説明

液体噴射装置

【課題】打ち捨てられた液体を排出する液体排出穴から液体を排出し、廃液トレイの内部に設けられた液体吸収材に吸収させる構成において、インクガイド性能の確保とコストアップの防止との両立を図る。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、インクジェット記録ヘッド21と対向する位置に媒体案内部材23を備えている。媒体案内部材23に形成された溝23dには第1のインク吸収材24が設けられ、吸収されたインクがインクガイド部24aを介して下部の廃液トレイ33へと導かれる。廃液トレイ33内に設けられたインク吸収材においてインクガイド部24aと接する部分34Aが、それ以外の部分34Bのシート積層方向と異なり横方向にシート材を積層させて構成され、インクガイド部24aがシート材の切断面と接触し、良好なインク吸収性を発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被噴射媒体に対して液体噴射を行う液体噴射装置に関し、特に液体噴射ヘッドから打ち捨てられた液体を収容する廃液トレイを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例としての記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンターには、被噴射媒体の一例としての記録用紙に対して余白無く記録を行う、所謂縁無し記録を実行可能なものがある。
【0003】
縁無し記録を実行可能なインクジェットプリンターにおいては、インクジェット記録ヘッドと対向配置された支持部材(プラテン)の上面に溝が形成されており、この溝に、記録用紙の縁から外れた領域に吐出されるインクが打ち捨てられるようになっている。
【0004】
ここで、一般に前記溝の内部には、インクを吸収するインク吸収材(以下これを「第1のインク吸収材」と言う)が設けられる。その理由は、この様な第1のインク吸収材を設けないと、前記溝に打ち捨てられたインクがインクミストとなり、記録用紙に付着することで記録品質の低下を招き、或いは、駆動部品に付着して正常な動作を妨げる虞があるからである。
【0005】
そして、前記溝の底部にはインク排出穴が設けられており、前記溝に打ち捨てられたインクは前記第1のインク吸収材に一旦吸収され、その後、前記インク排出穴から下方に排出される。従って、支持部材(プラテン)の下方には、排出されたインクを収容する廃液トレイが設けられている。そしてこの廃液トレイ内にも、インクを吸収するインク吸収材(以下これを「第2のインク吸収材」と言う)が設けられており、これによって廃液トレイ内に貯留されたインクが、容易に外部へ漏れ出ないように確実に保持される様になっている。
【0006】
また、従来のインクジェットプリンターにあっては、支持部材(プラテン)から廃液トレイへと円滑にインクが導かれるよう、インクガイドが設けられることもある。このインクガイドは、支持部材(プラテン)に形成された上記排出穴から廃液トレイに向けて垂下し、そして廃液トレイに設けられた第2のインク吸収材の上面に接するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−226590号公報
【特許文献2】特開2006−088657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、上記インクガイドとして、支持部材(プラテン)に設けられた第1のインク吸収材の一部を利用する形態と、より一層インクガイド性能の優れた別部材を利用する形態と、があった。しかしながら、前者の場合にはインクガイド性能が劣り、後者の場合には構成部材の増加によってコストアップを招くという欠点があった。
【0009】
そこで本発明はこのような状況に鑑み成されたものであり、その目的は、打ち捨てられた液体を排出する液体排出穴から液体を排出し、廃液トレイの内部に設けられた液体吸収材に吸収させる構成において、インクガイド性能の確保とコストアップの防止との両立を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体を打ち捨てる液体打ち捨て部に設けられた液体排出穴を介して排出される液体を収容する廃液トレイと、前記廃液トレイ内に設けられた、液体を吸収する液体吸収材と、一部が前記液体吸収材と接する状態に設けられた、前記液体排出穴から前記液体吸収材へと液体を導く液体ガイド手段と、を備え、前記液体吸収材は、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域が、前記廃液トレイの底部から上方に向かって液体吸収性を有するシート材を積層させることにより構成され、前記液体ガイド手段と接する部分が、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域におけるシート材の積層方向と交差する方向にシート材を積層させて構成されたことにより、前記シート材の切断面が前記液体ガイド手段と接していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、廃液トレイ内に設けられた液体吸収材において液体ガイド手段と接する部分が、シート材の切断面であるので、液体吸収性の良好なシート材の切断面に液体ガイド手段が接することで、液体ガイド手段から、廃液トレイ内に設けられた液体吸収材へと、良好に液体を受け渡すことができる。
