説明

液体容器用原紙

【課題】 低い針葉樹パルプの配合率でも、折り割れが発生し難く、印刷適性に優れる3層抄き液体容器用原紙を得る。
【解決手段】 内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比を1:2:1〜1:3:1とし、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さを、外層が0.20〜0.36N・m、内層が0.05〜0.28N・mとすることにより、内層の内部破壊を適度に促進させて折り曲げ時にかかる力を分散させることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な耐ピンホール性を有する液体容器用原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
坪量が300g/mを超える液体容器用原紙を製造する際、単層抄きでは、乾燥条件など操業条件の制約があり、また加工時のピンホールなど品質上の問題が発生し易い。ピンホールとは、液体容器をラミネート後、成型する際に折り曲げることにより原紙の折り割れが発生し、それによってラミネート樹脂層が破壊されることを言う。ピンホールが発生した場合には、容器の気密性が確保されないばかりか、内溶液が原紙内に浸透し、容器の漏れや破損を引き起こす恐れがある。
【0003】
また、液体容器を成型する成型方法によっては、原紙の端面が内溶液に接することがあるが、単層抄きでは、パルプ構造を密にするのが難しいため、内溶液が原紙内に浸透し易く、容器の漏れや破損が懸念される。従って、液体容器用原紙においては、比較的パルプ構造を密にすることにより、ピンホールの原因となる折り割れの発生を抑制し、かつ内溶液の浸透を抑制するため、3層抄き抄紙が主流となっている。
【0004】
また、一般に液体容器用原紙は、繊維長が長い針葉樹パルプを全パルプ成分において50〜100%使用することによって、原紙層を強固にし折り割れの発生を抑制している。
【0005】
例えば、特許文献1には、多層抄き板紙の全層に、乾燥紙力剤と湿潤紙力剤を特定量配合することによって層間剥離強度を向上させた液体容器用原紙が開示されている。また、特許文献2には、原紙端面からの液体の浸透を抑制した単層抄き紙の酸性食品用カップ原子が開示されている。
【特許文献1】特開2006−219775号公報
【特許文献2】特開2003−155700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、針葉樹パルプの配合率が高いと、原紙の折り割れは改善するが、地合が悪くなり印刷適性が劣る。また、針葉樹パルプは広葉樹パルプに比べてコストが高いことから、針葉樹パルプの配合率が高くなると、液体容器用原紙の製造コストが嵩むとの問題がある。
【0007】
本発明者らは、かかる問題を解決すべく試験研究を重ねた結果、内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比が1:2:1〜1:3:1であり、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さが、外層は0.20〜0.36N・m、内層は0.05〜0.28N・mとすることにより、内層の内部破壊を適度に促進させて折り曲げ時にかかる力を分散させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の目的とするところは、低い針葉樹パルプの配合率でも、折り割れが発生し難く、印刷適性に優れる3層抄き液体容器用原紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるため、請求項1に記載の発明は、内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比が1:2:1〜1:3:1であり、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さが、外層は0.20〜0.36N・m、内層は0.05〜0.28N・mであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、全パルプ成分において針葉樹パルプの配合比が40%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体容器用原紙によれば、内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比が1:2:1〜1:3:1であり、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さが、外層は0.20〜0.36N・m、内層は0.05〜0.28N・mであるので、内層の内部破壊を適度に促進させて折り曲げ時にかかる力を分散させることができることから、低い針葉樹パルプの配合率でもピンホールの原因となる折り割れの発生を良好に抑制することができると共に、低い針葉樹パルプの配合率が低いので、印刷適性に優れ、さらには低コストの3層抄きの液体容器用原紙を得ることができる。
