号を用いて各インクを噴射させる特許文献1の技術では、インクによっては駆動信号の周波数が適切ではないために、所望の噴射特性が得られない場合や、インクが噴射されない(インクのドット落ちが生じる)場合が生じ得る。以上の事情に鑑み、本発明は、特性の異なるインクを適切に噴射することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、第1液体が充填される第1圧力室と、前記第1圧力室に連通する第1ノズルと、前記第1圧力室内の圧力を変動させて前記第1圧力室内の前記第1液体を前記第1ノズルから噴射させる第1圧力発生素子と、第2液体が充填される第2圧力室と、前記第2圧力室に連通する第2ノズルと、前記第2圧力室内の圧力を変動させて前記第2圧力室内の前記第2液体を前記第2ノズルから噴射させる第2圧力発生素子と、を備える記録ヘッドと、前記第1圧力発生素子に、第1周波数で噴射パルスを供給して前記第1ノズルから前記第1液体を噴射させ、前記第2圧力発生素子に、前記第1周波数を下回る第2周波数で前記噴射パルスを供給して前記第2ノズルから前記第2液体を噴射させる制御部とを備える。
【0007】
以上の構成によれば、第2液体が充填された圧力室の圧力発生素子(第2圧力発生素子)が、第1液体が充填された圧力室の圧力発生素子(第1圧力発生素子)と比較して低い周波数で駆動されるから、圧力発生素子を駆動する周波数を第1液体と第2液体とで同等とした構成と比較して、第1液体の高速な噴射と第2液体の適切な噴射とを両立できるという利点がある。
【0008】
本発明の好適な態様では、前記第2液体が噴射されるノズルの個数が、前記第1ノズルの個数を上回る。以上の構成によれば、第1液体の噴射頻度と同等の噴射頻度で第2液体を噴射させることが可能である。
【0009】
本発明の好適な態様において、液体噴射装置は前記噴射パルスを各駆動周期内に含む駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、前記制御部は、前記第1圧力発生素子について前記噴射パルスの供給を前記駆動周期毎に指示し、前記第2圧力発生素子について前記噴射パルスの供給を前記駆動周期の所定個おきに指示する。以上の構成によれば、共通の駆動信号から異なる区間を選択して異なる周波数で噴射パルスを各圧力発生素子に供給するので、周波数ごとに別個に駆動信号を生成する手段を設けた構成と比較して、回路構成を簡易にすることが可能である。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記記録ヘッドは、前記第2液体が充填される第3圧力室と、前記第3圧力室に連通する第3ノズルと、前記第3圧力室内の圧力を変動させて前記第3圧力室内の前記第2液体を前記第3ノズルから噴射させる第3圧力発生素子を更に備え、前記制御部は、前記第2圧力発生素子には、複数の前記駆動周期のうちの第1駆動周期にて前記噴射パルスを供給し、前記第3圧力発生素子には、複数の前記駆動周期のうちの前記第1駆動周期とは異なる第2駆動周期にて前記噴射パルスを供給する。
以上の構成によれば、各圧力発生素子を駆動する時期が、各々に第2液体が充填された第2圧力室と第3圧力室とで分散されるから、第2液体に対応する全部の圧力発生素子に対して同じ時点で噴射パルスを供給する構成と比較して、記録ヘッドの駆動負荷が軽減される。また、噴射パルスを同時に供給する圧力発生素子の個数が減少する(駆動信号の伝送路に付随する容量成分が低減される)から、駆動信号の歪みが抑制されるという利点もある。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記第2液体は、光輝性インクである。より好適な態様では、前記光輝性インクは、光輝性顔料を含有し、前記第1液体よりも粘度が低い。更に好適な態様では、前記光輝性顔料は、平板状粒子である。以上の各態様によれば、第1液体とは特性の異なる光輝性インクがノズルから適切に噴射される。
【0012】
以上の各態様に係る液体噴射装置の動作方法(液体噴射装置の駆動方法)としても本発明は特定され得る。本発明の駆動方法は、 第1液体が充填される第1圧力室と、前記第1圧力室に連通する第1ノズルと、前記第1圧力室内の圧力を変動させて前記第1圧力室内の前記第1液体を前記第1ノズルから噴射させる第1圧力発生素子と、第2液体が充填される第2圧力室と、前記第2圧力室に連通する第2ノズルと、前記第2圧力室内の圧力を変動させて前記第2圧力室内の前記第2液体を前記第2ノズルから噴射させる第2圧力発生素子と、を備える記録ヘッドを備える液体噴射装置において、 前記第1圧力発生素子に、第1周波数で噴射パルスを供給して前記第1ノズルから前記第1液体を噴射させ、前記第2圧力発生素子に、前記第1周波数を下回る第2周波数で前記噴射パルスを供給して前記第2ノズルから前記第2液体を噴射させる。以上の駆動方法においても本発明の液体噴射装置と同様の作用および効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の部分的な模式図である。