【0012】
また、廃液トレイ内に設けられた液体吸収材において液体ガイド手段と接する部分を除く領域は、廃液トレイの底部から上方に向かってシート材(液体吸収性を有する)を積層させることにより構成されているので、液体吸収材内部の液体保持性能が優先されることとなり、装置を傾けた場合でも液体吸収材の上面から容易に液体が漏出することを防止できる。
【0013】
本発明の第2の態様は、被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を下方から支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとの距離を規定する被噴射媒体支持部材と、前記被噴射媒体支持部材に形成された液体打ち捨て溝に設けられた、液体を吸収する第1の液体吸収材と、前記液体打ち捨て溝の底部に設けられた液体排出穴を介して排出される液体を収容する廃液トレイと、前記廃液トレイ内に設けられた、液体を吸収する第2の液体吸収材と、一部が前記第2の液体吸収材と接する状態に設けられた、前記液体排出穴から前記第2の液体吸収材へと液体を導く液体ガイド手段と、を備え、前記第2の液体吸収材は、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域が、前記廃液トレイの底部から上方に向かって液体吸収性を有するシート材を積層させることにより構成され、前記液体ガイド手段と接する部分が、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域におけるシート材の積層方向と交差する方向にシート材を積層させて構成されたことにより、前記シート材の切断面が前記液体ガイド手段と接していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、上記第1の態様と同様に、廃液トレイ内に設けられた第2の液体吸収材において液体ガイド手段と接する部分が、シート材の切断面であるので、液体吸収性の良好なシート材の切断面に液体ガイド手段が接することで、液体ガイド手段から、廃液トレイ内に設けられた第2の液体吸収材へと、良好に液体を受け渡すことができる。
【0015】
また、廃液トレイ内に設けられた第2の液体吸収材において液体ガイド手段と接する部分を除く領域は、廃液トレイの底部から上方に向かってシート材(液体吸収性を有する)を積層させることにより構成されているので、液体吸収材内部の液体保持性能が優先されることとなり、装置を傾けた場合でも第2の液体吸収材の上面から容易に液体が漏出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの、媒体搬送経路の側断面図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの、装置本体の斜視図。
【図3】(A)は第2インク吸収材においてインクガイド部と接触するインク導入領域の挿入前の斜視図、(B)は同組立図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0018】
ここで、図1は液体噴射装置の一例としての記録装置、また更にその一例としてのインクジェットプリンター1の媒体搬送経路の側断面図、図2はインクジェットプリンター1の装置本体の斜視図、図3(A)は第2インク吸収材34においてインクガイド部24aと接触するインク導入領域34Bの挿入前の斜視図、(B)は同組立状態の図である。
【0019】
尚、図1は手差し給送用ガイド10が手差し給送経路から退避する位置にあり、且つ補助ガイド11が退避位置にあるときの状態を示している。また、各図において示すx−y−z座標系において、y方向は媒体搬送方向を示しており、x方向は媒体搬送方向と直交する方向(媒体幅方向、主走査方向)を示しており、z方向は装置高さ方向(重力方向)を示している。以下、図1の左方向を媒体搬送経路の下流側と言い、同右方向を媒体搬送経路の上流側と言うこととする。尚、図1において符号Pは搬送される媒体(上記第1および第2の被記録媒体)の軌跡を示している。
【0020】
以下では先ず、図1及び図2を参照しながらインクジェットプリンター1の全体構成について概説する。インクジェットプリンター1は、本実施形態ではインクジェット記録ヘッド22が主走査方向に移動しながら記録を行う、所謂シリアル型のインクジェットプリンターである。
【0021】
インクジェットプリンター1は、記録対象(液体噴射対象)である媒体(被噴射媒体)として、剛性が低く可撓性に富む普通紙(以下「第1の被記録媒体」と言う)、剛性がやや高いものの或る程度の可撓性を有する厚手の専用紙(以下「第2の被記録媒体」と言う)、この専用紙よりも更に剛性が高い専用紙や、可撓性のないボード紙或いは光ディスク(当該光ディスクをセットしたトレイ)などのプレート状体(以下「第3の被記録媒体」と言う)を搬送可能に構成されている。
【0022】
