説明

液体塗布具

【課題】 柔軟な塗布部を有し、種々の粘度を持つ塗布液に対して、穴径の変更のみで多種の化粧料など塗布液の塗布具を簡単に構成できかつ簡易な工程で製造できて安価な液体塗布具を提供する。
【解決手段】 軸10内部に配設した収容空間10bに25℃でずり速度5sec−1における粘度が0.3Pa・sec〜50Pa・secの範囲にある化粧料(塗布液)12を収容し、押し出し機構16の押し出しによって軸10の収容空間10b内に収容した化粧料を塗付部14の吐出口14aから吐出し、その化粧料の粘度μ[Pa・sec]と弾性体の塗付部に設けられる吐出口の内径D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0(ただし、0.5≦D≦5.0)である液体塗布具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布部を入れ替えるだけで、収納する塗布液の粘度に対応可能で、共有の部材を利用するため安価に製造可能な液体塗布具に関し、特に低粘度〜高粘度まで容器本体は同一で先端塗布部を変更するだけで、安価に製造することが可能な液体化粧料の液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体化粧料等塗布体の塗布するための塗布具(液体塗布具)には、軸配設の収容部から軸先端に設けた柔軟な塗布部の吐出口へ塗布液を押し出しできるようにして、この塗付部を肌などの対象部に滑らせて対象部に塗り付け可能になっている。
【0003】
上記の液体塗布具においては、従来提案された実用新案登録第3109917号公報(特許文献1)では、流出口内に導流棒(棒状体)を内装し、軸筒内の液体化粧料が加圧されたときはその液体化粧料によって前記吐出口が変形して化粧料が吐出し、一方、圧力を付加しないときは導流棒が吐出口内部に密着してその吐出口を閉ざし、液体化粧料の流出を制御する液体塗布具が開示されている。しかしながら、この機構では、制御用の棒状体を必要としているので、部品点数が多く高コストである。
【0004】
また、高粘度の塗布液に限れば、容器本体の中のピストンを移動させる移動体には、それを回転させる際にクリック機能を持たせて、移動体の前進しすぎや戻しすぎを防止する移動体繰り出し容器が提案されている(例えば特開2006−149946号公報:特許文献2)。しかしながら、この構造では、低粘度の塗布液に対応できない上、塗布部が硬い素材で形成されており、使用感も硬いものになる。
【0005】
また、吐出させる塗布液によって、中継芯の内径を調整し、塗布液の吐出を制御する塗布具が提案されている(例えば特開平9−322819号公報:特許文献3)。しかしながら、この塗布具では、塗布部自体が筆穂であり、塗布液の直流やボタ落ちなどを考慮する必要がないものである。
【特許文献1】実用新案登録第3109917号公報
【特許文献2】特開2006−149946号公報
【特許文献3】特開平9−322819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、柔軟な塗布部を有し、種々の粘度を持つ塗布液に対して、穴径の変更のみで多種の化粧料など塗布液の塗布具を簡単に構成できかつ簡易な工程で製造できて安価な液体塗布具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸配設の収容部に25℃においてずり速度5sec−1における粘度が0.3Pa・sec〜50Pa・secの範囲にある化粧料等の塗布液を収容し、軸の先端部に対象部位に接して塗布液を塗付するための柔軟な弾性体からなる塗付部を有し、軸の後端部に押し出し機構を有しており、塗布部に塗布液を吐出させる吐出口および該吐出口および収容部間を繋ぐ連通路が形成され、押し出し機構の押し出しによって収容部内に収容した塗布液を塗付部の連通路を経由して吐出口から吐出する液体塗布具であって、前記弾性体の塗付部に設けられる吐出口または連通路の内のりの値D[mm]が、0.5[mm]≦D≦5.0[mm]の範囲であり、塗布液の粘度μ[Pa・sec]と前記値D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0であることを特徴とする液体塗布具である。
【0008】
本発明においては、前記塗付部に使用する弾性体が、ゴムまたはエラストマーであることが好適である。
【0009】
また、本発明においては、前記塗布部に使用する弾性体が発泡体であることが好適である。
【0010】
また、本発明においては、前記発泡体は、連続気泡体であることが好適である。
【0011】
また、本発明においては、前記塗布部は、その弾性体の光透過率が30%以上であることが好適である。
【0012】
