説明

液体噴霧用ノズル

【課題】 噴霧時、ドリフトの低減を図ることが出来ながら、しかも付着効果の優れた液体噴霧用ノズルを提供する。
【解決手段】 薬液などの液体の噴霧孔を備えた噴板が筒状のノズル本体における液体通路の出口に設けられている噴霧ノズルにおいて、液体通路内には、一端開口が噴孔と対向して液体を噴孔に向けて案内するための液体整流用通路を備えた液体整流体が設けられ、この液体整流体はノズル本体に対して取り外し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば農作物に肥料や薬液等を散布するための撒布装置に用いられる液体噴霧用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の噴霧用ノズルは、図6に概略的に示すように、液体圧送用ポンプの吐出口に連結された液体供給ホースAの先端部に嵌着されるジョイント部材Bと、このジョイント部材Bの先端部にナットCを介して連結された円筒状のノズル本体Dと、このノズル本体Dの先端開口部に組み付けられる噴板Eとから構成され、噴板Eの中央には、噴霧孔Fが開設され、液体タンクから液体圧送用ポンプを介して送られて来る薬液を噴霧孔Fから霧状に噴射させるようにしている。
【0003】
ところで以上の構成の噴霧用ノズルでは、液体圧送用ポンプを介してノズル本体Dに圧送されてくる薬液がノズル本体Dの液体通路G内で乱流になり易く、液体通路G内で薬液に乱流が生じると、薬液が液体通路G内で衝突を繰り返し、これに伴い、噴板Eの噴霧孔Fから噴霧される薬液の平均粒子径が100μm以下となって、農薬散布時、ドリフト(飛散)が生じ易くなる。
【0004】
しかしながら、近年、例えば水系への農薬の混入を抑制するためや食の安全を確保するために、農薬散布時の薬液のドリフト(飛散)を防止する必要があり、薬液のドリフトを減らすには、平均粒子径が100μm以下のような小さい粒子を発生させないことが重要となる。
【0005】
一方、ドリフトの発生を抑制するのに、例えば薬液に空気を混入して噴霧孔から噴射させる方法もあるが、以上の方法であると、平均粒子径が500μm〜1000μmとなり、ドリフトの発生を抑制することができるにしても、噴霧粒子が前述のごとく500μm〜1000μmとなると、作物や薬剤によっては、作物への薬剤の付着効果が低下するため、得られる薬剤効果に不安が残る不具合がある。
【特許文献1】特開平2−205217
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みて開発したものであって、目的とするところは、噴霧時、ドリフトの低減を図ることが出来ながら、しかも付着効果の優れた液体噴霧用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、薬液の噴霧孔を備えた噴板が筒状のノズル本体における液体通路の出口に設けられている噴霧ノズルにおいて、液体通路内には、一端開口が噴孔と対向して薬液を噴孔に向けて案内するための液体整流用通路を備えた液体整流体が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体整流体がノズル本体に対して取り外し可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、液体タンクから液体圧送用ポンプを介して送られて来る薬液がノズル本体の液体通路内に流入し、液体整流体の液体整流用通路内を通過するに伴い、薬液の流れが液体整流用通路内で直進流に整えられるので、薬液の流れが安定な直線流になって、噴板の噴霧孔に導かれ、従来のノズルのように、薬液がノズル本体の液体通路内で乱流して、薬液が液体通路内で衝突を繰り返すようなことが確実に抑制され、これに伴い、農薬散布時、ドリフト(飛散)の発生を抑制することが出来る。
【0010】
請求項2に記載の発明よれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ノズル本体2内に装填する液体整流体を変更することで、噴板の噴霧孔から噴出される薬液の噴霧粒子の平均粒子径を任意変更することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は菜園の施肥や殺虫剤を散布する場合に使用される液体噴霧用ノズルの縦断面図であって、この液体噴霧用ノズル1は、基本的には、
液体圧送用ポンプ(図示せず)の吐出口に連結された液体供給ホース(図示せず)の先端部にジョイント部材10を介して組み付けられる略円筒状のノズル本体2と、
このノズル本体2内の液体通路21の途中に介装されるフィルター3と、
このノズル本体2の先端開口部に組み付けられる噴板4とから構成されている。
【0012】
尚、液体供給ホースは液体圧送用ポンプ(図示せず)の吐出口に連結される。
【0013】
ノズル本体2は、軸線方向に貫通する液体通路21が設けられると共に、この液体通路21の長さ方向途中には、リング状の内向きフランジ22が液体通路21の内周面に一体形成されており、液体通路21の出口側からこの液体通路21内に、フィルター3とリング状のパッキング31とを順次挿入して、このパッキング31と内向きフランジ22とでフィルター3の外周部を挟持するようにしている。
【0014】
フィルタ3は、例えば80メッシュ程度の網目の大きさを有する金網から、中央部が略半球状に膨出した帽子状に形成されている。パッキン31はゴムや軟質合成樹脂等の軟質弾性材料から環状に形成されている。
【0015】
またノズル本体2における液体通路21の入口側内周には、ジョイント部材10を螺着するための雌ネジ23が周設され、ノズル本体2における液体通路21の出口側外周には、雄ネジ24が周設され、この雄ネジ24には、ナット25を螺着するようにしている。
る。
【0016】
噴板4は、円板状のステンレス鋼板から成り、その中央部分に球状膨出部41と、この球状膨出部41から径方向に延びる位置決め膨出部42とがプレス成型により形成されると共に、球面状膨出部41に噴霧孔40が開設されている。
【0017】
この噴板4は、円筒状に形成された合成樹脂製のホルダー5の一端側開口部内に組み付けられ、このホルダー5内に後記する液体整流体6を装填した上で、液体通路21の出口側からこの液体通路21内に挿入した上で、ナット25を雄ネジ24に螺締することで、ナット25に設けた係合フランジ部26でホルダー5をノズル本体2の液体通路21内に組み付けるようしている。
【0018】
液体整流体6は、合成樹脂材料から略円板状に形成され、その中央には、一端開口が噴霧孔40と対向して薬液をこの噴霧孔40に向けて案内するための液体整流用通路61がその中央に設けられており、液体整流体6のホルダー5内への装填により、液体整流用通路61の一端開口が噴板4の噴霧孔40と対向するようにしている。
【0019】
実施形態の液体噴霧用ノズル1では、液体整流用通路61の口径φは、2.5mm、長さLは、4mmとし、また液体整流用通路61の一端開口から噴霧孔40までの距離Sは、3.2mmとしている。
【0020】
また、液体整流用通路61と噴体4の噴霧孔40とは、ともにノズル本体2の中心軸線上にあり、互いの孔の中心が一致するように配設されている。
【0021】
尚、液体整流体6はステンレスなどの金属材料から形成してもよい。
【0022】
次に以上の構成から成る噴霧用ノズルの作用を説明する。
【0023】
液体タンクから液体圧送用ポンプを介して送られて来る薬液は、ジョイント部材10を介してノズル本体2の液体通路21内に流入し、液体通路21内においてフィルター3を通過する際に薬液に混入するゴミ等の夾雑物が除去された後、液体整流体6の液体整流用通路61内に流入する。
そして薬液の流れは、この液体整流用通路61内で直進流に整えられて、薬液の流れが安定な直線流になって、噴板4の噴霧孔40に導かれ、この噴霧孔40から外部に霧状に放されるのであり、換言すれば、従来のノズルのように、薬液がノズル本体の液体通路内で乱流して、薬液が液体通路内で衝突を繰り返すようなことが確実に抑制されるのである。
【0024】
これに伴い、噴板4の噴霧孔41から噴霧される薬液の平均粒子径が100μm以下となることがなく、農薬散布時、ドリフト(飛散)の発生が抑制されるのである。
【0025】
ところで、本発明者は、前述の構造の液体噴霧用ノズル1におけるノズル本体2内に液体整流体6を装填したものと装填しないものとを用意して、それぞれの噴霧用ノズル1に圧力1.5MPa(ゲージ圧)に加圧した液体(水)を供給して、噴霧流の状態等を調べる実験を行なった。その結果を表1に示す。
【0026】
尚、表1において、黒塗りの三角印は、ノズル本体2内に液体整流体6を装填した場合の結果を示し、白抜きの三角印はノズル本体2内に液体整流体6を装填しない場合の結果を示している。
【0027】
【表1】

