説明

液体噴射装置

【課題】単色を複数個のインクジェットヘッドで印刷する液体噴射記録装置において、単一の液体収容体から複数個の液体噴射ヘッドへ液体を供給し、一つの液体噴射ヘッドに内蔵した圧力検知手段により、全液体噴射ヘッド内の圧力が液体吐出に最適な圧力になるよう制御する。
【解決手段】液体を貯留する収容室を備えた液体収容体50に一端が接続される第一液体供給管51aの他端に接続される液体供給手段と、液体供給手段に一端が接続される第二液体供給管51bの他端に接続される分岐部80と、分岐部80に一端が接続される複数の第三液体供給管51cの他端にそれぞれ接続される複数の液体噴射ヘッド4とを備え、液体収容体50から複数の液体噴射ヘッド4へ液体を供給する液体噴射装置において、複数の液体噴射ヘッド4の一つに圧力検知手段を配置し、圧力検知手段の圧力値に基づいて液体供給手段を制御し、複数の液体噴射ヘッドへ液体を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被記録媒体に液体を噴射する装置には複数の噴射口から被記録媒体に向かって液滴を噴射する液体噴射記録装置が知られている。液体噴射記録装置には、例えば液体を一滴あたり数〜数十ピコリットル程度の液滴として噴射する液体噴射ヘッドを備えたものがある。このような微小な液滴を噴射する液体噴射ヘッドは、良好な吐出を実現するために噴射口内の液体が噴射に最適な状態になるように制御されている。ここで、噴射に最適な状態とは噴射口内の液体の圧力が負圧になり噴射口内部でメニスカスが形成されていることである。このような圧力調整を行うために、液体収容体から液体噴射ヘッドまでの液体の流路の一部に液体の圧力を調整する手段が設けられた装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体噴射ヘッド内部の圧力を適正な値に調整するための構成を備えたインクジェット記録装置が記載されている。この液体噴射記録装置は、液体収容体から液体噴射ヘッドまでの液体供給路内部もしくは液体噴射ヘッド内部に圧力を検知する圧力検知手段と、液体供給管内部の圧力を変更する変圧手段と、圧力検知手段の検知結果に基づいて、変圧手段を制御する圧力制御手段が設けられている。
【0004】
この液体噴射記録装置によれば、液体供給管内部もしくは液体噴射ヘッド内部の圧力を常に安定吐出に必要な値に制御することが出来、安定した液体吐出を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−127418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液体噴射記録装置の構成では、一つの液体噴射ヘッドに対し圧力検知手段の圧力計や変圧手段の変圧ポンプといった複数の構成要素が必要であり、液体噴射ヘッドの数が増えるほど液体噴射記録装置の要素数が増加する。また、公知の圧力検知手段を内蔵している液体噴射ヘッドを用いることが出来るが、この液体噴射ヘッドは圧力検知手段を内蔵していない液体噴射ヘッドに対して高価である。
【0007】
大型の液体噴射記録装置の中には、従来の各色の液体を色毎に一つの液体噴射ヘッドで吐出するのではなく、各色の液体を色毎に複数の液体噴射ヘッドで吐出することで、素早く広い範囲に印刷するような液体噴射記録装置がある。このような場合では、液体噴射記録装置の要素数の増加や液体噴射ヘッドの値段の増加が大きな問題となる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単一の液体収容体から複数個の液体噴射ヘッドへ液体を供給し、一つの液体噴射ヘッドに内蔵された圧力検知手段によって、全ての液体噴射ヘッド内の圧力が液体の吐出に最適な圧力になるよう制御を行うことである
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の液体噴射記録装置は、液体を貯留する液体収容体と、前記液体収容体に一端が接続される第一液体供給管と、前記第一液体供給管の他端に接続される液体供給手段と、前記液体供給手段に一端が接続される第二液体供給管と、前記第二液体供給管の他端に接続される分岐部と、前記分岐部に一端が接続される複数の第三液体供給管と、前記複数の第三液体供給管の他端にそれぞれ接続される複数の液体噴射ヘッドと、を備える液体噴射装置において、前記複数の液体噴射ヘッドの一つに圧力検知手段を配置し、前記圧力検知手段の圧力値に応じて前記液体供給手段を制御する構成であって、圧力検知手段を備えた液体噴射ヘッドにより圧力を測定し、全ての液体噴射ヘッドへの液体の供給量を印刷に適した量に制御することを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、単色を複数個の液体噴射ヘッドで印刷するような液体噴射記録装置において、液体収容体と液体噴射ヘッド間の要素数を極力少なくし、かつ液体供給路内部の圧力を検出し、液体噴射ヘッドの内圧を噴射に適した値に制御可能な液体噴射記録装置を提供することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特徴によれば、単色を複