また、本発明においては、前記塗布部は、少なくとも表層部と、該表層部と弾性率の異なる内層部を持つ構成であることが好適である。
【0013】
また、本発明においては、前記内層部の弾性率が表層部の弾性率よりも高いことが好適である。
【0014】
また、本発明においては、塗付部に使用する弾性体の摩擦係数が0.04〜0.7であることが好適である。
【0015】
また、本発明においては、塗付部に設けた弾性体の吐出口は、塗布部の軸中心から外れていることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液体塗布具によれば、押し出し機構の押し出しによって収容部内に収容した塗布液を塗付部の連通路を経由して吐出口から吐出するものであって、弾性体の塗付部に設けられる吐出口または連通路の内のりの値D[mm]が、0.5[mm]≦D≦5.0[mm]の範囲とし、軸配設の収容部に収容された、25℃でずり速度5sec−1における粘度が0.3Pa・sec〜50Pa・secの範囲にある化粧料等の塗布液を、化粧料の粘度μ[Pa・sec]と前記値D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0(ただし、0.5≦D≦5.0)にしたので、柔軟な弾性体から成型した簡単な構成で、塗布具の不使用時に塗布液は塗付部の吐出口内に留まりボタオチすることがない。化粧料の粘度と吐出口の内径の構成によってボタ落ちを防止できるので、従来のように導流棒のような別の構成を設ける必要がなく簡単な構成で吐出口から塗布液をボタ落ち無く吐出できるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
なお、上記のように塗布液の粘度に対応した口径の吐出口または連通路を形成した柔軟な塗布部を押し出し機構を設けた軸の先端に付け替え可能な構成とすることができる。
【0018】
なお、塗布部は、その弾性体の光透過率が30%以上であるようにして、光透過性の優れた塗布部にでき、それによって、塗布液の状態の視認と、それによって美観に優れた塗布部をすることができる。
【0019】
また、前記塗布部は、少なくとも表層部と、該表層部と弾性率の異なる内層部を持つ構成の二重構造とすることによって、皮膚への接触感をさらに良好とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図5は発明を実施する形態の一例(第1〜5実施形態)であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0022】
図1(a)に第1実施形態に係る液体塗布具の全体説明図を示し、(b)に塗布部14の縦断面図、(c)に同塗布部の軸方向視図を示す。
【0023】
第1実施形態に係る液体塗布具は、図1に示すように、軸10内部に配設した収容空間10bに25℃でずり速度5sec−1における粘度が0.3Pa・sec〜50Pa・secの範囲にある化粧料(塗布液)12を収容し、軸10の先端部10aに化粧部位等の対象部位に接して化粧料を塗付するための柔軟な弾性体からなる塗付部14を有し、押し出し機構16の押し出しによって軸10の収容空間10b内に収容した化粧料を塗付部14の吐出口14aから吐出する液体化粧料塗布具1である。
【0024】
そして、この液体化粧料塗布具1において、押し出し機構16は、前記軸10内部の収容空間10bに向けて前進・後退して収容空間内の容積を減少・増大させるピストン体18と、該ピストン体18の後部に軸状部材(「ねじ棒」とも称する)20の前部を係合して、この軸状部材20を使用者の操作力によって前後動させて前記ピストン体18を前進・後退動作させる駆動機構(回転操作部材22、軸状部材20、固定筒状体24、内筒材26等からなる)とを有している。
【0025】
詳細には、図1に示すように、液体化粧料塗布具1は主要部材として外筒である軸10、先軸(継ぎ手とも称する)28、化粧料12、押し出し機構16、およびキャップ30を有してなる。塗布部14は必要な塗布性能が得られるようにゴムなどの弾性樹脂で一体成形され、その塗布部14以外の部材は必要な気密性能や支持性能が得られる密度および剛性に樹脂成形されている。
【0026】
〔軸10〕
軸10は、概略中空筒状を呈し、その先端部10aが先細に形成され、その先端部10aの外径寸法がキャップ30の内径寸法とほぼ同一に形成されている。その先端部10aに着脱可能にキャップ30が嵌合される。装着時に設定した先端部10aおよびキャップ30の互いの対向部分には、リブ状の凹凸部が形成され、それら同士によって凹凸嵌合するようにして、先端部10aに対してキャップ30が不意の力で外れないようになっている。
【0027】
軸10の先端部10aの開口から内部には、先軸28の基端が塗布部14の筒状基端部14bを介在して(軸10の先端部10a内周面と先軸28外周面によって塗布部14の筒状基端部14bを挟み付けて固定して)液密に嵌着される。また、軸10の後端には押し出し機構16が配されている。
