説明

液体封止型光装置

【課題】 液体封止型光装置の環境温度の変化は、屈折率整合液の体積の膨張収縮を引き起こす。従来の液体封止型光装置では、空間の内壁に加わる圧力は温度上昇により高まり、高温下では接合部分から液漏れを生じやすいという問題を抱えていた。本発明は、このような問題を解決するために、液漏れの生じにくい液体封止型光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明の液体封止型光装置では、光学部品を配置するための封止空間を有する光学部品パッケージ内の屈折率整合液の体積が膨張収縮しても、その膨張収縮を吸収するために、容積の変化する封止空間を有する液体溜めを備え、光学部品パッケージ内と液体溜めとを通路で接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品を内包することのできる液体封止型光装置に関する。特に、液体封止型光装置の内部に所定の屈折率の光学部品と屈折率整合をとった液体を充填した液体封止型光装置について温度特性の改善を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光素子を内部に配置する光装置は、光素子と空気との間の屈折率不整合による反射や拡散が光の通過損失となるため、光素子を配置する内部空間に液体を充填していた。従来の液体封止型光装置の例を図1、図2に示す。図1は、従来の液体封止型光装置の平図面を表す。図2は、図1のA、A’矢線における断面図を表す。図1、図2において、50は従来の液体封止型光装置、51は光導波路層、52は光導波路基板、53はMicro−Electro−Mechanical System (MEMS)、54はMEMS基板、55は光導波路層51とMEMS53に挟まれた空間、56は接続封止層、57−1は入力側光ファイバ列、57−2は透過出力側光ファイバ列、57−3は反射出力側光ファイバ列、58は光導波路、59はスリット、60は可動ミラーである。
【0003】
図1において、従来の液体封止型光装置50の内部では、入力側光ファイバ列57−1を入力とし、透過出力側光ファイバ列57−2と反射出力側光ファイバ列57−3とを出力とするマトリクスの交点位置にそれぞれ可動ミラーが配置されている。入力側光ファイバ列57−1から入力された光は、光導波路層51内を伝搬し、可動ミラー(図示せず)の挿抜によって、透過出力側光ファイバ列57−2か反射出力側光ファイバ列57−3かに出力される。
【0004】
図2において、光導波路基板52に支持された光導波路層51内には、光導波路58が形成されている。光導波路58には、入力側光ファイバ列57−1と透過出力側光ファイバ列57−2が接続される。また、光導波路58の途中にはスリット59が形成され、MEMS53からスリット59に可動ミラー60が挿抜される。MEMS53はMEMS基板54に支持されている。
【0005】
次に、図2を用いて従来の液体封止型光装置の動作を説明する(例えば、非特許文献1参照)。入力側光ファイバ列57−1から入力された光は、光導波路58内を伝搬する。MEMS53から可動ミラー60がスリット59に挿入されると、光は可動ミラー60で反射され反射出力側光ファイバ列(図示せず)に出力される。可動ミラー60がスリット59からMEMS53に格納されると、光は透過して、透過出力側光ファイバ列57−2に出力される。
【0006】
ここで、光導波路58はガラスで構成され、その屈折率は一般的に1.5程度と空気よりも高くなる。このため、光導波路58を伝搬した光はスリット59で、拡散し、かつ反射も生じるため、光損失が大きくなる。光損失を減少させるため、MEMS53と光導波路層51で挟まれた空間55を接続封止層56で封止し、空間55内に屈折率整合液を充填する。
【0007】
しかし、液体封止型光装置に標準的に求められる−40度Cから+85度Cまでの環境温度の変化は、屈折率整合液の体積の膨張収縮を引き起こす。屈折率整合液の一般的な熱膨張率は10−3/deg程度であることから、温度変化による屈折率整合液の体積変化は中間値の20度Cに対して±5%程度の値となる。かかる膨張収縮は空間55内で静水圧として加わる。このため、従来の液体封止型光装置では、空間55の内壁に加わる圧力は温度上昇により高まり、高温下ではMEMS53と光導波路層51との接合部分から液漏れを生じやすいという問題を抱えていた。
【0008】
