液体噴射装置
【課題】液体噴射ヘッドの噴射面が汚れるのを防止すること。
【解決手段】所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材とを備える。
【解決手段】所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に記録を行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘッドからインクを噴射する際に、ノズルからのインクの吐出や記録媒体への着弾など、インクの噴射動作に伴う風圧によってインクミストが発生する場合がある。インクミストが噴射ヘッドのインク噴射面に付着すると、インク噴射面が汚れてしまうことになる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体噴射ヘッドの噴射面が汚れるのを防止することができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、噴射面と搬送媒体との間に保護部材が設けられているため、例えば液体噴射ヘッドの噴射時に搬送媒体上で発生するミスト状の液体が噴射面に付着するのを防ぐことができる。また、噴射された液体を通過させる開口部が設けられているため、液体噴射ヘッドによる噴射動作を妨げなくて済む。加えて、例えば噴射面と保護部材との間にミストが存在する場合であっても、その一部を保護部材に付着させることができるため、噴射面へのミストの付着を極力抑えることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置において、前記複数のノズルは、一方向に並んで配置され、前記開口部は、複数の前記ノズルに対応する領域にスリット状に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズルが一方向に並んで配置され、開口部が複数のノズル列に対応する領域にスリット状に形成されているため、開口部の面積を極力小さくすることができる。これにより、開口部から噴射面側へミストが侵入するのを抑えることができる。
【0009】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記液体噴射ヘッドのうち少なくとも前記所定方向の端部に当接され前記噴射面と前記保護部材との間を塞ぐ閉塞部を有することを特徴とする。
本発明によれば、閉塞部により、噴射面と保護部材との間を塞ぐことができるため、発生したミストが噴射面と保護部材との間から侵入するのを防ぐことができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記閉塞部は、前記液体噴射ヘッドと前記保護部材との間の位置決め部を兼ねていることを特徴とする。
本発明によれば、閉塞部が端部に当接することで液体噴射ヘッドと保護部材との間の位置決めが行われるため、液体噴射ヘッドの位置及び保護部材の位置を簡単な動作で規定することができる。
【0011】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されているため、保護部材に付着したミストなどの液体を吸収することができる。これにより、液体が流れ出すのを防ぐことができる。
【0012】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記開口部から外れた領域に設けられ前記液体を吸収可能な吸収部材を有することを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が液体を吸収可能な吸収部材を有するため、保護部材に付着したミストなどの液体を吸収することができる。これにより、液体が流れ出すのを防ぐことができる。また、吸収部材が開口部から外れた領域に設けられているため、液体噴射ヘッドの噴射動作の妨げになることは無い。
【0013】
上記の液体噴射装置は、吸収された液体を回収する回収部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、吸収された液体を回収する回収部が設けられるため、保護部材あるいは吸収部材を清浄な状態に維持することができる。これにより、保護部材あるいは吸収部材による吸収作用を持続させることができる。
【0014】
上記の液体噴射装置は、前記保護部材は、前記開口部から前記回収部へ向けて前記液体を案内する傾斜部を有することを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が開口部から回収部に向けて液体を案内する傾斜部を有することとしたので、保護部材に付着した液体が回収部に到達しやすくなる。これにより、液体の回収効率を高めることができる。
【0015】
上記の液体噴射装置において、前記回収部は、前記保護部材のうち前記搬送媒体が搬送される方向の端部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、保護部材のうち搬送媒体が搬送される方向の端部に回収部が設けられているため、液体の流路を含めた回収系の設計が容易となる。
【0016】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記開口部の周縁部から前記液体噴射ヘッド側及び前記搬送媒体側のうち少なくとも一方に向けて突出する突出部を有することを特徴とする。
本発明によれば、突出部が液体噴射ヘッド側に突出する場合には、例えば保護部材に対して清掃などのメンテナンスを行いやすい構成となる。また、突出部が搬送媒体側に突出する場合には、噴射面側へのミストの侵入を効率よく防ぐことができる。
【0017】
上記の液体噴射装置は、前記支持部材と前記保護部材とを固定する固定部材を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、支持部材と保護部材とを固定する固定部材を更に備えることとしたので、支持部材及び保護部材の位置を安定させることができる。
【0018】
上記の液体噴射装置は、前記固定部材に取り付けられ、前記噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材を更に備え、前記液体噴射ヘッドは、前記支柱部材の延在する方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドが、固定部材に取り付けられ噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材の延在方向に沿って移動可能であるため、保護部材の位置が固定されている場合であっても、液体噴射ヘッドを移動させることで、噴射面と保護部材との位置決めを行うことができる。
【0019】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを前記支柱部材の延在する方向に沿って移動させるヘッド駆動機構を更に備え、前記ヘッド駆動機構は、前記液体噴射ヘッドを移動させることにより前記保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねていることを特徴とする。
本発明によれば、ヘッド駆動機構が、液体噴射ヘッドを移動させることにより保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねていることとしたので、噴射面と保護部材との位置関係が設定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】噴射ヘッド周辺の要部平面図。
【図3】噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図。
【図4】噴射ヘッドの断面構成を示す図。
【図5】保護部材の概略構成を示す(a)断面図、(b)底面図。
【図6】保護部材及び噴射ヘッドの概略構成を示す(a)正面図、(b)平面図。
【図7】印刷装置の構成を示すブロック図。
【図8】印刷装置の動作を示す図。
【図9】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図10】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図11】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図12】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図13】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図14】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面をもとにして、本発明に係る流体噴射装置の実施の形態を説明する。流体噴射装置の各部材を認識可能な大きさとするため、以下の説明に用いる各図面には、縮尺が適宜変更された状態で各部材が示されている。本実施形態では、流体噴射装置としてインクジェット式の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態のインクジェット式プリンター(以下、印刷装置PRTと表記する)の概略構成図である。図2は、噴射ヘッド周辺の要部平面図である。図3は、噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図である。
