説明

液体圧送装置

【課題】 第1及び第2のバネ受け間の軸芯が変形したり折れたりすることを防止できる液体圧送装置を提供する。
【解決手段】 密閉容器2に作動流体導入口11と作動流体排出口13と液体流入口16及び液体排出口17が設けられる。密閉容器2内にフロート3と切替え弁4及びスナップ機構5が内蔵される。スナップ機構5のコイルバネ38が第1及び第2のバネ受け40,42間の連続する軸芯に外装され、コイルバネ38の一端が軸芯をスライドする第1バネ受け40に結合される。第1及び第2のバネ受け40,42間の連続する軸芯が第1バネ受け40に設けられた凹部46と、第2バネ受け42に設けられ第1バネ受け40の凹部46に挿入された軸部48と、凹部46の内周乃至奥壁と軸部48の外周乃至先端との間に配された弾性部材49とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に関するものである。本発明の液体圧送装置は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る装置として特に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体圧送装置は、例えば特許文献1に開示されている。これは、密閉容器に作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、密閉容器内にフロートと切替え弁及びスナップ機構が内蔵され、スナップ機構は、密閉容器内に支持された揺動軸と、揺動軸の周りに回転するフロートアーム及び副アームと、フロートアームに支持された第1の軸と、副アームに支持された第2の軸と、第1の軸の周りに回転する第1のバネ受けと、第2の軸の周りに回転する第2のバネ受けと、第1及び第2のバネ受けの間に取り付けられたコイルバネを有し、フロートがフロートアームに連結され、切替え弁が弁軸操作棒を介して副アームに連結されたものである。この特許文献1の液体圧送装置は、フロートの浮上降下の過程で第1及び第2のバネ受けの軸線がずれるために、コイルバネが湾曲し変形したり座屈したりする問題点があった。この問題点を解決する技術が、例えば特許文献2に開示されている。これは、コイルバネが第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯に外装され、コイルバネの一端が軸芯をスライドするバネ受けに結合されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】アメリカ特許5141405号
【特許文献2】特開平7−035296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2の液体圧送装置は、第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯によりコイルバネの湾曲を防止でき変形や座屈を防止できるものであるが、第1及び第2のバネ受け間の軸芯が湾曲力や衝突力により変形したり折れたりする問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、第1及び第2のバネ受け間の軸芯が変形したり折れたりすることを防止できる液体圧送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の液体圧送装置は、密閉容器に作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、密閉容器内にフロートと切替え弁及びスナップ機構が内蔵され、スナップ機構は、密閉容器内に支持された揺動軸と、揺動軸の周りに回転するフロートアーム及び副アームと、フロートアームに支持された第1の軸と、副アームに支持された第2の軸と、第1の軸の周りに回転する第1のバネ受けと、第2の軸の周りに回転する第2のバネ受けと、第1及び第2のバネ受けの間に取り付けられたコイルバネを有し、フロートがフロートアームに連結され、切替え弁が弁軸操作棒を介して副アームに連結され、コイルバネが第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯に外装され、コイルバネの一端が軸芯をスライドするバネ受けに結合されたものにおいて、第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯が第1及び第2のバネ受けの一方に設けられた凹部と、第1及び第2のバネ受けの他方に設けられ第1及び第2のバネ受けの一方の凹部に挿入された軸部と、凹部の内周乃至奥壁と軸部の外周乃至先端との間に配された弾性部材とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コイルバネが第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯に外装され、コイルバネの一端が軸芯をスライドするバネ受けに結合され、第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯が第1