【非特許文献1】“Micromachined 2×2 Optical Switch Array by Stress−Induced Bending”、 M. Katayama et al., Technical Digest Fourth International Topical Meeting on Contempoary Photonic Technologies (CPT2001), pp.27−28, mc−4, Jan. 15−17, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために、液漏れの生じにくい液体封止型光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願第一発明の液体封止型光装置では、光学部品を配置するための封止空間を有する光学部品パッケージ内の屈折率整合液の体積が膨張収縮しても、その膨張収縮を吸収するために、容積の変化する封止空間を有する液体溜めを備え、光学部品パッケージ内と液体溜めとを通路で接続した。
【0011】
具体的には、本願第一発明は、内部に光学部品を配置することのできる封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、前記光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めと、を備える液体封止型光装置である。
【0012】
本願第一発明の液体封止型光装置により、光学部品パッケージ内に温度変化等により体積が膨張収縮する屈折率整合液を充填しても、容積の変化する液体溜めとの間で通路を通して屈折率整合液を交換することによって、屈折率整合液の体積の膨張収縮を吸収することができ、屈折率整合液の液漏れを防止することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本願第二発明の液体封止型光装置では、光を通す光学部品及び当該光学部品と略等しい屈折率を有する屈折率整合液を内部に配置して封止された封止空間を有する光学部品パッケージ内の屈折率整合液の体積が膨張収縮しても、その膨張収縮を吸収するために、容積の変化する封止空間を有する液体溜めを備え、光学部品パッケージ内と液体溜めとを通路で接続した。
【0014】
具体的には、本願第二発明は、光を通す所定の屈折率の光学部品を内部に配置して封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、前記光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めと、前記光学部品パッケージ及び前記液体溜めに充填された前記所定の屈折率に略等しい屈折率の液体と、を備える液体封止型光装置である。
【0015】
本願第二発明の液体封止型光装置により、温度変化等により光学部品パッケージ内の屈折率整合液の体積が膨張収縮しても、容積の変化する液体溜めとの間で通路を通して屈折率整合液を交換することによって、屈折率整合液の体積の膨張収縮を吸収することができ、屈折率整合液の液漏れを防止することができる。
【0016】
本願第一発明の液体封止型光装置又は本願第二発明の液体封止型光装置において、前記光学部品パッケージは、対向する2つの内面と側壁面で封止空間が構成され、前記2つの内面のうち少なくとも一方に凹部を有することが望ましい。
【0017】
本発明により、外部から浸入した気泡を前記凹部に保持することができ、気泡が光学部品に接することによって光学特性が変化することを防止することができる。
【0018】
本願第一発明の液体封止型光装置又は本願第二発明の液体封止型光装置において、前記通路は、前記光学部品パッケージと前記液体溜めとを接続するパイプであることが望ましい。
【0019】
本発明により、光学部品パッケージと液体溜めとを簡単に接続でき、かつ、液体漏れを防止することができる。
【0020】
本願第一発明の液体封止型光装置又は本願第二発明の液体封止型光装置において、前記通路は、前記光学部品パッケージの基板と蓋部との間に形成され、前記基板又は前記蓋部の少なくとも一方に形成された溝であることが望ましい。
【0021】
本発明により、新たな部品を追加することなく光学部品パッケージと液体溜めとを簡単に接続でき、かつ、液体漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば液体封止型光装置で使用環境温度が変化しても、内圧の上昇下降を抑圧することが可能となり、液漏れの生じにくい液体封止型光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