この為、インクジェットプリンター1は、本実施形態では3つの媒体搬送経路を有している。具体的には、上記第1の被記録媒体を搬送するための、湾曲度合いのやや厳しい湾曲経路を含む第1媒体搬送経路と、上記第2の被記録媒体を給送し搬送するための、第1媒体搬送経路よりも緩やかな湾曲経路を含む第2媒体搬送経路と、を有している。また更に、上記第3の被記録媒体を給送し搬送するための、略直線状の(即ち湾曲経路を含まない)水平方向に延びる第3媒体搬送経路を備えている。以上の第1〜第3媒体搬送経路は、搬送手段15より下流側が共通の媒体搬送経路であり、図1では第1、第2媒体搬送経路に固有の搬送経路は図示を省略している。
【0023】
図1では図示を省略する用紙給送手段から給送された第1の或いは第2の被記録媒体は、搬送手段15に到達する。搬送手段15は、搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とを備えて構成されている。搬送駆動ローラー16は、図示しないモーターにより回転駆動されるローラーであり、搬送従動ローラー17は、搬送駆動ローラー15との間で媒体をニップして従動回転するローラーである。
【0024】
本実施形態において搬送駆動ローラー16は、媒体幅方向に長い金属軸の表面に摩擦係数を高める為の高摩擦材が付着されて成り、搬送従動ローラー17は、成形後のローラー表面の摩擦係数が低い樹脂材料により形成され、搬送駆動ローラー16の長さ方向に渡って適宜の間隔で複数配置される。
【0025】
搬送手段15の下流側近傍には補助ローラー18が設けられており、この補助ローラー18により、媒体の浮き上がりが規制されるようになっている。ここで搬送従動ローラー17と補助ローラー18は、上部案内部材19に回転自在に支持されており、例えば1つの上部案内部材19に対して、搬送従動ローラー17と補助ローラー18とがそれぞれ2つ軸支されている。
【0026】
上部案内部材19は、揺動軸19aを中心に揺動可能に設けられているとともに、図示を省略する付勢手段(例えば、コイルばね)によって、搬送従動ローラー17が搬送駆動ローラー16に圧接する方向に付勢された状態となっている。
【0027】
次いで搬送手段15の下流側には、液体の一例としてのインクを吐出する、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッド22と、このインクジェット記録ヘッド22と対向配置される媒体案内部材23とが設けられている。インクジェット記録ヘッド22は、キャリッジ21の底部に設けられ、このキャリッジ21は図示しないモーターの動力により主走査方向に往復移動する。また、媒体案内部材23は、媒体を下方から支持することにより、媒体の記録面とインクジェット記録ヘッド22のヘッド面との間の距離(ギャップ)を規定する。
【0028】
尚、キャリッジ21は図示しないギャップ調整手段により上下方向、即ち上記ギャップが変化する方向に変位可能となっている。これにより、媒体の厚みに拘わらず、媒体の記録面とインクジェット記録ヘッド22のヘッド面との間の距離(ギャップ)を一定に保つことが可能となっている。
【0029】
媒体案内部材23には、インクジェット記録ヘッド22と対向する位置に、媒体搬送方向に延びるリブ23a、23b、23cが、媒体搬送方向に所定の間隔を空けて配置されており、またこれらリブ23a、23b、23cは主走査方向に所定の間隔を空けて複数配置されている。各被記録媒体は、これらリブ23a、23b、23cによって下から支持されることにより、インクジェット記録ヘッド22との距離(ギャップ)が規定される。
【0030】
媒体案内部材23において各リブ23a、23b、23cの間には、溝23dが形成されている。溝23dは、図2にも示すように主走査方向(x方向)に延びており、そしてその内部には第1のインク吸収材24が挿入されている。媒体端部に縁無し記録を行う場合には、媒体端部が溝23dの上方に位置した状態で、媒体端部および当該端部から外れた領域に対してもインク吐出を行う。これにより、媒体端部から外れた領域に対して吐出されたインクが、溝23dに打ち捨てられ、そして第1のインク吸収材24によって吸収されることとなる。即ち、溝23dは、液体としてのインクを打ち捨てる液体打ち捨て部を構成する。
【0031】
ここで、第1のインク吸収材24によって吸収されたインクは、溝23dの底部に形成された排出穴23eを介して、媒体案内部材23の下方に設けられた廃液トレイ33に向けて排出される。廃液トレイ33には、第2のインク吸収材34が設けられており、排出されたインクは、この第2のインク吸収材34によって保持されるようになっている。尚、図1、図3においては符号34A、34Bを用いて第2のインク吸収材を図示しているが、以下ではこれらを区別する必要の無い場合には「第2のインク吸収材34」と言うこととする。そしてこの第2のインク吸収材34については、後に詳説する。
【0032】
次いで、インクジェット記録ヘッド22の下流側には、被記録媒体を排出する排出手段として第1媒体排出手段25と、第2媒体排出手段28と、が設けられている。第1媒体排出手段25は、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される第1排出駆動ローラー26と、当該第1排出駆動ローラー26との間で媒体をニップすることで従動回転する第1排出従動ローラー27と、を備えて構成されている。
【0033】