数個の液体噴射ヘッドで印刷するような液体噴射記録装置において、液体収容体と液体噴射ヘッド間の要素数を極力少なくし、かつ一つの液体噴射ヘッドに内蔵された圧力検知手段によって、全ての液体噴射ヘッドの内圧を噴射に適した値に制御可能な液体噴射記録装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体噴射記録装置を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る液体噴射記録装置における圧力緩衝器を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る液体噴射記録装置におけるインク供給系を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係る液体噴射記録装置における圧力変化を示すグラフである。
【図5】本発明に係る液体噴射記録装置における圧力制御のためのフローチャートである。
【図6】本発明の第一の実施形態に係る液体噴射記録装置における圧力検知手段を持つ圧力緩衝器を持つ液体噴射ヘッドで吐出を行う場合のインク供給系を示す概略図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る液体噴射記録装置における圧力検知手段を持たない圧力緩衝器を持つ液体噴射ヘッドで吐出を行う場合のインク供給系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の液体噴射記録装置について図1から図3を参照して説明する。
図1は、液体噴射記録装置を示す斜視図である。液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体sを搬送する一対の搬送手段2、3と、被記録媒体sに液体を噴射する複数の液体噴射ヘッド群4と、液体噴射ヘッド群4に液体を供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド群4を被記録媒体sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向、そしてX方向およびY方向にともに直交する方向をZ方向として説明する。なお、図1に示す液体噴射ヘッド群4(4y、4m、4c、4b)は、それぞれ単一の液体噴射ヘッドではなく、それぞれ複数の液体噴射ヘッドを有する“液体噴射ヘッド群”である。詳細は、図3を用いて説明する。
【0014】
一対の搬送手段2、3は、それぞれ副走査方向に延びて設けられたグリッドローラ20、30と、グリッドローラ20、30のそれぞれに平行に延びるピンチローラ21、31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20、30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0015】
液体供給手段5は、液体が収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド群4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数備えられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体が収容された液体収容体50y、50m、50c、50bが並べて設けられている。液体タンク50y、50m、50c、50bのそれぞれにはポンプモーターmが設けられており、液体を液体供給管51を通じて液体噴射ヘッド群4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド群4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0016】
走査手段6は、副走査方向に延びて設けられた一対のガイドレール60、61と、一対のガイドレール60、61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62を副走査方向に移動させる駆動機構63と、を備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60、61の間に配設された一対のプーリ64、65と、一対のプーリ64、65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0017】
一対のプーリ64、65は、一対のガイドレール60、61の両端部間にそれぞれ配設されており、副走査方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は一対のガイドレール60、61間に配設されており、この無端ベルトにはキャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには複数の液体噴射ヘッド群4が搭載されており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体に対応する液体噴射ヘッド群4y、4m、4c、4bが任意の個数ずつ副走査方向に並んで搭載されている。図1には各種類の液体を代表する一つのヘッドを図示した。