及び第2のバネ受けの一方に設けられた凹部と、第1及び第2のバネ受けの他方に設けられ第1及び第2のバネ受けの一方の凹部に挿入された軸部と、凹部の内周乃至奥壁と軸部の外周乃至先端との間に配された弾性部材とを具備するものであるので、第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯によりコイルバネの湾曲を防止でき変形や座屈を防止できると共に、凹部の内周乃至奥壁と軸部の外周乃至先端との間に配された弾性部材により軸芯に作用する湾曲力や衝突力を吸収でき軸芯が変形したり折れたりすることを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係わる液体圧送装置の断面図である。
【図2】図1のコイルバネ部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図2を参照して説明する。本実施例の液体圧送装置1は密閉容器2内にフロート3と切替え弁4及びスナップ機構5が配されたものである。密閉容器2は本体部7と蓋部8が図示しないネジによって結合され、内部に液体溜空間10が形成されたものである。蓋部8には作動流体導入口11,作動流体排出口13,液体流入口16,液体排出口17が設けられている。作動流体導入口11の内側に給気弁20が取り付けられ、作動流体排出口13の内側に排気弁21が取り付けられている。給気弁20は弁ケース22と給気弁体23及び昇降棒24によって構成される。弁ケース22は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔の上部に給気弁口25が形成されている。弁ケース22の中間部の周囲壁には給気弁口25と密閉容器2内方側とを連通する4つの開口26が設けられている。給気弁体23は球状で給気弁口25の作動流体導入口11側に位置し、下端に昇降棒24が溶接により一体的に取り付けられている。昇降棒22の下部は密閉容器2内方側に抜け、連設板27に当接するようになっている。連設板27は弁軸操作棒28に連結され、弁軸操作棒28はスナップ機構5と連結されている。排気弁21は弁ケース29と排気弁体30と昇降棒31によって構成される。弁ケース29は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔の上部に排気弁口32があり、排気弁口32の下から昇降棒31の上端に保持固定された排気弁体30が離着座して開閉を行うものである。昇降棒31の下端はピンで弁軸操作棒28に連結されている。給気弁20と排気弁21で切替え弁4が構成され、給気弁20が開くと排気弁21は閉じ、給気弁20が閉じると排気弁21は開く。
【0010】
フロート3はフロートアーム34と揺動軸35を介してブラケット36によって支持されている。ブラケット36は図示しないネジによって密閉容器2の蓋部8に一体的に取り付けられている。スナップ機構5はフロートアーム34と揺動軸35と副アーム37とコイルバネ38と第1の軸39と第1バネ受け40と第2の軸41及び第2バネ受け42によって構成される。フロートアーム34は平行に対向した2枚の板よりなり、左端にフロート3が固着され、右側部が揺動軸35によって回転可能に支持されている。従って、フロート3は揺動軸35を中心として上下に揺動する。フロートアーム34の中央部に揺動軸35と平行な第1の軸39が掛け渡されている。第1の軸39に第1バネ受け40が回転可能に支持されている。また、揺動軸35には副アーム37が回転可能に支持されている。副アーム37は平行に対向した2枚の板よりなり、左端部に揺動軸35と平行な第2の軸41が掛け渡されている。第2の軸41に第2バネ受け42が回転可能に支持されている。第1及び第2のバネ受け40,42の間に圧縮状態のコイルバネ38が配置されている。フロートアーム34には半円状に長孔43が設けられ、長孔43内に揺動軸35と平行なストッパー軸44がブラケット36によって支持されている。ストッパー軸44は副アーム37の回転範囲を規制する。副アーム37の右端部に揺動軸35と平行な連結軸45が貫通して取り付けられ、連結軸45に弁軸操作棒28の下端が連結されている。揺動軸35と平行でフロートアーム34の揺動範囲を規制するストッパー軸51,52がブラケット36によって支持されている。第1バネ受け40はボス部側に凹部46を有し、第2バネ受け42はボス部から突出した軸部48を有し、凹部46内に軸部48が挿入され、第1バネ受け40のボス部と第2バネ受け40の軸部48及びボス部により連続する軸芯が形成され、この軸芯にコイルバネ38が外装されている。凹部46の内周乃至奥壁と軸部48の外周乃至先端との間には環状で先端に奥壁を有し後端にフランジ部を有する弾性部材49が抜けないように強く嵌め込まれている。弾性部材49は合成樹脂や合成ゴムにより形成することができ、例えば、ポリエーテルエーテルケトンにより形成することができる。弾性部材49の内径と軸部48の直径には2mm程度の差が設けられており、軸部48は弾性部材49内を自由に摺動する。そのため、コイルバネ38の一端の第1バネ受け40は連続する軸芯に対して軸方向にスライドする。
