説明

液体回収装置及び液体噴射装置

【課題】 排出口から排出される液体を円滑に回収することができる液体回収装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 液体回収装置は、排出口34aから排出されるインクを吸収するインク吸収材24と、該インク吸収材24を収容する回収容器20とを備え、該回収容器20の開口部28を通じて前記インクの一部を蒸発させるように構成されている。さらに、液体回収装置は、開口部28を開閉する開閉部材29等と、前記インクが排出される場合には、開口部28を閉塞し、該インクが排出されてから所定時間が経過した後に、開口部28を開放するように開閉部材29等を開閉動作させるCPUとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)が知られている。このプリンタでは、インクの噴射不良を低減するために、インクを噴射するノズルから増粘したインクなどを吐出させるクリーニングが適宜行われている。
【0003】
このクリーニングは、ノズルが形成されたノズル形成面をキャップで封止した後に、そのノズル形成面とキャップとで気密にされる空間(キャップ内空間)を吸引ポンプにより吸引するものであり、これにより、プリンタは、インクの吐出方向側に負圧となるキャップ内空間を形成し、その負圧を利用して増粘したインクなどを吐出している。
【0004】
こうしたクリーニングでは、ノズルから吐出されるインクが、吸引ポンプで吸引された後に、回収容器に回収される。この回収容器には、その内部にインク吸収材(液体吸収材)が収容されており、吸引ポンプから排出されるインク(以下、「排出インク」という。)は、この回収容器内のインク吸収材に吸収されるようになっている。そして、回収容器は、回収した排出インクにおけるインク溶媒の一部を回収容器の開口部から蒸発させることによって排出インクの容量を減少させ、その回収効率を向上するようにしている。
【0005】
近年、こうしたプリンタでは、その印刷画像の保存性や彩色性の向上を図るため、顔料インクや高濃度インクを利用するようになってきている。このようなインクは、一般に、そのインク溶媒が、蒸発するか、あるいはインク吸収材に吸収されることによって、そのインク成分(例えば、顔料)が容易に凝集して固化する。このため、上記した回収容器に顔料インクや高濃度インクが排出されると、その回収容器内(特に、排出インクが排出される排出口付近)に固化したインク成分、すなわちインク残渣が堆積することとなる。
【0006】
そこで、排出インクの拡散を促進するためとして、特許文献1に記載された回収容器が提案されている。この特許文献1の回収容器は、排出口から排出される排出インクを、その傾斜した底面に沿って流動させて拡散し、その拡散した排出インクをインク吸収材に吸収させるようにしている。
【特許文献1】特開2004−34361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の回収容器は、その上部全体が開口部となっているため、該回収容器内に排出口から排出インクが排出されると、該排出インクが拡散される前にそのインク溶媒が回収容器の開口部から蒸発してしまう。この結果、排出インクのインク成分が回収容器内の排出口付近で集中的に固化することで、ここに排出インクの拡散(流動)を阻害するインク残渣が堆積し、回収容器における排出インクの回収能力の低下を招くおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、排出口から排出される液体を円滑に回収することができる液体回収装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体回収装置は、排出口から排出される液体を吸収する液体吸収材と、該液体吸収材を収容する回収容器とを備え、該回収容器の開口部を通じて前記液体の一部を蒸発させる液体回収装置において、前記開口部を開閉する開閉手段と、前記液体が排出される場合には前記開口部を閉塞する一方、前記液体が排出されてから該液体が前記液体吸収材に浸透するための所定時間が経過した後には前記開口部を開放するように、前記開閉手段を開閉動作させる制御手段とを備えた。
【0010】
この発明によれば、液体が排出される際には開口部が閉塞されるため、該液体が液体吸収材に浸透する前段階での蒸発が抑制される。そして、液体が排出されてから該液体が液体吸収材に浸透した所定時間後には開口部が開放されるため、その開口部を通じて前記液体の蒸発が促進される。したがって、排出口から排出された液体を、回収容器内の排出口付近で集中的に固化させることなく、好適に液体吸収材に浸透させることができ、前記液体を円滑に回収することができる。