【0023】
図1においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、記録媒体Mの搬送方向をX方向(図1左右方向)、噴射ヘッド11のノズル形成領域15に垂直な方向をZ方向(図1上下方向)、X方向軸及びZ方向軸によって形成されるXZ平面に垂直な方向をY方向(図1紙面奥行き方向)とする。
【0024】
これらの図に示すように、印刷装置PRTは、記録媒体Mに画像や文字などを記録する装置である。記録媒体Mとしては、例えば紙やプラスチックなどが用いられる。印刷装置PRTは、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、保護部材CL、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0025】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(流体)を噴射する部分である。インク噴射機構IJは、噴射ヘッド(流体噴射ヘッド)11及びインク供給部12を有している。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0026】
噴射ヘッド11は、記録媒体Mに複数色のインク滴を噴射可能なヘッドである。噴射ヘッド11は、例えば図2に示すように、印刷装置PRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの少なくとも一辺を越える長さ(最大記録紙幅W)に亘ってノズル形成領域15を有するライン型の噴射ヘッドである。噴射ヘッド11は、例えばZ方向上に移動可能に設けられている。噴射ヘッド11は、ノズル13及び共通インク室14を有している。
【0027】
共通インク室14は、例えば4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)に対応するインクを保持する(共通インク室14Y、14M、14C、14K)。ノズル形成領域15は、上記各色の共通インク室14に対応して設けられている(ノズル形成領域15Y、15M、15C、15K)。
【0028】
ノズル13は、噴射ヘッド11のノズル形成領域15Y、15M、15C、15K内にそれぞれ複数設けられ、例えば上記4色のインク滴を吐出する開口部である。ノズル13は、例えば図3に示すようにY方向に複数配列されている(ノズル列L)。ノズル列Lは、各色のノズル形成領域15Y、15M、15C、15Kについて、1列又は複数列設けられる。ノズル13の数やノズル列Lの数は、適宜設定される。噴射ヘッド11のうちノズル13が設けられる面が噴射面11Aとなる。噴射面11Aは、噴射ヘッド11の−Z側に設けられる。噴射ヘッド11は、−Z側へインク滴を噴射するようになっている。
【0029】
搬送機構CRは、紙送りローラー35、排出ローラー36、支持部材37などを有している。紙送りローラー35、排出ローラー36は、不図示のモーター機構によって回転駆動されるようになっている。支持部材37は、記録媒体Mの搬送経路MRに配置されており、当該記録媒体Mを支持する支持面37aを有している。
【0030】
支持部材37は噴射ヘッド11の−Z側に配置されている。支持面37aは噴射ヘッド11側、すなわち、+Z側に向けられている。このような構成において、噴射ヘッド11は、支持部材37に支持された状態の記録媒体Mに対してインクを噴射する構成となっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送経路MRに沿って搬送する。
【0031】
メンテナンス機構MNは、噴射ヘッド11のメンテナンスを行う。メンテナンス機構MNは、キャップ部材42、吸引機構45、インク排出タンク46及びワイピング部材Wを有している。キャップ部材42は、噴射ヘッド11の噴射面11Aをキャッピングするトレイ状部材である。キャップ部材42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを排出させる排出動作を行う際、排出されるインクを受ける部分でもある。
【0032】
キャップ部材42は、トレイ内部にインク吸収材42aを有している。キャップ部材42の底部には、開口部42bが設けられている。吸引機構45は、例えばポンプなどの吸引源を有しており、キャップ部材42の開口部42bに接続されている。吸引機構45は、キャップ部材42の内部を吸引すると共に、当該キャップ部材42内部に溜まったインクを吸引する。
【0033】
インク排出タンク46は、キャップ部材42内に溜まったインクを排出する部分である。インク排出タンク46は、例えば印刷装置PRTの−Z側端部に配置されており、着脱可能に設けられている。インク排出タンク46は、例えば吸引機構45の下流側に接続されている。ワイピング部材Wは、噴射面11Aなどを払拭する。ワイピング部材Wは、噴射ヘッド11側にアクセス可能となるように、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。
【0034】
図4は、噴射ヘッド11の構成を示す断面図である。
同図に示すように、噴射ヘッド11は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えている。
【0035】
ヘッド本体18は、合成樹脂からなる箱形の部材である。ヘッド本体18には、駆動ユニット24を収容する収容室23と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成されている。
【0036】
収容室23内に配置された駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、複数の圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数のノズル13のそれぞれに対応して設けられている。
【0037】
内部流路28は、ヘッド本体18を図4上下方向に貫通して形成されている。内部流路28は、インク供給部12から供給されてくるインクを図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット22へ流通させるインクの流路である。
【0038】
流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合一体化された構成になっている。流路形成ユニット22には、ヘッド本体18の内部流路28に接続された共通インク室14と、共通インク室14に接続されたインク供給口30と、インク供給口30に接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、各々のノズル13に対応して設けられている。各々の圧力室31は、共通インク室14と反対側の端部においてノズル13に接続されている。
【0039】
振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムがラミネート加工された構成になっている。振動板19のうち圧力室31に対応する部分には島部32が形成されている。島部32は、例えばエッチングなどにより支持板を環状に除去することで、圧電素子25の下端に接合されている。
【0040】
島部32はダイヤフラム部として機能する。振動板19は、圧力室31上において、島部32の周囲の弾性フィルムの部分が圧電素子25の駆動に応じて弾性変形し、島部32が上下動するようになっている。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室14内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33となっている。
【0041】
流路基板20は、内部流路28の下端とノズル13とを接続する共通インク室14、インク供給口30、及び圧力室31などのインク流通室を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板20の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0042】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル13を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の外面が噴射面11Aである。
【0043】