添付の図面を参照して本願発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本願発明の構成の例であり、本願発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態の液体封止型光装置は、内部に光学部品を配置することのできる封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、当該光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めとを備える液体封止型光装置である。光学部品パッケージには光を通す所定の屈折率の光学部品を内部に配置してもよい。また、光学部品の屈折率と略等しい屈折率の屈折率整合液を光学部品パッケージ及び液体溜めに充填してもよい。
【0025】
図3は、本実施形態の液体封止型光装置の平面図である。液体封止型光装置の内部構造は破線で示している。図4は、図3における矢線A、A’での断面図である。
【0026】
図3及び図4において、10は光学部品パッケージ、11は光学部品パッケージ10の基板、12は光学部品パッケージ10の封止するキャップ、13は光学部品パッケージ10の側壁、14は光学部品パッケージ10の内部に配置する光学部品の屈折率と略等しい屈折率を有する屈折率整合液、15は凹部、21及び22は屈折率整合液14を溜める液体溜め、31及び32はそれぞれ液体溜め21又は22と光学部品パッケージ10とを接続する通路としてのパイプである。
【0027】
図3においては、2つの液体溜めを備えているが、1つであっても3つ以上であってもよい。また、図3及び図4における凹部15は必須ではない。
【0028】
図3及び図4を使用して本実施形態の液体封止型光装置の構造を説明する。基板11の上面で光学部品を配置する位置が側壁13で囲われている。囲われる形状は四角形等の多角形でも円形でもよい。基板11及び側壁13の材料は、Si、ガラス、石英、セラミック等が利用できる。
【0029】
パイプ31又は32は、基板11の上面に設置される。基板11に溝を掘って、パイプ31又は32を埋めてもよい。溝はダイシングやサンドブラストで掘ることができる。パイプ31及び32の片端にはそれぞれ液体溜め21又は22が接続されている。液体溜め21及び22の材料は、ゴム、Si樹脂等の伸縮性に富む材料でもよいし、金属、プラスチック、エンジニアリングプラスチック等でもよい。液体溜め21及び22は蛇腹のように伸び縮みの容易な形状でもよいし、伸縮性に富む材料で構成する場合は風船のような球体形状でもよい。図3及び図4では、液体溜め21及び22は基板11の外側に配置されているが、基板11の上面に配置されていてもよい。
【0030】
基板11、側壁13及びキャップ12で囲まれた光学部品パッケージ10の内部並びに液体溜め21及び22に屈折率整合液14が充填されている(図4(2))。屈折率整合液14は、光学部品パッケージ10の内部に配置される光学部品の屈折率と略等しい屈折率とする。略等しい屈折率とすることにより、光学部品と空気中との境界を通過しても、屈折率不整合による反射や、屈折率差による拡散を防止することができる。
【0031】
また、液体溜め21及び22は、内部圧力の変化に対して光学部品パッケージ10よりも容積変化が容易にしておく。容積変化が容易になるように、液体溜め21又は22の少なくとも一部を伸縮性に富む材料で構成してもよいし、伸び縮みの容易な形状としてもよい。
【0032】
通常の屈折率整合液14は温度の上昇によって体積が膨張する。温度の上昇によって屈折率整合液14の体積が膨張しても、屈折率整合液14の体積の膨張を容積変化の容易な液体溜め21及び22で吸収する(図4(1))。図4(1)では、屈折率整合液14が液体溜め21及び22に移動することによって、液体溜め21の容積が拡大して光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。
【0033】
