説明

液体急結剤

【課題】急結性、付着厚付け性、強度発現性およびコンクリート吹付けノズルの作業性に優れ、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、長期間において低温から高温下までの貯蔵安定性に優れた液体急結剤を提供する。
【解決手段】本発明の液体急結剤は、アルミニウムをAl換算で1重量部に対し、マグネシウムをMgO換算で0.05〜1重量部、硫酸根をSO換算で0.9〜2.7重量部の割合で含有する混合物に、F換算で0.05〜1重量部のフッ化水素酸を90℃以下の温度で反応させて得られる硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を含有する液体急結剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体急結剤に関する。詳しくは、本発明は、アルカリ金属を使用しないあるいは少量のアルカリ金属を使用し、急結性、付着厚付け性、強度発現性およびコンクリート吹付けノズルの作業性に優れ、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、長期間において低温から高温下までの貯蔵安定性に優れた液体急結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面やトンネル掘削など、露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をモルタルやコンクリートなどのセメント組成物に混合した急結性モルタルやコンクリートを吹付け面に吹き付け施工する吹付け工法が用いられている。一般的に急結剤としては、アルミン酸、ケイ酸、炭酸等のアルカリ金属塩(ナトリウムやカリウム)が多用されている。これらの化合物は、高いアルカリ性を有しているため、吹付け作業での環境上、人体への悪影響が強く、例えば、皮膚を腐食し、眼炎又は角膜腐食を引き起こし視力を損なう危険性がある。
【0003】
さらに、ナトリウムやカリウムのアルカリ金属を多量に含有する急結剤は、これらに起因してコンクリート中の骨材とアルカリ骨材反応を誘発する危険性があるために、コンクリートの耐久性上、好ましいものではない。すなわち、吹付けコンクリートは、一般的に単位セメント量が多いためにセメントから導入されるアルカリ量(ナトリウムやカリウム)が大きく、アルカリ骨材反応を発生させる可能性が高い。このため、吹付けコンクリートには反応性骨材を使用しないことが標準となっている。しかし、工事現場によっては、アルカリ骨材反応に無害な骨材の入手が困難な場合もあり、この対策の一つとして、アルカリ金属を含まない、あるいは含有量が少ない急結剤の使用が望まれている。
【0004】
このような現況において、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム及びアルミニウムのフッ化物を成分とする酸性の液体急結剤が提案されている。
【0005】
例えば、アルミニウムの酸性又は塩基性溶液であってその陰イオン又は陽イオンがコンクリートを浸食しないもの、ケイ酸リチウム、及び、アルミン酸リチウムよりなる群から選択された少なくとも1種以上を含有するコンクリート急結剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、アルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩などと、錯体形成剤、腐食防止剤よりなるアルカリ及び塩化物を含まない促進剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、水溶性フッ化物を含有するアルミニウム塩、硫酸塩、アルカリ金属及び塩化物を含まない促進剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、アルミニウム、イオウ、ナトリウム、及びフッ素を含有する液体急結剤が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムとフッ化水素酸との反応で得られるフッ化物含有水溶性アルミニウム塩、硫酸アルミニウムや塩基性硫酸アルミニウム等の硫酸塩含有水溶性アルミニウム塩からなり、アルカリ金属及び塩化物を含まない促進剤が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
しかし、前記の技術では未だ充分な性能、すなわち、急結性、付着厚付け性、強度発現性、コンクリート吹付けノズルの作業性、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、人体に対する安全性、貯蔵安定性を兼ね備えた液体急結剤が得られていない。本発明者らは、アルカリ金属がコンクリートの初期強度発現性を向上するという効果に着目し、特願2003−62114に、硫酸アルミニウム、アルカノールアミン、フッ化水素酸、及びアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩などを含有する液体急結剤を提案した。しかし、この液体急結剤は、急結性と初期強度発現性は優れているものの低温下での溶液安定性が十分ではなく、アルカリ骨材反応を助長する可能性もあった。
【特許文献1】特開2001−130935号公報
【特許文献2】特開2001−180994号公報
【特許文献3】特開2002−29801号公報
【特許文献4】特開2002−47048号公報
