説明

液体外用消炎鎮痛剤組成物

【解決手段】(A)フェルビナク
(B)ピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン系共重合物から選ばれる1種または2種以上の化合物
(C)ポリエチレングリコール
を含有し、かつpH4〜7であることを特徴とする、液体外用消炎鎮痛剤組成物
【効果】溶解性(透明性)に優れ、かつフェルビナクの薬効が高い液体皮膚外用剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてフェルビナクを含有する液体外用消炎鎮痛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルビナクは消炎鎮痛剤として知られる薬物であり、貼付剤や塗布剤等の外用薬に配合されているが、結晶性が高く水への溶解性が低い。これを水性製剤中に溶解させるためには、製剤をアルカリ性に設定すればよいが、その場合、フェルビナクは組成物中でイオン解離した状態となるため、非解離型にくらべて経皮吸収性が低下し、十分な薬効が得られない場合がある。また、溶剤としてエタノールを使用する手段も考えられるが、フェルビナクの溶解性を高めるにはエタノール配合量を高くする必要があり、皮膚刺激やエタノール臭が課題となる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−199516
【特許文献2】特開2002−302438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フェルビナクの溶解性(透明性)に優れ、その薬効が高く、しかも皮膚刺激性が低い液体外用消炎鎮痛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、メチルピロリドンなどのピロリドン系化合物とポリエチレングリコールを併用することにより、フェルビナクを弱酸性域で水に溶解させることが可能となり、高い薬効が得られることを知見し、本発明を完成した。さらに、l−メントール及び層状ケイ酸塩を添加することにより、消炎鎮痛効果および清涼感に優れた外用消炎鎮痛剤組成物が得られることを見出した。すなわち本発明は、
【0006】
<1>(A)フェルビナク
(B)ピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン系共重合物から選ばれる1種または2種以上の化合物
(C)ポリエチレングリコール
を含有し、かつpH4〜7であることを特徴とする、液体外用消炎鎮痛剤組成物
<2>さらに(D)メントールを含有することを特徴とする、<1>に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物
<3>さらに(E)層状ケイ酸塩を含有することを特徴とする、<1>または<2>に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物
<4>さらに(F)ショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする、<1>〜<3>に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物
<5>塗布用またはエアゾール用である、<1>〜<4>に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明請求項1の構成とすることにより、フェルビナクを弱酸性域で水に溶解させることが可能となり、高い薬効を有する液体外用消炎鎮痛剤を提供することができる。また、請求項2または3の構成とすることにより、消炎鎮痛効果および清涼感の持続性に優れた外用消炎鎮痛剤組成物を提供することができる。さらに、請求項4の構成とすることにより、長期安定性よく塗布時の使用感にも優れた外用消炎鎮痛剤組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に記す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(A)フェルビナク
本発明は、有効成分としてフェルビナクを含有する液体外用消炎鎮痛剤組成物である。本発明におけるフェルビナクの含有量は、液体外用消炎鎮痛剤組成物中、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは2〜6質量%、特に好ましくは3〜5質量%である。含有量が0.1質量%未満の場合は、薬効が十分でない場合があり、10質量%を超えると溶解性が低下し、本発明の効果が十分発揮されない場合がある。
【0009】
(B)ピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン系共重合物から選ばれる化合物(総称して「ピロリドン系化合物」と称する)
本発明に使用されるピロリドンまたはその誘導体としては、2−ピロリドン、N−アルキルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなど)、ピロリドンカルボン酸またはその水溶性塩(ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸カリウム、ピロリドンカルボン酸トリエタノールアミンなど)、ピロリドンカルボン酸エステル(ピロリドンカルボン酸エチルなど)などがあげられる。その中でも、2−ピロリドン、N−アルキルピロリドンを用いるのが好適であり、N−メチル−2−ピロリドンが特に好適である。
【0010】
本発明で使用するポリビニルピロリドンは、皮膚外用剤に使用できるものであれば特に制限なく使用することができ、例えばK値15〜100の範囲のものを使用することができ、好ましくはK値20〜90、より好ましくは25〜50である。なお、K値は、第15改正日本薬局方「ポビドン」の項(1037〜1038ページ)に記載の方法で求められた値である。具体的な例としては、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30が特に好適である。
本発明で使用するビニルピロリドン系共重合物は、モノマー単位としてビニルピロリドンを含む共重合体であり、例えば酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合物が好適に使用できる。
【0011】
上記化合物中、ピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドンが好ましく使用され、塗布時の感触に優れる点で、N−メチル−2−ピロリドンが特に好適である。また、本発明のピロリドン系化合物は、1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0012】
本発明のピロリドン系化合物の含有量は、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、0.1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。0.1質量%未満であると、溶解性が不十分な場合がある。20質量%を超えると組成物の皮膚への塗布感触が損なわれる場合がある。
【0013】
(C)ポリエチレングリコール
本発明に使用されるポリエチレングリコールは、平均分子量100〜25000のものを使用することができ、より好ましくは200〜10000、さらに好ましくは200〜600である。平均分子量は、第15改正日本薬局方「マクロゴール」の項(1050〜1053ページ)に記載の方法に準じて求めることができる。具体的には、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600が特に好ましい。