逆に、屈折率整合液14の体積が温度の下降によって収縮しても、屈折率整合液14の体積の収縮を容積変化の容易な液体溜め21及び22で吸収する(図4(3))。図4(3)では、屈折率整合液14が液体溜め21及び22から光学部品パッケージ10に移動することによって、液体溜め21の容積が縮小して光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の液体封止型光装置は、温度が変化しても、光学部品パッケージと容積の変化する液体溜めとの間で通路を通して屈折率整合液が移動することによって、屈折率整合液の体積の膨張、収縮を吸収することができ、屈折率整合液の液漏れを防止することができる。
【0035】
(実施の形態2)
本実施形態の液体封止型光装置は、内部に光学部品を配置することのできる封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、当該光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めとを備える液体封止型光装置である。光学部品パッケージには光を通す所定の屈折率の光学部品を内部に配置してもよい。また、光学部品の屈折率と略等しい屈折率の屈折率整合液を光学部品パッケージ及び液体溜めに充填してもよい。実施形態1の液体封止型光装置との違いは、液体溜めを光学部品パッケージの基板上に設置したことである。
【0036】
図5は、本実施形態の液体封止型光装置の平面図である。液体封止型光装置の内部構造は破線で示している。図6及び図7は、図5における矢線B、B’での断面図である。
【0037】
図5、図6及び図7において、10は光学部品パッケージ、11は光学部品パッケージの基板、12は光学部品パッケージの封止するキャップ、13は光学部品パッケージの側壁、14は光学部品パッケージの内部に配置する光学部品の屈折率と略等しい屈折率を有する屈折率整合液、15は凹部、23及び24は屈折率整合液14を溜める液体溜め、33及び34はそれぞれ液体溜め23又は24と光学部品パッケージ10とを接続する通路としてのパイプ、25は空気、26は液体溜めの側部、27は液体溜めのカバーである。
【0038】
図5においては、2つの液体溜めを備えているが、1つであっても3つ以上であってもよい。また、図5、図6及び図7における凹部15は必須ではない。
【0039】
図5、図6及び図7を使用して本実施形態の液体封止型光装置の構造を説明する。基板11の上面で光学部品を配置する位置が側壁13で囲われている。囲われる形状は四角形等の多角形でも円形でもよい。基板11及び側壁13の材料は、Si、ガラス、石英、セラミック等が利用できる。
【0040】
パイプ33又は34は、基板11の上面に設置される。基板11に溝を掘って、パイプ33又は34を埋めてもよい。溝はダイシングやサンドブラストで掘ることができる。
【0041】
パイプ33及び34の片端にはそれぞれ液体溜め23又は24が接続されている。液体溜め23及び24の側部26又はカバー27の材料は、ゴム、Si樹脂等の伸縮性に富む材料でもよいし、金属、プラスチック、エンジニアリングプラスチック等でもよい。液体溜め23及び24の側部26は蛇腹のように伸び縮みの容易な形状でもよい。液体溜め23及び24のカバー27は同心円の波板のように膨らんだり凹んだりすることの容易な形状でもよい。図5、図6及び図7では、液体溜め23及び24は基板11の光学部品パッケージ10と同じ面の側に配置されているが、基板11の光学部品パッケージ10と反対側に配置されていてもよい。反対側に配置されている場合は、光学部品パッケージ10と液体溜め23及び24とはスルーホールで接続される。
【0042】
基板11、側壁13及びキャップ12で囲まれた光学部品パッケージ10の内部並びに液体溜め23及び24に屈折率整合液14が充填されている(図6(2)、図7(2))。屈折率整合液14は、光学部品パッケージ10の内部に配置される光学部品の屈折率と略等しい屈折率とする。略等しい屈折率とすることにより、光学部品と空気中との境界を通過しても、屈折率不整合による反射や、屈折率差による拡散を防止することができる。
【0043】
また、液体溜め23及び24は、内部圧力の変化に対して光学部品パッケージ10よりも容積変化が容易にしておく。容積変化が容易になるように、液体溜め23又は24のカバー27を伸縮性に富む材料で構成してもよいし、膨らんだり凹んだりすることの容易な形状としてもよい(図6(2))。また、液体溜め23又は24の側部26を伸縮性に富む材料で構成してもよいし(図7(2))、伸び縮みの容易な形状としてもよい(図7(2))。
【0044】
