説明

液体噴射装置

【課題】ライン方式の記録ヘッドにおけるキャッピングを確実に行うことができる、液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ターゲット12の搬送経路の途中位置に配置され、ノズル形成面29aに形成されたノズル30から液体を噴射可能な液体噴射ヘッド29と、ターゲット12を搬送経路上のノズル形成面29aと対向する位置を通過するように第1駆動源の駆動力に基づき搬送するターゲット搬送手段13と、ノズル形成面29aにおけるノズル形成領域を密閉した状態でキャップするキャップ体14を搬送経路Z1上のノズル形成面29aと対向する位置に進退可能に第2駆動源の駆動力に基づき搬送するキャップ体搬送手段15と、を備えた液滴吐出装置11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体をターゲットに対して噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が知られている。このプリンターは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に供給されるインク(液体)を記録ヘッドのノズル形成面に形成されたノズルから記録用紙(ターゲット)に向けて噴射することにより印刷を行っている。
【0003】
このようなプリンターとしては、印刷時に記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って往復移動しながらインクを噴射するシリアル方式のものと、記録ヘッドが記録用紙の搬送平面に沿って移動することなく記録用紙の搬送経路の途中に記録用紙の搬送方向と直交する方向に用紙幅全体に亘るように配置されたライン方式のものとがある。例えば、ライン方式の記録ヘッドを備えたプリンターとしては特許文献1のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記録ヘッドは、インクの非吐出時においてノズル形成面をキャップし、ノズルの乾燥或いはゴミの付着を防止することが重要である。しかしながら、上記特許文献1に示されるようなラインヘッド方式の場合、通常、記録ヘッドが記録用紙の搬送経路から外れた位置に移動しないため、ノズル形成面をキャップするキャッピング機構を設けるのが難しかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ライン方式の記録ヘッドにおけるキャッピングを確実に行うことができる、液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、ターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、前記ターゲットを該ターゲットが前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置を通過するように第1駆動源の駆動力に基づき搬送するターゲット搬送手段と、前記ノズル形成面におけるノズル形成領域を密閉した状態でキャップするキャップ体を前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置に進退可能に第2駆動源の駆動力に基づき搬送するキャップ体搬送手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体噴射装置によれば、ノズル形成面の下方にキャップ体が進退可能に搬送されるので、ライン方式の液体噴射ヘッドにおいても確実にキャップすることができる。よって、ノズルの乾燥或いはゴミの付着を防止することができ、良好な液体噴射特性を備えた信頼性の高いものとなる。
【0009】
また、上記液滴吐出装置においては、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面側には、前記ノズル形成領域を囲む第1の部材が設けられ、前記キャップ体の前記ノズル形成面に対向する面には、前記第1の部材と磁力により吸着可能な第2の部材が設けられるのが好ましい。
この構成によれば、磁力によりノズル形成面とキャップ体とを簡便且つ確実に密着させることができる。
【0010】
また、上記液滴吐出装置においては、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面側には、真空吸着により前記キャップ体を保持可能な真空吸着手段が設けられるのが好ましい。
この構成によれば、真空吸着手段によりキャップ体をノズル形成面に確実に密着させることができる。
【0011】
また、上記液滴吐出装置においては、前記キャップ体の搬送経路の途中に該キャップ体をクリーニングするクリーニング手段を備えるのが好ましい。
この構成によれば、キャップ体をクリーニングできるので、キャップ体を繰り返し利用することが可能な信頼性の高い液体噴射装置を提供できる。
【0012】
また、上記液滴吐出装置においては、前記クリーニング手段は、前記キャップ体における前記ノズル形成面と対向する側の面を摺動するワイプ部材と、該ワイプ部材により前記キャップ体から掻き取った前記液体を吸引する吸引機構と、を有するのが好ましい。
この構成によれば、キャップ体を摺動するワイプ部材によって掻き取った液体が吸引機構によって吸引されるので、キャップ体に付着した液体を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターの模式図である。
【図2】用紙搬送機構の模式斜視図である。
【図3】プリンターの一部平面模式図である。
【図4】図3における4−4線矢視断面図である。
【図5】図3における5−5線矢視断面図である。
【図6】図1における6−6線矢視断面図である。
【図7】チェーンの周回経路の上流側の曲線経路部分を示す模式断面図である。
【図8】図1における8−8線矢視断面図である。
【図9】クリーニング機構の構成を示す模式図である。
【図10】制御装置のブロック図である。
【図11】キャップシートの平面模式図、及び断面模式図である。
【図12】真空吸着手段を備えた記録ヘッドの説明図である。
【図13】図12における動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」をいう場合は、図1〜図8、図11において矢印で示した方向を基準とするものとする。
【0015】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下「プリンター」という。)11は、用紙(ターゲット)12を搬送するために駆動される用紙搬送機構(ターゲット搬送手段)13と、キャップシート(キャップ体)14を搬送するために駆動されるシート搬送機構(キャップ体搬送手段)15を備えている。
【0016】
用紙搬送機構13には、用紙搬送モーター(第1駆動源)16(図10参照)の駆動力に基づき左右方向に沿う軸線を中心に回転駆動する駆動プーリ17と、駆動プーリ17の後方において駆動プーリ17と同一高さ位置で駆動プーリ17の軸線と平行な軸線を中心に回転自在な従動プーリ18が設けられている。また、駆動プーリ17と従動プーリ18の各下方位置には、両プーリ17,18の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に且つ軸中心が下方に向けて移動するように付勢された2つのテンションプーリ19,20が設けられている。そして、これらの各プーリ17〜20は、各々の軸部17a,18a,19a,20aの両端部が左右方向に平行な態様で設けられた1対の支持板21,22(図2、図3参照)によって支持されている。
【0017】
図1に示すように、用紙搬送機構13における各プーリ17〜20には、無端状の搬送ベルト(ターゲット搬送部材)23が各テンションプーリ19,20によりテンションを加えられた状態で略四角環状の周回経路を形成するように掛装されている。そして、この搬送ベルト23は、駆動プーリ17の回転駆動に伴い図1において反時計回り方向に周回移動することにより、用紙12を図1に白抜き矢印で搬送方向Xとして示す前方に向けて搬送するように構成されている。すなわち、用紙搬送機構13は、従動プーリ18よりも後方に位置する図示しない給紙トレーから搬送ベルト23上に給紙された用紙12を、搬送ベルト23の周回移動に伴い前方に向けて搬送することにより、駆動プーリ17よりも前方に位置する図示しない排紙トレーに排出する。
【0018】
また、図2に示すように、用紙搬送機構13における左右両支持板21,22のうち、左側に位置する第1支持板(支持体)21は、プリンター11の本体フレーム(図示略)に対してシート搬送機構15の機構部分を避けた位置で着脱自在に組み付けられている。その一方、右側に位置する第2支持板22はプリンター11の本体フレーム(図示略)に対して取り外し不能に固定されている。そして、各プーリ17〜20の各軸部17a〜20aは、それらの各左端が第1支持板21に設けられた軸受け部(図示略)に対して各プーリ17〜20の回転自在状態を維持しつつ挿抜不能に支持される一方、それらの各右端が第2支持板22に設けられた孔又は穴からなる軸受け部(着脱部)22aに対して挿抜可能な状態で支持されている。
【0019】
すなわち、用紙搬送機構13は、第1支持板21をユーザが把持して左右方向へ移動させることにより、その第1支持板21と各プーリ17〜20及び搬送ベルト23が一体的取り扱い可能に構成されてなる機構ユニット13Aが、プリンター11に対して着脱自在とされている。そして、その着脱時には、把持部としても機能する第1支持板21を把持しつつ、機構ユニット13A全体を着脱部となる軸受け部22aの軸方向に沿って移動させることにより、着脱作業が実行可能とされている。