【図2】記録ヘッドの吐出面の平面図である。
【図3】記録ヘッドの構成図である。
【図4】実施形態の印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図5】駆動信号の波形図である。
【図6】記録ヘッドの電気的な構成のブロック図である。
【図7】噴射信号の波形図である。
【図8】第2実施形態の噴射信号の波形図である。
【図9】第3実施形態の駆動信号生成部の電気的な構成のブロック図である。
【図10】第3実施形態の基本波形および駆動信号の波形図である。
【図11】第3実施形態の基本波形および駆動信号の波形図である。
【図12】変形例の駆動信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な模式図である。印刷装置100は、微細な液滴状のインクを記録紙200に噴射する液体噴射装置であり、キャリッジ12と移動機構14と用紙搬送機構16とを具備する。
【0015】
キャリッジ12には、液体噴射ヘッドとして機能する記録ヘッド22が設置されるとともに、記録ヘッド22に供給されるインクを貯留するインクカートリッジ24が着脱可能に搭載される。なお、印刷装置100の筐体(図示略)にインクカートリッジ24を固定して記録ヘッド22にインクを供給する構成も採用され得る。
【0016】
図1の移動機構14は、案内軸122に沿ってキャリッジ12を主走査方向(記録紙200の幅方向)に往復させる。キャリッジ12の位置は、リニアエンコーダー等の検出器(図示略)で検出されて移動機構14の制御に利用される。用紙搬送機構16はキャリッジ12の往復に並行して記録紙200を副走査方向に移動させる。キャリッジ12の往復時に記録ヘッド22が記録紙200にインクを噴射することで所望の画像が記録紙200に記録(印刷)される。
【0017】
移動機構14は、吐出面26が記録紙200に対向する範囲の外側の位置(以下「待避位置」という)まで記録ヘッド22を移動させることが可能である。待避位置にある記録ヘッド22の吐出面26に対向するようにキャップ18が配置される。キャップ18は、記録ヘッド22の吐出面26を封止する。キャップ18の近傍には吐出面26を払拭するワイパー(図示略)が配置される。
【0018】
図2は、記録ヘッド22のうち記録紙200に対向する吐出面26の平面図である。図2のX方向は主走査方向であり、Y方向は副走査方向である。図2に示すように、記録ヘッド22の吐出面26には複数のノズル群28(28C、28M、28Y、28K、28LM、28LC、28G)が形成される。各ノズル群28は複数のノズル56の集合である。ノズル群28Gは2N個のノズル56を有し、ノズル群28G以外の各ノズル群28はN個のノズル56を有する。また、ノズル群28Gは、各々がN個のノズル56を含む2つのノズル列(第1列Laおよび第2列Lb)を有する。ノズル群28の各ノズル56からはインクが噴射される。複数のノズル群28(28C、28M、28Y、28K、28LM、28LC、28G)は、複数の異なるインク色(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、光輝性(G))にそれぞれ対応する。以下、説明の簡単のために、光輝性インク以外のインク(シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC))をまとめて「非光輝性インク」と呼ぶことがある。
【0019】
ノズル群28Gの各ノズル56から噴射される光輝性インクについて説明する。本実施形態の光輝性インクは、非光輝性インクと比較して低粘度である。光輝性インクは、光輝性顔料と有機溶剤とを含有する。光輝性顔料は光輝性を有する粒子であり、記録紙200上に印刷された画像に金属的な光沢を付与する。光輝性顔料の粒子形状が平板状であると光沢を付与する効果が高い。光輝性顔料の材料は任意であるが、光沢度(光輝性)の観点およびコストの観点からアルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。アルミニウム合金を用いる場合、光輝性を有する1種以上の任意の元素(好適には、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等)をアルミニウムに添加し得る。
【0020】