【0011】
本発明の液体回収装置は、前記所定時間が、前記液体の排出量に応じて変更される。
この発明によれば、回収容器内に排出される液体量が変更されて、液体が液体吸収材に浸透するまでの時間が変化しても、前記液体が前記液体吸収材に浸透した後に該液体の蒸発を促進することができる。したがって、前記液体を好適に前記液体吸収材に浸透させることができ、前記液体の回収効率を向上することができる。
【0012】
本発明の液体回収装置は、前記液体が排出されてからの経過時間を計測する計測手段と、前記所定時間を記憶する記憶手段とを更に備え、前記制御手段が、前記計測手段の計測した経過時間が前記記憶手段の記憶する所定時間以上となった場合に、前記開口部を開放するように、前記開閉手段を動作させる。
【0013】
この発明によれば、前記液体が排出されてから所定時間が経過した場合には、確実に前記開口部が開放されるので、より好適に液体吸収材に浸透させることができ、前記液体を円滑に回収することができる。
【0014】
本発明の液体回収装置は、前記制御手段が、前記液体が排出されてから前記所定時間が経過する前に電源が断たれた場合には、前記開口部を半開状態とするように、前記開閉手段の開閉動作を制御する。
【0015】
この発明によれば、例えば、電源が断たれて長期間放置された場合であっても、前記液体を前記液体吸収材に好適に浸透させつつ、該液体の蒸発をも促進することができる。
本発明の液体噴射装置は、液体貯留手段に貯留された液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するキャップと、前記液体噴射ヘッドから前記キャップ内に吐出された前記液体を前記排出口から回収する回収手段とを備え、前記回収手段を、上記構成の液体回収装置により構成した。
【0016】
この発明によれば、液体噴射ヘッドから吐出される液体を円滑に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をインクジェット式プリンタに具体化した実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。なお、特に説明がない限り、以下の記載における前後方向、上下方向及び左右方向は、図1に示したインクジェット式プリンタを基準とした前後方向、上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0018】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ10は、このインクジェット式プリンタ10の装置全体を覆う有底略長四角箱状の本体ケース11を備えている。本体ケース11の左右両側壁間には、棒状のガイド部材12が左右方向に延びるように架設されている。ガイド部材12には、キャリッジ13が、ガイド部材12に沿って左右方向に移動可能に挿通支持されている。キャリッジ13は、タイミングベルト14を介してキャリッジモータ15に接続されており、キャリッジモータ15の駆動により、ガイド部材12に沿って左右方向に移動されるようになっている。
【0019】
図2に示すように、キャリッジ13の下部には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド16が搭載されている。記録ヘッド16の下面は、ノズル形成面16aとなっており、該ノズル形成面16aには、図示しない複数のノズルが設けられている。キャリッジ13における記録ヘッド16の上側には、液体貯留手段としてのインクカートリッジ17が着脱可能に搭載されている。インクカートリッジ17内には、液体としての複数色のインクがそれぞれ記録ヘッド16に供給可能に収容されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、キャリッジ13の下方には、左右方向に延びるプラテン18が設けられている。プラテン18は、ターゲットとしての記録用紙Pを支持する支持台であり、その上面には、図示しない紙送り機構が設けられている。この紙送り機構は、本体ケース11に設けられた紙送りモータ19(図1参照)の駆動により、前方に向かって記録用紙Pを給送(移動)するようになっている。そして、キャリッジ13が、ガイド部材12に沿って往復移動されながら、印刷データに基づいて、記録ヘッド16に備えられた図示しない圧電素子が駆動されると、ノズル形成面16aの各ノズルから各インクが、前方に向かって給送される記録用紙Pに対してそれぞれ噴射されて、記録用紙Pに印刷が行われるようになっている。