【0028】
そして、この押し出し機構16のピストン体(ガスケット)18は、軸10の後端開口から挿入して、本体中央部の内壁に密着して摺動可能に設けられている。
【0029】
したがって、軸10内と、先軸28の後端部と、ピストン体18とに囲まれる空間部分は、化粧料12の収容空間10bとして形成されている。
【0030】
〔押し出し機構16〕
図1に示すように、実施形態に係る液体化粧料塗布具1においては、軸10の後端には一体になった押し出し機構16が配されており、押し出し機構16は、使用者の操作入力によってその構成要素のピストン体18を軸10中央部の内壁に密着して液密に摺動し、これによって、前記液体化粧料収容空間10bの容積を減少・増大して化粧料12を加圧・減圧する。
【0031】
押し出し機構16は、主要部材として回転操作部材22、軸状部材20、軸状部材20を出没させる固定筒状体24(これらは駆動機構に相当する)、および上述のピストン体18を有してなる。
そして、回転操作部材22は互いに回転不能に接合させた外筒キャップ32と内筒材26とからなり、回転操作部材22全体は軸10に回転可能に設けられる。
【0032】
〔固定筒状体24〕
固定筒状体24は環状部材からなり、軸10に回転不能に取り付けられている。固定筒状体24および回転操作部材22(内筒材26先方外周面)同士の噛合わせ部34はラチェットが形成されている。回転操作部材22は、固定筒状体24(それの固定された軸10)に対して両方向に回転可能になっており、液体化粧料を吐出する一方向へ回転させたときには、ラチェットによる手指にクリック感を生じさせつつ吐出させ、他方向へ回転させたときには、設定された回転力以上の入力をしたときに回転するように回転規制されている。つまり、その他方向に一定以上の回転力が加わった時に、その規制を解除して回転可能にするトルクリミッタ機能を付与できる。
【0033】
また、上記の回転操作部材22の他方向への回転等によって押し出し機構16が軸10内部の化粧料12を減圧する機能を有しており、これによって、押し出し機構16が化粧料12に対する加圧を停止した以後に、化粧料12を前記押し出し機構16が減圧でき、連通路36に液体化粧料を戻すことができる。その他、押し出し機構16において、上記回転操作部材22の噛み合わせ部34bが他方向への回転規制を回転停止させるものにして、液体化粧料の戻しをしないようにすることもできる。
【0034】
〔回転操作部材22、内筒材26〕
回転操作部材22は、互いに通常は相対回転不能で一定以上の回転力によって相対回転するように接合させた外筒キャップ32と内筒材(「繰り出し体」とも称する)26とからなり、回転操作部材22全体は軸10の後部に回転可能に設けられる。
【0035】
〔塗布部14〕
液体化粧料塗布具1の塗布部14は柔軟な弾性材からなり、図1の(a)〜(c)に示すように、塗布部14は、軸10内と外部に通じる先軸28内部通路28aを介して収容空間10bに連通する常時開口した筒状空間の連通路36が形成されている。
【0036】
塗布部14は全体がテーパ状にやや先細になっており、先端面14cは中心軸に対してやや角度もって斜めに切り落とされた形状を呈し、連通路36が外部に露出した吐出口14aが開口している。そして、塗布部14の先端面14cは角部が滑らかに曲面にされており、塗布部14の角部を曲面にすることにより柔軟な塗布部が裂けにくく、塗布時に余り大きな力が掛からないようにできる。
【0037】
また、塗布部14の後部は筒状に延びており(筒状基端部14b)軸10先端部10a内周面部と先軸28外周面とで挟み付けられる固定されている。先軸28を軸先端部10aから抜けば塗布部14は自由に交換可能にできる。
【0038】
化粧料12が押し出し機構16によって加圧された際に、連通路36を介して吐出口14aから吐出され、先端面14cに滞留するようになっている。
【0039】
また、前記塗布部14は、図1に示すように、樹脂等の弾性体で一体成形された概略2段筒状を呈している。塗布部の弾性体に使用する材質としてはゴム、エラストマー、発泡体(好適には連続気泡体)のいずれかまたはそれらの組み合わせを材料として一体成形したものが好適である。
【0040】
塗付部に使用する弾性体の摩擦係数が0.04〜0.7である。塗布表面を球面化、あるいは、周縁部の角を取り曲面化することにより、摩擦係数を低減し、また、塗布表面を平滑化あるいは凹凸の大きい表面状態とし、周縁部にエッジを立てることにより、大きな摩擦抵抗が生じるようにすることが可能であり、形状により、摩擦係数を調整できる。
【0041】
このようにすれば、所望通り、美観にも優れ、塗布時のタッチ感も向上し、好ましい。
【0042】