図3は、記録ヘッド22の断面図(主走査方向に垂直な断面)である。図3に示すように、記録ヘッド22は、振動ユニット42と収容体44と流路ユニット46とを具備する。振動ユニット42は、圧電振動子422とケーブル424と固定板426と含む。圧電振動子422は、圧電材料と電極とが交互に積層された縦振動型の圧電素子であり、ケーブル424を介して供給される信号に応じて振動する。圧電振動子422を固定した固定板426が収容体44の内壁面に接合された状態で振動ユニット42は収容体44に収容される。
【0021】
流路ユニット46は、相互に対向する基板462と基板464との間隙に流路形成板466を介挿した構造体である。流路形成板466は、圧力室50と供給路52と貯留室54とを含む空間を基板462と基板464との間隙に形成する。圧力室50は、振動ユニット42毎に隔壁で個別に区画されるとともに供給路52を介して貯留室54に連通する。各圧力室50に対応する複数のノズル(吐出口)56が基板462に列状に形成される。吐出面26は、基板462の圧力室50とは反対側の表面である。各ノズル56は、圧力室50を外部に連通させる貫通孔である。インクカートリッジ24から供給されるインクは貯留室54に貯留される。以上の説明から理解されるように、貯留室54から供給路52と圧力室50とノズル56とを経由して外部に至るインクの流路が形成される。
【0022】
基板464は、弾性材料で形成された平板材である。基板464のうち圧力室50の反対側の領域には島状の島部48が形成される。圧力室50の一部を構成する基板464および島部48が、圧電振動子422の駆動により変形して振動する振動板となる。島部48には圧電振動子422の先端面(自由端)が接合される。したがって、信号の供給により圧電振動子422が駆動されると、島部48を介して基板464が変位することで圧力室50の容積が変化して圧力室50内のインクの圧力が変動する。すなわち、圧電振動子422は、圧力室50内の圧力を変動させる圧力発生手段として機能する。以上に説明した圧力室50内の圧力の変動に応じてノズル56からインクを噴射することが可能である。
【0023】
図4は、印刷装置100の電気的な構成のブロック図である。図4に示すように、印刷装置100は、制御装置102と印刷処理部(プリントエンジン)104とを具備する。制御装置102は、印刷装置100の全体を制御する要素であり、制御部60と記憶部62と駆動信号生成部64と外部I/F(interface)66と内部I/F68とを含む。記録紙200に印刷される画像を示す印刷データDPが外部装置(例えばホストコンピューター)300から外部I/F66に供給され、内部I/F68には印刷処理部104が接続される。印刷処理部104は、制御装置102による制御のもとで記録紙200に画像を記録する要素であり、前述の記録ヘッド22と移動機構14と用紙搬送機構16とを含む。
【0024】
記憶部62は、制御プログラム等を記憶するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記憶するRAMとを含む。制御部60は、記憶部62に記憶された制御プログラムの実行で印刷装置100の各要素(例えば印刷処理部104)を統括的に制御する。また、制御部60は、外部I/F66から供給される印刷データDPに基づいて、ノズル56から圧力室50内のインクを噴射させる噴射駆動と、ノズル56内のインクのメニスカスに微振動を付与する微振動駆動(非噴射)と、圧電振動子422の変位を停止させる待機状態(噴射駆動も微振動駆動も実行しない状態)とのいずれかを指定する制御データDCを印字周期Tごとに生成する。
【0025】
駆動信号生成部64は、圧電振動子422を駆動する駆動信号COMを生成する。図5に駆動信号COMの一例を示す。駆動信号COMは一定の周波数Fを有する周期信号である。駆動信号COMの1周期(印字周期T)内には微振動パルスPSおよび噴射パルスPDが配置される。微振動パルスPSは、圧力室50内のインクを噴射させない程度にノズル56内のインクの液面(メニスカス)を振動させる(すなわち、微振動駆動を実行させる)台形状の波形である。噴射パルスPDは、圧力室50内の所定量のインクがノズル56から噴射されるように圧電振動子422と弾性膜43とを変形させる波形である。噴射パルスPDは、所定の基準電位VREFから高位側に電位が変化する区間と、基準電位VREFを跨いで低位側に電位が変化する区間と、高位側に電位が変化して基準電位VREFに復帰する区間とを含む。なお、微振動パルスPSおよび噴射パルスPDの波形は適宜に変更され得る。
【0026】
図6は、記録ヘッド22の電気的な構成の模式図である。図6に示すように、記録ヘッド22は、各圧電振動子422に対応する複数の駆動回路220を具備する。駆動信号生成部64が生成した駆動信号COMは、内部I/F68を介して複数の駆動回路220に共通に供給される。また、制御部60が生成した制御データDCは内部I/F68を介して各駆動回路220に供給される。
【0027】