このように構成された噴射ヘッド11は、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されることで、圧電素子25が伸縮するようになっている。圧電素子25の伸縮は、振動板19の変形(キャビティに接近する方向及び離れる方向への変形)として伝達されるようになっている。振動板19の変形により、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動するようになっている。この圧力の変動によって、ノズル13から、インクが噴射されるようになっている。
【0044】
また、噴射ヘッド11には、図示しない加圧機構が設けられている。圧電素子25の伸縮の他に、当該加圧機構によって圧力を加えることで、ノズル13からインクが噴射されるようになっている。したがって、噴射ヘッド11には、サブタンクなどは設けられていない構成になっている。
【0045】
図1に戻って、保護部材CLは、噴射ヘッド11と支持部材37に支持された状態の記録媒体Mとの間に配置されている。保護部材CLは、噴射ヘッド11からインクが噴射される際に発生するミストが噴射面11Aに付着するのを防いでいる。保護部材CLは、例えばポリオレフィン系親水性多孔質焼結成形体などの材料によって板状に形成されており、支持部材37に対して位置が固定されている。このため、一定量のインクを吸収して保持することができる構成となっている。
【0046】
保護部材CLは、例えば噴射ヘッド11との間で相対的にZ方向に移動させる昇降機構(第二移動機構)AC2に接続されている。昇降機構AC2は、例えばZ方向に延在するガイド部G1及び当該ガイド部G1に沿って具体的には、不図示の固定部材を介して支持部材37に固定されている。
【0047】
図5(a)は、保護部材CLの構成を示す断面図である。図5(b)は、保護部材CLの構成を示す底面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、保護部材CLは、対向部71、閉塞部72及び開口部73を有している。対向部71は、噴射ヘッド11の噴射面11Aに対向する位置に設けられており、噴射面11Aを覆う部分である。対向部71は、例えば平板状に形成されている。
【0048】
閉塞部72は、噴射ヘッド11のうち記録媒体Mの搬送方向(X方向)の端部11Bに当接されている。+Y側及び−Y側の閉塞部72がそれぞれ+Y側及び−Y側の端部11Bに当接されることにより、噴射ヘッド11と保護部材CLとの間で位置決めが成された状態となっている。閉塞部72は、端部11Bに対して着脱可能に形成されている。
【0049】
図5(b)に示すように、対向部71及び閉塞部72は、噴射ヘッド11のY方向の全域にわたって形成されている。したがって、噴射ヘッド11の+X側端部及び−X側端部は、Y方向の全域について保護部材CLの閉塞部72によって塞がれた構成となっている。このため、噴射ヘッド11の+X側端部及び−X側端部においては、ミストが漏れ出しにくい構成となっている。
【0050】
開口部73は、対向部71のうち噴射ヘッド11のノズル列Lに対応する位置に設けられている。開口部73は、ノズル列Lを構成する全ノズル13を露出するように、例えばY方向に長手となるようにスリット状に形成されている。開口部73は、4つのノズル列Lに対応して、それぞれX方向に4つ並んで設けられている。
【0051】
各開口部73は、−Z方向から見たときにノズル列Lを構成する全部のノズル13が露出するように、ノズル列LのY方向の全域に亘って形成されている。このように、開口部73はノズル13の位置に対応して形成されている。以下、4つの開口部73を区別する場合には、図5(a)及び図5(b)に示すように、−X側から+X側にかけて、それぞれ開口部73Y、73M、73C及び73Kと表記する。
【0052】
図6(a)は、保護部材CL及び噴射ヘッド11の構成を示す正面図である。図6(b)は、保護部材CL及び噴射ヘッド11の構成を示す平面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すように、噴射ヘッド11の+Y側端部は、ガイド機構Gを介して支柱部材82に接続されている。
【0053】
支柱部材82は、Z方向に延在するように壁板部材81に取り付けられている。壁板部材81には、上記の保護部材CLの+Y側端部が固定されている。また、壁板部材81には、支持部材37の+Y側が固定されている。このため、壁板部材81を介して保護部材CLと支持部材37とが固定された状態になっている。
【0054】
支柱部材82は、保護部材CL及び支持部材37をZ方向に貫通するように配置されている。ガイド機構Gは、噴射ヘッド11が支柱部材82に沿ってZ方向に移動するのを案内する。ガイド機構Gは、ヘッド駆動機構83に接続されている。ヘッド駆動機構83は、例えばリニアモーター機構やエアシリンダー機構などのアクチュエーターである。ヘッド駆動機構83は、例えば制御装置CONTの制御により、ガイド機構GをZ方向に沿って移動させる。このように、噴射ヘッド11はヘッド駆動機構83の駆動によってZ方向に移動可能に設けられている。
【0055】
ヘッド駆動機構83の駆動によって噴射ヘッド11が−Z方向に移動すると、噴射ヘッド11が保護部材CLに対して装着された状態になる。また、この状態から噴射ヘッド11が+Z方向に移動すると、保護部材CLに対する装着が解除された状態になる。このように、ヘッド駆動機構83は、噴射ヘッド11を保護部材CLに対して着脱させる着脱機構を兼ねた構成になっている。
【0056】
噴射ヘッド11を保護部材CLに対して装着させる際には、噴射ヘッド11のX方向の端部11Bに対して保護部材CLの閉塞部72が当接された状態となる。このため、噴射ヘッド11が保護部材CLに対して装着されると共に、噴射ヘッド11と保護部材CLとのX方向及びY方向における位置決めも併せて行われることになる。このように、本実施形態では、保護部材CLの閉塞部72が噴射ヘッド11に対する位置決め部を兼ねた構成となっている。
【0057】
図7は、印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態における印刷装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0058】
制御装置CONTには、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MN、ヘッド駆動機構83など、印刷装置PRTの各部が接続されている。印刷装置PRTは、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0059】
駆動信号発生器62には、噴射ヘッド11の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0060】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
噴射ヘッド11による印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mを不図示の支持面上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、駆動信号発生器62から圧電素子25に駆動信号を入力する。
【0061】
圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮して、ノズル13からインクDが噴射される。このとき、インクDが噴射されるときの風圧により、インクミストが発生する場合がある。このインクミストが飛散すると、例えば噴射ヘッド11の噴射面11Aにインクミストが付着し、噴射面11Aが汚染されてしまう。
【0062】
これに対して、本実施形態では、噴射ヘッド11に保護部材CLが取り付けられているため、図8に示すように、インクミストDMが発生した場合であっても、噴射面11A側にインクミストが飛散するのを防ぐことができる。また、噴射面11Aと保護部材CLとの間に発生したインクミストDMについては、保護部材CLの対向部71の+Z側の面に付着させることができる。このため、インクミストDMによって噴射面11Aが汚れるのを防ぐことができる。
【0063】
なお、図8に示すように、保護部材CLにおいて、ノズル列L(ノズル13)に対応する位置に開口部73が設けられているため、ノズル13から噴射されたインク滴Dは当該開口部73を通過して記録媒体Mに付着することになる。このため、印刷動作に支障をきたすことなく、インクミストDMが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。このノズル13から噴射されたインク滴Dにより、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0064】
噴射ヘッド11のメンテナンス動作を行わせる場合、例えば制御装置CONTは、ヘッド駆動機構83を作動させて噴射ヘッド11を+Z側に移動させる。この動作により、噴射ヘッド11が保護部材CLに装着された状態が解除される。制御装置CONTは、噴射ヘッド11を取り外した状態とした後、例えばメンテナンス機構MNを噴射ヘッド11の−Z側に移動させて、メンテナンス動作を行わせる。
【0065】