【0021】
プラテン18の下側における本体ケース11の底面上には、回収手段としての液体回収装置を構成する回収容器20が設けられている。回収容器20は、左右方向に延びる有底略長四角箱状をなす容器本体21と、該容器本体21の上端開口21a(図3参照)を閉塞する蓋体22とを備えている。図2に示すように、容器本体21の右側壁には、該容器本体21の内外を連通する連通部23が形成されている。連通部23は、容器本体21の右側壁の上端中央部の一部をU字状に切り欠くことで形成されている(図3参照)。
【0022】
図3に示すように、容器本体21内には、液体吸収材としてのインク吸収材24が、該容器本体21内をほぼ満たすように収容されており、インク吸収材24と蓋体22との間には、僅かな隙間が設けられている。インク吸収材24の右端部には、平面視で四角形状をなす凹部25が形成されており、該凹部25内の空間が導入室26となっている。また、連通部23と凹部25との間には、これら連通部23と凹部25とを連通する連通路27が形成されている。
【0023】
図3及び図4に示すように、蓋体22の上面の一部(図3では前端部の近傍)には、左右方向に延びる長方形状の開口部28が形成されており、該開口部28により回収容器20の内外が連通している。また、蓋体22の上面には、開口部28を閉塞可能な略長方形状の板材からなる開閉部材29が開口部28全体を閉塞する全閉位置と開口部28全体を開放する全開位置との間をスライド移動自在に設けられており、該開閉部材29の後端面にはラック部29aが形成されている。さらに、蓋体22の上面には、円盤状の開閉モータ30及び開閉歯車31が設けられている。開閉モータ30と開閉歯車31とは、上下方向に延びる回転軸30aを介して連結されており、開閉歯車31は、開閉部材29のラック部29aと噛合している。
【0024】
そして、開閉モータ30の駆動により開閉歯車31が回転軸30aを中心に正回転すると、開閉部材29が開口部28全体を閉塞するように左方向に移動し、開閉歯車31が回転軸30aを中心に逆回転すると、開閉部材29が開口部28全体を開放するように右方向に移動するようになっている。なお、蓋体22の上面には、開閉部材29がスライド移動する際に、該開閉部材29をガイドする図示しないガイド機構が設けられている。そして、本実施形態では、開閉部材29、開閉モータ30、回転軸30a及び開閉歯車31により開閉手段が構成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、本体ケース11内の右端部には、印刷を行うことのない非印刷領域(ホームポジション)が設けられており、この非印刷領域には、クリーニング機構32が備えられている。クリーニング機構32は、キャップ33、排出チューブ34及び吸引ポンプ35を備えている。
【0026】
キャップ33は、その上面が開口した略四角箱状をなしており、非印刷領域に設けられた昇降モータ36(図5参照)の駆動力によって、上下方向に往復移動するように構成されている。図2に示すように、キャップ33の内底壁には、該内底壁を上下方向に貫通する吸引孔33aが形成されている。キャップ33の上端部には、可撓性材料よりなる略四角形状の枠状部33bが設けられている。そして、記録ヘッド16が非印刷領域に移動した状態でキャップ33が上方へ移動されると、枠状部33bが記録ヘッド16のノズル形成面16aを封止するように当接され、この当接によりキャップ33内には、各ノズル(図示略)を密閉する空間であるキャップ内空間が形成されるようになっている。
【0027】
図2に示すように、排出チューブ34は、その一端部が吸引孔33aに接続され、その他端部は、回収容器20内に収容されて連通部23及び連通路27を介して導入室26内まで導かれている。導入室26内における排出チューブ34の先端部は、下側に向けて略直角に屈曲されており、該排出チューブ34の先端は、排出口34aになっている。この場合、排出チューブ34の排出口34aと導入室26を形成する凹部25の内底面とは、互いに接触していない状態で対向しており、この排出チューブ34を介して上記したキャップ内空間から回収容器20内の導入室26へのインク排出が可能とされている。
【0028】
また、排出チューブ34の中間部には、吸引ポンプ35が設けられている。そして、キャップ33がノズル形成面16aを封止した状態で、吸引ポンプ35を駆動させることにより、記録ヘッド16内にある増粘した各インクが各ノズル(図示略)からそれぞれキャップ内空間を介して排出口34aから導入室26内に排出されて、記録ヘッド16のクリーニングが行われるようになっている。この場合、排出口34aから導入室26内に排出された排出インクは、インク吸収材24内に浸透するようになっている。