各駆動回路220は、制御データDCに応じて駆動信号COMを選択し噴射信号INJとして圧電振動子422に供給する。具体的には、制御データDCが噴射駆動を指示する場合、駆動回路220は、駆動信号COM中の噴射パルスPDを選択して圧電振動子422に供給する。噴射パルスPDの供給により圧電振動子422が変位して圧力室50内のインクが加圧され、インクがノズル56から記録紙200に噴射される。また、制御データDCが微振動駆動を指示する場合、駆動回路220は、駆動信号COM中の微振動パルスPSを選択して圧電振動子422に微振動駆動を実行させ、ノズル56内のインクのメニスカスに微振動を付与する。また、制御データDCが待機状態を指示する場合、駆動回路220は、噴射パルスPDも微振動パルスPSも選択しない。したがって、電位は基準電位VREFに維持され、インクは噴射されず微振動駆動も実行されない。なお、制御データDCが待機状態を指示する場合に、駆動回路220が所定の定電位(基準電位VREF等)を圧電振動子422に供給する構成も好適である。
【0028】
ところで、各ノズル56からインクを噴射する適切な周波数は、インクの特性に応じて相違する。具体的には、非光輝性インクに対応する圧電振動子422に噴射パルスPDを供給する周波数と同等の周波数で、光輝性インクに対応する圧電振動子422に噴射パルスPDを供給した場合、所期の噴射特性(噴射量や飛翔速度)とは異なる特性で光輝性インクが噴射される可能性や、光輝性インクが噴射されない可能性がある。そこで、第1実施形態では、圧力室50に充填されたインクの種類に応じて圧電振動子422の駆動の周期を相違させる。
【0029】
図7には、非光輝性インクに対応する圧電振動子422に供給される噴射信号INJ1が例示されている。図7から理解されるように、非光輝性インクに対応する圧電振動子422について、制御部60は、噴射駆動および微振動駆動のいずれかを指示する制御データDCを印字周期Tごとに生成して駆動回路220に供給する。すなわち、非光輝性インクに対応する圧電振動子422には噴射駆動または微振動駆動が印字周期Tごとに指示される。したがって、図7に示すように、非光輝性インクに対応する圧電振動子422には印字周期Tごとに噴射パルスPD(または微振動パルスPS)が供給され得る。すなわち、非光輝性インクに対応する圧電振動子422に供給される噴射信号INJ1の周期(1個のノズル56から非光輝性インクが噴射される周期)U1は印字周期Tの1個分に相当し、噴射信号INJ1の周波数は駆動信号COMの周波数Fと同等である。
【0030】
他方、図7の噴射信号INJ2は、光輝性インクに対応する圧電振動子422に供給される噴射信号INJの一例である。図7から理解されるように、光輝性インクについて、制御部60は、噴射駆動および微振動駆動のいずれかを指示する制御データDCを印字周期Tの1個おきに生成し、それ以外の印字周期Tでは待機状態を指示する制御データDCを生成する。すなわち、光輝性インクに対応する圧電振動子422には、噴射駆動および微振動駆動のいずれかと待機状態とが印字周期Tごとに交互に指示される。したがって、図7に示すように、光輝性インクに対応する圧電振動子422には1印字周期Tおきに噴射パルスPD(または微振動パルスPS)が供給され、それ以外の印字周期Tでは待機状態を維持する。すなわち、光輝性インクに対応する圧電振動子422に供給される噴射信号INJ2の周期(1個のノズル56から光輝性インクが噴射される周期)U2は印字周期Tの2個分に相当し、噴射信号INJ2の周波数は駆動信号COMの周波数Fの半分((1/2)F)である。
【0031】
なお、以上に説明したように、1個のノズル56から光輝性インクが噴射される周波数は非光輝性インクの半分であるが、図2を参照して前述したように、非光輝性インクに対応するノズル群28Gは、光輝性インクに対応する各ノズル群28の2倍の個数のノズル56で構成されるから、1個のノズル群28に着目すれば、単位時間あたりのインクの噴射頻度は光輝性インクと非光輝性インクとで同等である。
【0032】
以上に説明した第1実施形態では、光輝性インクに対応する圧電振動子422が非光輝性インクに対応する圧電振動子422と比較して低い周波数で駆動されるから、圧電振動子422を駆動する周波数(噴射信号INJの周波数)を光輝性インクと非光輝性インクとで同等とした構成と比較して、非光輝性インクの高速な噴射と非光輝性インクの適切な噴射とを両立できるという利点がある。具体的には、光輝性インクを適切に噴射し得る周期U2で非光輝性インクを噴射させた場合と比較して、非光輝性インクの高速な噴射が実現される。また、非光輝性インクを高速に噴射し得る周期U1で光輝性インクを噴射させた場合と比較して、光輝性インクを所期の噴射特性で適切に噴射させることが可能である。
【0033】