また、制御装置CONTは、保護部材CLの−Z側の面に対してメンテナンス動作を行わせるようにしても構わない。この場合、噴射ヘッド11を保護部材CLに装着させた状態のまま、例えばワイピング機構Wを対向部71の−Z側の面に対して移動させ、当該面を払拭させるようにする。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、噴射面11Aが保護部材CLに覆われているため、噴射ヘッド11の噴射時に発生するインクミストDMが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。また、複数のノズル13に対応する位置に開口部73が設けられているため、噴射ヘッド11による噴射動作を妨げなくて済むことにもなる。加えて、例えば噴射面11Aと保護部材CLとの間にミストが存在する場合であっても、その一部を保護部材CL(対向部71の+Z側の面)に付着させることができるため、噴射面11AへのインクミストDMの付着を極力抑えることができる。
【0067】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態の構成に加えて、図9に示すように、保護部材CLのX方向の両端部(回収部)74に、インクを回収する回収系79が接続された構成としても構わない。この構成においては、保護部材CLによって吸収されたインクDを回収することができるため、保護部材CLが清浄な状態に維持されることになる。これにより、保護部材CLによる吸収作用を持続させることができる。なお、この構成においては、回収部74が保護部材CLのうちX方向の端部に設けられているため、回収系79の流路設計が容易となる。
【0068】
また、図9に示すように、保護部材CLが開口部73から回収部74に向けて液体を案内する傾斜部75を有する構成としても構わない。この場合、保護部材CLに吸収されたインクが回収部74に到達しやすくなる。これにより、インクの回収効率を高めることができる。
【0069】
また、例えば上記実施形態では、保護部材CLの+X側端部及び−X側端部に閉塞部72が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、図10に示すように、閉塞部72が設けられない構成であっても構わない。この構成においても、記録媒体Mと噴射面11Aとの間に保護部材CLが配置されているため、インクミストが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。このように、保護部材CLをより簡単な構成とした場合であっても、噴射面11Aの汚染を防ぐことができる。
【0070】
また、閉塞部72が設けられない構成において、例えば図11に示すように、保護部材CLの+X側及び−X側に別途容器77及びインク吸収部材78などを設ける構成とし、当該容器77あるいはインク吸収部材78に回収系79を接続させる構成としても構わない。この場合、容器77及びインク吸収部材78が回収部となる。
【0071】
また、図12〜図14に示すように、保護部材CLの対向部71のうち開口部73の周縁部71aの形状についても適宜変形を加えることができる。例えば図12に示すように、周縁部71aを平坦な形状とすることができる。この場合、保護部材CLを容易に製造することができる。
【0072】
また、例えば図13に示すように、周縁部71aにおいて、記録媒体M側に突出する突出部80Aが設けられた構成であっても構わない。この構成では、−Z側から+Z側へのインクミストの移動が規制されるため、開口部73から噴射面11A側へのインクミストの侵入を防ぐことができる。また、突出部80Aによって囲まれる部分が、インクの吐出方向(−Z方向)に向かって徐々に狭くなるため、インクの吐出速度が速くなる。
【0073】
また、例えば図14に示すように、周縁部71aにおいて、噴射面11A側に突出する突出部80Bが設けられた構成であっても構わない。この構成では、保護部材CLの表面積を大きくすることができるため、インクミストを付着させる部分を広げることができる。また、保護部材CLの対向部71のうち記録媒体M側の面(−Z側の面)が平坦であるため、例えば当該−Z側の面に対してワイピングなどのメンテナンス動作を行いやすい構成となる。
【0074】
また、上記実施形態では、保護部材CLが多孔質材料によって形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、保護部材CLがインクを吸収しない例えばプラスチックなどの樹脂材料によって形成された構成であっても構わない。この場合、保護部材CLの表面全体に多孔質材料で形成されたシート(吸収部材)を貼り付けることにより、上記実施形態に記載のような保護部材CLにおいてインクを吸収する構成を実現することができる。
【0075】
上記の説明では、インクジェット式のプリンターと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0076】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0077】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。
【0078】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11…噴射ヘッド 11A…噴射面 11B…端部 13…ノズル 71…対向部 71a…周縁部 72…閉塞部 73…開口部 74…凹部 75…傾斜部 76、78…インク吸収部材 77…容器 79…回収部 80A、80B…突出部 CONT…制御装置 PRT…印刷装置 M…記録媒体 CL…保護部材 D…インク DM…インクミスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射装置として、例えば記録媒体に文字や画像等を記録するインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体を搬送しつつ、噴射ヘッドに設けられたノズルから当該記録媒体にインクを噴射することで、記録媒体に記録を行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘッドからインクを噴射する際に、ノズルからのインクの吐出や記録媒体への着弾など、インクの噴射動作に伴う風圧によってインクミストが発生する場合がある。インクミストが噴射ヘッドのインク噴射面に付着すると、インク噴射面が汚れてしまうことになる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体噴射ヘッドの噴射面が汚れるのを防止することができる液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体噴射装置は、所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、噴射面と搬送媒体との間に保護部材が設けられているため、例えば液体噴射ヘッドの噴射時に搬送媒体上で発生するミスト状の液体が噴射面に付着するのを防ぐことができる。また、噴射された液体を通過させる開口部が設けられているため、液体噴射ヘッドによる噴射動作を妨げなくて済む。加えて、例えば噴射面と保護部材との間にミストが存在する場合であっても、その一部を保護部材に付着させることができるため、噴射面へのミストの付着を極力抑えることができる。
【0008】
上記の液体噴射装置において、前記複数のノズルは、一方向に並んで配置され、前記開口部は、複数の前記ノズルに対応する領域にスリット状に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、複数のノズルが一方向に並んで配置され、開口部が複数のノズル列に対応する領域にスリット状に形成されているため、開口部の面積を極力小さくすることができる。これにより、開口部から噴射面側へミストが侵入するのを抑えることができる。
【0009】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記液体噴射ヘッドのうち少なくとも前記所定方向の端部に当接され前記噴射面と前記保護部材との間を塞ぐ閉塞部を有することを特徴とする。
本発明によれば、閉塞部により、噴射面と保護部材との間を塞ぐことができるため、発生したミストが噴射面と保護部材との間から侵入するのを防ぐことができる。
【0010】
上記の液体噴射装置は、前記閉塞部は、前記液体噴射ヘッドと前記保護部材との間の位置決め部を兼ねていることを特徴とする。
本発明によれば、閉塞部が端部に当接することで液体噴射ヘッドと保護部材との間の位置決めが行われるため、液体噴射ヘッドの位置及び保護部材の位置を簡単な動作で規定することができる。
【0011】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されているため、保護部材に付着したミストなどの液体を吸収することができる。これにより、液体が流れ出すのを防ぐことができる。