【0020】
図1及び図3に示すように、駆動プーリ17と従動プーリ18の間となる位置であって且つ左右両支持板21,22の間となる位置には、プラテン24が平面状に形成された上面を駆動プーリ17及び従動プーリ18における各周面の最上部と同じ高さ位置となるようにして配設されている。そして、搬送ベルト23が周回運動した場合には、搬送ベルト23において用紙12を載置して搬送方向Xに搬送するベルト部分の裏面が、プラテン24の上面に対して摺接するようになっている。
【0021】
図3に示すように、搬送ベルト23は、その左右幅が用紙12の左右幅よりも幅広に形成されており、駆動プーリ17と従動プーリ18の間でプラテン24上を摺動するベルト部分により用紙12の搬送経路が構成されると共に、そのベルト部分の表面23aにより用紙12が搬送方向Xに搬送される際の搬送平面が構成されている。そして、搬送ベルト23には、その表面23aとプラテン24の上面に摺接する裏面との間を貫通するように多数の円形状をなす通気孔25が形成されている。なお、これらの各通気孔25は、前後方向及び左右方向に等間隔をおいて格子状配置となるように規則的に形成されている。
【0022】
一方、プラテン24には、プラテン24を上下方向(プラテン24の厚み方向)に貫通する多数の吸引孔26が形成されている。各吸引孔26は搬送ベルト23の各通気孔25と左右方向においては各々対応した位置であって且つ前後方向においては各通気孔25よりも広い(例えば約3倍程度)間隔をおいた位置に形成されている。なお、各吸引孔26における上面側の開口は前後方向に沿う長溝状に形成されている。
【0023】
図1に示すように、プラテン24の下側には、各吸引孔26内を吸引するための箱体状をなす吸引部27が、プラテン24の下面側における各吸引孔26の開口を覆うように設けられ、吸引部27内には複数(本実施形態では3つ)のファン28が設けられている。そして、ファン28の駆動に伴い各吸引孔26内が吸引されて負圧になることで、搬送ベルト23上に載置された状態にある用紙12には、各吸引孔26の長溝状の開口を介して連通した通気孔25を通じて下向きの吸引力が付与されるようになっている。
【0024】
また、図1及び図3に示すように、プラテン24の前側部分と対応する位置であって且つ搬送ベルト23の上側となる位置(搬送経路の途中位置)には、液体としてのインクを噴射可能な記録ヘッド(液体噴射ヘッド)29が、その下面となるノズル形成面29aを搬送ベルト23の表面23aに対向させた状態で配設されている。この記録ヘッド29は、その長手方向が用紙12の搬送方向Xと直交(交差)する左右方向に沿って延びるように配設されると共に、その長手方向の寸法が用紙12の幅方向(左右方向)の寸法よりも長く形成されている。
【0025】
そして、この記録ヘッド29のノズル形成面29aには、多数のノズル30が、用紙12の幅方向(左右方向)全体に亘って複数のノズル列(図1には4列図示)を搬送方向X(前後方向)に所定間隔をおいて配列するように形成されている。本実施形態において、複数のノズル列における全てのノズルを含む領域をノズル形成領域29Aと称す。また、本実施形態においては、ノズル形成領域29Aを囲むようにしてノズル形成面29aに電磁石(第1の部材)80が設けられている(図3、4参照)。なお、電磁石80は制御装置41に電気的に接続されている。すなわち、この記録ヘッド29は、ノズル形成面29aと対向する位置を搬送方向Xに向けて通過する用紙12に対して、用紙12の幅方向全体に亘るようにインクを噴射することにより印刷を施す、いわゆるフルラインタイプの記録ヘッド(ラインヘッド)により構成されている。なお、記録ヘッド29のノズル形成面29aと搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)との間は、ノズル形成面29aの各ノズル30から用紙12の表面に向けてインクが噴射された際にインク滴が用紙12の意図された位置に確実に着弾するように、僅かな(例えば1mm程度の)隙間に設定されている。
【0026】
次に、シート搬送機構15には、図1に示すように、プラテン24を挟んで記録ヘッド29とは反対側となる下方であって且つ用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路よりも下方となる位置に、シート搬送モーター(第2駆動源)31(図10参照)の駆動力に基づき用紙搬送機構13の各プーリ17〜20と平行な軸線を中心に回転駆動する駆動スプロケット32が設けられている。
【0027】
また、用紙搬送機構13における駆動プーリ17の前方となる位置及び従動プーリ18の後方となる位置には前後一対の従動スプロケット33,34が駆動スプロケット32の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に設けられている。さらに、駆動スプロケット32と後側の従動スプロケット34との間には、中継スプロケット35と、軸中心が上方に向けて移動するように付勢されたテンションスプロケット36とが、駆動スプロケット32の軸線と平行な軸線を中心に回転自在に設けられている。
【0028】
各スプロケット32〜36は、用紙搬送機構13の左右各外側(具体的には、各プーリ17〜20を軸支する左右両支持板21,22の左右各外側)となる位置に、それぞれが同軸配置で左右一対となるように設けられている。そして、図1に示すように、左右一対の各スプロケット32〜36には、無端状のチェーン(移動部材、鎖部材)37がテンションスプロケット36によりテンションを加えられた状態で、用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路の外回りで周回状をなすように掛装されている。
【0029】
すなわち、シート搬送機構15は、用紙搬送機構13における用紙搬送モーター16を駆動源として周回移動する搬送ベルト23の周回経路の外側に、用紙搬送モーター16とは別のシート搬送モーター31(図10参照)を駆動源としてチェーン37が周回状の移動経路に沿って移動するように設けられている。そして、このチェーン37は駆動スプロケット32の回転駆動に伴い図1において反時計回り方向に周回移動するようになっている。なお、図4に示すように、チェーン37は、前後両従動スプロケット33,34間では、記録ヘッド29のノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる上方であって且つ用紙搬送機構13における左右両支持板21,22の上端面よりも上方となる空間域を用紙12の搬送経路に沿って移動するようになっている。
【0030】
図3及び図4に示すように、この2本のチェーン37間には、複数(本実施形態では、前後一対)の剛性を有する帯状の板金部材(支持部材)38,39が、チェーン37の周回移動方向において、記録ヘッド29におけるノズル形成面29aの前後方向幅よりも大きな間隔をおいて架設されている。具体的には、チェーン37を連鎖状に形成する複数の剛性を有した連結片のうち、チェーン37の周回移動方向において前記間隔に相当する距離だけ離間した2つの連結片に対して、各板金部材38,39の両端部(連結部)38a,39aが連結されている。
【0031】
図4に示すように、各板金部材38,39は、その長手方向における中間部(支持部)38b,39bが両端部38a,39aから若干内側となる位置(具体的には左右各支持板21,22の内側位置)で両端部38a,39aよりもチェーン37の周回状をなす移動経路(周回経路)の内周側において直線状をなすようにクランク状に屈曲されている。すなわち、各板金部材38,39は、チェーン37が周回移動する際、チェーン37の連結片に連結された両端部38a,39aよりも中間部38b,39bの方が周回経路の内周側を移動するように構成されている。
【0032】
その結果、チェーン37の周回移動に伴って各板金部材38,39が従動スプロケット33,34の外周と対応する円弧状の曲線経路部分を通過する際には、内輪差に基づき、内周側を移動する中間部38b,39bの方が外周側を移動する両端部38a,39aよりも周回移動方向への移動速度が遅くなる構成となっている。換言すると、各板金部材38,39は、その周回移動途中で、前後両従動スプロケット33,34間などの直線経路部分を通過するときには、中間部38b,39b及び両端部38a,39aが等速度で移動する。その一方、この直線経路部分の上流側及び下流側において該直線経路部分に連続形成された円弧状の曲線経路部分を通過するときには、中間部38b,39bと両端部38a,39aとの間で速度差が発生するようになっている。
【0033】
また、図3及び図4に示すように、各板金部材38,39は、チェーン37の周回移動に伴い用紙12の搬送経路に沿って搬送方向Xに移動する場合には、両端部38a,39aよりも内側の中間部38b,39bが前記搬送方向Xと直交(交差)する方向であって且つ搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)に沿う方向に直線状に延びた状態となる。そして、この搬送方向Xへの移動時には、チェーン37の連結片に連結された両端部38a,39aがノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる空間域を移動する一方、中間部38b,39bがノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a側となる空間域を移動するように構成されている。なお、その場合、各板金部材38,39の直線状をなす中間部38b,39bは搬送ベルト23の表面23aに対して極僅かな(例えば、1mm以下の)隙間を形成して近接するように形成されている。そして、このような両板金部材38,39の各中間部38b,39bに対して撥水性及び可撓性を有したシート体14Aからなるキャップシート14が支持されている。