また同様に、第2媒体排出手段28は、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される第2排出駆動ローラー29と、当該第2排出駆動ローラー29との間で媒体をニップすることで従動回転する第2排出従動ローラー30と、を備えて構成されている。そして第1媒体排出手段25と第2媒体排出手段28とにより、記録の行われた被記録媒体、ここでは特に上述した第1の被記録媒体(普通紙等)と第2の被記録媒体(専用紙等)が、図示を省略する排紙スタッカーに向けて排出される。
【0034】
尚、第1排出駆動ローラー26及び第2排出駆動ローラー29は、本実施形態ではゴムローラーであり、第1排出従動ローラー27及び第2排出従動ローラー30は、本実施形態では外周に沿って突起(歯)を複数有するギザローラーである。
【0035】
次に、第2媒体排出手段28の下流には、補助ガイド11と、手差し給送用ガイド10とが設けられている。手差し給送用ガイド10は、媒体を支持する支持面10aがほぼ水平のままで装置前後方向への変位を伴い、支持面10aが手差し給送経路(第3媒体搬送経路)を構成して媒体を支持可能な第1位置と(不図示)、支持面10aが媒体搬送経路から退避する第2位置と(図1の状態)、の間を変位可能に設けられている。そしてこの補助ガイド11と手差し給送用ガイド10が、第3媒体搬送経路を構成する状態で、第3の被記録媒体を支持することとなる。
【0036】
続いて、図3を参照しながらインク吸収材について詳説する。媒体案内部材23に設けられた第1のインク吸収材24と、廃液トレイ33に設けられた第2のインク吸収材34は、いずれも高いインク吸収性を有し、かつインクによって侵されにくい(耐インク性が高い)性能を有するものが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート、アクリル、レーヨン等の合成繊維やパルプなどを原料とするフェルト材、或いは、スポンジなどの多孔質材を用いることができる。
【0037】
尚、本実施形態では第1のインク吸収材24にスポンジ(例えば、商品名「エバーライト」、ブリヂストン(株)製)を用い、第2のインク吸収材34に不織布(例えば、商品名「フジロン」、フジコー(株)製)を用いている。
【0038】
次に、図1、図3に示すように、媒体案内部材23の溝23dの底部に形成された排出穴23eからは、第1のインク吸収材24に一体に形成された、液体ガイド手段としてのインクガイド部24aが下方に垂れ下がるようになっており、そしてその先端を多少折り曲げた状態で第2のインク吸収材34の上面に接するようになっている。従ってこのようなインクガイド部24aにより、第1のインク吸収材24から第2のインク吸収材34へと、円滑にインクが導かれるようになっている。
【0039】
尚、このインクガイド部24aは、本実施形態では第1のインク吸収材24と一体に形成し、即ち第1のインク吸収材24と同じ素材で形成されているが、これに限られず、他の素材で形成しても良い。その様な素材としては、例えば、ポリビニルホルマール系スポンジ(例えば、ベルイータ(カネボウ化成株式会社の商品名))を利用することができる。
【0040】
ここで、本実施形態において第2のインク吸収材34は、インク保持領域34Aと、インク導入領域34Bと、によって構成されている。この二つの領域の違いは、インク保持領域34Aについては装置を輸送時などに傾けられた際に、容易にインクが溢れ出ないことを目的として構成されるのに対し、インク導入領域34Bについては、インクガイド部24aから速やかにインクを受け取ることを目的として構成される点にある。
【0041】
具体的には、第2のインク吸収材34はインク吸収性を有するシート材を積重することによって構成されるが、このシート材については平坦面(おもて面、うら面)がシート加工によって比較的「密」に形成されたことにより、或いは、何らかの表面処理が施されることによって、インク吸収性が若干低くなっているのに対し、シート材を切断した際の切断面については、その面が比較的「粗」であることによってインク吸収性が平坦面(おもて面、うら面)よりも良好となっている。また、逆に一旦インクを吸収した後は、平坦面(おもて面、うら面)のほうが、切断面よりも、比較的保持されたインクが漏出し難くなっている。尚、上記インク吸収性やインク保持性の高低とは、あくまで平坦面(おもて面、うら面)と切断面とを相対的に比較したものである。
【0042】
そこでこの様な性質を利用して、装置を傾けた際に容易にインクが溢れ出ないことを目的として構成されるインク保持領域34Aについては、廃液トレイ33の底部から上方に向かって、縦方向にシート材が積層されて構成されている。これにより、装置が輸送時等に傾けられた場合であっても、保持されたインクが容易に漏出することが防止されている。
【0043】
そしてインクガイド部24aが接するインク導入領域34Bについては、インク保持領域34Bとはシート材の積重方向が異なっており、即ち切断面が第2のインク吸収材34の上面を構成するように、インク保持領域34Bにおけるシート材の積重方向と交差する方向(横方向)に積重されている。これにより、インクガイド部24aは、シート材の切断面と接することとなり、インクガイド部24aから第2のインク吸収材34へと、円滑にインクが受け渡されるようになっている。
【0044】