【0012】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記開口部から外れた領域に設けられ前記液体を吸収可能な吸収部材を有することを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が液体を吸収可能な吸収部材を有するため、保護部材に付着したミストなどの液体を吸収することができる。これにより、液体が流れ出すのを防ぐことができる。また、吸収部材が開口部から外れた領域に設けられているため、液体噴射ヘッドの噴射動作の妨げになることは無い。
【0013】
上記の液体噴射装置は、吸収された液体を回収する回収部を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、吸収された液体を回収する回収部が設けられるため、保護部材あるいは吸収部材を清浄な状態に維持することができる。これにより、保護部材あるいは吸収部材による吸収作用を持続させることができる。
【0014】
上記の液体噴射装置は、前記保護部材は、前記開口部から前記回収部へ向けて前記液体を案内する傾斜部を有することを特徴とする。
本発明によれば、保護部材が開口部から回収部に向けて液体を案内する傾斜部を有することとしたので、保護部材に付着した液体が回収部に到達しやすくなる。これにより、液体の回収効率を高めることができる。
【0015】
上記の液体噴射装置において、前記回収部は、前記保護部材のうち前記搬送媒体が搬送される方向の端部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、保護部材のうち搬送媒体が搬送される方向の端部に回収部が設けられているため、液体の流路を含めた回収系の設計が容易となる。
【0016】
上記の液体噴射装置において、前記保護部材は、前記開口部の周縁部から前記液体噴射ヘッド側及び前記搬送媒体側のうち少なくとも一方に向けて突出する突出部を有することを特徴とする。
本発明によれば、突出部が液体噴射ヘッド側に突出する場合には、例えば保護部材に対して清掃などのメンテナンスを行いやすい構成となる。また、突出部が搬送媒体側に突出する場合には、噴射面側へのミストの侵入を効率よく防ぐことができる。
【0017】
上記の液体噴射装置は、前記支持部材と前記保護部材とを固定する固定部材を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、支持部材と保護部材とを固定する固定部材を更に備えることとしたので、支持部材及び保護部材の位置を安定させることができる。
【0018】
上記の液体噴射装置は、前記固定部材に取り付けられ、前記噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材を更に備え、前記液体噴射ヘッドは、前記支柱部材の延在する方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、液体噴射ヘッドが、固定部材に取り付けられ噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材の延在方向に沿って移動可能であるため、保護部材の位置が固定されている場合であっても、液体噴射ヘッドを移動させることで、噴射面と保護部材との位置決めを行うことができる。
【0019】
上記の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドを前記支柱部材の延在する方向に沿って移動させるヘッド駆動機構を更に備え、前記ヘッド駆動機構は、前記液体噴射ヘッドを移動させることにより前記保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねていることを特徴とする。
本発明によれば、ヘッド駆動機構が、液体噴射ヘッドを移動させることにより保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねていることとしたので、噴射面と保護部材との位置関係が設定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】噴射ヘッド周辺の要部平面図。
【図3】噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図。
【図4】噴射ヘッドの断面構成を示す図。
【図5】保護部材の概略構成を示す(a)断面図、(b)底面図。
【図6】保護部材及び噴射ヘッドの概略構成を示す(a)正面図、(b)平面図。
【図7】印刷装置の構成を示すブロック図。
【図8】印刷装置の動作を示す図。
【図9】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図10】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図11】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図12】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図13】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【図14】本発明に係る印刷装置の他の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面をもとにして、本発明に係る流体噴射装置の実施の形態を説明する。流体噴射装置の各部材を認識可能な大きさとするため、以下の説明に用いる各図面には、縮尺が適宜変更された状態で各部材が示されている。本実施形態では、流体噴射装置としてインクジェット式の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本実施形態のインクジェット式プリンター(以下、印刷装置PRTと表記する)の概略構成図である。図2は、噴射ヘッド周辺の要部平面図である。図3は、噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図である。
【0023】
図1においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、記録媒体Mの搬送方向をX方向(図1左右方向)、噴射ヘッド11のノズル形成領域15に垂直な方向をZ方向(図1上下方向)、X方向軸及びZ方向軸によって形成されるXZ平面に垂直な方向をY方向(図1紙面奥行き方向)とする。
【0024】
これらの図に示すように、印刷装置PRTは、記録媒体Mに画像や文字などを記録する装置である。記録媒体Mとしては、例えば紙やプラスチックなどが用いられる。印刷装置PRTは、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、保護部材CL、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0025】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(流体)を噴射する部分である。インク噴射機構IJは、噴射ヘッド(流体噴射ヘッド)11及びインク供給部12を有している。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0026】
噴射ヘッド11は、記録媒体Mに複数色のインク滴を噴射可能なヘッドである。噴射ヘッド11は、例えば図2に示すように、印刷装置PRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの少なくとも一辺を越える長さ(最大記録紙幅W)に亘ってノズル形成領域15を有するライン型の噴射ヘッドである。噴射ヘッド11は、例えばZ方向上に移動可能に設けられている。噴射ヘッド11は、ノズル13及び共通インク室14を有している。
【0027】
共通インク室14は、例えば4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)に対応するインクを保持する(共通インク室14Y、14M、14C、14K)。ノズル形成領域15は、上記各色の共通インク室14に対応して設けられている(ノズル形成領域15Y、15M、15C、15K)。
【0028】
ノズル13は、噴射ヘッド11のノズル形成領域15Y、15M、15C、15K内にそれぞれ複数設けられ、例えば上記4色のインク滴を吐出する開口部である。ノズル13は、例えば図3に示すようにY方向に複数配列されている(ノズル列L)。ノズル列Lは、各色のノズル形成領域15Y、15M、15C、15Kについて、1列又は複数列設けられる。ノズル13の数やノズル列Lの数は、適宜設定される。噴射ヘッド11のうちノズル13が設けられる面が噴射面11Aとなる。噴射面11Aは、噴射ヘッド11の−Z側に設けられる。噴射ヘッド11は、−Z側へインク滴を噴射するようになっている。
【0029】
搬送機構CRは、紙送りローラー35、排出ローラー36、支持部材37などを有している。紙送りローラー35、排出ローラー36は、不図示のモーター機構によって回転駆動されるようになっている。支持部材37は、記録媒体Mの搬送経路MRに配置されており、当該記録媒体Mを支持する支持面37aを有している。