【0034】
図5に示すように、キャップシート14は、一枚のシート体14Aからなり、そのシート体14Aが各板金部材38,39に対して前側(この場合、最前)の板金部材38の中間部38bから後側(この場合、最後)の板金部材39の中間部39bまでを包み込む無端状をなすように巻き掛けられている。そして、キャップシート14は、その巻き掛け状態において周回状の移動経路に沿って移動したときに内周側(図5において下側)となる側でシート体14Aの両端同士が重合されると共に、その重合部分14aが接着されることにより、両板金部材38,39の中間部38b,39bにより無端状の展張状態となるように支持されている。すなわち、キャップシート14は、チェーン37の周回移動に伴い両板金部材38,39により展張状態に支持されつつ記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置態様においてノズル形成面29aのノズル形成領域29Aを密閉した状態でキャップするようになっている。
【0035】
具体的にキャップシート14のノズル形成面29a側には、液滴吐出ヘッド29のノズル形成面29aに設けられた電磁石80に平面視で重なる大きさの金属層81(第2の部材)が形成されている。これにより、キャップシート14は磁力発生時に磁力によって金属層81は電磁石80に吸着されるようになっている。これにより、キャップシート14はノズル30を保湿した状態に保持することができ、ノズル30の乾燥やノズル30内へのゴミや異物の付着を防止することが可能となっている。
【0036】
また、このようにキャップシート14が記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を展張状態となって通過する際には、板金部材38,39の中間部38b,39bとノズル形成面29aとの間にキャップシート14のシート体14Aが介在することになる。そのため、もし仮に、板金部材38,39の中間部38b,39bが移動時に上下方向に振動するようなことがあっても、記録ヘッド29のノズル形成面29aに対して板金部材38,39の中間部38b,39bが直接接触することはない。また、記録ヘッド29から噴射された液体が板金部材38,39の中間部38b,39bに付着することもない。
【0037】
また、キャップシート14は、搬送方向Xにおいて前側となる第1板金部材38の中間部38bに対して無端状をなすシート体14Aの移動方向で前端部分の内面側が接着される一方、搬送方向Xにおいて後側となる第2板金部材39の中間部39bに対してはシート体14Aの内面側が接着されない支持状態とされている。すなわち、キャップシート14は、その移動方向の前端部分が最前の第1板金部材38に対して周回移動方向において位置決め支持状態に固着される一方、その移動方向の前端部分よりも後端側の部分が後側の第2板金部材39に対して周回移動方向において摺動可能な状態に支持されている。
【0038】
すなわち、図1,図3及び図4に示すように、記録ヘッド29よりも用紙12の搬送方向Xの後方側であって且つ右側の第2支持板22の上方となる位置には、光センサー(検出手段)42が配設されている。この光センサー42は、第2支持板22の上端面に向けて光を投光すると共に、その光が第2支持板22の上端面から反射された場合には、その反射光を受光する投受光センサーにより構成されている。そして、その光センサー42の下方を左右両チェーン37間に架設された板金部材38,39の両端部38a,39aが通過して前記光が遮光された場合に、キャップシート14を支持した板金部材38,39が光センサー42の配設位置を通過したことを示す検出信号を制御装置41に向けて出力するようになっている。これにより、制御装置41はキャップシート41が記録ヘッド29の近傍に接近したことを把握することが可能となっている。
【0039】
また、図5に示すように、キャップシート14において両板金部材38,39の間に展張された場合に内周側(図5において下側)となる面は、例えば多数の繊維がブラシ状に起毛されたブラシ面(清掃機能面)43となっている。そして、図1に示すように、キャップシート14は、チェーン37の周回経路上において用紙搬送機構13における後側のテンションプーリ20と対応する待機位置Pで停止した場合には、そのテンションプーリ20に巻き掛けられた搬送ベルト23の表面23aに対してブラシ面43が払拭可能に摺接するようになっている。すなわち、キャップシート14のブラシ面43は、周回移動する搬送ベルト23の表面23aに対して速度差を持って摺接することにより搬送ベルト23の表面23aを払拭可能な清掃機能を発揮する。
【0040】
図1及び図6〜図8に示すように、シート搬送機構15における前側及び後側の各従動スプロケット33,34と対応する位置であって且つ左右両チェーン37の間となる位置には、前後一対の案内板(案内手段)44,45が設けられている。各案内板44,45は、金属製の板材からなり、それぞれの断面形状が対応する従動スプロケット33,34に噛み合う各チェーン37の円弧状をなす曲線経路部分に沿った形状となるように曲げ形成されている。すなわち、各案内板44,45は、その内周面(係合部)44a,45aが各チェーン37の円弧状をなす曲線経路部分の経路方向に沿った凹曲面状をなすように形成されている。なお、図示はしないが、各案内板44,45はプリンター11の本体フレームに対してブラケットを介して支持されている。
【0041】
図6及び図7に示すように、後側の従動スプロケット34と対応する上流側案内板44は、一枚の剛性を有する略矩形状の板材からなり、その板材の上端縁からは用紙12の左右幅よりも幅広であって且つ板金部材38,39の中間部38b,39bの左右長さよりも短い開口幅の切り欠き部(ターゲット通過部)46が形成されている。この切り欠き部46は、給紙トレー側から搬送ベルト23上に給紙される用紙12の通過を許容するためのものであり、切り欠き部46の左右両側には左右一対の突片部47が形成されている。
【0042】
そして、キャップシート14を支持した板金部材38,39が、その周回移動途中で従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39の中間部38b,39bがシート体14Aを介して上流側案内板44の内周面44aに係合することにより移動方向をガイドされるようになっている。つまり、円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39及びその板金部材38,39に展張状態で支持されたキャップシート14が遠心力の作用により外方に向けて変形しようとするが、上流側案内板44の内周面44aにより板金部材38,39及びキャップシート14の外方への変形が抑制されるようになっている。
【0043】
一方、図4及び図8に示すように、前側の従動スプロケット33と対応する下流側案内板45は、上流側案内板44の突片部47と同じ左右幅の二枚の剛性を有する略矩形状の板片により構成されている。この二枚の下流側案内板45は、左右方向で対向する互いの内側縁間の距離が上流側案内板44における切り欠き部46の開口幅と同じとなるように左右方向に離間した状態に配置されている。そのため、搬送ベルト23上から排紙トレー側へ排出される用紙12は左右の両下流側案内板45間の空間領域45bを通過可能であり、この点で下流側案内板45は両者の内側縁間の空間領域45bがターゲット通過部として機能する。また、キャップシート14を支持した板金部材38,39が、その周回移動途中で従動スプロケット33の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するときには、板金部材38,39の中間部38b,39bがシート体14Aを介して両案内板45の内周面45aに係合することにより移動方向をガイドされるようになっている。
【0044】
また、図1に示すように、シート搬送機構15におけるチェーン37の周回経路の外側であって且つ用紙搬送機構13における前側のテンションプーリ19の前側斜め下方となる位置(ノズル形成面29aと対向する位置よりも下流側のクリーニング位置)には、キャップシート14をクリーニングするためのクリーニング機構(クリーニング手段)48が設けられている。
【0045】
図9(a)〜(c)に示すように、クリーニング機構48は、先端が湾曲するように形成された樹脂製又はゴム製のブレード(ワイプ部材)62と、不図示の吸引ポンプ等に接続される吸引機構51と、を備えている。なお、ブレード62は複数の材料を積層することで構成されていてもよいし、単一の材料から構成されていてもよい。クリーニング機構48は、ブレード62をキャップシート14の外周側の面であるキャップ面14bに当接させることで、キャップ面14bに付着したインクを払拭し、ブレード62によって掻き取ったインクを吸引機構51により吸引するようになっている。なお、この場合においては、チェーン37の周回経路の内側に、クリーニング位置(ブレード62とキャップシート14とが接触する位置)を通過するキャップシート14をブレード62との間で挟持可能な支持台61を挟持部材として配置している。これにより、ブレード62におけるインクの掻き取り性を向上させている。
【0046】