なお、実施形態における各部の材質は、軸状部材20および固定筒状体24はABS樹脂を、ピストン体18および先軸28はHDPE(高密度ポリエチレン)を、軸10、キャップ30、外筒キャップ32はPP(ポリプロピレン)を用いて成形することができる。各部には、その他適宜の材質の樹脂を用いることができる。
【0043】
ここで、化粧料の粘度μ[Pa・sec]と弾性体の塗付部に設けられる吐出口の内径D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0(ただし、0.5≦D≦5.0)である。
【0044】
このように設定する根拠を表1、表2に示す試験結果によって説明する。
表1は、本発明の実施形態に係る液体塗布具の官能試験の説明図を示し、各穴径(内のりの値D)の試験体に対して粘度の異なる塗布液を使用した場合の試験結果を示す。
表2は、各穴径(内のりの値D)の試験体に対して「粘度μ/内のりの値Dの比」を変化させた場合の試験結果を示している。
【0045】
この場合、液体化粧料の粘度を0.1〜100[Pa・sec]の範囲で種々に変更すると共に、塗布部14の連通路36の穴径を0.5〜5.0[mm]の範囲で種々に変更した場合の使用性を確認した。
【0046】
塗布液の化粧料はジメチコン(商品名:KF−96−5000cs、信越化学工業株式会社製)を使用した。
【0047】
また使用性は、被験者が肌・唇に化粧料を幅5[mm]前後、厚さ0.5[mm]以下で塗った際の乗りの良さを官能試験しており、表1に各穴径(内のりの値D)の試験体に対して粘度の異なる塗布液を使用した場合の試験結果を示す。また、表2に各穴径(内のりの値D)の試験体に対して「粘度μ/内のりの値Dの比」を変化させた場合の試験結果を示している。
【0048】
そして、表1〜表2おいて、試験結果は、符号「◎(二重丸)」が最も塗やすく(最も乗り易く)が最も良く最も使用性が良好を、「○(丸)」が塗りやくす(乗り易く)使用性良好を、「△(三角)」がやや塗りにくいことを、「×(ばつ)」が非常に塗りにくいことをそれぞれ示している。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1〜表2から、上記の液体塗布具において吐出口または連通路の内のりの値D[mm]が、0.5[mm]≦D≦5.0[mm]の範囲とした場合に、塗布液の粘度μ[Pa・sec]と前記値D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0であり、0.7〜8.0が最も好適であるといえる。
【0052】
上記第1実施形態に係る液体塗布具によれば、柔軟な弾性体から成型した簡単な構成で、塗布具の不使用時に塗布液は塗付部の吐出口内に留まりボタ落ちすることがない。化粧料の粘度と吐出口の内径の構成によってボタ落ちを防止できるので、従来のように導流棒のような別の構成を設ける必要がなく簡単な構成で吐出口から塗布液をボタ落ち無く吐出できる。
【0053】
尚、本発明の液体塗布具は、上記した第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。以下に本発明の第2〜第3実施形態を説明する。
【0054】
第2実施形態を説明する。
この第2実施形態に係る液体塗布具では、図2の(a)に全体構造を示すように、図1の第1実施形態と同様部分に同一の符号を付する。図2の(b)に塗布部の表層部を示し、(c)に同塗布部の内層部を示す。
【0055】
第2実施形態に係る液体塗布具は、図2に示すように、塗布部14Aが、膜状の表層部40と、該表層部40と弾性率の異なる内層部42を持つ構成である。
【0056】
表層部40は、概ね塗布部14の外周面から吐出口14aまで回り込んで包むような形状を呈している。また、内層部42は、中実の先端を切り取った中実円錐形状を呈する。
【0057】
前記内層部42の弾性率が表層部40の弾性率よりも高く、内部が柔軟でかつ肌さわりがしっかりした感覚をユーザに与える。表層部は硬度(JIS K6253 デュロメータ タイプA)であることが好ましい。内層部は、この表層部の硬度より硬いことが好ましいが、硬度差などは特に限定されず、使用すべき箇所、対象とする使用者によって適宜調整される。
【0058】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果の他、塗布部14Aは、少なくとも表層部40と、該表層部40と弾性率の異なる内層部42を持つ構成の二重構造とすることによって、皮膚への接触感をさらに良好とすることができる。
【0059】
次に第3実施形態について説明する。
【0060】
この第3実施形態に係る液体塗布具では、図3(a)に全体構造を示すように、図1の第1実施形態と同様部分に同一の符号を付する。図3(b)〜(d)は実施例1〜3を示す。