【0030】
支持部材37は噴射ヘッド11の−Z側に配置されている。支持面37aは噴射ヘッド11側、すなわち、+Z側に向けられている。このような構成において、噴射ヘッド11は、支持部材37に支持された状態の記録媒体Mに対してインクを噴射する構成となっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送経路MRに沿って搬送する。
【0031】
メンテナンス機構MNは、噴射ヘッド11のメンテナンスを行う。メンテナンス機構MNは、キャップ部材42、吸引機構45、インク排出タンク46及びワイピング部材Wを有している。キャップ部材42は、噴射ヘッド11の噴射面11Aをキャッピングするトレイ状部材である。キャップ部材42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを排出させる排出動作を行う際、排出されるインクを受ける部分でもある。
【0032】
キャップ部材42は、トレイ内部にインク吸収材42aを有している。キャップ部材42の底部には、開口部42bが設けられている。吸引機構45は、例えばポンプなどの吸引源を有しており、キャップ部材42の開口部42bに接続されている。吸引機構45は、キャップ部材42の内部を吸引すると共に、当該キャップ部材42内部に溜まったインクを吸引する。
【0033】
インク排出タンク46は、キャップ部材42内に溜まったインクを排出する部分である。インク排出タンク46は、例えば印刷装置PRTの−Z側端部に配置されており、着脱可能に設けられている。インク排出タンク46は、例えば吸引機構45の下流側に接続されている。ワイピング部材Wは、噴射面11Aなどを払拭する。ワイピング部材Wは、噴射ヘッド11側にアクセス可能となるように、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。
【0034】
図4は、噴射ヘッド11の構成を示す断面図である。
同図に示すように、噴射ヘッド11は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えている。
【0035】
ヘッド本体18は、合成樹脂からなる箱形の部材である。ヘッド本体18には、駆動ユニット24を収容する収容室23と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成されている。
【0036】
収容室23内に配置された駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、複数の圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数のノズル13のそれぞれに対応して設けられている。
【0037】
内部流路28は、ヘッド本体18を図4上下方向に貫通して形成されている。内部流路28は、インク供給部12から供給されてくるインクを図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット22へ流通させるインクの流路である。
【0038】
流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合一体化された構成になっている。流路形成ユニット22には、ヘッド本体18の内部流路28に接続された共通インク室14と、共通インク室14に接続されたインク供給口30と、インク供給口30に接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、各々のノズル13に対応して設けられている。各々の圧力室31は、共通インク室14と反対側の端部においてノズル13に接続されている。
【0039】
振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムがラミネート加工された構成になっている。振動板19のうち圧力室31に対応する部分には島部32が形成されている。島部32は、例えばエッチングなどにより支持板を環状に除去することで、圧電素子25の下端に接合されている。
【0040】
島部32はダイヤフラム部として機能する。振動板19は、圧力室31上において、島部32の周囲の弾性フィルムの部分が圧電素子25の駆動に応じて弾性変形し、島部32が上下動するようになっている。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室14内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33となっている。
【0041】
流路基板20は、内部流路28の下端とノズル13とを接続する共通インク室14、インク供給口30、及び圧力室31などのインク流通室を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板20の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0042】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル13を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の外面が噴射面11Aである。
【0043】
このように構成された噴射ヘッド11は、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されることで、圧電素子25が伸縮するようになっている。圧電素子25の伸縮は、振動板19の変形(キャビティに接近する方向及び離れる方向への変形)として伝達されるようになっている。振動板19の変形により、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動するようになっている。この圧力の変動によって、ノズル13から、インクが噴射されるようになっている。
【0044】
また、噴射ヘッド11には、図示しない加圧機構が設けられている。圧電素子25の伸縮の他に、当該加圧機構によって圧力を加えることで、ノズル13からインクが噴射されるようになっている。したがって、噴射ヘッド11には、サブタンクなどは設けられていない構成になっている。
【0045】
図1に戻って、保護部材CLは、噴射ヘッド11と支持部材37に支持された状態の記録媒体Mとの間に配置されている。保護部材CLは、噴射ヘッド11からインクが噴射される際に発生するミストが噴射面11Aに付着するのを防いでいる。保護部材CLは、例えばポリオレフィン系親水性多孔質焼結成形体などの材料によって板状に形成されており、支持部材37に対して位置が固定されている。このため、一定量のインクを吸収して保持することができる構成となっている。
【0046】
保護部材CLは、例えば噴射ヘッド11との間で相対的にZ方向に移動させる昇降機構(第二移動機構)AC2に接続されている。昇降機構AC2は、例えばZ方向に延在するガイド部G1及び当該ガイド部G1に沿って具体的には、不図示の固定部材を介して支持部材37に固定されている。
【0047】
図5(a)は、保護部材CLの構成を示す断面図である。図5(b)は、保護部材CLの構成を示す底面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、保護部材CLは、対向部71、閉塞部72及び開口部73を有している。対向部71は、噴射ヘッド11の噴射面11Aに対向する位置に設けられており、噴射面11Aを覆う部分である。対向部71は、例えば平板状に形成されている。
【0048】
閉塞部72は、噴射ヘッド11のうち記録媒体Mの搬送方向(X方向)の端部11Bに当接されている。+Y側及び−Y側の閉塞部72がそれぞれ+Y側及び−Y側の端部11Bに当接されることにより、噴射ヘッド11と保護部材CLとの間で位置決めが成された状態となっている。閉塞部72は、端部11Bに対して着脱可能に形成されている。
【0049】
図5(b)に示すように、対向部71及び閉塞部72は、噴射ヘッド11のY方向の全域にわたって形成されている。したがって、噴射ヘッド11の+X側端部及び−X側端部は、Y方向の全域について保護部材CLの閉塞部72によって塞がれた構成となっている。このため、噴射ヘッド11の+X側端部及び−X側端部においては、ミストが漏れ出しにくい構成となっている。
【0050】
開口部73は、対向部71のうち噴射ヘッド11のノズル列Lに対応する位置に設けられている。開口部73は、ノズル列Lを構成する全ノズル13を露出するように、例えばY方向に長手となるようにスリット状に形成されている。開口部73は、4つのノズル列Lに対応して、それぞれX方向に4つ並んで設けられている。
【0051】
各開口部73は、−Z方向から見たときにノズル列Lを構成する全部のノズル13が露出するように、ノズル列LのY方向の全域に亘って形成されている。このように、開口部73はノズル13の位置に対応して形成されている。以下、4つの開口部73を区別する場合には、図5(a)及び図5(b)に示すように、−X側から+X側にかけて、それぞれ開口部73Y、73M、73C及び73Kと表記する。
【0052】