さらに、周波数の低い噴射信号INJ2で噴射させる光輝性インクに対応するノズル群28については、周波数の高い噴射信号INJ1で噴射させる非光輝性インクに対応する各ノズル群28と比較して多くのノズル56を設けたので、非光輝性インクの噴射頻度と同等の噴射頻度で光輝性インクを噴射することが可能である。
【0034】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。以下に例示する各態様において、作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
【0035】
図8の噴射信号INJ2aは、光輝性インクに対応するノズル群28Gのうち第1列Laのノズル56に対応する各圧電振動子422に供給される噴射信号の一例であり、図8の噴射信号INJ2bは、ノズル群28Gのうち第2列Lbのノズル56に対応する各圧電振動子422に供給される噴射信号の一例である。光輝性インクに対応する各圧電振動子422に供給される噴射信号INJ2(INJ2a、INJ2b)の周波数が、非光輝性インクに対応する圧電振動子422に供給される噴射信号INJ1の半分の周波数((1/2)F)である点は、第1実施形態と同様である。
【0036】
図8に示すように、第1列Laの各ノズル56について、制御部60は、噴射駆動または微振動駆動を指示する制御データDCと待機状態を指示する制御データDCとを印字周期Tごとに交互に生成する。他方、第2列Lbの各ノズル56について、制御部60は、第1列Laの各ノズル56について噴射駆動または微振動駆動が指示される印字周期Tにおいては、待機状態を指示する制御データDCを生成し、第1列Laの各ノズル56について待機状態が指示される印字周期Tにおいては、噴射駆動または微振動駆動を指示する制御データDCを生成する。したがって、第1列Laに対応する各圧電振動子422と第2列Lbに対応する圧電振動子422とでは相異なる印字周期Tにて噴射パルスPD(または微振動パルスPS)が供給される。すなわち、第1列Laに対応する圧電振動子422には奇数番目の印字周期Tにて噴射パルスPDが供給され、第2列Lbに対応する圧電振動子422には偶数番目の印字周期Tにて噴射パルスPDが供給される。
【0037】
したがって、1つの印字周期Tについて見ると、第1列Laの駆動回路220および第2列Lbの駆動回路220のうち、一方にインクの噴射または微振動駆動を指示する制御データDCが供給され、他方に待機状態を指示する制御データDCが供給されるので、噴射信号INJ2aと噴射信号INJ2bとのいずれか一方のみに噴射パルスPDまたは微振動パルスPSが設けられる。
【0038】
以上の構成によれば、第1実施形態と同様の効果が実現される。更に、各圧電振動子422を駆動する時期が第1列Laと第2列Lbとで分散されるから、ノズル群28Gの各ノズル56に対応する全部の圧電振動子422に対して同じ時点で噴射パルスPDを供給する構成と比較して、記録ヘッド22の駆動負荷が軽減される。また、噴射パルスPDを同時に供給する圧電振動子422の個数が減少する(駆動信号COMの伝送路に付随する容量成分が低減される)から、駆動信号COMの歪みが抑制されるという利点もある。
【0039】
<C:第3実施形態>
以上の実施形態では、駆動信号生成部64が単一の駆動信号COMを生成した。第3実施形態では、駆動信号生成部64が複数の駆動信号を生成する。
【0040】
図9を参照して第3実施形態の駆動信号生成部64の電気的な構成を説明する。第3実施形態の駆動信号生成部64は、基本波形生成部70と波形選択部72とを具備する。基本波形生成部70は基本波形BASを生成して波形選択部72に供給する。波形選択部72は基本波形BASの全部または一部を選択して複数の駆動信号COM(第1駆動信号COM1および第2駆動信号COM2)を生成する。
【0041】
図10に、第3実施形態の基本波形BASおよび駆動信号COMの一例を示す。基本波形BASは一定の周波数Fを有する周期信号である。駆動信号COMの1周期(印字周期T)内には微振動パルスPSおよび噴射パルスPDが配置される。波形選択部72は、基本波形BASの全区間を選択して第1駆動信号COM1を生成し、非光輝性インクに対応する駆動回路220に供給する。また、波形選択部72は、基本波形BASを1印字周期Tおきに選択して第2駆動信号COM2を生成し、光輝性インクに対応する駆動回路220に供給する。第1駆動信号COM1の1周期の時間長は基本波形BASの1周期(印字周期T)の時間長と等しく、第1駆動信号COM1の周波数は基本波形BASの周波数Fと等しい。また、第2駆動信号COM2の1周期の時間長は基本波形BASの1周期(印字周期T)の時間長の2倍(2T)であり、第2駆動信号COM2の周波数は基本波形BASの周波数Fの二分の一((1/2)F)である。