通常の屈折率整合液14は温度の上昇によって体積が膨張する。温度の上昇によって屈折率整合液14の体積が膨張しても、屈折率整合液14の体積の膨張を容積変化の容易な液体溜め23及び24で吸収する(図6(1)、図7(1))。図6(1)では、屈折率整合液14が液体溜め23及び24に移動することによって、液体溜め23のカバー27が外に膨らみ光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。図7(1)では、屈折率整合液14が液体溜め23及び24に移動することによって、液体溜め23の側部26が伸びて光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。
【0045】
逆に、屈折率整合液14の体積が温度の下降によって収縮しても、屈折率整合液14の体積の収縮を容積変化の容易な液体溜め23及び24で吸収する(図6(3)、図7(3))。図6(3)では、屈折率整合液14が液体溜め23及び24から光学部品パッケージ10に移動することによって、液体溜め23のカバー27が内に膨らみ光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。図7(3)では、屈折率整合液14が液体溜め23及び24から光学部品パッケージ10に移動することによって、液体溜め23の側部26が縮んで光学部品パッケージ10内の圧力変化を緩和することができる。
【0046】
さらに、液体溜め23又は24に空気25を封入することによって、屈折率整合液14の体積の膨張、収縮を空気25にも吸収させてもよい(図6、図7)。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の液体封止型光装置は、温度が変化しても、光学部品パッケージと容積の変化する液体溜めとの間で通路を通して屈折率整合液が移動することによって、屈折率整合液の体積の膨張、収縮を吸収することができ、屈折率整合液の液漏れを防止することができる。
【0048】
(実施形態3)
本実施形態の液体封止型光装置は、光学部品パッケージが、対向する2つの内面と側壁面で封止空間が構成され、当該内面のうち少なくとも一方に凹部を有する。光学部品パッケージには光を通す所定の屈折率の光学部品を内部に配置してもよい。また、光学部品の屈折率と略等しい屈折率の屈折率整合液を光学部品パッケージ及び液体溜めに充填してもよい。
【0049】
図8は、本実施形態の液体封止型光装置の断面図である。図8は、実施の形態2で説明した液体封止型光装置の凹部を必須構成要素とし、液体封止型光装置の内部に気泡を持たせたものである。図8において、10は光学部品パッケージ、11は光学部品パッケージ10の基板、12は光学部品パッケージ10の封止するキャップ、13は側壁面としての光学部品パッケージ10の側壁、14は光学部品パッケージ10の内部に配置する光学部品の屈折率と略等しい屈折率を有する屈折率整合液、15は基板10に設けられた凹部、16は屈折率整合液に含まれる気泡、23は屈折率整合液14を溜める液体溜め、25は空気、26は液体溜め23の側部、27は液体溜め23のカバー、33はそれぞれ液体溜め23と光学部品パッケージ10とを接続するパイプである。基板11とキャップ12とで対向する2つの内面を形成する。ここでは、実施の形態2で説明した液体封止型光装置の凹部を必須構成要素とした例を説明するが、実施の形態1で説明した液体封止型光装置の凹部を必須構成要素としてもよい。
【0050】
図8においては、1つの凹部15を備えているが、1つであっても2つ以上であってもよい。凹部15はパイプ33の端部に持たせることが好ましい。液体溜め23からの空気25が光学部品パッケージ10にパイプ33を通過してきたときに、容易に空気を気泡として固定することができる。光学部品パッケージ10内での気泡16又は液体溜め23の空気25があればよい。空気又は気泡は、液体封止型光装置を封入する際に気体を混入させてもよいし、液体に溶解させた気体を液体封止型光装置内で分離させてもよい。
【0051】
図8を使用して本実施形態の液体封止型光装置の構造を説明する。実施の形態1又は2で説明した構成と同じ内容については説明を省略する。凹部15での基板11とキャップ12との間の高さは、封止された光学部品パッケージ10のどの部分よりも高いことが望ましい。気泡が高い凹部と低い凹部に跨って存在する場合には、それぞれの液体と気泡の境界における表面張力に起因する圧力差によって低い凹部から高い凹部に押し戻されるという、毛細管現象によるためである。この結果、気泡は最も高い凹部内に滞留しつづけるので、光学部品パッケージ内の光学部品を配置した場所に侵入して光路を遮ることがない。