図6(a)は、保護部材CL及び噴射ヘッド11の構成を示す正面図である。図6(b)は、保護部材CL及び噴射ヘッド11の構成を示す平面図である。
図6(a)及び図6(b)に示すように、噴射ヘッド11の+Y側端部は、ガイド機構Gを介して支柱部材82に接続されている。
【0053】
支柱部材82は、Z方向に延在するように壁板部材81に取り付けられている。壁板部材81には、上記の保護部材CLの+Y側端部が固定されている。また、壁板部材81には、支持部材37の+Y側が固定されている。このため、壁板部材81を介して保護部材CLと支持部材37とが固定された状態になっている。
【0054】
支柱部材82は、保護部材CL及び支持部材37をZ方向に貫通するように配置されている。ガイド機構Gは、噴射ヘッド11が支柱部材82に沿ってZ方向に移動するのを案内する。ガイド機構Gは、ヘッド駆動機構83に接続されている。ヘッド駆動機構83は、例えばリニアモーター機構やエアシリンダー機構などのアクチュエーターである。ヘッド駆動機構83は、例えば制御装置CONTの制御により、ガイド機構GをZ方向に沿って移動させる。このように、噴射ヘッド11はヘッド駆動機構83の駆動によってZ方向に移動可能に設けられている。
【0055】
ヘッド駆動機構83の駆動によって噴射ヘッド11が−Z方向に移動すると、噴射ヘッド11が保護部材CLに対して装着された状態になる。また、この状態から噴射ヘッド11が+Z方向に移動すると、保護部材CLに対する装着が解除された状態になる。このように、ヘッド駆動機構83は、噴射ヘッド11を保護部材CLに対して着脱させる着脱機構を兼ねた構成になっている。
【0056】
噴射ヘッド11を保護部材CLに対して装着させる際には、噴射ヘッド11のX方向の端部11Bに対して保護部材CLの閉塞部72が当接された状態となる。このため、噴射ヘッド11が保護部材CLに対して装着されると共に、噴射ヘッド11と保護部材CLとのX方向及びY方向における位置決めも併せて行われることになる。このように、本実施形態では、保護部材CLの閉塞部72が噴射ヘッド11に対する位置決め部を兼ねた構成となっている。
【0057】
図7は、印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態における印刷装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0058】
制御装置CONTには、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MN、ヘッド駆動機構83など、印刷装置PRTの各部が接続されている。印刷装置PRTは、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0059】
駆動信号発生器62には、噴射ヘッド11の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0060】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
噴射ヘッド11による印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mを不図示の支持面上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、駆動信号発生器62から圧電素子25に駆動信号を入力する。
【0061】
圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮して、ノズル13からインクDが噴射される。このとき、インクDが噴射されるときの風圧により、インクミストが発生する場合がある。このインクミストが飛散すると、例えば噴射ヘッド11の噴射面11Aにインクミストが付着し、噴射面11Aが汚染されてしまう。
【0062】
これに対して、本実施形態では、噴射ヘッド11に保護部材CLが取り付けられているため、図8に示すように、インクミストDMが発生した場合であっても、噴射面11A側にインクミストが飛散するのを防ぐことができる。また、噴射面11Aと保護部材CLとの間に発生したインクミストDMについては、保護部材CLの対向部71の+Z側の面に付着させることができる。このため、インクミストDMによって噴射面11Aが汚れるのを防ぐことができる。
【0063】
なお、図8に示すように、保護部材CLにおいて、ノズル列L(ノズル13)に対応する位置に開口部73が設けられているため、ノズル13から噴射されたインク滴Dは当該開口部73を通過して記録媒体Mに付着することになる。このため、印刷動作に支障をきたすことなく、インクミストDMが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。このノズル13から噴射されたインク滴Dにより、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0064】
噴射ヘッド11のメンテナンス動作を行わせる場合、例えば制御装置CONTは、ヘッド駆動機構83を作動させて噴射ヘッド11を+Z側に移動させる。この動作により、噴射ヘッド11が保護部材CLに装着された状態が解除される。制御装置CONTは、噴射ヘッド11を取り外した状態とした後、例えばメンテナンス機構MNを噴射ヘッド11の−Z側に移動させて、メンテナンス動作を行わせる。
【0065】
また、制御装置CONTは、保護部材CLの−Z側の面に対してメンテナンス動作を行わせるようにしても構わない。この場合、噴射ヘッド11を保護部材CLに装着させた状態のまま、例えばワイピング機構Wを対向部71の−Z側の面に対して移動させ、当該面を払拭させるようにする。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、噴射面11Aが保護部材CLに覆われているため、噴射ヘッド11の噴射時に発生するインクミストDMが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。また、複数のノズル13に対応する位置に開口部73が設けられているため、噴射ヘッド11による噴射動作を妨げなくて済むことにもなる。加えて、例えば噴射面11Aと保護部材CLとの間にミストが存在する場合であっても、その一部を保護部材CL(対向部71の+Z側の面)に付着させることができるため、噴射面11AへのインクミストDMの付着を極力抑えることができる。
【0067】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態の構成に加えて、図9に示すように、保護部材CLのX方向の両端部(回収部)74に、インクを回収する回収系79が接続された構成としても構わない。この構成においては、保護部材CLによって吸収されたインクDを回収することができるため、保護部材CLが清浄な状態に維持されることになる。これにより、保護部材CLによる吸収作用を持続させることができる。なお、この構成においては、回収部74が保護部材CLのうちX方向の端部に設けられているため、回収系79の流路設計が容易となる。
【0068】
また、図9に示すように、保護部材CLが開口部73から回収部74に向けて液体を案内する傾斜部75を有する構成としても構わない。この場合、保護部材CLに吸収されたインクが回収部74に到達しやすくなる。これにより、インクの回収効率を高めることができる。
【0069】
また、例えば上記実施形態では、保護部材CLの+X側端部及び−X側端部に閉塞部72が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、図10に示すように、閉塞部72が設けられない構成であっても構わない。この構成においても、記録媒体Mと噴射面11Aとの間に保護部材CLが配置されているため、インクミストが噴射面11Aに付着するのを防ぐことができる。このように、保護部材CLをより簡単な構成とした場合であっても、噴射面11Aの汚染を防ぐことができる。
【0070】
また、閉塞部72が設けられない構成において、例えば図11に示すように、保護部材CLの+X側及び−X側に別途容器77及びインク吸収部材78などを設ける構成とし、当該容器77あるいはインク吸収部材78に回収系79を接続させる構成としても構わない。この場合、容器77及びインク吸収部材78が回収部となる。
【0071】
また、図12〜図14に示すように、保護部材CLの対向部71のうち開口部73の周縁部71aの形状についても適宜変形を加えることができる。例えば図12に示すように、周縁部71aを平坦な形状とすることができる。この場合、保護部材CLを容易に製造することができる。
【0072】
また、例えば図13に示すように、周縁部71aにおいて、記録媒体M側に突出する突出部80Aが設けられた構成であっても構わない。この構成では、−Z側から+Z側へのインクミストの移動が規制されるため、開口部73から噴射面11A側へのインクミストの侵入を防ぐことができる。また、突出部80Aによって囲まれる部分が、インクの吐出方向(−Z方向)に向かって徐々に狭くなるため、インクの吐出速度が速くなる。
【0073】