具体的に本実施形態に係るクリーニング機構48は、複数(本実施形態では4つ)のクリーニングユニット63から構成されている。各クリーニングユニット63は、図9(a)に示すように、上記ブレード62と吸引機構51とをそれぞれ備えており、その幅が少なくともキャップシート14におけるキャップ面14bの幅よりも大きく設定されている。これにより、クリーニング機構48は、キャップ面14bからインクを確実に除去できるようになっている。
【0047】
クリーニング機構48は、ブレード62をキャップシート14の外周側の面であるキャップ面14bに当接させることで、キャップ面14bに付着したインクを払拭し、ブレード62によって掻き取ったインクを吸引機構51により吸引するようになっている。
【0048】
上記ブレード62は、先端部分がテーパ形状となっており、先端部分が他部より厚みが小さくなっている。具体的に、ブレード62の先端部分は、厚みが50μm以下となっている。
【0049】
ブレード62は、キャップ面14bを摺動する側の下面62aに撥液処理が施されている。ここで、撥液処理としてはインクに対して撥液性を示す処理であればいずれの処理を用いてもよく、例えばプラズマ処理等の表面処理の他、フッ素樹脂膜等を成膜する方法を例示できる。これにより、ブレード62がキャップ面14b上を摺動する際、キャップ面14b及びブレード62間の隙間にインクが入り込むのを防止することができ、ブレード62によりキャップ面14bを確実に払拭できる。
【0050】
また、ブレード62は、上記下面62aと反対の上面62bの全面に撥液処理が施されている。この構成により、キャップ面14bから掻き取ったインクはブレード表面に付与された撥液処理によってブレード62に付着することなく、吸引機構51に吸引されることで確実に回収できる。なお、上記面62bは少なくとも先端部に撥液処理が施されていれば、吸引機構51の吸引力を強めることでブレードにインクを付着させることなく回収可能であるが、上述のように全面を撥液処理するのが望ましい。また、ブレード62の両面(上面62b、下面62a)全体に撥液性が付与される場合には、ブレード自体を撥水性材料から構成するようにしてもよい。
【0051】
なお、この場合においては、チェーン37の周回経路の内側に、クリーニング位置(ブレード62とキャップシート14とが接触する位置)を通過するキャップシート14をブレード62との間で挟持可能な支持台61を挟持部材として配置している。これにより、ブレード62におけるインクの掻き取り性を向上させている。
【0052】
上記ブレード62は吸引機構51に取付けられている。また、吸引機構51は、ブレード62に対向するように庇状に延出した庇部64と、不図示の吸引ポンプへと導かれる吸引口51aを備えている。庇部64は、先端が湾曲するように形成されており、先端部がキャップ面14bに対向した状態となっている。また、庇部64は、ブレード62がキャップ面14bへの接触時、キャップ面14bの上方から視た場合、ブレード62の先端部分を覆う位置まで延出している。
【0053】
さらに、庇部64は、キャップ面14bから吸引機構51の吸引口51aまでのインク吸引経路の上流側(キャップ面14b側)を狭めるように吸引機構51から延出している。このように庇部64によってインク吸引経路の上流側が狭められるので、吸引時の気流速度が速まり、クリーニング効率を向上させることが可能となっている。なお、吸引口51aの内面は撥液性が付与されており、ブレード62が掻き取ったインクが付着するのを防止している。
【0054】
図9(b)に示すように、クリーニング機構48は、ブレード62の摺動方向(同図中、矢印で示される方向)の直交方向に沿って、複数のブレード62が千鳥状に配置されたものとなっている。このように複数のブレード62が千鳥状に配置されることにより、各ブレード62の長さを短く設定することができ、摺動時の抵抗を抑えるとともに各ブレード62をキャップ面14bに良好に密着させることができ、高い払拭性を得ることができるようにしている。また、クリーニング機構48は、ブレード62を千鳥状に配置することで、キャップ面14bをブレード62によって二回ずつ払拭するようにしている。よって、キャップ面14bにおけるインク払拭性を優れたものにしている。
【0055】
図9(c)に示すように、各ブレード62とキャップ面14bとの接触角は、15度〜60度に設定するのが好ましく、本実施形態では45度に設定した。ブレード62は、周回移動するキャップシート14を上記支持台61との間に挟持した状態でキャップ面14bからインクを掻き取る。このとき、上記吸引機構51を動作させる。すると、ブレード62によって掻き取ったインクIはブレード62の上面62bが撥液性となっていることから、液滴となって吸引口51a内に良好に吸い込まれる。
このとき、上記支持台61及びクリーニングユニット63に不図示の振動・揺動機構を設けることで、ブレード62がキャップ面14b上を摺動する際、ブレード62及びキャップシート14の少なくとも一方を振動させるようになっている。このようにブレード62及びキャップシート14の少なくともいずれかを振動させることで、ブレード62におけるインク掻き取り性を向上させることができる。
【0056】
また、上記各クリーニングユニット63は、キャップシート14に対して回動用モーター49(図10参照)によって回動可能に構成されており、非クリーニング状態においてはブレード62をキャップ面14bに接触させない位置に保持可能となっている。なお、各クリーニングユニット63はキャップシート14に対し、それぞれ独立に回動する構成、或いは、一体的に回動する構成のいずれであってもよい。
【0057】
次に、プリンター11における制御構成について図10を参照しながら説明する。
図10に示すように、プリンター11の稼動状態を統括制御する制御装置(制御手段)41は、入力側インターフェース(図示略)と、出力側インターフェース(図示略)と、CPU55、ROM56、RAM57などを備えたデジタルコンピュータを主体として構成されている。入力側インターフェースには、光センサー42及びプリンター11の本体フレームの表面に設けられたタッチ入力方式の操作パネル(入力手段)58が電気的に接続されている。また、出力側インターフェースには、記録ヘッド29からインクを噴射するときに駆動される圧電素子59、用紙搬送モーター16、ファン28、シート搬送モーター31、回動用モーター49、及び電磁石80がそれぞれ電気的に接続されている。
【0058】
また、制御装置41において、ROM56には、各機構(圧電素子59、用紙搬送モーター16等)を制御するための制御プログラムなどが記憶されている。また、RAM57には、プリンター11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報(光センサー42の検出信号など)が記憶されるようになっている。そして、制御装置41は入力側の光センサー42及び操作パネル58から入力される信号に基づいて出力側の各機構(圧電素子59、用紙搬送モーター16等)を各別に制御するようになっている。
【0059】
また、図1に示すように、シート搬送機構15においてキャップシート14を搬送するために周回移動するチェーン37の周回経路上には、その経路に沿ってキャップシート14を移動させる目的を異にする複数の経路部Z1〜Z3が設定されている。
【0060】
まず、キャップシート14がテンションプーリ20との間に搬送ベルト23を挟んだ状態となる待機位置Pよりもチェーン37の周回移動方向の下流側であって且つ前後両従動スプロケット33,34の間となる経路部は、ノズル形成面29aと対向する位置を含む第1経路部Z1とされている。そして、第1経路部Z1では、ノズル形成面29aの金属層81と記録ヘッド29の電磁石80とを対応させ、電磁石80を駆動させることでキャップシート14がノズル形成領域29Aを密閉した状態でノズル形成面29aに吸着されている(図3、4参照)。
【0061】
次に、チェーン37の周回経路上において、前側の従動スプロケット33と下方の駆動スプロケット32との間には、キャップシート14をクリーニング機構48によってクリーニングするための第2経路部Z2が第1経路部Z1との間に所定間隔を有して設定されている。この第2経路部Z2は、キャップシート14がブレード62との当接を開始した時点から当接を終了する時点までの間にキャップシート14が移動する領域を少なくとも含む長さに設定されている。
【0062】
そして、チェーン37の周回経路上において、第2経路部Z2と待機位置Pとの間は、第2経路部Z2においてクリーニングされたキャップシート14を再利用のために待機位置Pに向けて戻し搬送する第3経路部Z3とされている。すなわち、キャップシート14は、待機位置Pからチェーン37の周回移動に伴い第1経路部Z1、第2経路部Z2、及び第3経路部Z3を順次に経由して待機位置Pに戻り、その待機位置Pで次回のキャッピング時まで停止状態にて待機するようになっている。
【0063】
次に、上記のように構成された本実施形態のプリンター11の作用について、印刷後のキャッピング動作、及びキャップシート14のクリーニング動作を中心に説明する。プリンター11において用紙12に印刷を施す印刷時には、図示しない給紙トレーから搬送ベルト23上に用紙12が所定間隔をおいて順次に給紙される。なお、その際において、用紙12は、図6に示すように、上流側案内板44の切り欠き部(ターゲット通過部)46を通過して搬送ベルト23上に給紙される。すると同時に、制御装置41が、用紙搬送モーター16とファン28を駆動させ、搬送ベルト23はその表面23a(搬送平面)上に用紙12を負圧に基づき吸着保持した状態で搬送方向Xの下流側に搬送する。
【0064】