【0052】
また、凹部15は基板11又はキャップ12のいずれかに設けてもよい。好ましくは、両側の同じ位置に設けることである。両側に凹部を設けることによって集合した気泡の固定が容易になる。
【0053】
図8において、光学部品パッケージ10に充填した屈折率整合液14の中に気泡16を持たせると、屈折率整合液の膨張、収縮による内圧の変化を緩和することができる。気泡は光学部品パッケージ10だけに持たせてもよいし、液体溜め23だけに持たせてもよい(図8の空気25)。また、光学部品パッケージ10及び液体溜め23の両方に持たせてもよい。
【0054】
光学部品パッケージ10又は液体溜め23に封入する気泡として、例えば窒素等の不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスであれば、充填する屈折率整合液との反応がなく、屈折率整合液が変質することもなく、また気泡が消失することもない。
【0055】
凹部15の個数は1箇所だけに限らず、複数箇所に設けてもよい。また、その形状は円形や多角形に限らず、光学部品パッケージ10の内部周囲に溝を形成してもよい。光学部品パッケージ10の内部周囲に溝を形成すると、封止された空間での占有体積を大きくできるばかりでなく、液体封止型光装置がどのような向きに設置されても、気泡が凹部15に集合する時間を短縮することができる。
【0056】
次に、凹部の形成方法について説明する。凹部を形成するプロセスは、一般的には光導波体又は駆動体を通常の半導体製造プロセスであるドライエッチングやウェットエッチングでもよい。しかし、凹部の加工精度はせいぜい数十μmで十分であるため、サンドブラスト加工でもよい。サンドブラスト加工によれば、他の形成方法に比べて効率よく凹部を形成することができる。また、ドライエッチングやウェットエッチングに比較して、加工表面粗さが大きいため、集合した気泡の合体を促進する効果も期待することが出来る。
【0057】
(実施形態4)
本実施形態の液体封止型光装置は、実施形態1から3で説明した通路としてのパイプに替えて、光学部品パッケージの基板と蓋部との間に形成され、当該基板又は当該蓋部の少なくとも一方に形成された溝を適用するものである。
【0058】
本発明の液体封止型光装置では、光学部品パッケージと液体溜めとの間に屈折率整合液を移動させる通路が必要となる。通路としては、実施の形態1から3で説明したようなパイプを利用してもよいが、基板又は蓋部の少なくとも一方に形成された溝を通路としてもよい。特に、実施の形態2又は3で説明したように、液体溜めを基板上に設置した場合は、基板又は蓋部の少なくとも一方に形成された溝を、光学部品パッケージと液体溜めとの間に屈折率整合液を移動させる通路として利用することができる。
【0059】
図9及び図10は、基板と蓋部との間に形成する溝の形状を説明する溝の断面図である。図9及び図10において、11は光学部品パッケージの基板、35は蓋部、36、37、38、39、40及び41は光学部品パッケージの基板11と蓋部35との間に形成された溝である。
【0060】
図9を用いて溝について説明する。実施の形態1又は2において、光学部品パッケージの側壁と液体溜めとの間の基板11に溝を形成し、光学部品パッケージの側壁と液体溜めとの間の溝の上部に溝を形成した蓋部35を被せることによって、溝を通路として利用する。基板の溝の一端は光学部品パッケージの内部まで、基板の溝の他端は液体溜めの内部まで形成する。溝を通路として光学部品パッケージ内部と液体溜め内部との間で屈折率整合液を移動させることができる。望ましくは光学部品パッケージの内部の凹部まで形成することである。光学部品パッケージ内部と液体溜め内部との間で気泡が移動したときに、凹部に気泡を滞留させることが容易になる。蓋部の溝に続くように、光学部品パッケージの側壁及び液体溜めの側壁に孔を設けることが望ましい。光学部品パッケージ内部と液体溜め内部との間の屈折率整合液の移動が容易になる。
【0061】
溝の断面の形状は問わない。例えば、円形(図9(1))でも、菱形(図9(2))でも、四角形(図9(3))でもよい。
【0062】