【0018】
図2は、液体噴射ヘッド群4を示す斜視図である。図2に示すように、液体噴射ヘッド群4は、被記録媒体s(図1参照)に対して液体を噴射する噴射部70と、噴射部70と電気的に接続された制御回路基板80と、噴射部70と液体供給管51との間に介在されて液体供給管51から噴射部70へ液体の圧力変動を緩衝しながら流通させる圧力緩衝器90と、をベース41、42上に備える。なお、ベース41、42は一体成形とされていても構わない。
【0019】
噴射部70は、圧力緩衝器90に接続部72を介して接続された流路基板71と、主走査方向に並べて配置されたセラミック製のプレート等を有し液体を液滴として被記録媒体sへと噴射させるアクチュエータ73と、アクチュエータ73と制御回路基板80とに電気的に接続されアクチュエータ73の圧電素子に対して駆動信号を伝送するためのフレキシブル配線74とを備える。
【0020】
制御回路基板80は、液体噴射記録装置1の本体制御部100(不図示)からのピクセルデータ等の信号に基づいてアクチュエータ73の駆動パルスを生成する。
制御回路基板80は、液体噴射記録装置1の本体制御部100(不図示)からのピクセルデータ等の信号に基づいてアクチュエータ73の駆動パルスを生成する制御手段81と、制御回路基板80に設けられたサブ基板82と、を備える。また、サブ基板82上には、圧力緩衝器90から延びるコネクタ95(詳細は後述)と接続されたソケット85と、ソケット85に電気的に接続されたセンサー回路部83と、センサー回路部83と本体制御部100(不図示)とを接続するためのソケット84と、を備える。
【0021】
圧力緩衝器90は、本体部91とカバー92とが接続されて形成されており、本体部91がベース42に固定可能である。また、本体部91には、液体供給管51に着脱可能かつ水密に取り付けられた接続部93と噴射部70の接続部72と着脱可能かつ水密に取り付けられた接続部94とが形成されている。この圧力緩衝器90に、図3で示す第三液体供給管51cが接続されている。
【0022】
図3は、本願発明に係る液体噴射記録装置におけるインク供給系を示す概略図である。図3に示すように、本願発明の構成は、液体収容体50と、ポンプモーターmと、2つの液体噴射ヘッドである第一液体噴射ヘッド4b−1、第二液体噴射ヘッド4b−2から成り立っており、第一液体噴射ヘッド4b−1に内蔵された圧力緩衝器90には圧力検出手段が設置されている。また、上述したように、図1には各種類の液体を代表する一つのヘッドを図示している。そのため、例えば、図1に示した液体噴射ヘッド4bは、第一液体噴射ヘッド4b−1、第二液体噴射ヘッド4b−2を含んでおり、液体噴射ヘッド4bを複数の液体噴射ヘッド群として図3に示す。他の液体噴射ヘッド4c,4mおよび4yについても同様に、それぞれが液体噴射ヘッド群を構成している。
【0023】
なお、本実施形態においては、2つの第一液体噴射ヘッド4b−1、第二液体噴射ヘッド4b−2が接続された場合を示したが、2つ以上の液体噴射ヘッドを接続しても構わない。図3では、この場合を想定して、分岐点80(詳細は後述)から第二液体噴射ヘッド4b−2より離れた位置に配置される第三液体噴射ヘッドを点線で記載した。もちろん、第三液体噴射ヘッドだけでなく、第四、第五と液体噴射ヘッドを増やすことは可能である。
【0024】
その構成は、液体が収容された液体収容体50に第一液体供給管51aが連通しており、液体収容体50の水平位置における上位に位置するポンプモーターmを用いて、液体収容体50から第一液体供給管51aへ液体を排出する。ポンプモーターmによって引き上げられた液体は、ポンプモーターmの下流に接続される第二液体供給管51bに送液される。ここで、ポンプモーターmは公知のチューブポンプなどを用いることができる。
【0025】
第二液体供給管51bは、ポンプモーターmから所定距離の位置において、分岐部80に接続されている。分岐部80は、第二液体供給管51bを、下流にある第三液体供給管51c−1と第三液体供給管51c−2に分岐させる役割を担っている。なお、第三液体噴射ヘッドを用いることにより、必要があれば、図3に点線で図示する第三液体供給管を分岐点80に接続する。この場合の第三液体供給管について、分岐点80から第三液体噴射ヘッドまでの長さ及び径は、第三液体供給管51c−2と同じ長さである。
【0026】
第三液体供給管51c−1は第一液体噴射ヘッド4b−1に連結しており、第三液体供給管51c−2は第二液体噴射ヘッド4b−2に連結している。以上の通り、液体は液体収容体50から複数の液体噴射ヘッド群4へ供給される。
【実施例1】
【0027】
以上に説明する構成の、本実施形態の液体噴射記録装置の作用について図4から図6を参照しながら説明を行う。
図4は第一液体噴射ヘッド4b−1で液体を吐出し圧力が変化したときに、もう一方の第二液体噴射ヘッド4b−2内の圧力がどのように変化するかを示した図である。今、第一液体供給管51aと第二液体供給管51bの間の圧力のやり取りはポンプモーターmの動作のみで行う。よって、液体噴射ヘッド群4の噴射口にメニスカスが形成されている状態で、ポンプモーターmが停止していれば、第一液体供給管51aと第二液体供給管51bの間を閉塞されているので、ポンプモーターより下流の圧力環境は閉じた系となる。