そして、その用紙12が記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を通過する時点になると、制御装置41が記録ヘッド29内の圧電素子59を駆動する結果、記録ヘッド29のノズル30から印刷のためのインクが用紙12の表面に向けて噴射される。その後、記録ヘッド29からのインク噴射により印刷が施された用紙12は、搬送ベルト23の周回移動に伴い搬送方向Xの下流側に更に搬送され、図8に示すように、左右両下流側案内板45の内側縁間の空間領域(ターゲット通過部)45bを通過して排紙トレーに排出される。
【0065】
また、シート搬送機構15は、キャップシート14が待機位置Pに位置した状態でシート搬送モーター31が制御装置41により駆動停止状態に制御されている。そのため、図1に示すように、周回移動する搬送ベルト23の表面23aに紙粉や塵埃等が付着していると、それらが待機位置Pに停止しているキャップシート14のブラシ面43により払拭される。すなわち、用紙搬送機構13の搬送ベルト23は、以上のようにキャップシート14のブラシ面43により表面23aが払拭された後、そのように清掃された表面23a上に新たに後続用紙12を載置して搬送方向Xに搬送する。
【0066】
一方、プリンター11において、キャッピング動作時には、制御装置41によりシート搬送機構15が以下のように駆動される。すなわち、制御装置41は、操作パネル58からユーザの入力操作に基づくマニュアルキャッピングの指令信号があった場合や、電源OFF時のキャッピング動作を実行するために設定した条件を満たしたと判断した場合、シート搬送モーター31を駆動させてチェーン37の周回移動を開始させる。
【0067】
シート搬送モーター31が駆動されるとチェーン37が周回移動を開始し、この周回移動に伴い、板金部材38,39に支持されたキャップシート14が、図7に示すように、待機位置Pから後側の従動スプロケット34の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動して第1経路部Z1に搬送される。そして、そのようにキャップシート14が従動スプロケット34の外周に沿って移動する際には、前後の各板金部材38,39の各中間部38b,39bが断面円弧形状をなす上流側案内板44の内周面44aにキャップシート14を介して摺接することにより、その移動方向がガイドされる。
【0068】
ここで、各板金部材38,39は、従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過するとき、内輪差の影響により、キャップシート14を支持した内周側の中間部38b,39bの移動速度がチェーン37に連結された外周側の両端部38a,39aの移動速度よりも遅くなる。すなわち、前後両板金部材38,39の中間部38b,39b間には、一方が曲線経路部分を通過中であって他方が直線経路部分を通過中である場合には速度差が発生する。
【0069】
そのため、前側の板金部材38が先に曲線経路部分内に進入して後側の板金部材39が未だ曲線経路部分内に進入する前で直線経路部分を通過中である状態では、後側の板金部材39の中間部39bが前側の板金部材38の中間部38bとの間隔を詰めるように周回移動方向の前方に接近移動しようとする。そして、その際には、後側の板金部材39の中間部39bがキャップシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向の前方への接近移動が許容される。そのため、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたキャップシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0070】
一方、前側の板金部材38が先に曲線経路部分を抜けて直線経路部分を通過中であり後側の板金部材39が未だ曲線経路部分内を通過中である状態では、後側の板金部材39の中間部39bが前側の板金部材38の中間部38bとの間隔を拡げるように周回移動方向の後方に離間移動しようとする。そして、その際には、やはり後側の板金部材39の中間部39bがキャップシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向の後方への離間移動が許容される。そのため、この場合も、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたキャップシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0071】
また、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたキャップシート14は、円弧状の移動軌跡を描くように移動するとき、遠心力で外方に変形しようとする。しかし、その場合には、そのキャップシート14において外方へ変形しようとするシート部分が上流側案内板44の内周面44aの中央領域(切り欠き部46の下側となる領域)に摺接する。そのため、各板金部材38,39の中間部38b,39bに展張状態で支持されたキャップシート14は、従動スプロケット34の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動する際において、外方に大きく膨らむように変形することが抑制され、安定した展張状態で第1経路部Z1に搬送される。したがって、第1経路部Z1においてキャップシート14は搬送ベルト23の表面23aに対して適切な面接触状態となって吸着保持される。
【0072】
また、チェーン37及び各板金部材38,39においてチェーン37の連結片に連結された両端部38a,39aは、用紙搬送機構13における左右両支持板21,22の上方位置を搬送方向Xに沿って移動する。そのため、搬送ベルト23の左右両側には搬送ベルト23の表面23aと同じ高さ位置にチェーン37等の移動空間を確保しなくてよいため、プリンター11における設計自由度が制約を受ける虞も少ない。
【0073】
その後、前側の板金部材38の両端部38aのうち右側の端部38aが光センサー42の配設位置の下方まで移動すると、光センサー42の投受光する光が遮られるため、その光センサー42から検出信号が制御装置41に出力される。すると、制御装置41は、その時点のチェーン37の移動速度と光センサー42の配設位置(基準位置)から記録ヘッド29の下方位置(ノズル形成面29aと対向する位置)までの距離に基づき、キャップシート14の金属層81がノズル形成面29aに設けられた電磁石80と対向する位置態様となるまでに要する時間を演算する。
【0074】
そして、制御装置41は、その演算により求めた時間の経過タイミングで、電磁石80を駆動する。すると、キャップシート14の金属層81と電磁石80とが対向した際に、キャップシート14がノズル形成面29aに磁力によって吸着される。そして、制御装置41は、シート搬送モーター31の駆動を停止する。これにより、キャップシート14によりノズル形成面29aがキャッピングされた状態となる。
【0075】
そして、制御装置41は、キャッピングを終了し、次に印刷を行う際、シート搬送モーター31を駆動させる。キャッピング後のキャップシート14は、前側の従動スプロケット33の外周に沿って円弧状の移動軌跡を描くように移動して第2経路部Z2に向けて搬送される。そして、そのようにキャップシート14が従動スプロケット33の外周に沿って移動する際には、後側の上流側案内板44によりガイドされた場合と同様に、前後の各板金部材38,39の各中間部38b,39bが断面円弧形状をなす下流側案内板45の内周面45aにキャップシート14を介して摺接することにより、その移動方向がガイドされる。
【0076】
そして、その際にも、前後両板金部材38,39の各中間部38b,39b同士は、後側の従動スプロケット34の外周に沿った円弧状の曲線経路部分を通過した場合と同様に、外周側の各両端部38a,39aとの内輪差の影響で、互いに速度差を発生して接近及び離間しようとする。しかし、この場合も、後側の板金部材39の中間部39bがキャップシート14のシート体14Aに対して非接着で摺動可能に支持された状態にあるので、そのような周回移動方向における接近移動及び離間移動が許容される。そのため、この場合も、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたキャップシート14が歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりすることが回避される。
【0077】
また、両板金部材38,39の中間部38b,39b間に展張状態で支持されたキャップシート14は、円弧状の移動軌跡を描くように移動するとき、キャッピング時に付着したインクが左右両下流側案内板45の内側縁間の空間領域45bを移動する。そのため、キャップシート14に付着しているインクにより下流側案内板45が汚れることもない。
【0078】
また、キャップシート14が前側の従動スプロケット33の外周に沿った円弧状の曲線経路部分に進入すると、制御装置41により回動用モーター49が回転駆動される。すると、クリーニング機構48では、ブレード62(クリーニングユニット63)をキャップ面14bに接触させない非クリーニング姿勢態様となるように回転する。そして、その状態において制御装置41により回動用モーター49の回転駆動が停止され、クリーニング機構48は、非クリーニング姿勢態様を維持しつつキャップシート14の移動方向の前端部分が第2経路部Z2に進入するのを待機する。
【0079】