【0029】
次に、上記インクジェット式プリンタ10の電気的構成を図5に基づいて説明する。
インクジェット式プリンタ10は、制御部40を備えており、該制御部40は、制御手段としてのCPU41と、記憶手段としてのROM42及びRAM43とを備えている。CPU41は、ROM42に格納された各種制御プログラムに基づき、RAM43を作業領域としてインクジェット式プリンタ10における各種制御を行うようになっている。そして、制御部40は、図示しないインターフェイスを介して図示しないホストコンピュータに接続されており、該ホストコンピュータから送信された印刷データに基づいて印刷動作を行うようになっている。
【0030】
ROM42には、複数種類(本実施形態では3種類)のクリーニングプログラムが格納されている。すなわち、ROM42には、第1クリーニングを行うための第1クリーニングプログラム、第2クリーニングを行うための第2クリーニングプログラム及び第3クリーニングを行うための第3クリーニングプログラムが格納されている。また、ROM42には、第1〜第3クリーニングを行うことに伴って排出口34aから導入室26内に排出されるそれぞれのインクの排出量に基づいて、該インクがインク吸収材24内に浸透するのに要する所定時間Tを、予め行われた実験等によって決定した浸透時間データが記憶されている。
【0031】
すなわち、本実施形態において、浸透時間データには、第1クリーニングによるインクの排出量が0.5グラム、第2クリーニングによるインクの排出量が1.5グラム、第3クリーニングによるインクの排出量が3.0グラムに設定されている。さらに、本実施形態において、浸透時間データには、所定時間Tが、第1クリーニングでは2時間、第2クリーニングでは5時間、第3クリーニングでは10時間に設定されている。
【0032】
また、CPU41には、開閉モータ30、吸引ポンプ35及び昇降モータ36が電気的に接続されており、これら開閉モータ30、吸引ポンプ35及び昇降モータ36は、CPU41によって駆動制御されるようになっている。さらに、CPU41には、第1〜第3クリーニングが、それぞれ行われてからの経過時間を計測する計測手段としてのタイマ44が電気的に接続されている。
【0033】
次に、インクジェット式プリンタ10のクリーニング処理ルーチンについて図6に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ここでは、第1クリーニングを行う場合のクリーニング処理ルーチンについて説明する。
【0034】
さて、インクジェット式プリンタ10の第1クリーニングを行う場合、まず、CPU41は、開閉モータ30を駆動させて開閉歯車31を正回転させることにより、開閉部材29を左方向に移動させて開口部28全体を閉塞する(ステップS1)。次に、CPU41は、昇降モータ36を駆動させて、キャップ33を上昇させることにより、記録ヘッド16のノズル形成面16aを封止する。この状態で、CPU41は、吸引ポンプ35を駆動させることにより、記録ヘッド16内にある増粘した各インク(0.5グラム)を排出口34aから導入室26内に排出させて第1クリーニングを行い、タイマ44を始動させる(ステップS2)。
【0035】
次に、CPU41は、タイマ44と浸透時間データとに基づいて、第1クリーニングを行ってから所定時間T(2時間)が経過したか否かを判定する(ステップS3)。CPU41は、ステップS3の判定が否定判定である場合、ステップS3の処理を繰り返し行う。一方、CPU41は、ステップS3の判定が肯定判定である場合、開閉モータ30を駆動させて開閉歯車31を逆回転させることにより、開閉部材29を右方向に移動させて開口部28全体を開放する(ステップS4)。その後、CPU41は、クリーニング処理ルーチンを終了する。
【0036】
また、第2及び第3クリーニングを行う場合、上記クリーニング処理ルーチンは、ステップS2において第2及び第3クリーニングをそれぞれ行うようにし、ステップS3においてタイマ44と浸透時間データとに基づいて、第2及び第3クリーニングを行ってから所定時間Tがそれぞれ経過したか否かを判定するようにすればよい。
【0037】
このように、インクジェット式プリンタ10において行われるクリーニングの種類(第1〜第3クリーニング)によって、排出口34aから導入室26内に排出されるインクの排出量が変化しても、該インクをインク吸収材24内に十分に浸透(拡散)させつつ、該インクの溶媒の蒸発を促進することができる。