【0012】
特に、全パルプ成分において針葉樹パルプの配合比が40%以下とすると、一層印刷適性に優れ、また低コストの3層抄きの液体容器用原紙を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体容器用原紙を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の液体容器用原紙は、内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比が1:2:1〜1:3:1であり、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さが、外層は0.20〜0.36N・m、内層は0.05〜0.28N・mである。
【0015】
外層の内部結合強さが0.36N・m又は内層の内部結合強さが0.28N・mを超えると、内部結合強さが高くなり、層内破壊が起こり難くなって耐折り割れ性が悪化し、また、外層の内部結合強さが0.20N・m未満又は内層の内部結合強さが0.05N・m未満であると内部結合強さが低くなり、引張り強度等が低くなって、成型性が悪化する。
【0016】
上記の液体容器用原紙は、各種の抄造装置によって低坪量のシートを調製し、これを数段重ねてプレスし乾燥する方式で、以下のようにして得られるものであり、各単層の調製には長網抄造、円網抄造、各種のフォーマによる抄造を1つあるいは2つ以上を組み合わせて用いている。
【0017】
本発明の液体容器用原紙に使用する原料パルプは、針葉樹漂白クラフトパルプ、広葉樹漂白クラフトパルプ等の化学パルプを主体とし、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、脱墨パルプを適宜配合することが可能である。
【0018】
本発明の液体容器用原紙の外層は、広葉樹に対する針葉樹パルプの配合比が20%以上であることが望ましい。針葉樹パルプの配合比が20%以下では、耐折り割れ性が低くなり、ピンホールが発生し易く、また、引張り強度も低くなるため、胴膨れなどの問題も発生し易くなる。
【0019】
また、本発明の液体容器用原紙の外層に配合する針葉樹パルプのカナダ標準ろ水度は400ml〜550mlであることが望ましい。カナダ標準ろ水度が400ml未満であると、パルプの繊維長が短くなり、折り割れが発生し易くなり、また、550mlを超えると、引張り強度等が低くなり、成型性が悪化する。広葉樹パルプのカナダ標準ろ水度は350ml〜500mlであることが望ましい。カナダ標準ろ水度が350ml未満であると、パルプの繊維長が短くなり、折り割れが発生し易くなり、また500mlを超えると、引張り強度等が低くなり、成型性が悪化する。
【0020】
本発明の液体容器用原紙の外層において、乾燥紙力剤の配合量は、対絶乾パルプ重量に対して0.2%〜0.4%であることが望ましい。配合量が0.2%未満では、引張り強度等が低くなり成型性が悪化し、0.4%を超えると表面が硬くなりすぎ、耐折り割れ性が悪化する。配合する乾燥紙力剤としては、ポリアクリルアミド系紙力剤が好ましい。ポリアクリルアミド系紙力剤の例としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、及び部分カチオン性変性による両性化した両性ポリアクリルアミドものなどが挙げられる。その他乾燥紙力剤としては澱粉、加工澱粉等を用いることもできる。
【0021】
本発明の液体容器用原紙の内層は、針葉樹パルプの配合比が50%以下であることが望ましく、より好ましくは20%以下であると良い。針葉樹パルプの配合比が50%を超えると、内部結合強さが高くなり、層内破壊が起き難くなるため、成型時にかかる力が分散されず、ピンホールが発生し易くなる。
【0022】
また、本発明の液体容器用原紙の内層に配合する針葉樹パルプのカナダ標準ろ水度は450ml〜650mlであることが望ましい。カナダ標準ろ水度が450ml未満であると、内部結合強さが高くなり、層内破壊が起こり難くなって耐折割れ性が悪化し、650mlを超えると、引張り強度等が低くなり、成型性が悪化する。広葉樹パルプのカナダ標準ろ水度は400ml〜550mlであることが望ましい。カナダ標準ろ水度が400ml未満であると、内部結合強さが高くなり、層内破壊が起こり難くなって耐折り割れ性が悪化し、また550ml超えると、引張り強度等が低くなり、成型性が悪化する。
【0023】
本発明の液体容器用原紙の内層において、乾燥紙力剤の配合量は、対絶乾パルプ重量に対して0.05%〜0.2%であることが望ましい。配合量が0.05%未満では、均一な品質が得られず、また、引張り強度等が低くなり成型性が悪化し、0.2%を超えると、内部結合強さが高くなりすぎ、層内破壊が起こり難くなって耐折り割れ性が悪化する。内層に配合する紙力剤は外層に使用するものと同様のものを使用することができる。