【0042】
以上の構成においては、第1実施形態と同様の効果が実現される。また、光輝性インクが噴射されるノズル列Lごとに噴射信号を相異ならせる第2実施形態の構成において、以上の構成を採用することも好適である。すなわち、図11に示すように、非光輝性インクに対応する駆動回路220に供給される第1駆動信号COM1、第1列Laの駆動回路220に供給される第2駆動信号COM2、および第2列Lbの駆動回路220に供給される第3駆動信号COM3を波形選択部72が生成してもよい。第2駆動信号COM2および第3駆動信号COM3は、基本波形BAS中の相異なる区間(印字周期T)が選択された信号であって、1周期の時間長は印字周期Tの2個分(2T)であり、周波数は周波数Fの二分の一((1/2)F)である。この構成においては第2実施形態と同様の効果が実現される。
【0043】
<D:変形例>
以上の実施形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0044】
(1)変形例1
第3実施形態では、駆動信号生成部64が、共通の基本信号BASから複数の駆動信号(第1駆動信号COM1および第2駆動信号COM2)を生成した。しかし、複数の駆動信号生成部64が、別個に複数の駆動信号を生成してもよい。例えば、第1駆動信号生成部64Aが周波数Fの第1駆動信号COM1を生成し、第2駆動信号生成部64Bが周波数Fを下回る周波数の第2駆動信号COM2を生成してもよい。
【0045】
(2)変形例2
駆動信号COM(基本波形BAS)の各パルスの波高や波形は任意である。例えば、図5の噴射パルスPDは低位側に電位が変化する要素(加圧要素)を1つ有するが、図12に示すように、電位を維持する要素で接続された2つの加圧要素を有する噴射パルスPDも採用され得る。また、圧電振動子422の変位特性(加圧/減圧と電位の高低との関係)に応じて、図5の駆動信号COMの波形を基準電位VREFに対して反転した駆動信号COMを採用することも可能である。
【0046】
(3)変形例3
ノズル群28G以外の各ノズル群28が複数のノズル列Lを有してもよい。また、ノズル群28Gが3つ以上のノズル列Lを有してもよい。すなわち、ノズル群28内のノズル56は任意の位置に配置され得る。
【0047】
(4)変形例4
圧力室50内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)の構成は以上の例示に限定されない。例えば、静電アクチュエーター等の振動体を利用することも可能である。また、本発明の圧力発生素子は、圧力室50に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、圧力室50の加熱で気泡を発生させて圧力室50内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、本発明の圧力発生素子は、圧力室50内の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方法(ピエゾ方式/サーマル方式)や構成の如何は不問である。
【0048】
(5)変形例5
以上の実施形態においては、非光輝性インクを噴射させる噴射信号INJ1の周波数と光輝性インクを噴射させる噴射信号INJ2の周波数とを異ならせたが、噴射信号の周波数を相異ならせる対象となる液体の種類は任意である。すなわち、特性が相異なる複数の液体を噴射させる液体噴射装置において、本発明の構成が採用され得る。
【0049】
(6)変形例6
以上の実施形態の印刷装置100は、プロッターやファクシミリ装置,コピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも本発明の液体噴射装置の用途は画像の印刷に限定されない。例えば、各色材の溶液を噴射する液体噴射装置は液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、液体状の導電材料を噴射する液体噴射装置は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置や電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)等の表示装置の電極を形成する電極製造装置として利用される。また、生体有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、生物化学素子(バイオチップ、マイクロアレイ)を製造するチップ製造装置として利用される。
【0050】