【0038】
したがって、上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)第1〜第3クリーニングによって回収容器20内にインクが排出される際には、開口部28が閉塞され、浸透時間データに基づいて各クリーニングに対応する所定時間Tがそれぞれ経過した後に、開口部28が開放される。このため、回収容器20内に排出されるインクは、その量が各クリーニングによって変化しても、インク吸収材24内に十分に浸透するまでは、該インクの蒸発が抑制され、該インクがインク吸収材24内に十分に浸透した後には、該インクの蒸発が促進される。したがって、回収容器20内に排出されるインクを、インク吸収材24に好適に浸透させることができるので、該インクを円滑に回収することができ、該インクの回収効率を向上することができる。
【0039】
(2)第1〜第3クリーニングによって排出口34aから導入室26内にインクが排出される際には、開口部28が閉塞されているため、該インクの蒸発が抑制される。このため、排出口34aから排出されたインクが導入室26内の排出口34a付近で集中的に固化してインク残渣が堆積するのを抑制することができる。この結果、排出口34aから排出されたインクのインク吸収材24内への浸透(拡散)がインク残渣によって阻害されにくくなり、回収容器20のインク回収能力の低下を抑制できる。
【0040】
(3)蓋体22の前端部近傍に開口部28が設けられ、インク吸収材24の右端部に導入室26に設けられている。すなわち、回収容器20において、開口部28と導入室26とは、互いに離間した位置に設けられている。このため、導入室26内にインクを排出して所定時間T後に開口部28全体を開放した際には、インク吸収材24に浸透したインクは、導入室26よりも下流側(開口部28)から蒸発される。したがって、排出口34aから排出されたインクが導入室26内で固化してインク残渣が堆積するのを一層効果的に抑制することができる。
【0041】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・開口部28の形状は、三角形等の長方形以外の多角形状、あるいは円形状や楕円形状にしてもよい。
【0042】
・蓋体22に形成する開口部28の数や大きさは任意としてもよい。この場合、開口部28の数や大きさは、回収容器20やインク吸収材24の形状・性能、インクの種類などを考慮して適宜決める必要がある。
【0043】
・蓋体22における開口部28の形成位置を任意としてもよい。この場合、開口部28は、インク吸収材24へのインクの浸透をより一層促進させるためには、導入室26から離間した位置に形成することが望ましい。例えば、回収容器20の周縁近傍に導入室26を設けた場合には、その周縁近傍と対向する反対側の周縁近傍に開口部28を設けるようにしてもよい。
【0044】
・蓋体22には、開口部28以外に、別途常に開放された開口部を形成してもよい。この場合、常に開放された開口部は、開口部28からのインク蒸発量の制御に影響しないように、例えば、開口部28から離間した位置に形成したり、開口部28に比べて十分に開口面積を小さくしたり等する必要がある。さらにこの場合、常に開放された開口部は、導入室26から離間した位置に形成する必要がある。
【0045】
・容器本体21と蓋体22とは、一体に形成してもよい。
・回収容器20は、開口部28を省略し、蓋体22の全部または一部を、容器本体21に対して相対的にスライド移動させることによって開口部が形成されるように構成してもよい。
【0046】
・クリーニング処理ルーチンのステップS3において、所定時間Tが経過する前にインクジェット式プリンタ10の電源が断たれた場合には、開口部28を半開状態にするようにしてもよい。このようにすれば、電源が断たれて長期間放置された場合であっても、回収容器20内に排出されたインクをインク吸収材24内に好適に浸透させつつ、該インクの蒸発をも促進することができる。なお、インクジェット式プリンタ10は、その電源が断たれても、開閉部材29をスライド移動させて開口部28を半開状態にすることができる程度の電力を蓄えることが可能になっている。
【0047】
・連続してクリーニングが行われた場合には、クリーニング処理ルーチンのステップS3における所定時間Tを、浸透時間データに基づいて、行われた全てのクリーニングに対応する所定時間Tを累積したものとしてもよい。すなわち、例えば、第1クリーニングと第2クリーニングとを連続して行った場合、ステップS3における所定時間Tは、第1クリーニングの所定時間T(2時間)に第2クリーニングの所定時間T(5時間)が加算されて、7時間となる。このようにすれば、連続してクリーニングが行われた場合であっても、回収容器20内に排出されたインクをインク吸収材24内に十分に浸透(拡散)させることができるとともに、該インクの蒸発を促進することができる。