【特許文献5】特開2002−80250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、急結性、付着厚付け性、強度発現性およびコンクリート吹付けノズルの作業性に優れ、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、低温から高温下における長期間、貯蔵安定性に優れた液体急結剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解消すべく検討を行った結果、アルミニウム、マグネシウム及び硫酸根を特定の割合で含有する混合物に、フッ化水素酸を特定温度以下で反応させて得られる硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩が、急結性、付着厚付け性、強度発現性および溶液安定性の課題をすべて解決できるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、アルミニウムをAl換算で1重量部に対し、マグネシウムをMgO換算で0.05〜1重量部、硫酸根をSO換算で0.9〜2.7重量部の割合で含有する混合物に、F換算で0.05〜1重量部のフッ化水素酸を90℃以下の温度で反応させて得られる硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を含有する液体急結剤に関する。
【0010】
また、本発明は、アルミニウムの供給源が、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1種または2種以上のアルミニウム化合物である、前記液体急結剤に関する。
【0011】
さらに、本発明は、マグネシウムの供給源が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ギ酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上のマグネシウム化合物である、前記液体急結剤に関する。
【0012】
また、本発明は、硫酸根の供給源が、硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄からなる群から選択される1種または2種以上の硫酸化合物である、前記液体急結剤に関する。
【0013】
さらに、本発明は、C〜C10の有機モノ、ジカルボン酸ならびにそれらの金属塩からなる群から選択される1種または2種以上を配合してなる、前記液体急結剤に関する。
【0014】
また、本発明は、アルカノールアミン、アルキレンジアミン、トリアミンからなる群から選択される1種または2種以上を配合してなる、前記液体急結剤に関する。
【0015】
また、本発明は、溶液の固形分濃度が30〜52%であり、かつ、粘度が200mPa・s(20℃)以下である前記液体急結剤に関する。
【0016】
さらに、本発明は、全アルカリが1%未満である、前記液体急結剤に関する。
【0017】
また、本発明は、前記液体急結剤の乾式又は湿式吹付け工法に適用する吹付けモルタル又はコンクリートへの使用に関する。
【0018】
さらに、本発明は、前記液体急結剤を輸送管、散水ノズルまたは吹付けノズル内で、モルタル又はコンクリートなどのセメント組成物に急結剤供給装置を用いて直接混合物に添加するか、または配合水に添加するようにした、乾式又は湿式吹付け工法に関する。
【0019】
また、本発明は、ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤又は高性能減水剤及び/又は凝結遅延剤を添加した、吹付け工法に適用するベースモルタル又はコンクリートに、請求項1〜8のいずれかに記載の液体急結剤を添加することを特徴とする、乾式又は湿式吹付け工法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、急結性、付着厚付け性、強度発現性およびコンクリート吹付けノズルの作業性に優れ、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、長期間、低温から高温下において貯蔵安定性に優れた液体急結剤を提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
(液体急結剤)
本発明は、アルミニウムをAl換算で1重量部に対し、マグネシウムをMgO換算で0.05〜1重量部、硫酸根をSO換算で0.9〜2.7重量部の割合で含有する混合物に、F換算で0.05〜1重量部のフッ化水素酸を90℃以下、好ましくは80℃以下の温度で反応させて得られる硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を含有する液体急結剤である。
【0023】
本発明の液体急結剤は、硫酸フッ化物含有水溶性マグネシウムアルミニウム塩を用いるため、初期の急結性が高すぎることなく、良好な吹付け施工性を有し、そのためにコンクリート吹き付け時の剥落を防止することができ、コンクリートを厚付けすることが可能となる。さらに、本発明の液体急結剤は、硫酸フッ化物含有水溶性マグネシウムアルミニウム塩を用いるため、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、低温から高温の環境温度下における長期間、貯蔵安定性に優れるものである。
【0024】
本発明におけるアルミニウムの供給源としては、特に限定されるものではないが、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムのいずれも使用でき、これらの1種以上を組合せてもよい。好ましくは硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムで、特に好ましくは硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウムである。硫酸アルミニウムは、促進剤として一般的に使用される硫酸アルミニウムであればよく、それは完全あるいは部分的に水和されていてもよい。一般的なグレードは、17%硫酸アルミニウム(Al(SO・14.3HO)(その中の酸化アルミニウムの割合のためそう呼ばれる)であり、他のグレード品を使用する場合、その適量はこれを基に容易に計算できる。また、硫酸アルミニウムは、Al(SOとして、液体急結剤全体の15〜35質量%の割合で配合するのがよい。また、本発明に使用する水酸化アルミニウムとしては、一般的に促進剤に使用されるアモルファス水酸化アルミニウムであり、好ましくは液体急結剤中の15質量%までの割合で配合するのがよい。安価な結晶質水酸化アルミニウムを使用することもできるが、このものは溶解性が低いために低温下における溶液安定性を不安定にし、アモルファスと同程度の性能を与えることができない。