【0024】
本発明における耐水性の付与方法は、特に限定されるものではないが、紙製品のサイズに広く利用されているアルキルケテンダイマーとポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤を用いた既知の方法や、ロジンサイズを用いた方法によることができる。
【0025】
本発明の液体容器用原紙の内層及び外層において、ポリアミドエピクロロヒドリン系湿潤紙力剤の配合量は、対絶乾パルプ重量に対して0.05〜0.5重量%、より好ましくは対絶乾パルプ0.1〜0.4重量%とすることが望ましい。配合量が対絶乾パルプ重量に対して0.05重量%より低いと十分な紙力、内部結合強さ、耐酸性が得られず、対絶乾パルプ重量に対して0.5重量%より高いと過剰添加となりコストアップとなる。湿潤紙力剤は、湿潤強度を上げて液体容器用原紙断面部への液体の浸透を防止するだけでなく、アルキルケテンダイマーのパルプへの定着を向上させる効果もある。
【0026】
また、本発明の液体容器用原紙の内層及び外層において、アルキルケテンダイマーのサイズ度を発現するのに必要なpH、アルカリ度を調整するために、炭酸カルシウムもしくは炭酸水素ナトリウム(重曹)を添加することが出来る。配合する炭酸カルシウムもしくは炭酸水素ナトリウムは対絶乾パルプ0.5〜2.0重量%の範囲、より好ましくは対絶乾パルプ0.8〜1.2重量%とすることが望ましい。対絶乾パルプ0.5重量%未満であると十分なサイズ効果は得られずかつ耐酸性も悪く、対絶乾パルプ2.0重量%より高いと高pHによる黄変を招く懸念がある。
【0027】
また、必要に応じて、パルプや添加剤を定着させるための歩留まり向上剤などの各種薬品を添加することも可能である。歩留まり向上剤は、いかなる種類のものでも良いが、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミドなどを用いることができる。
【0028】
本発明で使用する層間接着剤は、特に限定されるものではないが、澱粉やポリアクリルアミドなどが使用される。表面サイズ剤の塗布方法としては特に限定されるものではないが、サイズプレス塗工、ゲートロール塗工等がある。本発明の表面サイズ剤は、特に限定されるものではないが、ラミネートするポリエチレンとの接着性を向上させる目的でエチレンイミン誘導品や酸化澱粉などが使用される。
【実施例】
【0029】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0030】
なお、実施例及び比較例において、折り割れ評価、印刷適性、内部結合強さ、引張り強さについては、以下の方法で評価し、また測定した。
【0031】
<折り割れ評価>
はがきサイズの原紙サンプルに、レーザービームプリンター(CASIO N5300)で黒ベタ印刷後、一定速度、一定圧力で折り曲げ、その際のトナーの割れ具合を下記の5段階で目視評価した。
5:割れが認められない
4:わずかに割れが認められる
3:全体の1〜3割に割れが認められる
2:全体の3〜7割に割れが認められる
1:全体の7〜10割に割れが認められる
<印刷適性>
グラビア印刷時の印刷ムラを目視評価した。
◎:ムラなし
○:局所的にわずかなムラあり
△:全体的にムラ有り
<内部結合強さ>(インターナルボンドテスター)
JAPAN TAPPI No.18−2:2000(紙及び紙板−内部結合強さ試験方法−第2部)インターナルボンドテスタ法に従い、サンプル片面を両面テープで固定台に貼り付け、反対面にはL型金具を貼り付け、これを一定時間加圧接着させた後、ハンマーでL型金具に衝撃を与え、サンプルがL型金具ごと剥離した時の仕事量を測定した。
<引張り強さ>
JIS P8113.1998に従って測定した。
【0032】
[実施例1]
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP、カナダ標準ろ水度(CSF)500ml)50%、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP、CSF450ml)50%の割合で混合し、外層の原料パルプとした。さらに、乾燥紙力剤を対絶乾パルプ重量に対して0.3%、アルキルケテンダイマーを0.5%、湿潤紙力剤を0.13%、重曹を0.5%添加し、外層の紙料とした。
【0033】
NBKP(CSF600ml)20%、LBKP(CSF500ml)80%の割合で混合し、内層の原料パルプとした。さらに、乾燥紙力剤を対絶乾パルプ重量に対して0.1%、アルキルケテンダイマーを0.5%、湿潤紙力剤を0.15%、重曹を0.5%添加し、内層の紙料とした。
【0034】
次に、長網抄紙機にて坪量が外層:内層:外層の重量比が1:2:1となるように3層抄き抄紙を実施した。湿紙は中層の両面に層間接着剤を片面当たり乾燥重量で1.0g/mずつスプレーにて塗布し、プレスにて貼り合わせ、坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0035】