尚、インク保持領域34Aには開口部B(図3(A))が形成されており、この開口部Bにインク導入領域34Bが組み込まれる様になっている。換言すれば、インク導入領域34Bの周囲には、インク保持領域34Aが接触状態で存在しており、この為インク導入領域34Bに吸収された廃インクは、当該インク導入領域34Bと接しているインク保持領域34Aに、速やかに移行するようになっている。特に、インク保持領域34Aにおいてインク導入領域34Bと接する面は、切断面で構成されるので、これによってより一層速やかに、インク導入領域34Bからインク保持領域34Aへと廃インクが移行する様になっている。
【0045】
以上説明した実施形態は一例であり、その他種々の形態をとり得ることは言うまでもない。例えば、本実施形態では主に縁無し記録の為に、被記録媒体の端部から外れて打ち捨てられたインクを回収する構成において、上記の通りインク導入領域34B及びインク保持領域34Aによって第2のインク吸収材34を構成した。しかし、例えば縁無し記録に限らず、インク吐出機能回復のためのフラッシング用の溝(不図示)に打ち捨てられたインクを回収する構成において、上述したようなインク導入領域34B及びインク保持領域34Aによって構成された第2のインク吸収材34を利用することもできる。また、インクジェット記録ヘッド22をキャップするキャップ装置(不図示)に負圧を供給するポンプ装置(不図示)から排出されたインクを回収する構成に適用することもできる。この場合、インクガイド部24aに代えて、インクを排出するチューブ(不図示)の先端をインク導入領域34Bに接触させることが考えられる。
【0046】
また、以上の通り本実施形態では本発明を液体噴射装置の一例としての記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
【0047】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンター、10 手差し給送用ガイド、11 補助ガイド、15 搬送手段、16 駆動ローラー、17 従動ローラー、18 補助ローラー、19 上部案内部材、21 キャリッジ、22 インクジェット記録ヘッド、23 媒体案内部材、23a〜23c リブ、23d 溝、23e 排出穴、24 第1インク吸収材、24a インクガイド部、25 第1媒体排出手段、26 第1排出駆動ローラー、27 第1排出従動ローラー、28 第2媒体排出手段、29 第2排出駆動ローラー、30 第2排出従動ローラー、33 廃液トレイ、34 第2インク吸収材、34A インク保持領域、34B インク導入領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
液体を打ち捨てる液体打ち捨て部に設けられた液体排出穴を介して排出される液体を収容する廃液トレイと、
前記廃液トレイ内に設けられた、液体を吸収する液体吸収材と、
一部が前記液体吸収材と接する状態に設けられた、前記液体排出穴から前記液体吸収材へと液体を導く液体ガイド手段と、を備え、
前記液体吸収材は、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域が、前記廃液トレイの底部から上方に向かって液体吸収性を有するシート材を積層させることにより構成され、
前記液体ガイド手段と接する部分が、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域におけるシート材の積層方向と交差する方向にシート材を積層させて構成されたことにより、前記シート材の切断面が前記液体ガイド手段と接している、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと対向して設けられ、被噴射媒体を下方から支持することにより被噴射媒体と前記液体噴射ヘッドとの距離を規定する被噴射媒体支持部材と、
前記被噴射媒体支持部材に形成された液体打ち捨て溝に設けられた、液体を吸収する第1の液体吸収材と、
前記液体打ち捨て溝の底部に設けられた液体排出穴を介して排出される液体を収容する廃液トレイと、
前記廃液トレイ内に設けられた、液体を吸収する第2の液体吸収材と、
一部が前記第2の液体吸収材と接する状態に設けられた、前記液体排出穴から前記第2の液体吸収材へと液体を導く液体ガイド手段と、を備え、
前記第2の液体吸収材は、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域が、前記廃液トレイの底部から上方に向かって液体吸収性を有するシート材を積層させることにより構成され、
前記液体ガイド手段と接する部分が、前記液体ガイド手段と接する部分を除く領域におけるシート材の積層方向と交差する方向にシート材を積層させて構成されたことにより、前記シート材の切断面が前記液体ガイド手段と接している、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91408(P2012−91408A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240881(P2010−240881)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】