【0028】
いま、第一液体噴射ヘッド4b−1で吐出を行うと、吐出を行った第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力が低下し、パスカルの原理によって、第二液体供給路51bから各液体噴射ヘッド群4間の圧力は一定になろうとする。もし、ポンプモーターmが止まっていれば、一定時間経過後に各液体噴射ヘッド群4の圧力は等しくなる。
【0029】
具体的に、第一液体噴射ヘッド4b−1の吐出開始までの期間をA期間、第一液体噴射ヘッド4b−1の吐出開始から吐出終了までの期間をB期間、第一液体噴射ヘッド4b−1の吐出終了から所定時間までの期間をC期間、所定時間以降をD期間として検討する。
【0030】
A期間において、第一液体噴射ヘッド4b−1と第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力値は、同じ値に設定されている。
B期間において、第一液体噴射ヘッド4b−1の液体吐出に伴い、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力値は低下し、第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力値も低下する。第二液体噴射ヘッド4b−2から第三液体供給管51c−2と、第三液体供給管51c−1と、を介して、第一液体噴射ヘッド4b−1へ液体が補填されたためである。
【0031】
C期間において、第一液体噴射ヘッド4b−1の液体吐出は終了し、圧力値はB期間とC期間の境界での値より低下しない。しかし、第三液体供給管51c−2、第三液体供給管51c−1が所定の流路体積を有していることと、第二液体噴射ヘッド4b−2から第一液体噴射ヘッド4b−1が閉じられた系であることに起因して、第一液体噴射ヘッド4b−1の液体吐出は終了したあとにも、第二液体噴射ヘッド4b−2から第一液体噴射ヘッド4b−1へ所定時間まで第二液体噴射ヘッド4b−2から第一液体噴射ヘッド4b−1へ液体の流入が継続する。
【0032】
D期間において、所定時間以降は、第二液体噴射ヘッド4b−2から第一液体噴射ヘッド4b−1までの範囲で、液体の流入はされず、第一液体噴射ヘッド4b−1と第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力値は、同じ所定の圧力値となる。
【0033】
第一液体噴射ヘッド4b−1で吐出すると、ポンプモーターmが動作していない限り、第一液体噴射ヘッド4b−1内の圧力が低下し、これに伴い第三液体供給管51c−1内の圧力も低下する。また、上述した、パスカルの原理により、第二液体噴射ヘッド4b−2につながった第三液体供給管51c−2および第二液体噴射ヘッド4b−2内の圧力も下がる。
【0034】
第一液体噴射ヘッド4b−1に内蔵した圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dによって、圧力を測定し、この値がある閾値になると、ポンプモーターmを動作させる。ここでポンプモーターmを動作させる閾値は、液体噴射ヘッド群4が適正にインクを吐出できる圧力領域の中央値にすることが好ましい。
【0035】
図5は、液体噴射記録装置における内圧制御のフローチャートである。以下、図5を用い、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dによってポンプモーターmを制御し、圧力を適切な値に収める方法について説明する。今、液体噴射記録装置1が印刷を開始すると、同時に圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dによって、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力の測定を開始する。
【0036】
次に、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dで測定した圧力と閾値を比較し、測定した圧力が閾値より大きいときは、圧力を維持する。これに対し、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dで測定した圧力が閾値より小さいときは、ポンプモーターmにより送液を行い、再度、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dで測定した圧力と閾値を比較する。このとき、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dで測定した圧力が閾値より小さい場合は、加圧を行うステップまで戻り、圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dで測定した圧力が閾値より大きい場合は、圧力を維持する。
【0037】
最後に、印刷を終了するか判定を行い、印刷を続ける場合は、上記で説明した処理をはじめから行い、終了の判定となるまで繰り返す。