【0025】
本発明におけるマグネシウムの供給源は、特に限定されるものではないが、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ギ酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムが使用でき、好ましくは水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムで、特に好ましくは水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。本発明に使用する水酸化マグネシウムは、液体急結剤全体の0.5〜15質量%の割合で配合するのがよい。
【0026】
本発明における硫酸根の供給源は、特に限定されるものではないが、硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄が使用でき、好ましくは硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウムで、特に好ましくは硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムである。
【0027】
本発明の最良の形態としては、硫酸アルミニウムと水酸化マグネシウムとフッ化水素酸との反応で得られる硫酸フッ化物含有水溶性マグネシウムアルミニウム塩を使用するが、硫酸アルミニウム15〜35質量%、水酸化マグネシウム0.5〜15質量%に対してフッ化水素酸0.5〜11質量%を反応させるのがよく、このものは、長期、特に低温下における溶液安定性が良好である。
【0028】
本発明に使用するフッ化水素酸は、一般的に約40〜55質量%のHF水溶液として使用される。また、硫酸アルミニウムと水酸化マグネシウムとの反応物に反応させるフッ化水素酸(HFとして)の割合は、液体急結剤全体の0.5〜11質量%となる量が好ましい。
【0029】
更に、本発明の液体急結剤は、Alモル数(A)とSOモル数(S)とのAl/SO(以下A/Sと略す)の比が0.29〜0.87であることが好ましく、特に好ましくは0.35〜0.55であり、A/Sがこの範囲内にあると優れた初期急結性と強度発現性を発揮する。また、本発明の液体急結剤は、A/Sを調整するため、アルミニウムの供給源として、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸根の供給源として、硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄を使用することができる。
【0030】
本発明の液体急結剤は、コンクリートの初期強度を改善する目的でC〜C10の有機モノ、ジカルボン酸ならびにそれらの金属塩の1種または2種以上を配合してもよい。C〜C10の有機モノおよびジカルボン酸ならびにそれらの金属塩としては、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、クエン酸及び酒石酸ならびにそれらの金属塩で、ギ酸、シュウ酸及びグリコール酸が好ましく、特にシュウ酸が好ましい。また、これらの成分の好ましい割合は、液体急結剤全体の1〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%である。
【0031】
さらに、本発明の液体急結剤は、pH調整と溶液安定性を高める目的でアルカノールアミン、アルキレンジアミンおよびアルキレントリアミンの1種または2種以上の組み合わせを用いることができる。これらの成分として、好ましくは、エチレンジアミン、エチレントリアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンであり、特に好ましくはジエタノールアミンである。それら成分は、好ましくは液体急結剤全体の0.1〜10質量%の割合で、より好ましくは0.1〜8質量%で配合することができる。
【0032】
本発明の液体急結剤は、硫酸フッ化物含有水溶性マグネシウムアルミニウム塩に上記で説明した成分を任意の順序で混合し、および撹拌することにより簡便に調製することができ、最終的には固形分濃度が30〜52%であることが好ましく、また、20℃における粘度が200mPa・s以下である。
【0033】
本発明の液体急結剤は、全アルカリが4%以下、好ましくは3%以下、特に好ましくは1%未満である。液体急結剤中の全アルカリが4%を超えると、低温時の溶液安定性が低下する傾向を示すために好ましくなく、また、アルカリ骨材反応に対しても好ましいものではない。本発明における全アルカリ(%)とは、NaOeq=酸化ナトリウム(NaO)+0.658酸化カリウム(KO)である。
【0034】
(使用)
本発明の液体急結剤の適した使用は、慣用の乾式又は湿式吹付け工法に適用するモルタル又はコンクリートなどのセメント組成物に、本発明の液体急結剤を添加するものである。使用に際して、本発明の液体急結剤は、用途等によって異なるが、一般的にセメント組成物中のセメント質量に対して5〜12質量%で添加することができる。
【0035】
(吹き付け工法)
本発明は、前記液体急結剤を輸送管、散水ノズルまたは吹付けノズル内で、モルタル又はコンクリートなどのセメント組成物に急結剤供給装置を用いて直接混合物に添加するか、または配合水に添加するようにした乾式又は湿式吹付け工法である。
【0036】
さらに、本発明は、ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤又は高性能減水剤及び/又は凝結遅延剤を添加した吹付け工法に適用するベースモルタル又はコンクリートに、前記液体急結剤を段落[0027]の方法で添加する吹付け工法である。
【0037】