図10を用いて溝について説明する。実施の形態1又は2において、光学部品パッケージの側壁と液体溜めとの間の基板11に溝を形成し、光学部品パッケージの側壁と液体溜めとの間の溝の上部に蓋部35を被せることによって、溝を通路として利用する。基板の溝の一端は光学部品パッケージの内部まで、基板の溝の他端は液体溜めの内部まで形成する。溝を通路として光学部品パッケージ内部と液体溜め内部との間で屈折率整合液を移動させることができる。望ましくは光学部品パッケージの内部の凹部まで形成することである。光学部品パッケージ内部と液体溜め内部との間で気泡が移動したときに、凹部に気泡を滞留させることが容易になる。
【0063】
溝の断面の形状は問わない。例えば、半円形(図10(1))でも、三角形(図10(2))でも、四角形(図10(3))でもよい。
【0064】
図10では、基板11に溝を形成しているが、蓋部にだけ溝を形成してもよい。この場合は、蓋部の溝に続くように、光学部品パッケージの側壁及び液体溜めの側壁に孔を設ける。
【0065】
ここで説明した溝は、基板又は蓋部をダイシング加工又はサンドブラスト加工によって形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、屈折率整合液を充填した液体封止型の光装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来の液体封止型光装置の例を説明する平面図である。
【図2】従来の液体封止型光装置の例を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態である液体封止型光装置の例を示す断面図である。
【図9】基板と蓋部との間に形成する溝の形状を説明する溝の断面図である。
【図10】基板と蓋部との間に形成する溝の形状を説明する溝の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10:光学部品パッケージ
11:光学部品パッケージの基板
12:光学部品パッケージの封止するキャップ
13:光学部品パッケージの側壁
14:屈折率整合液
15:凹部
16:屈折率整合液に含まれる気泡
21、22、23、24:屈折率整合液を溜める液体溜め
25:空気
26:液体溜めの側部
27:液体溜めのカバー
31、32、33、34:液体溜めと光学部品パッケージとを接続するパイプ
35:蓋部
36、37、38、39、40、41:光学部品パッケージの基板と蓋部との間に形成された溝
50:従来の液体封止型光装置
51:光導波路層
52:光導波路基板
53:Micro−Electro−Mechanical System
54:MEMS基板
55:光導波路層とMEMSに挟まれた空間
56:接続封止層
57−1:入力側光ファイバ列
57−2:透過出力側光ファイバ列
57−3:反射出力側光ファイバ列
58:光導波路
59:スリット
60:可動ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に光学部品を配置することのできる封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、
前記光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めと、
を備える液体封止型光装置。
【請求項2】
光を通す所定の屈折率の光学部品を内部に配置して封止された封止空間を有する光学部品パッケージと、
前記光学部品パッケージと通路で接続され、容積の変化する封止空間を有する液体溜めと、
前記光学部品パッケージ及び前記液体溜めに充填された前記所定の屈折率に略等しい屈折率の液体と、
を備える液体封止型光装置。
【請求項3】
前記光学部品パッケージは、対向する2つの内面と側壁面で封止空間が構成され、前記2つの内面のうち少なくとも一方に凹部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体封止型光装置。
【請求項4】
前記通路は、前記光学部品パッケージと前記液体溜めとを接続するパイプであることを特徴とする請求項1から3に記載のいずれかの液体封止型光装置。
【請求項5】
前記通路は、前記光学部品パッケージの基板と蓋部との間に形成され、前記基板又は前記蓋部の少なくとも一方に形成された溝であることを特徴とする請求項1から3に記載のいずれかの液体封止型光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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