【0061】
第3実施形態に係る液体塗布具は、図3に示すように、塗布部14Bは、第1実施形態とほぼ同様の形状を呈し、その弾性体の光透過率が30%以上である。それによって、塗布液の状態の視認と、それによって美観に優れた塗布部を形成することができる。
【0062】
塗布部14Bにおいて、図3の(b)には、吐出口14aおよび連通路36を塗布部14Bの軸中心CLに一致させた塗布部例14B1(実施例1)を示し、(c)には吐出口14aおよび連通路36を塗布部14Bの軸中心CLからずらした塗布部例14B2(実施例2)を示し、同(d)には、吐出口14aおよび連通路36を塗布部14Bの軸中心CLに一致させかつ実施例1より大径にした塗布部例14B3(実施例3)を示す。
【0063】
塗布部は無色または有色透明の樹脂(例えばシリコン又はウレタン)材質によって形成することができる。塗布部では、図3(b)〜(d)に示す塗布部14B1〜14B3のように、表層44aと内部層44bの複数層構造として、内部層44bは透過率が100%近くとして、かつ表層44aで色や透過率を調整する構成にすることができる。
【0064】
次に第4実施形態に係る液体塗布具を説明する。
図4は、本発明の第4実施形態に係る液体塗布具の塗布部14Cを中心として示す拡大説明図である。
【0065】
この第4実施形態の液体塗布具では、第1〜第3実施形態の液体塗布具と異なり、塗布部14Cは厚肉の筒状基端部14b後端部に軸放射方向外側に突出するフランジ部14dを環状に突出形成しており、しかも第1〜第3実施形態の先軸を無くしたものである。
【0066】
軸先端部10a厚肉であって、前記フランジ部14dが嵌入する溝部10dを形成している。
【0067】
第4実施形態によれば、塗布部14Cを交換するのに、上記先軸28を外す必要が無く、各種の塗布部を一層容易に交換することができ、好ましい。
その他の構成・作用効果は、第1〜第3実施形態と同様である。
【0068】
次に第5実施形態に係る液体塗布具を説明する。
図5は、本発明の第5実施形態に係る液体塗布具の塗布部14Dを中心として示す拡大説明図である。この第5実施形態では、第1実施形態,第2実施形態、第3実施形態の塗布部14、14A、14Bと異なり、第4実施形態の塗布部14Cとほぼ同様に、塗布部14Dの厚肉の筒状基端部14bの後端部に軸放射方向外側に突出するフランジ部14dを環状に突出形成しているものである。
【0069】
そして、第1実施形態〜第3実施形態では軸10の先端部10a内周面と先軸28外周面によって塗布部14の筒状基端部14bを挟み付けて固定していたのとは異なり、第5実施形態では、概略筒状のブッシュ状部材46とその内側に装着する第2の先軸48とで塗布部14Dの筒状基端部14bを挟み付けて固定するものである。
【0070】
前記ブッシュ状部材46は、先端部に軸放射方向に内側と外側に向かってフランジ部46aが形成されており、フランジ部46aの外側突起で軸10先端部10aに係止して軸内潜り込みを規制し、フランジ部46aの内側突起で塗布部14Dの筒状基端部14bのフランジ部14dに係止可能になっている。
【0071】
第2の先軸48は、軸10の先端部10aに装着状態で先端部10aの前端よりもさらに前方に突出して塗布部14Dの連通路36に連通する中空筒状(前後端開放)の吐出口部48aと、ブッシュ状部材46内周面と緊密に嵌合する筒状の嵌合部48bとがブリッジ部48cで互いが連結一体化されて形成されている。嵌合部48bでは、後端部に放射方向外側に突出するフランジ状部48dが形成され、このフランジ状部48dがブッシュ状部材46後端部に当接することによって、第2の先軸48とブッシュ状部材46との間で軸方向の位置決めするものである。また、ブリッジ部48cは、第2の先軸48内において、吐出口部48a以外を塞いでいるが軸10側からの塗布液を吐出口部48aに導く形状であれば適宜に形成できる。ブッシュ状部材46と第2の先軸48は、塗布部14Dに用いる樹脂材よりも剛性の高いPPまたはABS樹脂等を材料として使用する。
【0072】
第2の先軸48の吐出口部48a外周面とブッシュ状部材46のフランジ部46a内側とで、塗布部14Dの筒状基端部14bのフランジ部14dに係止して、抜け止めるようになっている。
【0073】
この第5実施形態によれば、塗布体14Dをブッシュ状部材46と第2の先軸48によって挟み付けた状態で部組でき、部組部品として塗布具10の生産ラインに供給できる。特に第1実施形態〜第4実施形態では、柔軟な弾性材からなる塗布体14、14A〜14Dを固定する際に、その柔軟な塗布体そのものをハンドリングしなければならないが、この第5実施形態によれば、塗布体14Dを剛性のあるブッシュ状部材46と第2の先軸48によって挟み付けた状態の部組部品には、剛性のあるブッシュ状部材46または第2の先軸48が半ばまで位置していることから、保管およびハンドリングが容易で、取り扱いおよび位置決めが簡単にできるので、容易で生産性が極めて高くなる。