また、以上の実施形態では、記録ヘッド22を搭載したキャリッジ12が主走査方向に移動するシリアル型の印刷装置100を例示したが、記録紙の幅方向の全域にわたって複数のノズルが配列するように主走査方向に長尺状に構成されたライン型の記録ヘッドを利用した印刷装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
100……印刷装置、12……キャリッジ、14……移動機構、16……用紙搬送機構、18……キャップ、22……記録ヘッド、24……インクカートリッジ、26……吐出面、28……、ノズル群、422……圧電振動子、50……圧力室、56……ノズル、60……制御部、62……記憶部、64……駆動信号生成部、70……基本波形生成部、72……波形選択部、BAS……基本波形、COM……駆動信号、DC……制御データ、F……周波数、INJ……噴射信号、L……ノズル列、PD……噴射パルス、PS……微振動パルス、T……印字周期、U(U1、U2)……噴射周期、VREF……基準電位。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体が充填される第1圧力室と、前記第1圧力室に連通する第1ノズルと、前記第1圧力室内の圧力を変動させて前記第1圧力室内の前記第1液体を前記第1ノズルから噴射させる第1圧力発生素子と、
第2液体が充填される第2圧力室と、前記第2圧力室に連通する第2ノズルと、前記第2圧力室内の圧力を変動させて前記第2圧力室内の前記第2液体を前記第2ノズルから噴射させる第2圧力発生素子と、を備える記録ヘッドと、
前記第1圧力発生素子に、第1周波数で噴射パルスを供給して前記第1ノズルから前記第1液体を噴射させ、
前記第2圧力発生素子に、前記第1周波数を下回る第2周波数で前記噴射パルスを供給して前記第2ノズルから前記第2液体を噴射させる制御部と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記第2液体が噴射されるノズルの個数が、前記第1ノズルの個数を上回る
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記噴射パルスを各駆動周期内に含む駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、
前記制御部は、前記第1圧力発生素子について前記噴射パルスの供給を前記駆動周期毎に指示し、前記第2圧力発生素子について前記噴射パルスの供給を前記駆動周期の所定個おきに指示する
請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記第2液体が充填される第3圧力室と、前記第3圧力室に連通する第3ノズルと、前記第3圧力室内の圧力を変動させて前記第3圧力室内の前記第2液体を前記第3ノズルから噴射させる第3圧力発生素子を更に備え、
前記制御部は、前記第2圧力発生素子には、複数の前記駆動周期のうちの第1駆動周期にて前記噴射パルスを供給し、前記第3圧力発生素子には、複数の前記駆動周期のうちの前記第1駆動周期とは異なる第2駆動周期にて前記噴射パルスを供給する
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第2液体は、光輝性インクである
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記光輝性インクは、光輝性顔料を含有し、前記第1液体よりも粘度が低い
請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記光輝性顔料は、平板状粒子である
請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
第1液体が充填される第1圧力室と、前記第1圧力室に連通する第1ノズルと、前記第1圧力室内の圧力を変動させて前記第1圧力室内の前記第1液体を前記第1ノズルから噴射させる第1圧力発生素子と、
第2液体が充填される第2圧力室と、前記第2圧力室に連通する第2ノズルと、前記第2圧力室内の圧力を変動させて前記第2圧力室内の前記第2液体を前記第2ノズルから噴射させる第2圧力発生素子と、を備える記録ヘッドを備える液体噴射装置において、
前記第1圧力発生素子に、第1周波数で噴射パルスを供給して前記第1ノズルから前記第1液体を噴射させ、
前記第2圧力発生素子に、前記第1周波数を下回る第2周波数で前記噴射パルスを供給して前記第2ノズルから前記第2液体を噴射させる
液体噴射装置の駆動方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−176574(P2012−176574A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41499(P2011−41499)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】