この表1からも明らかなように、ノズル本体2内に液体整流体6を装填しないものでは、噴霧粒子の平均粒子径が200μm以下であったのに対して、ノズル本体2内に液体整流体6を装填したものでは、噴霧粒子の平均粒子径が200〜300μmの範囲内となり、しかも噴霧流の勢いも充分に強かった。
噴霧される薬液の噴霧粒子の平均粒子径が大きくなり、所望の平均粒子径に近づけることが出来ることが判明した。
【0028】
また表2は、噴霧ノズル1に供給する加圧液体の圧力を変えて測定したものであって、丸印が1.0MPa(ゲージ圧)であり、三角印が1.5MPa(ゲージ圧)と四角印が2.0MPa(ゲージ圧)であり、また黒塗りがノズル本体2内に液体整流体6を装填したものであり、白抜きがノズル本体2内に液体整流体6を装填しないものを示している。
【0029】
【表2】


この表2からも明らかなように、圧力が高くなるに従って薬液の噴霧粒子の平均粒子径が小さくなることがわかる。
【0030】
ところで、ノズル本体2内に装填される液体整流体6は、ナット25をノズル本体2から取り外して、噴板4を組み付けたホルダー5と共に液体整流体6を液体通路21から取り出すことが出来、例えば図5に示すような液体整流通路61の長さが短い整流体6を別途用意しておき、用途に応じて、ノズル本体2内に所望の液体整流体6を装填して、薬液の噴霧粒子を任意変更することが出来る。
【0031】
斯くして、以上の噴霧用ノズルにあっては、ノズル本体2内における噴板4の内面側に液体整流通路61を備えた液体整流体6を配置することにより、加圧されている薬液が液体整流通路61により、直進流に整えられて噴霧孔40に導かれるので、薬液の流れが安定したな直線流となって、その結果、噴板4の噴霧孔40から噴出される薬液の噴霧粒子の平均粒子径が100μm以下となるのが抑制されて、農薬散布時、ドリフト(飛散)を防止することが出来るし、またノズル本体2内に装填する液体整流体6を変更することで、噴板4の噴霧孔40から噴出される薬液の噴霧粒子の平均粒子径を任意変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかる噴霧用ノズルの縦断面図。
【図2】噴板の正面図。
【図3】噴板の断面図。
【図4】液体整流体の斜視図。
【図5】図1に示す液体製流体とは異なる液体整流体を装填した噴霧用ノズルの縦断面図。
【図6】従来の噴霧用ノズルの縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 液体噴霧用ノズル
2 ノズル本体
21 液体通路
25 ナット
3 フィルター
4 噴板
40 噴霧孔
5 ホルダー
6 液体整流体
61 液体整流用通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の噴霧孔を備えた噴板が筒状のノズル本体における液体通路の出口に設けられている噴霧ノズルにおいて、 液体通路内には、一端開口が噴孔と対向して液体を噴孔に向けて案内するための液体整流用通路を備えた液体整流体が設けられていることを特徴とする液体噴霧用ノズル。
【請求項2】
液体整流体がノズル本体に対して取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴霧用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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