その他の構造は、第1〜第4実施形態と同様にできる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(a)に本発明の第1実施形態に係る液体塗布具の全体説明図を示し、(b)に塗布部14の縦断面図、(c)に同塗布部の軸方向視図を示す。
【図2】(a)に本発明の第2実施形態に係る液体塗布具の全体説明図を示し、(b)に塗布部の表層部を示し、(c)に同塗布部の内層部を示す。
【図3】(a)に本発明の第3実施形態に係る液体塗布具の全体説明図を示し、(b)および(c)には、塗布部において、吐出口および連通路を塗布部の軸中心に一致させた例(実施例1,2)を示し、(d)は吐出口および連通路を塗布部の軸中心からずらした例(実施例3)を示す。
【図4】本発明の第4実施形態に係る液体塗布具の塗布部を中心として示す拡大説明図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る液体塗布具の塗布部を中心として示す拡大説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1 液体化粧料塗布具
10 軸
10a 先端部
10b 収容空間
10b 液体化粧料収容空間
10d 溝部
12 化粧料
14 塗付部(第1実施形態)
14A 塗布部(第2実施形態)
14B 塗布部(第3実施形態)
14C 塗布部(第4実施形態)
14D 塗布部(第5実施形態)
14a 吐出口
14b 筒状基端部
14c 先端面
14d フランジ部
16 押し出し機構
18 ピストン体
20 軸状部材
22 回転操作部材
24 固定筒状体
26 内筒材
28 先軸
28a 内部通路
30 キャップ
32 外筒キャップ
36 連通路
40 塗布部の表層部
42 塗布部の内層部
46 ブッシュ状部材
46a フランジ部
48 第2の先軸
48a 吐出口
48b 嵌合部
48c ブリッジ部
48d フランジ状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸配設の収容部に25℃においてずり速度5sec−1における粘度が0.3Pa・sec〜50Pa・secの範囲にある化粧料等の塗布液を収容し、軸の先端部に対象部位に接して塗布液を塗付するための柔軟な弾性体からなる塗付部を有し、軸の後端部に押し出し機構を有しており、
塗布部に塗布液を吐出させる吐出口および該吐出口および収容部間を繋ぐ連通路が形成され、押し出し機構の押し出しによって収容部内に収容した塗布液を塗付部の連通路を経由して吐出口から吐出する液体塗布具であって、
前記弾性体の塗付部に設けられる吐出口または連通路の内のりの値D[mm]が、0.5[mm]≦D≦5.0[mm]の範囲であり、
塗布液の粘度μ[Pa・sec]と前記値D[mm]との比μ/Dの値が、0.2〜18.0であることを特徴とする液体塗布具。
【請求項2】
前記塗付部に使用する弾性体が、ゴムまたはエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記塗布部に使用する弾性体が発泡体であることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記発泡体は、連続気泡体であることを特徴とする請求項3に記載の液体塗布具。
【請求項5】
前記塗布部は、その弾性体の光透過率が30%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のうちの1項に記載の液体塗布具。
【請求項6】
前記塗布部は、少なくとも表層部と、該表層部と弾性率の異なる内層部を持つ構成であることを特徴とする請求項1ないし5のうちの1項に記載の液体塗布具。
【請求項7】
前記内層部の弾性率が表層部の弾性率よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の液体塗布具。
【請求項8】
塗付部に使用する弾性体の摩擦係数が0.04〜0.7であることを特徴とする請求項1ないし4のうちの1項に記載の液体塗布具。
【請求項9】
塗付部に設けた弾性体の吐出口は、塗布部の軸中心から外れていることを特徴とする請求項1ないし8のうちの1項に記載の液体塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212282(P2008−212282A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51566(P2007−51566)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】