【0038】
図6は、第一液体噴射ヘッド4b−1で吐出を行う場合のインク供給系の詳細を示す概略図である。第三液体供給管51c−1は第三液体供給管51c−2に比べて径が太い。例えば、第三液体供給管51c−1の径は4mmで、第三液体供給管51c−2の径は2mmである。これは、上記で説明した方法で、一つの圧力検知手段dで複数の液体噴射ヘッド群4の圧力が吐出に適した値になるよう、ポンプモーターmを制御するためには、吐出している液体噴射ヘッド群4に接続された第三液供給管51cが、吐出を行っていない液体噴射ヘッド群4に接続された第三液体供給管51cと比較し、圧力の損失が小さくなくてはならないためである。
【0039】
これは、各液体噴射ヘッド4と圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dとの距離が異なると、圧力損失の違いによって圧力の低下を検出するまでの時間に遅れが生じるためである。
よって、圧力損失が小さければ良いので、第三液体供給管51c−1は第三液体供給管51c−2に比べて長さが短いか、液体供給管内の流路抵抗が小さくても良い。
【0040】
第一液体噴射ヘッド4b−1で吐出を行うと、第一液体噴射ヘッド4b−1内の圧力が減少する。これに伴い、第一液体噴射ヘッド4b−1に接続された第三液体供給管51c−1の圧力が低下し、第三液体供給管51c−2と第二液体噴射ヘッド4b−2の内部圧力も上述したパスカルの原理によって第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力に連動して減少する。
【0041】
今、第一液体噴射ヘッド4b−1に内蔵した圧力緩衝器90に圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dが設置されているので、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力が閾値まで下がると、ポンプモーターmによって第一液体供給管51aから第二液体供給管51bへと送液が行われる。この瞬間、第二液体噴射ヘッド4b−2の低下は第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力低下から遅れるため、第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力は閾値となる圧力値まで下がっていない。
【0042】
送液が始まると、第一液体噴射ヘッド4b−1に接続された第三液体供給管51c−1の圧力損失が第二液体噴射ヘッド4b−2に接続された第三液体供給管51c−2の圧力損失に比べて小さいので、第一液体噴射ヘッド4b−1に多くの液体が送液され第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力が回復する。また、第二液体噴射ヘッド4b−2へは第一液体噴射ヘッド4b−1よりも液体が供給されないため、第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力上昇は小さく、適正な圧力値の状態を保てる。よって、どのヘッドの圧力も適正な圧力領域の平均値近傍において常に適正な値内で増減するので、液体の吐出に適した圧力値を保つことができる。
【実施例2】
【0043】
図7は、第二液体噴射ヘッド4b−2で吐出を行う場合のインク供給系の詳細を示す概略図である。本実施形態においては、第三液体供給管51c−2は第三液体供給管51c−1に比べて径が太い。例えば、第三液体供給管51c−1の径は2mmで、第三液体供給管51c−2の径は4mmである。ここで、圧力損失が小さければよいので、第三液体供給管51c−2は第三液体供給管51c−1に比べて長さが短いか、液体供給管内の流体抵抗が小さくても良い。
【0044】
第二液体噴射ヘッド4b−2で吐出を行うと、第二液体噴射ヘッド4b−2内の圧力が減少する。これに伴い、第二液体噴射ヘッド4b−2に接続された第三液体供給管51c−2の圧力が低下し、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力も上述したパスカルの原理によって第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力に連動して減少する。
【0045】
今、第一液体噴射ヘッド4b−1に内蔵した圧力緩衝器90に圧力緩衝器90に設置された圧力検知手段dが設置されているので、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力が閾値まで下がると、ポンプモーターmによって第一液体供給管51aから第二液体供給管51bへと送液が行われる。この瞬間、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力低下は第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力低下より遅れるため、第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力は閾値となる圧力値より低い値になる。