[実施例2]
外層:内層:外層の重量比を1:3:1とした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0036】
[実施例3]
内層のパルプ配合比をNBKP:LBKP=50:50とし、CSFをNBKPは500ml、LBKPは450mlとし、内層の乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.3%とした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0037】
[実施例4]
外層のLBKPのCSFを500mlとし、内層のNBKPのCSFを500mlとした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0038】
[実施例5]
(実施例1において、)外層のパルプの配合をNBKPのみとし、(乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.3%とし、)内層のNBKPのCSFを500mlとした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0039】
[比較例1]
外層、内層ともにCSF500mlのNBKPのみを用い、内層の乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.3%とした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0040】
[比較例2]
外層のパルプ配合比をNBKP:LBKP=20:80とし、LBKPのろ水度を500mlとし、乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.1%とした。また、内層のNBKPのCSFを500mlとした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0041】
[比較例3]
外層のパルプ配合比をNBKP:LBKP=20:80とし、LBKPのCSFを500mlとし、内層のNBKPのCSFを500mlとした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0042】
[比較例4]
外層のパルプ配合比をNBKP:LBKP=20:80とし、LBKPのCSFを500mlとし、乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.1%とした。また、内層に配合するパルプをNBKPのみとし、NBKPのCSFを500mlとした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0043】
[比較例5]
内層の乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.5%とした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0044】
[比較例6]
外層:内層:外層の重量比を1:1:1とし、内層の乾燥紙力剤の配合量を対絶乾パルプ重量に対して0.3%とした以外は、実施例1と同様にして坪量310g/mの液体容器用原紙を得た。
【0045】
実施例および比較例の液体容器用原紙の評価・測定結果は、表1、表2に示した。
【表1】

【表2】

【0046】
表1、表2に示される実施例1〜5より明らかなように、外層:内層:外層の重量比、外層及び内層の内部結合強さを本発明の範囲内とすることにより、好適な引張り強度と耐折り割れ性を備え、かつ低コストで生産可能な液体容器用原紙の製造が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と該内層の両面に設けられた外層の3層の紙層からなる液体容器用原紙であって、外層:内層:外層の重量比が1:2:1〜1:3:1であり、J.TAPPI No.18−2:2000に規定される内部結合強さが、外層は0.20〜0.36N・m、内層は0.05〜0.28N・mであることを特徴とする液体容器用原紙。
【請求項2】
全パルプ成分において針葉樹パルプの配合比が40%以下であることを特徴とする請求項1記載の液体容器用原紙。

【公開番号】特開2009−242999(P2009−242999A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92144(P2008−92144)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(502394520)日本紙パック株式会社 (33)
【Fターム(参考)】