【0048】
・第1〜第3クリーニングにおける所定時間Tは、使用するインクの性質等に応じてそれぞれ浸透時間データに設定されたものよりも長く、あるいは短くしてもよい。
・第1〜第3クリーニングにおける所定時間Tは、全て同じ時間に設定してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタとして具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンタの斜視図。
【図2】同プリンタの断面図。
【図3】同プリンタの回収容器の分解斜視図。
【図4】同プリンタの蓋体の要部平面図。
【図5】同プリンタのブロック図。
【図6】同プリンタのクリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0051】
10…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、16…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、16a…ノズル形成面、17…液体貯留手段としてのインクカートリッジ、20…回収手段としての液体回収装置を構成する回収容器、24…回収手段としての液体回収装置を構成する液体吸収材としてのインク吸収材、28…開口部、29…開閉手段としての開閉部材、30…開閉手段としての開閉モータ、30a…開閉手段としての回転軸、31…開閉手段としての開閉歯車、33…キャップ、34a…排出口、41…制御手段としてのCPU、42…記憶手段としてのROM、44…計測手段としてのタイマ、T…所定時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口から排出される液体を吸収する液体吸収材と、該液体吸収材を収容する回収容器とを備え、該回収容器の開口部を通じて前記液体の一部を蒸発させる液体回収装置において、
前記開口部を開閉する開閉手段と、
前記液体が排出される場合には前記開口部を閉塞する一方、前記液体が排出されてから該液体が前記液体吸収材に浸透するための所定時間が経過した後には前記開口部を開放するように、前記開閉手段を開閉動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする液体回収装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記液体の排出量に応じて変更されることを特徴とする請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項3】
前記液体が排出されてからの経過時間を計測する計測手段と、前記所定時間を記憶する記憶手段とを更に備え、前記制御手段は、前記計測手段の計測した経過時間が前記記憶手段の記憶する所定時間以上となった場合に、前記開口部を開放するように、前記開閉手段を動作させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記液体が排出されてから前記所定時間が経過する前に電源が断たれた場合には、前記開口部を半開状態とするように、前記開閉手段の開閉動作を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の液体回収装置。
【請求項5】
液体貯留手段に貯留された液体を噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドのノズル形成面を封止するキャップと、前記液体噴射ヘッドから前記キャップ内に吐出された前記液体を前記排出口から回収する回収手段とを備え、前記回収手段を、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体回収装置により構成したことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−256053(P2006−256053A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75648(P2005−75648)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】