また、例えば図14に示すように、周縁部71aにおいて、噴射面11A側に突出する突出部80Bが設けられた構成であっても構わない。この構成では、保護部材CLの表面積を大きくすることができるため、インクミストを付着させる部分を広げることができる。また、保護部材CLの対向部71のうち記録媒体M側の面(−Z側の面)が平坦であるため、例えば当該−Z側の面に対してワイピングなどのメンテナンス動作を行いやすい構成となる。
【0074】
また、上記実施形態では、保護部材CLが多孔質材料によって形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、保護部材CLがインクを吸収しない例えばプラスチックなどの樹脂材料によって形成された構成であっても構わない。この場合、保護部材CLの表面全体に多孔質材料で形成されたシート(吸収部材)を貼り付けることにより、上記実施形態に記載のような保護部材CLにおいてインクを吸収する構成を実現することができる。
【0075】
上記の説明では、インクジェット式のプリンターと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0076】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【0077】
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。
【0078】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11…噴射ヘッド 11A…噴射面 11B…端部 13…ノズル 71…対向部 71a…周縁部 72…閉塞部 73…開口部 74…凹部 75…傾斜部 76、78…インク吸収部材 77…容器 79…回収部 80A、80B…突出部 CONT…制御装置 PRT…印刷装置 M…記録媒体 CL…保護部材 D…インク DM…インクミスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、
前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、
前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記ノズルは、一方向に並んで配置され、
前記開口部は、前記複数のノズルに対応する領域にスリット状に形成されている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記保護部材は、前記液体噴射ヘッドのうち少なくとも前記所定方向の端部に当接され前記噴射面と前記保護部材との間を塞ぐ閉塞部を有する
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記閉塞部は、前記液体噴射ヘッドと前記保護部材との間の位置決め部を兼ねている
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記保護部材は、前記液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記保護部材は、前記開口部から外れた領域に設けられ前記液体を吸収可能な吸収部材を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
吸収された前記液体を回収する回収部
を更に備える請求項4又は請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記保護部材は、前記開口部から前記回収部へ向けて前記液体を案内する傾斜部を有する
請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記保護部材のうち前記搬送媒体が搬送される方向の端部に設けられている
請求項7又は請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記保護部材は、前記開口部の周縁部から前記液体噴射ヘッド側及び前記搬送媒体側のうち少なくとも一方に向けて突出する突出部を有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記支持部材と前記保護部材とを固定する固定部材
を更に備える請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記固定部材に取り付けられ、前記噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材
を更に備え、
前記液体噴射ヘッドは、前記支柱部材の延在する方向に沿って移動可能に設けられている
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記液体噴射ヘッドを前記支柱部材の延在する方向に沿って移動させるヘッド駆動機構
を更に備え、
前記ヘッド駆動機構は、前記液体噴射ヘッドを移動させることにより前記保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねている
請求項12に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
所定方向に搬送される搬送媒体を支持する支持部材と、
前記支持部材に対向して設けられる噴射面を有し、前記搬送媒体に向けて液体を噴射する複数のノズルが前記噴射面に設けられた液体噴射ヘッドと、
前記噴射面と前記搬送媒体との間に設けられ、前記支持部材に対して固定された位置に配置され、前記液体噴射ヘッドから噴射された前記液体を通過させる開口部を有する保護部材と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
複数の前記ノズルは、一方向に並んで配置され、
前記開口部は、前記複数のノズルに対応する領域にスリット状に形成されている
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記保護部材は、前記液体噴射ヘッドのうち少なくとも前記所定方向の端部に当接され前記噴射面と前記保護部材との間を塞ぐ閉塞部を有する
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記閉塞部は、前記液体噴射ヘッドと前記保護部材との間の位置決め部を兼ねている
請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記保護部材は、前記液体を吸収可能な多孔質材料を用いて形成されている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記保護部材は、前記開口部から外れた領域に設けられ前記液体を吸収可能な吸収部材を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
吸収された前記液体を回収する回収部
を更に備える請求項4又は請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記保護部材は、前記開口部から前記回収部へ向けて前記液体を案内する傾斜部を有する
請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記保護部材のうち前記搬送媒体が搬送される方向の端部に設けられている
請求項7又は請求項8に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記保護部材は、前記開口部の周縁部から前記液体噴射ヘッド側及び前記搬送媒体側のうち少なくとも一方に向けて突出する突出部を有する
請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記支持部材と前記保護部材とを固定する固定部材
を更に備える請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
前記固定部材に取り付けられ、前記噴射面に垂直な方向に延在する支柱部材
を更に備え、
前記液体噴射ヘッドは、前記支柱部材の延在する方向に沿って移動可能に設けられている
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項13】
前記液体噴射ヘッドを前記支柱部材の延在する方向に沿って移動させるヘッド駆動機構
を更に備え、
前記ヘッド駆動機構は、前記液体噴射ヘッドを移動させることにより前記保護部材に対して着脱させる着脱機構を兼ねている
請求項12に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−101476(P2012−101476A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252870(P2010−252870)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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