【0014】
本発明のポリエチレングリコールの含有量は、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、0.5〜25質量%とすることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。0.5質量%未満であると、溶解性が不十分の場合がある。25質量%を超えると塗布感触が損なわれる場合がある。
【0015】
(D)メントール
本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物は、前記フェルビナク(A成分)とメントールとを併用することで、本発明の消炎鎮痛剤組成物の効果をより高くすることができる。特に、メントールの清涼感によって、皮膚に塗布した直後から消炎鎮痛効果の実感を得られるため、好ましい。
メントールは、l−メントールを使用することが好ましい。また、メントールを含有する精油、例えばハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油を使用してもよい。
【0016】
本発明のメントールの含有量は、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、0.1〜15質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。前記範囲とすることで、特に良好な鎮痛効果と清涼感を得ることができる。なお、精油を使用する場合は、配合量は含有するメントールの量を意味する。
【0017】
(E)層状ケイ酸塩
本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、さらに層状ケイ酸塩を配合することにより、メントールを配合した際の清涼感の持続性が向上するため、好ましい。
【0018】
本発明に使用される層状ケイ酸塩は、例えばカオリナイト族(カオリナイト)、パイロフィライト族(パイロフィライト)、タルク族(タルク)、スメクタイト族(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト)、雲母族(マスコバイト、セリサイト)等の種類をあげることができる。また、上記鉱物を主成分としてなる物質も使用することができる。例えば、カオリナイトを主成分とするカオリン、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトやケイ酸アルミニウム及び酸性白土、サポナイトを主成分とするケイ酸アルミニウムマグネシウム、マスコバイトやセリサイトを主成分とするマイカ等を使用することができる。これらは、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、特に、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウムが特に好ましい。
【0019】
本発明の層状ケイ酸塩の含有量は、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、0.01〜1質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。前記範囲とすることで、特に良好な清涼感の持続効果と皮膚への塗布使用感、組成物のを得ることができる。
【0020】
(F)ショ糖脂肪酸エステル
本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、さらにショ糖脂肪酸エステルを配合すると、さらに保存安定性(析出防止)が向上するため好ましい。
本発明で使用するショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸部分が炭素数10〜20の飽和または不飽和の炭化水素基であるものが好ましく、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ酸オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。また、前記ショ糖脂肪酸エステル中、モノエステル体が少なくとも50質量%以上のものを使用することで、フェルビナクの溶解性(透明性)がさらに良好となり好ましい。
【0021】
本発明のショ糖脂肪酸エステルの含有量は、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物中に、0.01〜1質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。前記範囲とすることで、特に優れた外観安定性(析出防止)と塗布使用感を得ることができる。
【0022】
本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物は、フェルビナクの他、消炎鎮痛外用薬に使用される薬物を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。好ましい薬物としては、下記のものがあげられる。
【0023】
抗炎症剤:インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、アズレンスルホン酸ナトリウムなど
局所麻酔剤:リドカイン、メピバカイン、プロカイン、プピバカインなど
血行促進剤:酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミドなど
【0024】
また、本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物は、上記の他、必要に応じて、外用剤組成物に許容される各種成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。それらの成分としては、例えば以下のものがあげられる。
【0025】
・界面活性剤:POE硬化ヒマシ油、POEソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、POE高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤、
・溶解補助剤:グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどの多価アルコール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール
・油性成分:オレイン酸などの高級脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピルなどの高級脂肪酸エステル、オレイルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコール、ロウ、油脂、など
・キレート剤:エデト酸ナトリウムなど
・増粘剤(ゲル化剤):ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、キサンタンガム、プルランなどの水溶性高分子
・pH調整剤・緩衝剤:クエン酸、乳酸などの有機酸、塩酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トロメタモールなど
・防腐剤:パラベン、安息香酸ナトリウムなど
・香料:ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油などの精油、など
・色素:法定色素(染料、顔料、レーキ)
・水
【0026】
本発明の液体外用消炎鎮痛剤組成物の剤型としては、ローション、ジェル、乳液、クリームなどの塗布剤、またはエアゾールなどのスプレー剤として調製し、外用消炎鎮痛製剤とすることができる。