本発明におけるポリカルボン酸系の高性能AE減水剤又は高性能減水剤としては、汎用的に使用されている市販のものが使用できる。市販のポリカルボン酸系の高性能AE減水剤又は高性能減水剤としては、特開昭58−38380(ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体)、特開昭62−70250(ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸と不飽和カルボン酸のポリアルキレンオキシドを有するアミド化合物付加物との共重合体)などのポリアルキレンオキシド基を有するポリカルボン酸系セメント減水剤、特開平5−213644(ポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体)、特開平5−238795(不飽和結合を有するポリアルキレングリコールジエステル系単量体とアクリル酸系単量体と不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体から選択された共重合体)、特開平9−286645(オキシエチレン基が1〜10と11〜100の異なる鎖長のポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸との共重合体)、特許2541218号(ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体)、特開平7−215746(ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体)、特開平5−310458(アルケニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体)、特開平4−74748(炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体)、特開昭62−83344(ポリアクリル酸や炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合体などとの金属コンプレックス)、特開2001−180998(ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系不飽和カルボン酸誘導体等の特定の単量体(A)、及び(メタ)アクリル酸等の特定の単量体(B)とを共重合させて得られた共重合体混合物を含有し、前記モル比(A)/(B)が反応途中において少なくとも1回変化されているコンクリート混和剤)、特公平6−99169にポリ(酸性基置換アルキル基および/または酸性基置換アシル基)ポリエチレンイミンおよびポリ(酸性基置換アルキル基およびカルバモイルアルキル基)ポリエチレンイミンよりなるポリエチレンイミン化合物、特開平8−283350(オキシアルキレングリコールアルケニルエーテルおよび不飽和ジカルボン酸誘導体およびビニル系のポリアルキレングリコール化合物、ポリシロキサン化合物またはエステル化合物)、特開2000−351820(不飽和モノカルボン酸誘導体またはジカルボン酸誘導体およびオキシアルキレングリコール−アルケニルエーテルの基をベースとするコポリマーを含有)を含有するものを例示することができる。
【0038】
また、本発明における凝結遅延剤としては、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸4ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)カルシウム/ナトリウム塩、ヘキサメチレン−ジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)カリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)ナトリウム塩からなる群から選ばれたホスホン酸誘導体、並びにサリチル酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、ムコン酸及びグルコへブタン酸から選択されたヒドロキシカルボン酸及びそれらの塩類を含有するものを例示することができる。好ましい凝結遅延剤としては、ホスホン酸誘導体とクエン酸及び/又はグルコン酸及びそれらの塩類を含有するものを例示することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実験例1〜3に基づき本発明を詳細に説明する。
【0040】
本発明品の液体急結剤ならびに比較用に調製した液体急結剤の成分組成を表1に示す。
【0041】
ここでは、アルミニウムの供給源として硫酸アルミニウムと水酸化アルミニウム、マグネシウムの供給源として水酸化マグネシウムを用い、これらを所定の割合で混合したものに対し、フッ化水素酸を添加して75℃で反応させ、硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を含む水分散液を得た。次いで、この水分散液に、ジカルボン酸の供給源としてシュウ酸を添加し、さらに、アルカノールアミンの供給源としてジエタノールアミンを添加しpH=2〜4に調整した。実施例の溶液の粘度は、200mPa・s(20℃)以下であり、作業性に優れ取り扱いやすい液体急結剤を得た。なお、試料No.1−2,1−3,2−2および2−3のナトリウムの供給源としては、硫酸ナトリウムを用いた。
【0042】
また、試料No.1−6,2−6は、それぞれ試料No.1−5,2−5と成分組成は同一であるが、上記の製造手順によらずに、硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を中間生成物とすることなく調製したものである。すなわち、アルミニウムの供給源として硫酸アルミニウムと水酸化アルミニウム、これらを所定の割合で混合したものに対し、フッ化水素酸を添加して75℃で反応させ、次いで、この水分散液に、ジカルボン酸の供給源としてシュウ酸を添加した。さらにマグネシウムの供給源として水酸化マグネシウムを添加した後アルカノールアミンの供給源としてジエタノールアミンを添加しpH=2〜4に調整した。
【0043】
【表1】