【0046】
送液が始まると、今第一液体噴射ヘッド4b−1に接続された第三液体供給管51c−1より第二液体噴射ヘッド4b−2に接続された第三液体供給管51c−2における圧力損失が小さいので、第二液体噴射ヘッド4b−2に多くの液体が送液され第二液体噴射ヘッド4b−2の圧力が回復する。また、第一液体噴射ヘッド4b−1は第二液体噴射ヘッド4b−2よりも液体が供給されないため、第一液体噴射ヘッド4b−1の圧力上昇は小さく、閾値からさほど上昇しないため、適正な圧力値の状態を保てる。よって、どのヘッドの圧力も適正な圧力領域の平均値近傍で常に適正な値内で増減するので、液体の吐出に適した圧力値を保つことが可能である。
【0047】
上記の形態をとることで、印刷中の全ての液体噴射ヘッド群4の圧力を常に印刷に適した圧力領域内に収めることが出来る。
【0048】
なお、第三液体供給管51cは、液体噴射ヘッド群4の間で自由に取り外し及び接続が可能である。第三液体供給管51cは、一端が分岐部80に接続され、他端が液体噴射ヘッド4の圧力緩衝器90の接続部93に接続されている(図2参照)。取り外し及び接続について、以下に詳述する。
【0049】
液体噴射ヘッド群4へのインク供給が上述の通り実施された場合、各液体噴射ヘッド群4の圧力値は均衡している。ここで、ポンプモーターmにおいて第一液体供給管51aと第二液体供給管51bの間を閉塞する。つまり、各液体噴射ヘッド群4の圧力値を均一に保ったまま、ポンプモーターmより下流の流路系を閉じた系にする。
【0050】
そして、接続部93において、流路交換の対象となる液体噴射ヘッド群4の第三液体供給管51cを取り外す。例えば、図6から図7への流路交換においては、第三液体供給管51c−1および第三液体供給管51c−2をそれぞれ接続部93から取り外し交換し合う。ここで、ポンプモーターmより下流側は閉じた系となっているため、第三液体供給管51cを接続部93から取り外した際に、インクが漏れることは無い。また、第三液体供給管51cは可撓性のチューブであるため、径の大きさにかかわらず、接続部93において容易に取り付けることができる。これによって、図6から図7への第三液体供給管51cの交換が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 液体噴射記録装置
4 液体噴射ヘッド
5 液体供給手段
50 液体収容体
51 液体供給管
70 噴射部
90 圧力緩衝器
80 分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する収容室を備えた液体収容体と、前記液体収容体に一端が接続される第一液体供給管と、前記第一液体供給管の他端に接続される液体供給手段と、前記液体供給手段に一端が接続される第二液体供給管と、前記第二液体供給管の他端に接続される分岐部と、前記分岐部に一端が接続される複数の第三液体供給管と、前記複数の第三液体供給管の他端にそれぞれ接続される複数の液体噴射ヘッドと、を備え、前記液体収容体から前記第一液体供給管、前記液体供給手段、前記第二液体供給管、前記分岐部および前記複数の第三液体供給管を介して前記複数の液体噴射ヘッドへ液体を供給する液体噴射装置において、
前記複数の液体噴射ヘッドの一つに圧力検知手段を配置し、前記圧力検知手段の圧力値に基づいて前記液体供給手段を制御し、全ての前記複数の液体噴射ヘッドへ液体を供給する液体噴射装置。
【請求項2】
前記複数の第三液体供給管のうち、前記液体の吐出を行う前記圧力検知手段を配置した液体噴射ヘッドに接続される吐出第三液体供給管は、前記液体の吐出を行わない他の液体噴射ヘッドに接続された非吐出第三液体供給管より流路抵抗が小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記複数の第三液体供給管のうち、前記液体の吐出を行う前記圧力検知手段を配置していない液体噴射ヘッドに接続される吐出第三液体供給管は、前記液体の吐出を行わない他の液体噴射ヘッドに接続された非吐出第三液体供給管より流路抵抗が小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記吐出第三液体供給管は、前記非吐出第三液体供給管より管の直径が大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記吐出第三液体供給管は、前記非吐出第三液体供給管より管の長さが短いことを特徴とする請求項2または3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記吐出第三液体供給管は、前記非吐出第三液体供給管と交換可能であることを特徴とする請求項2または3に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6358(P2013−6358A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140849(P2011−140849)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】