【実施例】
【0027】
表1〜4の液体外用消炎鎮痛剤組成物を定法に従い調整し、各々について、溶解性、消炎鎮痛効果(浮腫抑制率)、清涼感の持続を評価した。
【0028】
(溶解性)
フェルビナク、l−メントールをN−メチル−2−ピロリドン及び/又はポリエチレングリコールに溶解したのち、表1〜4に記載の他成分を常法に従い順次溶解して液体外用鎮痛剤を得た。これをスクリューキャップ付きガラス製バイヤル瓶に充填し、25℃恒温下に1時間静置後、透明性を目視により観察した。評価は下記の基準に従い、結晶析出のない◎及び○を良好と判断した。
(評価基準:◎;無色澄明、○;半透明で析出はない、△;僅かに結晶析出、×;結晶が析出し沈降)
【0029】
(消炎鎮痛効果:浮腫抑制率)
SD系雄性ラットの後足蹠容積を測定後、試験薬剤または対照薬剤を足甲及び大腿部に貼付し、2時間後に薬剤を拭き取り、1%カラゲニン生理食塩液を同足蹠皮下に注射した。カラゲニン接種3時間後に後足蹠容積を再測定し、足蹠容積の増加値を測定した。コントロールの増加値に対する抑制率(%)を評価した。
(評価基準:◎;40%以上、○;30%以上〜40%未満、△;10%以上〜30%未満、×;10%未満)
【0030】
(清涼感の持続)
液体外用鎮痛剤を、ラバー付きポリエチレン容器に充填し、評価用サンプルとした。25℃恒温下において、サンプルを専門パネラー(3名)の左肩に所定量(約5cm3往復)塗布し、塗布20分後の清涼感を下記点数基準に基づき点数化した。評価は、3名の合計点数で評価し、◎○を良好と判断した。
(5点;非常に強い清涼感を感じる、4点;強い清涼感を感じる、3点;清涼感を感じる、2点;弱い清涼感を感じる、1点;非常に弱い清涼感を感じる、又はほとんど清涼感を感じない)
(評価基準:◎;13〜15点、○;10〜12点、△;6〜9点、×;3〜5点)

【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェルビナク
(B)ピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン系共重合物から選ばれる1種または2種以上の化合物
(C)ポリエチレングリコール
を含有し、かつpH4〜7であることを特徴とする、液体外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項2】
さらに(D)メントールを含有することを特徴とする、請求項1に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項3】
さらに(E)層状ケイ酸塩を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項4】
さらに(F)ショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする、請求項1〜3に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物。
【請求項5】
塗布用またはエアゾール用である、請求項1〜4に記載の液体外用消炎鎮痛剤組成物。


【公開番号】特開2010−6790(P2010−6790A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171687(P2008−171687)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】