【0044】
(実験例1)
溶液安定性試験結果を、表2に示す。液体急結剤を5,20,30,40℃の環境温度下で3ヶ月間貯蔵した。実施例は、長期間、低温から高温下において、良好な溶液安定性を示し効果が認められた。
【0045】
実施例と製造手順が異なる試料No.1−6,2−6(比較例)は、低温下で結晶が析出した。また、試料No.1−3,2−3の結果が示すように、NaO=3%でもマグネシウムの存在下の場合、溶液安定性は良好であった。
【0046】
【表2】

【0047】
表3に示す使用材料およびモルタル配合を使用し、モルタル試験を行った。
【0048】
(実験例2)
【表3】

【0049】
モルタル試験結果を表4に示す。試料No.1−3,1−4,1−5と試料No.2−3,2−4,2−5の24時間強度発現性の効果が認められた。
【0050】
【表4】

【0051】
(実験例3)
表5に示すコンクリート配合を使用し、吹付けコンクリートの付着厚付け性試験を行った。トンネルの天端に対し、コンクリート吹付けを剥落するまで行い、吹き付けられたコンクリートの平均厚さを測定した。また、コンクリート吹付けノズル内の状態を目視にて確認した。急結剤の使用量は、セメント質量に対して9重量%とした。
【0052】
【表5】

【0053】
付着厚付け性試験結果を表6に示す。試料No.2−3,2−4,2−5の付着厚付け性の効果が認められた。
【0054】
【表6】

【0055】
吹付けコンクリートの強度試験結果を表7に示す。試料No.2−3,2−4,2−5の24時間強度発現性の効果が認められた。
【0056】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の液体急結剤は、アルカリ金属を使用しないあるいは少量のアルカリ金属を使用し、急結性、付着厚付け性、強度発現性およびコンクリート吹付けノズルの作業性に優れ、アルカリ骨材反応に対する抵抗性、また人体に対する安全性が高く、かつ、長期間において低温から高温下までの貯蔵安定性に優れた液体急結剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムをAl換算で1重量部に対し、マグネシウムをMgO換算で0.05〜1重量部、硫酸根をSO換算で0.9〜2.7重量部の割合で含有する混合物に、F換算で0.05〜1重量部のフッ化水素酸を90℃以下の温度で反応させて得られる硫酸フッ化物含有マグネシウムアルミニウム塩を含有する液体急結剤。
【請求項2】
アルミニウムの供給源が、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1種または2種以上のアルミニウム化合物である、請求項1に記載の液体急結剤。
【請求項3】
マグネシウムの供給源が、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ギ酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上のマグネシウム化合物である、請求項1または2に記載の液体急結剤。
【請求項4】
硫酸根の供給源が、硫酸、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄からなる群から選択される1種または2種以上の硫酸化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の液体急結剤。
【請求項5】
〜C10の有機モノ、ジカルボン酸ならびにそれらの金属塩からなる群から選択される1種または2種以上を配合してなる、請求項1〜4のいずれかに記載の液体急結剤。
【請求項6】
アルカノールアミン、アルキレンジアミン、トリアミンからなる群から選択される1種または2種以上を配合してなる、請求項1〜5のいずれかに記載の液体急結剤。
【請求項7】
溶液の固形分濃度が30〜52%であり、かつ、粘度が200mPa・s(20℃)以下である請求項1〜6のいずれかに記載の液体急結剤。
【請求項8】
全アルカリが1%未満である、請求項1〜7のいずれかに記載の液体急結剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液体急結剤の乾式又は湿式吹付け工法に適用する吹付けモルタル又はコンクリートへの使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の液体急結剤を輸送管、散水ノズルまたは吹付けノズル内で、モルタル又はコンクリートなどのセメント組成物に急結剤供給装置を用いて直接混合物に添加するか、または配合水に添加するようにした、乾式又は湿式吹付け工法。
【請求項11】
ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤又は高性能減水剤及び/又は凝結遅延剤を添加した、吹付け工法に適用するベースモルタル又はコンクリートに、請求項1〜8のいずれかに記載の液体急結剤を添加することを特徴とする、乾式又は湿式吹付け工法。

【公開番号】特開2008−30999(P2008−30999A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206773(P2006−206773)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】