【0011】
次に本実施例の液体圧送装置1の作用について、作動流体として蒸気を用いた場合の一連の動作手順を追うことによって説明する。まず液体圧送装置1の外部配管は作動流体導入口11が高圧の蒸気源に接続され、作動流体排出口13は蒸気循環配管に接続される。液体流入口16は外部から液体溜空間10に向かって開く逆止弁(図示せず)を介して蒸気使用装置等の負荷に接続され、液体排出口17は液体溜空間10から外部に向かって開く逆止弁(図示せず)を介してボイラー等の液体圧送先へ接続される。本実施例の液体圧送装置1の液体溜空間10内に復水が無い場合は、図1に示すようにフロート3は底部に位置する。このとき、切替え弁4における給気弁20が閉じられ、排気弁21が開かれている。そして、蒸気使用装置等の負荷内で復水が発生すると、復水は圧送液体流入口16から液体圧送装置1に流下して、液体溜空間10内に溜る。液体溜空間10内に溜った復水によってフロート3が浮上すると、フロートアーム34が揺動軸35を中心に時計回り方向に回転し、コイルバネ38との連結部である第1の軸39が上方に移動して揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上に近付き、コイルバネ38が圧縮変形する。そしてフロート3が更に浮上して第1の軸39が揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上を越えると、コイルバネ38が急激に変形を回復し、副アーム37が反時計回り方向に回転して連結軸45が上方にスナップ移動する。その結果、連結軸45に連結された弁軸操作棒28が上側にスナップ移動し、給気弁20が開かれると共に排気弁21が閉じられる。
【0012】
給気弁20が開かれて作動流体導入口11が開放されると、密閉容器2内に高圧蒸気が導入され、内部の圧力が上昇し、液体溜空間10に溜った復水は、蒸気圧に押されて圧送液体排出口17から図示しない逆止弁を介して外部のボイラーや廃熱利用装置へ排出される。復水の排出によって復水溜空間10内の水位が低下すると、フロート3が降下して、フロートアーム34が揺動軸35を中心に反時計回り方向に回転し、コイルバネ38との連結部である第1の軸39が下方に移動して揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上に近付き、コイルバネ38が圧縮変形する。そしてフロート3が更に降下して第1の軸39が揺動軸35と第2の軸41を結ぶ線の延長線上を越えると、コイルバネ38が急激に変形を回復し、副アーム37が時計回り方向に回転して連結軸45が下方にスナップ移動する。その結果、連結軸45に連結された弁軸操作棒28が下側にスナップ移動し、給気弁20が閉じられると共に排気弁21が開かれる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る復水圧送装置に限らず、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 液体圧送装置
2 密閉容器
3 フロート
4 切替え弁
5 スナップ機構
10 液体溜空間
11 作動流体導入口
13 作動流体排出口
16 液体流入口
17 液体排出口
18 給気弁
19 排気弁
28 弁軸操作棒
33 コイルバネ
34 フロートアーム
35 揺動軸
37 副アーム
38 コイルバネ
39 第1の軸
40 第1バネ受け
41 第2の軸
42 第2バネ受け
46 凹部
48 軸部材
49 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられ、密閉容器内にフロートと切替え弁及びスナップ機構が内蔵され、スナップ機構は、密閉容器内に支持された揺動軸と、揺動軸の周りに回転するフロートアーム及び副アームと、フロートアームに支持された第1の軸と、副アームに支持された第2の軸と、第1の軸の周りに回転する第1のバネ受けと、第2の軸の周りに回転する第2のバネ受けと、第1及び第2のバネ受けの間に取り付けられたコイルバネを有し、フロートがフロートアームに連結され、切替え弁が弁軸操作棒を介して副アームに連結され、コイルバネが第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯に外装され、コイルバネの一端が軸芯をスライドするバネ受けに結合されたものにおいて、第1及び第2のバネ受け間の連続する軸芯が第1及び第2のバネ受けの一方に設けられた凹部と、第1及び第2のバネ受けの他方に設けられ第1及び第2のバネ受けの一方の凹部に挿入された軸部と、凹部の内周乃至奥壁と軸部の外周乃至先端との間に配された弾性部材とを具備することを特徴とする液体圧送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−2359(P2013−2359A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134231(P2011−134231)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】