その後、チェーン37の周回移動に伴いキャップシート14の前端部分が第2経路部Z2に進入すると、制御装置41が回動用モーター49の回転駆動を再開させる。すると、クリーニング機構48は、クリーニング状態へと切り替わり、ブレード62をキャップシート14の外周側となる面(ノズル形成領域29Aに対向する面)に接触させつつ、吸引機構51を動作させる。
【0080】
なお、キャップシート14が第2経路部Z2を通過する間(つまり、ブレード62がキャップ面14bを通過するまでの間)、チェーン37の周回移動速度は第1経路部Z1での速度よりも遅いゆっくりとした速度(第2速度)になるように、制御装置41によりシート搬送モーター31の駆動状態が制御される。そのため、キャッピング時にキャップシート14に付着したインクはキャップシート14がゆっくりとした速度で移動するため、クリーニング機構48によって確実に吸収・払拭される。
【0081】
第2経路部Z2においてインクが払拭されたキャップシート14は、チェーン37の周回移動に伴い、次回のキャッピング時に備えるべく、第3経路部Z3を経由して待機位置Pへと搬送される。
【0082】
なお、キャップシート14が第3経路部Z3を待機位置Pに向けて移動する際には、チェーン37の周回移動速度が第1経路部Z1での速度よりも速い速度(第3速度)になるように、制御装置41によりシート搬送モーター31の駆動状態が制御される。そのため、第2経路部Z2でインクを払拭されてクリーニングされたキャップシート14は、迅速に待機位置Pへと搬送される。そして、再びキャッピングを行う場合には、上記と同様の手順でシート搬送機構15が再び駆動される。
【0083】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)キャッピング時には、板金部材38,39の中間部38b,39bに展張状態に支持されたキャップシート14がノズル形成面29aと対向した位置に保持される。よって、キャップシート14によりノズル形成領域29Aを密閉した状態でキャップすることができ、ノズル30の乾燥或いはゴミの付着を防止することができ、良好なインク噴射特性を備えた信頼性の高いものとなる。また、ノズル形成面29aに設けられた電磁石80と、キャップシート14に設けられた金属層81とを磁力によって吸着させることで簡便且つ確実にキャップシート14をノズル形成面29aに密着させることができる。
【0084】
(2)また、板金部材38,39が連結されたチェーン37はノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23aとは反対側となる空間域を移動するため、このプリンター11ではチェーン37の移動空間を搬送ベルト23の表面23aと略同じ高さ位置に確保する必要がなくなる。したがって、キャップシート14を記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置に搬出入するためのチェーン37を備える場合にも、プリンター11の設計自由度が制約される虞を低減することができる。
【0085】
(3)シート搬送機構15においてキャップシート14を支持する板金部材38,39及び板金部材38,39を連結した状態で移動するチェーン37が何れも剛性を有している。また、板金部材38,39はチェーン37に対する連結部となる端部38a,39aとキャップシート14を支持する中間部38b,39bとの間が屈曲した形状を有している。そのため、プリンター11の設計の自由度を確保しつつキャップシート14を記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向した位置に安定した姿勢で搬送することができる。
【0086】
(4)キャップシート14を構成するシート体14Aは、チェーン37に連結された板金部材38,39の中間部38b,39bに移動方向の前端部分が固着されているため、その移動方向の前端部分よりも後方側の部分は、チェーン37と一体的に移動する板金部材38,39の移動に追随して移動方向の後方側に展張した状態となって移動する。したがって、キャップシート14は、そのような展張状態のまま記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置態様となるため、キャップシート14をノズル形成面29aに密着させることができる。
【0087】
(5)シート搬送機構15における前後の両板金部材38,39は、チェーン37の移動に伴い円弧状の曲線経路部分を通過するとき、内輪差の影響により、前側の板金部材38の中間部38bと後側の板金部材39の中間部39bとの間に速度差が発生し、両中間部38b,39b同士が接近又は離間するように相対移動する。こうした場合、キャップシート14を構成するシート体14Aが各板金部材38,39の中間部38b,39bに対して各々固着されていると、両中間部38b,39bの相対移動時にシート体14Aが歪に撓んだ状態となったり無用な引っ張り力を受けたりしてしまう虞がある。しかし、この点、上記実施形態では、後側の板金部材39の中間部39bはシート体14Aを摺動可能に支持しているため、そのような両中間部38b,39bの相対移動時にシート体14Aが歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりする虞がなく、キャップシート14を良好な姿勢で搬送することができる。
【0088】
(6)キャップシート14は、各板金部材38,39の中間部38b,39bに対して一枚のシート体14Aを全ての中間部38b,39bが包み込まれる無端状をなすように巻き掛けるだけで、簡単に展張状態に支持することができる。そして、そのように展張状態に支持されたキャップシート14は、記録ヘッド29のノズル形成面29aと対向する位置を通過するときには板金部材38,39とノズル形成面29aとの間にシート体14Aが介在することになるため、板金部材38,39がノズル形成面29aに直に接触する虞もない。したがって、記録ヘッド29のノズル形成面29aを板金部材38,39により傷つけたり、ノズル30から噴射された廃インクが板金部材38,39に付着したりすることを抑制できる。
【0089】
(7)キャップシート14を支持する板金部材38,39が曲線経路部分に沿って移動する場合には、案内板44,45の各内周面44a,45aが板金部材38,39に係合することにより、その板金部材38,39を曲線経路部分の経路方向に沿って移動するように案内するので、板金部材38,39が遠心力により曲線経路部分の外方に変位することがない。そのため、この板金部材38,39に支持された状態で板金部材38,39と共に曲線経路部分に沿って移動するキャップシート14も遠心力により曲線経路部分の外方に大きく変形することが回避される。したがって、キャップシート14が曲線経路部分を含む移動経路に沿って搬送される場合にも安定した姿勢状態で搬送することができる。
【0090】
(8)搬送方向Xで上流側の案内板44には用紙12の通過を許容する切り欠き部46が形成されると共に、下流側の一対の案内板45は用紙12の通過を許容する空間領域45bを隔てて離間配置されている。そのため、用紙12が給紙トレーから排紙トレーまで搬送経路に沿って搬送方向Xに搬送される際には、案内板44,45により用紙12の通過が阻害されることはなく、用紙12の円滑な搬送を担保することができる。
【0091】
(9)特に、下流側の案内板45においては、キャップシート14においてインクが付着したキャップ面14bが左右の両下流側案内板45の間の空間領域45bと対応する位置を板金部材38,39の中間部38b,39bと共に曲線経路部分に沿って移動することになる。したがって、キャップシート14のキャップ面14bに付着したインクにより下流側案内板45が汚れる虞を回避できる。
【0092】
(10)また、上流側の案内板44においては、給紙トレー側から切り欠き部46を通過させて用紙12を搬送ベルト23上に搬送することができる。また、ノズル形成面29aと対向する位置を通過する前段階のキャップシート14が上流側の曲線経路部分を移動するときに、その曲線経路部分の外方に変位することを抑制できる。そして、その際には、キャップシート14における外方へ変位しようとするシート部分が上流側案内板44における切り欠き部46以外の部位に摺接するので、より確実に変位抑制を図ることができる。しかも、その時点では、キャップシート14はキャッピングの前段階であるので、上流側案内板44をインクにより汚すこともない。
【0093】
(11)そして、各案内板44,45は、キャップシート14が曲線経路部分に沿って移動するとき、そのキャップシート14を支持しつつ移動する板金部材38,39を係合部となる円弧状の内周面44a,45aに対して滑らかに摺動させることができるので、円滑に移動方向を案内することができる。
【0094】
(12)キャップシート14がクリーニング位置を通過するときに、回動用モーター49によりクリーニングユニット63(ブレード62)をクリーニング姿勢態様に切り替え変位させれば、ブレード62によりキャップシート14に付着しているインクを払拭することが可能となる。一方、例えばインクの付着量が少ない場合などクリーニング位置を通過するキャップシート14をクリーニングする必要がないときには、回動用モーター49によりクリーニングユニット63(ブレード62)を非クリーニング姿勢態様に切り替え変位させれば、移動するキャップシート14にブレード62が接触することもないので、シート搬送機構15によるキャップシート14の搬送状態を良好に維持可能となる。
【0095】
(13)キャップシート14のクリーニング時、ブレード62がキャップ面14bから掻き取ったインクを吸引機構51が吸引することができる。したがって、記録ヘッド29から廃液として噴射されたインクを受容可能なキャップシート14を簡単な構成でクリーニングすることにより容易に繰り返し使用することができる。よって、キャップシート14を繰り返し利用することが可能な信頼性の高いプリンター11を提供できる。
【0096】
(14)複数のブレード62が千鳥状に配置されることにより、各ブレード62の長さを短く設定することができ、摺動時の抵抗を抑えるとともに各ブレード62をキャップ面14bに良好に密着させることで高い払拭性を得ることができる。
【0097】
(15)ブレード62におけるキャップ面14bを摺動する側の下面62aに撥液処理が施されているので、ブレード62がキャップ面14b上を摺動する際、キャップ面14b及びブレード62間の隙間にインクが入り込むのを防止することができ、ブレード62によりキャップ面14bを確実に払拭できる。
【0098】
(16)さらに、ブレード62における上記下面62aと反対の上面62bの全面に撥液処理が施されているので、キャップ面14bから掻き取ったインクがブレード62に付着することなく、吸引機構51によって確実に回収できる。
【0099】
(17)ブレード62がキャップ面14b上を摺動する際、ブレード62及びキャップシート14の少なくとも一方が振動するため、ブレード62におけるインク掻き取り性を向上できる。
【0100】
(18)庇部64がキャップ面14bから吸引機構51の吸引口51aまでのインク吸引経路の上流側を狭めるように延出するため、吸引時の気流速度が速まり、クリーニング効率を向上できる。さらに吸引口51aの内面に撥液性を付与することでインクの付着を防止できる。
【0101】
(19)制御装置41によるシート搬送モーター31の駆動状態の制御を通じてキャップシート14の搬送途中での搬送速度を適宜調整することにより、簡単な構成でキャップシート14の搬送効率の向上を図ることができる。
【0102】
(20)制御装置41によるシート搬送モーター31の駆動状態の制御を通じてキャップシート14を待機位置Pから第1経路部Z1、第2経路部Z2、及び第3経路部Z3の順に経由させて循環搬送することができ、キャップシート14の再利用を図ることができる。
【0103】
(21)また、クリーニング機構48が設けられた第2経路部Z2では、キャップシート14が第1経路部Z1での搬送速度よりも遅い搬送速度で搬送されるので、その時点での搬送目的であるキャップシート14のクリーニング目的を効果的に且つ確実に達成することができる。
【0104】
(22)さらに、クリーニングがなされたキャップシート14を待機位置Pに戻し搬送する第3経路部Z3では、キャップシート14が他の経路部Z1,Z2における場合よりも速い搬送速度で搬送されるので、キャップシート14を迅速に待機位置Pに戻すことができる。したがって、例えば1枚などという少ないキャップシート14を使用した高頻度のキャッピングにも対応できると共に、キャップシート14が搬送される経路が長大化するプリンター11の大型化にも適切に対応することができる。
【0105】
(23)キャッピングには、シート搬送機構15により搬送方向Xの下流側に向けて搬送されるキャップシート14がノズル形成面29aと対向する位置に接近すると、その接近事実が光センサー42により検出されて検出信号が出力される。そして、その検出信号に基づき制御装置41が電磁石80の駆動を制御するので、キャップシート14は、電極層80と電磁石81とを確実に吸着させることができる。
【0106】
(24)用紙搬送機構13のメンテナンス時には、その機構ユニット13A全体をプリンター11から取り外してメンテナンスすることができるので、搬送ベルト23の取り替えなどの各種メンテナンス作業をシート搬送機構15の取り外し作業を伴うことなく簡便に行うことができる。
【0107】
(25)用紙搬送機構13における搬送ベルト23の周回経路はシート搬送機構15におけるチェーン37の周回経路の内側に設けられるので、プリンター11の小型化に貢献できる。
【0108】
(26)プリンター11において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aを着脱可能とする着脱部は、プリンター11に固定配置された第2支持板22の内側面に穿孔された孔や穴からなる軸受け部22aにより構成され、その軸受け部22aに対し用紙搬送機構13における各プーリ17〜20の各軸部17a〜20aが挿抜可能とされている。したがって、軸受け部22aに対するプーリ17〜20の軸部17a〜20aの挿抜方向への移動だけで、簡単に用紙搬送機構13の機構ユニット13Aの着脱作業を実行できる。
【0109】
(27)また、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンター11に対して着脱する際には、機構ユニット13Aにおける支持体としての第1支持板21が把持部として機能するため、機構ユニット13Aを安定的に把持して着脱作業を遂行できる。
【0110】
(28)そして、こうした用紙搬送機構13の機構ユニット13Aの全体を着脱可能とする構成は、用紙搬送機構13における搬送ベルト23を巻き掛ける各プーリ17〜20の軸部17a〜20aと、シート搬送機構15におけるチェーン37を巻き掛ける各スプロケット32〜36の軸部が一致していない構成とすることにより実現できる。
【0111】
(29)キャップシート14は、待機位置Pに停止した状態において、用紙搬送機構13のテンションプーリ20との間に搬送ベルト23を挟持しつつ、搬送ベルト23の表面23aに速度差をもって接触している。そのため、用紙12の搬送のために周回移動する搬送ベルト23の表面23aをキャップシート14により払拭することが可能となり、紙粉や塵埃などが付着している可能性のある搬送ベルト23の表面23aを清掃することができる。
【0112】
(30)キャップシート14により搬送ベルト23の表面23aを清掃する場合はキャップシート14が待機位置Pで停止する一方、搬送ベルト23が周回移動を継続しているプリンター11の稼働状態で行われるため、スループットの低下を招くことなく、搬送ベルト23の清掃を実行することができる。
【0113】
(31)また、この場合において、搬送ベルト23の表面23aに接触するキャップシート14の裏面側は例えば多数の繊維がブラシ状に起毛されたブラシ面43となっているので、効率良く搬送ベルト23の表面23aを清掃することができる。
【0114】
(32)クリーニング機構48は、クリーニング位置でキャップシート14をクリーニングする場合、支持台61とブレード62との間にキャップシート14を挟持した状態で、ブレード62がキャップシート14のキャップ面14bに接触する。したがって、可撓性を有するキャップシート14が撓んでしまうこともなく、クリーニング機能を良好に担保することができる。
【0115】
(33)さらに、シート搬送機構15において、キャップシート14を周回経路に沿って搬送するべく移動する移動部材はチェーン37により構成されている。そのため、例えば移動部材がベルトにより構成される場合に比して、チェーン37は延びたりすることがないので、キャップシート14の搬送精度が向上すると共に、移動部材の移動経路が長大化するプリンター11の大型化にも対応することができる。
【0116】
なお、上記実施形態は以下のような変形例により実施してもよい。
図11に示すように、前後一対の板金部材38,39の上面にキャップシート14を構成するシート体14Aをビス66により止着するようにしてもよい。なお、図11においては電極層の図示を省略している。
【0117】
この場合、搬送方向Xで前側の板金部材38の中間部38bに対してはシート体14Aの前端部分が相対移動不能に固定される一方、後側の板金部材39の中間部39bに対してはシート体14Aの後端部分が相対移動可能(すなわち、摺動可能)な状態に支持される。具体的には、シート体14Aにおいてビス66の止着位置と対応する位置にはキャップシート14の搬送方向(移動方向)Xに沿って長孔67が形成され、その長孔67内にビス66の軸(凸部)66aが摺動可能に挿通される。
【0118】
このように構成した場合も、簡単にキャップシート14を構成するシート体14Aを前後の板金部材38,39により展張状態に支持することが可能となる。そして、シート体14A及び該シート体14Aを支持する各板金部材38,39が円弧状をなす曲線経路部分を通過する際には、最後の板金部材39の中間部39bに止着されたビス66の軸(凸部)66aがシート体14Aの長孔67内で移動方向に摺動することにより、シート体14Aが歪に撓んだり無用な引っ張り力を受けたりする虞を回避できる。
【0119】
上記実施形態において、板金部材38,39は3つ以上の複数でキャップシート14を支持してもよい。この場合も、最前の板金部材の中間部にはキャップシート14の前端部分を固着すると共に最前以外の他の板金部材の中間部にはキャップシート14の後端側の部分を摺動可能に支持するのが望ましい。
【0120】
上記実施形態において、板金部材は1つのみで構成してもよい。この場合、キャップシート14を構成するシート体14Aは、その1つの板金部材の中間部に前端部分が固着され、後端側の部分は自由端状態となっていてもよい。このように構成しても、その1つの板金部材がチェーン37と共に移動するのに伴い、キャップシート14は、移動方向の後方側に展開した状態で搬送される。
【0121】
また、記録ヘッド29のノズル形成面29aとキャップシート14を吸着させる手段として、真空吸着手段85を用いてもよい。具体的には、図12に示すように、真空吸着手段85は、ノズル形成領域29Aを囲むように記録ヘッド29の外面を覆うように設けられており、かつノズル形成面29aよりも突出した突出部86を含むものである。突出部86には、吸引孔86aが形成されており、不図示の吸引ポンプによりキャップシート14の表面を吸引可能となっている。
【0122】
このような真空吸着手段85を備えた記録ヘッド29においてキャッピングを行う場合には、図13(a)に示すようにキャップシート14を記録ヘッド29の下方に移動させる。続いて、制御装置41は光センサー42からの信号に基づいて真空吸着手段85を駆動する。これにより、吸引孔86aを介してキャップシート14の表面が真空吸着された状態となる。よって、キャップシート14は、ノズル形成面29aを密閉した状態で記録ヘッド29をキャッピングすることができる。
【0123】
上記実施形態において、シート搬送機構15の移動部材は、鎖部材であるチェーン37以外にワイヤなどからなる輪状体、さらには無端状のベルト体であってもよい。
上記実施形態において、チェーン37及びその連結片に連結された板金部材38,39の端部38a,39aの移動空間は、ノズル形成面29aから見て搬送ベルト23の表面23a(搬送平面)の反対側となる位置であれば、左右両支持板21,22の間となる空間域であってもよい。この場合、板金部材38,39はクランク状に屈曲した形状ではなく、略U字状になる。
【0124】
図11(a)(b)に示す変形例において、キャップシート14を構成するシート体14Aに形成される長孔67は、その長手方向においてシート搬送方向の後方側となる部分が前方側よりも幅広になった所謂ひょうたん形状の長孔であってもよい。このように構成した場合には、キャップシート14(シート体14A)の着脱交換が簡単になる。
【0125】
上記実施形態において、案内板44,45の断面形状は、従動スプロケット33,34の周方向に沿っているならば、楕円状や多角形状に折れ曲げた形状であってもよい。要するに、キャップシート14及びこれを支持する板金部材38,39が曲線経路部分を通過するときに外方へ大きく変位することを抑制可能な形状ならば、断面円弧状に限定されない。
【0126】
上記実施形態において、上流側の案内板44と下流側の案内板45は、互いに同じ
形態のものを使用してもよい。
上記実施形態において、案内板44,45は少なくとも下流側の案内板45があれば、上流側の案内板44は必ずしもなくてよい。
【0127】
上記実施形態において、案内板は例えば駆動スプロケット32の周方向に沿う曲線経路部分など従動スプロケット33,34以外の他のスプロケット32,35,36の外周と対応する位置に設けられていてもよい。
【0128】
上記実施形態において、案内板44,45は、その係合部となる内周面44a,45aに対して板金部材38,39の各中間部38b,39bの左右両端部分が直接係合する構成であってもよい。この場合は、シート体14Aの左右幅を狭くすればよい。
【0129】
上記実施形態において、クリーニングユニット63はクリーニング姿勢態様と非クリーニング姿勢態様との切り替え変位を回動用モーター49の回転駆動によらず、手動で切り替えされる構成であってもよく、さらにはカム機構などの切り替え変位機構を別途に設けてもよい。
【0130】
上記実施形態において、シート搬送機構15はチェーン37が周回状の移動経路に沿って移動するのではなく、非無端状の経路に沿って往復移動する構成であってもよい。
【0131】
上記実施形態において、キャップシート14の搬送速度は、第1経路部Z1の速度とそれ以外の他の経路部Z2,Z3の速度の二種類であってもよい。
【0132】
上記実施形態において、キャッピング時に電磁石80を駆動するタイミングは、待機位置Pから移動開始してからの経過時間に基づき制御装置41が演算するようにしてもよい。このように構成すれば光センサー42は不要となる。なお、この場合は、待機位置Pが基準位置となる。
【0133】
上記実施形態において、キャップシート14に対してキャップシート14における前後方向(移動方向)でキャップ面14bと対応する位置に被検出部を設ける一方、記録ヘッド29に対してはノズル30(ノズル列)と対応する位置に検出手段を設け、キャップシート14がノズル形成面29aと対向する位置を通過するときには、検出手段が被検出部を検出したタイミングで電磁石80を駆動するようにしてもよい。
【0134】
上記実施形態において、制御装置41は、キャップシートが搬送される場合に待機位置P等の基準位置を通過(又は移動開始)してからノズル形成面29aと対向する位置に至るまでに要する所要時間を予め記憶しておき、その記憶している時間の経過時点で電磁石80を駆動するようにしてもよい。
【0135】
上記実施形態において、クリーニング機構48はプリンター11に対して着脱自在な構成としてもよい。
上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンター11に対して着脱する際に把持する把持部は第1支持板21以外に把持用のアームを設けるなどしてもよい。
【0136】
上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンター11に対して着脱する際、第1支持板21、各プーリ17〜20、及び搬送ベルト23を個別に着脱する構成であってもよい。
【0137】
上記実施形態において、ターゲット搬送部材は、回転運動することにより用紙12を搬送方向Xに搬送可能であって、機構ユニット13Aにおいて支持体として機能する第1支持板21と一体的に取り扱い可能に構成されるならば、搬送ローラであってもよい。
【0138】
上記実施形態において、用紙搬送機構13の機構ユニット13Aをプリンター11に対して着脱可能とする着脱部は、軸受け部22a以外に支持枠などの他の着脱自在とする構成であってもよい。
【0139】
上記実施形態において、待機位置Pで搬送ベルト23の表面23aに接触するキャップシート14の裏面側は、ブラシ面43以外に、粘着面や吸液性を有する面などにより清掃機能面としての機能を発揮するものでもよい。また、ブラシ面43は、全面ではなく一部がブラシ状となっているものでもよい。
【0140】
上記実施形態において、キャップシート14は、その裏面のブラシ面43を搬送ベルト23と速度差をもった状態で接触させる構成であれば、必ずしも停止した状態で接触する構成に限定されない。したがって、速度差が生じるならば、キャップシート14の方が搬送ベルト23の周回速度よりも速い速度で周回移動することにより、搬送ベルト23を追い越すようにして搬送ベルト23の表面23aを払拭する構成でもよい。
【0141】
上記実施形態において、クリーニング機構48は、ローラ、ブレード、吸液シートなどの複数種類のクリーニング部材を備え、それらを適宜に選択使用するように配置替えする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0142】
11…プリンター(液体噴射装置)、12…用紙(ターゲット)、13…用紙搬送機構(ターゲット搬送手段)、14…キャップシート(キャップ体)、14b…ミスト付着面(ミスト回収面)、15…シート搬送機構(キャップ体搬送手段)、16…用紙搬送モーター(第1駆動源)、23…搬送ベルト(ターゲット搬送部材)、29…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、29a…ノズル形成面、30…ノズル、31…シート搬送モーター(第2駆動源)、48…クリーニング機構(クリーニング手段)、51…吸引機構、51a…吸引口、60…開口部、62…ブレード(クリーニング部材)、80…電磁石(第1の部材)、81…電極層(第2の部材)、86…真空吸着手段、P…待機位置、X…搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの搬送経路の途中位置に配置され、ノズル形成面に形成されたノズルから液体を噴射可能な液体噴射ヘッドと、
前記ターゲットを該ターゲットが前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置を通過するように第1駆動源の駆動力に基づき搬送するターゲット搬送手段と、
前記ノズル形成面におけるノズル形成領域を密閉した状態でキャップするキャップ体を前記搬送経路上の前記ノズル形成面と対向する位置に進退可能に第2駆動源の駆動力に基づき搬送するキャップ体搬送手段と、を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面側には、前記ノズル形成領域を囲む第1の部材が設けられ、前記キャップ体の前記ノズル形成面に対向する面には、前記第1の部材と磁力により吸着可能な第2の部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル形成面側には、真空吸着により前記キャップ体を保持可能な真空吸着手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ体の搬送経路の途中に該キャップ体をクリーニングするクリーニング手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記クリーニング手段は、前記キャップ体における前記ノズル形成面と対向する側の面を摺動するワイプ部材と、該ワイプ部材により前記キャップ体から掻き取った前記液体を吸引する吸引機構と、を有することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−247363(P2010−247363A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96715(P2009−96715)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】